説明

車両用シート

【課題】本発明は、可動クッション部と固定クッション部との間に手等が挟まれないようにして安全性向上を図ることを目的とする。
【解決手段】本発明に係る車両用シートは、シートクッション40が固定クッション部45と可動クッション部43とから構成されて、その可動クッション部43が固定クッション部45と着座面40fが連続する着座位置と、固定クッション部45よりも所定寸法だけ高い乗降位置との間で昇降可能に構成された車両用シートであって、固定クッション部45に対する可動クッション部43の上昇により、可動クッション部43と固定クッション部45との境界位置においてその可動クッション部43の下端と固定クッション部45の着座面との間に形成される開放部分を塞ぐ閉鎖部材60を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートクッションが着座位置と、その着座位置よりも高い乗降位置との間で昇降可能に構成された車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
これに関する従来の車両用シートが特許文献1に記載されている。
特許文献1に記載の車両用シートは、図11に示すように、クッション前部102とクッション後部103とからなるシートクッション100を備えている。クッション前部102の前端下部はヒンジ105によりシートフレーム106の前端部に連結されており、そのクッション前部102の後端下部がクッション後部103の前端下部にヒンジ107により連結されている。さらに、クッション後部103はダンパ108によって下方から支えられている。これにより、乗車時に着座者がダンパ108に押上げられたクッション後部103及びクッション前部102に着座すると、クッション後部103及びクッション前部102は、その着座者の体重によりダンパ108の力に抗して着座位置まで緩やかに下降する。また、着座者が車両から降りる際は、立ち上がろうとする着座者の臀部をダンパ108が押上げる方向に動作する。
これにより、着座者の車両への乗降が容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−237804号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した車両用シートでは、クッション前部102とクッション後部103とがダンパ108により押上げられた状態で、図11に示すように、クッション前部102、クッション後部103とシートフレーム106との間が開放されている。このため、乗車時に着座者等がクッション後部103の下面やダンパ108に触れることが可能になり、安全上好ましくない。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、昇降可能な可動クッション部と固定クッション部との間に手等が挟まれないようにして安全性向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、シートクッションが固定クッション部と可動クッション部とから構成されて、その可動クッション部が前記固定クッション部と着座面が連続する着座位置と、前記固定クッション部よりも高い乗降位置との間で昇降可能に構成された車両用シートであって、前記固定クッション部に対する前記可動クッション部の上昇により、前記可動クッション部と前記固定クッション部との境界位置においてその可動クッション部の下端と前記固定クッション部の着座面との間に形成される開放部分を塞ぐ閉鎖部材を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、閉鎖部材は、固定クッション部に対する可動クッション部の上昇により、前記可動クッション部と前記固定クッション部との境界位置においてその可動クッション部の下端と前記固定クッション部の着座面との間に形成される開放部分を塞ぐことができるように構成されている。このため、乗降位置にある可動クッション部が下降する際に、着座者が誤って可動クッション部と固定クッション部との開放部分に手を滑り込ませようとしても、前記閉鎖部材によってこれが妨げられ、可動クッション部と固定クッション部との間に手等を挟む等のトラブルを防止できる。
【0008】
請求項2の発明によると、閉鎖部材は、可動クッション部の境界位置側面の下端から下方に突出する塀状の板部と、前記板部の下端縁と前記固定クッション部の境界位置側面との間の開放部分を塞ぐ変形自在なシート状部材とから構成されていることを特徴とする。
