説明

車両用シート、船艇用シート、車両用シートの製造方法、及び船艇用シートの製造方法

【課題】ウレタン製の第1クッション体を発泡させて、熱可塑性エラストマー製の第2クッション体に一体成形したとしても、良好な乗り心地を確保することができ、また、作業工数を少なくして、製造コストを削減することができる車両用シート、船艇用シート、車両用シートの製造方法、及び船艇用シートの製造方法を提供する。
【解決手段】車両用シート10は、シート表皮40で被覆されるウレタン製の第1クッション体41と、第1クッション体41とボトムプレート43との間に配置される熱可塑性エラストマー製の第2クッション体42と、を備え、第1クッション体41と第2クッション体42との間に被覆シート44が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート、船艇用シート、車両用シートの製造方法、及び船艇用シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用シート及び船艇用シートとしては、シート表皮で被覆されるウレタン製の第1クッション体と、第1クッション体とボトムプレートとの間に配置される熱可塑性エラストマー製の第2クッション体と、を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−175482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の車両用シート及び船艇用シートでは、第1クッション体と第2クッション体を別々に成形した後、一体に接着させるため、作業工数が多く、製造コストが増加してしまう可能性があった。また、作業工数を少なくするために、熱可塑性エラストマー製の第2クッション体上にウレタン製の第1クッション体を発泡させて一体成形することも考えられるが、この場合、発泡圧により第2クッション体内に第1クッション体が入り込んで融合してしまうので、乗り心地が悪くなる可能性があった。
【0005】
本発明は、かかる事情を考慮したものであり、その目的は、ウレタン製の第1クッション体を発泡させて、熱可塑性エラストマー製の第2クッション体に一体成形したとしても、良好な乗り心地を確保することができ、また、作業工数を少なくして、製造コストを削減することができる車両用シート、船艇用シート、車両用シートの製造方法、及び船艇用シートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、シート表皮で被覆されるウレタン製の第1クッション体と、第1クッション体とボトムプレートとの間に配置される熱可塑性エラストマー製の第2クッション体と、を備える車両用シートにおいて、第1クッション体と第2クッション体との間に被覆シートが設けられることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明の構成に加えて、被覆シートは、第2クッション体の第1クッション体側に設けられ、第2クッション体のボトムプレート側の全面もしくは一部には設けられないことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明の構成に加えて、ボトムプレートの上面に、第2クッション体側に延びるリブが設けられることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、シート表皮で被覆されるウレタン製の第1クッション体と、第1クッション体とボトムプレートとの間に配置される熱可塑性エラストマー製の第2クッション体と、を備える船艇用シートにおいて、第1クッション体と第2クッション体との間に被覆シートが設けられることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明の構成に加えて、被覆シートは、第2クッション体の第1クッション体側に設けられ、第2クッション体のボトムプレート側の全面もしくは一部には設けられないことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の発明の構成に加えて、ボトムプレートの上面に、第2クッション体側に延びるリブが設けられることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、シート表皮で被覆されるウレタン製の第1クッション体と、第1クッション体とボトムプレートとの間に配置される熱可塑性エラストマー製の第2クッション体と、第1クッション体と第2クッション体との間に設けられる被覆シートと、を備える車両用シートの製造方法において、第2クッション体を成形する工程と、第2クッション体に被覆シートを、第2クッション体の一部を除いて全体に亘って貼り付ける工程と、被覆シートが貼り付けられた第2クッション体を第1金型にセットする工程と、第2金型にウレタン材料を入れる工程と、第1金型及び第2金型を閉じる工程と、ウレタン材料を発泡させ、第2クッション体に貼り付けられた被覆シートの表面に第1クッション体を一体成形する工程と、一体化された第1クッション体、第2クッション体、及び被覆シートを第1及び第2金型から取り出す工程と、一体化された第1クッション体、第2クッション体、及び被覆シートの下面にボトムプレートを取り付けると共に、第1クッション体の表面をシート表皮で被覆し、シート表皮をボトムプレートに取り付ける工程と、を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、シート表皮で被覆されるウレタン製の第1クッション体と、第1クッション体とボトムプレートとの間に配置される熱可塑性エラストマー製の第2クッション体と、第1クッション体と第2クッション体との間に設けられる被覆シートと、を備える船艇用シートの製造方法において、第2クッション体を成形する工程と、第2クッション体に被覆シートを、第2クッション体の一部を除いて全体に亘って貼り付ける工程と、被覆シートが貼り付けられた第2クッション体を第1金型にセットする工程と、第2金型にウレタン材料を入れる工程と、第1金型及び第2金型を閉じる工程と、ウレタン材料を発泡させ、第2クッション体に貼り付けられた被覆シートの表面に第1クッション体を一体成形する工程と、一体化された第1クッション体、第2クッション体、及び被覆シートを第1及び第2金型から取り出す工程と、一体化された第1クッション体、第2クッション体、及び被覆シートの下面にボトムプレートを取り付けると共に、第1クッション体の表面をシート表皮で被覆し、シート表皮をボトムプレートに取り付ける工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、第1クッション体と第2クッション体との間に被覆シートが設けられるため、ウレタン製の第1クッション体を発泡させて、熱可塑性エラストマー製の第2クッション体に一体成形したとしても、発泡した第1クッション体が被膜シートにより塞き止められるので、第1クッション体が第2クッション体に入り込むことがない。これにより、第1クッション体と第2クッション体が融合することがないので、車両用シートの良好な乗り心地を確保することができる。また、第1クッション体を発泡させて第2クッション体に一体成形することが可能となったので、作業工数を少なくすることができ、車両用シートの製造コストを削減することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、被覆シートは、第2クッション体の第1クッション体側に設けられ、第2クッション体のボトムプレート側の全面もしくは一部には設けられないため、乗員の動きに応じて第2クッション体内の空気をボトムプレート側において呼吸させるようにすることができ、車両用シートの良好な乗り心地を確保することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、ボトムプレートの上面に、第2クッション体側に延びるリブが設けられるため、乗員の動きに応じて第2クッション体の空気抜きを効果的に行うことができ、車両用シートの良好な乗り心地を確保することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、第1クッション体と第2クッション体との間に被覆シートが設けられるため、ウレタン製の第1クッション体を発泡させて、熱可塑性エラストマー製の第2クッション体に一体成形したとしても、発泡した第1クッション体が被膜シートにより塞き止められるので、第1クッション体が第2クッション体に入り込むことがない。これにより、第1クッション体と第2クッション体が融合することがないので、船艇用シートの良好な乗り心地を確保することができる。