説明

車両用シート

【課題】シートパッドを備えた車両用シートにおいて、シートパッドを薄型にすることができながら、着座姿勢の沈み込みを防止することができ、さらに着座時の感触を良好にする。
【解決手段】パッド部材45の裏面側には着座者の着座により主として押圧される着座者対面側の主要被押圧個所Sを挟み込むような位置に配置され且つパッド部材45を支持する少なくとも2本の線状の支持部材50,50が配設されている。ここで、支持部材50,50間に位置するパッド部材45の裏面側Dは、着座により押圧される方向になめらかな曲線形状をなしている。さらに、このなめらかな曲線形状をなすパッド部材45の裏面側Dには、このパッド部材45の成形時に一体的に成形状態となる裏打ち材47が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に設置される車両用シートに関する。詳しくは、本発明は、発泡樹脂を成形することにより形成されるシートパッドを備える車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、乗員が着座する車両用シートが設置される。この車両用シートは、乗員が着座するシートクッションと、着座した乗員の背凭れとなるシートバックとを備える。このようなシートクッションやシートバックには、着座心地を良くするために、クッション材として機能するシートパッドが配設されている。なお、このようなシートパッドは、優れたクッション性を有するように、材料に弾性変形可能な発泡樹脂が選択されている。
【0003】
ところで、このような車両用シートは、重量低減およびコスト低減を鑑みて、上記したように配設されるシートパッドを薄型に構成したいという要請がある。
しかしながら、このような要請に応えてシートパッドを薄型にすると、乗員が着座した場合に、着座した乗員の重量でシートパッドが撓んでしまう。そうすると、着座した乗員の着座姿勢は沈み込んでしまうこととなって、着座している感触が悪いものとなってしまう。
このため、このようなシートパッドの撓みを防止するために、シートパッドの材料に弾性変形し難い硬質の発泡樹脂を選択することが考えられる。しかし、このようにシートパッドの材料に硬質の発泡樹脂を選択すると、着座姿勢の沈み込みは防止することができるものの、着座している感触はゴツゴツとした硬い悪い感触となってしまう。
【0004】
そこで、下記特許文献1にて開示されるように、シートパッドの裏面側にシートパッドを支持する支持部材を設ける技術が知られている。
下記特許文献1にて開示される技術によれば、シートパッドの裏面側にシートパッドを支持する支持部材が設けられているので、シートパッドの材料に柔らかな感触が得られる軟質の発泡樹脂を選択することができる上、着座姿勢の沈み込みを防止することもできるものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−212517
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示される技術にあっては、シートパッドは、支持部材にて当接して支持されているので、このシートパッドには、支持部材からの応力を受け易い部分と受け難い部分とが生まれてしまう。すなわち、シートパッドのうち、支持部材が当接する部分は、支持部材からの応力を直接受けるので圧縮変形し易いものとなってしまうが、支持部材が当接する部分から離れた部分は、支持部材からの応力が受け難くいので圧縮変形し難いものとなっている。
そうすると、シートパッドは、圧縮変形した部分と圧縮変形していない部分との間で、相対的な硬さの差が生まれてしまう。このような相対的な硬さの差は、差の大きさが大きくなればなるほど、着座者にとって圧縮変形した個所が部分的にシコリが存するように感じられてしまうものであり、着座者にとって不快に感じられる要因となるものである。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、本発明が解決しようとする課題は、シートパッドを備えた車両用シートにおいて、シートパッドを薄型にすることができながら、着座姿勢の沈み込みを防止することができ、さらに着座時の感触を良好にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するにあたって、本発明に係る車両用シートは、次の手段を採用する。
