説明

車両用シート

【課題】車両の後方からの衝突時に生じる車両用シート着座者のむち打ち現象を緩和させるのに充分な連結ロッドの後方移動を比較的簡素な構成によって達成する。
【課題を解決するための手段】車両用シート10は、両側に配設されるシートサイドフレーム14A,14A間に該シートサイドフレーム14A,14Aを連結する連結ロッド20が、着座者の腰部後方位置に配設されて構成されている。そして、前記連結ロッド20の軸部には、着座者の腰部に後方への衝撃荷重が作用した際に該荷重を受けて後方への変形を可能とする後方変形可能手段40が設定されている。後方変形可能手段40は分割された2本の連結ロッド20a、20bが連結ブラケット22で連結され構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。詳しくは、車両後方からの衝突時に着座者の首(頸部)に生じるむち打ちの低減を図る車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等車両用シートは、シートクッションと、シートバックと、シートバックの上部に取り付けられるヘッドレストとからなっている。通常の自動車用シートは、シートバックはシートクッションにリクライニング機構を介して前後方向にリクライニング傾動可能に取り付けられている。これにより、着座者の良好な着座姿勢をとることを可能としている。
通常、リクライニング機構は、シートクッションとシートバックを連結する箇所の両側のシートサイドフレームに装備されている。そして、この両側のリクライニング機構の回転を伝達する部材として、シートサイドフレーム間に連結ロッドが配設されている。
また、このシートサイドフレーム間に配設される連結ロッドは、車両用シートが車両の側面衝突時の荷重を受ける構成となっている場合に、この連結ロッドも荷重の一部を受ける構成となっている。
そして、この連結ロッドの通常の配置構成は、車両用シートに着座した着座者の腰部の後方位置にある。このため、車両の後方からの衝突時(後突時)にその衝撃により腰部がシートに対して相対的に後方へ移動しようとするが、連結ロッド位置で後方への移動が阻止されて移動できない。
【0003】
ところで、後突時におけるいわゆる首(頸部)のむち打ち現象は、後突時の衝撃荷重により頭部が首(頸部)で後方へいわゆる折れた状態となって急激に後方へ傾くことにより生じる。従って、このむち打ち現象は頭部の急激な後方への傾きを抑制することにより緩和させることができる。このための方策として、後突時に着座者の胴体部分も頭部と同様に後方に移動させることにより首(頸部)の後方への折れを減少させてむち打ち現象を緩和させることがある。しかしながら、上述した連結ロッドが備えられている構成では、着座者の胴体部分の後方移動は、腰部の後方移動が連結ロッドに阻止されるに伴って一緒に阻止されるため、むち打ち現象の低減を図ることができない。
このため、この種連結ロッドを備えた車両用シートにおけるむち打ち現象の低減を図る改善が望まれており、最近では、ヘッドレスト等に対策を施してむち打ち現象の減少対策が図られるものがある。例えば、後突時にヘッドレストを前方斜め上方に移動させて頭部の後方への移動を阻止してむち打ち現象の減少を図る方法等がある。しかし、この方策による装置は、後突を検知してヘッドレストを斜め前方に作動させるものであるため、複雑な機構となると共に、それに伴いコストも要するという問題がある。
【0004】
なお、連結ロッドを後方へ移動可能とする技術を開示する文献として、下記特許文献1がある。この特許文献1に開示されている技術は、連結ロッドのシートサイドフレームへの取付箇所の取付をブッシュを介して取り付ける構成とするものである。これにより衝撃エネルギーが取付箇所に作用した場合に、ブッシュが撓み変形して連結ロッドの後方への移動も可能とするものである。尤も、特許文献1の技術は、ブッシュによりシートに作用する衝撃エネルギーを緩和することを狙いとしたものであるので、撓み変形は前方後方のいずれにも移動可能としたものとなっており、後方への移動は移動許容範囲の半分となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−264863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1の技術によれば、連結ロッドの後方への移動はブッシュの撓み変形できる範囲しか移動できない。通常の構成では、このブッシュの撓み変形できる範囲ストロークは大きく取ることができなく、むち打ち現象を減少させるストロークとしては不充分なものである。すなわち、ブッシュが配設される位置は連結ロッドのシートサイドフレームへの取付箇所であるため、かかる箇所における後方への移動ストロークはフレームの前後方向の幅の長さに制限されるものであり、長いストロークを確保することができない。また、連結ロッドのシートサイドフレームへの支持剛性確保の観点からも撓み変形量を大きくとるには問題があり、あまり大きく取ることが困難なものである。
