説明

車両用シート装置

【課題】シートクッションのチルト調整を行う機構を有し、高い剛性、小型化、そして高い外観品質をもつ車両用シート装置を提供すること。
【解決手段】回転リンク20と、その第1ジョイント部22とアッパレール82との間を連結する床面取付用前側ブラケット40及び前方揺動リンク71と、前部21にて回転リンク20を接合する側面ブラケット10と、その後部11とアッパレール82との間を連結する床面取付用後側ブラケット50及び後方揺動リンク73と、側面ブラケット10に固定され、回転リンク20を回転駆動する前側駆動装置60〜62と、側面ブラケット10及び第2ジョイント部23がそれぞれ後部32及び前部31にて連結するクッションフレーム30とを有する。第2ジョイント部23及びクッションフレーム30との間はクッションフレーム揺動リンク72にて連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の臀部に対向する座面をもつシートクッションの前部を上下させてチルト調整を行うことができる車両用シート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用シート装置としては、特許文献1に、リフタ用前側リンク(22)に対して回転自在に接合された回転リンク(62)と、その回転リンク(62)に一端部を相対回転可能に連結した揺動リンク(64)とを設け、その揺動リンク(64)の他端部にクッションを軸着し、リフタ用前側リンク(22)に装着した駆動装置で回転リンク(62)を回転させることによりクッションのチルト調整を行うことができるものが開示されている。
【0003】
また、特許文献2に、フロントバーチカル機構(201)の駆動機構(251)と、リアバーチカル機構(301)の駆動機構(351)とを異なる高さに設けると共に、上方から見て、少なくともフロントバーチカル機構(201)の駆動機構(251)の一部と、リアバーチカル機構(301)の駆動機構(351)の一部とがラップするように配置されたものが開示されている。
【特許文献1】独国特許出願公開第10226717号明細書(図1など)
【特許文献2】特開2001−28955号公報(図1など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の車両用シート装置は、リフタ用前側リンク(22)に駆動機構及び回転リンク(62)が配置されるため、リフタ用前側リンク(22)が巨大になり、且つ回転させるための周辺スペースも大きく採る必要がある。そして、回転リンク(62)は、その回転中心と揺動リンク(64)への連結部との2点の長さに比例してチルト調整の幅が決定されることから、チルト調整の調節の幅を大きくするには、回転リンク(62)を大きくする必要があり、充分な剛性を得ることが困難であった。また、ロアアーム(26)の前端部が回転自在に連結され、その高さを規定するリフト用前側リンク(22)部に対して、回転リンク(62)、揺動リンク(64)を介してクッションフレームを上下動する構造のため、大きく上下動させると、ロアアーム(26)とクッションフレームとの隙間が大きくなって、クッションの座面の側部や底部が露出することになり、外観品質が損なわれていた。また、特許文献2の車両シート装置は、シートクッションの長さを調節する機構も有しているため、全体として回転支持部が多くなることにより、クッションフレームの上下方向及び前後方向の保持における剛性が充分ではなかった。
【0005】
本発明は上記実情に鑑み完成したものであり、シートクッションのチルト調整を行う機構を採用するにあたり、高い剛性、小型化、そして高い外観品質を実現できる車両用シート装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する請求項1に係る車両用シート装置の特徴は、シートクッションを支持し、後方部が床面取付用後側ブラケットに回転可能に連結された側面ブラケットと、前記側面ブラケットの前方部に、中央部で回転可能に支持された回転リンクと、前記回転リンクを前記側面ブラケットに対して相対回転させる前方駆動装置と、後端部が前記側面ブラケットの中央部に回転可能に連結され、前端部が前記回転リンクの前記中央部より前方の第2ジョイント部に上下方向の相対移動を規制し前後方向の相対移動を許容して連結された前記シートクッションのクッションフレームと、一端が前記回転リンクに前記中央部より後方の第1ジョイント部に上下方向の相対移動を規制し前後方向の相対移動を許容して連結された床面取付用前側ブラケットと、を有することである。
