説明

車両用シート

【課題】車両用シート側部におけるワイヤハーネスの配策について高い自由度を有する車両用シートを提供すること。
【解決手段】複数の貫通孔が形成されたハニカム形状の樹脂部材に代表される側面衝突時の衝撃を吸収するブロック部材が、車両用シートのシートクッション側部に設けられ、ブロック部材の衝撃吸収面と直行する側面に、ワイヤハーネスを固定可能なハーネス固定部が設けられる。ハーネス固定部としては、ワイヤハーネスに取り付けられたクランプ部材が挿入嵌合可能な貫通孔を有する薄板状の取り付け部材又はワイヤハーネスの途中部位を係留可能な係留部材が適用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、さらに詳しくは、側面衝突時の衝撃を吸収するブロック部材をシートクッション側部に備える車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来一般の車両用シートにおいて、側面衝突時に側方から及ぼされる衝撃を吸収するために、シートクッション側部に樹脂製のブロック部材が設けられる場合がある。特許文献1には、ハニカム構造の樹脂スペーサがシート・クッション・フレームの後端部側面に設けられる構成が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−25827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両用シートが電動式のリクライニング装置やスライド装置を備える場合には、それらの装置に電源を供給し、またそれらの装置に制御信号を伝達するためのワイヤハーネスがシートクッション側部に配策されている。上記のような衝撃吸収用のブロック部材がシート側部に設けられていると、ブロック部材が占める空間にはワイヤハーネスを配策することができず、配策の自由度が制限されていた。また、ブロック部材を避けてワイヤハーネスを配策するために、図5のようにブロック部材150のシート外側の側面を覆うサイドシールド140上に、ブロック部材150が設けられた箇所以外の位置にハーネス固定部材170a〜170dを設けて、ワイヤハーネス160が固定されていた。しかしこの場合、ワイヤハーネス160の配策経路によっては、サイドシールド140の内側に存在するクッションフレーム(図示せず)とサイドシールド140に固定されたワイヤハーネス160との間の干渉が避けられない場合がある。シートにおける電気系統の多様化に伴い、様々なワイヤハーネスの配策経路に対応可能なワイヤハーネスの固定法が必要とされる。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、側面衝突時の衝撃を吸収するブロック部材がシートクッション側部に存在しても、ワイヤハーネスの配策について高い自由度が得られる車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用シートは、シートクッションの側部に側面衝突時の衝撃を吸収する樹脂製のブロック部材が設けられ、前記ブロック部材には、衝撃吸収可能な面と直行する側面に電源供給用及び/又は制御信号伝達用のワイヤハーネスを固定可能なハーネス固定部が設けられていることを要旨とする。
【0007】
ここで、前記ブロック部材は、複数の貫通孔が柱軸方向に形成され、柱軸がシート幅方向に平行に配置された柱状体であり、前記ワイヤハーネスの外径よりも柱軸方向に長く、該柱状体の端面において衝撃吸収可能であり、該柱状体の側面に前記ハーネス固定部が設けられている構成が好適なものとして挙げられる。
【0008】
また、前記ハーネス固定部は、前記ブロック部材の前記衝撃吸収可能な面と平行に延出した薄板状の取り付け部材に貫通孔が形成されたものであって、前記ワイヤハーネスには前記貫通孔に嵌合可能な突出形状を有するクランプ部材が設けられ、前記クランプ部材が前記貫通孔に挿入嵌合されることでワイヤハーネスが前記ブロック部材に固定される構成とすることが考えられる。
【0009】
あるいは、前記ハーネス固定部は、前記ブロック部材の前記衝撃吸収可能な面の外側に鉤形状を有する係留部材を設け、該係留部材にワイヤハーネスの中途部位を係留させることにより、ワイヤハーネスを固定する構造のものであってもよい。
【0010】