すなわち、本発明の第1の発明に係る車両用シートは、発泡樹脂を成形することにより形成されるシートパッドを備えた車両用シートであって、前記シートパッドには、該シートパッドの着座者対面側とは反対側となる裏面側に、該シートパッドの成形時に一体的に成形状態となる裏打ち材が配設されており、前記シートパッドの前記裏面側には、着座者の着座により主として押圧される前記着座者対面側の主要被押圧個所を挟み込むような位置に配置され且つ該シートパッドを支持する少なくとも2本の線状の支持部材が配設されており、前記支持部材間に位置する前記シートパッドの前記裏面側は、押圧される方向になめらかな曲線形状をなしていることを特徴とする。
【0009】
この第1の発明に係る車両用シートによれば、シートパッドの裏面側には着座者の着座により主として押圧される着座者対面側の主要被押圧個所を挟み込むような位置に配置され且つシートパッドを支持する少なくとも2本の線状の支持部材が配設されているので、着座した乗員の重量でシートパッドが撓んでしまいそうな場合でも、この支持部材によってシートパッドを支持することができる。これによって、シートパッドを薄型に構成することができながら、シートパッドの撓みを抑えて着座姿勢の沈み込みを防止することができる。
ここで、支持部材間に位置するシートパッドの裏面側は、着座により押圧される方向になめらかな曲線形状をなしているので、着座した乗員の重量でシートパッドが押圧される押圧力は、押圧される方向になめらかな曲線形状にしたがって分散するように作用する。さらに、このなめらかな曲線形状をなすシートパッドの裏面側には、このシートパッドの成形時に一体的に成形状態となる裏打ち材が配設されているので、上記したように分散するように作用する押圧力は、延在する裏打ち材を伸ばすような方向への力に変換されつつ、上記した支持部材へと伝達されていくこととなる。
これによって、支持部材からの応力は、延在する裏打ち材を伸ばすような方向への力の反力として作用し、もってシートパッドに分散されるように作用することとなる。つまり、支持部材からの応力は、集中することなく、シートパッドに分散されるように作用するので、この応力により生ずる支持部材が当接する部分と支持部材が当接する部分から離れた部分との圧縮変形差を小さくすることができる。
このようにして、圧縮変形した部分と圧縮変形していない部分との間の相対的な硬さの差は小さくなって、異物感のように部分的にシコリとして感じられる個所が無くなり、着座時の感触を良好なものとすることができる。
なお、『着座者の着座により主として押圧される着座者対面側の主要被押圧個所』としては、例えば、シートバックにあっては背凭れとして機能するものであるため、背を凭れた際の荷重中心となる着座者の背骨と対応関係にある個所が、この『主要被押圧個所』として設定されることとなる。また、例えば、シートクッションにあっては座として機能するものであるため、着座した際の荷重中心となる着座者の座骨と対応関係にある個所が、この『主要被押圧個所』として設定されることとなる。
また、『なめらかな曲線形状』としては、例えば、放物線をなす曲線形状であったり、懸垂線をなす曲線形状であったりするものが挙げられ、曲率の低い円弧をなす曲線形状であるものを意味している。
【0010】
第2の発明に係る車両用シートは、前記第1の発明に係る車両用シートにおいて、前記支持部材は、前記シートパッドが押圧されて変形する前の初期状態においては、前記シートパッドの前記裏面に対して空間を有する離間状態で配置されるように配設されており、前記シートパッドが押圧され変形した場合には、該押圧され変形した該シートパッドが前記離間状態で配置される前記支持部材に対して空間を埋めるように当接し、ここではじめて該支持部材が該シートパッドを支持するようになっていることを特徴とする。
【0011】
この第2の発明に係る車両用シートによれば、支持部材は、シートパッドが押圧されて変形する前の初期状態においては、シートパッドの裏面に対して空間を有する離間状態で配置されるように配設されており、シートパッドが押圧され変形した場合には、押圧され変形したシートパッドが離間状態で配置される支持部材に対して空間を埋めるように当接し、ここではじめて支持部材がシートパッドを支持するようになっているので、着座時においてシートパッドが支持部材にて支持されるまで、シートパッドの弾性変形によるクッション性を利用することができ、着座時の感触をより向上させることができる。
なお、この支持部材がシートパッドの裏面に対して離間状態で配置される際の空間は、着座者が不快に感じられる沈み込み量とならないのを鑑みて設定される。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明に係る車両用シートによれば、シートパッドを薄型にすることができながら、着座姿勢の沈み込みを防止することができ、さらに着座時の感触を良好にすることができる。
