説明

車両用シートのヘッドレスト格納ホルダ

【課題】 摩擦力や板ばねの係止力(弾性)で抜け落ちを阻止しているにすぎず、ヘッドレストの抜け落ちを十分に阻止することが難しい。
【解決手段】 ヘッドレスト格納ホルダ30は、基端32aがシートクッションの裏面被覆材12a’に縫合され、上下方向に架け渡されてヘッドレスト16の本体を被装可能な帯状のホルダ本体32を有して形成される。基端32aに隣接してヘッドレストのステー16aの挿通される挿通孔32a1’がホルダ本体に形成されている。ストラップの端に設けられた樹脂バックルが連結手段31とされ、シートクッションの裏面被覆材に縫合された樹脂バックルのメス型片付のストラップ31bに着脱自在に係合、連結されるオス型片付のストラップ31aがホルダ本体の自由端32bに縫合される。また、面ファスナ34がシートクッションの裏面被覆材、ホルダ本体32の間に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバックの上端に着脱可能に取り付けられるヘッドレストを取り外したとき、ヘッドレストを格納する車両用シートのヘッドレスト格納ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車後退時の衝突、あるいは自動車後部への追突等のいわゆる後突衝撃が発生すると着座者の頭部はその慣性力のもとで急激に後傾しようとし、急激な後傾を防ぐために、ヘッドレストがシートバックの上端に設けられている。
【0003】
ヘッドレストをシートバックの上端に着脱可能に取り付けた車両用シートが広く知られており、たとえば、リヤシートに設けたヘッドレストを取り外せば、車両の後退時における後方視界が十分に確保される。
【0004】
また、収納スペースを確保するためにシートバックをシートクッション上に前倒しする構成がリヤシートなどに採用されているが、ヘッドレストを付けたまま前倒しすると、大きな回動半径が必要となるため、ヘッドレストを取り外してからシートバックが前倒しされる。
【0005】
ここで、車両用シートとして、たとえばシートバックをシートクッション上に前倒し、シートクッション後部レッグのロックを解除してシートバックとともにシートクッションを前部レッグのヒンジ(回動軸)の回りで回動させて跳ね上げ、折り畳んだシートクッション、シートバックを車床に対して起立した状態で格納するシート(タンブルシート)が知られている。このシートにおいては、車床に接触させることなく、ヘッドレストを付けたままでシートバックを起立させることが難しく、多くの場合には、ヘッドレストを取り外した状態でシートバックがシートクッションとともに起立される。
【0006】
シートバック上端から取り外されたヘッドレストを車床などに放置すれば、汚れたり、紛失するおそれがあり、ヘッドレストを安全な場所に格納する必要がある。
たとえば、特開平11−245704号公報では車室内壁面から車室内に突出する突出部をヘッドレストの格納ホルダとし、特開2005−059810号公報では車両のドアのドアポケットをヘッドレストの格納ホルダ(ヘッドレスト格納ホルダ)としている。
また、特開平11−105601号公報の車両用シートはシートバックを後方に倒す構成とされ、後方に倒したとき裏側となるシートバック背面に格納ホルダを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−245704号公報
【特許文献2】特開2005−059810号公報
【特許文献3】特開平11−105601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
車室内壁面から車室内に突出する突出部を格納ホルダとした特開平11−245704号公報の構成、および車両のドアのドアポケットをヘッドレストの格納ホルダとした特開2005−059810号公報の構成では、車体側にヘッドレストの格納ホルダが設けられるため、車体構造の変更が余儀なくされることから、現行構造からの設計変更が容易でない。
【0009】
一方、特開平11−105601号公報では、ステーと交差する方向に延びた帯状の保持体に、ステーの挿通される挿通孔を設け、この保持体をシートバックの背面に配設した構成となっているため、取り外したヘッドレストの保持をシート側でのみ行うことが可能となり、その構造の変更は、車体構造に及ぶことがない。
【0010】
