説明

車両用シート状態判定装置

【課題】車両用シート状態判定装置のコストを低減すること。
【解決手段】車両用シート状態判定装置50は、シート20に関する情報を個別に検知する複数の検知センサ60A〜60Dと、複数の検知センサによって検知された各々の検知情報に基づいてシートの状態を判定する判定部71とを備える。判定部は、単一の送信ポートPと単一の受信ポートPとを有する。送信ポートは、複数の検知センサの全てに対して、各々の検知情報を要求する情報要求信号を送信する。受信ポートは、情報要求信号に応答して複数の検知センサがそれぞれ発した各々の検知情報を受信する。複数の検知センサは、互いに同じタイミングで個別に検知した各々の検知情報を記憶し、この記憶している各々の検知情報を、情報要求信号に応答して互いに異なるタイミングで受信ポートに送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートの状態を判定するための、シート状態判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の乗員を保護するために、シートベルトやエアバッグを装備した車両の開発が進められている。シートベルトやエアバッグは、運転席の他に助手席にも装備されることが多い。助手席には、小さい子供を座らせるためのチャイルドシートを取付ける場合があり、また、荷物を置く場合もある。その場合には、シートベルトのプリテンショナやエアバッグの作動を、一時的に停止状態にする必要がある。このため、シートの状態を判定するための、シート状態判定装置の開発が進められている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この特許文献1で知られているシート状態判定装置は、シート本体に加わる荷重を検知する複数の荷重センサと、これらの荷重センサが検知した検知情報に基づいて乗員判定を行う電子制御装置とからなると、いうものである。
【0004】
詳しく説明すると、電子制御装置は、単一の送信ポートと複数の受信ポートとを有している。単一の送信ポートは、電子制御装置から複数の荷重センサの全てに対して、検知情報を要求する情報要求信号を送信するための端子である。複数の受信ポートは、複数の荷重センサが発した各々の検知情報を受信するための端子であり、複数の荷重センサと同数だけ有する。電子制御装置は、複数の荷重センサによって検知された各々の検知情報に基づいて、乗員判定を行うことができる。
【0005】
電子制御装置は、単一の送信ポートから複数の荷重センサの各々に対して、同時に情報要求信号を送信する。情報要求信号を一斉に受信した複数の荷重センサは、個別に荷重を検知し、その検知情報をそれぞれ信号線(ハーネス)を介して、各々の受信ポートに送信する。各荷重センサから個別の信号線を介して、各々の受信ポートに検知信号を送信するので、複数の検知信号を同時に送信することができる。このため、電子制御装置が受信する各々の検知情報には、検知タイミングのずれに伴う変動が無い。つまり、いわゆる、複数の検知情報の同時性を確保することができる。
【0006】
しかしながら、このような従来の技術では、複数の荷重センサと同数の受信ポートが必要である。電子制御装置の構成部品が多くなるとともに、その分、構成が複雑にならざるを得ない。このため、シート状態判定装置のコストを削減するには限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−38714公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、複数の検知センサの検知情報に基づいて、シートの状態を適切に判定することができるとともに、車両用シート状態判定装置のコストを低減することができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、車両のシートに関する情報を個別に検知する複数の検知センサと、この複数の検知センサによって検知された各々の検知情報に基づいて前記シートの状態を判定する判定部とを、備えた車両用シート状態判定装置において、前記判定部は、前記複数の検知センサの全てに対して、前記各々の検知情報を要求する情報要求信号を送信するための、単一の送信ポートと、前記情報要求信号に応答して前記複数の検知センサがそれぞれ発した前記各々の検知情報を受信するための、単一の受信ポートとを有し、前記複数の検知センサは、互いに同じタイミングで個別に検知した前記各々の検知情報を記憶し、この記憶している前記各々の検知情報を、前記情報要求信号に応答して互いに異なるタイミングで前記単一の受信ポートに送信するものであることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、複数の検知センサが各々の検知情報をそれぞれ送信する各タイミングは、情報要求信号を受けたタイミングを基準にして、それぞれ予め設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、複数の検知センサは、シートに関する情報を、互いに同じタイミングで個別に検知し且つ記憶し、この記憶している各々の検知情報を、判定部からの情報要求信号に応答して、互いに異なるタイミングで判定部に送信する。