さらに、前記車両用シートは、前記ブロック部材を隠蔽するサイドシールドをさらに有し、前記ブロック部材は前記サイドシールド内面に一体に装着固定されているものであると好適である。
【発明の効果】
【0011】
上記発明にかかる車両用シートによれば、シート側部においてブロック部材が占める空間にもワイヤハーネスを配策し、固定することができるので、ワイヤハーネスの配索の自由度が向上する。また、少なくともブロック部材の近傍においては、ワイヤハーネスをブロック部材の外側を覆うサイドシールドに固定する必要がないので、ワイヤハーネスとシートクッションとの干渉も回避することができる。
【0012】
さらに、ブロック部材が、複数の貫通孔が柱軸方向に形成された構造を有していると、シート全体を軽量化しつつ、側面衝突時の衝撃を効果的に吸収することができる。また、ワイヤハーネスの外径よりも柱軸方向に長く、その側面にハーネス固定部が設けられていると、固定されたワイヤハーネスがブロック部材の厚みの中に収まり、シートクッションとの干渉が確実に防止される。また、固定されたワイヤハーネスが側面衝突時の衝撃によって押しつぶされて破損することが防止される。
【0013】
ここで、ハーネス固定部がブロック部材から延出した薄板状の取り付け部材に貫通孔が形成されたものであり、この貫通孔にワイヤハーネスに取り付けられたクランプ部材が挿入嵌合される形式のものであると、簡単な操作でワイヤハーネスをブロック部材に確実に固定することができる。また、この薄板状の取り付け部材がブロック部材の衝撃吸収可能な面と平行に延出したものであると、ブロック部材の製造時に、容易にブロック部材と一体に形成可能である。
【0014】
一方、ハーネス固定部が鉤形状を有する係留部材であると、ハーネス側にクランプ部材のような固定のための部材を設ける必要がなく、部品点数が削減されるうえ、ワイヤハーネスを任意の部位で係留させることができるので、ワイヤハーネスの配策の自由度が更に向上する。
【0015】
さらに、サイドシールドは、ブロック部材を隠蔽することにより、ブロック部材及びワイヤハーネスを着座者等との接触から保護するとともに、シートの意匠性を向上させることを目的に設けられるが、ブロック部材がサイドシールドに一体に固定されていると、ブロック部材が固定されたサイドシールド上でワイヤハーネスの配策及び固定を完結させ、その後にサイドシールドをシートクッション側部に取り付けることができる。ブロック部材をシートクッション側に固定しておく場合よりもブロック部材へのワイヤハーネスの固定を含むワイヤハーネスの配策作業が行いやすいので、シートの生産性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一の実施形態にかかる車両用シートの概略側面図である。
【図2】上記実施形態にかかる車両用シートのサイドシールド内側の斜視図である。
【図3】図2のブロック部材近傍の分解斜視図である。
【図4】本発明の第二の実施形態にかかるブロック部材近傍の分解斜視図である。
【図5】従来一般の車両用シートのサイドシールド内側の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第一の実施形態にかかる車両用シートについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1に示される車両用シート1は、着座部であるシートクッション2と、背もたれ部であるシートバック3とを有する。シートクッション2は、図示しないクッションフレームを骨格として有する。
【0018】
シートクッション2の側部には、樹脂製のサイドシールド4が設けられる。サイドシールド4の内側には、側面衝突時に着座者及びシート1を衝撃から保護するためのブロック部材5が後方に設けられ、さらにワイヤハーネス6が配策されている。ワイヤハーネス6は、シートバック3を傾動させるリクライニング装置やシートクッション2を前後動させるスライド装置などへの電力の供給や制御のために用いられるものであり、先端はこれらの装置に接続されている。サイドシールド4は、ブロック部材5、ワイヤハーネス6及び各種装置を隠蔽して着座者等との接触から保護すると同時に、シートの意匠性を高める機能を果たしている。
【0019】
