説明

車両用シート

【課題】空隙体を組み付ける部材を大型化することなく制振機能を向上させることができる車両用シートを提供すること。
【解決手段】車両用シート1は、シートクッション2とシートバック3とを備えている。このシートクッション2および/またはシートバック3の内部に空隙体30、40が組み付けられている。この空隙体30、40の内部には、液面が揺動自在となるように制振用流体Wが封入されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、詳しくは、制振用流体が封入されている車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両側で発生した各種の振動がシート側に伝わっても、この伝わった振動をシート側で吸収する機能を備えた車両用シートが既に知られている。ここで、下記特許文献1には、ヘッドレストの内部に空隙体を組み付け、この組み付けた空隙体に制振用流体を封入させることでダイナミックダンパとして振動を吸収する機能(制振機能)を備えた車両用シートが開示されている。これにより、簡素な構造でも、車両側で発生した各種の振動をシート側で吸収できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−321325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の技術では、制振機能を向上させるためには、制振用流体を封入させた空隙体の増加および大型化が必要となるため、この空隙体を組み付ける部材であるヘッドレストまでも大型化しなければいけなかった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、空隙体を組み付ける部材を大型化することなく制振機能を向上させることができる車両用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、シートクッションとシートバックとを備えた車両用シートであって、シートクッションおよび/またはシートバックの内部に空隙体が組み付けられており、この空隙体の内部には、液面が揺動自在となるように制振用流体が封入されていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、特許文献1の技術と同様に、制振機能(振動を吸収する機能)を備えることができる。この備えた制振機能を作用させる空隙体は、シートクッションの内部とシートバックの内部とに組み付けられているため、この制振機能を向上させるために、この空隙体の増加および大型化が必要となっても、この空隙体を組み付ける部材であるシートクッションおよびシートバックまでも大型化する必要がない。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用シートであって、制振用流体が封入された空隙体は、高さ方向に複数備えられていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、より大きな制振機能を得ることができる。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の車両用シートであって、空隙体は、略U字状に形成されたパイプから構成されていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、請求項1のシートバックの空隙体と比較すると、簡素な構造で実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係る車両用シートの概略斜視図であり、内部を透視した状態である。
【図2】図2(A)は、図1のシートバックの内部のフレーム構造を示す斜視図であり、図2(B)は、(A)のII−II線断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施例2に係る車両用シートの概略透視図であり、内部を透視した状態である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
(実施例1)
まず、本発明の実施例1を、図1〜2を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、「車両用シート」の例として、「助手席1」を例に説明していく。また、以下の説明にあたって、上、下、前、後、左、右とは、上述した図に記載した、上、下、前、後、左、右の方向、すなわち、助手席1を基準にしたときの上、下、前、後、左、右の方向を示している。
【0011】
はじめに、図1を参照して、本発明の実施例1に係る助手席1の概略構成を説明する。この助手席1は、主として、シートクッション2とシートバック3とから構成されている。以下に、これらシートクッション2とシートバック3とを個別に説明していく。
【0012】
まず、シートクッション2から説明していく。シートクッション2は、主として、その骨格を形成する略矩形枠状に形成されたクッションフレーム(図示しない)と、このクッションフレームに包着状に組み付けられるクッションパッド(図示しない)と、このクッションパッドの表面をカバーリングする表皮とから構成されている。
【0013】