【0007】
而して、本発明は上記した点に鑑みて創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、いわゆる車両の後方からの衝突時に生じる車両用シート着座者のむち打ち現象を緩和させるのに充分な連結ロッドの後方移動を比較的簡素な構成によって達成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の車両用シートは次の手段をとる。
先ず、本発明に係る車両用シートの基本的構成は、両側に配設されるシートサイドフレーム間に該シートサイドフレームを連結する連結ロッドが、着座者の腰部後方位置に配設されている。
そして、かかる構成において、前記連結ロッドの軸部には、着座者の腰部に後方への衝撃荷重が作用した際に該荷重を受けて後方への変形を可能とする手段が設定されている。
【0009】
上記本発明によれば、連結ロッドの軸部には、着座者の腰部に後方への衝撃荷重が作用した際に該荷重を受けて後方への変形を可能とする手段が設定されている。この後方への変形を可能とする手段により連結ロッドの軸部は、いわゆる車両後突時において車両用シート着座者の腰部に後方への衝撃荷重が作用すると、後方へ変形して、着座者の腰部の後方への移動を許容する。連結ロッドの軸部の後方部は、通常、その移動の障害となる部材は配設されていないことから、充分な後方移動のストロークを確保することができて、後突時の衝撃荷重の大きさに応じて後方へ十分移動することができる。
上記着座者の腰部の後方移動は、シートバックに対する着座者の胴体の後方移動を伴って行われる。この胴体の後方への移動は、後突時に生じる頭部の後方への傾き移動と共に行われることから、この頭部の後方への傾きを軽減させることができる。この結果、首部(頸部)に生じるむち打ちの軽減を図ることができる。
上記連結ロッドの軸部に設けられる後方への変形を可能とする手段は、軸部の一部の構造を工夫することにより構成することができるものであるため、比較的簡素な構成で達成することができ、そのためのコストも抑制することができるものである。
【0010】
なお、本発明における連結ロッドが配設される好適な車両用シートは、連結ロッドにより車両の側面衝突時の荷重を受けることができる構成となっており、前記後方への変形を可能とする手段設定箇所も軸線方向の荷重に対しては該荷重を伝達できる構成とされているのが好ましい。このように連結ロッドが側面衝突時の荷重を受けることができる構成とされていることにより車両の側面衝突にも対応できる車両用シートとして車両に装備することが可能となる。
【0011】
更に、他の本発明における連結ロッドが配設される好適な車両用シートは、シートクッションに対してシートバックがリクライニング傾動するリクライニング機構を備えており、前記連結ロッドは該リクライニング機構の回転を伝達するリクライニングロッドであり、前記後方への変形を可能とする手段設定箇所も回転を伝達することができる構成とされているのが好ましい。このように連結ロッドが回転を伝達することができる構成とされていることにより、リクライニング機構を備えた車両用シートにも適用できるものである。
【0012】
本発明における、上記連結ロッドの軸部に設けられる後方への変形を可能とする手段の好適な構成としては、連結ロッドが分割して形成されており、該分割箇所が軸線方向の荷重及び回転は伝達できる構成として接続されているが、連結ロッドへ作用する後方への荷重に対しては変形可能な構成として接続されている構成であるのが良い。
上記構成によれば、連結ロッドを分割して形成し、当該分割箇所を回転伝達及び軸線方向への荷重伝達を可能とする比較的簡素な構成によって達成することができる。そして、この構成によって上述した側面衝突対応車両用シートやリクライニング機構を備えた車両用シートにも適用することができる。
【0013】
更に、本発明における、他の上記連結ロッドの軸部に設けられる後方への変形を可能とする手段の好適な構成としては、連結ロッドの一部が脆弱部に形成されており、該脆弱部は軸線方向の荷重及び回転は伝達するが、連結ロッドへ作用する後方への荷重に対しては変形可能な構成であるのが良い。
