車両用エンジン駆動型発電装置
【課題】分割タイプのクランクケース内の発電機からクランクケースの外側に導出されるハーネスの取り回しを良好にしてクランクケースの組み立て作業性を向上させる。
【解決手段】クランクケース4の蓋部4B内に発電機5が配置されており、電力ハーネス91とパルサセンサハーネス93とがグロメット94を通って蓋部4Aから外側に導出される。グロメット94は、ケース本体4Aと蓋部4Bとの合わせ面Fから蓋部4B側に切り欠いた開口(凹部)103に嵌装される。グロメット94のうち蓋部4B内に位置する部分にはガイド部94aとその補強壁94gとが形成される。グロメット94のうち蓋部4Bの外側には、ハーネス91、93を上方に案内する筒部94bが設けられる。蓋部4Bには、ガイド部94aの上方に近接してハーネス91、93の上方への張り出しを防止する区画壁106が形成される。
【解決手段】クランクケース4の蓋部4B内に発電機5が配置されており、電力ハーネス91とパルサセンサハーネス93とがグロメット94を通って蓋部4Aから外側に導出される。グロメット94は、ケース本体4Aと蓋部4Bとの合わせ面Fから蓋部4B側に切り欠いた開口(凹部)103に嵌装される。グロメット94のうち蓋部4B内に位置する部分にはガイド部94aとその補強壁94gとが形成される。グロメット94のうち蓋部4Bの外側には、ハーネス91、93を上方に案内する筒部94bが設けられる。蓋部4Bには、ガイド部94aの上方に近接してハーネス91、93の上方への張り出しを防止する区画壁106が形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用エンジン駆動型発電装置に関するものであり、特に、クランクケース内に収容された発電機から外側に引き出されるハーネスの取り回し構造が改良されたエンジン駆動型発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されるエンジンで駆動されるエンジン駆動型発電機が知られている。一般にエンジン駆動型発電機は、エンジンのクランクケースに収容され、発電出力やセンサ出力をクランクケースから外側に取り出すための電線はまとめられてハーネスとして配索される。このハーネスを貫通させるためクランクケースに設けられる導出孔のシールとしてゴム製のグロメットが用いられるのが一般的である。例えば、特許文献1に記載されたハーネスのシール構造では、本体部と蓋部とからなる分割タイプのクランクケースの、本体部と蓋部との合わせ面に凹部を形成してハーネスの導出口とし、この導出口にグロメットを嵌合装着している。ハーネスはこのグロメットによってシールされた状態でクランクケース内から外部へ導出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−210854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている従来の構造においてクランクケース内から外側に引き出されたハーネスは、グロメットが装着されている位置から所望の方向に取り回される。したがって、クランクケース内でのハーネスの取り回しによっては、クランクケース側からグロメットにハーネスを通す前で、該ハーネスが大きい半径で屈曲させられ、クランクケースからはみ出すことがある。そうすると、クランクケースの本体部と蓋部との合わせ作業時に、屈曲してクランクケースからはみ出しているハーネスが合わせ面に干渉して円滑な作業を妨げることがあった。
【0005】
本発明の目的は、上記課題を解消し、分割タイプのクランクケースの合わせ面にハーネスが干渉することを防ぎ、クランクケースの組み立て作業性を向上させ、同時にハーネスの保護効果を高めることができる車両用エンジン駆動型発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための本発明は、ケース本体と該ケース本体に結合される蓋部とを備え、前記ケース本体および蓋部の一方側に発電機を収容するクランクケースと、前記ケース本体と蓋部との合わせ面を含む位置に設けられていて、前記発電機に接続されるハーネスをクランクケースから外側へ導出するためのグロメット(94)とを有する車両用エンジン駆動型発電装置において、前記グロメットが、前記クランクケースの内側へ延びて前記ハーネスを該グロメットに設けられるハーネス挿通孔に案内するガイド部を有し、前記ガイド部が、前記ハーネスを前記ケース本体と蓋部との合わせ面よりも前記一方側に位置させて配置されている点に第1の特徴がある。
【0007】
また、本発明は、前記ガイド部が、前記グロメットにおいて前記ハーネス挿通孔が設けられる面に板状リブとして立設されている点に第2の特徴がある。
【0008】
また、本発明は、前記グロメットのガイド部が、前記ケース本体と蓋部との合わせ面に略一致させた面を有している点に第3の特徴がある。
【0009】
また、本発明は、前記グロメットのハーネス挿通孔が、前記ハーネスを、前記クランクケースの外側に導出し、かつ上方に案内するように設けられており、前記グロメットには、前記ガイド部に対して上側に一体に形成された補強壁が設けられている点に第4の特徴がある。
【0010】
また、本発明は、前記クランクケースには、前記グロメットの取り付け部の上方に、前記クランクケースの内部を区画する区画壁が形成され、前記グロメットの前記ガイド部の先端部を、前記区画壁に近接させた点に第5の特徴がある。
【0011】
また、本発明は、前記グロメットが、前記ハーネス挿通孔に連通している導管であって前記ハーネスをクランクケースから外側に導出する筒部を有し、前記筒部の車幅方向外側が、前記クランクケースの後方に位置するとともに、エンジンの出力を駆動輪に伝達する駆動スプロケットのカバーで覆われている点に第6の特徴がある。
【0012】
また、本発明は、前記クランクケースが、前記ケース本体と蓋部との合わせ面から一方側に切り欠かれた凹部を有し、前記グロメットが、前記凹部の内周縁に対応する外周溝と、該外周溝を挟んで対向するフランジ部と、前記外周溝が間欠している部分であって前記ガイド部の前記面と整列する面とからなる中央部分とを有している点に第7の特徴がある。
【0013】
また、本発明は、前記ハーネス挿通孔が、ハーネスを構成する複数の電線を個別に挿通させる複数の孔であり、前記ガイド部が形成される前記対向するフランジのうち一方から他方に向けて貫通され、前記筒部に至るように設けられている点に第8の特徴がある。
【0014】
また、本発明は、前記グロメットがゴム製である点に第9の特徴がある。さらに、本発明は、前記クランクケースの蓋部に発電機が収容されている点に第10の特徴がある。
【発明の効果】
【0015】
第1の特徴を有する本発明によれば、クランクケースの内側へ延びたガイド部によってハーネスがクランクケースの分割面(ケース本体と蓋部との合わせ面)よりも、発電機が収容される側に位置するように規制した。これにより、ケース本体へ蓋部を組み付ける作業の際に、クランクケースの合わせ面付近に配索されるハーネスが邪魔になるのを防止して作業性を向上させることができるうえ、ハーネスがクランクケースの合わせ面部分と干渉するのを防ぐことができ、ハーネス保護効果を高めることもできる。
【0016】
第2の特徴を有する本発明によれば、ハーネス挿通孔にハーネスを通す際に、板状ガイド部を基準としてハーネスの先端位置を確認しながら作業ができるので、作業性が向上できる。
【0017】
第3の特徴を有する本発明によれば、クランクケースに対するグロメットの位置決めをガイド部の面を基準に行うことができるので、位置決めが容易となって作業性が向上し、かつ、より確実にハーネスをクランクケースの合わせ面よりも蓋部側に位置させることができる。
【0018】
第4の特徴を有する本発明によれば、ハーネスを案内する上方向に補強壁を設けたので、ガイド部の補強効果を高めることができるとともに、ハーネスがクランクケースの内壁面へ干渉するのを防止する第2のガイド部として補強壁を機能させることができる。
【0019】
第5の特徴を有する本発明によれば、ガイド部が区画壁に近接していて、ハーネスがガイド部の先端部と区画壁との間から露出しないようにすることができるので、ハーネスの保護効果を高めることができる。
【0020】
第6の特徴を有する本発明によれば、グロメットのうち、クランクケースの外側に位置する部分およびハーネスをスプロケットカバーで覆うことができるので、防水・防塵性を高めることができるうえ、グロメットやハーネスの外部露出を少なくして意匠性を高めることができる。
【0021】
第7の特徴を有する本発明によれば、蓋部側に切り欠かれた凹部にグロメットの外周溝を嵌めて保持させた状態で蓋部をケース本体に組み付けることができるので、作業性向上を図ることができる。
【0022】
第8の特徴を有する本発明によれば、ハーネスとしてまとめられた電線を個々の径に応じたハーネス挿通孔に挿通するので、電線とハーネス挿通孔との緊密度を高めて、防水性・防塵性をより一層高めることができる。
【0023】
第9の特徴を有する本発明によれば、グロメットがゴム製であるので、ハーネスの保護効果と、防水・防塵の観点で高いシール性を確保することができる。第10の特徴を有する本発明によれば、蓋部に発電機が収容されたクランクケースの組み立てに際して、蓋部側の、裏側の様子が見えにくい部位にハーネス類をアッセンブリしたものであっても、組み立ての作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用エンジン駆動型発電装置を備えた自動二輪車を示す左側面図である。