また、第1クッション体を発泡させて第2クッション体に一体成形することが可能となったので、作業工数を少なくすることができ、船艇用シートの製造コストを削減することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、被覆シートは、第2クッション体の第1クッション体側に設けられ、第2クッション体のボトムプレート側の全面もしくは一部には設けられないため、乗員の動きに応じて第2クッション体内の空気をボトムプレート側において呼吸させるようにすることができ、船艇用シートの良好な乗り心地を確保することができる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、ボトムプレートの上面に、第2クッション体側に延びるリブが設けられるため、乗員の動きに応じて第2クッション体の空気抜きを効果的に行うことができ、船艇用シートの良好な乗り心地を確保することができる。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、第2クッション体を成形する工程と、第2クッション体に被覆シートを、第2クッション体の一部を除いて全体に亘って貼り付ける工程と、被覆シートが貼り付けられた第2クッション体を第1金型にセットする工程と、第2金型にウレタン材料を入れる工程と、第1金型及び第2金型を閉じる工程と、ウレタン材料を発泡させ、第2クッション体に貼り付けられた被覆シートの表面に第1クッション体を一体成形する工程と、一体化された第1クッション体、第2クッション体、及び被覆シートを第1及び第2金型から取り出す工程と、一体化された第1クッション体、第2クッション体、及び被覆シートの下面にボトムプレートを取り付けると共に、第1クッション体の表面をシート表皮で被覆し、シート表皮をボトムプレートに取り付ける工程と、を備えるため、ウレタン材料を発泡させることにより一体成形された第1及び第2クッション体を有する車両用シートを容易に得ることができる。
【0021】
請求項8に記載の発明によれば、第2クッション体を成形する工程と、第2クッション体に被覆シートを、第2クッション体の一部を除いて全体に亘って貼り付ける工程と、被覆シートが貼り付けられた第2クッション体を第1金型にセットする工程と、第2金型にウレタン材料を入れる工程と、第1金型及び第2金型を閉じる工程と、ウレタン材料を発泡させ、第2クッション体に貼り付けられた被覆シートの表面に第1クッション体を一体成形する工程と、一体化された第1クッション体、第2クッション体、及び被覆シートを第1及び第2金型から取り出す工程と、一体化された第1クッション体、第2クッション体、及び被覆シートの下面にボトムプレートを取り付けると共に、第1クッション体の表面をシート表皮で被覆し、シート表皮をボトムプレートに取り付ける工程と、を備えるため、ウレタン材料を発泡させることにより一体成形された第1及び第2クッション体を有する船艇用シートを容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る車両用シートの第1実施形態を搭載した自動二輪車を説明する左側面図である。
【図2】図1に示す車両用シートの一部切欠斜視図である。
【図3】図2のA−A線矢視断面図である。
【図4】本発明に係る車両用シートの第2実施形態を説明する断面図である。
【図5】本発明に係る車両用シートの第3実施形態を説明する断面図である。
【図6】第2実施形態の第2クッション体を使用した四輪車の車両用シートを説明する一部切欠斜視図である。
【図7】第1実施形態の第2クッション体を使用した鞍乗型船艇の船艇用シートを説明する一部切欠斜視図である。
【図8】第2実施形態の車両用シートの製造工程の説明図である。
【図9】図8の車両用シートの製造工程の続きの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
以下、図1〜図3を参照して、本発明に係る車両用シートの第1実施形態について説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとし、以下の説明において、前後、左右、上下は、操縦者から見た方向に従い、図面に車両の前方をFr、後方をRr、左側をL、右側をR、上方をU、下方をD、として示す。
【0024】
まず、本実施形態の車両用シートが搭載される自動二輪車1について説明する。この自動二輪車1は、図1に示すように、車体フレーム2と、車体フレーム2の前端部に回動可能に支持される左右一対のフロントフォーク3と、フロントフォーク3の上端部に取り付けられる操舵用のハンドル4と、フロントフォーク3に回転自在に支持される前輪5と、車体フレーム2に揺動可能に支持されるリヤフォーク(スイングアーム)6と、リヤフォーク6の後端部に回転自在に支持される後輪7と、車体フレーム2に支持されるエンジン8と、車体フレーム2の上部に配設される燃料タンク9と、燃料タンク9の後方に設けられ運転者用シート10a及び同乗者用シート10bを有する車両用シート10と、運転者用ステップ12と、同乗者用ステップ13と、車体後部の左右に取り付けられるサイドトランク14と、車体のほぼ全体を覆うカウリング15と、を備える。