しかしながら、この特開平11−105601号公報の構成においては、挿通孔とステーとの間の摩擦抵抗とヘッドレストの自重がヘッドレストの抜け落ちの抵抗になるにすぎないため、シートバックの後倒によりヘッドレストをシートバックの背面と床面との間に格納する公知の構成には好適であるものの、この構成をタンブルシートに応用した際には、車両走行時の振動等によりヘッドレストが大きく揺れ、その応力が挿通孔とステーとの間の摩擦抵抗を超えることで格納ホルダから抜け落ちるおそれがあり、その適応性に劣るといわざるを得ない。
本発明は、ヘッドレストの自重や挿通孔との間の摩擦抵抗などに依存することなく、外力に抗して格納ホルダからのヘッドレストの抜け落ちを確実に阻止できる、タンブルシートへの適応性に優れた車両用シートのヘッドレスト格納ホルダの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明では、ヘッドレスト格納ホルダは、その基端がシートクッションの裏面被覆材に固定され、他端(自由端)が連結手段を介在してシートクッション部材に連結されるヘッドレスト本体に被装可能な帯状のホルダ本体を有して形成されている。
すなわち、請求項1に係る本発明によれば、ヘッドレストを取り外して前倒しされたシートバックをシートクッションとともに跳ね上げ、折り畳んでシートクッション、シートバックを車床に対して起立させて格納する車両用シートにおけるシートバックから取り外されたヘッドレストの格納ホルダにおいて、基端がシートクッションの裏面被覆材に固定されてヘッドレスト本体を被装可能な帯状のホルダ本体を有し、基端に隣接してステーの挿通される挿通孔がホルダ本体に形成され、シートクッション部材に設けた連結手段の一方に着脱自在に係合、連結される連結手段の他方がホルダ本体の自由端に設けられている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る本発明では、帯状のホルダ本体を有するヘッドレスト格納ホルダは、ステーを挿通孔に挿通させたヘッドレストを被装して延ばされたその自由端の連結手段の他方をシートクッション側部材の連結手段の一方に係合することによってヘッドレストを格納する。そして、帯状のホルダ本体をヘッドレストに被装してシートクッション裏面に押圧した状態で格納しているため、車両走行時に大きな振動などが生じても、その外力に抗してヘッドレストの抜け落ちを確実に阻止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例に係るヘッドレスト格納ホルダの組み込まれた車両用シートの部分斜視図を示す。
【図2】シートクッション、シートバックが着座可能な位置に置かれた通常時での車両用シートの概略左側面図を示す。
【図3】シートクッション、シートバックを跳ね上げ、折り畳んで起立させた起立時での車両用シートの概略左側面図を示す。
【図4】(A)(B)は本発明の一実施例に係るヘッドレスト格納ホルダの平面図(展開図)、一部破断の右側面図をそれぞれ示す。
【図5】(A)(B)はシートクッション、シートバックの起立時における後方斜め下からの斜視図(図3の矢視方向から見た斜視図)、(C)は着座可能な通常時における下方からの斜視図(図2の矢視方向から見た斜視図)をそれぞれ示す。
【図6】(A1) (A2) (B1) (B2)(C1)(C2)はヘッドレスト格納ホルダの3つの変形例の概略正面図、概略右側面図をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ヘッドレスト格納ホルダは、基端がシートクッションの裏面被覆部材に固定され、上下方向に架け渡されてヘッドレスト本体を被装可能な帯状のホルダ本体を有し、基端に隣接してステーの挿通される挿通孔がホルダ本体に形成され、シートクッション部材から延出されたストラップの端に設けられた樹脂バックルが連結手段とされ、シートクッションの裏面被覆部材に設けた樹脂バックルのオス型片、メス型片のいずれか一方に着脱自在に係合、連結されるオス型片、メス型片の残る他方がホルダ本体の自由端に設けられる。また、シートクッションの裏面被覆部材に面ファスナの一方が、これに対向する位置で面ファスナの他方がホルダ本体にそれぞれ設けられる。
【実施例】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施例について詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例に係るヘッドレスト格納ホルダの組み込まれた車両用シートの部分斜視図、図2、図3はシートクッション、シートバックが着座可能な位置に置かれた通常時、シートクッション、シートバックを跳ね上げ、折り畳んで起立させた起立時での車両用シートの概略左側面図をそれぞれ示す。