このように、閉鎖部材が板部と変形自在なシート状部材とから構成されるため、簡単な構成で閉鎖部材と固定クッション部等との干渉を防止できる。
請求項3の発明によると、シート状部材は、板部に連結されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明によると、シート状部材の基端部が可動クッション部に設けられた板部の下端縁に連結され、あるいは前記板部の内側で可動クッション部に連結され、そのシート状部材の先端部が前記固定クッション部の境界位置側面に連結されて、前記可動クッション部が上昇する過程で前記シート状部材が展開される構成であり、前記可動クッションが乗降位置にある状態で、前記可動クッションの着座面から前記板部と前記シート状部材との連結位置、あるいは前記板部の下端縁までの高さ寸法は、その連結位置、あるいは前記板部の下端縁から前記固定クッション部の着座面までの高さ寸法よりも大きく設定されていることを特徴とする。
このため、可動クッション部が着座位置まで下降する過程でシート状部材の基端部が可動クッション部の板部の下端縁によって下方に引っ張られ、前記シート状部材が着座面よりも下側に収納されるようになる。即ち、可動クッション部が着座位置まで下降した状態で、シート状部材の一部が可動クッション部と固定クッション部との着座面の上に残るようなことがない。したがって、シートクッションの座り心地が低下するようなことがなく、さらに着座面の見栄えが低下するようなこともない。
【0010】
請求項5の発明によると、固定クッション部の境界位置側面は、上方を指向するように傾斜しており、可動クッション部の境界位置側面は、下方を指向するように傾斜しており、前記可動クッション部が着座位置にある状態で、前記可動クッション部の境界位置側面が前記固定クッション部の境界位置側面と面接触するように構成されていることを特徴とする。
このため、可動クッション部が着座位置にある状態で、シートクッションに着座者が座っている場合に、着座者の体重が可動クッション部の境界位置側面から固定クッション部の境界位置側面に加わるようになる。このため、可動クッション部の境界位置側面と固定クッション部の境界位置側面とが着座者の体重を受けた状態で完全に面接触し、可動クッション部と固定クッション部との境界位置で隙間が生じなくなる。これにより、シートクッションの座り心地が低下するようなことがない。
また、固定クッション部と可動クッション部との境界位置側面が縦に形成されている場合と比較して、前記可動クッション部の昇降時における両境界位置側面間の隙間寸法が大きくなり、シート状部材を着座面の下側に収納し易くなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、可動クッション部と固定クッション部との間に手等が挟まれないようになり、安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の本実施形態1に係る車両用シートの全体斜視図である。
【図2】可動クッション部が乗降位置まで上昇した状態を表す車両用シートの正面図である。
【図3】可動クッション部の昇降機構を表す正面図である。
【図4】図1のIV-IV矢視断面図である。
【図5】図4のV部拡大図である。
【図6】可動クッション部が乗降位置まで上昇した状態を表す車両用シートの縦断面図(図2のVI-VI矢視断面図)である。
【図7】図6のVII部拡大図である。
【図8】変更例に係る車両用シートの全体縦断面図である。
【図9】図8のIX部拡大図である。
【図10】変更例に係る車両用シートにおいて可動クッション部が乗降位置まで上昇した状態を表す拡大縦断面図である。
【図11】従来の車両用シートの全体側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態1]
以下、図1から図10に基づいて本発明の実施形態1に係る車両用シートについて説明する。
ここで、図中における前後左右及び上下は車両用シート及びその車両用シートが設置される乗用車の前後左右及び上下に対応している。また、明細書中の前後左右及び上下も上記した前後左右及び上下に対応している。
【0014】
<車両用シート10の概要について>
本実施形態に係る車両用シート10は、車高が比較的低い乗用車において右側の乗降口を通って右方向から着座するように構成されたシート(運転席等)である。
車両用シート10は、図1、図2に示すように、シート本体30と、そのシート本体30を車室フロアFに対して前後スライドさせる前後スライド機構20とを備えている。