【0025】
エンジン8の気筒部には排気管8Aが接続している。排気管8Aのそれぞれは下方に延びてからエンジン8の下方にて屈曲し、その後方に配置されるマフラ8Bに接続される。
【0026】
カウリング15は、車体前部を覆いその上端面が車体フレーム2のメインフレーム16に沿っているフロントカウル17と、車両用シート10の下の部分である車体後部を覆うリヤカウル18と、を備える。フロントカウル17は、車体前端に設けられるアッパーカウル17aと、エンジン8の側部を覆うミドルカウル17bと、エンジン8の下部(排気管8Aの下部)を覆うアンダーカウル17cと、を備える。
【0027】
なお、図1中の符号21はウィンドシールド、22はヘッドライト、23はサイドミラー、24はフロントウィンカ、25はリヤグリップ、26はフロントフェンダ、27はリヤフェンダ、28はスタンドである。
【0028】
そして、車両用シート10は、図2及び図3に示すように、シート表皮40で被覆されるウレタン製の第1クッション体41と、第1クッション体41とボトムプレート43との間に配置される熱可塑性エラストマー製の第2クッション体42と、第1クッション体41と第2クッション体42との間に設けられる被覆シート44と、を備える。なお、本実施形態では、第2クッション体42は、運転者用シート10a側にのみ配置されているが、同乗者用シート10b側にも配置されていてもよい。また、図2では、車両用シート10の構造の理解を容易にするため、第1クッション体41は省略されている。
【0029】
ボトムプレート43は、合成樹脂製の板状部材であり、図3に示すように、その中央部には、第2クッション体42が嵌め込まれる凹部45が形成されており、この凹部45の車幅方向両端部には、上方に向けて凸状となる湾曲部46が連続して形成され、湾曲部46の車幅方向外端部には、シート表皮40の端縁が取り付けられる断面略J字状のシート表皮取付部47が連続して形成される。また、凹部45の底板の中央部には、第2クッション体42の下面を支持すると共に、ボトムプレート43の剛性を高める凸部48が連続して形成される。また、凹部45の底板の上面には、第2クッション体42側に延び、第2クッション体42の下面を支持すると共に、ボトムプレート43の剛性を高めるリブ49が複数(図3では左右合計12本)形成される。
【0030】
第2クッション体42は、ブロック状の熱可塑性エラストマーの母材を切断加工することにより成形され、図3に示すように、断面長方形状に形成され、ボトムプレート43の凹部45に嵌め込まれている。また、本実施形態では、第1クッション体41の厚み及び被覆シート44の厚みを調整することにより、着座時に使用者が第2クッション体42の角部を体感し難くすることが可能であり、車両用シート10の均一感を出すことができる。また、第2クッション体42は、等方性を有するゲル状粘弾性体タイプの熱可塑性エラストマーの線条体を立体的な網状に結合した網状熱可塑性エラストマーである。
【0031】
また、被覆シート44は、図3に示すように、第2クッション体42の第1クッション体41側の表面に貼り付けられ、第2クッション体42のボトムプレート43側の一部には貼り付けられていない。具体的には、被覆シート44は、第2クッション体42の上面、側面、及び下面の一部に亘って貼り付けられる。
【0032】
第1クッション体41は、後述する金型81,82内でウレタン材料を発泡させることにより、第2クッション体42に貼り付けられた被覆シート44の表面に一体成形される。これにより、被覆シート44が発泡圧で第1クッション体41と密着するため、隙間の管理が容易になる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の車両用シート10によれば、第1クッション体41と第2クッション体42との間に被覆シート44が設けられるため、ウレタン製の第1クッション体41を発泡させて、熱可塑性エラストマー製の第2クッション体42に一体成形したとしても、発泡した第1クッション体41が被膜シート44により塞き止められるので、第1クッション体41が第2クッション体42に入り込むことがない。これにより、第1クッション体41と第2クッション体42が融合することがないので、車両用シート10の良好な乗り心地を確保することができる。また、第1クッション体41を発泡させて第2クッション体42に一体成形することが可能となったので、作業工数を少なくすることができ、車両用シート10の製造コストを削減することができる。
