説明

車両用ドアラッチ装置

【課題】側面衝突の際に慣性または変形によってドアアウトサイドハンドルが作動しても、ドアが開放されず、衝突後にもドアラッチが正常的に作動することが可能な車両用ドアラッチ装置を提供する。
【解決手段】アウトサイドハンドルレバー、ポールリフター、ポール、ラッチフォーク、およびバランスウエイトを含む。アウトサイドハンドルレバー(100)はアウトサイドハンドルによって回動する。ポールリフター(200)は係止溝部(210)を有し、アウトサイドハンドルレバー(100)にヒンジ連結される。ポール(300)は係止溝部(210)に係止されて回動する。ラッチフォーク(400)はポール(300)の回動によってドアをロック/アンロックする。バランスウエイト(500)は衝突発生の際に係止溝部(210)の係止が解除されるようにポールリフター(200)に取り付けられる慣性荷重であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両衝突の際にドアの開放を防止する車両用ドアラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ドアアウトサイドハンドルは、ドアパネルの外側面に設けられるドア開閉用ハンドルであって、図1に示すように、ドアパネル10の内部にはハンドルベース板21が設置され、ハンドルベース板21にはドアアウトサイドハンドル20の操作に伴って回転するレバー30がピン軸31によって固定される。
【0003】
レバー30の下端部はロッドまたはケーブル40によって連結される。レバー30の上端部にはバランスウエイト50が一体に成形され、ピン軸31にはリターンスプリング(図示せず)が挿入される。このリターンスプリングの一端はドアアウトサイドハンドル20の内面に固定され、リターンスプリングの他端はバランスウエイト50の内面に密着して係止される。
【0004】
すなわち、ドアアウトサイドハンドル20を引くと、レバー30の下端が引き方向に角運動し、レバー30の下端部に連結されたロッドまたはケーブル40が引かれながら解除されてドアが開くのである。
ここで、バランスウエイトは、ドアアウトサイドハンドルの作動方向とは反対の慣性荷重を提供し、ドアアウトサイドハンドルの作動を抑制するうえ、ドアラッチの解除を防止する。
【0005】
ところが、バランスウエイトがドアアウトサイドハンドルに取り付けられる従来の技術の場合、車両の衝突(F)によってパネルアウトパネルが変形し、バランスウエイトの位置した内側に押し付けられることがあるが、この際、押し付けられるレバーの下端部が引かれる角運動をしてドアラッチを解除することもある。
【0006】
特許文献1は、作業性を低下させることなくコストダウンが可能なドアハンドルの組付け構造を提供するものであるが、車両衝突時におけるドアラッチ解除の防止については、機構的に満足すべきものとはいえない。
【0007】
【特許文献1】特開2003−13629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記のような点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、側面衝突の際に慣性または変形によってドアアウトサイドハンドルが作動しても、ドアが開放されない車両用ドアラッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の車両用ドアラッチ装置は、アウトサイドハンドルによって回動するアウトサイドハンドルレバーと、係止溝部を有し、前記アウトサイドハンドルレバーにヒンジ連結されるポールリフターと、前記係止溝部に係止されて回動するポールと、前記ポールの回動によってドアをロック/アンロックするラッチフォークと、衝突発生の際に前記係止溝部の係止が解除されるように前記ポールリフターに取り付けられて慣性荷重を提供するバランスウエイトとを含むことを特徴とする。
【0010】
この車両用ドアラッチ装置は、ドアロック信号の伝達の際に回動してポールリフターを回動させるロックレバーをさらに含むことを特徴とする。
【0011】
また、ロックレバーには、ロックレバーの回動の際にポールリフターを押して係止溝部の係止を解除する接触リブが設けられることを特徴とする。
【0012】
ポールリフターは、弾性バネを介してアウトサイドハンドルレバーに弾支されることを特徴とする。
【0013】
アウトサイドハンドルレバーには、ポールリフターのヒンジ軸が遊動して固定される位置調節溝が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、側面衝突の際に慣性または変形によってドアアウトサイドハンドルが作動しても、ドアの開放が防止され、衝突後にもドアラッチが正常的に作動することが可能であるという利点がある。
特に、本発明は、車両衝突の際に慣性荷重を提供するバランスウエイトがドアラッチ装置に設けられるので、車両衝突の際にドアアウターパネルの変形によりバランスウエイトが押されることを防止することができる。その結果、車両衝突の際にドアラッチが解除されることを防止することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
まず、各図面の構成要素に参照符号を付する際、同一の構成要素に対しては、別の図面上に表示されても、出来る限り同一の符号が用いられている。また、本発明を説明する際、関連した公知の機能およびその構成については、その具体的な説明が本発明の要旨から逸れる恐れがあると判断される場合には、その具体的な説明を省略する。
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明する。