【0012】
このように、複数の検知センサは、互いに同じ検知タイミングで、シートに関する情報をそれぞれ検知する。このため、各々の検知情報には、検知タイミングのずれに伴う変動が無い。つまり、いわゆる、複数の検知情報の同時性を確保することができる。一方、受信ポートは、複数の検知情報を互いに異なるタイミングで受信するので、1つだけ有ればよい。しかも、受信ポートは、同一タイミングで検知された複数の検知情報を、順次受信するだけなので、各々の検知情報には、検知タイミングのずれに伴う変動が無い。複数の検知センサに対して、受信ポートが1つだけであるにもかかわらず、判定部は複数の検知情報を、検知タイミングのずれに伴う変動が無く、受信することができる。従って、判定部は複数の検知情報に基づいて、シートの状態を適切に判定することができる。
【0013】
さらには、受信ポートの数量が1つだけなので、判定部を少ない部品(例えば少ないコネクタピン)で、かつ比較的簡単な構成とすることができ、この結果、判定部の製造コストを削減することができ、しかも、判定部を小型化することができる。また、複数の検知センサと受信ポートとの間を接続するための、ハーネスの数量を削減することができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、複数の検知センサが検知情報をそれぞれ送信するタイミングは、送信ポートから情報要求信号を受けたタイミングを基準にして、予め設定されている。このため、全ての検知センサが同時に情報要求信号を受けたタイミングを基準にして、各々の検知センサは、互いに異なるタイミングで、検知情報をそれぞれ送信する。従って、判定部は、各検知センサに対し、互いに異なるタイミングで個別に情報要求信号を送信する必要がない。判定部は、情報要求信号を一回送信するだけの単純な通信ですむ。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1に係る車両用シート状態判定装置を備えている車両を側方から見た図である。
【図2】図1に示された車両用シート状態判定装置のブロック構成図である。
【図3】図2に示された判定部の制御フローである。
【図4】図3に示された制御フローの実行に伴う送信ポートが送信する信号と受信ポートで受信する信号との、時間的な関係を示すタイムチャートである。
【図5】本発明の実施例2に係る判定部の制御フローである。
【図6】図5に示された制御フローの実行に伴う送信ポートが送信する信号と受信ポートで受信する信号との、時間的な関係を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0017】
実施例1に係る車両用シート状態判定装置を備えた車両の例を、図1〜図4に基づき説明する。
図1は、車両10に備えたシート20とシートベルト装置30とエアバッグ装置40とを側方から見た状態で表している。また、シート20は、乗員Mnが座る助手席として例示している。
【0018】
シート20は、シートクッション21とシートバック22とヘッドレスト23とからなる。シートクッション21は、車体11のフロア12に固定されたシート支持フレーム24の上に取り付けられている。
【0019】
シートベルト装置30は、シート20に着座した乗員Mnをベルト31(シートベルト、ウェビングとも言う。)によって拘束するものである。シートベルト装置30によれば、乗員Mnの一方の肩部と腰部を同時に拘束するベルト31を、図示せぬリトラクタによって巻き取ることができる。このシートベルト装置30は、ベルト31をアッパアンカ32とセンタアンカ33とロアアンカ(図示せず)の、3つのアンカによって支持する3点支持式の構成である。
【0020】
エアバッグ装置40は、ダッシュボード13の内部に配置されたエアバッグモジュール41と、このエアバッグモジュール41を制御するエアバッグ制御部42とからなる。エアバッグモジュール41は、エアバッグ43を折り畳んだ状態でリテーナに収納したものである。エアバッグ制御部42は、例えば車両10が前方の障害物に衝突したときに、図示せぬ衝突検知センサから信号を受けて、エアバッグモジュール41にバッグ展開制御信号を発する。
