説明

車両用ガラスアンテナ及び車両用窓ガラス

【課題】狭面積でも充分なアンテナ利得の得られる車両用ガラスアンテナを提供する。
【解決手段】窓ガラス15に設けられたアンテナ側給電部11と、アンテナ側給電部11の一部を所定間隔離間して囲むように形成されたアース側給電部12とを備えた車両用ガラスアンテナにおいて、アンテナ側給電部11に接続された少なくとも一本以上のアンテナ導体13と、アース側給電部12に接続された少なくとも一本以上のアース導体14と、を有し、アース導体14は、前記窓ガラス15を車両に固定するためのフランジに沿って形成されたフランジ近接エレメント19を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ガラスアンテナ及び車両用窓ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
モノポール型のガラスアンテナで一般的な構成は、窓ガラスにアンテナ導体を設け、アンテナ導体の給電部と車体側に備えられたアンプとをAV線で接続し、アンプ側で車体等を接地させるという構成である。しかし、地上デジタルテレビ放送を受信する場合、電波の波長が短いためAV線の影響が無視できなくなり、チューニングが難しいという問題があった。
【0003】
上記問題を解決するために、従来、窓ガラスにグランドパターンを設けて、アンテナ導体と同軸ケーブルの内側導体である芯部とを接続させ、同軸ケーブルの外部導体である網線とグランドパターンとを接続させることによって、アンテナ導体とアンプとの間で信号の減衰を低減させることが知られている(例えば、特許文献1、2)。
【特許文献1】特開平06−209205号公報
【特許文献2】特開2001−136010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車用の側部窓ガラス等の狭い面積の窓ガラスにガラスアンテナを設ける場合、美観等を考慮するとグランドパターンの面積は大きくとれない。しかしながら、特許文献1、2に記載されているガラスアンテナでは、車体等の接地と同様の効果を得るためにグランドパターンはある程度の面積が必要となるため、狭い面積の窓ガラスには不適である。即ち、ガラスアンテナを狭い面積の窓ガラスに設置する場合に、美観を損なうことなく、小面積であっても充分なアンテナ利得の得られる車両用ガラスアンテナが求められている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、狭い領域に設置されるアンテナであっても、充分なアンテナ利得の得られる車両用ガラスアンテナを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用ガラスアンテナは、窓ガラスに設けられたアンテナ側給電部と、該アンテナ側給電部の一部を所定間隔離間して囲むように形成されたアース側給電部とを備えた車両用ガラスアンテナにおいて、前記アンテナ側給電部に接続された少なくとも一本以上のアンテナ導体と、前記アース側給電部に接続された少なくとも一本以上のアース導体と、を有し、前記アース導体は、前記窓ガラスを車両に固定するためのフランジに沿って形成されたフランジ近接エレメントを有していることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の車両用窓ガラスは、前記記載の車両用ガラスアンテナを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、狭い面積であっても、充分なアンテナ利得の得られる車両用ガラスアンテナを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る実施の形態における車両用ガラスアンテナについて、図1及び図2に基づき説明する。図1は、本実施の形態における車両用ガラスアンテナの構成図であり、図2は、本発明に係る他の実施の形態における車両用ガラスアンテナの構成図である。
【0010】
本実施の形態における窓ガラス15は、自動車用のサイドガラス等の車体の側部に固定される。しかし、本発明は、サイド窓ガラスに限定されず、フロントガラス、リアガラス、その他車体に固定される窓であればよい。
【0011】
本実施の形態における車両用ガラスアンテナは、車両用の窓ガラス15に形成されるものであって、正極側のアンテナ側給電部11と、負極側のアース側給電部12と、アンテナ側給電部11から延びるアンテナ導体13と、アース側給電部12から延びるアース導体14により構成されている。
【0012】
アンテナ側給電部11は、正方形又は長方形の形状の導電性を有するパターンにより形成されている。また、アース側給電部12は、アンテナ側給電部11をコの字型に囲むように離間して形成されており、具体的には、アース側給電部12は、アンテナ側給電部11の正方形又は長方形の四辺のうち、三辺を囲むように導電性を有するパターンにより形成されている。