【0016】
図1、図2に示すように、車両用シート10はリヤシートとして具体化され、このリヤシート(車両用シート)は、車床11上に配置されたシートクッション12と、シートクッションの後端に回動可能に取り付けられたシートバック14とを備え、シートバック上端にはヘッドレスト16が着脱自在に設けられている。
シートバック14は、たとえば、その横幅をほぼ6:4に2分割した、いわゆる不等分割の3人用シートとされ、図面の複雑化を避けるために、図1には横幅が全体の6割に対応する幅の2人用のシートバックと、対応する2人用のシートクッションとが図示され、4割の幅部分に対応するシート左半部は省略されている。
【0017】
図2に示すように、シートクッション12、シートバック14が着座可能な位置に置かれた通常の状態では、シートクッション12は、その前端がヒンジ機構20を介して車床11に回動可能に取り付けられるとともに、その後端がロック機構22によって車床に着脱可能に固定されている。この状態では、ヘッドレスト16がシートバック14の上端に取り付けられている。
【0018】
シートバック14をシートクッション上に前倒し、ロック機構22によるシートクッション後端のロックを解除してシートバックとともにシートクッション12をヒンジ機構のヒンジ(回動軸)20aの回りで回動させて跳ね上げ、折り畳んだシートクッション、シートバックを車床11に対して起立した状態で格納すれば、収納スペース(荷物スペース)が確保される。
シートクッション12、シートバック14を跳ね上げて、車床11に対して起立させた状態でのシート10を図3に示す。この起立位置(タンブル位置)とするために、シートバック上端のヘッドレスト16は取り外される。
【0019】
ヒンジ機構20、ロック機構22を有して、シートクッション12、シートバック14を跳ね上げ、折り畳んで、車床11に対して起立させるシート(タンブルシート)10の構成は公知であり(例えば、特開2008−247298号公報参照)、本発明の要旨でないため、シートの詳細な説明は省略する。
【0020】
本発明では、シートクッション12、シートバック14を起立位置とするためにシートバック上端から取り外されたヘッドレスト16を格納する格納ホルダ(ヘッドレスト格納ホルダ)30がシート10に、詳細にいえば、シートクッションの裏面(下面)12aに設けられている。
ここで、シート10がシートクッション12、シートバック14を折り畳んで起立させるタンブルシートであるため、起立時での良好な外観意匠を保つように、車床11に敷設されるカーペットと同じ素材(カーペット地)が裏面被覆材12a’としてシートクッションの裏面12aに被覆されている。
【0021】
格納ホルダ30は、図2に示す着座可能な通常時においては、ばたつかないようにシートクッションの裏面12a、すなわち、その裏面被覆材12a’に密着して取付けられる。そして、シートクッション12、シートバック14の起立時においては、図3に示すように、ヘッドレスト16を被装してシートクッションの裏面被覆材12a’に押圧した状態でシートクッションの裏面被覆材(シートクッション裏面12a)との間にヘッドレストを格納する。
【0022】
格納ホルダ(ヘッドレスト格納ホルダ)の構成について以下に詳細に説明する。図4(A)(B)は格納ホルダの平面図(展開図)、一部破断の右側面図をそれぞれ示し、格納ホルダ30は、たとえば、その上下端に連結手段31を持つ帯状のホルダ本体を有して形成される。
すなわち、格納ホルダ30は帯状のホルダ本体32を有してなり、図4における帯状のホルダ本体の上端はシートクッションの裏面被覆材12a’に縫合されて基端(固定端)32aとなる。この基端32aは折り返されてその折り返し端が縫合され、折り返されて二重になった厚手部32a1にヘッドレストのステー(ヘッドレストステー)の挿通される挿通孔32a1’が形成されている。この挿通孔32a1’は、たとえば、ハトメリングを厚手部32a1に固定して形成される。
なお、実施例ではいずれの図においても縫合を2本の二点鎖線で示すこととする。
【0023】