【0021】
エアバッグ制御部42からバッグ展開制御信号を受けたエアバッグモジュール41は、インフレータがガスを発生することにより、エアバッグ43を膨張させて車室14内に展開させて、更に乗員Mnの上半身の近傍に展開させる。この結果、シート20(助手席)に着座した乗員Mnをエアバッグ43によって保護することができる。
【0022】
図1及び図2に示すように、車両10は車両用シート状態判定装置50を備えている。この車両用シート状態判定装置50は、複数(例えば4個)の検知センサ60A〜60Dと、1つの判定ユニット70とからなる。
【0023】
複数の検知センサ60A〜60Dは、シート20に関する情報を個別に検知するものであり、例えば、シートクッション21に作用する荷重を検知するための、荷重センサによって構成される。複数の検知センサ60A〜60Dは、例えばシートクッション21とシート支持フレーム24との間に配置されており、シートクッション21を上から見たときに、前後左右の4隅に位置している。このため、シートクッション21に着座した乗員Mnの体重やシートクッション21の上に置かれた荷物などの重量を、複数の検知センサ60A〜60Dによって検知することができる。乗員Mnの着座姿勢は頻繁に変化し得る。この変化に対応して常に適切な値を検知するために、シートクッション21に検知センサ60A〜60Dを複数設け、各検知センサ60A〜60Dの総和を求めることにした。
【0024】
ここで、シートクッション21の右前に位置する検知センサ60Aのことを「第1の検知センサ60A」、シートクッション21の左前に位置する検知センサ60Bのことを「第2の検知センサ60B」、シートクッション21の右後に位置する検知センサ60Cのことを「第3の検知センサ60C」、シートクッション21の左後に位置する検知センサ60Dのことを「第4の検知センサ60D」ということにする。
【0025】
各検知センサ60A〜60Dは、それぞれ検知部61と記憶部62と信号処理部63とからなる。検知部61は、シートクッション21に作用する荷重(シート20に関する情報)を検知する検知部分であって、例えば歪みゲージによって構成される。記憶部62は、検知部61によって検知された荷重の情報(検知情報)を記憶する部分である。信号処理部63は、検知部61に対して検知指令を発する機能と、記憶部62に対して検知情報の記憶指令をする機能と、記憶部62に記憶されている検知情報を読み出して外部に出力する機能とを有する。
【0026】
判定ユニット70は、判定部71とダイオード72とからなる。判定部71は、複数の検知センサ60A〜60Dによって検知された各々の検知情報に基づいてシート20の状態を判定するものであって、判定結果を例えばエアバッグ制御部42に発する。この判定部71は、例えばマイクロコンピュータによって構成されており、単一の送信ポートPと単一の受信ポートPとを有している。
【0027】
送信ポートPは、判定部71が複数の検知センサ60A〜60Dの全てに対して、各々の検知情報を要求する情報要求信号を送信するためのポートである。この送信ポートPは、逆流防止用のダイオード72と信号線73とを介して、全ての検知センサ60A〜60Dの各信号処理部63に接続されている。ダイオード72は、送信ポートPから各検知センサ60A〜60Dへ送信するだけの、単方向通信を許容するものである。
【0028】
受信ポートPは、判定部71の情報要求信号に応答して複数の検知センサ60A〜60Dがそれぞれ発した、各々の検知情報を受信するためのポートである。この受信ポートPは信号線73を介して、全ての検知センサ60A〜60Dの各信号処理部63に接続されている。
【0029】
次に、判定部71をマイクロコンピュータとした場合の制御フローについて、図1〜図2を参照しつつ、図3に基づき説明する。
【0030】
図3は、判定部71(図2参照)によって実行される、シート状態判定制御の一例の制御フローチャートを示している。
【0031】
判定部71は、先ずステップST01において、全ての検知センサ60A〜60Dに対してサンプルホールド信号を送信する。具体的には、判定部71は、送信ポートPからダイオード72及び信号線73を介して、全ての検知センサ60A〜60Dの各信号処理部63にサンプルホールド信号を送信する。ここで、サンプルホールド信号とは、シート20に関する情報を検知し且つ記憶させるための、要求信号のことである。
【0032】