【0007】
請求項2に係る車両用シート装置の特徴は、請求項1において、前記第2ジョイント部と前記クッションフレームとがクッションフレーム揺動リンクを介して相対回転可能に連結されていることである。
【0008】
請求項3に係る車両用シート装置の特徴は、請求項1又は2において、前記第1ジョイント部と前記床面取付用前側ブラケットとが前方揺動リンクを介して相対回転可能に連結されていることである。
【0009】
請求項4に係る車両用シート装置の特徴は、請求項1〜3の何れか1項において、前記側面ブラケットの後方部を前記床面取付用後側ブラケットに回動可能に連結するために、一端が前記側面ブラケットの前記後方部に回転可能に連結され、他端が前記床面取付部材に回転可能に連結された後方揺動リンクと、前記後方揺動リンクを前記側面ブラケットに対して相対回転させる後方駆動装置と、を有することである。
【発明の効果】
【0010】
前記請求項1に係る発明によれば、車両用シート装置のクッションのチルト機構を実現するために用いる回転リンクに特徴を持たせることにより、剛性の向上、小型化、そして外観品質の向上を実現することができる。
【0011】
回転リンクを前側駆動装置により回転させると、回転リンクは回転中心から後方に位置する第1ジョイント部が下方に回転移動し、回転中心から前方に位置する第2ジョイント部が上方に回転移動する。第1ジョイント部は床面取付用前側ブラケットを下方に押すことにより、側面ブラケットの前端部が上方に移動する。そして、第2ジョイント部はクッションフレームの前端部を上方に押し上げる。このように、回転リンクの回転中心、第1ジョイント部、そして第2ジョイント部の3点を有効に利用してチルト機構の調節幅を各ジョイント部に分散させることにより、回転リンクの2点でチルト機構を実現していた従来技術と比べて、回転リンクの回転中心と各ジョイント部までの長さを短くすることができるため剛性を向上することができる。また、同じ調節幅を実現する場合でも従来技術と比べて回転リンクの長さを有効利用することが可能になるから小型化することができ、全体の大きさも小さくできる。更に、クッションフレームは側面ブラケットを基準として角度を変化させているが、側面ブラケットについてもクッションフレームの動きに応じて角度を変化させているから、クッションフレームの角度を大きく変化させても、側面ブラケットの角度もある程度変化することなり、クッションフレームと側面ブラケットとの間隔の大きさは従来技術よりも相対的に小さくすることができる。また、回転リンクにおける第1ジョイント部から第2ジョイント部までの長さと、第1ジョイント部から回転中心までの長さの比を変更することにより、クッションフレームの角度の変化と側面ブラケットの角度の変化の大きさの比が調節できるため、適正な移動量を容易に設定できる。従って、クッションフレームと側面ブラケットとの隙間や装置下部が外部に露出するおそれが少なくでき、外観品質を向上できる。
【0012】
前記請求項2及び3に係る発明によれば、前記第1ジョイント部と前記床面取付用前側ブラケットとを連結する前方揺動リンクや、前記第2ジョイント部と前記クッションフレームとの間を連結するクッションフレーム揺動リンクを採用することにより、それぞれ使用時におけるシートクッションのがたつきが抑制できる。
【0013】
前記請求項4に係る発明によれば、前記側面ブラケットと前記床面取付用後側ブラケットとの間を連結する後方揺動リンクを採用することにより、シートクッションの後方についても高さを調節可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(構成)
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態に係る車両用シート装置は、図1に示すように、使用者の臀部を支持するシートクッション3とそのシートクッション3を側面から保持する側面保持部材1と使用者の背中を保持するシートバック90と使用者の頭部を支持するヘッドレスト91と床面取付用前側ブラケット40と床面取付用後側ブラケット50とをもつ。シートクッション3は後部にて側面保持部材1に回動自在に保持されている。シートバック90は下部にて側面保持部材1の後部に回動自在に保持されている。ヘッドレスト91はシートバック90の上部に保持されている。