【0013】
アンテナ側給電部11及びアース側給電部12は、不図示の同軸ケーブルにより受信装置と接続されている。アンテナ側給電部11は同軸ケーブルの内部導体である芯部と電気的に接続され、アース側給電部12は、同軸ケーブルの外部導体である網線と電気的に接続される。
【0014】
同軸ケーブルの先端に電気的に接続するためのコネクタのオス型を接続し、コネクタのメス型をアンテナ側給電部11とアース側給電部12に実装する構成にすることによって、同軸ケーブルをアンテナ側給電部11とアース側給電部12に取り付けしやすくなる。尚、実装されるコネクタに受信信号を増幅するための増幅回路が内蔵されていてもよい。
【0015】
アンテナ側給電部11及びアース側給電部12の形状は、取り付けられる同軸ケーブルの先端形状又はコネクタ等の接続部材の形状(例えば、コネクタの実装面や接触端子の形状)に応じて定められる。例えば、正方形、長方形等の方形状や多角形状が実装上好ましい。尚、円、楕円等の円状でもよく、少なくともアンテナ側給電部11からアンテナ導体13が延伸されている部分を除き、アンテナ側給電部11をアース側給電部12が取り囲むように形成されていればよい。
【0016】
図1に示すフランジ端部16は、窓ガラス15を車両に取り付けた際に、車体の窓枠であるフランジの端部が位置する線であり、フランジ端部16より外側は窓ガラス15とフランジとが重なっていることになる。アース側給電部12は、フランジ端部16に沿うように形成されており、アンテナ側給電部11とアース側給電部12とからなる領域は全体的に略長方形状に形成されている。
【0017】
また、窓ガラス15の周縁に黒セラと称される黒色セラミックペーストの焼成体が形成されており、図1の点線で示す黒セラ端部17は黒セラの境界線である。黒セラは窓ガラス15とフランジとの接着部を隠蔽し、接着剤の劣化や見栄えを改善する役割がある。この黒セラが設けられた領域にアンテナ側給電部11とアース側給電部12とを形成することが、車外からの見栄えの点で好ましい。また、黒セラが設けられる領域に、アンテナ導体13及びアース導体14の一部又は全部を形成することが同様に車外からの見栄えの点で好ましい。図1において、本実施の形態における車両用ガラスアンテナは、車外からは、細い導体の線条のみが視認されるため、デザイン的にも好ましい。
【0018】
アンテナ側給電部11からは、アース側給電部12に囲まれていない一辺より、アンテナ導体13が延伸している。アンテナ導体13は、窓ガラス15の開口部(フランジ端部16の内側)の上下方向における中央付近まで黒セラ端部17に沿って延伸し、窓ガラス15の中央部に向かって水平に伸びる水平エレメント18を有している。また、アース側給電部12からは、アース導体14が延伸している。アース導体14は、フランジ端部16の内側に沿って延び、フランジに近接しているフランジ近接エレメント19を有している。
【0019】
本発明においては、アンテナ導体13及びアース導体14等の車両用ガラスアンテナを形成する各々の部分の寸法は、車両用ガラスアンテナに受信させたい所望の周波数の中心周波数における空気中の波長λを考慮して決定することが好ましい。この場合、ガラス波長短縮率kを考慮し、窓ガラス15上での波長λgは、k×λとなる。本実施の形態においては、ガラス波長短縮率kの値は、0.64とした。
【0020】
本実施の形態における車両用ガラスアンテナにおいては、図1に示すアース側給電部12におけるフランジ端部16に沿った辺の長さAは、0.2・λg以上、0.42・λg以下であることが、アンテナ利得を向上させる点から好ましく、さらに好ましくは、0.2・λg以上、0.22・λg以下である。
【0021】
本実施の形態における車両用ガラスアンテナが、地上波デジタルテレビ放送を受信するためのものである場合、地上波デジタルテレビ放送帯は470MHz〜770MHzであり、この中心周波数は620MHzである。
【0022】
この際、アース側給電部12におけるフランジに沿った辺の長さAは、60mm以上、130mm以下であることが、アンテナ利得を向上させる点から好ましく、さらに好ましくは、60mm以上、70mm以下である。
【0023】
また、フランジ近接エレメント19の長さBは、(1/8)・λg以上、(3/4)・λg以下であることが、アンテナ利得を向上させる点から好ましく、さらに好ましくは、(1/4)・λg以上、(2/3)・λg以下である。
【0024】
本実施の形態における車両用ガラスアンテナが、地上波デジタルテレビ放送を受信するためのものである場合には、アース導体14におけるフランジ近接エレメント19の長さBは、35mm以上、240mm以下であることが、アンテナ利得を向上させる点から好ましく、さらに好ましくは、70mm以上、200mm以下である。