第2の発明に係る車両用シートによれば、シートパッドの弾性変形によるクッション性を利用することができ、着座時の感触をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】自動車に設置される車両用シートの概略を示す車両用シートの斜視図である。
【図2】図1におけるII−II断面矢視を示す車両用シートの断面図である。
【図3】図2におけるIII−III断面矢視を示すシートバックの横断面図である。
【図4】図2におけるIV−IV断面矢視を示すシートバックの横断面図である。
【図5】図2におけるV−V断面矢視を示すシートバックの横断面図である。
【図6】図2におけるVI−VI断面矢視を示すシートバックの横断面図である。
【図7】パッド部材の成形工程の概要を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、車両としての自動車に設置される車両用シート10の概略を示す斜視図である。図1に示すように、車両用シート10は、乗員が着座するものであり、乗員が着座するシートクッション20と、着座した乗員の背凭れとなるシートバック40と、着座した乗員の頭凭れとなるヘッドレスト30とを備える。なお、この車両用シート10は、特に図示していないが、スライド機能を有した連結部材を介して自動車内に設置される。
図2は、図1におけるII−II断面矢視を示す車両用シート10の断面図である。図2に示すように、上記したシートクッション20は、骨組みをなすクッションフレーム21を備え、このクッションフレーム21に取り付けられる線状の支持部材22と、この支持部材22にて支持されるパッド部材23と、このパッド部材23を被覆するように配設される表皮24とを備える。なお、このクッションフレーム21の後部(図2紙面右方)には、後に説明するが、シートバック40のバックフレーム41をリクライニング装置42を介して連結するにあたっての連結ブラケット25が取り付けられている。
ヘッドレスト30は、骨組みをなすヘッドレストステー31を備え、このヘッドレストステー31にて支持されるクッション材32と、このクッション材32を被覆するように配設される表皮33とを備える。なお、このヘッドレストステー31は、次に説明するシートバック40のバックフレーム41に設けられるステーホルダ41cにて固定保持される。
シートバック40は、骨組みをなすバックフレーム41を備える。このバックフレーム41は、サイドフレーム41aと、このサイドフレーム41aの上部同士を連結する上部フレーム41bとにより構成される。サイドフレーム41aは、図1にて示すように、車両用シート10の幅方向に対をなすように設けられ、リクライニング装置42を介して上記したクッションフレーム21の連結ブラケット25に連結されている。上部フレーム41bは、正面視略コ字状に形成され、この対をなすサイドフレーム41aの上部同士を連結するように配設されている。この上部フレーム41bには、上記したヘッドレストステー31を固定保持するためのステーホルダ41cが設けられている。なお、図1にて示すように、この対をなすサイドフレーム41aの下部同士は、棒状連結支持部材43にて連結されている。
【0015】
図3〜図6は、シートバック40に配設されるパッド部材45および支持部材50,50について理解し易くするために、シートバック40の各横断面を示している。具体的には、図3は、図2におけるIII−III断面矢視を示す車両用シート10の横断面図である。図4は、図2におけるIV−IV断面矢視を示す車両用シート10の横断面図である。図5は、図2におけるV−V断面矢視を示す車両用シート10の横断面図である。図6は、図2におけるVI−VI断面矢視を示す車両用シート10の横断面図である。
なお、図3〜図6に示す車両用シート10は、紙面上方にシートクッション20が配置されるものとなっている。このため、図3〜図6においては、紙面上方が着座者対面側となっており、この反対側となる紙面下方が着座者対面側とは反対側となる裏面側となっている。
【0016】
図2〜図6に示すように、シートバック40にあっても、上記したシートクッション20のようにクッション性を有するパッド部材45を備える。このパッド部材45は、上記したシートクッション20と同様、上記したバックフレーム41に取り付けられる線状の支持部材50,50によって支持されるものであり、本発明に係るシートパッドに相当するものである。なお、以下において、パッド部材45について説明するが、このパッド部材45を説明するにあたって、まず、このパッド部材45を支持する支持部材50,50について、図1〜図6を参照しながら説明する。