上記構成によれば、連結ロッドの一部を脆弱部に形成し、当該脆弱部を回転伝達及び軸線方向への荷重伝達を可能とする比較的簡素な構成によって達成することができる。そして、この構成によって上述した側面衝突対応車両用シートやリクライニング機構を備えた車両用シートにも適用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上記した手段をとることにより、充分な連結ロッドの後方移動を可能として、いわゆる車両の後方からの衝突時に生じる車両用シート着座者のむち打ちの軽減を図ることができる。また、本発明によればその充分な連結ロッドの後方移動を比較的簡素な構成によって達成することができる。
なお、連結ロッドにより車両の側面衝突時の荷重を受けることができる構成となっている場合には、本発明の車両用シートは車両の側面衝突にも対応できる車両用シートとして装備することができる。
また、連結ロッドが回転を伝達することができる構成となっている場合には、車両用シートにリクライニング機構を装備させる場合の左右のリクライニング機構を連結するリクライニングロッドとすることもできる。
また、連結ロッドの軸部に設定する後方への変形を可能とする手段を、連結ロッドの軸部を分割して形成したり、軸部の一部を脆弱部に形成するなどして構成する場合には、当該手段を比較的簡素な構成で達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る車両用シートの骨格の概略構成を示す模式図である。
【図2】図1に示す車両用シートの連結ロッド20が側面衝突時の荷重を受けることのできる剛性ロッドとして機能する配設状態を示す模式図である。
【図3】車両突時のむち打ち現象の説明図である。
【図4】連結ロッドに設定する後方変形可能手段の第1の実施例を示す斜視図である。
【図5】上記第1の実施例の平面図である。
【図6】上記第1の実施例における側面衝突時における衝撃荷重伝達状態を示す平面図である。
【図7】上記第1の実施例における後突時における連結ロッドの後方への移動状態を示す平面図である。
【図8】上記第1の実施例における一方の連結ロッドの端面に凸部を形成する具体的方法を示す説明図である。
【図9】上記第1の実施例の変形例を示す平面図である。
【図10】連結ロッドに設定する後方変形可能手段の第2の実施例を示す斜視図である。
【図11】連結ロッドに設定する後方変形可能手段の第3の実施例を示す平面図である。
【図12】連結ロッドに設定する後方変形可能手段の第4の実施例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る車両用シートの実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の車両用シートの連結ロッドは、左右に配設されるリクライニング機構を同期させるリクライニングロッドの機能と、当該車両用シートがいわゆる側面衝突時の荷重を受けることのできる剛性ロッドの機能とを併せ持つ構成の連結ロッドである。しかし、これらの機能は車両に装備される車両用シートの必要に応じて備えさせれば良いものであり、場合によっては両機能とも備えない連結ロッドであっても良い。なお、本説明において、上方、前方、外方等の方向表示は着座者が車両用シートに着座した状態における着座者から見た方向を示している。
【0017】
図1は本発明に係る車両用シートの骨格の概略構成を示す模式図である。車両用シート(これを単に「シート」と称することもある)10は大別してシートクッション12と、シートバック14とからなっており、シートバック14の上部にはヘッドレスト16(図3参照)が備えられている。図1ではこれらの骨格を形成するフレームが示されており、シートクッション12の骨格であるクッションサイドフレーム12Aと、シートバック14の骨格であるバックサイドフレーム14Aが示されている。このクッションサイドフレーム12Aとバックサイドフレーム14Aが本発明で言うシートサイドフレームである。
クッションサイドフレーム12Aとバックサイドフレーム14Aは、それぞれ着座者の両側位置に並列に配設されており、クッションサイドフレーム12Aの後方位置とバックサイドフレーム14Aの下方位置でシートバック14がシートクッション12に対して前後方向にリクライニング傾動可能に連結されている。このクッションサイドフレーム12Aとバックサイドフレーム14Aの連結箇所には左右の両側位置共、リクライニング機構装置18R、18Lが装備されている。なお、両側のクッションサイドフレーム12A、12Aは前方位置のフロントサイドフレーム12Sにより連絵されている。
上記車両用シート10の両側に配設されたリクライニング機構装置18R、18Lは、この左右のリクライニング機構を同期作動させるための連結ロッド20により連結されている。従って、この実施形態ではこの連結ロッドがいわゆる左右のリクライニング機構を同期作動させるリクライニングロッドとして機能するようになっている。これによりシート10の両側のクッションサイドフレーム12Aとバックサイドフレーム14Aは連結ロッド20により連結された構成となっている。そして、この連結ロッド20が配設される位置は、図3に示すように着座者Mの腰部Nh後方位置となっている。