【図2】自動二輪車の車体フレームの左前方から見た斜視図である
【図3】ステップステーを取り付けた車体フレームの要部を示す側面図である。
【図4】自動二輪車の要部拡大側面図である。
【図5】自動二輪車の要部拡大正面図である。
【図6】自動二輪車の要部拡大平面図である。
【図7】自動二輪車に搭載されるバッテリケースの平面図である。
【図8】図4のA−A位置での断面図である。
【図9】点火コイル取り付けステーの斜視図である。
【図10】ACジェネレータおよびその周辺部を示す自動二輪車の要部拡大左側面図である。
【図11】ACジェネレータおよびその周辺部を示す自動二輪車の要部拡大右側面図である。
【図12】図11のC−C位置での断面図である。
【図13】図11のB−B位置での断面図である。
【図14】グロメットの斜視図である。
【図15】グロメットの正面図である。
【図16】グロメットの側面図である。
【図17】グロメットの平面図である。
【図18】図15のD−D位置での断面図である。
【図19】図16のE−E位置での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る発電装置を備えた鞍乗り型車両である自動二輪車の左側面図である。図1において、自動二輪車1は、ツインプラグ方式の単気筒4サイクルエンジン2を搭載する。自動二輪車1の車体フレーム3は、ヘッドパイプ30、第1メインフレーム31、第2メインフレーム32、ダウンフレーム33、リヤフレーム34、並びにこれらフレームに接合されるガセット、ブラケット、ステー等の部材からなる。車体フレーム3の詳細は図2を参照してさらに後述する。
【0026】
エンジン2は、シリンダ20、シリンダヘッド21、およびシリンダヘッドカバー22を備え、下部にクランクケース4を備える。エンジン2は、エンジン2と一体に結合されているクランクケース4を車体フレーム3に複数個所で連結することにより車体フレーム3に保持される。クランクケース4の車体左側には、ACジェネレータ(発電機)5が設けられる。ACジェネレータ5は、回転部つまりロータがエンジン2のクランク軸6に連結されて駆動される。
【0027】
第1メインフレーム31上には、燃料ポンプ7を内蔵した燃料タンク8およびタンデムシート9が保持される。燃料タンク8とエンジン2との間にはバッテリを収容するバッテリケース10が設けられる。バッテリケース10は樹脂製であるのが望ましい。エンジン2のシリンダヘッド21の左壁には第1の点火プラグ11が設けられ、後壁には第2の点火プラグ12が設けられる。シリンダヘッドカバー22の前方(つまりシリンダヘッド21の上前方)にあって、車幅方向中央に点火コイル13が配置される。
【0028】
第1の点火プラグ11および第2の点火プラグ12は、点火コイル13に対して第1のハイテンションコード14および第2のハイテンションコード15によってそれぞれ接続される。第1のハイテンションコード14は、シリンダヘッドカバー22の左側方を通って前方に配索される。第2のハイテンションコード15はシリンダヘッドカバー22の上方を通って前方に配索される。なお、第2のハイテンションコード15は、その中間部分がバッテリケース10の底面に保持され、シリンダヘッドカバー22の上面との間で所定の距離を維持して配索される。第2のハイテンションコード15をバッテリケース10の底面に保持する構造は後述する。
【0029】
第2メインフレーム32の下端部には、スイングアーム16を上下揺動自在に支持するピボットボス17が設けられる。第2メインフレーム32は、リヤクッション18を介してスイングアーム16を懸架する。スイングアーム16の後部には、後輪WRが回転自在に軸支される。クランクケース4から車体左側に突出する減速機の出力軸19と後輪WRとの間には駆動チェーン23が架け渡される。
【0030】
エンジン2のシリンダヘッド22の前部から引き出される排気管24は、クランクケース4の下を回って車体右後方に延長される。排気管24の後端部にはマフラ25が連結される。シリンダヘッド22の後部には、スロットルボディ26を含む吸気管27が接続され、吸気管27の後端部にはエアクリーナ28が連結される。
【0031】
ヘッドパイプ30は、ステアリング軸29を回動自在に保持し、ステアリング軸29の上下にはトップブリッジ35およびボトムブリッジ36がそれぞれ結合される。トップブリッジ35およびボトムブリッジ36によって左右一対のフロントフォーク37が保持され、フロントフォーク37の下端には前輪WFが回転自在に軸支される。フロントフォーク37には、前輪WFのカバー(フロントフェンダ)38が取り付けられる。
【0032】
トップブリッジ35には、ステアリングハンドル39が固定され、ステアリングハンドル39の左右にはグリップ40およびミラー41が設けられる。トップブリッジ35およびボトムブリッジ36から前方に延びるステー42にはヘッドライト43、フロントウィンカ44およびメータ45が取り付けられる。第1メインフレーム31の後部にはリヤフェンダ46に取り付けられたテールライト47およびリヤウィンカ48が設けられる。
【0033】
ACジェネレータ5からハーネス49が上方に延びてメインハーネス50に合流される。メインハーネス50は、車体前後方向に延び、バッテリケース10内のバッテリや、ヘッドライト43、フロントウィンカ44、テールライト47、リヤウィンカ48等の灯火器やリレー等の電装部品に配線される。
【0034】
図2は、車体フレーム3の左前方から見た斜視図である。図2において、車体フレーム3は、前端部にヘッドパイプ30が配され、このヘッドパイプ30に前端部が接合されて第1メインフレーム31が車体後部側に延在する。第2メインフレーム32は、第1メインフレーム31が接合されている位置よりも下方でヘッドパイプ30に接合されて車体後方側に途中まで延びてその先が下方に湾曲して終端している。第1メインフレーム31および第2メインフレーム32は、いずれも車体左方向に張り出した左部材(パイプ)と車体右方向に張り出した右部材(パイプ)とからなる左右一対のものである。
【0035】
ダウンフレーム33は、第1メインフレーム31および第2メインフレーム32が接合されている位置の間でヘッドパイプ30に先端が接合されて下方に延在する矩形横断面のパイプ部材である。リヤフレーム34は、ダウンフレーム33と、第2メインフレーム32の垂下部分32aに先端が接合され、上後方に延びて第1メインフレーム31の後部に接合される。
【0036】
車体フレーム3は、さらに、第1メインフレーム31とリヤフレーム34との間を連結するサブフレーム51、リヤフレーム34に接合されて下後方に延在している同乗者ステップ取り付けフレーム52、エンジン2を保持するハンガプレート53、リヤクッション18の上部を保持するリヤクッションハンガプレート54を備える。また、左右の第1メインプレート31、31の間を連結するトランスプレート55、56および57が設けられる。
【0037】
ダウンフレーム33に対して車体前方側には、オイルクーラ58が取り付けられる。オイルクーラ58とクランクケース4とは図示しないパイプでオイルが循環されるように接続される。
【0038】
また、ダウンフレーム33の下端部にはガセット59の前部が結合され、ガセット58の後部はクランクケース4の前部4aに連結される。クランクケース4の後上部4bはハンガプレート53と連結される。第2メインフレーム32の垂下部分32aの下端部に形成されたピボットボス17はスイングアーム16を支持するとともに、クランクケース4の後中部4cを連結するピボット軸を支持する。さらに第2メインフレーム32には、垂下部32aの下端部から上下に延在するブラケット60が設けられ、このブラケット60にはステップステーやスタンド(図3に関して後述)が取り付けられ、ステップステーはさらにクランクケースの後下部4dに連結される。このように、エンジン2は4個所で連結されて車体フレーム3に搭載される。
【0039】
図3は、ステップステーを取り付けた車体フレーム3の要部を示す側面図である。図3において、第2メインフレーム32の垂下部32a下端に形成されたブラケット60に対してステップステー61がボルト62、62で取り付けられる。さらにステップステー61は、ボルト63によってクランクケース4側の後端部4dに設けられるボス(図示せず)に連結される。ボルト63は、車体右側に設けられるステップステー(図示せず)にまで到達する長さを有しており、車体右側でボルト63にナット(図示せず)を螺合させて、車体両側のステップステーをクランクケース4に固定させる。
【0040】
ステップステー61には、運転者用のステップ64が軸支される。また、ステップステー61には軸61aで変速レバー65が枢支される。変速レバー65は、アーム66および67、並びに変速入力軸68を連結するクランプ68aに結合されてアーム67につながる図示しないアーム(図3では変速レバー65の先端で隠れているが、図10では符号69で示す。)からなるリンク機構を介して変速入力軸68と連結される。変速入力軸68はクランクケース4内に収容される変速機の変速ドラム(図示せず)を回動させるためのものである。変速機は周知の有段変速機を採用できる。
【0041】
ブラケット60の下端部はステップステー61から下方に延長されており、その延長部60aには、軸70aによって回動自在にサイドスタンド70が支持される。サイドスタンド70とブラケット60とに立設されるピン71、72間には、引っ張りばね73が配されており、この引っ張りばね73によって、サイドスタンド70が、使用時には図示の使用位置に、非使用時には格納位置にそれぞれ付勢される。