さらに、前記シート本体30は、前後スライド機構20に支持されるシートフレーム(図示省略)と、そのシートフレーム上に設置されたシートクッション40と、前記シートフレームの後端部に上下回動可能な状態で連結されたシートバック35と、シートクッション40の一部43を前記シートフレーム等に対して上昇させ、乗降口側に傾斜させるクッション傾斜機構50とから構成されている。なお、前記シートフレームはシートフレームカバー31cに覆われており、外側からは見えないようになっている。
【0015】
<前後スライド機構20について>
前後スライド機構20は、図1、図2に示すように、車室フロアF上で前後方向に延びる左右一対のロアレール22と、左右のロアレール22に沿って前後方向にスライド可能に構成された左右のアッパレール23と、前記アッパレール23をロアレール22に対して前後スライドさせるための駆動機構(図示省略)とから構成されている。ロアレール22は、上側が開放された横断面形状略C字形の溝状レールであり、図2等に示すように、前端部の下側と後端部の下側とが支持材21によって車室フロアFに固定されている。アッパレール23は、図2に示すように、横断面形状略逆T字形に形成された板状レールであり、そのアッパレール23の下部がロアレール22に対して前端側、あるいは後端側から嵌め込まれている。そして、前記アッパレール23がロアレール22と嵌合した状態で、アッパレール23はロアレール22に沿って前後方向に摺動できるようになる。
【0016】
<シートクッション40について>
シートクッション40は、図1に示すように、中央部分の前側から順番にクッション前部411、クッション中央部412、クッション後部413を備えており、前記中央部分の左側(車室中央側)に左サイド部414、前記中央部分の右側(乗降口(図示省略)側)に右サイド部415が設けられている。さらに、右サイド部415は、前部416、中央部417及び後部418に分割されている。
シートクッション40のクッション中央部412と右サイド部415の中央部417とは一体化されており、そのシートクッション40の他の部分、即ち、右サイド部415の前部416、後部418とクッション前部411と左サイド部414とクッション後部413とから分割されている。そして、シートクッション40の右サイド部415の前部416、後部418とクッション前部411と左サイド部414とクッション後部413とが前記シートフレームに固定されている。このため、シートクッション40の右サイド部415の前部416、後部418とクッション前部411と左サイド部414とクッション後部413とを、以後、固定クッション部45と呼ぶことにする。
そして、シートクッション40のクッション中央部412と右サイド部415の中央部417とが、クッション傾斜機構50(後記する)の働きで固定クッション部45に対して昇降可能に構成されている。このため、シートクッション40のクッション中央部412と右サイド部415の中央部417とを、以後、可動クッション部43と呼ぶことにする。
【0017】
可動クッション部43には、図1に示すように、固定クッション部45との境界位置に前端境界位置側面43f、左端境界位置側面43e、及び後端境界位置側面43bが縦に形成されている。また、固定クッション部45には、可動クッション部43との境界位置に前端境界位置側面45f、左端境界位置側面45e、及び後端境界位置側面45bが縦に形成されている。そして、可動クッション部43が、図1に示すように、着座位置まで下降した状態で、可動クッション部43の前端境界位置側面43f、左端境界位置側面43e、及び後端境界位置側面43bと、固定クッション部45の前端境界位置側面45f、左端境界位置側面45e、及び後端境界位置側面45bとがそれぞれ面接触するようになる。
可動クッション部43は、図4、図5等の縦断面図に示すように、成形鉄板432の上側にウレタン等から構成されたクッション本体434が重ねられており、そのクッション本体434の表面が表皮435によって覆われている。
固定クッション部45も同様に、成形鉄板452の上側にウレタン等から構成されたクッション本体454が重ねられており、そのクッション本体454の表面が表皮455によって覆われている。
【0018】
<クッション傾斜機構50について>
クッション傾斜機構50は、シートクッション40の固定クッション部45に対して可動クッション部43を上昇させ、さらにその可動クッション部43を乗降口側が低く、室内側が高くなるように傾斜させるための機構である。クッション傾斜機構50は、図2〜図4等に示すように、前端部と後端部とが前記シートフレームに吊り支持されたベース板52と、そのベース板52上に設置された前後一対のクロスリンク53(図3参照)と、それらのクロスリンク53を動作させる駆動部56(図4参照)とから構成されている。
