説明

車両用ドア構造

【課題】乗降性を向上させる。
【解決手段】乗降時に乗員の頭部の軌跡線2が干渉する部分のルーフ部11を開口16として開閉可能とし、サブドア14にて開口16をカバーする構造とすることにより乗降時に乗員の頭部の軌跡線2がルーフ部11と干渉することがなくなり、乗降時に乗員が腰を屈め身体全体を丸めて乗降する必要はなくなるので、乗降性が向上する。サブドア14はサイドドア12の開閉に連動して自動的に開閉するので乗員の負担を増やす虞れもない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
乗員がドアを開けて車両へ乗車する際に、ルーフ部の縁に乗員の頭部が接触する可能性があるため、腰を屈め身体全体を丸めて乗降する必要があった。すなわち、図5に示すように乗降時には乗員の頭部の軌跡線2は車両1のルーフ部11と干渉している。このためルーフ部11を避けて頭を下げ、軌跡線2がルーフ部11と干渉しないように乗降する必要があった。
【0003】
上記の問題を解決するため、乗降用開口の車両前側辺部に回動可能に支持されたフロントドアと、乗降用開口の車両後側辺部に回動可能に支持されたリヤドアと、ルーフに回動可能に支持されたルーフドアとを具備し、フロントドアとリヤドアとによって乗降用開口を開閉可能に覆うと共に、ルーフドアによってルーフ開口を開閉可能に覆うよう構成される車両用ドア構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記の構成では乗降用開口の上部の略全域が上方に向けて開放可能な為、乗員が乗降口に向いた際に視界にルーフが入りにくく開放感が向上し、併せて乗降用開口の上側辺部を気にせず乗降できるなど、乗降性や荷物の積み下ろし容易性を向上することができる構成となっている。
【0005】
しかし、上記構成ではルーフドアにより開口を拡大して乗降性を向上させている反面、ルーフドアを開閉する際には開閉操作を必要とするため、乗降時の操作が煩わしいという欠点がある。
【特許文献1】特開2003−267052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、回動可能に支持されたサブドアによりルーフ開口を開閉可能として乗降性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の車両用ドア構造は車体側部からルーフ部に亘って形成された乗降用開口部をドアの開閉動作によって開閉する車両用ドア構造であって、前記車体側部に開閉可能に設けられ前記乗降用開口部を覆うドアと、前記ドア上端に回動可能に支持されルーフ部の開口を覆う回動部と、前記回動部を駆動する駆動手段と、前記ドアの開閉状態を検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果に基づいて前記駆動手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記検出手段が前記ドアの開放を検出したとき前記回動部を開放するように前記駆動手段を制御し、前記検出手段が前記ドアの閉止を検出したとき前記回動部を閉止するように前記駆動手段を制御することを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載の車両用ドア構造では、ルーフ部に開口を設け、ドア上端に設けたサブドアで開閉する構造であり、ドアの開閉を検出しサブドアを駆動する検出手段、駆動手段を備えている。
【0009】
よって、乗員がドアを開閉する動作に連動してサブドアが自動的に開閉するので、乗員の負担を増やすことなくサブドアによりルーフ開口を開閉可能として乗降性を向上することができる。
【0010】
請求項2に記載の車両用ドア構造は、前記ドアは前記乗降用開口部の前辺部または後辺部にヒンジにて回動可能に支持され車両幅方向へ開閉動作するスイング式ドアであることを特徴としている。
【0011】
スイング式ドアは所謂スライド式ドアに比較して重量が軽く、乗降時にドア開閉のための力をスライド式ドアよりも必要としないので特に高齢者や身体にハンディのある乗員の乗降性を向上させることができる。
【0012】