面ファスナ34がシートクッションの裏面被覆材12a’と、それに対向する本体32の面(図4では背面)との間に設けられている。この面ファスナ34は、図2に示すように、ヘッドレスト16を格納しないとき、格納ホルダ30のバタツキ(詳細には、ホルダ本体32のバタツキ)を防止するためのものであり、面ファスナ34の一方(メス型片、オス型片のいずれか一方)が本体32に、残る他方(メス型片、オス型片の他方)がシートクッションの裏面被覆材12a’に縫合される。面ファスナ34は、ヘッドレスト16を格納しないとき、ホルダ本体32をシートクッションの裏面被覆材12a’に密着、固定するように、ホルダ本体32、シートクッションの裏面被覆材12a’でその横幅の略全長に渡って配置される。また、面ファスナ34は、ホルダ本体32をシートクッションの裏面12aに弛むことなく保持し得る上下方向の位置に取り付けられる。
【0024】
ホルダ本体32の上下端の連結手段31は、たとえば、樹脂バックルとされる。樹脂バックル(連結手段)31は、ストラップの先端にメス型片、オス型片を取り付けた市販の公知のものからなり、メス型片へのオス型片の挿入によって係合、連結され、メス型片からオス型片を取り外して分離される。メス型片、オス型片が取付けられた一対のストラップのいずれか一方は、ホルダ本体の自由端32bに、他方はシートクッションの裏面被覆材12a’にそれぞれ縫合される。実施例では、オス型片付のストラップ31aがホルダ本体の自由端32bに、メス型片付のストラップ31bがシートクッションの裏面被覆材12a’にそれぞれ縫合されている。もちろん、これとは逆に、オス型片付のストラップ31aをシートクッションの裏面被覆材12a’に、オス型片付のストラップ31bをホルダ本体の自由端32bに取り付けてもよい。
【0025】
なお、シートクッションの後端面では、シートクッションのトリムカバー(表皮)と裏面被覆材12a’が縫合されているため、シートクッション側のストラップをトリムカバー、裏面被覆材とともに縫合してもよい(共縫いしてもよい)。すなわち、シートクッション側のストラップは、シートクッションの裏面被覆材12a’に縫合しても、トリムカバー、裏面被覆材と共縫いしてもよく、シートクッショ側の部材(シートクッション部材)に縫合すればよい。
【0026】
図5(A)(B)(C)を参照しながら、格納ホルダの使用態様について述べる。ここで、図5(A)(B)はシートクッション、シートバックの起立時における後方斜め下からの斜視図(図3の矢視方向から見た斜視図)、図5(C)は着座可能な通常時における下方からの斜視図((図2の矢視方向から見た斜視図)に相当し、(A)はシートクッションの裏面被覆材に取り付けた状態での展開図、(B)はヘッドレストの格納時、(C)は非格納時での使用態様を示す。
【0027】
図示しないが、シートクッション12、シートバック14の起立時では、タンブルストラップによってこのシートクッション、シートバックは車床11上に保持される。すなわち、一端がシートクッションフレームの後部フレームに固定されたタンブルストラップの他端を車両ボディ側面のグリップ等に係止することにより、シートクッション、シートバックがその起立状態に保持、固定される。このタンブルストラップはシートクッション12、シートバック14の起立時以外は使用せず、不使用時にタンブルストラップを保管するポケット36が、シートクッション裏面12aにその下端を開口端として縫合されている。図5(A)(B)に示すシートクッション12、シートバック14の起立時には、タンブルストラップは使用中であり、このポケットは空になっている。
【0028】
ヘッドレスト16をシートクッション裏面12aに設けた格納ホルダ30で格納するために、図5(A)で示すように、その自由端の連結手段の一方、たとえば、オス型片付ストラップ31aを掴んで手前に引き、基端に隣接する厚手部の挿通孔32a1’にステー(ヘッドレストステー)16aが挿通される。
それから、自由端のオス型片付ストラップ31aを持ち上げ、ヘッドレスト16を上下方向で被装してオス型片をシートクッションの裏面被覆材12a’のメス型片31bに係合させて、連結手段31を係合、連結すれば、図5(B)に示すように、格納ホルダ30によってシートクッションの裏面被覆材12a’(シートクッション裏面12a)に押圧されてシートクッションの裏面被覆材との間でヘッドレストが格納される。
【0029】