クッション傾斜機構50のベース板52は、図4等に示すように、側面形状略U字形に折り曲げ成形されており、そのベース板52の前端上部がシートフレームの前部で幅方向に延びる前部梁部31hにボルト止めされている。また、前記ベース板52の後端上部がシートフレームの後部で幅方向に延びる後部支持管31tに連結されている。
【0019】
クッション傾斜機構50の前後一対のクロスリンク53は、可動クッション部43を前後から支えてその可動クッション部43を昇降及び傾斜させられるように構成されている。ここで、前後のクロスリンク53は前後方向において対称に形成されて、等しい構成であるため、図3の正面図に基づき代表して前側のクロスリンク53について説明する。
クロスリンク53は、直線状の第1リンク53aと第2リンク53bとからなり、両リンク53a,53bの中央部近傍が中央連結ピン53xによって互いに上下回動可能な状態で連結されている。そして、第1リンク53aの下端部が下端連結ピン54によって上下回動可能な状態でベース板52の前側底部右端に形成された受け部(図示省略)に連結されている。また、第1リンク53aの上端部にはローラ53rが装着されており、そのローラ53rが可動クッション部43の下側に左右方向に延びるように形成された前側レール部43yに沿って転動できるように構成されている。
また、第2リンク53bの上端部は、上端連結ピン55によって上下回動可能な状態で可動クッション部43における前側レール部43yの右端近傍に連結されている。また、第2リンク53bの下端部にはローラ53zが装着されており、そのローラ53zがベース板52の前側底部52yに沿って左右方向に転動できるように構成されている。
【0020】
クッション傾斜機構50の駆動部56が動作して、第1リンク53aが下端連結ピン54を中心にして左回動しながら起立すると、その第1リンク53aと中央連結ピン53xによって連結されている第2リンク53bがシートクッション40の可動クッション部43の上端連結ピン55を中心に右回動しながら起立する。即ち、クッション傾斜機構50の駆動部56の動作によりクロスリンク53が起立する。これにより、可動クッション部43がクロスリンク53によって押し上げられ、固定クッション部45に対して上昇しつつ、右側(乗降口側)が低くなるように徐々に傾斜する。そして、可動クッション部43が固定クッション部45に対してその可動クッション部43の厚み寸法、即ち、境界位置側面43f,43e,43bの高さ寸法以上に上昇することで、可動クッション部43と固定クッション部45との境界位置には高さ方向に開放部分が形成される。この状態からクロスリンク53がさらに起立し、前記クロスリンク53が所定角度まで起立した段階で、可動クッション部43は、図3の実線に示すように、所定の高さ位置まで上昇し、右側(乗降口側)が低くなるように傾斜する。即ち、可動クッション部43は乗降位置に保持される。
また、駆動部56の逆方向の動作によりクロスリンク53が倒伏方向に動作すると、上記とは逆に可動クッション部43が下降しつつ傾斜が緩やかになる方向に回動する。そして、可動クッション部43が原位置(着座位置)まで下降すると、その可動クッション部の着座面40fが固定クッション部45の着座面40fと連続するようになる。
【0021】
<閉鎖部材60について>
可動クッション部43と固定クッション部45との境界位置、及び可動クッションと右側のシートフレームとの境界位置には、閉鎖部材60が設けられている。閉鎖部材60は、可動クッション部43が固定クッション部45等に対し、その可動クッション部43の境界位置側面43f,43e,43bの高さ寸法以上に上昇することで前記境界位置に形成される開放部分を塞ぐための部材である。閉鎖部材60は、図5〜図7に示すように、樹脂製の板部62と、可動クッション部43の表皮435と等しい材料からなるシート状部材64とから構成されている。板部62は、可動クッション部43の下面周縁に沿って塀状に形成された角筒体であり、その板部62の上端縁が、図5等に示すように、可動クッション部43の成形鉄板432に形成された縦リブ432fにクリップやネジ等(図示省略)により固定されている。ここで、板部62の高さ寸法は、可動クッション部43が着座位置まで下降した段階で、その板部62の先端(下端)がクッション傾斜機構50のベース板52等と干渉しない高さ寸法に設定されている。
【0022】