このクッションフレームには、内部に水Wを封入可能な薄い箱体状に形成された第1の容器30が組み付けられている。この第1の容器30は、その平面サイズがクッションフレームの略矩形の平面サイズと略同じ大きさに形成され、その高さサイズが底浅(例えば、2cm程度)に形成されている。
【0014】
これら水Wと第1の容器30とが、特許請求の範囲に記載の「制振用流体」と「空隙体」とに相当する。そして、この第1の容器30には、その高さの半分(例えば、1cm)程度だけ、水Wが封入されている。このように封入されていると、水Wは、第1の容器30の内部で揺動自在となっている。シートクッション2は、このように構成されている。
【0015】
次に、シートバック3を説明する。シートバック3も、シートクッション2と同様に、主として、その骨格を形成する略矩形枠状に形成されたバックフレーム20と、このバックフレーム20に包着状に組み付けられるクッションパッド(図示しない)と、このクッションパッドの表面をカバーリングする表皮とから構成されている。
【0016】
ここで、図2を参照して、バックフレーム20について詳述すると、バックフレーム20は、左右に対を成す横断面略コ字状のサイドフレーム22、24と、この両サイドフレーム22、24の上端側を橋渡すように組み付けられるアッパフレーム26と、この両サイドフレーム22、24の下端側を橋渡すように組み付けられるロアパネル28とから略矩形枠状に構成されている。
【0017】
この左右のサイドフレーム22、24には、上述した第1の容器30と同様に、内部に水Wを封入可能な第2の容器40、40が組み付けられている。この第2の容器40は、左右のサイドフレーム22、24の略コ字の3辺で囲まれる空間(図2において、左右のサイドフレーム22、24の各内部空間)に沿う格好で縦長状に形成されている。なお、この第2の容器40は、その高さ方向に複数の部屋が形成されるように区画されており、この区画された各部屋の高さサイズは、上述した第1の容器30の高さサイズと同様に、例えば、2cm程度に形成されている。
【0018】
この各部屋が、特許請求の範囲に記載の「空隙体」に相当する。そして、この各部屋にも、その高さの半分(例えば、1cm)程度だけ、水Wが封入されている。このように封入されていると、水Wは、第2の容器40の各部屋の内部で揺動自在となっている。シートバック3は、このように構成されている。
【0019】
次に、上述したシートクッション2とシートバック3とから構成される助手席1の作用を説明する。車両側で各種の振動(例えば、エンジンからの振動)が発生すると、この発生した振動が車両ボデー(図示しない)を介して助手席1に伝達されることになる。すると、第1の容器30内の水面の揺れに伴ってスロッシング現象を起こし、この水Wの重心位置が変位して、振動による外力とは反対方向に力が作用するため、ダイナミックダンパとして振動を吸収することができる。このことは、第2の容器40内でも同様に起こるため、より効果的に、振動を吸収することができる。
【0020】
本発明の実施例1に係る助手席1は、上述したように構成されている。この構成によれば、特許文献1の技術と同様に、制振機能(振動を吸収する機能)を備えることができる。この備えた制振機能を作用させる両容器30、40は、シートクッション2の内部とシートバック3の内部とに組み付けられているため、この制振機能を向上させるために、この両容器30、40の増加および大型化が必要となっても、この両容器30、40を組み付ける部材であるシートクッション2およびシートバック3までも大型化する必要がない。なぜなら、ヘッドレストの内部と比べると、シートクッション2の内部およびシートバック3の内部は十分に広いため、この両容器30、40の増加および大型化が必要となっても、十分に対応できるからである。
【0021】
また、この構成によれば、第2の容器40は、その高さ方向に複数の部屋が形成されるように区画されており、この区画された各部屋の内部に水Wが封入されている。そのため、より大きな制振機能を得ることができる。
【0022】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2を、図3を用いて説明する。この実施例2は、既に説明した実施例1と比較すると、「車両用シート」を、「後部座席101」に適用した形態である。
【0023】
はじめに、図3を参照して、本発明の実施例2に係る後部座席101の概略構成を説明する。この後部座席101は、主として、シートクッション102とシートバック103とから構成されている。以下に、これらシートクッション102とシートバック103とを個別に説明していく。
【0024】
まず、シートクッション102から説明していく。シートクッション102は、主として、その骨格を形成する略矩形枠状に形成されたクッションフレーム(図示しない)と、このクッションフレームに包着状に組み付けられるクッションパッド(図示しない)と、このクッションパッドの表面をカバーリングする表皮とから構成されている。
【0025】
このクッションフレームには、実施例1で説明した第1の容器30と同様に、内部に水Wを封入可能な薄い箱体状に形成された第3の容器130が組み付けられている。この第3の容器130も、その平面サイズがクッションフレームの略矩形の平面サイズと略同じ大きさに形成され、その高さサイズが底浅(例えば、2cm程度)に形成されている。