【0018】
図2は上記リクライニングロッドとしての連結ロッド20が側面衝突時の荷重を受けることのできる剛性ロッドとして機能する構成として配設された状態を示す模式図である。
本実施形態の車両用シート10は、車両のドア等の側面構成部材30と車両室内の中央の床面32のアンダーボディが上方に膨出する形態として形成されたトンネル形状の荷重支持部材34との間の床面32上に設置されている。シート10はシートスライド機構36により前後方向にスライド移動可能に設置されている。連結ロッド20の配設位置は、荷重支持部材34を構成するトンネル形状の高さより低い位置に配設されている。なお、連結ロッド20は軸線方向の荷重を受けて伝達することのできる剛性ロッドとして構成されている。これにより、図2に示すように、ドア等の側面構成部材30に側面衝突の衝撃荷重(矢印F)が作用すると,この衝撃荷重Fは車両用シート10の剛性ロッドとしての連結ロッド20を介してセンターコンソール等の荷重支持部材34に伝えられて、この荷重支持部材34で衝撃荷重は受け止められる。すなわち、車両の側面衝突時の荷重は車両用シート10の連結ロッド20を介してトンネル形状の荷重支持部材34で受けられる。これにより側面衝突時におけるドア等の側面構成部材30の車両室内方向への衝撃変形が抑制される。
【0019】
図1及び図2に示される連結ロッド20には、その軸部の一部に、着座者の腰部に後方への衝撃荷重が作用した際に該荷重を受けて後方への変形を可能とする手段が構成されている。この後方変形可能手段が構成される箇所が図1及び図2には符号40として示されている。後方変形可能手段40の具体的な構成例については後述するが、当該後方変形可能手段40は、連結ロッド20の軸部の一部に設定されており、図3に示されるように、着座者Mの腰部Mhに後方への衝撃荷重が作用すると、腰部Mhが後方へ移動可能に後方へ移動するように構成されている。これにより、車両の後突時の衝撃荷重により着座者Mの腰部Mh及び胴体Mbはシートバック14のバックサイドフレーム14A、14A間に配設されるクッションパッド部分に喰い込んでバックサイドフレーム14A、14Aに対して相対的に後方へ移動する。この着座者Mの腰部Mh及び胴体Mbの後方移動に伴って頭部Maも一緒に後方移動し、ヘッドレスト16に対する頭部Maの後方への傾動空間を狭くする。従って、着座者Mの首を中心とした頭部Maの傾動が僅かとなり、むち打ち現象を軽減させて緩和させることができる。
【0020】
なお、連結ロッド20がリクライニングロッドとして構成されている場合には、当該後方変形可能手段40の軸部構成は、シート10を通常の使用状態で利用する際には、当該後方変形可能手段40は回転を伝達できる構成とされている。後方変形可能手段40も回転を伝達できる構成されていることにより、シートバック16をリクライニング傾動させる際の左右両側のリクライニング機構装置18R、18Lをこの連結ロッド20を介して同期作動回転させることができる。
【0021】
また、当該車両用シート10が側面衝突時の衝撃荷重を連結ロッド20を介して受けることのできる剛性ロッドとして構成される場合には、当該後方変形可能手段40の軸部構成も、側突時の衝撃荷重を軸部の軸線方向に伝えることができる構成とされている。これにより、側突時に車両の側面構成部材に加えられる衝撃荷重はシート10の連結ロッド20を介して反対側のトンネル形状の荷重支持部材34に伝えて受け持たせることができる。
【0022】
図4〜図7は後方変形可能手段40の第1の実施例の具体的構成を示す。第1の実施例の後方変形可能手段40は、連結ロッド20を分割して、連結ブラケット22で連結して構成するものである。図4はバックサイドフレーム14A,14A間に連結配設される連結ロッド20の斜視図を示し、図5は平面図を示す。連結ロッド20は中央で分割された左右の2本の連結ロッド20a、20bで形成されており、2本の連結ロッド20a、20bは板状の連結ブラケット22で連結されている。2本の連結ロッド20a、20bは、図5に良く示されるように、軸線方向に僅か離間して配設されている。そして、分割された端面の一方に凸部24bが形成され、他方に凹部24aが形成されており、凸部24bと凹部24aはその連結ロッド20a、20bの軸線方向の相対的近接移動により嵌合するようになっている(図6参照)。これにより分割された2本の連結ロッド20a、20bに軸線方向の荷重が作用した場合には、その荷重を確実に伝達できる構成とされている。従って、第1の実施例の連結ロッド20は、側面衝突時の荷重を受ける剛性ロッドとして機能させることができる。この状態が図6に示されている。すなわち、一方の連結ロッド20bに加えられた側突荷重Fは凸部24bと凹部24aの嵌合により確実に他方の連結ロッド20aに伝えられて、荷重支持部材34で受け止められる。