【0042】
図4は、自動二輪車の要部拡大側面図、図5は、自動二輪車の要部拡大正面図、図6は、自動二輪車の要部拡大平面図、図7はバッテリケースの平面図である。
【0043】
図4において、バッテリケース10は、自動二輪車1に搭載した状態で、左右一対の第1メインフレーム31および左右一対の第2メインフレーム32の、それぞれの左右部材間に平面視でバッテリ70が収まるように配置される。バッテリケース10は、バッテリ120を収容する箱体から左右に張り出したウィング部10a、10aを備え、ウィング部10a、10aは、それぞれ第1メインフレーム31の上面に当接して、バッテリケース10を第1メインフレーム31の上部に支持する。
【0044】
さらに、バッテリケース10の前部10bは、前記ヘッドパイプ30に前縁が接合されるステー74にボルト75で結合される。なお、ステー74に溶接されているナット76は、バッテリケース10の上方に配置される燃料タンク8の前部を車体フレーム3に固定するのに用いられる図示しないボルトを螺合するためのものである。
【0045】
第2のハイテンションコード15の中間部分15aは、バッテリケース10の下面10cに接合されるコードハンガ77によってバッテリケース10に懸架される。第2のハイテンションコード15は、左右の第2メインフレーム32の間に配索されているので、少なくとも第2のハイテンションコード15の一部分つまりコードハンガ77に支持されている中間部分15aが第2メインフレーム32によって車幅方向左右から隠されていて車体側面視で外部への露出量が少なくなっている。なお、バッテリケース10の下面10cに接合されるコードハンガ77の平面形状は図7に示し、A−A位置での断面形状は図8に示す。
【0046】
図7に示すように、コードハンガ77は、第2のハイテンションコード15の配索位置に応じて車体幅方向中央部から左側にオフセットして配置される。第2のハイテンションコード15の配索位置に沿ってコードハンガ77を配置することによって、第2のハイテンションコード15を車体幅方向に折り曲げるような無理な力が作用するのを防止できる。
【0047】
ダウンフレーム33とシリンダヘッドカバー22との間に配置される点火コイル13は、ダウンフレーム33に保持される。矩形断面のダウンフレーム33の後面には、一つのブラケット78が接合され、ダウンフレーム33の左右側面にはブラケット79、79がそれぞれ接合される。ブラケット78、79には、それぞれナット78a、79aが溶接される。ブラケット78、79には点火コイル取り付けステー80に立設される補助部材80a、80bが対向する。補助部材80a、80bに設けられる孔にはボルト81、82が通され、ナット78a、79aに螺合して点火コイル取り付けステー80をブラケット78、79に固定する。
【0048】
点火コイル取り付けステー80をダウンフレーム33に設けたブラケット78、79に連結するようにしたので、シリンダヘッド21や第1及び第2の点火プラグ11、12の高さに合わせてダウンフレーム33に対するブラケット78、79の接合位置を変更するだけでよく、第1および第2メインフレーム31、32等からブラケットを延ばして点火コイル13を支持させるのと異なり、点火プラグ13の取り付け高さを設定しやすい。また、ブラケット78、79も小型にすることができる。
【0049】
点火コイル取り付けステー80には、車体後方側から点火コイル13を一部貫通させて車体前方側(つまりダウンフレーム側)に臨むように孔が設けられる(図9参照)。点火コイル13の一部が、点火コイル取り付けステー80から車体前方側に臨んだ位置で、点火コイル13から車体左右方向に突出しているタブ83が点火コイル取り付けステー80に当接する。この状態で、点火コイル取り付けステー80に車体前方側からボルト84を通し、タブ83に螺合させる。
【0050】
図4および図6において、エンジン2のシリンダヘッド21の左側壁に設けられる第1点火プラグ11に一端が接続される第1のハイテンションコード14の他端は、点火コイル13の一方の高圧出力端子85に接続される。一方、シリンダヘッド21の後壁に設けられる第2点火プラグ12に一端が接続される第2のハイテンションコード15の他端は、点火コイル13の他方の高圧出力端子86に接続される。第1のハイテンションコード14および第2のハイテンションコード15が接続される高圧出力端子85および86は、いずれも点火コイル13上でエンジン2のシリンダヘッドカバー22寄りに配置される。
【0051】
図5、図6、図7において、点火コイル13の右側には、電源端子87、88が突出しており、電源端子87、88に接続されるハーネス89はメインハーネス50に統合される。図5において、点火コイル13の手前、つまり車体前方側には、ダウンフレーム33に取り付けられるオイルクーラ58が配置される。
【0052】
図8は、図4のA−A位置での断面図である。図8において、コードハンガ77は、湾曲したコード支持部77aとコードハンガ77をバッテリケース10の下面10cに取り付けるためのフェース部77bとからなる。コード支持部77aは、第2のハイテンションコード15の外周に沿うように湾曲している。フェース部77bは、止めねじ90によってバッテリケース10の下面10cに取り付けるのがよいが、接着など、他の接合手段で取り付けてもよい。
【0053】
図9は、点火コイル取り付けステー80の斜視図である。点火コイル取り付けステー80は、中央に点火コイル13の少なくとも一部が貫通可能なサイズに設定された窓80wを有する環状の板材である。窓80wの上枠上に補助部材80aが立設される一方、窓80wの下枠上に補助部材80b、80bが立設される。また、窓80wの左右の枠には、保持部材80a、80bが立設された面80fの裏側(車体後方)に向けて凹んだ凹部80c、80cが形成され、この凹部80cには点火コイル13のタブ83に螺合される前記ボルト82を通す孔80hが形成される。
【0054】
図10は、ACジェネレータ5およびその周辺部を示す自動二輪車の要部拡大左側面図であり、図11は、同右側面図である。図10ではクランクケース4のうちACジェネレータ5を収容する蓋部を除去したケース本体部を主に示し、図11ではクランクケース4の蓋部の裏側を主に示している。図12は図11のC−C断面図、図13は図11のB−B断面図である。
【0055】
図10〜図13において、クランクケース4はケース本体4Aと蓋部4Bとからなる。ケース本体4Aの正面形状は、図10によって明りょうに示されており、蓋部4bの正面形状は図11によって明りょうに示されている。ケース本体4Aと蓋部4bとは、ボルト117を含む複数のボルトで互いに結合される。ケース本体4Aの端面(合わせ面F)にボルト117等を螺挿するねじ孔117aが形成され、蓋部4Bにはボルト117等を貫通するボルト孔117bが形成される。複数のねじ孔117aおよびボルト孔117bは、煩雑さを回避するため、一部にのみ符号を付している。
【0056】
ACジェネレータ5は、エンジン2のクランク軸6のうち、蓋部4B側に突出した部分に結合されて一体に回転するロータ5aと、ロータ5aと同軸に配置されてクランクケース4に固定されるステータ5bとを備える。したがって、蓋部4Bは全体として側壁と底部とを有する椀状であり、ロータ5aおよびステータ5bは、椀状の蓋部4B内に位置する(特に、図12参照)。ステータ5bに設けられる複数の磁極に巻回される巻線5cに発生する3相発電出力は出力取り出し部90に接続される電力ハーネス91でACジェネレータ5から外部に取り出される。
【0057】
ACジェネレータ5は、ロータ5aの回転角度を検出するためのパルスジェネレータ(パルサセンサ)92をロータ5aの周面に対向して設け、パルサセンサ92には、その検出出力を取り出すパルサセンサハーネス93が接続される。パルサセンサ92は、2本のボルト102を使って壁部4Bに固定される。なお、パルサセンサハーネス93は、側面視で電力ハーネス91と重なるので、図10、図11では点線で図示されている。電力ハーネス91およびパルサセンサハーネス93は両者に共通のグロメット94を通してクランクケース4の外側に取り出される。グロメット94は、例えば、ゴム製の弾性部材である。
【0058】
蓋部4Bの、ケース本体4Aとの合わせ面Fには、グロメット94の中央部分に形成される外周溝(詳細は図13等を参照して後述)に沿う形状を有する切り欠きつまり凹部103が形成され、この凹部103によってグロメット94が蓋部4Bに保持される。蓋部4Bに保持された状態では、グロメット94がケース本体4A側にははみ出さないようにグロメット94および凹部103の形状が決定されている。つまり、グロメット94はケース本体4Aと蓋部4Bとの合わせ面のうち、蓋部4B側に位置している。
【0059】
クランクケース4の側面にはオイル圧センサ95が取り付けられる。このオイル圧センサ95には、その出力を取り出すための油圧センサハーネス96が接続される。オイル圧センサ95はクランクケース4の下前方に位置しており、油圧センサハーネス96は、そこからクランクケース4の下側外周に沿って後方に回り込み、スプロケットカバー97の前壁との間を通って上方に引き出される。スプロケットカバー97は、エンジン2の出力軸98に連結される駆動スプロケット99を車体左側方から覆うものである。
