説明

車両用ドアロックシステム

【課題】車両の衝突後におけるドアロックを適切に行える車両用ドアロックシステムを提供する。
【解決手段】車両用ドアロックシステムを、車両のドアをロック又はアンロックするロック機構部6と、車両の衝突を検出する衝突検出部1,2と、車両の車室内に設けられ、前記ロック機構部のロック操作が入力される操作部4と、衝突検出部1,2の出力に基づいて、操作部4に入力された第1の操作パターンに応じてロック機構部をロックする通常モードと、操作部4に入力され、第1の操作パターンと異なる第2の操作パターンに応じてロック機構部6をロックする衝突後モードとを切り換える制御部7とを備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両のドアロックシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両において、搭乗者が乗降するドアは、通常ドアロック機構を備えている。このようなドアロック機構は、駐車時にユーザの操作に応じてロック(施錠)されるほか、走行中に誤ってドアが開くことを防止するため、走行中に自動的に、又は、ユーザの操作によりロックされる。
しかし、ドアロック機構は、これがロックされた状態で車両が衝突事故を起こした場合に、搭乗者の脱出や外部からの救助を容易とする目的で、衝突を検出した場合に、強制的にアンロック(開錠)するようにしたものが知られている。
【0003】
上述したようなドアロック機構は、例えば駐車中に故意に衝突された場合にもドアロックが解除されることを防止するために、イグニッションをオフにした後所定の時間が経過するまでに衝突を検出した場合は強制的にアンロックを行なうが、その後に衝突を検出した場合は、アンロックを行わないものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、ドアロック機構は、車両が衝突後に例えばロールオーバー(横転)等を起こした場合に、誤操作によってドアが開くことを防止するため、衝突を検出後所定の時間が経過するまではロック状態を維持し、その後強制的にアンロックするようにしたものが知られている(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特開平8−199880号公報
【特許文献2】特開2004−116244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したドアロック機構は、例えば犯罪に巻き込まれて車両を故意に衝突された場合にも強制的にアンロックが行われるから、車外から容易にドアを開けられることとなり、犯罪者等に対する搭乗者の保護が考慮されていなかった。
これに対し、ドアロック機構は、強制的にアンロックされた後に、通常のロック操作をすれば再びロック可能とすることも考えられるが、この場合には、衝突時に搭乗者が不意な動作によって意図しないロック操作をするおそれがある。例えば、このようなドアロック機構は、衝撃によって搭乗者の身体の一部が操作部に接触した場合にもロックされてしまう。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、車両の衝突後におけるドアロックを適切に行える車両用ドアロックシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
請求項1の発明は、車両のドアをロック又はアンロックするロック機構部と、前記車両の衝突を検出する衝突検出部と、前記車両の車室内に設けられ、前記ロック機構部のロック操作が入力される操作部と、前記衝突検出部の出力に基づいて、前記操作部に入力された第1の操作パターンに応じて前記ロック機構部をロックする通常モードと、前記操作部に入力され、前記第1の操作パターンと異なる第2の操作パターンに応じて前記ロック機構部をロックする衝突後モードとを切り換える制御部とを備える車両用ドアロックシステムである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両用ドアロックシステムにおいて、前記衝突検出部は、前記車両の衝突の前兆を検出するプリクラッシュ検出部を有することを特徴とする車両用ドアロックシステムである。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両用ドアロックシステムにおいて、前記車両の運転状態、乗員乗車状態の少なくとも一方を検出する車両状態検出部を備え、前記制御部は、前記衝突検出部の出力及び前記車両状態検出部の出力に基づいて、前記通常モードと前記衝突後モードとを切り換えることを特徴とする車両用ドアロックシステムである。