図2は本発明に係る車両用ドアラッチ装置を示す斜視図、図3は図2の「A」部分を拡大して示す図、図4は本発明に係る車両用ドアラッチ装置のアウトサイドハンドルレバーを拡大して示す図である。
図2〜図4に示すように、本発明に係る車両用ドアラッチ装置は、慣性荷重を提供するバランスウエイトを備えることにより、車両衝突の際にドアが開放されることを防止し、衝突後にもドアラッチの正常的な作動が可能であるという点に最も大きい特徴がある。
【0017】
これを実現するための構成を具体的に説明すると、ドアラッチ装置は、ラッチブラケット700に回動可能に設置されるアウトサイドハンドルレバー100と、アウトサイドハンドルレバー100にヒンジ連結され、ポール(pawl)300のポールピン310に選択的に係止されるポールリフター200と、ポールリフター200に取り付けられるバランスウエイト500とを含む。
【0018】
アウトサイドハンドルレバー100は、一端部がアウトサイドハンドルに作動ケーブル(図示せず)を介して連結され、他端部がポールリフター200にヒンジ軸240を介してヒンジ連結される。このアウトサイドハンドルレバー100には、アウトサイドハンドルレバー100とラッチブラケット700との間で弾支する弾性バネ110が設置される。
【0019】
すなわち、アウトサイドハンドルが引かれると、当該作動力が作動ケーブルを介してアウトサイドハンドルレバー100に伝達され、アウトサイドハンドルレバー100は、ヒンジ軸を中心として回動しながらポールリフター200を引く。アウトサイドハンドルの作動力が解除されると、弾性バネ110の弾性復元力によってアウトサイドハンドルレバー100は元の位置に回動し、これによりポールリフター200は元の位置に戻る。
【0020】
アウトサイドハンドルレバー100には、ポールリフター200のヒンジ軸240が挿入される位置調節溝120が設けられてもよい。この位置調節溝120は、組立過程でポールリフター200のヒンジ軸240の位置調節を可能にして組立公差を減らす。
【0021】
ポールリフター200は、アウトサイドハンドルレバー100にヒンジ連結され、係止溝部210を介してポール300のポールピン310に選択的に係止される構造である。
【0022】
すなわち、ポールリフター200の一側部には、ポールリフター200とアウトサイドハンドルレバー100との間を弾支する弾性バネ230が設置される。したがって、ドアアンロック状態でアウトサイドハンドルレバー100によってポールリフター200が回動すると、ポールリフター200の係止溝部210はポール300のポールピン310に係止され、係止された状態のポールピンは、ポールリフター200によって回動することにより、ラッチフォーク400を介してのラッチ作動が行われ得る。
【0023】
ポールリフター200の他側部には、ロックレバー600の作動に連動する係止リブ220が設けられる。ここで、ロックレバー600は、ドアロック信号の伝達の際にポールリフター200の他側部を回動させるための接触リブ610を有し、ラッチブラケット700の支持ブラケット710に回動可能に設置される。
【0024】
これにより、ドアロック状態でロックレバー600が回転すると、ロックレバー600の接触リブ610は、係止リブ220を押してポールリフター200を回動させ、ポールピン310に対する係止溝部210の係止を解除するので、アウトサイドハンドルレバー100によってポールリフター200が回動しても、ポールピン310によってドアは開放されなくなる。
【0025】
ポールリフター200にはバランスウエイト500が取り付けられる。このバランスウエイト500は、車両衝突発生の際にポールリフター200の他側部に慣性荷重を提供して係止溝部210の係止を解除するので、ドアの開放を防止する。例えば、車両衝突による慣性荷重がドアに加えられると、バランスウエイト500は、慣性荷重によって係止溝部210の係止が解除される方向にポールリフター200を回動させる。したがって、車両の衝突によってアウトサイドハンドルが押し上げられ、アウトサイドハンドルレバー100が回動しても、ポールリフター200は係止溝部210を介してポール300のポールピン310を回動させられないので、ドアは開放されなくなる。
【0026】
係止溝部210の係止が解除される方向に回動したポールリフター200は、車両の衝突以後に弾性バネ230の弾性復元力によって元の位置に回動し、係止溝部210を介してポールピン310に再び係止される。これにより、車両の衝突後にもドアラッチの正常的な作動が可能である。
【0027】
次に、このような構成を持つ本発明の作動過程について説明する。
図5および図6はドアアンロック状態における本発明に係る車両用ドアラッチ装置の作動を示す図である。
図5、図6に示すように、ドアアンロック状態でアウトサイドハンドルが引かれると、当該作動力が作動ケーブルを介してアウトサイドハンドルレバー100に伝達されてアウトサイドハンドルレバー100が反時計方向に回動する。アウトサイドハンドルレバー100が回動すると、ポールリフター200は、反時計方向に回動しながら係止溝部210を介してポール300のポールピン310に係止される。
【0028】
その後、ポールリフター200は係止溝部210に係止されたポール300を引いて回動させ、ポール300の回動によってラッチフォーク400も回転する。その結果、ラッチフォーク400の作動によってドアの開放がなされる。
【0029】
図7および図8はドアロック状態における本発明に係る車両用ドアラッチ装置の作動状態を示す図である。
【0030】
図7に示すように、ドアロック状態でロックレバー600が反時計方向に回転すると、ロックレバー600の接触リブ610は、係止リブ220を押してポールリフター200を回動させるので、ポールピン310に対する係止溝部210の係止を解除する。
【0031】