【0015】
本車両用シート装置は床面取付用前側ブラケット40及び床面取付用後側ブラケット50にて車両の床面F上にスライド機構を介して保持されている。床面取付用前側ブラケット40及び床面取付用後側ブラケット50はロアレール81及びアッパレール82からなるスライド機構のアッパレール82に固定されている。ロアレール81は床面Fに固定されており、ロアレール81に対して車両前後方向に摺動可能に配設されたアッパレール82が車両前後方向にスライドすることにより、車両用シート装置が床面F上を車両前後方向に位置調節可能になっている。
【0016】
本車両用シート装置のシートクッション3及び側面保持部材1の部分に設けられたシートクッション3の前部を上下方向に移動可能にする内部機構を説明する。
【0017】
側面保持部材1は外皮部材13とその内部に配設される側面ブラケット10(R、L:シートの左右に同様の部材が配置されている。左右の部材には必要に応じてR、Lを付して区別する。他の部材についても同様に必要に応じてR、Lを付して区別することがある。)とをもつ(図1、図2)。側面ブラケット10の前部に回動可能に支持された前部支持ピン21に回転リンク20が固定されている(図2、図3)。回転リンク20は、シートクッション3が最も下方向に位置するときに、側面ブラケット10に設けられた回転中心に対して、概ね後方に第1ジョイント部22が、概ね前方に第2ジョイント部23がそれぞれ設けられている部材である。回転リンク20Rには回転中心を中心として車両後方側に拡がる形状として形成されるセクタギヤ24が形成されている。回転リンク20R及び20Lに固定された前部支持ピン21は、伝達ロッド210にて連結されている。
【0018】
回転リンク20は、第1ジョイント部22において、前方揺動リンク71を介して床面取付用前側ブラケット40に回動自在に連結されている。そして、第2ジョイント部23において、クッションフレーム揺動リンク72を介し、シートクッション3内に配設されたクッションフレーム30の前端部に前部支持ピン31ににより回動自在に連結されている。床面取付用前側ブラケット40の枢着点41は、シートクッション3が最も下方に調節されているときに、回転リンク20の第1ジョイント部22よりも車両前方側に設けられており、クッションフレーム30におけるクッションフレーム揺動リンク72の枢着点である前部支持ピン31の車両前後方向の位置は、回転リンク20の第2ジョイント部23とほぼ同じである。クッションフレーム30は後部に設けられた後部支持ピン32にて側面ブラケット10の前後方向の中央部分に回動自在に連結されている。
【0019】
側面ブラケット10Rには回転リンク20Rを回転させてシートクッション3の主に前部を上下させる前方駆動装置60〜62が固定される。前方駆動装置は回転リンク20Rの車両後方側であって、側面ブラケット10Rの外側に固定されている。側面ブラケット10は回転リンク20と比べて動く範囲が少ないので、側面ブラケット10に前方駆動装置60〜62を配置することにより前方駆動装置60〜62の移動を考慮して設定されるスペースが小さくて済む。前方駆動装置60〜62はモータ60、減速機構61、ピニオンギヤ62からなる。モータ60の出力は減速機構61を介してピニオンギヤ62に伝達される。ピニオンギヤ62は回転リンク20Rのセクタギヤ24に噛合している。減速機構61はモータ60の出力をウォームギヤ(図略)に入力し、噛合するウォームホイール(図略)にて減速して出力する機構である。
【0020】