【0060】
グロメット94を通してクランクケース4から外側に引き出された電力ハーネス91とパルサセンサハーネス93は、グロメット94のすぐ近くで油圧センサハーネス96とともにより太いハーネス101として一つにまとめられて上方に延長され、車体の前後方向に延在する前記メインハーネス50に統合される。
【0061】
グロメット94には、ケース本体4Aと蓋部4Bとの合わせ面側に沿って位置する壁部(ガイド部)94aが車体前方側つまり蓋部4Bの内側に向けて設けられ、電力ハーネス91とパルサセンサハーネス93とが、ケース本体4A側に張り出さないようにしている。また、壁部94aに対して上方に直交して補強壁94gが一体に形成されている(図13参照)。
【0062】
一方、グロメット94には、蓋部4Bから車体後方側つまり蓋部4Bの外側に向けて、グロメット94から引き出された電力ハーネス91およびパルサセンサハーネス93を上方に案内する筒部94bが設けられる。
【0063】
スプロケットカバー97は、駆動チェーン23を覆う前壁97aからさらに車体前方に張り出した前部分97bを有している。前記グロメット94の筒部94bと、グロメット94を通して引き出された電力ハーネス91およびパルサセンサハーネス93と油圧センサハーネス96との統合部104は、この前部分97bによって、車体左側から覆われている(図11参照)。
【0064】
さらに、蓋部4Bは、グロメット94が保持される凹部103の上方において、側壁105から蓋部4Bの内側に向けて張り出した区画壁106を有している。ケース本体4A側には蓋部4Bに設けられた区画壁106と対になる本体側区画壁106aが設けられる。グロメット94は、壁部94aの上部および補強壁94gが、区画壁106、106aの、蓋部4Bの内側寄り先端に近接するように形状および/または配置が設定される。また、図11、図13から理解できるように、補強壁94gは、ハーネス91、93の上部に配置されるので、ハーネス91、93が区画壁106に干渉しないように作用することができる。
【0065】
なお、クランクケース4のケース本体4Aには、エンジン2を始動させるためのスタータモータ107が取り付けられ、このスタータモータ107の出力は、出力ピニオン108と、複数の歯車からなる歯車列109およびクランク軸6に結合される歯車110(図12参照)等からなる歯車列を介してクランク軸6に伝達される。
【0066】
前記区画壁106、106aがあることにより、グロメット94に通される電力ハーネス91およびパルサセンサハーネス93は、上方に大きく湾曲するのが防止される。つまり、電力ハーネス91およびパルサセンサハーネス93が、上方の歯車列109側にはみ出さないよう蓋部4B側に位置規制することができる。
【0067】
なお、図11において、符号2aはエンジン2のピストン、符号2bはクランク、符号2cはコンロッド、符号2dはカムチェーン、符号2eはカムチェーンのスライダを示すが、これらは周知のものであるので詳細な説明は省略する。
【0068】
図14はグロメット94の斜視図、図15は正面図、図16は側面図、図17は平面図、図18は図15のD−D断面図、図19は図16のE−E断面図である。グロメット94は第1フランジ94cおよび第2フランジ94dと、第1フランジ94cおよび第2フランジ94dに挟まれた外周溝94eとからなる中央部分94fを有する。第1フランジ94c上において、蓋部4Bへの装着姿勢でクランクケース4の蓋部4B側に指向して立設されている壁部94aには、該壁部94aの面111に直交し、かつ第1フランジ94cの面112に対して所定の角度αを有して形成される補強壁94gが形成される。
【0069】
第2フランジ94dには、筒部94bが設けられる。筒部94bは蓋部4Bの外側に引き出される電力ハーネス91およびパルサセンサハーネス93を車体上方に案内する矩形断面の導管である。筒部94bは、図19に示すように奥(取り付け姿勢で下側)では容積が縮小されており、底部113には、筒部94bに浸入した水を下方に排出するための水抜き孔114が形成されている。
【0070】
中央部分94fには、第1フランジ94cから第2フランジ94dに至る貫通孔(ハーネス挿通孔)が5つ設けられる。貫通孔h1、h2、h3、h4、h5のうち3つの貫通孔h1、h2、h3は、電力ハーネス91を構成する3本の電線がそれぞれ通る径に設定され、残りの二つの貫通孔h4、h5は、パルサセンサハーネス93を構成する2本の電線がそれぞれ通る径に設定される。
【0071】
グロメット94の中央部分94fに形成された外周溝94eは、ケース本体4Aと蓋部4Bとの合わせ面に合致する面115を除いた部分に形成され、蓋部4Bの、前記凹部103の内周縁の形状に対応する。したがって、前記中央部分94fのうち、前記外周溝94eが形成されていない面115と、壁部94aの面116とで、蓋部4Bをケース本体4Aから区切っている。そして、グロメット94の取り付け状態では、第1フランジ94cと第2フランジ94dとによって凹部103の縁がクランクケース4の内外面から挟まれる(図11参照)。
【符号の説明】
【0072】
1…自動二輪車、 2…エンジン、 3…車体フレーム、 4…クランクケース、 4A…ケース本体、 4B…蓋部、 5…ACジェネレータ(発電機)、 6…クランク軸、 91…電力ハーネス、 93…パルサセンサハーネス、94…グロメット、 94a…壁部(ガイド部)、 94b…筒部、 94f…中央部分、 106…区画壁
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用エンジン駆動型発電装置に関するものであり、特に、クランクケース内に収容された発電機から外側に引き出されるハーネスの取り回し構造が改良されたエンジン駆動型発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されるエンジンで駆動されるエンジン駆動型発電機が知られている。一般にエンジン駆動型発電機は、エンジンのクランクケースに収容され、発電出力やセンサ出力をクランクケースから外側に取り出すための電線はまとめられてハーネスとして配索される。このハーネスを貫通させるためクランクケースに設けられる導出孔のシールとしてゴム製のグロメットが用いられるのが一般的である。例えば、特許文献1に記載されたハーネスのシール構造では、本体部と蓋部とからなる分割タイプのクランクケースの、本体部と蓋部との合わせ面に凹部を形成してハーネスの導出口とし、この導出口にグロメットを嵌合装着している。ハーネスはこのグロメットによってシールされた状態でクランクケース内から外部へ導出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−210854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている従来の構造においてクランクケース内から外側に引き出されたハーネスは、グロメットが装着されている位置から所望の方向に取り回される。したがって、クランクケース内でのハーネスの取り回しによっては、クランクケース側からグロメットにハーネスを通す前で、該ハーネスが大きい半径で屈曲させられ、クランクケースからはみ出すことがある。そうすると、クランクケースの本体部と蓋部との合わせ作業時に、屈曲してクランクケースからはみ出しているハーネスが合わせ面に干渉して円滑な作業を妨げることがあった。
【0005】
本発明の目的は、上記課題を解消し、分割タイプのクランクケースの合わせ面にハーネスが干渉することを防ぎ、クランクケースの組み立て作業性を向上させ、同時にハーネスの保護効果を高めることができる車両用エンジン駆動型発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための本発明は、ケース本体と該ケース本体に結合される蓋部とを備え、前記ケース本体および蓋部の一方側に発電機を収容するクランクケースと、前記ケース本体と蓋部との合わせ面を含む位置に設けられていて、前記発電機に接続されるハーネスをクランクケースから外側へ導出するためのグロメット(94)とを有する車両用エンジン駆動型発電装置において、前記グロメットが、前記クランクケースの内側へ延びて前記ハーネスを該グロメットに設けられるハーネス挿通孔に案内するガイド部を有し、前記ガイド部が、前記ハーネスを前記ケース本体と蓋部との合わせ面よりも前記一方側に位置させて配置されている点に第1の特徴がある。
【0007】
また、本発明は、前記ガイド部が、前記グロメットにおいて前記ハーネス挿通孔が設けられる面に板状リブとして立設されている点に第2の特徴がある。
【0008】
また、本発明は、前記グロメットのガイド部が、前記ケース本体と蓋部との合わせ面に略一致させた面を有している点に第3の特徴がある。
【0009】
また、本発明は、前記グロメットのハーネス挿通孔が、前記ハーネスを、前記クランクケースの外側に導出し、かつ上方に案内するように設けられており、前記グロメットには、前記ガイド部に対して上側に一体に形成された補強壁が設けられている点に第4の特徴がある。
【0010】
また、本発明は、前記クランクケースには、前記グロメットの取り付け部の上方に、前記クランクケースの内部を区画する区画壁が形成され、前記グロメットの前記ガイド部の先端部を、前記区画壁に近接させた点に第5の特徴がある。
【0011】