【0025】
また、フランジ端部16とフランジ近接エレメント19との距離Cの平均値は、15mm以下であることが、アンテナ利得を向上させる点から好ましい。また、窓ガラス15は、黒セラが形成されている領域で接着剤を介してフランジに固定されているため、フランジから窓ガラス15は浮いた状態となっている。よって、平面視で見て、フランジ近接エレメント19とフランジとがオーバーラップしてもよい。
【0026】
また、アンテナ側給電部11及びアース側給電部12と、フランジ端部16との距離の平均値は、−25mm以上、−5mm以下であることが、アンテナ利得を向上させる上で好ましい。ここで、−(マイナス)とは、平面視において、フランジがアンテナ側給電部11及びアース側給電部12にオーバーラップしている距離を意味している。即ち、言い換えれば、5mm以上、25mm以下の範囲でフランジとアンテナ側給電部11及びアース側給電部12とがオーバーラップしていることが好ましい。
【0027】
また、アンテナ導体13の全長は、(1/6)・λg以上、(5/6)・λg以下であることが、実装上の問題と、アンテナ利得を向上させる点で好ましい。さらに好ましくは、(1/5)・λg以上、(1/2)・λg以下である。アンテナ導体13の全長とは、ここでは、アンテナ側給電部11からアンテナ導体13の先端までの最長距離をいう。図1においては、アンテナ側給電部11との接続点から水平エレメント18の先端までの距離である。
【0028】
本実施の形態における車両用ガラスアンテナが、地上波デジタルテレビ放送を受信するためのものである場合には、アンテナ導体13の全長は、50mm以上、250mm以下であることが、実装上の問題と、アンテナ利得を向上させる上で好ましい。さらに好ましくは、60mm以上、140mm以下である。
【0029】
また、窓ガラス15としての機能的観点と美的観点から、アンテナ導体13及びアース導体14の導体幅は、アンテナとしての機能を有する範囲内において細く形成されている。つまり、本実施の形態における車両用ガラスアンテナにおいては、アンテナ導体13及びアース導体14の幅は、0.2mm以上、1mm以下で形成されている。
【0030】
尚、本実施の形態における車両用ガラスアンテナは、地上波デジタルテレビ放送に用いられる周波数帯以外の周波数帯域においても適用させて用いることが可能である。
【0031】
上述した車両用ガラスアンテナには、補助アンテナ導体は付設されてはいない。しかしながら、これに限定されることなくインピーダンスマッチング、位相調整及び指向性調整等のために、アンテナエレメントに接続導体を介して又は介することなく、T字状、ループ状等の補助アンテナエレメントが付設されていてもよい。
【0032】
また、図2に示すように、アンテナ導体13においては、水平エレメント18とは別にフランジ端部16に沿った延伸エレメント20を有していてもよい。また、アース導体14は、フランジ近接エレメント19から水平方向に延伸する水平延伸エレメント21を有していてもよい。更に、アース側給電部12からは、アース導体14とは異なる別のアース補助導体22を設けてもよい。また図示はしないがアンテナ側給電部11からアンテナ導体13とは別のアンテナ補助導体を設けてもよい。
【0033】
次に、本実施の形態における車両用ガラスアンテナの製造方法について説明する。本実施の形態における車両用ガラスアンテナは、窓ガラスとなるガラス板の室内側に銀ペースト等の導電性金属を含有するペーストをスクリーン印刷等の方法により印刷し、その後焼成させることにより形成される。しかし、この形成方法に限定されることなく、銅線や銅箔等の導電性物質を直接又は樹脂シートに形成した後、窓ガラスの車両側表面又は車外側表面に接着剤等により貼着してもよい。窓ガラスが合わせガラスであれば、窓ガラスの内部にこれらを封入してもよい。
【0034】
本実施の形態における車両用ガラスアンテナを形成された窓ガラスは、自動車等の車体に設けられた窓枠フランジに接着剤等で固定される。フランジは金属材料により形成されており、車両に対する窓ガラスの取り付け角度は、水平方向に対し、15〜90°、更には、30〜90°であることが好ましい。
【0035】
本実施の形態においては、車両用ガラスアンテナを車体の一方の側部のサイドガラスに形成した場合について説明したが、車体の両方の側部のサイドガラスに本発明に係る車両用ガラスアンテナを設けてもよい。この場合、ダイバーシティ受信となり、指向性が改善され受信特性が向上し好ましい。
【実施例】
【0036】
〔例1〕(アース側給電部12の形状)
図1に示す構成の車両用ガラスアンテナにおいて、アース側給電部12のフランジ端部16に沿った部分の長さAを変化させて、アンテナ利得を測定した。
【0037】