側面ブラケット10は後部に設けられた後部支持ピン11にて、後方揺動リンク73を介し、床面取付用後部ブラケット50に回動自在に接合されている。床面取付用後側ブラケット50の枢着点51は、シートクッション3が最も下方に調節されているときに、側面ブラケット10の後部支持ピン11よりも車両前方側に設けられている。後方揺動リンク73Lは、側面ブラケット10Lの後部支持ピン11Lを中心として形成されるセクタギヤ(図略)をもつ。図2に示すように、後方揺動リンク73R及び73Lに固定され、それぞれ側面ブラケット10R及び10Lに回転可能に支持されている後部支持ピン11は、伝達ロッド110にて連結されている。側面ブラケット10Lには後方揺動リンク73Lを揺動させてシートクッション3の後部を上下させる後方駆動装置63〜65が固定されている。後方駆動装置63〜65はモータ63、減速機構64、ピニオンギヤ65からなる。モータ63の出力は減速機構64を介してピニオンギヤ65に伝達される。ピニオンギヤ65は後方揺動リンク73Lのセクタギヤに噛合している。減速機構64は減速機構61と同様の機構をもつ。側面ブラケット10はリクライニング機構12を介してシートバックフレーム(図略)を保持している。
【0021】
(作動)
・シートクッション前部の上下動調節
前方駆動装置のモータ60を回転させると、減速機構61を介してピニオンギヤ62が回転する。図3において、ピニオンギヤ62が反時計回りに回転すると、噛合するセクタギヤ24を介して回転リンク20Rが前部支持ピン21Rを回転中心として時計回りに回転する。回転リンク20Rと回転リンク20Lとは伝達ロッド210によって連結されており一体的に回転する。従って、以下の動作は左右の機構において同じである。回転リンク20が時計回りに回転すると、第1ジョイント部22に接続された前方揺動リンク71を介して床面取付用前側ブラケット40を下方に押すことになるが、アッパレール82は下方に移動できないので、回転リンク20が反対に押し上げられることになり、結果として側面ブラケット10の前部支持ピン21が上方に押し上げられる。側面ブラケット10は後部支持ピン11にて後方揺動リンク73に連結されているが、後方揺動リンク73との連結部分である後部支持ピン11周りの揺動は後方駆動装置にて制限されているので、後方揺動リンク73と床面取付用後側ブラケット50との枢着点51を回転中心として揺動することになる。従って、側面ブラケット10及び後方揺動リンク73は一体的に時計回りに回転する。
【0022】
また、回転リンク20が回転すると、第2ジョイント部23に接続されたクッションフレーム揺動リンク72を介してクッションフレーム30の前部支持ピン31を上方に押し上げることになる。クッションフレーム30は、後部支持ピン32にて側面ブラケット10に保持されているから、前部支持ピン31が押し上げられることにより、後部支持ピン32を回転中心として時計回りに回転する。
【0023】
以上説明したように、クッションフレーム30は、時計回りに回転する側面ブラケット10に対して更に時計回りに回転することになり、クッションフレーム30は、その前部が持ち上がることになる(図4における実線部分及び図1における2点破線部分)。側面ブラケット10及びクッションフレーム30がそれぞれどの程度の比をもって回転するかは回転リンク20における回転中心(前部支持ピン21)から第1ジョイント部22までの長さと回転中心から第2ジョイント部23までの長さとを調節することで適正な回転角度の比にすることができる。
【0024】
モータ60を反対方向に回転させることにより、ピニオンギヤ62が時計回りに回転する。そうすると、上述した方向とは反対方向に、回転リンク20、側面ブラケット10、クッションフレーム30が回転するから、反対に、クッションフレーム30の前部が下がることになる。
【0025】
・シートクッション全体の上下動調節
後方駆動装置のモータ63を回転させると、減速機構64を介してピニオンギヤ65が回転する。ピニオンギヤ65が車両用シート装置左方からみて時計回りに回転すると、噛合するセクタギヤにより後方揺動リンク73Lが側面ブラケット10Lの後部支持ピン11Lを回転中心として反時計回りに回転する。後方揺動リンク73Lと後方揺動リンク73Rとは伝達ロッド110によって連結されており一体的に回転する。従って、以下の動作は左右の機構において同じである。
【0026】
後方揺動リンク73が反時計回りに回転すると、後方揺動リンク73は側面ブラケット10に対して為す角度が大きくなる。回転リンク20の回転はピニオンギヤ62にて制限されているから、後方揺動リンク73の後部支持ピン11を回転中心とした回転により自由に回転できるのは、回転リンク20における第1ジョイント部22と、床面取付用前側ブラケット40における枢着点41と、床面取付用後側ブラケット50における枢着点51との3点である。これら3点に後部支持ピン11を加えた4点を回転中心として形成された4節リンクが、後方揺動リンク73が反時計回りに回転することで、前方揺動リンク71も反時計回りに回転する。すると、側面ブラケット10は前後部共に上方に移動するから、クッションフレーム30が全体として持ち上がることになる(図5における実線部分)。