ホルダ本体の基端32aはシートクッションの裏面被覆材12a’に縫合されて固定され、その自由端32bも連結手段31のもとでシートクッションの裏面被覆材に連結、固定されており、格納ホルダはその上下端がいずれも固定されている。そのため、荷物の出し入れ時や乗降時に上方に押す力(外力)がヘッドレスト16に加わっても、ヘッドレストの自重に依存することなく、上下端がいずれも固定された格納ホルダはその外力に抵抗してヘッドレストを十分に保持、格納でき、上方へのヘッドレストの抜け落ちが確実に阻止される。特に、ホルダ本体32が上下方向に架け渡されてヘッドレストを被装し、その上端(自由端)32bがシートクッションの裏面被覆材12a’に連結されて上方へのヘッドレストの抜け落ち経路をふさいでいるため、上方へのヘッドレストの抜け落ちを確実に阻止できる。もちろん、車両走行時に大きな振動が生じても、その振動に抗してヘッドレストの抜け落ちを確実に阻止できる。
【0030】
従来の格納ホルダが複雑な構成の樹脂製品などから形成されるのが一般的であるのに対して、帯状のホルダ本体32に樹脂バックルなどの連結手段31を取り付けるだけで格納ホルダ30が形成される。そのため、構成が簡単化され、低コストで軽量の格納ホルダ30が得られる。もちろん、車体構造の設計変更は不要であり、現行のシートに容易に採用できる。
【0031】
連結手段31として樹脂バックルを使用しているため、その連結、離脱が迅速、容易に行え、ヘッドレストをシートクッション裏面12aに簡単に格納できる。さらに、ストラップの長さが調整自在な樹脂バックルを使用すれば、ヘッドレストをシートクッションの裏面被覆材12a’(シートクッション裏面12)に押しつける力(押力)が調整できるとともに、形状の異なる(厚さや高さの異なる)ヘッドレストに対しても広範囲に対応でき、汎用性の高い格納ホルダ30が得られる。
【0032】
帯状のホルダ本体32は、横方向に傾斜させることなくヘッドレスト16をシートクッションの裏面被覆材12a’(シートクッション裏面12)に押圧して保持、格納するに十分な横幅を持てば足り、通常はヘッドレストの横幅の1/2〜〜1程度の幅とされるが、この値に限定されず、ヘッドレストの形状などによって変えられる。たとえば、後述するゴムバンドから本体ホルダを形成する場合などには、この値より小さい幅でも構わない。
また、図5(B)に示すように、ヘッドレスト16の下半部を確実に被装すれば足り、その上半部を同じ状態で被装する必要がないため、自由端32bに近い部分の幅を狭く形成してコストの削減化、軽量化を図ってもよい。
【0033】
なお、図5(B)に示すシートクッション12、シートバック14の起立時には、タンブルストラップは使用されており、シートクッションの裏面被覆材12a’のポケット36にタンブルストラップが収納されていないから、ヘッドレスト格納の障害とならない。
【0034】
帯状のホルダ本体32は必要な強度と外観などを持てば足り、シートクッションの裏面被覆材12a’と同一の素材、たとえば、カーペット地から形成すれば、違和感のない外観意匠が得られる。帯状のホルダ本体32、シートクッションの裏面被覆材12a’を車床11のカーペット地と同一の素材からいずれも形成すれば、統一のとれた外観意匠が得られる。
また、カーペット地のような軽重量で低コストの生地からホルダ本体32を形成すれば、必要な強度と柔軟性を持つ格納ホルダ30が低コストで得られる。
【0035】
連結手段31として樹脂バックルが好ましいとはいえこれに限定されず、着脱が容易で、シートクッションの裏面被覆材12a’に本体ホルダの自由端32bを強固に連結するものであればよい。たとえば、ストラップの先端に面ファスナやスナップ結合されるボタンを設けたものをホルダ本体の自由端32b、シートクッションの裏面被覆材12a’の間に配置してもよい。
【0036】
ホルダ本体32をシートクッションの裏面被覆材12a’(シートクッション裏面12a)に弛むことなく保持し得る上下方向の位置で面ファスナ34をホルダ本体、シートクッションの裏面被覆材の間に設けているため、着座可能な着座時においては、図4(B)、図5(C)に示すように、連結手段(樹脂バックル)31が係合、連結されると、面ファスナのメス型片、オス型片が結合されてホルダ本体32がシートクッションの裏面被覆材に密着して固定される。そのため、ホルダ本体32、つまりは格納ホルダ30のバタツキが防止されるとともに、すっきりした良好な外観意匠が得られる。
【0037】
また、着座可能な着座時においては、タンブルストラップがシートクッションの裏面被覆材12a’のポケット36に収納され、ポケットの開口が下方に面している。しかし、面ファスナ34の係合のもとでシートクッションの裏面被覆材12a’に密着して固定されたホルダ本体32が、このポケット36を覆っているため、ポケットからのタンブルストラップの飛び出し(脱落)が阻止される。