具体的な車両用ガラスアンテナの構成としては、アンテナ側給電部11は、一辺が12mmの正方形のパターンにより形成されており、アース側給電部12は、アンテナ側給電部11の三辺をコの字状に囲むように離間して形成されている。アース側給電部12に囲まれていないアンテナ側給電部11の辺からアンテナ導体13が全長110mmの長さで延びて形成されている。
【0038】
アンテナ側給電部11とアース側給電部12との離間の幅は、アンテナ側給電部11のアース側給電部12の端子を設置しない(アース側給電部12のコの字状の幅が狭い)側の2辺では2mmであり、アース側給電部12の端子を設置する(アース側給電部12の幅が広い)側では5mmである。アース側給電部12のコの字状のアース側給電部12の端子を設置しない2辺の幅は、幅2mmである。アース側給電部12からは、アース導体14が全長50mmの長さで延びて形成されている。アース導体14は、フランジ端部16から5mm内側の位置に沿ったフランジ近接エレメント19を有している。本実施例では、アース導体14はすべてフランジ近接エレメント19で形成されている。尚、アース側給電部12もフランジ端部16から5mm内側に離間して形成されている。
【0039】
上記の車両用ガラスアンテナにおいて、フランジ端部16に沿ったアース側給電部12の長さAを60〜140mmまで、10mm毎に変化させて、車両全周の平均利得を測定した。アンテナ利得の測定は、自動車に対して電波を放射し、角度5°毎に自動車を360°回転させて測定した。電波は水平偏波であり、周波数を470〜770MHzの範囲で3MHz毎に変化させた。電波の発信位置とアンテナ導体13との仰角は水平方向(地面と平行な面を仰角=0°、天頂方向を仰角=90°とする場合、仰角=0°の方向)で測定した。測定した結果は、アース側給電部12の長さA毎に平均値を算出した。
【0040】
上記結果を図3に示す。図3は、アース側給電部12の長さAが、110mmのときの利得を基準アンテナ利得として標準化した結果である。この図より、アース側給電部12の長さAが、60〜130mmにおいて、良好なアンテナ利得が得られていることがわかる。また、小型化した上に同等の利得が得られる60〜70mmがさらに好ましい。
【0041】
また、地上デジタルテレビ放送帯の中心周波数を620MHzとしたときの波長で換算した場合、ガラス波長短縮率kを考慮すると、上記のアース側給電部12の長さAは、好ましくは、0.2・λg〜0.42・λgであり、より好ましくは、0.2・λg〜0.22・λgとなる。
【0042】
〔例2〕(フランジ近接エレメント19の長さ)
次に、図1に示す構成の車両用ガラスアンテナにおいて、アース導体14の長さを変化させて、アンテナ利得を測定した。具体的な車両用ガラスアンテナの構成としては、フランジ端部16に沿ったアース側給電部12の長さAを62mmに固定した以外は例1と同じである。
【0043】
上記の車両用ガラスアンテナにおいて、アース導体14のフランジ近接エレメント19の長さBを0(アース導体13を設けない)〜308mmまで、0〜240mmまでは、10mm毎に変化させ、それ以降は20mm毎に変化させて、308mmを最大値として、車両全周の平均利得を測定した。測定方法は例1と同じである。測定した結果は、フランジ近接エレメントの長さB毎に平均値を算出した。
【0044】
上記結果を図4に示す。図4は、フランジ近接エレメントの長さBが220mmのときの利得を基準アンテナ利得として標準化した結果である。この図より、フランジ近接エレメントの長さBが、35〜240mmにおいて、良好なアンテナ利得が得られていることがわかる。さらに70〜200mmが好ましい。
【0045】
また、地上デジタルテレビ放送帯の中心周波数を620MHzとしたときの波長で換算した場合、ガラス波長短縮率kを考慮すると、上記のフランジ近接エレメントの長さBは、(1/8)・λg〜(3/4)・λgであり、より好ましくは、(1/4)・λg〜(2/3)・λgとなる。
【0046】
〔例3〕(フランジ端部16とフランジ近接エレメント19との距離)
次に、図1に示す構成の車両用ガラスアンテナにおいて、アース側給電部12とアース導体14(フランジ近接エレメント19)との接続部をアース側給電部12のフランジ端部16側の角部から窓ガラス15の中央に向かう方向にスライドさせることにより、フランジ端部16とフランジ近接エレメント19との距離Cを変化させて、アンテナ利得を測定した。具体的なアンテナの構成としては、上記の他、フランジ端部16に沿ったアース側給電部12の長さAを62mmに固定した以外は例1と同じである。
【0047】
上記の車両用ガラスアンテナにおいて、フランジ端部16とフランジ近接エレメント19との距離Cを5〜20mmまで5mm毎に変化させて、車両全周の平均利得を測定した。測定方法は例1と同じである。測定した結果は、フランジ端部16とフランジ近接エレメント19との距離C毎に平均値を算出した。