また、本発明は、前記グロメットが、前記ハーネス挿通孔に連通している導管であって前記ハーネスをクランクケースから外側に導出する筒部を有し、前記筒部の車幅方向外側が、前記クランクケースの後方に位置するとともに、エンジンの出力を駆動輪に伝達する駆動スプロケットのカバーで覆われている点に第6の特徴がある。
【0012】
また、本発明は、前記クランクケースが、前記ケース本体と蓋部との合わせ面から一方側に切り欠かれた凹部を有し、前記グロメットが、前記凹部の内周縁に対応する外周溝と、該外周溝を挟んで対向するフランジ部と、前記外周溝が間欠している部分であって前記ガイド部の前記面と整列する面とからなる中央部分とを有している点に第7の特徴がある。
【0013】
また、本発明は、前記ハーネス挿通孔が、ハーネスを構成する複数の電線を個別に挿通させる複数の孔であり、前記ガイド部が形成される前記対向するフランジのうち一方から他方に向けて貫通され、前記筒部に至るように設けられている点に第8の特徴がある。
【0014】
また、本発明は、前記グロメットがゴム製である点に第9の特徴がある。さらに、本発明は、前記クランクケースの蓋部に発電機が収容されている点に第10の特徴がある。
【発明の効果】
【0015】
第1の特徴を有する本発明によれば、クランクケースの内側へ延びたガイド部によってハーネスがクランクケースの分割面(ケース本体と蓋部との合わせ面)よりも、発電機が収容される側に位置するように規制した。これにより、ケース本体へ蓋部を組み付ける作業の際に、クランクケースの合わせ面付近に配索されるハーネスが邪魔になるのを防止して作業性を向上させることができるうえ、ハーネスがクランクケースの合わせ面部分と干渉するのを防ぐことができ、ハーネス保護効果を高めることもできる。
【0016】
第2の特徴を有する本発明によれば、ハーネス挿通孔にハーネスを通す際に、板状ガイド部を基準としてハーネスの先端位置を確認しながら作業ができるので、作業性が向上できる。
【0017】
第3の特徴を有する本発明によれば、クランクケースに対するグロメットの位置決めをガイド部の面を基準に行うことができるので、位置決めが容易となって作業性が向上し、かつ、より確実にハーネスをクランクケースの合わせ面よりも蓋部側に位置させることができる。
【0018】
第4の特徴を有する本発明によれば、ハーネスを案内する上方向に補強壁を設けたので、ガイド部の補強効果を高めることができるとともに、ハーネスがクランクケースの内壁面へ干渉するのを防止する第2のガイド部として補強壁を機能させることができる。
【0019】
第5の特徴を有する本発明によれば、ガイド部が区画壁に近接していて、ハーネスがガイド部の先端部と区画壁との間から露出しないようにすることができるので、ハーネスの保護効果を高めることができる。
【0020】
第6の特徴を有する本発明によれば、グロメットのうち、クランクケースの外側に位置する部分およびハーネスをスプロケットカバーで覆うことができるので、防水・防塵性を高めることができるうえ、グロメットやハーネスの外部露出を少なくして意匠性を高めることができる。
【0021】
第7の特徴を有する本発明によれば、蓋部側に切り欠かれた凹部にグロメットの外周溝を嵌めて保持させた状態で蓋部をケース本体に組み付けることができるので、作業性向上を図ることができる。
【0022】
第8の特徴を有する本発明によれば、ハーネスとしてまとめられた電線を個々の径に応じたハーネス挿通孔に挿通するので、電線とハーネス挿通孔との緊密度を高めて、防水性・防塵性をより一層高めることができる。
【0023】
第9の特徴を有する本発明によれば、グロメットがゴム製であるので、ハーネスの保護効果と、防水・防塵の観点で高いシール性を確保することができる。第10の特徴を有する本発明によれば、蓋部に発電機が収容されたクランクケースの組み立てに際して、蓋部側の、裏側の様子が見えにくい部位にハーネス類をアッセンブリしたものであっても、組み立ての作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用エンジン駆動型発電装置を備えた自動二輪車を示す左側面図である。
【図2】自動二輪車の車体フレームの左前方から見た斜視図である
【図3】ステップステーを取り付けた車体フレームの要部を示す側面図である。
【図4】自動二輪車の要部拡大側面図である。
【図5】自動二輪車の要部拡大正面図である。
【図6】自動二輪車の要部拡大平面図である。
【図7】自動二輪車に搭載されるバッテリケースの平面図である。
【図8】図4のA−A位置での断面図である。
【図9】点火コイル取り付けステーの斜視図である。
【図10】ACジェネレータおよびその周辺部を示す自動二輪車の要部拡大左側面図である。
【図11】ACジェネレータおよびその周辺部を示す自動二輪車の要部拡大右側面図である。
【図12】図11のC−C位置での断面図である。
【図13】図11のB−B位置での断面図である。
【図14】グロメットの斜視図である。
【図15】グロメットの正面図である。
【図16】グロメットの側面図である。
【図17】グロメットの平面図である。
【図18】図15のD−D位置での断面図である。
【図19】図16のE−E位置での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る発電装置を備えた鞍乗り型車両である自動二輪車の左側面図である。図1において、自動二輪車1は、ツインプラグ方式の単気筒4サイクルエンジン2を搭載する。自動二輪車1の車体フレーム3は、ヘッドパイプ30、第1メインフレーム31、第2メインフレーム32、ダウンフレーム33、リヤフレーム34、並びにこれらフレームに接合されるガセット、ブラケット、ステー等の部材からなる。車体フレーム3の詳細は図2を参照してさらに後述する。
【0026】
エンジン2は、シリンダ20、シリンダヘッド21、およびシリンダヘッドカバー22を備え、下部にクランクケース4を備える。エンジン2は、エンジン2と一体に結合されているクランクケース4を車体フレーム3に複数個所で連結することにより車体フレーム3に保持される。クランクケース4の車体左側には、ACジェネレータ(発電機)5が設けられる。ACジェネレータ5は、回転部つまりロータがエンジン2のクランク軸6に連結されて駆動される。
【0027】
第1メインフレーム31上には、燃料ポンプ7を内蔵した燃料タンク8およびタンデムシート9が保持される。燃料タンク8とエンジン2との間にはバッテリを収容するバッテリケース10が設けられる。バッテリケース10は樹脂製であるのが望ましい。エンジン2のシリンダヘッド21の左壁には第1の点火プラグ11が設けられ、後壁には第2の点火プラグ12が設けられる。シリンダヘッドカバー22の前方(つまりシリンダヘッド21の上前方)にあって、車幅方向中央に点火コイル13が配置される。
【0028】
第1の点火プラグ11および第2の点火プラグ12は、点火コイル13に対して第1のハイテンションコード14および第2のハイテンションコード15によってそれぞれ接続される。第1のハイテンションコード14は、シリンダヘッドカバー22の左側方を通って前方に配索される。第2のハイテンションコード15はシリンダヘッドカバー22の上方を通って前方に配索される。なお、第2のハイテンションコード15は、その中間部分がバッテリケース10の底面に保持され、シリンダヘッドカバー22の上面との間で所定の距離を維持して配索される。第2のハイテンションコード15をバッテリケース10の底面に保持する構造は後述する。
【0029】
第2メインフレーム32の下端部には、スイングアーム16を上下揺動自在に支持するピボットボス17が設けられる。第2メインフレーム32は、リヤクッション18を介してスイングアーム16を懸架する。スイングアーム16の後部には、後輪WRが回転自在に軸支される。クランクケース4から車体左側に突出する減速機の出力軸19と後輪WRとの間には駆動チェーン23が架け渡される。
【0030】
エンジン2のシリンダヘッド22の前部から引き出される排気管24は、クランクケース4の下を回って車体右後方に延長される。排気管24の後端部にはマフラ25が連結される。シリンダヘッド22の後部には、スロットルボディ26を含む吸気管27が接続され、吸気管27の後端部にはエアクリーナ28が連結される。
【0031】
ヘッドパイプ30は、ステアリング軸29を回動自在に保持し、ステアリング軸29の上下にはトップブリッジ35およびボトムブリッジ36がそれぞれ結合される。トップブリッジ35およびボトムブリッジ36によって左右一対のフロントフォーク37が保持され、フロントフォーク37の下端には前輪WFが回転自在に軸支される。フロントフォーク37には、前輪WFのカバー(フロントフェンダ)38が取り付けられる。
【0032】
トップブリッジ35には、ステアリングハンドル39が固定され、ステアリングハンドル39の左右にはグリップ40およびミラー41が設けられる。トップブリッジ35およびボトムブリッジ36から前方に延びるステー42にはヘッドライト43、フロントウィンカ44およびメータ45が取り付けられる。第1メインフレーム31の後部にはリヤフェンダ46に取り付けられたテールライト47およびリヤウィンカ48が設けられる。
【0033】
ACジェネレータ5からハーネス49が上方に延びてメインハーネス50に合流される。メインハーネス50は、車体前後方向に延び、バッテリケース10内のバッテリや、ヘッドライト43、フロントウィンカ44、テールライト47、リヤウィンカ48等の灯火器やリレー等の電装部品に配線される。
【0034】