【0026】
この第3の容器130が、特許請求の範囲に記載の「空隙体」とに相当する。そして、この第3の容器130にも、その高さの半分(例えば、1cm)程度だけ、水Wが封入されている。このように封入されていると、水Wは、第3の容器130の内部で揺動自在となっている。シートクッション102は、このように構成されている。
【0027】
次に、シートバック103を説明する。シートバック103も、シートクッション102と同様に、主として、その骨格を形成する略矩形パネル状に形成されたバックフレーム(図示しない)と、このバックフレームに包着状に組み付けられるクッションパッド(図示しない)と、このクッションパッドの表面をカバーリングする表皮とから構成されている。
【0028】
このバックフレームには、内部に水Wを封入可能な略U字状のパイプ(例えば、樹脂パイプ)から形成された第4の容器140が組み付けられている。この第4の容器140は、その高さサイズがバックフレームの高さサイズと略同じ大きさに形成され、その管径が数cm(例えば、5cm程度)に形成されている。
【0029】
この第4の容器140が、特許請求の範囲に記載の「空隙体」に相当する。そして、この第4の容器140には、その高さの半分程度だけ、水Wが封入されている。このように封入されていると、水Wは、第4の容器140の内部で揺動自在となっている。シートバックは、このように構成されている。
【0030】
次に、上述したシートクッション102とシートバック103とから構成される後部座席101の作用を説明する。実施例1で説明した助手席1の作用と同様に、車両側で各種の振動(例えば、エンジンからの振動)が発生すると、この発生した振動が車両ボデー(図示しない)を介して後部座席101に伝達されることになる。すると、第3の容器130内の水面の揺れに伴ってスロッシング現象を起こし、この水Wの重心位置が変位して、振動による外力とは反対方向に力が作用するため、ダイナミックダンパとして振動を吸収することができる。このことは、第4の容器140内でも同様に起こるため、より効果的に、振動を吸収することができる。
【0031】
本発明の実施例2に係る後部座席101は、上述したように構成されている。この構成によれば、実施例1で説明した助手席1の効果と同様の効果を得ることができる。また、この構成によれば、シートバック103の空隙体が、略U字状のパイプから構成されているため、実施例1のシートバック3の空隙体(第2の容器40)と比較すると、簡素な構造で実施できる。
【0032】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
各実施例では、「車両用シート」の例として、「助手席1」を例に説明した。しかし、これに限定されるものでなく、例えば、「運転席」でも構わない。
【0033】
また、実施例1では、シートクッション2の内部に空隙体(第1の容器30)を組み付け、シートバック3の内部に空隙体(第2の容器40、40)を組み付けた例を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、シートクッション2の内部とシートバック3の内部のいずれか一方のみに空隙体を組み付けても構わない。このことは、実施例2も同様である。
【0034】
また、実施例2では、後部座席101は、その左右のシートが一体構成(左右一体の後部座席)である例を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、後部座席101は、その左右のシートが別体構成(左右別体の後部座席)である例を説明した。その場合、後部座席101の左右のシートのシートバックに、個別に、第4の容器140を設ければよい。
【符号の説明】
【0035】
1 助手席(車両用シート)
2 シートクッション
3 シートバック
30 第1の容器(空隙体)
40 第2の容器(空隙体)
101 後部座席(車両用シート)
102 シートクッション
103 シートバック
130 第3の容器(空隙体)
140 第4の容器(空隙体)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションとシートバックとを備えた車両用シートであって、
シートクッションおよび/またはシートバックの内部に空隙体が組み付けられており、
この空隙体の内部には、液面が揺動自在となるように制振用流体が封入されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートであって、
制振用流体が封入された空隙体は、高さ方向に複数備えられていることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用シートであって、
空隙体は、略U字状に形成されたパイプから構成されていることを特徴とする車両用シート。









【図1】
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【図2】
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【図3】
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