シート状部材64は、板部62を覆うとともに、可動クッション部43が乗降位置まで上昇する際に、板部62の下端部と固定クッション部45及び前記シートフレームとの間に形成される開放部分を塞ぐ部材である。シート状部材64は、そのシート状部材64の基端縁が、図5、図7等に示すように、可動クッション部43の表皮435の下端縁に縫い付けられており、さらにその近傍が板部62の上端縁と共に可動クッション部43の成形鉄板432の縦リブ432fに固定されている。また、シート状部材64は、板部62の下端部を覆う部位が周方向に等間隔で複数個設けられた固定ピン65によってその板部62の下端部に固定されている。
即ち、固定ピン65の位置が本発明における板部とシート状部材とが連結される連結位置に相当する。
シート状部材64は、可動クッション部43が乗降位置まで上昇した状態(図6、図7参照)で板部62の下端部よりも下側に垂れ下がる部分の四隅が高さ方向に切り離されている。即ち、シート状部材64は、可動クッション部43の前端境界位置側面43fの下側に位置する前側シート部64fと、左端境界位置側面43eの下側に位置する左側シート部(図示省略)と、後端境界位置側面43bの下側に位置する後側シート部(図示省略)と、右側シート部(図示省略)とに切り離されている。
【0023】
そして、図5、図7等に示すように、シート状部材64の前側シート部64fの先端部が固定クッション部45の前端境界位置側面45fの表皮455下側に縫い付けられている。
同様に、シート状部材64の左側シート部と後側シート部の先端部がそれぞれ固定クッション部45の左端境界位置側面45eの表皮455と後端境界位置側面45bの表皮455に縫い付けられている。また、シート状部材64の右側シート部の先端部が右側のシートフレームに連結されている。
ここで、図7に示すように、可動クッション部43の着座面40fから板部62の下端縁(固定ピン65)までの高さ寸法Hは、可動クッション部43が乗降位置にあるときの固定ピン65の位置から固定クッション部45の着座面40fまでの高さ寸法Lよりも大きく設定されている。
【0024】
<本実施形態に係る車両用シート10の動作について>
先ず、乗員の乗車が完了した状態から車両用シート10の動作について説明する。この状態では、シートクッション40の可動クッション部43が着座位置(下限位置)に保持されており、図1に示すように、可動クッション部43の着座面40fが固定クッション部45の着座面40fと連続している。また、前後スライド機構20を動作させることで、乗員の体格にあわせてシート本体30の前後位置を調整できるようになる。
次に、乗員が降車する場合には、シートベルトを外し、右側のドアを開けた状態で、上昇スイッチ(図示省略)を操作する。これにより、クッション傾斜機構50がシートクッション40の可動クッション部43を上昇させる方向に動作して、乗員の臀部が徐々に押し上げられる。
ここで、可動クッション部43が上昇する際には、その可動クッション部43と共に閉鎖部材60の板部62も上昇するため、その板部62に連結されたシート状部材64の基端部も上昇し、そのシート状部材64が徐々に展開される。これにより、可動クッション部43の境界位置側面43f,43e,43bが固定クッション部45の各々の境界位置側面45f,45e,45bから上方に離れ、さらに可動クッション部43の右端が右側のシートフレームから上方に離れることにより形成される開放部分が閉鎖部材60によって塞がれるようになる。
そして、可動クッション部43が乗降位置まで上昇した段階でクッション傾斜機構50が停止し、可動クッション部43が乗降位置に保持されるとともに、図6、図7に示すように、閉鎖部材60のシート状部材64が完全に展開された状態になる。
【0025】
乗車時には、乗員が乗降位置にある可動クッション部43に着座した後、下降スイッチ(図示省略)を操作することで、クッション傾斜機構50が可動クッション部43を下降させる方向に動作する。可動クッション部が下降すると、その可動クッション部43と共に閉鎖部材60の板部62も下降し、その板部62に連結されたシート状部材64の基端部も下降して、そのシート状部材64が徐々に弛むようになる。そして、板部62の下端部が固定クッション部45の着座面40fよりも下降すると、シート状部材64の基端部が板部62の下端部によって下方に引っ張られ、シート状部材64は可動クッション部43と固定クッション部45との境界位置、及び可動クッションと右側のシートフレームとの境界位置の内側に収納される。このようにして、可動クッション部43が着座位置まで下降した段階でクッション傾斜機構50が停止し、可動クッション部43が着座位置に保持されるとともに、図4、図5に示すように、閉鎖部材60のシート状部材64が前記境界位置の内側に完全に収納される。さらに、可動クッション部43の着座面40fが固定クッション部45の着座面40fと連続するようになる。