図2にサイドシールド4の内側の構成が示される。ブロック部材5は、ポリプロピレンに代表される樹脂材料で形成されており、柱軸方向つまり厚さ方向に貫通孔を多数有するいわゆるハニカム形状の柱状体として構成されている。ブロック部材5は、端面の一方をサイドシールド4の内側表面に接触させた状態でサイドシールド4に固定されている。ブロック部材5が十分な厚みと材料強度を有していれば、側面衝突によりサイドシールド4の外側からシートクッション2に向かう方向の衝撃を受けた時、その衝撃を吸収することができる。これにより、シート1の他の構成部分及び着座者に伝達される衝撃を低減することができる。厚さ方向に貫通孔が多数設けられているのは、衝撃に対する強度を確保しつつ、シート全体の重量を低減するためである。また、ブロック部材5の厚みは、配策されるワイヤハーネス6の外径よりも大きく構成されている。
【0020】
ワイヤハーネス6は、上記のように先端が各種装置に接続されている。また、基端部は車両本体側の電源部及び制御部に接続さている。ワイヤハーネス6の中途部位にはクランプ部材6a、6bが設けられ、これらの箇所で後述するブロック部材5の側面に設けられたハーネス固定部に固定されている。
【0021】
図3の分解斜視図に基づき、ブロック部材5にワイヤハーネス6を固定するためのハーネス固定部の構成を説明する。ブロック部材5の衝撃吸収面5c、5dに垂直な側面の厚さ方向中央付近に、薄板状のハーネス取り付け部材5a、5bが衝撃吸収面に平行に延出している。ハーネス取り付け部材5a、5bには、ハーネス取り付け孔5a’、5b’が貫通形成されている。
【0022】
一方、ワイヤハーネス6には、配策時にハーネス取り付け孔5a’、5b’の位置に対応する箇所にクランプ部材6a、6bが取り付けられている。クランプ部材6a、6bはワイヤハーネス6の外周面から矢じり状に突出しており、その突出部は外径がハーネス取り付け孔5a’、5b’の径よりもわずかに大きい部位を有する。クランプ部材6a、6bをそれぞれハーネス取り付け孔5a’、5b’に挿入しながら塑性変形させることで、ハーネス取り付け孔5a’、5b’に嵌合させることができる。これにより、ワイヤハーネス6がハーネス取り付け部材5a、5bの位置でブロック部材5に確実に固定される。また、ブロック部材5の厚みがワイヤハーネスの外径よりも大きいので、固定されたワイヤハーネスがブロック部材の厚みの中に収まり、シートクッション2やサイドシールド4との干渉が回避されている。
【0023】
側面衝突があっても、ブロック部材5が衝撃吸収面5c、5dに受けた衝撃を吸収するので、衝撃吸収面5c、5dと垂直な側面のハーネス固定部には直接的に衝撃が伝達されず、ワイヤハーネス6の破損が回避される。また、ブロック部材5が厚さ方向に押しつぶされるような変形を起こした場合にも、ブロック部材5の厚みがワイヤハーネス6の外径に比して十分に大きいと、ワイヤハーネス6に直接衝撃が加わって破損されることが防止される。
【0024】
従来一般の車両用シートにおいては、ブロック部材は衝撃の吸収のみを用途として設けられていた。一方、上記のような構成とすることで、ワイヤハーネス6に高い配策自由度を与えながら固定するという新たな用途がブロック部材5に付与される。
【0025】
ブロック部材5は樹脂材料を成形型で成形して製造されるが、ハーネス取り付け部5a、5bがブロック部材5の側面から衝撃吸収面5c、5dと平行に延出した構成を有することで、ハーネス取り付け部5a、5bを容易にブロック部材5の本体部と一体に成形することができる。また、ブロック部材5がサイドシールド4の内側の面に一体に装着固定されていることにより、各機器への接続とブロック部材5の側面への固定を含むワイヤハーネス6の配策を、サイドシールド4をシートクッション2に取り付けない状態で完結させてから、サイドシールド4をシートクッション2に取り付け、ワイヤハーネス6の基端部6c、6dの接続のみを行えばよいので、シートの生産性に優れている。
【0026】
ブロック部材の側面に設けられるハーネス固定部の構成としては、上記第一の実施形態のように、ワイヤハーネスに取り付けたクランプ部材をブロック部材のハーネス取り付け孔に挿入嵌合する形式に限定されない。図4に示される第二の実施形態では、別の形式の固定法が適用されている。第二の実施形態にかかる車両用シートにおいては、ブロック部材側面のハーネス固定部の構成以外は、第一の実施形態にかかる車両用シートと同様の構成を有する。
【0027】