すなわち、支持部材50,50は、図1に示すように、適宜に折曲された線状に形成されるものである。この支持部材50,50は、着座者の着座時の姿勢に沿って効率良く着座者を支持するように2本配設されている。具体的には、図1に示すように、2本の支持部材50,50のそれぞれは、下部が棒状連結支持部材43に連結され、上部が上部フレーム41bに連結され、次に説明するシートパッドとしてのパッド部材45を効率良く支持するように配設されている。つまり、図3〜図6に示すように、2本の支持部材50,50は、パッド部材45の裏面側において、着座者の着座により主として押圧される着座者対面側の主要被押圧個所(図示符号S)を挟み込むような位置に配置されている。なお、この着座者対面側の主要被押圧個所Sは、着座者の着座により主として押圧される個所であり、ここでは背を凭れた際の荷重中心となる着座者の背骨と対応関係にある個所となっている。
【0017】
また、この2本の支持部材50,50は、パッド部材45を効率良く支持するために、この支持部材50,50の下部と上部とにおいて、パッド部材45に対しての当接位置が異なっている。すなわち、これら2本の支持部材50,50のうち下部は、図3および図4に示すように、パッド部材45の裏面に対して当接状態で配置されるように配設されている。これに対して、これら2本の支持部材50,50の上部は、図5および図6に示すように、パッド部材45の裏面に対して空間Pを有する離間状態で配置されるように配設されている。
つまり、2本の支持部材50,50の下部に対応するパッド部材45の下部は、着座者の着座により押圧されて変形する前の初期状態においては、この2本の支持部材50,50の下部に当接したものとなっている。これにより、このパッド部材45の下部は、支持部材50,50の下部によって、いつでも支持されるものとなっている。これに対して、2本の支持部材50,50の上部に対応するパッド部材45の上部は、着座者の着座により押圧されて変形する前の初期状態においては、この2本の支持部材50,50の上部とは当接していない状態となっている。これにより、このパッド部材45の上部は、支持部材50,50の上部によって、いつでも支持されたものとはなってはいない。つまり、パッド部材45が押圧され空間Pを埋めるように変形した場合に限って、パッド部材45の上部は支持部材50,50の上部に当接し、ここではじめて支持部材50,50の上部にてパッド部材45の上部は支持されるものとなる。
なお、この支持部材50,50がパッド部材45の裏面に対して離間状態で配置される際の空間Pは、着座者が不快に感じられる沈み込み量とならないのを鑑みて設定されるものとなっている。
【0018】
次に、これらの支持部材50,50にて支持されるパッド部材45の構成について、パッド部材45の成形工程の概要を交えて説明する。図7は、パッド部材45の成形工程の概要を示す断面図である。
すなわち、パッド部材45は、発泡成形される発泡樹脂体46と、この発泡樹脂体46の裏面側一面に亘って一体的に配設されている裏打ち材47とを備えて構成される。具体的には、発泡樹脂体46としては、例えばポリウレタン樹脂材を発泡成形させてなるポリウレタンフォームにて形成されており、裏打ち材47としては、例えばスパンボンド法不織布〔三井化学(株)製 商品名 タフネル〕が用いられている。
一方、この裏打ち材47は、上記した発泡樹脂体46の発泡成形時に、この発泡樹脂体46の成形と一体的に成形状態となるように、この発泡樹脂体46に対して配設されるものとなっている。
具体的には、まず、図7(A)に示すように、シートバック40の形状に合わせて用意される型70(下型71と上型72とを組み合わせてなる)内に、上記した裏打ち材47としてのスパンボンド法不織布が敷かれている。次いで、図7(B)に示すように、裏打ち材47と下型71との間に、発泡剤を混入させたポリウレタン樹脂材46Lを注入する。この流し込まれたポリウレタン樹脂材46Lは、図7(C)に示すように、上型72から発泡ガスを脱気しつつ、下型71と上型72とを組み合わせてなる型70の形状に合わせられて発泡成形されていく。この際、裏打ち材47は、ポリウレタン樹脂材46Lの発泡ガスを通気させつつポリウレタン樹脂材46Lを含侵し、この状態でポリウレタン樹脂材46Lは発泡成形する。このようにして、発泡樹脂体46の発泡成形と同時に、裏打ち材47が発泡樹脂体46の裏面側に対して一体的な成形状態となるように配設され、パッド部材45は、成形されたものとなる。なお、裏打ち材47は、ポリウレタン樹脂材46Lを含侵して一体的に成形状態となるので、このパッド部材45の裏面は、緻密構造を有するように表面が硬化された状態となる。