【0026】
<本実施形態に係る車両用シート10の長所について>
本実施形態に係る車両用シート10によると、閉鎖部材60は、固定クッション部45に対する可動クッション部43の上昇により、その可動クッション部43と固定クッション部45のとの境界位置においてその可動クッション部43の下端と固定クッション部45の着座面40fとの間に形成される開放部分を塞ぐことができるように構成されている。このため、乗降位置にある可動クッション部43が下降する際に、着座者が誤って可動クッション部43と固定クッション部45との開放部分に手を滑り込ませようとしても、前記閉鎖部材60によってこれが妨げられ、可動クッション部43と固定クッション部45との間に手等を挟む等のトラブルを防止できる。
また、閉鎖部材60が板部62と変形自在なシート状部材64とから構成されるため、簡単な構成で閉鎖部材60と固定クッション部45、クッション傾斜機構50等との干渉を防止できる。
【0027】
また、図7に示すように、可動クッション部43の着座面40fから板部62の下端縁とシート状部材64とが連結される連結位置(固定ピン65の位置)までの高さ寸法Hは、可動クッション部43が乗降位置にある状態でその固定ピン65の位置から固定クッション部45の着座面40fまでの高さ寸法Lよりも大きく設定されている。
このため、可動クッション部43が着座位置まで下降する過程でシート状部材64の基端部が板部62の下端縁によって下方に引っ張られ、シート状部材64が着座面40fよりも下側に収納されるようになる。即ち、可動クッション部43が着座位置まで下降した状態で、シート状部材64の一部が可動クッション部43と固定クッション部45との着座面40fの上に残るようなことがない。したがって、シートクッション40の座り心地が低下するようなことがなく、さらに着座面40fの見栄えが低下するようなこともない。
【0028】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、図4から図7に示すように、可動クッション部43の境界位置側面43f,43e,43b(以下、境界位置側面43fと記載する)と固定クッション部45の境界位置側面45f,45e,45b(以下、境界位置側面45fと記載する)とを縦に形成する例を示した。しかし、図8から図10に示すように、固定クッション部45の境界位置側面45fを上向き傾斜面とし、可動クッション部43の境界位置側面43fを下向き傾斜面として、着座位置で可動クッション部43の境界位置側面43fが固定クッション部45の境界位置側面45fに面接触するように構成しても良い。
これにより、可動クッション部43が着座位置にある状態で、シートクッション40に着座者が座っている場合に、着座者の体重が可動クッション部43の境界位置側面43fから固定クッション部45の境界位置側面45fに加わるようになる。このため、可動クッション部43の境界位置側面43fと固定クッション部45の境界位置側面45fとが着座者の体重を受けて完全に面接触し、可動クッション部43と固定クッション部45との境界位置で隙間が生じなくなる。これにより、シートクッション40の座り心地が低下するようなことがなくなる。
また、固定クッション部45と可動クッション部43との境界位置側面45f,43fが縦に形成されている場合と比較して、可動クッション部43の昇降時における両境界位置側面45f,43f間の隙間寸法が大きくなり、シート状部材64を着座面40fの下側に収納し易くなる。
【0029】
また、本実施形態では、図1に示すように、可動クッション部43をシートクッション40のクッション中央部412と右サイド部415の中央部417とから構成し、可動クッション部43と固定クッション部45との境界位置が平面コ字形となるような例を示した。しかし、シートクッション40における可動クッション部43と固定クッション部45との区分けは適宜変更することが可能で、これに伴う境界位置の変更により閉鎖部材60が設けられる位置を変更することが可能である。
また、本実施形態では、可動クッション部43の右端と右側のシートフレームとの間にも閉鎖部材60を設ける例を示したが、可動クッション部43の上昇時にその可動クッション部43の右端とシートフレームカバー31cとの間に隙間が生じないような構成であれば、この部分の閉鎖部材60を省略することが可能である。