【0034】
また、本実施形態の車両用シート10によれば、被覆シート44は、第2クッション体42の第1クッション41体側に貼り付けられ、第2クッション体42のボトムプレート43側の一部には貼り付けられていないため、乗員の動きに応じて第2クッション体42内の空気をボトムプレート43側において呼吸させるようにすることができ、車両用シート10の良好な乗り心地を確保することができる。
【0035】
また、本実施形態の車両用シート10によれば、ボトムプレート43の上面に、第2クッション体42側に延びるリブ49が設けられるため、乗員の動きに応じて第2クッション体42の空気抜きを効果的に行うことができ、車両用シート10の良好な乗り心地を確保することができる。
【0036】
また、本実施形態の車両用シート10によれば、切断加工により第2クッション体42を断面長方形状に形成するため、下記第2実施形態の第2クッション体52のように、切断加工により斜めカット面52aを形成する必要がない。これにより、車両用シート10の製造コストを更に削減することができる。
【0037】
(第2実施形態)
次に、図4を参照して、本発明に係る車両用シートの第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等部分については、図面に同一符号を付してその説明を省略或いは簡略化する。
【0038】
本実施形態の車両用シート10は、図4に示すように、シート表皮40で被覆されるウレタン製の第1クッション体41と、第1クッション体41とボトムプレート43との間に配置される熱可塑性エラストマー製の第2クッション体52と、第1クッション体41と第2クッション体52との間に設けられる被覆シート44と、を備える。
【0039】
第2クッション体52は、ブロック状の熱可塑性エラストマーの母材を切断加工することにより成形され、図4に示すように、その車幅方向外端部の上部に、車幅方向外側に向かうに従って第2クッション体52の厚みが次第に減少するように、直線状の斜めカット面52aが形成される。
【0040】
被覆シート44は、図4に示すように、第2クッション体52の上面、斜めカット面52a、側面、及び下面の一部に亘って貼り付けられる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の車両用シート10によれば、切断加工により第2クッション体52に斜めカット面52aを形成するため、下記第3実施形態の第2クッション体62のように、熱成形加工により突部62b及び円弧面62cを形成する必要がない。これにより、車両用シート10の製造コストを削減することができる。
【0042】
また、本実施形態の車両用シート10によれば、第2クッション体52の車幅方向外端部の上部に斜めカット面52aを形成するため、着座時、車両用シート10の座面全体の均一感を出すことができる。
その他の構成及び作用効果については、上記第1実施形態と同様である。
【0043】
(第3実施形態)
次に、図5を参照して、本発明に係る車両用シートの第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等部分については、図面に同一符号を付してその説明を省略或いは簡略化する。
【0044】
本実施形態の車両用シート10は、図5に示すように、シート表皮40で被覆されるウレタン製の第1クッション体41と、第1クッション体41とボトムプレート43との間に配置される熱可塑性エラストマー製の第2クッション体62と、第1クッション体41と第2クッション体62との間に設けられる被覆シート44と、を備える。
【0045】
第2クッション体62は、ブロック状の熱可塑性エラストマーの母材を熱成形加工することにより成形され、図5に示すように、ボトムプレート43の凹部45に嵌め込まれる本体部62aと、本体部62aの車幅方向外端面の上部から外側に向けて突設され、ボトムプレート43の湾曲部46上に載置される突部62bと、を有する。また、突部62bの上方角部には円弧面62cが形成される。
【0046】
また、被覆シート44は、図5に示すように、第2クッション体62の本体部62aの上面、突部62bの上面、側面、下面、及び本体部62aの側面に亘って貼り付けられる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態の車両用シート10によれば、第2クッション体62は、本体部62aと、本体部62aの車幅方向外端面の上部から外側に向けて突設される突部62bと、を有し、突部62bの上方角部に円弧面62cが形成されるため、着座時に車両用シート10の両側において均一感を出すことができ、車両用シート10の乗り心地を更に向上することができる。