図8に示すように、アウトサイドハンドルレバー100によってポールリフター200が反時計方向に回動しても、ポールピン310によるドアのラッチ作動は実現できず、ドアのロック状態は維持できる。
【0032】
図9〜図11は側面衝突時の本発明に係る車両用ドアラッチ装置の作動状態を示す図である。
図9〜図11に示すように、車両衝突が発生すると、バランスウエイト500は、ポールリフター200の他側部に慣性荷重を提供することにより、ポールリフター200が時計方向に回動するようにする。この際、ポールピン310に対する係止溝部210の係止は解除される。
したがって、図11に示すように、車両衝突によってアウトサイドハンドルが押し上げられ、アウトサイドハンドルレバー100が回動しても、ドアは開放されなくなる。
【0033】
図12および図13は側面衝突後のドアアンロック状態における本発明に係る車両用ドアラッチ装置の作動状態を示す図である。
図12および図13に示すように、車両衝突以後、バランスウエイト500によって反時計方向に回動したポールリフター200は、弾性バネ230の弾性復元力によって元の位置に回動し、係止溝部210を介してポールピン310に再び係止される。
【0034】
この状態でアウトサドハンドルをさらに引くと、ポールリフター200は、係止溝部210に係止されたポール300を引いて回動させ、ポール300の回動によってラッチポーク400も回転して、ラッチフォーク400の作動によるドア開放が実現できる。その結果、車両衝突後にもドアラッチの正常的な作動が可能である。
【0035】
以上、本発明を好適な実施例によって詳細に説明したが、本発明の範囲は特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって解釈されるべきである。また、当該技術分野における通常の知識を有する者が、本発明の範囲から逸脱することなく、多様な変更例または修正例に想到し得る発明も含む。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、車両衝突の際にドアの開放を防止する車両用ドアラッチ装置の分野に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】従来の技術に係るドアアウトサイドハンドル構造を示す構成図である。
【図2】本発明に係る車両用ドアラッチ装置を示す斜視図である。
【図3】図2の「A」部分を拡大して示す斜視図である。
【図4】本発明に係る車両用ドアラッチ装置のアウトサイドハンドルレバーを拡大して示す斜視図である。
【図5】ドアアンロック状態における本発明に係る車両用ドアラッチ装置の作動状態を示す状態図である。
【図6】ドアアンロック状態における本発明に係る車両用ドアラッチ装置の作動状態を示す状態図である。
【図7】ドアロック状態における本発明に係る車両用ドアラッチ装置の作動状態を示す状態図である。
【図8】ドアロック状態における本発明に係る車両用ドアラッチ装置の作動状態を示す状態図である。
【図9】側面衝突時の本発明に係る車両用ドアラッチ装置の作動状態を示す状態図である。
【図10】側面衝突時の本発明に係る車両用ドアラッチ装置の作動状態を示す状態図である。
【図11】側面衝突時の本発明に係る車両用ドアラッチ装置の作動状態を示す状態図である。
【図12】側面衝突後のドアアンロック状態における本発明に係る車両用ドアラッチ装置の作動状態を示す状態図である。
【図13】側面衝突後のドアアンロック状態における本発明に係る車両用ドアラッチ装置の作動状態を示す状態図である。
【符号の説明】
【0038】
100 アウトサイドハンドルレバー
200 ポールリフター
300 ポール
400 ラッチフォーク
500 バランスウエイト
600 ロックレバー
700 ラッチブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウトサイドハンドルによって回動するアウトサイドハンドルレバーと、
係止溝部を有し、前記アウトサイドハンドルレバーにヒンジ連結されるポールリフターと、
前記係止溝部に係止されて回動するポールと、
前記ポールの回動によってドアをロック/アンロックするラッチフォークと、
衝突発生の際に前記係止溝部の係止が解除されるように前記ポールリフターに取り付けられて慣性荷重を提供するバランスウエイトとを含むことを特徴とする、車両用ドアラッチ装置。
【請求項2】
ドアロック信号の伝達時に回動して前記ポールリフターを回動させるロックレバーをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の車両用ドアラッチ装置。
【請求項3】
前記ロックレバーには、前記ロックレバーの回動時に前記ポールリフターを押して前記係止溝部の係止を解除する接触リブが設けられることを特徴とする、請求項2に記載の車両用ドアラッチ装置。
【請求項4】
前記ポールリフターは、弾性バネを介して前記アウトサイドハンドルレバーに弾支されることを特徴とする、請求項1に記載の車両用ドアラッチ装置。
【請求項5】
前記アウトサイドハンドルレバーには、前記ポールリフターのヒンジ軸が遊動して固定される位置調節溝が設けられることを特徴とする、請求項4に記載の車両用ドアラッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−13919(P2010−13919A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303393(P2008−303393)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(508353282)アービンメリトール・ジャパン株式会社 (1)
【出願人】(508353776)平和精工株式会社 (2)
【Fターム(参考)】