【0048】
上記結果を図5に示す。図5は、フランジ端部16とフランジ近接エレメント19との距離Cが5mmのときの利得を基準アンテナ利得として標準化した結果である。この図より、フランジ端部16とフランジ近接エレメント19との距離Cが、15mm以下において、良好なアンテナ利得が得られていることがわかる。
【0049】
〔例4〕(フランジと給電部との距離)
次に、図2に示す構成のガラスアンテナにおいて、フランジ端部16と、アンテナ側給電部11及びアース側給電部12との距離を変化させて、アンテナ利得を測定した。具体的な車両用ガラスアンテナの構成としては、アンテナ側給電部11は、一辺が12mmの正方形のパターンにより形成されており、アース側給電部12は、アンテナ側給電部11の三辺をコの字状に囲むように離間して形成されている。アース側給電部12に囲まれていないアンテナ側給電部11の辺からアンテナ導体13が延びて形成されている。アンテナ側給電部11から47mmの地点で、水平エレメント18と延伸エレメント20とに分岐している。尚、水平エレメント18は140mm、延伸エレメント20は30mmで形成されている。
【0050】
アンテナ側給電部11とアース側給電部12は、フランジ端部16に沿ったアース側給電部12の長さAを59mmに固定した以外は、例1と同じである。アース導体14は、フランジ近接エレメント19と、フランジ近接エレメント19の先端より水平方向に延伸する水平延伸エレメント21とを有している。フランジ近接エレメント19は150mm、水平延伸エレメント21は30mmで形成されている。なお、測定は、図2のアンテナ側給電部11とアース側給電部12に近接するフランジをアース側給電部12の端部と平行な図2に示す一点鎖線a、b、cとフランジ端部16の位置を変化させることによって測定した。
【0051】
上記の車両用ガラスアンテナにおいて、フランジ端部16が一点鎖線aの位置にある場合、アンテナ側給電部11及びアース側給電部12の端部とフランジ端部16とは、平面視で重なった状態であり、フランジとアンテナ側給電部11及びアース側給電部12とがオーバーラップしない位置となる。この位置をフランジ端部16とアンテナ側給電部11及びアース側給電部12との距離が0mmとする。この位置を基準に、フランジ端部16が一点鎖線cの位置の方向にある場合をプラス方向とし、フランジ端部16が一点鎖線bの位置の方向にある場合をマイナス方向として、−30mm〜5mmまで、5mm毎に変化させて、車両全周の平均利得を測定した。測定方法は例1と同じである。測定した結果は、フランジ端部16と給電部の距離毎に平均値を算出した。
【0052】
上記結果を図6に示す。図6は、フランジ端部16と給電部(アンテナ側給電部11及びアース側給電部12)との距離が0mmのときの利得を基準アンテナ利得として標準化した結果である。この図より、フランジ端部16と給電部との距離が、−5〜−25mmにおいて、良好なアンテナ利得が得られていることがわかる。
【0053】
〔例5〕(アンテナ導体13の長さ)
次に、図1に示す構成の車両用ガラスアンテナにおいて、アンテナ導体13の全長を変化させて、アンテナ利得を測定した。具体的なアンテナの構成としては、フランジ端部16に沿ったアース側給電部12の長さAを62mmに固定した以外は例1と同じである。
【0054】
上記の車両用ガラスアンテナにおいて、アンテナ導体13の全長を0(アンテナ導体13を設けない)〜250mmまで、10mm毎に車両全周の平均利得を測定した。測定方法は例1と同じである。測定した結果は、アンテナ導体13の全長毎に平均値を算出した。
【0055】
上記の結果を図7に示す。図7は、アンテナ導体13の全長が110mmのときの利得を基準アンテナ利得として標準化した結果である。この図より、アンテナ導体13の全長が、50〜250mmにおいて、良好なアンテナ利得が得られていることがわかる。さらに60〜140mmが好ましい。
【0056】
また、地上デジタルテレビ放送帯の中心周波数を620MHzとしたときの波長で換算した場合、ガラス波長短縮率kを考慮すると、上記のフランジ近接エレメントの長さBは、(1/6)・λg〜(5/6)・λgであり、より好ましくは、(1/5)・λg〜(1/2)・λgとなる。
【0057】
以上、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施の形態における車両用ガラスアンテナの構成図
【図2】本発明に係る図1とは別の実施の形態における車両用ガラスアンテナの構成図
【図3】アース側給電部12の幅Aとアンテナ利得との相関図
【図4】フランジ近接エレメント19の長さBとアンテナ利得との相関図
【図5】フランジ端部16とフランジ近接エレメント19との距離Cとアンテナ利得との相関図
【図6】フランジ端部16と給電部との距離とアンテナ利得との相関図