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車両用ドアロックシステムにおいて、前記操作部の前記第2の操作パターンは、前記第1の操作パターンを複数回反復したものであることを特徴とする車両用ドアロックシステムである。
請求項5の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車両用ドアロックシステムにおいて、前記操作部の前記第2の操作パターンは、前記操作部を前記第1の操作パターンよりも長い所定時間以上継続して操作するものであることを特徴とする車両用ドアロックシステムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両の衝突が検出された場合には、制御部は、操作部の操作パターンを通常時と異なったものに切り換えるから、ロック機構部は、搭乗者が通常のロック操作を行ってもロックされず、誤操作による意図しないロックを防止できる。
一方、この場合にも、搭乗者は、通常時とは異なったロック操作をすることによって、ロック機構部をロックすることができるから、例えば犯罪者等から搭乗者を保護することができる。
また、上述した操作パターンの切り換えを、衝突検出部の出力に加え、車両の運転状態、乗員乗車状態に基づいて行うから、車両が駐車時等に衝突された場合は、操作パターンの切り換えを行わず、通常の操作パターンによってロック操作を行うことができ、操作に対する応答性を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、車両の衝突後におけるドアロックを適切に行える車両用ドアロックシステムを提供するという課題を、減速加速度センサ又は衝突加速度センサが、車両の衝突又はプリクラッシュを検出した場合に、ドアロックスイッチに通常の操作を行った場合はロックせず、複数回反復操作した場合にロックが行われるように制御することによって解決した。
【実施例】
【0010】
以下、本発明を適用した車両用ドアロックシステムの実施例について、図面等を参照して説明する。
図1は、本実施例の車両用ドアロックシステムの構成を示すブロック図である。
車両用ドアロックシステムは、減速加速度センサ1と、衝突加速度センサ2と、キースイッチ3と、ドアロックスイッチ4と、着座センサ5と、ドアロックアクチュエータ6と、制御装置7とを備えている。
【0011】
減速加速度センサ1は、車両がブレーキ操作等によって減速する際の減速加速度を検出するものであって、特に、運転者が衝突を回避するために行う急減速(プリクラッシュブレーキ)操作に起因する所定値以上の減速加速度の有無を検出するプリクラッシュ検出部である。この減速加速度センサ1は、このドアロックシステムの制御以外に、例えば警報の出力や、シートベルトの引き込み制御等にも用いられるものである。
【0012】
衝突加速度センサ2は、車両の前後方向の加速度を検出するものであって、ブレーキ操作に起因する減速加速度では通常生じない程度の大きな加速度の有無に基づいて、衝突の有無を検出するものである。この衝突加速度センサ2の出力は、ドアロックシステムの制御に限らず、例えば、エアバッグの作動要否判断等にも用いられる。
また、衝突加速度センサ2は、例えば側面衝突や後方衝突を検出するため、それぞれ対応する方向の加速度を検出するものを設けてもよい。
【0013】
キースイッチ3は、運転者が車両のエンジンの始動、停止を操作する操作部であって、キーが着脱可能に挿入される図示しないキーシリンダを備え、このキーシリンダへのキーの挿入の有無に応じて、制御装置7に対してオンオフ信号を出力するものである。
【0014】
ドアロックスイッチ4は、例えばドアの内面部やセンターコンソール等の車室内装部に備えられ、搭乗者がドアロックアクチュエータ6のロック操作及びアンロック操作を入力する操作部であって、例えばノブ、レバー、押しボタン等のスイッチを備えている。このドアロックスイッチ4は、車両に備えられる図示しない複数のドアのそれぞれに独立して設けられたものであってもよく、また、複数のドアのドアロックアクチュエータ6を一括して制御するいわゆる集中ドアロックスイッチであってもよい。
ドアロックスイッチ4は、通常時においては、例えば1回操作する(第1の操作パターン)ことによって、ドアロックアクチュエータ6を駆動し、ロックを行うことができるが、本実施例では、車両の衝突後には、例えば5回反復して操作する等、通常時よりも煩雑な操作(第2の操作パターン)をしなければロックできないようになっている。この点については、後に詳しく説明する。
【0015】
着座センサ5は、例えば、運転席のシート内に組み込まれ、搭乗者が着座した際に、その体重によって生ずる荷重を検出するセンサを備えており、搭乗者の着座の有無に応じて信号を出力するものである。
【0016】