サンプルホールド信号を受信した各々の信号処理部63は、対応する検知部61に対して検知指令を発する。各々の検知部61は、シート20に関する情報(荷重の情報)を個別に検知する。各々の検知部61によって検知された情報、つまり検知情報は対応する記憶部62に個別に記憶される。このように、全ての検知センサ60A〜60Dは、シート20に関する情報を、互いに同じタイミングで個別に検知し且つ記憶する。各々の検知情報には、検知タイミングのずれに伴う変動が無い。つまり、いわゆる、複数の検知情報の同時性を確保することができる。
【0033】
判定部71は、次のステップST02において、第1の検知センサ60Aに対して情報要求信号を送信する。具体的には、判定部71は、送信ポートからPからダイオード72及び信号線73を介して、第1の検知センサ60Aの信号処理部63に情報要求信号を送信する。ここで、情報要求信号とは、記憶部62に記憶されているシート20に関した情報(検知情報)を要求するための、要求信号のことである。
【0034】
この情報要求信号を受信した、第1の検知センサ60Aの信号処理部63は、対応した記憶部62に記憶されている検知情報を読み込み、所定の送信フォーマットに成形し、信号線73を介して判定部71の受信ポートPに送信する。
【0035】
判定部71は、次のステップST03において、第1の検知センサ60Aからの検知情報を受信したか否かを判断する。ステップST03において、第1の検知センサ60Aから送信された検知情報を、受信したと判断した場合には、次のステップST04に進み、受信していないと判断した場合には、受信するまで、このステップST03を繰り返す。このようにして、第1の検知センサ60Aの検知情報を確実に受信することができる。
【0036】
判定部71は、次のステップST04において、第2の検知センサ60Bに対し、上記ステップST02と同様の処理を実行する。つまり、第2の検知センサ60Bに対して情報要求信号を送信する。この情報要求信号を受信した、第2の検知センサ60Bの信号処理部63は、対応した記憶部62に記憶されている検知情報を読み込んで、信号線73を介して判定部71の受信ポートPに送信する。
【0037】
判定部71は、次のステップST05において、上記ステップST03と同様の処理を実行する。つまり、第2の検知センサ60Bからの検知情報を受信したか否かを判断する。検知情報を受信したと判断した場合には、次のステップST06に進み、受信していないと判断した場合には、受信するまでステップST05を繰り返す。
【0038】
判定部71は、次のステップST06において、第3の検知センサ60Cに対し、上記ステップST02と同様の処理を実行する。つまり、第3の検知センサ60Cに対して情報要求信号を送信する。この情報要求信号を受信した、第3の検知センサ60Cの信号処理部63は、対応した記憶部62に記憶されている検知情報を読み込んで、信号線73を介して判定部71の受信ポートPに送信する。
【0039】
判定部71は、次のステップST07において、上記ステップST03と同様の処理を実行する。つまり、第3の検知センサ60Cからの検知情報を受信したか否かを判断する。検知情報を受信したと判断した場合には、次のステップST08に進み、受信していないと判断した場合には、受信するまでステップST07を繰り返す。
【0040】
判定部71は、次のステップST08において、第4の検知センサ60Dに対し、上記ステップST02と同様の処理を実行する。つまり、第4の検知センサ60Dに対して情報要求信号を送信する。この情報要求信号を受信した、第4の検知センサ60Dの信号処理部63は、対応した記憶部62に記憶されている検知情報を読み込んで、信号線73を介して判定部71の受信ポートPに送信する。
【0041】
判定部71は、次のステップST09において、上記ステップST03と同様の処理を実行する。つまり、第4の検知センサ60Dからの検知情報を受信したか否かを判断する。検知情報を受信したと判断した場合には、次のステップST10に進み、受信していないと判断した場合には、受信するまでステップST09を繰り返す。
【0042】
判定部71は、次のステップST10において、全ての検知センサ60A〜60Dから受信した各検知情報の総和、つまり、シートクッション21に作用している全荷重を算出する。
【0043】
判定部71は、次のステップST11において、各検知情報の総和に基づいて、シート20の状態を判定した後に、この制御フローによる制御を終了する。つまり、複数の検知センサ60A〜60Dによって検知された各々の検知情報に基づいて、シート20の状態を判定し、判定結果をエアバッグ制御部42に送信する。例えば、シートクッション21に作用している全荷重の大きさに応じて、シート20に大人または子供が着座しているか、あるいはシート20に荷物が置かれているかを、判定する。