【0019】
他方、このように形成されるパッド部材45のうち、上記した裏打ち材47が配設される裏面側にあっては、外方に向かってなめらかに凸となる曲線形状を有して形成されている。すなわち、図3〜図6に示すように、パッド部材45のうち、上記した支持部材50,50間に位置するパッド部材45の裏面側(図示符号D)は、外方に向かってなめらかに凸となる曲線形状をなしている。なお、このパッド部材45の裏面側の外方に向かう方向は、着座者の着座により押圧される方向と一致する方向であるため、パッド部材45の裏面側は、着座により押圧される方向になめらかに曲線形状をなしていることとなる。
ここで、なめらかな曲線形状の例としては、放物線をなす曲線形状、懸垂線をなす曲線形状であったりするものが相応しく、曲率の低い円弧をなす適宜のなめらかな曲線形状を選択することができる。
なお、図7に示して説明したパッド部材45の成形工程における上型72には、パッド部材45の裏面側Dがなめらかな曲線形状をなして成形されるように、凹状の曲面構造(図示符号73)が設けられている。
ところで、パッド部材45の着座者対面側は、略平面状に形成されるように、下型71は略平面構造(図示符号74)が設けられている。これによって、このパッド部材45の着座者対面側は、略平面状に形成されるものとなり、このパッド部材45の着座者対面側の外面を被覆するように配設される表皮44は、発泡樹脂体46と密着させて配設することができるものとなっている。つまり、パッド部材45の着座者対面側の外面を被覆するように配設される表皮44は、発泡樹脂体46から浮き難くして配設することができるので、車両用シート10としての品質感は高まることとなる。
【0020】
以上説明した車両用シート10によれば、次のような作用効果を奏することができる。
すなわち、上記した車両用シート10によれば、パッド部材45の裏面側には着座者の着座により主として押圧される着座者対面側の主要被押圧個所Sを挟み込むような位置に配置され且つパッド部材45を支持する少なくとも2本の線状の支持部材50,50が配設されているので、着座した乗員の重量でパッド部材45が撓んでしまいそうな場合でも、この支持部材50,50によってパッド部材45を支持することができる。これによって、パッド部材45を薄型に構成することができながら、パッド部材45の撓みを抑えて着座姿勢の沈み込みを防止することができる。
ここで、支持部材50,50間に位置するパッド部材45の裏面側Dは、着座により押圧される方向になめらかな曲線形状をなしているので、着座した乗員の重量でパッド部材45が押圧される押圧力は、押圧される方向になめらかな曲線形状にしたがって分散するように作用する。さらに、このなめらかな曲線形状をなすパッド部材45の裏面側Dには、このパッド部材45の成形時に一体的に成形状態となる裏打ち材47が配設されているので、上記したように分散するように作用する押圧力は、延在する裏打ち材47を伸ばすような方向への力に変換されつつ、上記した支持部材50,50へと伝達されていくこととなる。
これによって、支持部材50,50からの応力は、延在する裏打ち材47を伸ばすような方向への力の反力として作用し、もってパッド部材45に分散されるように作用することとなる。つまり、支持部材50,50からの応力は、集中することなく、パッド部材45に分散されるように作用するので、この応力により生ずる支持部材50,50が当接する部分と支持部材50,50が当接する部分から離れた部分との圧縮変形差を小さくすることができる。
このようにして、圧縮変形した部分と圧縮変形していない部分との間の相対的な硬さの差は小さくなって、異物感のように部分的にシコリとして感じられる個所が無くなり、着座時の感触を良好なものとすることができる。
もって、上記した車両用シート10によれば、パッド部材45を薄型にすることができながら、着座姿勢の沈み込みを防止することができ、さらに着座時の感触を良好にすることができる。
【0021】
また、上記した車両用シート10によれば、支持部材50,50は、パッド部材45が押圧されて変形する前の初期状態においては、パッド部材45の裏面に対して空間Pを有する離間状態で配置されるように配設されており、パッド部材45が押圧され変形した場合には、押圧され変形したパッド部材45が離間状態で配置される支持部材50,50に対して空間Pを埋めるように当接し、ここではじめて支持部材50,50がパッド部材45を支持するようになっている。このため、着座時においてパッド部材45が支持部材50,50にて支持されるまで、パッド部材45の弾性変形によるクッション性を利用することができ、着座時の感触をより向上させることができる。