ドアロックアクチュエータ6は、ドアに備えられた図示しないラッチ部を駆動する例えばソレノイドコイル等のアクチュエータを備え、ドアのロック又はアンロックを行うものである。
【0017】
制御装置7は、上述した各部にそれぞれ接続されたCPUを備え、車両のプリクラッシュ及び衝突を検出して以下詳しく説明するドアロックシステムの制御を行うほか、例えば、エアバッグやシートベルトプリテンショナの作動等を制御するものである。
また、制御装置7は、上述した制御を、正面衝突に限らず、側面衝突、後面衝突、ロールオーバー等に対しても行うようになっている。
さらに、この制御装置7は、上述した衝突時における制御を、車両に関するその他の機能の制御とともに行う統合ユニットであってもよい。
【0018】
次に、上述した車両用ドアロックシステムにおける衝突時の制御について説明する。
図2は、この制御を示すフローチャートであって、ドアがアンロックされた状態で衝突する場合のものである。以下、ステップ毎に順を追って説明する。
【0019】
(ステップS01:キースイッチオン判断)
制御装置7は、キースイッチ3が出力するオンオフ信号に基づいて、キーシリンダにキーが挿入されているか検出し、キーが挿入されている場合(オン)は、車両が走行中、又は、一時的な停車中であると判断し、ステップS02に進む。一方、キーが挿入されていない場合(オフ)は、駐車中であると判断し、ステップS09に進む。
【0020】
(ステップS02:着座有無判断)
制御装置7は、着座センサ5が出力する信号に基づいて、搭乗者がシートに着座しているか否かを判断する。そして、搭乗者の着座が検出された場合はステップS03に進み、検出されない場合はステップS09に進む。
【0021】
(ステップS03:衝突有無判断)
制御装置7は、減速加速度センサ1の出力に基づいて、衝突の前兆であるプリクラッシュブレーキ操作が行われているか否かを判断する。また、制御装置7は、衝突加速度センサ2の出力に基づいて、車両が衝突したか否かを判断する。
そして、プリクラッシュブレーキ、衝突の少なくとも一方を検出した場合は、ドアロックスイッチ4の1回の操作(第1の操作パターン)によってロックが行われる通常モードから、ドアロックスイッチ4を例えば5回反復して操作(第2の操作パターン)したときにロックが行われる衝突後モードへ切り換えることを決定し、ステップS04に進む。一方、プリクラッシュブレーキ、衝突のいずれも検出されない場合は、ステップS09に進む。
なお、制御装置7は、衝突後モードに切り換える場合には、例えば、ナビゲーションシステムのディスプレイ部や、オーディオ用スピーカ等の図示しない出力部を介して、搭乗者に対してロック操作方法が切り換えられた旨の警告、及び、切り換え後のロック操作方法を出力する。
【0022】
(ステップS04:ドアロックスイッチ操作有無判断)
制御装置7は、ドアロックスイッチ4に操作が行われたか否かを判断し、操作が行われた場合は、ステップS05に進み、操作が行われなかった場合は、ステップS08に進む。
【0023】
(ステップS05:カウント値加算)
制御装置7は、ドアロックスイッチ4の累積操作回数を示すカウント値に、1を加算し、ステップS06に進む。
【0024】
(ステップS06:カウント値判断)
制御装置7は、現在のカウント値が、所定の回数、例えば5以上であるか否かを判断し、5以上である場合は、ステップS07に進む。一方、カウント値が4以下である場合は、ステップS04に戻る。
【0025】
(ステップS07:ドアロック施錠)
制御装置7は、ドアロックアクチュエータ6に対して制御信号を出力し、ドアのロックを行ない、ステップS08に進む。
【0026】
(ステップS08:カウント値リセット)
制御装置7は、上述したカウント値を0とし、制御を終了する。
【0027】
(ステップS09:ドアロックスイッチ操作有無判断)
制御装置7は、ドアロックスイッチ4に操作が行われたか否かを判断し、操作が行われた場合は、ステップS10に進み、操作が行われなかった場合は、制御を終了する。
【0028】
(ステップS10:ドアロック施錠)
制御装置7は、ドアロックアクチュエータ6に対して制御信号を出力し、ドアのロックを行ない、制御を終了する。
【0029】
以上のように、本実施例によれば、制御装置7は、プリクラッシュブレーキ又は衝突を検出した場合に、ドアロックスイッチ4を1回操作することによってロックが行われる通常モードから、これを5回反復して操作することによってロックが行われる衝突後モードに切り換えるから、誤操作によってロックされ、搭乗者が閉じ込められることが防止される。
また、搭乗者は、希望する場合には反復操作をすればロックを行うこともできるから、例えば犯罪等に巻き込まれ、故意に車両を衝突された場合等にロックを行うことで、搭乗者を犯罪から保護することができる。