【0038】
なお、ホルダ本体の基端32a、連結手段のストラップ31a、31b、面ファスナ34を縫合によって固定しているが、その固定方法は縫合に限らない。しかしながら、縫合によれば、強固な固定が簡単に得られる。
【0039】
図6(A1) (A2) (B1) (B2)(C1)(C2)は格納ホルダの3つの変形例の概略正面図、概略右側面図をそれぞれ示す。ここで、同じ機能を持つ格納ホルダの構成部材には同じ参照符号を付してその説明を省略し、異なる構成について主として説明する。
図6(A1)(A2)の変形例1においては、ホルダ本体32−1は幅の狭い帯状のカーペット地から形成され、ホルダ本体の自由端、シートクッションの裏面被覆材12a’の間の連結手段31−1は面ファスナとなっている。また、ホルダ本体32−1、シートクッションの裏面被覆材12a’にはバタツキ防止用の面ファスナ34−1が上記と同様に設けられている。
この変形例においても、ホルダ本体の基端32a−1はシートクッションの裏面被覆材12a’に縫合されて固定され、その自由端も連結手段31−1のもとでシートクッションの裏面被覆材に連結、固定されており、ホルダ本体32−1はその上下端がいずれも固定されている。そのため、荷物の出し入れ時や乗降時に上方に押す力(外力)がヘッドレスト16に加わっても、格納ホルダ30−1はその外力に抵抗してヘッドレストを保持、格納でき、上方へのヘッドレスト16の抜け落ちが確実に阻止される。
なお、この構成では、ホルダ本体32−1の幅が狭いため、ヘッドレストに加える押力を強くして横方向の傾斜を防ぐことが好ましい。
【0040】
図6(A2)(B2)の変形例2では、ホルダ本体32−2は、横方向(水平方向)に延びた帯状のゴムバンドから形成され、左右の端はシートクッションの裏面被覆材12a’に縫合、固定されている。ここでは、上記実施例の折り返された厚手部32a1に相当する部分32a1−2がシートクッションの裏面被覆材に縫合され、この部分にステーの挿通させる挿通孔が形成されている。
この変形例では、ゴムバンドからなるホルダ本体32−2の横方向略中央を引き、伸長させてシートクッションの裏面被覆材12a’との間に十分な隙間を作り、その隙間にヘッドレスト16を挿入し、そのステー16aを厚手部の挿通孔に挿通させてヘッドレストをゴムバンドの弾力のもとでシートクッションの裏面被覆材に押し付けてヘッドレストを保持、格納する。
【0041】
左右端をシートクッションの裏面被覆材12a’に固定して横方向に架け渡したホルダ本体32−2でヘッドレストに被装した格納ホルダ30−2の構成では、上下端が固定されて上下方向に架け渡されてヘッドレストを被装した場合に比較して、上方に押す力(外力)に対する抵抗が劣ることは否めない。しかし、ホルダ本体32−2をゴムバンドから形成しているため、ゴムバンドの弾力のもとでヘッドレストをシートクッションの裏面被覆材12a’(シートクッション裏面12a)に強く押圧して保持、格納することによって上方へのヘッドレスト16の抜け落ちを確実に阻止できる。
【0042】
このゴムバンドを利用した構成では、ゴムバンドからなるホルダ本体32−2を横方向に架け渡す代わりに、図6(A)に2点鎖線で示すように、上下方向に架け渡してもよい。ここで、2本の帯状のゴムバンドが左右対称に併置されて上下方向に延びているが、幅の広いゴムバンドであれば1本でもよい。しかし、2本のゴムバンドを左右対称に併置して上下方向に延ばした構成では、ヘッドレストを左右均等に押さえてヘッドレストの傾きを防止でき、ヘッドレストが傾いて脱落するのを阻止できる。
なお、ゴムバンドを上下方向に架け渡す構成では、ステーの挿通孔の形成される厚手部に相当する部分も同じゴム素材から一体に成形される。
【0043】
図6(C1)(C2)の変形例3では、ホルダ本体32−3は、その一端(図6(C1)(C2)でその上端)を残してシートクッションの裏面被覆材12a’に縫合、固定されたネット地からなり、その開放端からヘッドレスト16をホルダ本体内に入れて、ステーを挿通孔に挿通させることによって、格納ホルダ30−3はシートクッションの裏面被覆材(シートクッション裏面12a)との間でヘッドレストを保持、格納する。
【0044】
この構成では、ネット地からなるホルダ本体32−3がヘッドレスト16の全面を覆ってその内部にヘッドレストを保持、格納するため、荷物の出し入れ時や乗降時に上方に押す力(外力)がヘッドレスト16に加わっても、格納ホルダ30−3はその外力に抵抗してヘッドレストを十分に保持、格納でき、上方へのヘッドレスト16の抜け落ちを確実に阻止できる。