図2は、車体フレーム3の左前方から見た斜視図である。図2において、車体フレーム3は、前端部にヘッドパイプ30が配され、このヘッドパイプ30に前端部が接合されて第1メインフレーム31が車体後部側に延在する。第2メインフレーム32は、第1メインフレーム31が接合されている位置よりも下方でヘッドパイプ30に接合されて車体後方側に途中まで延びてその先が下方に湾曲して終端している。第1メインフレーム31および第2メインフレーム32は、いずれも車体左方向に張り出した左部材(パイプ)と車体右方向に張り出した右部材(パイプ)とからなる左右一対のものである。
【0035】
ダウンフレーム33は、第1メインフレーム31および第2メインフレーム32が接合されている位置の間でヘッドパイプ30に先端が接合されて下方に延在する矩形横断面のパイプ部材である。リヤフレーム34は、ダウンフレーム33と、第2メインフレーム32の垂下部分32aに先端が接合され、上後方に延びて第1メインフレーム31の後部に接合される。
【0036】
車体フレーム3は、さらに、第1メインフレーム31とリヤフレーム34との間を連結するサブフレーム51、リヤフレーム34に接合されて下後方に延在している同乗者ステップ取り付けフレーム52、エンジン2を保持するハンガプレート53、リヤクッション18の上部を保持するリヤクッションハンガプレート54を備える。また、左右の第1メインプレート31、31の間を連結するトランスプレート55、56および57が設けられる。
【0037】
ダウンフレーム33に対して車体前方側には、オイルクーラ58が取り付けられる。オイルクーラ58とクランクケース4とは図示しないパイプでオイルが循環されるように接続される。
【0038】
また、ダウンフレーム33の下端部にはガセット59の前部が結合され、ガセット58の後部はクランクケース4の前部4aに連結される。クランクケース4の後上部4bはハンガプレート53と連結される。第2メインフレーム32の垂下部分32aの下端部に形成されたピボットボス17はスイングアーム16を支持するとともに、クランクケース4の後中部4cを連結するピボット軸を支持する。さらに第2メインフレーム32には、垂下部32aの下端部から上下に延在するブラケット60が設けられ、このブラケット60にはステップステーやスタンド(図3に関して後述)が取り付けられ、ステップステーはさらにクランクケースの後下部4dに連結される。このように、エンジン2は4個所で連結されて車体フレーム3に搭載される。
【0039】
図3は、ステップステーを取り付けた車体フレーム3の要部を示す側面図である。図3において、第2メインフレーム32の垂下部32a下端に形成されたブラケット60に対してステップステー61がボルト62、62で取り付けられる。さらにステップステー61は、ボルト63によってクランクケース4側の後端部4dに設けられるボス(図示せず)に連結される。ボルト63は、車体右側に設けられるステップステー(図示せず)にまで到達する長さを有しており、車体右側でボルト63にナット(図示せず)を螺合させて、車体両側のステップステーをクランクケース4に固定させる。
【0040】
ステップステー61には、運転者用のステップ64が軸支される。また、ステップステー61には軸61aで変速レバー65が枢支される。変速レバー65は、アーム66および67、並びに変速入力軸68を連結するクランプ68aに結合されてアーム67につながる図示しないアーム(図3では変速レバー65の先端で隠れているが、図10では符号69で示す。)からなるリンク機構を介して変速入力軸68と連結される。変速入力軸68はクランクケース4内に収容される変速機の変速ドラム(図示せず)を回動させるためのものである。変速機は周知の有段変速機を採用できる。
【0041】
ブラケット60の下端部はステップステー61から下方に延長されており、その延長部60aには、軸70aによって回動自在にサイドスタンド70が支持される。サイドスタンド70とブラケット60とに立設されるピン71、72間には、引っ張りばね73が配されており、この引っ張りばね73によって、サイドスタンド70が、使用時には図示の使用位置に、非使用時には格納位置にそれぞれ付勢される。
【0042】
図4は、自動二輪車の要部拡大側面図、図5は、自動二輪車の要部拡大正面図、図6は、自動二輪車の要部拡大平面図、図7はバッテリケースの平面図である。
【0043】
図4において、バッテリケース10は、自動二輪車1に搭載した状態で、左右一対の第1メインフレーム31および左右一対の第2メインフレーム32の、それぞれの左右部材間に平面視でバッテリ70が収まるように配置される。バッテリケース10は、バッテリ120を収容する箱体から左右に張り出したウィング部10a、10aを備え、ウィング部10a、10aは、それぞれ第1メインフレーム31の上面に当接して、バッテリケース10を第1メインフレーム31の上部に支持する。
【0044】
さらに、バッテリケース10の前部10bは、前記ヘッドパイプ30に前縁が接合されるステー74にボルト75で結合される。なお、ステー74に溶接されているナット76は、バッテリケース10の上方に配置される燃料タンク8の前部を車体フレーム3に固定するのに用いられる図示しないボルトを螺合するためのものである。
【0045】
第2のハイテンションコード15の中間部分15aは、バッテリケース10の下面10cに接合されるコードハンガ77によってバッテリケース10に懸架される。第2のハイテンションコード15は、左右の第2メインフレーム32の間に配索されているので、少なくとも第2のハイテンションコード15の一部分つまりコードハンガ77に支持されている中間部分15aが第2メインフレーム32によって車幅方向左右から隠されていて車体側面視で外部への露出量が少なくなっている。なお、バッテリケース10の下面10cに接合されるコードハンガ77の平面形状は図7に示し、A−A位置での断面形状は図8に示す。
【0046】
図7に示すように、コードハンガ77は、第2のハイテンションコード15の配索位置に応じて車体幅方向中央部から左側にオフセットして配置される。第2のハイテンションコード15の配索位置に沿ってコードハンガ77を配置することによって、第2のハイテンションコード15を車体幅方向に折り曲げるような無理な力が作用するのを防止できる。
【0047】
ダウンフレーム33とシリンダヘッドカバー22との間に配置される点火コイル13は、ダウンフレーム33に保持される。矩形断面のダウンフレーム33の後面には、一つのブラケット78が接合され、ダウンフレーム33の左右側面にはブラケット79、79がそれぞれ接合される。ブラケット78、79には、それぞれナット78a、79aが溶接される。ブラケット78、79には点火コイル取り付けステー80に立設される補助部材80a、80bが対向する。補助部材80a、80bに設けられる孔にはボルト81、82が通され、ナット78a、79aに螺合して点火コイル取り付けステー80をブラケット78、79に固定する。
【0048】
点火コイル取り付けステー80をダウンフレーム33に設けたブラケット78、79に連結するようにしたので、シリンダヘッド21や第1及び第2の点火プラグ11、12の高さに合わせてダウンフレーム33に対するブラケット78、79の接合位置を変更するだけでよく、第1および第2メインフレーム31、32等からブラケットを延ばして点火コイル13を支持させるのと異なり、点火プラグ13の取り付け高さを設定しやすい。また、ブラケット78、79も小型にすることができる。
【0049】
点火コイル取り付けステー80には、車体後方側から点火コイル13を一部貫通させて車体前方側(つまりダウンフレーム側)に臨むように孔が設けられる(図9参照)。点火コイル13の一部が、点火コイル取り付けステー80から車体前方側に臨んだ位置で、点火コイル13から車体左右方向に突出しているタブ83が点火コイル取り付けステー80に当接する。この状態で、点火コイル取り付けステー80に車体前方側からボルト84を通し、タブ83に螺合させる。
【0050】
図4および図6において、エンジン2のシリンダヘッド21の左側壁に設けられる第1点火プラグ11に一端が接続される第1のハイテンションコード14の他端は、点火コイル13の一方の高圧出力端子85に接続される。一方、シリンダヘッド21の後壁に設けられる第2点火プラグ12に一端が接続される第2のハイテンションコード15の他端は、点火コイル13の他方の高圧出力端子86に接続される。第1のハイテンションコード14および第2のハイテンションコード15が接続される高圧出力端子85および86は、いずれも点火コイル13上でエンジン2のシリンダヘッドカバー22寄りに配置される。
【0051】
図5、図6、図7において、点火コイル13の右側には、電源端子87、88が突出しており、電源端子87、88に接続されるハーネス89はメインハーネス50に統合される。図5において、点火コイル13の手前、つまり車体前方側には、ダウンフレーム33に取り付けられるオイルクーラ58が配置される。
【0052】
図8は、図4のA−A位置での断面図である。図8において、コードハンガ77は、湾曲したコード支持部77aとコードハンガ77をバッテリケース10の下面10cに取り付けるためのフェース部77bとからなる。コード支持部77aは、第2のハイテンションコード15の外周に沿うように湾曲している。フェース部77bは、止めねじ90によってバッテリケース10の下面10cに取り付けるのがよいが、接着など、他の接合手段で取り付けてもよい。
【0053】