その他の構成及び作用効果については、上記第1実施形態と同様である。
【0048】
なお、上記第1〜第3実施形態では、本発明を自動二輪車1の車両用シート10に適用した場合を例示したが、図6に示す四輪車の車両用シート71及び図7に示す鞍乗型船艇の船艇用シート72に本発明を適用してもよい。また、図6では、四輪車の車両用シート71に第2実施形態の第2クッション体52を使用しているが、第1及び第3実施形態の第2クッション体42,62を使用してもよい。また、図7では、鞍乗型船艇の船艇用シート72に第1実施形態の第2クッション体42を使用しているが、第2及び第3実施形態の第2クッション体52,62を使用してもよい。
【0049】
次に、図8及び図9を参照して、本発明に係る車両用シート及び船艇用シートの製造方法について説明する。なお、本説明では、上記第2実施形態の車両用シート10を例に挙げて説明する。
【0050】
車両用シート10の製造方法は、切断加工により網状構造の熱可塑性エラストマー製の第2クッション体52を成形する工程(図8(a)参照)と、第2クッション体52に被覆シート44を、第2クッション体52の下面の一部を除いて全体に亘って貼り付ける工程(図8(b)参照)と、被覆シート44が貼り付けられた第2クッション体52を上金型(第1金型)81の下面に形成される凹部81aにセットする工程(図8(c)参照)と、下金型(第2金型)82の上面に形成される凹部82bにウレタン材料83を入れる工程(図8(d)参照)と、上金型81及び下金型82を閉じる工程(図9(a)参照)と、上金型81及び下金型82間に形成されるキャビティ84内においてウレタン材料83を発泡させ、第2クッション体52に貼り付けられた被覆シート44の表面に第1クッション体41を一体成形する工程(図9(b)参照)と、一体化された第1クッション体41、第2クッション体52、及び被覆シート44を上金型81及び第2金型82から取り出す工程(図9(c)参照)と、一体化された第1クッション体41、第2クッション体52、及び被覆シート44の下面にボトムプレート43を取り付けると共に、第1クッション体41の表面をシート表皮40で被覆し、シート表皮40をボトムプレート43のシート表皮取付部47に取り付ける工程(図9(d)参照)と、を備える。なお、上記車両用シート71及び船艇用シート72も同様の工程で製造される。
【0051】
以上説明したように、本発明の車両用シート10の製造方法によれば、第2クッション体52を成形する工程と、第2クッション体52に被覆シート44を、第2クッション体52の一部を除いて全体に亘って貼り付ける工程と、被覆シート44が貼り付けられた第2クッション体52を上金型81にセットする工程と、下金型82にウレタン材料83を入れる工程と、上金型81及び下金型82を閉じる工程と、ウレタン材料83を発泡させ、第2クッション体52に貼り付けられた被覆シート44の表面に第1クッション体41を一体成形する工程と、一体化された第1クッション体41、第2クッション体52、及び被覆シート44を上金型81及び下金型82から取り出す工程と、一体化された第1クッション体41、第2クッション体52、及び被覆シート44の下面にボトムプレート43を取り付けると共に、第1クッション体41の表面をシート表皮40で被覆し、シート表皮40をボトムプレート43に取り付ける工程と、を備えるため、ウレタン材料83を発泡させることにより一体成形された第1及び第2クッション体41,52を有する車両用シート10を容易に得ることができる。
【0052】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
例えば、本発明の車両用シートは、自動二輪車を始めとする鞍乗型車両のシート及び自動車のシートに最適であり、船艇用シートは、鞍乗型船艇のシートに最適であるが、これに限定されず、産業車両、電車、旅客機等の各種乗り物のシート(座席)に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 車両用シート
40 シート表皮
41 第1クッション体
42 第2クッション体
43 ボトムプレート
44 被覆シート
49 リブ
52 第2クッション体
52a 斜めカット面
62 第2クッション体
71 車両用シート
72 船艇用シート
81 上金型(第1金型)
82 下金型(第2金型)