【0045】
上記のように本発明によれば、上下端、または左右端を固定した格納ホルダでヘッドレストを被装してシートクッションの裏面被覆材(シートクッション裏面)に押圧して保持、格納するため、ヘッドレストの自重に依存することなく、荷物の出し入れ時や乗降時に上方に押す力や車両走行時の振動などがヘッドレストに加わっても、上方へのヘッドレストの抜け落ちを十分に阻止できる。
【0046】
上述した実施例は、この発明を説明するためのものであり、この発明を何等限定するものでなく、この発明の技術範囲内で変形、改造等の施されたものも全てこの発明に包含されることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、自動車のリヤシートに適するとはいえ、それに限定されず、収納スペースや昇降スペースを確保するためにシートクッション、シートバックを折り畳んで起立させる各種のシートに応用でき、たとえば、飛行機、船舶、電車等のシートにも広範囲に応用できる。また、シートクッション、シートバックを跳ね上げて車床に対して起立させて格納するシート(タンブルシート)に最適とはいえ、タンブルシートに限定されない。
【符号の説明】
【0048】
10 車両用シート(リヤシート)
12 シートクッション
12a シートクッション裏面
12a’ シートクッションの裏面被覆材
14 シートバック
16 ヘッドレスト
16a ステー
30 格納ホルダ(ヘッドレスト格納ホルダ)
31 連結手段(樹脂バックル)
31a、31b オス型片付ストラップ、メス型片付ストラップ
32 ホルダ本体
32a 基端(固定端)
32b 自由端
34 面ファスナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドレストを取り外して前倒しされたシートバックをシートクッションとともに跳ね上げ、折り畳んでシートクッション、シートバックを車床に対して起立させて格納する車両用シートにおけるシートバックから取り外されたヘッドレストの格納ホルダにおいて、基端がシートクッションの裏面被覆材に固定されてヘッドレスト本体を被装可能な帯状のホルダ本体を有し、
基端に隣接してステーの挿通される挿通孔がホルダ本体に形成され、シートクッション部材に設けた連結手段の一方に着脱自在に係合、連結される連結手段の他方がホルダ本体の自由端に設けられている車両用シートのヘッドレスト格納ホルダ。
【請求項2】
帯状のホルダ本体は上下方向に架け渡されてヘッドレスト本体を被装し、
シートクッションの裏面被覆材に面ファスナの一方が、これに対向する位置で面ファスナの他方がホルダ本体にそれぞれ設けられ、ヘッドレスト本体を被装することなく連結手段が連結されたとき、面ファスナの結合によってホルダ本体のバタツキを防止する請求項1記載の車両用シートのヘッドレスト格納ホルダ。
【請求項3】
帯状のホルダ本体の自由端、シートクッションの裏面被覆材に設けられる連結手段が、ストラップの端に設けられたオス型片、メス型片を持つ樹脂バックルの組合せからなる請求項1または2記載の車両用シートのヘッドレスト格納ホルダ。
【請求項4】
帯状のホルダ本体の自由端、シートクッション部材に設けられる連結手段が、ストラップの端に設けられた面ファスナの組合せ、スナップボタンの組合せのいずれかである請求項1または2記載の車両用シートのヘッドレスト格納ホルダ。
【請求項5】
帯状のホルダ本体が、車床のカーペット地と同じ素材のトリムからなる請求項1〜4のいずれか記載の車両用シートのヘッドレスト格納ホルダ。
【請求項6】
ヘッドレスト本体を被装することなく連結手段が連結されるとき、帯状のホルダ本体が、シートクッションの裏面被覆材に設けられたポケットからの収納物の飛び出しを阻止可能にポケットを覆う請求項1〜5のいずれか記載の車両用シートのヘッドレスト格納ホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−131355(P2012−131355A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284951(P2010−284951)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(000133098)株式会社タチエス (454)
【Fターム(参考)】