図9は、点火コイル取り付けステー80の斜視図である。点火コイル取り付けステー80は、中央に点火コイル13の少なくとも一部が貫通可能なサイズに設定された窓80wを有する環状の板材である。窓80wの上枠上に補助部材80aが立設される一方、窓80wの下枠上に補助部材80b、80bが立設される。また、窓80wの左右の枠には、保持部材80a、80bが立設された面80fの裏側(車体後方)に向けて凹んだ凹部80c、80cが形成され、この凹部80cには点火コイル13のタブ83に螺合される前記ボルト82を通す孔80hが形成される。
【0054】
図10は、ACジェネレータ5およびその周辺部を示す自動二輪車の要部拡大左側面図であり、図11は、同右側面図である。図10ではクランクケース4のうちACジェネレータ5を収容する蓋部を除去したケース本体部を主に示し、図11ではクランクケース4の蓋部の裏側を主に示している。図12は図11のC−C断面図、図13は図11のB−B断面図である。
【0055】
図10〜図13において、クランクケース4はケース本体4Aと蓋部4Bとからなる。ケース本体4Aの正面形状は、図10によって明りょうに示されており、蓋部4bの正面形状は図11によって明りょうに示されている。ケース本体4Aと蓋部4bとは、ボルト117を含む複数のボルトで互いに結合される。ケース本体4Aの端面(合わせ面F)にボルト117等を螺挿するねじ孔117aが形成され、蓋部4Bにはボルト117等を貫通するボルト孔117bが形成される。複数のねじ孔117aおよびボルト孔117bは、煩雑さを回避するため、一部にのみ符号を付している。
【0056】
ACジェネレータ5は、エンジン2のクランク軸6のうち、蓋部4B側に突出した部分に結合されて一体に回転するロータ5aと、ロータ5aと同軸に配置されてクランクケース4に固定されるステータ5bとを備える。したがって、蓋部4Bは全体として側壁と底部とを有する椀状であり、ロータ5aおよびステータ5bは、椀状の蓋部4B内に位置する(特に、図12参照)。ステータ5bに設けられる複数の磁極に巻回される巻線5cに発生する3相発電出力は出力取り出し部90に接続される電力ハーネス91でACジェネレータ5から外部に取り出される。
【0057】
ACジェネレータ5は、ロータ5aの回転角度を検出するためのパルスジェネレータ(パルサセンサ)92をロータ5aの周面に対向して設け、パルサセンサ92には、その検出出力を取り出すパルサセンサハーネス93が接続される。パルサセンサ92は、2本のボルト102を使って壁部4Bに固定される。なお、パルサセンサハーネス93は、側面視で電力ハーネス91と重なるので、図10、図11では点線で図示されている。電力ハーネス91およびパルサセンサハーネス93は両者に共通のグロメット94を通してクランクケース4の外側に取り出される。グロメット94は、例えば、ゴム製の弾性部材である。
【0058】
蓋部4Bの、ケース本体4Aとの合わせ面Fには、グロメット94の中央部分に形成される外周溝(詳細は図13等を参照して後述)に沿う形状を有する切り欠きつまり凹部103が形成され、この凹部103によってグロメット94が蓋部4Bに保持される。蓋部4Bに保持された状態では、グロメット94がケース本体4A側にははみ出さないようにグロメット94および凹部103の形状が決定されている。つまり、グロメット94はケース本体4Aと蓋部4Bとの合わせ面のうち、蓋部4B側に位置している。
【0059】
クランクケース4の側面にはオイル圧センサ95が取り付けられる。このオイル圧センサ95には、その出力を取り出すための油圧センサハーネス96が接続される。オイル圧センサ95はクランクケース4の下前方に位置しており、油圧センサハーネス96は、そこからクランクケース4の下側外周に沿って後方に回り込み、スプロケットカバー97の前壁との間を通って上方に引き出される。スプロケットカバー97は、エンジン2の出力軸98に連結される駆動スプロケット99を車体左側方から覆うものである。
【0060】
グロメット94を通してクランクケース4から外側に引き出された電力ハーネス91とパルサセンサハーネス93は、グロメット94のすぐ近くで油圧センサハーネス96とともにより太いハーネス101として一つにまとめられて上方に延長され、車体の前後方向に延在する前記メインハーネス50に統合される。
【0061】
グロメット94には、ケース本体4Aと蓋部4Bとの合わせ面側に沿って位置する壁部(ガイド部)94aが車体前方側つまり蓋部4Bの内側に向けて設けられ、電力ハーネス91とパルサセンサハーネス93とが、ケース本体4A側に張り出さないようにしている。また、壁部94aに対して上方に直交して補強壁94gが一体に形成されている(図13参照)。
【0062】
一方、グロメット94には、蓋部4Bから車体後方側つまり蓋部4Bの外側に向けて、グロメット94から引き出された電力ハーネス91およびパルサセンサハーネス93を上方に案内する筒部94bが設けられる。
【0063】
スプロケットカバー97は、駆動チェーン23を覆う前壁97aからさらに車体前方に張り出した前部分97bを有している。前記グロメット94の筒部94bと、グロメット94を通して引き出された電力ハーネス91およびパルサセンサハーネス93と油圧センサハーネス96との統合部104は、この前部分97bによって、車体左側から覆われている(図11参照)。
【0064】
さらに、蓋部4Bは、グロメット94が保持される凹部103の上方において、側壁105から蓋部4Bの内側に向けて張り出した区画壁106を有している。ケース本体4A側には蓋部4Bに設けられた区画壁106と対になる本体側区画壁106aが設けられる。グロメット94は、壁部94aの上部および補強壁94gが、区画壁106、106aの、蓋部4Bの内側寄り先端に近接するように形状および/または配置が設定される。また、図11、図13から理解できるように、補強壁94gは、ハーネス91、93の上部に配置されるので、ハーネス91、93が区画壁106に干渉しないように作用することができる。
【0065】
なお、クランクケース4のケース本体4Aには、エンジン2を始動させるためのスタータモータ107が取り付けられ、このスタータモータ107の出力は、出力ピニオン108と、複数の歯車からなる歯車列109およびクランク軸6に結合される歯車110(図12参照)等からなる歯車列を介してクランク軸6に伝達される。
【0066】
前記区画壁106、106aがあることにより、グロメット94に通される電力ハーネス91およびパルサセンサハーネス93は、上方に大きく湾曲するのが防止される。つまり、電力ハーネス91およびパルサセンサハーネス93が、上方の歯車列109側にはみ出さないよう蓋部4B側に位置規制することができる。
【0067】
なお、図11において、符号2aはエンジン2のピストン、符号2bはクランク、符号2cはコンロッド、符号2dはカムチェーン、符号2eはカムチェーンのスライダを示すが、これらは周知のものであるので詳細な説明は省略する。
【0068】
図14はグロメット94の斜視図、図15は正面図、図16は側面図、図17は平面図、図18は図15のD−D断面図、図19は図16のE−E断面図である。グロメット94は第1フランジ94cおよび第2フランジ94dと、第1フランジ94cおよび第2フランジ94dに挟まれた外周溝94eとからなる中央部分94fを有する。第1フランジ94c上において、蓋部4Bへの装着姿勢でクランクケース4の蓋部4B側に指向して立設されている壁部94aには、該壁部94aの面111に直交し、かつ第1フランジ94cの面112に対して所定の角度αを有して形成される補強壁94gが形成される。
【0069】
第2フランジ94dには、筒部94bが設けられる。筒部94bは蓋部4Bの外側に引き出される電力ハーネス91およびパルサセンサハーネス93を車体上方に案内する矩形断面の導管である。筒部94bは、図19に示すように奥(取り付け姿勢で下側)では容積が縮小されており、底部113には、筒部94bに浸入した水を下方に排出するための水抜き孔114が形成されている。
【0070】
中央部分94fには、第1フランジ94cから第2フランジ94dに至る貫通孔(ハーネス挿通孔)が5つ設けられる。貫通孔h1、h2、h3、h4、h5のうち3つの貫通孔h1、h2、h3は、電力ハーネス91を構成する3本の電線がそれぞれ通る径に設定され、残りの二つの貫通孔h4、h5は、パルサセンサハーネス93を構成する2本の電線がそれぞれ通る径に設定される。
【0071】
グロメット94の中央部分94fに形成された外周溝94eは、ケース本体4Aと蓋部4Bとの合わせ面に合致する面115を除いた部分に形成され、蓋部4Bの、前記凹部103の内周縁の形状に対応する。したがって、前記中央部分94fのうち、前記外周溝94eが形成されていない面115と、壁部94aの面116とで、蓋部4Bをケース本体4Aから区切っている。そして、グロメット94の取り付け状態では、第1フランジ94cと第2フランジ94dとによって凹部103の縁がクランクケース4の内外面から挟まれる(図11参照)。
【符号の説明】
【0072】
1…自動二輪車、 2…エンジン、 3…車体フレーム、 4…クランクケース、 4A…ケース本体、 4B…蓋部、 5…ACジェネレータ(発電機)、 6…クランク軸、 91…電力ハーネス、 93…パルサセンサハーネス、94…グロメット、 94a…壁部(ガイド部)、 94b…筒部、 94f…中央部分、 106…区画壁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース本体(4A)と該ケース本体(4A)に結合される蓋部(4B)とを備え、前記ケース本体(4A)および蓋部(4B)の一方側に発電機(5)を収容するクランクケース(4)と、前記ケース本体(4A)と蓋部(4B)との合わせ面(F)を含む位置に設けられていて、前記発電機(5)に接続されるハーネス(91、93)をクランクケース(4)から外側へ導出するためのグロメット(94)とを有する車両用エンジン駆動型発電装置において、