【図7】アンテナ導体13の全長とアンテナ利得との相関図
【符号の説明】
【0059】
11 アンテナ側給電部
12 アース側給電部
13 アンテナ導体
14 アース導体
15 ガラス(窓ガラス)
16 フランジ端部
17 黒セラ端部
18 水平エレメント
19 フランジ近接エレメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓ガラスに設けられたアンテナ側給電部と、該アンテナ側給電部の一部を所定間隔離間して囲むように形成されたアース側給電部とを備えた車両用ガラスアンテナにおいて、
前記アンテナ側給電部に接続された少なくとも一本以上のアンテナ導体と、
前記アース側給電部に接続された少なくとも一本以上のアース導体と、
を有し、
前記アース導体は、前記窓ガラスを車両に固定するためのフランジに沿って形成されたフランジ近接エレメントを有していることを特徴とする車両用ガラスアンテナ。
【請求項2】
前記アンテナ導体は、前記窓ガラスの中央に水平方向に延伸された水平エレメントを有している請求項1に記載の車両ガラスアンテナ。
【請求項3】
前記アース側給電部は、前記フランジに沿って形成されており、
前記車両用ガラスアンテナに受信させる電波の所望の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλとし、ガラス波長短縮率をkとし、λg=λ・kとした場合に、
前記アース側給電部における前記フランジに沿った辺の長さは、0.2・λg以上、0.42・λg以下である請求項1又は2に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項4】
前記アース側給電部は、前記フランジに沿って形成されており、前記アース側給電部における前記フランジに沿った辺の長さは、60mm以上、130mm以下である請求項1又は2に記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項5】
前記車両用ガラスアンテナに受信させる電波の所望の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλとし、ガラス波長短縮率をkとし、λg=λ・kとした場合に、
前記フランジ近接エレメントの長さは、(1/8)・λg以上、(3/4)・λg以下である請求項1から4のいずれかに記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項6】
前記フランジ近接エレメントの長さは、35mm以上、240mm以下である請求項1から4のいずれかに記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項7】
前記フランジの端部と前記フランジ近接エレメントとの平均距離は、15mm以下である請求項1から6のいずれかに記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項8】
前記車両用ガラスアンテナに受信させる電波の所望の放送周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλとし、ガラス波長短縮率をkとし、λg=λ・kとした場合に、
前記アンテナ導体の全長は、(1/6)・λg以上、(5/6)・λg以下である請求項1から7のいずれかに記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項9】
前記アンテナ導体の全長は、50mm以上、250mm以下である請求項1から7のいずれかに記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項10】
前記アンテナ導体及び前記アース導体の線幅は、0.2mm以上、1mm以下である請求項1から9のいずれかに記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項11】
前記車両用ガラスアンテナに受信させる電波の所望の放送周波数帯は、470〜770MHzである請求項1から10のいずれかに記載の車両用ガラスアンテナ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の車両用ガラスアンテナを備えていることを特徴とする車両用窓ガラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−114782(P2010−114782A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287114(P2008−287114)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】