さらに、制御装置7は、キースイッチ3のオンオフを検出し、その結果に基づいて衝突後モードへの切り換えを行うから、車両が駐車時等に衝突された場合は、衝突後モードへの切り換えを行わず、通常の操作によってロックをすることができる。
【0030】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。
(1)上述した実施例は、衝突又はその前兆であるプリクラッシュを、車両の減速加速度に基づいて検出しているが、これに限らず、例えば、車両前方の障害物を監視する監視装置、レーザーやミリ波等を用いたレーダ装置、ブレーキペダル又はアクセルペダルのポジションセンサ(スイッチ)、車速センサ、車両の横滑りを検出するヨー角度センサ等の出力を用いてプリクラッシュを検出するようにしてもよい。
(2)上述した実施例における制御は、アンロック状態で衝突した場合を例にとって説明したが、本発明は、例えば車速等に応じて走行中に自動的にドアロックを行ない、走行中は原則としてロック状態となるドアロックシステムであって、衝突時に自動的にアンロックするものにおいても適用することができる。
(3)上述した実施例は、衝突後においては、ドアロックスイッチを複数回反復して操作することによってロックを行うようになっているが、これに限らず、誤操作を防ぐため、通常時よりもロック操作を煩雑にしたものであればよい。例えば、ドアロックスイッチを所定の時間以上継続して操作することによってロックが行われるようにしてもよい。
また、反復操作の回数や、継続操作の時間等は、例えばナビゲーションシステムの入出力装置や、車両に接続される故障診断装置等の端末を介して、ユーザ自らが設定できるようにしてもよい。
(4)上述した実施例は、車両の走行状態を、キースイッチのオンオフに基づいて検出しているが、これに限らず、例えば変速機のポジションや、パーキングブレーキ信号、車速等、他の情報に基づいて検出するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明を適用した車両用ドアロックシステムの実施例における構成を示すブロック図である。
【図2】図1の車両用ドアロックシステムにおける衝突時の制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0032】
1 減速加速度センサ
2 衝突加速度センサ
3 キースイッチ
4 ドアロックスイッチ
5 着座センサ
6 ドアロックアクチュエータ
7 制御装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアをロック又はアンロックするロック機構部と、
前記車両の衝突を検出する衝突検出部と、
前記車両の車室内に設けられ、前記ロック機構部のロック操作が入力される操作部と、
前記衝突検出部の出力に基づいて、前記操作部に入力された第1の操作パターンに応じて前記ロック機構部をロックする通常モードと、前記操作部に入力され、前記第1の操作パターンと異なる第2の操作パターンに応じて前記ロック機構部をロックする衝突後モードとを切り換える制御部と
を備える車両用ドアロックシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ドアロックシステムにおいて、
前記衝突検出部は、前記車両の衝突の前兆を検出するプリクラッシュ検出部を有すること
を特徴とする車両用ドアロックシステム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用ドアロックシステムにおいて、
前記車両の運転状態、乗員乗車状態の少なくとも一方を検出する車両状態検出部を備え、
前記制御部は、前記衝突検出部の出力及び前記車両状態検出部の出力に基づいて、前記通常モードと前記衝突後モードとを切り換えることを特徴とする車両用ドアロックシステム。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車両用ドアロックシステムにおいて、
前記操作部の前記第2の操作パターンは、前記第1の操作パターンを複数回反復したものであること
を特徴とする車両用ドアロックシステム。
【請求項5】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車両用ドアロックシステムにおいて、
前記操作部の前記第2の操作パターンは、前記操作部を前記第1の操作パターンよりも長い所定時間以上継続して操作するものであること
を特徴とする車両用ドアロックシステム。



【図1】
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【図2】
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