前記グロメット(94)が、前記クランクケース(4)の内側へ延びて前記ハーネス(91、93)を該グロメット(94)に設けられるハーネス挿通孔(h1〜h5)に案内するガイド部(94a)を有し、
前記ガイド部(94a)が、前記ハーネス(91、93)を前記ケース本体(4A)と蓋部(4B)との合わせ面(F)よりも前記一方側に位置させて配置されていることを特徴とする車両用エンジン駆動型発電装置。
【請求項2】
前記ガイド部(94a)が、前記グロメット(94)において前記ハーネス挿通孔(h1〜h5)が設けられる面に板状リブとして立設されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用エンジン駆動型発電装置。
【請求項3】
前記グロメット(94)のガイド部(94a)が、前記ケース本体(4A)と蓋部(4B)との合わせ面(F)に略一致させた面(116)を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用エンジン駆動型発電装置。
【請求項4】
前記グロメット(94)のハーネス挿通孔(h1〜h5)が、前記ハーネス(91、93)を、前記クランクケース(4)の外側に導出し、かつ上方に案内するように設けられ、
前記グロメット(94)には、前記ガイド部(94a)に対して上側に一体に形成された補強壁(94g)が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の車両用エンジン駆動型発電装置。
【請求項5】
前記クランクケース(4)には、前記グロメット(94)の取り付け部(103)の上方に、前記クランクケース(4)の内部を区画する区画壁(106)が形成され、前記グロメット(94)の前記ガイド部(94a)の先端部を、前記区画壁に近接させたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車両用エンジン駆動型発電装置。
【請求項6】
前記グロメット(94)が、前記ハーネス挿通孔(h1〜h5)に連通している導管であって前記ハーネス(91、93)をクランクケース(4)から外側に導出する筒部(94b)を有し、
前記筒部(94b)の車幅方向外側が、前記クランクケース(4)の後方に位置するとともに、エンジン(2)の出力を駆動輪(WR)に伝達する駆動スプロケット(99)のカバー(97)で覆われていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の車両用エンジン駆動型発電装置。
【請求項7】
前記クランクケース(4)が、前記ケース本体(4A)と蓋部(4B)との合わせ面(F)から一方側に切り欠かれた凹部(103)を有し、
前記グロメット(94)が、前記凹部(103)の内周縁に対応する外周溝(94e)と、該外周溝(94e)を挟んで対向するフランジ部(94c、94d)と、前記外周溝(94e)が間欠している部分であって前記ガイド部(94a)の前記外面(116)と整列する面(115)とからなる中央部分(94f)とを有していることを特徴とする請求項3に記載の車両用エンジン駆動型発電装置。
【請求項8】
前記ハーネス挿通孔(h1〜h5)が、ハーネス(91、93)を構成する複数の電線を個別に挿通させる複数の孔であり、前記ガイド部(94a)が形成された前記対向するフランジ(94c、94d)のうち一方から他方に向けて貫通され、前記筒部(94b)に至るように設けられていることを特徴とする請求項に7記載の車両用エンジン駆動型発電装置。
【請求項9】
前記グロメット(94)がゴム製であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の車両用エンジン駆動型発電装置。
【請求項10】
前記クランクケース(4)の蓋部(4B)に発電機(5)が収容されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の車両用エンジン駆動型発電装置。
【請求項1】
ケース本体(4A)と該ケース本体(4A)に結合される蓋部(4B)とを備え、前記ケース本体(4A)および蓋部(4B)の一方側に発電機(5)を収容するクランクケース(4)と、前記ケース本体(4A)と蓋部(4B)との合わせ面(F)を含む位置に設けられていて、前記発電機(5)に接続されるハーネス(91、93)をクランクケース(4)から外側へ導出するためのグロメット(94)とを有する車両用エンジン駆動型発電装置において、
前記グロメット(94)が、前記クランクケース(4)の内側へ延びて前記ハーネス(91、93)を該グロメット(94)に設けられるハーネス挿通孔(h1〜h5)に案内するガイド部(94a)を有し、
前記ガイド部(94a)が、前記ハーネス(91、93)を前記ケース本体(4A)と蓋部(4B)との合わせ面(F)よりも前記一方側に位置させて配置されていることを特徴とする車両用エンジン駆動型発電装置。
【請求項2】
前記ガイド部(94a)が、前記グロメット(94)において前記ハーネス挿通孔(h1〜h5)が設けられる面に板状リブとして立設されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用エンジン駆動型発電装置。
【請求項3】
前記グロメット(94)のガイド部(94a)が、前記ケース本体(4A)と蓋部(4B)との合わせ面(F)に略一致させた面(116)を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用エンジン駆動型発電装置。
【請求項4】
前記グロメット(94)のハーネス挿通孔(h1〜h5)が、前記ハーネス(91、93)を、前記クランクケース(4)の外側に導出し、かつ上方に案内するように設けられ、
前記グロメット(94)には、前記ガイド部(94a)に対して上側に一体に形成された補強壁(94g)が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の車両用エンジン駆動型発電装置。
【請求項5】
前記クランクケース(4)には、前記グロメット(94)の取り付け部(103)の上方に、前記クランクケース(4)の内部を区画する区画壁(106)が形成され、前記グロメット(94)の前記ガイド部(94a)の先端部を、前記区画壁に近接させたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車両用エンジン駆動型発電装置。
【請求項6】
前記グロメット(94)が、前記ハーネス挿通孔(h1〜h5)に連通している導管であって前記ハーネス(91、93)をクランクケース(4)から外側に導出する筒部(94b)を有し、
前記筒部(94b)の車幅方向外側が、前記クランクケース(4)の後方に位置するとともに、エンジン(2)の出力を駆動輪(WR)に伝達する駆動スプロケット(99)のカバー(97)で覆われていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の車両用エンジン駆動型発電装置。
【請求項7】
前記クランクケース(4)が、前記ケース本体(4A)と蓋部(4B)との合わせ面(F)から一方側に切り欠かれた凹部(103)を有し、
前記グロメット(94)が、前記凹部(103)の内周縁に対応する外周溝(94e)と、該外周溝(94e)を挟んで対向するフランジ部(94c、94d)と、前記外周溝(94e)が間欠している部分であって前記ガイド部(94a)の前記外面(116)と整列する面(115)とからなる中央部分(94f)とを有していることを特徴とする請求項3に記載の車両用エンジン駆動型発電装置。
【請求項8】
前記ハーネス挿通孔(h1〜h5)が、ハーネス(91、93)を構成する複数の電線を個別に挿通させる複数の孔であり、前記ガイド部(94a)が形成された前記対向するフランジ(94c、94d)のうち一方から他方に向けて貫通され、前記筒部(94b)に至るように設けられていることを特徴とする請求項に7記載の車両用エンジン駆動型発電装置。
【請求項9】
前記グロメット(94)がゴム製であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の車両用エンジン駆動型発電装置。
【請求項10】
前記クランクケース(4)の蓋部(4B)に発電機(5)が収容されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の車両用エンジン駆動型発電装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−194969(P2011−194969A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62422(P2010−62422)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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