【0044】
エアバッグ制御部42は、判定部71の判定結果に基づいて、図1に示すエアバッグモジュール41の作動を制御する。例えば、シート20に大人が着座しているとの判定結果がでた場合には、エアバッグ制御部42がエアバッグモジュール41にバッグ展開許可制御信号を発することによって、エアバッグ43が乗員Mnの上半身の近傍に膨張、展開することを許可する。一方、シート20に子供が着座している、またはシート20に荷物が置かれているとの判定結果がでた場合には、エアバッグ制御部42はエアバッグモジュール41にバッグ展開禁止制御信号を発することによって、エアバッグ43が展開することを禁止する。このように、エアバッグ制御部42は、シート20の状態に関する情報に応じた制御を行うことができる。
【0045】
図4は、上記図3に示す制御フローの実行に伴う、送信ポートP(図2参照)が送信する信号と、受信ポートP(図2参照)で受信する信号との、時間的な関係を示すタイムチャートである。図3に示す各ステップと図4に示すタイムチャートとを関連づけて、以下に説明する。
【0046】
なお、各々の検知センサ60A〜60Dの送受信のタイミングと、判定部71の送受信のタイミングとの、時間差は微小時間である。従って、各々の検知センサ60A〜60Dと判定部71との通信において、一方の送信が完了したタイミングと、他方の受信が完了したタイミングは同時であるものとして、以下に説明する。
【0047】
先ず、時点t1において、ステップST01は、全ての検知センサ60A〜60Dにサンプルホールド信号を送信する。
次に、時点t2において、ステップST02は、第1の検知センサ60Aに情報要求信号の送信を開始する。時点t2から微少時間を経過した時点t3において、判定部71からの情報要求信号の送信が完了するとともに、第1の検知センサ60Aにおいて情報要求信号の受信も完了する。
判定部71において、情報要求信号の送信が完了した直後から、ステップST03は、第1の検知センサ60Aからの検知情報を受信したか否かを判断している。第1の検知センサ60Aが情報要求信号の受信を完了した直後の、時点t4において、第1の検知センサ60Aは、判定部71に検知情報を送信する。同時に、判定部71において検知情報の受信が完了する。
【0048】
ステップST03が、検知情報の受信を完了したと判断した直後の、時点t5において、ステップST04は、上記ステップST02と同様に、第2の検知センサ60Bに情報要求信号の送信を開始する。時点t5から微少時間を経過した時点t6において、情報要求信号の送受信が完了する。この送受信が完了した直後の時点t7において、第2の検知センサ60Bは、判定部71に検知情報を送信する。同時に、判定部71において検知情報の受信が完了する。
【0049】
ステップST05が、検知情報の受信を完了したと判断した直後の、時点t8において、ステップST06は、上記ステップST02と同様に、第3の検知センサ60Cに情報要求信号の送信を開始する。時点t8から微少時間を経過した時点t9において、情報要求信号の送受信が完了する。この送受信が完了した直後の時点t10において、第3の検知センサ60Cは、判定部71に検知情報を送信する。同時に、判定部71において検知情報の受信が完了する。
【0050】
ステップST07が、検知情報の受信を完了したと判断した直後の、時点t11において、ステップST08は、上記ステップST02と同様に、第4の検知センサ60Dに情報要求信号の送信を開始する。時点t11から微少時間を経過した時点t12において、情報要求信号の送受信が完了する。この送受信が完了した直後の時点t13において、第4の検知センサ60Dは、判定部71に検知情報を送信する。同時に、判定部71において検知情報の受信が完了する。
【0051】
上記構成の実施例1は、次の効果を発揮する。
複数の検知センサ60A〜60Dは、シート20に関する情報を、互いに同じタイミングで個別に検知し且つ記憶し、この記憶している各々の検知情報を、判定部71からの情報要求信号に応答して、互いに異なるタイミングで判定部71に送信する。
【0052】
このように、複数の検知センサ60A〜60Dは、互いに同じ検知タイミングで、シート20に関する情報をそれぞれ検知する。このため、各々の検知情報には、検知タイミングのずれに伴う変動が無い。つまり、いわゆる、複数の検知情報の同時性を確保することができる。一方、受信ポートPは、複数の検知情報を互いに異なるタイミングで受信するので、1つだけ有ればよい。しかも、受信ポートPは、同一タイミングで検知された複数の検知情報を、順次受信するだけなので、各々の検知情報には、検知タイミングのずれに伴う変動が無い。複数の検知センサ60A〜60Dに対して、受信ポートPが1つだけであるにもかかわらず、判定部71は複数の検知情報を、検知タイミングのずれに伴う変動が無く、受信することができる。従って、判定部71は複数の検知情報に基づいて、シート20の状態を適切に判定することができる。