請求項3に記載の車両用ドア構造は、前記制御手段は前記検出手段が前記ドアの開放操作を検出したとき前記ドアが開放される前に前記回動部を開放するように前記駆動手段を制御し、前記検出手段が前記ドアの閉止を検出した後に前記回動部を閉止するように前記駆動手段を制御することを特徴としている。
【0013】
これにより乗員がドアを開放する際に回動部が開放され乗降性が向上すると共に、誤動作により回動部がルーフ部の開口と干渉することを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<ドア構造の概要>
本発明に係る車両用ドア構造10について図面を参照しながら説明する。なお、各図において、車体の前方を矢印Fで、後方を矢印Rで、内側を矢印Iで、外側を矢印Oで、それぞれ示している。
【0015】
図1に示すように、自動車の車体1には車両用ドア構造10が設けられ、サイドドア12が図示しないヒンジにて図中白矢印のように開閉可能に支持されている。図1に示すような一般的な4ドアセダンであればサイドドア12は4枚設けられ、これが開閉されることによって乗員の乗降を可能にしている。
【0016】
このとき、前述のように従来の車両では乗員がドアを開けて車両へ乗車する際に、ルーフ部の縁、すなわちルーフサイドに乗員の頭部が接触する可能性があるため、腰を屈め身体全体を丸めて乗降する必要があった。すなわち、図5に示すように乗降時には乗員の頭部の軌跡線2は車両1のルーフ部11と干渉している。このためルーフ部11を避けて頭を下げ、軌跡線2がルーフ部11と干渉しないように乗降する必要があった。
【0017】
そこで本発明では図1(A)に示すように、乗降時に乗員の頭部の軌跡線2が干渉する部分のルーフ部11を開口16として開閉可能とし、サブドア14にて開口16をカバーする構造とした。
【0018】
これにより乗降時に乗員の頭部の軌跡線2がルーフ部11と干渉することがなくなり、乗降時に乗員が腰を屈め身体全体を丸めて乗降する必要はなくなるので、乗降性が向上する。
【0019】
ここでサブドア14の開閉を乗員が手動で行う構成とすると、乗降の度に通常のサイドドア12とサブドア14の開閉を両方行わねばならず、逆に乗降性が低下する虞れがある。本発明ではサブドア14の開閉をサイドドア12の開閉に同期させて自動で行うことにより、当初の目的である乗降性の改良を実現している。
【0020】
すなわち、図1(B)に示すドアノブ13を持ちサイドドア12を開ける動作を行うと、ドアロック15が解除されサイドドア12がアンロック状態となり、サイドドア12が開放され始める。
【0021】
ここでサブドア14が図1(A)縞矢印のように開き始めることによってルーフ部11に設けられた開口16から外れ、白矢印方向にサイドドア12が回動し始めてもルーフ部11にサブドア14が干渉する恐れがない。
【0022】
図1(B)に示すようにサイドドア12が開放された状態ではサブドア14はサイドドア12の上端に起立した状態となり、車両1のボディと干渉する恐れはない。このとき開口16は通過可能となっているので、サイドドア12を閉めながら乗員が乗車しても頭部の軌跡線2がルーフ部11と干渉することがなくなり、安楽で迅速かつ安全な乗車が行える。
【0023】
<サブドアの制御>
図2には本発明に係る車両用ドア構造の制御に関するブロック図が示されている。
【0024】
図2に示すように、ドア開閉監視装置30がECU40にサイドドア12の開閉状況に関する信号を送り、サブドア開閉装置50へ開閉信号を送る。これによりサイドドア12の開閉に合わせて自動的にサブドア14を開閉することが可能となり、乗降性を向上できる。
【0025】
ここで、ドア開閉監視装置30はサイドドア12の開閉状態を検知するものであって、例えばON−OFF SWのカーティシュSWでもよいし、あるいはサイドドア12に設置された感圧テープセンサなどの圧力センサでもよい。また、磁気センサや光学式センサ等の手段を用いてもよい。
【0026】
サブドア開閉装置50は後述するように通常の電動モータ、アクチュエータなどで構成され、ECU40からの駆動信号によって作動し、サブドア14を開閉する。あるいはサブドア開閉装置50としてスプリングとアクチュエータを組み合わせてもよいし、また電動ではなく油圧回路等を用いてもよい。
【0027】
図3には本発明に係る車両用ドア構造のサブドア開閉に関するフロー図が示されている。
【0028】