【0027】
モータ63を反対方向に回転させることにより、ピニオンギヤ65が反時計回りに回転する。そうすると、上述した方向とは反対方向に、後方揺動リンク73、前方揺動リンク71が回転するから、反対に、クッションフレーム30の全体の位置が下がることになる。
【0028】
このように、クッションフレーム30の全体が持ち上がった状態で、前方駆動装置のモータ60を回転させて、図5において、ピニオンギヤ62が反時計回りに回転すると、噛合するセクタギヤ24を介して回転リンク20Rが前部支持ピン21を回転中心として時計回りに回転する。そうすると、先述したように、回転リンク20の回転により、第1ジョイント部22に接続された前方揺動リンク71を介して床面取付用前側ブラケット40を下方に押すことになり、結果として側面ブラケット10の前部支持ピン21が上方に押し上げられるから、後方揺動リンク73と床面取付用後側ブラケット50との枢着点51を回転中心として揺動することになる。従って、側面ブラケット10及び後方揺動リンク73は一体的に時計回りに回転する。
【0029】
そして、回転リンク20の回転により、第2ジョイント部23に接続されたクッションフレーム揺動リンク72を介してクッションフレーム30の前部支持ピン31が上方に押し上げられて、クッションフレーム30は、後部支持ピン32を回転中心として時計回りに回転する(図6)。
【0030】
・その他
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。特に以下に示す形態を採用することが例示できる。
【0031】
前方駆動装置のモータ60を回転させることにより回転リンク20を回転させてクッションフレーム30の前部を持ち上げるときに、側面ブラケット10と後方揺動リンク73との間がピニオンギヤ65にて制限されていることから、側面ブラケット10と後方揺動リンク73とが為す角度によらず後方揺動リンク73の下端部における枢着点51を回転中心としてそれらは回転する。そのため、後方揺動リンク73は時計回りに回転することになり、側面ブラケット10の後部(すなわちクッションフレーム30の後部)は僅かに下がることになる。つまり、クッションフレーム30の前部を持ち上げようとしたときに、クッションフレーム30の後部が下がることになり、使用者が違和感を感じる虞が想定できる。また、クッションフレーム30の前部を下げようとしたときには、上記作動と反対の流れをもって、クッションフレーム30の後部が上がることになる。そこで、回転リンク20を回転させるときに、側面ブラケット10が時計回り(反時計回り)に回転する程度に応じて、後方揺動リンク73が反時計回り(時計回り)に回転するように後側リフタ機構のモータ63を回転させることで、側面ブラケット10の後部(すなわちクッションフレーム30の後部)の位置の低下(持ち上がり)を防止することができる(図7)。
【0032】
回転リンク20の第1ジョイント部22と床面取付用前側ブラケット40における枢着点41との間の連結を前方揺動リンク71を用いないで行うこともできる。この場合、回転リンク20の第1ジョイント部22に連結ピンを設け、その連結ピンが摺動可能な前後方向に延設される長穴を床面取付用前側ブラケット40に設けるものである。回転リンク20の回転に従い発生する回転リンク20と床面取付用前側ブラケット40との連結部分における前後方向のずれは、床面取付用前側ブラケット40に設けた長穴によって吸収される。長穴は前後方向に設けているから、回転リンク20から伝達される上下方向の力はそのまま床面取付用前側ブラケット40に伝達される。なお、長穴は、床面取付用前側ブラケット40に代えて回転リンク20に設けることもできる。この場合には床面取付用前側ブラケット40に連結ピンを設け、回転リンク20に径方向に延びる長穴を設ける。
【0033】