【0022】
なお、本発明に係る車両用シートにあっては、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜に変更することができる。
すなわち、上記説明においては、本発明に係るシートパッドおよび支持部材の実施される形態として、車両用シート10のうちシートバック40に配設されるパッド部材45および支持部材50,50を例に挙げるものであった。しかしながら、本発明に係るシートパッドおよび支持部材の実施される形態としては、上記したシートバック40の例に限定されることなく、シートクッション20に配設されるパッド部材23および支持部材22,22に適用されるものであってもよい。なお、この際、主要被押圧個所としては、着座した際の荷重中心となる着座者の座骨と対応関係にある個所が設定されることとなる。
また、上記説明においては、本発明に係る支持部材の実施される形態として、主要被押圧個所Sを挟み込むような位置に配置される2本を例に挙げて説明するものであった。しかしながら、本発明に係る支持部材は、この2本の設定本数に限定されることなく、着座者の着座により主として押圧される前記着座者対面側の主要被押圧個所を挟み込むような位置に配置され且つ該シートパッドを支持する3本以上の本数に設定されるものであってもよい。
また、上記説明においては、2本の支持部材50,50は、下部がパッド部材45の裏面に対して当接状態で配置されるように、上部がパッド部材45の裏面に対して空間Pを有する離間状態で配置されるように、配設されるものとなっていた。しかしながら、本発明に係る支持部材は、この下部および上部の両方をシートパッドの裏面に対して当接状態で配置するようにしたり、この下部および上部の両方をシートパッドの裏面に対して空間を有する離間状態で配置するようにしたりするものであってもよい。
【符号の説明】
【0023】
10 車両用シート
20 シートクッション
21 クッションフレーム
22 支持部材
23 パッド部材
24 表皮
25 連結ブラケット
30 ヘッドレスト
31 ヘッドレストステー
32 クッション材
33 表皮
40 シートバック
41 バックフレーム
41a サイドフレーム
41b 上部フレーム
41c ステーホルダ
42 リクライニング装置
43 棒状連結支持部材
45 パッド部材
46 発泡樹脂体
46L ポリウレタン樹脂材
47 裏打ち材
50 支持部材
70 型
71 下型
72 上型
D 支持部材間に位置するパッド部材の裏面側
P 空間
S 主要被押圧個所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡樹脂を成形することにより形成されるシートパッドを備えた車両用シートであって、
前記シートパッドには、該シートパッドの着座者対面側とは反対側となる裏面側に、該シートパッドの成形時に一体的に成形状態となる裏打ち材が配設されており、
前記シートパッドの前記裏面側には、着座者の着座により主として押圧される前記着座者対面側の主要被押圧個所を挟み込むような位置に配置され且つ該シートパッドを支持する少なくとも2本の線状の支持部材が配設されており、
前記支持部材間に位置する前記シートパッドの前記裏面側は、押圧される方向になめらかな曲線形状をなしていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、
前記支持部材は、前記シートパッドが押圧されて変形する前の初期状態においては、前記シートパッドの前記裏面に対して空間を有する離間状態で配置されるように配設されており、
前記シートパッドが押圧され変形した場合には、該押圧され変形した該シートパッドが前記離間状態で配置される前記支持部材に対して空間を埋めるように当接し、ここではじめて該支持部材が該シートパッドを支持するようになっていることを特徴とする車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−10748(P2011−10748A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155829(P2009−155829)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】