図3に示すように、ステップ100でスタートして先ずステップ102にてサイドドア12の開閉状態をドア開閉監視装置30で検知する。
【0029】
この検知結果により次のステップ104ではサイドドア12の開/閉による分岐が発生する。ドアノブ13の操作によりサイドドア12が開けらようとした場合は、まずドアロック15をアンロックする前にステップ106に進みサブドア14を開放する。尚このときサイドドア12が開放されていなければ、ドアロック15がアンロックされ所謂半ドアの状態でステップ106に進むようにしてもよい。
【0030】
これは前述のようにECU40からサブドア開閉装置50に駆動信号が送られ、サブドア14を開放する動作である。すでにサブドア14が開いていた場合は継続して開き続ける。
【0031】
次いでサブドア14の開放を検出する。これは各種センサ、例えば圧力センサや光学センサ、磁気センサなどでサブドア14の開放を検出してもよく、またタイマにてサブドア開閉装置50の駆動開始からの経過時間にてサブドア14の回動位置を予測してもよい。サブドア14が開放されたことを検出する条件としては、サブドア14が所定の角度以上に開き、サイドドア12を開放してもルーフエンドの開口16と干渉しない位置まで移動していることが必要となる。
【0032】
サブドア14が一定の角度まで開放されたのちにドアロック15がアンロックされ、あるいは半ドアの状態が解除されサイドドア12が開放可能となる。これは上記のようにサブドア14の開放が不十分な状態でサイドドア12を開放しようとすることで、開口16とサブドア14が干渉する可能性を回避するためである。
【0033】
次いでステップ114に進み処理は終了する。こののち、ステップ114からステップ100へループし、再びサイドドア12の開閉状態を検知する。このループは常時回り続ける。すなわち、サイドドア12の開閉状態検知は常に行われ、サイドドア12が開放される際には即座にサブドア14が開放される。
【0034】
ステップ104でサイドドア12が閉止されていた場合は、ステップ112に進みサブドア14を閉じる。既に閉じている場合は継続して閉じ続ける。
【0035】
次いでステップ114に進み処理は終了する。こののち、ステップ114からステップ100へループし、再びサイドドア12の開閉状態を検知する。このループは常時回り続ける。すなわち、サイドドア12の開閉状態検知は常に行われ、サイドドア12が閉じている間は常にサブドア14は閉じ続け、サイドドア12が開放された際には即座にサブドア14が開放される。
【0036】
<サブドアの詳細>
図4に本発明に係る車両用ドア構造が拡大して示されている。図4に示されているサイドドア12は左前側ドアである。
【0037】
図4(A)に示すようにサイドドア12の頂部近傍に設けられたシャフト20にて回動可能にサブドア14が設けられている。サブドア14はルーフ部11に設けられた開口16をカバーし、サイドドア12が開放された際のみサブドア14もまた開放される。
【0038】
シャフト20にはギア22が設けられ、アクチュエータ24にてギア22が駆動されることでシャフト20を回転させ、サブドア14を自動的に開閉する。シャフト20、ギア22、アクチュエータ24を含めてサブドア開閉装置50とする。
【0039】
まずドアノブ13の操作などにより、前述のようにドア開閉監視装置30がサイドドア12の開放を検知すると、ドア開閉監視装置30はECU40にサイドドア12の開放に関する信号を送り、サブドア開閉装置50へサブドア14を開放するように駆動信号を送る。
【0040】
これによりアクチュエータ24が作動し、ギア22を介してシャフト20を回動させる。サブドア14はシャフト20の回動により図4(A)白矢印のように回動し、ルーフ部11に設けられた開口16と干渉しない位置まで起きあがる。
【0041】
サブドア14の開放により開口16が通過可能となり、乗員がサイドドア12を図4(B)白矢印のように開けることで車両1内に乗車することができる。このときサブドア14は開放されているので開口16は通過可能な状態であり、乗員は頭部の軌跡線2がルーフ部11と干渉することがなくなり、腰を屈め身体全体を丸めて乗車する必要はなくなるので、乗降性が向上する。
【0042】