連結ブラケット22は、連結ロッド20へ取付けられた状態での軸線方向の断面形状が、中央部が半円形状の撓み部位22cに形成され、その両端部に取付片22a、22bが一体的に形成された形状として形成されている。取付片22a、22bは分割された2本の連結ロッド20a、20bにそれぞれ溶接等により結合されており、これにより分割された2本の連結ロッド20a、20bは連結ブラケット22を介して連結された状態となっている。連結ブラケット22の撓み部位22cは図6及び図7に示すように撓み変形できる剛性とされているが、図4及び図5に示す通常の状態では、2本の連結ロッド20a、20bの相互間の回転を伝達できる剛性として形成されている。これにより、この連結ロッド22を、車両用シート10の両側に配設されるリクライニング機構装置18R、18Lを同期作動させるための回転伝達部材としてのリクライニングロッドとして機能させることができる。
【0023】
図6に示すように、連結ロッド20に側面衝突時の荷重が作用した場合には、分割された2本の連結ロッド20a、20b間の僅かな隙間は詰められて、前述したように、分割された端面の凸部24bと凹部24aが嵌合する。このとき、連結ブラケット22の撓み部位22cは軸線方向への撓み変形は可能とされているため、撓み部位22cが縮み方向に撓み変形して凸部24bと凹部24aの嵌合移動が行われる。
車両の後突により、着座者Mの腰部Mhがシート10に対して相対的に後方移動して連結ロッド20に衝撃荷重を及ぼす状態になると、図7に示すように、連結ロッド20は2分割された2本の連結ロッド20a、20bをつないでいた連結ブラケット22の撓み部位22cが軸線方向に伸びて,着座者Mの腰部Mhに押されて後方へ移動する。これにより、前述したように着座者Mのむち打ち現象の緩和作用がなされる。
【0024】
図8は上記第1の実施例における分割された一方の連結ロッド20bの分割端面に凸部24bを形成する具体的方法を示す。図8(A)に示すように、一方の連結ロッド20bを管状部材で形成し、一端50aがこの管状部材の孔に嵌合することのできる断面十字状のピン部材50を別途形成する。ピン部材50の他端50bの形状は上記した凸部24bの形状とされている。そして、図8(B)に示すように、ピン部材50の中央位置の鍔部50cを管状部材で形成された連結ロッド20bの分割端面にCO2熔接により固定して一体化する。このようにして一方の連結ロッド20bの分割端面に凸部24bを形成することができる。
【0025】
図9は上記第1の実施例の変形例を示す。なお、以後の各実施例の説明では上記説明と同一符号を用いることによりその説明を省略することがある。図9に示す変形例は、連結ブラケット22の撓み部位22cを分割された2本の連結ロッド20a、20b間に配設して構成したものである。この構成とすることにより連結ブラケット22の撓み部位22cの径方向外方への出っ張りをなくすことができる。なお、この構成における分割された2本の連結ロッド20a、20b間の軸線方向の荷重伝達は挟まれた連結ブラケット22の撓み部位22cを介して行われる。
【0026】
図10は後方変形可能手段40の第2の実施例を示す。この第2の実施例は、通常の使用状態においても、分割された2本の連結ロッド20a、20bの分割箇所を係合突起26bと係合孔26aの嵌合により回転伝達可能な構成としたものである。一方の連結ロッド20bの分割端面に係合突起26bが形成され、他方の連結ロッド20aの分割端面に係合孔26aが形成されている。係合突起26b及び係合孔26aの断面形状は扁平な楕円形状とされており回転伝達可能な形状とされている。なお、係合突起26b及び係合孔26aの断面形状は、その他角形断面等、回転伝達可能な形状であれば良い。
係合突起26b及び係合孔26aの嵌合剛性は、回転を伝達することができる剛性ではあるが、回転ロッド20に後突時の衝撃により着座者Mの腰部Mhの衝撃荷重が加わった時には、連結ロッド20が後方へ変形可能な剛性として構成されている。これにより後突時における着座者のむち打ち現象の緩和を図ることができる。
なお、第2の実施例における側突時の連結ロッド20の荷重の伝達は、分割された2本の連結ロッド20a、20bの分割端面が直接接触した状態として行われる。この荷重が伝達される際、2本の連結ロッド20a、20bは最初から係合突起26b及び係合孔26aが嵌合状態にあるため、その荷重の伝達を確実に伝達することができる状態として行われる。