回転リンク20の第2ジョイント部23とクッションフレーム30における前部支持ピン31との間の連結をクッションフレーム揺動リンク72を用いないで行うこともできる。この場合、回転リンク20の第2ジョイント部23に連結ピンを設け、その連結ピンが摺動可能な前後方向に延設される長穴をクッションフレーム30に設けるものである。回転リンク20の回転に従い発生する回転リンク20とクッションフレーム30との連結部分における前後方向のずれは、クッションフレーム30に設けた長穴によって吸収される。長穴は前後方向に設けているから、回転リンク20から伝達される上下方向の力はそのままクッションフレーム30に伝達される。なお、長穴は、クッションフレーム30に代えて回転リンク20に設けることもできる。この場合にはクッションフレーム30に連結ピンを設け、回転リンク20に径方向に延びる長穴を設ける。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態の車両用シート装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態の車両用シート装置のシートクッション内部の構造を示す上面図である。
【図3】図2のA−A矢視線断面概略図である。
【図4】本発明の実施形態の車両用シート装置を図3の状態から作動させた後の形態を示す断面概略図である(回転リンクを時計回りに回転)。
【図5】本発明の実施形態の車両用シート装置を図3の状態から作動させた後の形態を示す断面概略図である(後方揺動リンクを反時計回りに回転)。
【図6】本発明の実施形態の車両用シート装置を図5の状態から作動させた後の形態を示す断面概略図である(回転リンクを時計回りに回転)。
【図7】本発明の実施形態の車両用シート装置を図3の状態から作動させた後の形態を示す断面概略図である(回転リンクを時計回りに回転)。
【符号の説明】
【0035】
1…側面保持部材 3…シートクッション 90…シートバック 91…ヘッドレスト
10…側面ブラケット
20…回転リンク 21…回転中心 22…第1ジョイント部 23…第2ジョイント部 24…セクタギヤ
30…クッションフレーム
40…床面取付用前側ブラケット
50…床面取付用後側ブラケット
60、63…モータ 61、64…減速機構 62、65…ピニオンギヤ
71…前方揺動リンク 72…クッションフレーム揺動リンク 73…後方揺動リンク
81…ロアレール 82…アッパレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションを支持し、後方部が床面取付用後側ブラケットに回転可能に連結された側面ブラケットと、
前記側面ブラケットの前方部に、中央部で回転可能に支持された回転リンクと、
前記回転リンクを前記側面ブラケットに対して相対回転させる前方駆動装置と、
後端部が前記側面ブラケットの中央部に回転可能に連結され、前端部が前記回転リンクの前記中央部より前方の第2ジョイント部に上下方向の相対移動を規制し前後方向の相対移動を許容して連結された前記シートクッションのクッションフレームと、
一端が前記回転リンクに前記中央部より後方の第1ジョイント部に上下方向の相対移動を規制し前後方向の相対移動を許容して連結された床面取付用前側ブラケットと、
を有することを特徴とする車両用シート装置。
【請求項2】
前記第2ジョイント部と前記クッションフレームとがクッションフレーム揺動リンクを介して相対回転可能に連結されている請求項1に記載の車両用シート装置。
【請求項3】
前記第1ジョイント部と前記床面取付用前側ブラケットとが前方揺動リンクを介して相対回転可能に連結されている請求項1又は2に記載の車両用シート装置。
【請求項4】
前記側面ブラケットの後方部を前記床面取付用後側ブラケットに回動可能に連結するために、一端が前記側面ブラケットの前記後方部に回転可能に連結され、他端が前記床面取付部材に回転可能に連結された後方揺動リンクと、
前記後方揺動リンクを前記側面ブラケットに対して相対回転させる後方駆動装置と、
を有する請求項1〜3の何れか1項に記載の車両用シート装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−120077(P2009−120077A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297547(P2007−297547)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】