83 ウレタン材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート表皮で被覆されるウレタン製の第1クッション体と、前記第1クッション体とボトムプレートとの間に配置される熱可塑性エラストマー製の第2クッション体と、を備える車両用シートにおいて、
前記第1クッション体と前記第2クッション体との間に被覆シートが設けられることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記被覆シートは、前記第2クッション体の前記第1クッション体側に設けられ、前記第2クッション体の前記ボトムプレート側の全面もしくは一部には設けられないことを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記ボトムプレートの上面に、前記第2クッション体側に延びるリブが設けられることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項4】
シート表皮で被覆されるウレタン製の第1クッション体と、前記第1クッション体とボトムプレートとの間に配置される熱可塑性エラストマー製の第2クッション体と、を備える船艇用シートにおいて、
前記第1クッション体と前記第2クッション体との間に被覆シートが設けられることを特徴とする船艇用シート。
【請求項5】
前記被覆シートは、前記第2クッション体の前記第1クッション体側に設けられ、前記第2クッション体の前記ボトムプレート側の全面もしくは一部には設けられないことを特徴とする請求項4に記載の船艇用シート。
【請求項6】
前記ボトムプレートの上面に、前記第2クッション体側に延びるリブが設けられることを特徴とする請求項4に記載の船艇用シート。
【請求項7】
シート表皮で被覆されるウレタン製の第1クッション体と、前記第1クッション体とボトムプレートとの間に配置される熱可塑性エラストマー製の第2クッション体と、前記第1クッション体と前記第2クッション体との間に設けられる被覆シートと、を備える車両用シートの製造方法において、
前記第2クッション体を成形する工程と、
前記第2クッション体に前記被覆シートを、前記第2クッション体の一部を除いて全体に亘って貼り付ける工程と、
前記被覆シートが貼り付けられた前記第2クッション体を第1金型にセットする工程と、
第2金型にウレタン材料を入れる工程と、
前記第1金型及び前記第2金型を閉じる工程と、
前記ウレタン材料を発泡させ、前記第2クッション体に貼り付けられた前記被覆シートの表面に前記第1クッション体を一体成形する工程と、
一体化された前記第1クッション体、前記第2クッション体、及び前記被覆シートを前記第1及び第2金型から取り出す工程と、
一体化された前記第1クッション体、前記第2クッション体、及び前記被覆シートの下面に前記ボトムプレートを取り付けると共に、前記第1クッション体の表面を前記シート表皮で被覆し、前記シート表皮を前記ボトムプレートに取り付ける工程と、を備えることを特徴とする車両用シートの製造方法。
【請求項8】
シート表皮で被覆されるウレタン製の第1クッション体と、前記第1クッション体とボトムプレートとの間に配置される熱可塑性エラストマー製の第2クッション体と、前記第1クッション体と前記第2クッション体との間に設けられる被覆シートと、を備える船艇用シートの製造方法において、
前記第2クッション体を成形する工程と、
前記第2クッション体に前記被覆シートを、前記第2クッション体の一部を除いて全体に亘って貼り付ける工程と、
前記被覆シートが貼り付けられた前記第2クッション体を第1金型にセットする工程と、
第2金型にウレタン材料を入れる工程と、
前記第1金型及び前記第2金型を閉じる工程と、
前記ウレタン材料を発泡させ、前記第2クッション体に貼り付けられた前記被覆シートの表面に前記第1クッション体を一体成形する工程と、
一体化された前記第1クッション体、前記第2クッション体、及び前記被覆シートを前記第1及び第2金型から取り出す工程と、
一体化された前記第1クッション体、前記第2クッション体、及び前記被覆シートの下面に前記ボトムプレートを取り付けると共に、前記第1クッション体の表面を前記シート表皮で被覆し、前記シート表皮を前記ボトムプレートに取り付ける工程と、を備えることを特徴とする船艇用シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−177227(P2011−177227A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42256(P2010−42256)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】