【0027】
図11は後方変形可能手段40の第3の実施例を示す。この第3の実施例は、分割された2本の連結ロッド20a、20bの分割箇所を連結ゴム28で連結して構成したものである。連結ゴム28は2本の連結ロッド20a、20bの分割端面に接着により取付けられており、回転伝達可能に連結されている。なお、連結ロッド20に後方への衝撃荷重が作用した場合には、連結ゴム28は軸線方向に伸びて連結ロッド20の後方への移動を可能とする。また、連結ゴム28は後方への衝撃荷重が作用したとき、破断して連結ロッド20の後方への移動を許容するものであってもよい。
【0028】
図12は後方変形可能手段40の第4の実施例を示す。この第4の実施例は、後方変形可能手段40を軸部の中央位置に蛇腹形状部42として形成したものである。この蛇腹形状部42は他の軸部の剛性より脆弱な剛性として構成されており、軸部の回転は伝達できる剛性であるが、前述の後突時の後方への衝突荷重が作用したときには後方へ移動可能な剛性とされているものである。これにより、連結ロッド20をリクライニングロッドとして機能させることができると共に、側突時に機能する剛性ロッドとしても機能させることができる。
【0029】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態のほか各種の形態で実施できるものである。
例えば、上記実施形態では、後方変形可能手段40が設定される位置が連結ロッド20の中央位置の一箇所のみの場合であったが、連結ロッド20の軸部であれば複数箇所に設定することもできる。
【符号の説明】
【0030】
10 車両用シート
12 シートクッション
12A クッションサイドフレーム(シートサイドフレーム)
14 シートバック
14A バックサイドフレーム(シートサイドフレーム)
16 ヘッドレスト
18R,18L リクライニング機構装置
20、20a,20b 連結ロッド
22 連結ブラケット
22a、22b 取付片
22c 撓み部位
24a 凹部
24b 凸部
26a 係合孔
26b 係合突起
28 連結ゴム
30 車両側面構成部材(ドア)
32 床面
34 荷重支持部材(センターコンソール)
36 シートスライド機構
40 後方変形可能手段
50 ピン部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側に配設されるシートサイドフレーム間に該シートサイドフレームを連結する連結ロッドが、着座者の腰部後方位置に配設されている車両用シートであって、
前記連結ロッドの軸部には、着座者の腰部に後方への衝撃荷重が作用した際に該荷重を受けて後方への変形を可能とする手段が設定されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートであって、
当該車両用シートは、前記連結ロッドにより車両の側面衝突時の荷重を受けることができる構成となっており、前記後方への変形を可能とする手段設定箇所も軸線方向の荷重に対しては該荷重を伝達できる構成であることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項1(又は請求項2)に記載の車両用シートであって、
当該車両用シートは、シートクッションに対してシートバックが傾動するリクライニング機構を備えており、前記連結ロッドは該リクライニング機構の回転を伝達するリクライニングロッドであり、前記後方への変形を可能とする手段設定箇所も回転を伝達することができる構成であることを特徴とする車両用シート。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両用シートであって、
前記連結ロッドの後方への変形を可能とする手段は、該連結ロッドが分割して形成されており、該分割箇所が軸線方向の荷重及び回転は伝達できる構成として接続されているが、連結ロッドへ作用する後方への荷重に対しては変形可能な構成として接続されている構成であることを特徴とする車両用シート。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両用シートであって、
前記連結ロッドの後方への変形を可能とする手段は、該連結ロッドの一部が脆弱部に形成されており、該脆弱部は軸線方向の荷重及び回転は伝達するが、連結ロッドへ作用する後方への荷重に対しては変形可能である構成であることを特徴とする車両用シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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