ブロック部材25の衝撃吸収面25c、25dと垂直な側面には、鉤形状のハーネス係留部材25a、25bが形成されている。一方、ワイヤハーネス26には、固定用の部材は取り付けられていない。ワイヤハーネス26を配策する際には、ハーネス係留部材25a、25bの鉤状の箇所に、ワイヤハーネスの対応する部位を引掛ける。次に、ワイヤハーネスをくわえ込むようにハーネス係留部材25a、25bを塑性変形させることで、ワイヤハーネスを固定することができる。
【0028】
第一の実施形態のように貫通孔にクランプ部材を挿入嵌合させる形式に比べ、係留部材によってワイヤハーネスを固定する第二の実施形態にかかる形式の方が、固定の確実性においては劣る。また、鉤形状を形成する必要があるので、第一の実施形態のハーネス取り付け部のように、ハーネス係留部材をブロック部材本体と一体に形成することは困難である。一方で、ハーネス係留部材を採用した場合、ワイヤハーネス側にはクランプ部材のような固定のための部材を設ける必要がなく、部品点数が削減されるうえ、ワイヤハーネスを中途の任意の位置で係留させることができるので、配策の自由度は一層向上される。これらの点を考慮して、ワイヤハーネスの配策経路やブロック部材の形状などに基づいて、いずれの形態のハーネス固定部を採用するか決定すればよい。
【0029】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、上記二つの実施形態においては、ハーネス固定部はブロック部材の下方に二箇所形成されたが、ブロック部材の形状やワイヤハーネスの配策経路に応じて、任意にハーネス固定部の数と位置を決定すればよい。
【0030】
また、ブロック部材は、上記のようなハニカム形状の樹脂部材に限定されず、側面衝突時の衝撃を吸収することができ、側衝撃吸収面と垂直な面にハーネス固定部材を形成することが可能なものであれば、他の構成を有するものも同様に適用可能である。なお、上記のようなハーネス固定部を有するブロック部材は、車両幅方向外側のサイドシールドであるアウタシールドのみに設けられても、アウタシールドと車両幅方向内側のサイドシールドであるインナシールドの両方に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0031】
2 シートバック
4 サイドシールド
5 ブロック部材
5a、5b ハーネス取り付け部材
5a’、5b’ ハーネス取り付け孔
5c、5d 衝撃吸収面
6 ワイヤハーネス
6a、6b クランプ部材
25 ブロック部材
25a、25b ハーネス係留部材
26 ワイヤハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションの側部に側面衝突時の衝撃を吸収する樹脂製のブロック部材が設けられ、前記ブロック部材には、衝撃吸収可能な面と直行する側面に電源供給用及び/又は制御信号伝達用のワイヤハーネスを固定可能なハーネス固定部が設けられていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記ブロック部材は、複数の貫通孔が柱軸方向に形成され、柱軸がシート幅方向に平行に配置された柱状体であり、前記ワイヤハーネスの外径よりも柱軸方向に長く、該柱状体の端面において衝撃吸収可能であり、該柱状体の側面に前記ハーネス固定部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記ハーネス固定部は、前記ブロック部材の前記衝撃吸収可能な面と平行に延出した薄板状の取り付け部材に貫通孔が形成されたものであって、前記ワイヤハーネスには前記貫通孔に嵌合可能な突出形状を有するクランプ部材が設けられ、前記クランプ部材が前記貫通孔に挿入嵌合されることでワイヤハーネスを固定可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記ハーネス固定部は、前記ブロック部材の前記衝撃吸収可能な面の外側に鉤形状を有する係留部材を設け、該係留部材にワイヤハーネスの中途部位を係留させることにより、ワイヤハーネスを固定する構造を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記ブロック部材を隠蔽するサイドシールドをさらに有し、前記ブロック部材は前記サイドシールド内面に一体に装着固定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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