【0053】
さらには、受信ポートPの数量が1つだけなので、判定部71を少ない部品(例えば少ないコネクタピン)で、かつ比較的簡単な構成とすることができ、この結果、判定部71の製造コストを削減することができ、しかも、判定部71を小型化することができる。また、複数の検知センサ60A〜60Dと受信ポートPとの間を接続するための、ハーネスの数量を削減することができる。
【実施例2】
【0054】
次に、実施例2に係る車両用シート状態判定装置を備えた車両の例を、図5及び図6に基づき説明する。なお、実施例2の車両用シート状態判定装置10は、判定部71によって実行されるシート状態判定制御の内容を、図5に示す制御フローチャートに変更したことを特徴とし、他の構成については上記図1〜図2に示す構成と同じなので、説明を省略する。
【0055】
図5は、判定部71(図2参照)によって実行される、実施例2のシート状態判定制御の一例の制御フローチャートを示している。
【0056】
判定部71は、先ずステップST21において、送信ポートPからダイオード72及び信号線73を介して、全ての検知センサ60A〜60Dにサンプルホールド信号を送信する。つまり、上記図3に示すステップST01と同じ制御を実行する。サンプルホールド信号を受信した全ての検知センサ60A〜60Dは、シート20に関する情報を、互いに同じタイミングで個別に検知し且つ記憶する。
【0057】
判定部71は、次のステップST22において、送信ポートPからダイオード72及び信号線73を介して、全ての検知センサ60A〜60Dに情報要求信号を送信する。この情報要求信号を受信した、各検知センサ60A〜60Dは、対応した記憶部62に記憶されている検知情報をそれぞれ読み込み、所定のタイミングで順次、信号線73を介して判定部71の受信ポートPに送信する。各検知センサ60A〜60Dが、それぞれの検知情報を順次送信するタイミングは、予め設定されている。
【0058】
判定部71は、次のステップST23において、第1の検知センサ60Aからの検知情報を受信する。次にステップST24において第2の検知センサ60Bからの検知情報を受信し、次にステップST25において第3の検知センサ60Cからの検知情報を受信し、次にステップST26において第4の検知センサ60Dからの検知情報を受信する。
【0059】
判定部71は、次のステップST27において、全ての検知センサ60A〜60Dから受信した各検知情報の総和、つまり、シートクッション21に作用している全荷重を算出する。
【0060】
判定部71は、次のステップST28において、各検知情報の総和に基づいて、シート20の状態を判定した後に、この制御フローによる制御を終了する。つまり、複数の検知センサ60A〜60Dによって検知された各々の検知情報に基づいて、シート20の状態を判定し、判定結果をエアバッグ制御部42に送信する。
【0061】
このように、実施例2の判定部71は、各々の検知センサ60A〜60Dに対して個別に情報要求信号を送信するのではなく、全ての検知センサ60A〜60Dに一斉に情報要求信号を送信する。
【0062】
図6は、上記図5に示す制御フローの実行に伴う、送信ポートP(図2参照)が送信する信号と、受信ポートP(図2参照)で受信する信号との、時間的な関係を示すタイムチャートである。図5に示す各ステップと図6に示すタイムチャートとを関連づけて、以下に説明する。
【0063】
なお、各々の検知センサ60A〜60Dの送受信のタイミングと、判定部71の送受信のタイミングとの、時間差は微小時間である。従って、各々の検知センサ60A〜60Dと判定部71との通信において、一方の送信が完了したタイミングと、他方の受信が完了したタイミングは同時であるものとして、以下に説明する。
【0064】
先ず、時点t21において、ステップST21は、全ての検知センサ60A〜60Dにサンプルホールド信号を送信する。
次に、時点t22において、ステップST22は、全ての検知センサ60A〜60Dに情報要求信号の送信を開始する。時点t22から微少時間を経過した時点t23において、判定部71からの情報要求信号の送信が完了するとともに、全ての検知センサ60A〜60Dにおいて情報要求信号の受信も完了する。
このとき、情報要求信号にサンプルホールド信号を含ませることも可能であり、この場合はステップST21を省略することができる。
【0065】