また、本実施形態では、閉鎖部材60のシート状部材64と板部62の下端縁とを固定ピン65により連結する例を示した。しかし、シート状部材64を板部62の内側から可動クッション部43の下端に連結するようにすることで、シート状部材64と板部62とを連結しなくても、可動クッション部43が下降する際に板部62の下端でシート状部材64を下方に押し下げる(引っ張る)ことが可能になる。
また、本実施形態では、閉鎖部材60のシート状部材64の基端部を可動クッション部43に設けられた板部62の下端部に連結し、そのシート状部材64の先端部を固定クッション部45の境界位置側面45fに縫い付ける例を示した。しかし、シート状部材64の先端側をシートフレーム側に設けられた巻取り装置により巻取り、繰出し可能にする構成でも良い。
また、本実施形態では、運転席側のシートに本発明を適用する例を示したが、助手席側のシート、その他のシートに本発明を適用することも可能である。さらに、可動クッション部43を昇降させるクッション傾斜機構50の構成は適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0030】
40・・・・シートクッション
40f・・・着座面
43・・・・可動クッション部
43f・・・前端境界位置側面(境界位置側面)
43e・・・左端境界位置側面(境界位置側面)
43b・・・後端境界位置側面(境界位置側面)
45・・・・固定クッション部
45f・・・前端境界位置側面(境界位置側面)
45e・・・左端境界位置側面(境界位置側面)
45b・・・後端境界位置側面(境界位置側面)
60・・・・閉鎖部材
62・・・・板部
64・・・・シート状部材
65・・・・固定ピン(連結位置)
X・・・・・縫い付け位置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションが固定クッション部と可動クッション部とから構成されて、その可動クッション部が前記固定クッション部と着座面が連続する着座位置と、前記固定クッション部よりも高い乗降位置との間で昇降可能に構成された車両用シートであって、
前記固定クッション部に対する前記可動クッション部の上昇により、前記可動クッション部と前記固定クッション部との境界位置においてその可動クッション部の下端と前記固定クッション部の着座面との間に形成される開放部分を塞ぐ閉鎖部材を備えることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載された車両用シートであって、
前記閉鎖部材は、前記可動クッション部の境界位置側面の下端から下方に突出する塀状の板部と、
前記板部の下端縁と前記固定クッション部の境界位置側面との間の開放部分を塞ぐ変形自在なシート状部材とから構成されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項2に記載された車両用シートであって、
前記シート状部材は、前記板部に連結されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項4】
請求項2又は請求項3のいずれかに記載された車両用シートであって、
前記シート状部材の基端部が前記可動クッション部に設けられた板部の下端縁に連結され、あるいは前記板部の内側で可動クッション部に連結され、そのシート状部材の先端部が前記固定クッション部の境界位置側面に連結されて、前記可動クッション部が上昇する過程で前記シート状部材が展開される構成であり、
前記可動クッションが乗降位置にある状態で、前記可動クッションの着座面から前記板部と前記シート状部材との連結位置、あるいは前記板部の下端縁までの高さ寸法は、その連結位置、あるいは前記板部の下端縁から前記固定クッション部の着座面までの高さ寸法よりも大きく設定されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載された車両用シートであって、
前記固定クッション部の境界位置側面は、上方を指向するように傾斜しており、前記可動クッション部の境界位置側面は、下方を指向するように傾斜しており、
前記可動クッション部が着座位置にある状態で、前記可動クッション部の境界位置側面が前記固定クッション部の境界位置側面と面接触するように構成されていることを特徴とする車両用シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−84203(P2011−84203A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−239554(P2009−239554)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】