次に乗員が乗車し終わり、車内からサイドドア12を閉める際には、まずサイドドア12を乗員が閉めることでドア開閉監視装置30がサイドドア12の閉止を検知すると、ドア開閉監視装置30はECU40にサイドドア12の閉止に関する信号を送り、サブドア開閉装置50へサブドア14を閉止するように駆動信号を送る。
【0043】
これによりアクチュエータ24が作動し、ギア22を介してシャフト20を回動させる。サブドア14はシャフト20の回動により図4(A)白矢印とは逆方向に回動して閉じることで、ルーフ部11に設けられた開口16を塞ぐ。
【0044】
上記のような構成とすることで乗降時に乗員の頭部の軌跡線2がルーフ部11と干渉することがなくなり、乗降時に乗員が腰を屈め身体全体を丸めて乗降する必要はなくなるので、乗降性が向上する。またサブドア14はサイドドア12の開閉に連動して自動的に開閉するので乗員の負担を増やす虞れもない。
【0045】
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0046】
例えば上記実施形態では4ドアセダンだが2ドア車や1boxタイプのワゴン車でもよく、またドアヒンジは前方でなく後方でもよく、あるいは後方ドアのみヒンジが後方にある観音開きのドア構造でもよい。
【0047】
さらに、上記実施形態は車両幅方向へ開閉動作するスイング式ドアであるが、車両前後方向へのスライド動作によって開閉する所謂スライドドアに適用してもよく、この場合はスライドドア上端にサブドアを設ける構造とすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明のドア構造をもつ車両を左斜め前からから見た斜視図である。
【図2】本発明のサブドア開閉動作制御を行う回路のブロック図である。
【図3】本発明のサブドア開閉制御の流れを示すフロー図である。
【図4】本発明のサブドアを設けた左前ドアを左斜め後ろから見た斜視図である。
【図5】従来の車両に乗降する際の乗員の頭部軌跡線と車両の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 車両
2 軌跡線
10 車両ドア構造
11 ルーフ部
12 サイドドア(ドア)
14 サブドア(回動部)
16 開口
20 シャフト
22 ギア
24 アクチュエータ
30 ドア開閉監視装置(検出手段)
40 ECU(制御手段)
50 サブドア開閉装置(駆動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側部からルーフ部に亘って形成された乗降用開口部をドアの開閉動作によって開閉する車両用ドア構造であって、
前記車体側部に開閉可能に設けられ前記乗降用開口部を覆うドアと、
前記ドア上端に回動可能に支持されルーフ部の開口を覆う回動部と、
前記回動部を駆動する駆動手段と、
前記ドアの開閉状態を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づいて前記駆動手段を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記検出手段が前記ドアの開放を検出したとき前記回動部を開放するように前記駆動手段を制御し、
前記検出手段が前記ドアの閉止を検出したとき前記回動部を閉止するように前記駆動手段を制御することを特徴とする車両用ドア構造。
【請求項2】
前記ドアは前記乗降用開口部の前辺部または後辺部にヒンジにて回動可能に支持され車両幅方向へ開閉動作するスイング式ドアであることを特徴とする請求項1に記載の車両用ドア構造。
【請求項3】
前記制御手段は前記検出手段が前記ドアの開放操作を検出したとき前記ドアが開放される前に前記回動部を開放するように前記駆動手段を制御し、
前記検出手段が前記ドアの閉止を検出した後に前記回動部を閉止するように前記駆動手段を制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用ドア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−308113(P2007−308113A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−141942(P2006−141942)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】