各々の検知センサ60A〜60Dが検知情報を送信するタイミングt24,t25,t26,t27は、検知センサ60A〜60Dが情報要求信号の受信を完了した時点t23を基準とするように、予め設定されている。
【0066】
つまり、第1の検知センサ60Aは、時点t23から一定の時間T1を経過した時点t24に、判定部71に検知情報を送信する。同時に、判定部71において検知情報の受信が完了する。
第2の検知センサ60Bは、時点t23から一定の時間T2を経過した時点t25に、判定部71に検知情報を送信する。同時に、判定部71において検知情報の受信が完了する。
第3の検知センサ60Cは、時点t23から一定の時間T3を経過した時点t26に、判定部71に検知情報を送信する。同時に、判定部71において検知情報の受信が完了する。
第4の検知センサ60Dは、時点t23から一定の時間T4を経過した時点t27に、判定部71に検知情報を送信する。同時に、判定部71において検知情報の受信が完了する。
【0067】
各々の時間T1〜T4の長さについては、「T1<T2<T3<T4」の関係に設定されている。時点t24は、第1の検知センサ60Aが情報要求信号の受信を完了した時点t23から、微少の時間を経過した時点である。時点t25は、判定部71が第1の検知センサ60Aからの検知情報を受信完了した後の時点である。時点t26は、判定部71が第2の検知センサ60Bからの検知情報を受信完了した後の時点である。時点t27は、判定部71が第3の検知センサ60Cからの検知情報を受信完了した後の時点である。
【0068】
上記構成の実施例2は、上記実施例1の効果を発揮する他に、次の効果を発揮する。
つまり、実施例2では、複数の検知センサ60A〜60Dが検知情報をそれぞれ送信するタイミングt24,t25,t26,t27は、送信ポートPから情報要求信号を受けたタイミングt23を基準にして、予め設定されている。このため、全ての検知センサ60A〜60Dが同時に情報要求信号を受けたタイミングt23を基準にして、各々の検知センサ60A〜60Dは、互いに異なるタイミングt24,t25,t26,t27で、検知情報をそれぞれ送信する。従って、判定部71は、各検知センサ60A〜60Dに対し、互いに異なるタイミングで個別に情報要求信号を送信する必要がない。判定部71は、情報要求信号を一回送信するだけの単純な通信ですむ。
【0069】
なお、本発明では、複数の検知センサ60A〜60Dは、シート20に関する情報を検知するものであればよく、シートクッション21に作用する荷重を検知するものに限定されるものではない。
また、判定部71は、シート20の状態を判定するものであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の車両用シート状態判定装置50は、自動車の助手席の状態を判定するのに採用する場合に好適である。
【符号の説明】
【0071】
10…車両、20…シート、50…車両用シート状態判定装置、60A〜60D…複数の検知センサ、71…判定部、P…送信ポート、P…受信ポート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシートに関する情報を個別に検知する複数の検知センサと、この複数の検知センサによって検知された各々の検知情報に基づいて前記シートの状態を判定する判定部とを、備えた車両用シート状態判定装置において、
前記判定部は、
前記複数の検知センサの全てに対して、前記各々の検知情報を要求する情報要求信号を送信するための、単一の送信ポートと、
前記情報要求信号に応答して前記複数の検知センサがそれぞれ発した前記各々の検知情報を受信するための、単一の受信ポートとを有し、
前記複数の検知センサは、互いに同じタイミングで個別に検知した前記各々の検知情報を記憶し、この記憶している前記各々の検知情報を、前記情報要求信号に応答して互いに異なるタイミングで前記単一の受信ポートに送信するものである、ことを特徴とした車両用シート状態判定装置。
【請求項2】
前記複数の検知センサが前記各々の検知情報をそれぞれ送信する各タイミングは、前記情報要求信号を受けたタイミングを基準にして、それぞれ予め設定されていることを特徴とした請求項1記載の車両用シート状態判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−116290(P2011−116290A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276709(P2009−276709)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】