説明

車両用パスワード入力装置

【課題】秘匿性を守りつつ、車両価格を抑制することが可能な車両用パスワード入力装置を提供すること。
【解決手段】車両用パスワード入力装置は、電気的なキー認証により正規のスマートキー2が利用されたものと肯定判断された場合に車両備え付けのパワースイッチ40が操作されたことを条件としてエンジンが始動されるスマートキーシステム1が適用された車両に用いられる。そして、車両制御が許可されるのに必要なパスワードを登録/入力するためのパスワード入力手段として前記パワースイッチ40が用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御が許可されるのに必要なパスワードを登録/入力するための車両用パスワード入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パスワードが一致した場合に車両のエンジン始動が許可されるように構成された車両用盗難防止システムが開示され、このシステムでは、カーナビゲーション装置を用いて、エンジン始動に必要なパスワードの登録や入力を行えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−75160号公報(段落[0011]等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示される構成では、パスワードを登録/入力するに際し、テンキーやリモコンのような入力装置、或いは表示画面に指で操作する、いわゆるタッチパネル等といった操作入力部が必要である(例えば、上記特許文献1の段落[0007]の第5文及び第6文を参照)。そうすると、カーナビゲーション装置が近年普及しつつあるとは言え、パスワードの登録/入力時の操作性ばかりを余りに意識し過ぎると、必要以上にそれが高価なものとなって、車両価格の高騰を招いてしまう。
【0005】
かと言って、車両価格の低廉化ばかりを余りに意識し過ぎて、車両からパスワード登録/入力ツールを取り払い、その代わりにパスワードの登録や入力を例えばカーディーラ所有の専用ツールでなければ行えないようにした場合、新たに次のような問題が生じる。即ち、この場合、パスワードの登録/入力を車両ユーザ自らが行えないこととなり、秘匿性が低下してしまう。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、その目的は、秘匿性を守りつつ、車両価格を抑制することが可能な車両用パスワード入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、電気的なキー認証により正規の電子キーが利用されたものと肯定判断された場合に車両備え付けのエンジン始動用操作手段が操作されたことを条件としてエンジンが始動される電子キーシステムが適用された車両に用いられ、車両制御が許可されるのに必要なパスワードを登録/入力するための車両用パスワード入力装置において、前記パスワードを登録/入力するためのパスワード入力手段として前記エンジン始動用操作手段を用いることをその要旨としている。
【0008】
同構成によると、車両備え付けのエンジン始動用操作手段がパスワード入力手段として用いられる。このため、パスワードの登録/入力を他人に依存することなく車両ユーザ自らが行えるので、秘匿性が守られる。また、既存のエンジン始動用操作手段を用いてパスワードの登録や入力を行えるので、車両価格が高騰することもない。従って、秘匿性を守りつつ、車両価格を抑制することができる。
【0009】
尚、カーナビゲーション装置は、車内での快適性を向上できる点においてそれが備え付けられていると確かに便利なものではあるが、車両を走行させる上で、必ずしも必要な訳ではない。これに対し、エンジン始動用操作手段は、車両を走行させる上で、なくてはならないものである。要するに、車両設備として必須のものをパスワード入力手段として用いる点に本発明の嬉しさがある。ちなみに、本発明のエンジンには、一般的な車両に搭載されている内燃機関のみならず、電気自動車或いはハイブリッドカー等で用いられるモータ等の動力源も含まれる。
【0010】
また、車両の心臓部とも言えるエンジンの始動に供されるエンジン始動用操作手段は、その重要性及びセキュリティ性等の観点からセキュリティ関連部品に電気的に接続されることが一般的に多く、また、本発明のパスワード入力についてもセキュリティ性に大きく関与するものである。従って、セキュリティ関連のものを集約できることによる嬉しさも少なからず得られる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用パスワード入力装置において、前記エンジン始動用操作手段が本来の使用目的で操作されるときの通常操作とは異なる態様で特殊操作されたことを契機として電気的なキー認証が開始され、このときのキー認証により正規の電子キーが利用されたものと肯定判断されたとき、前記パスワードを登録可能なパスワード登録モードへ遷移されることをその要旨としている。
【0012】
同構成によると、誰もがパスワードを登録できる訳ではなく、それをできる者は正規の電子キーの所持者に限られる。従って、セキュリティ性を向上できる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両用パスワード入力装置において、前記パスワードの登録に必要な操作の内容を伝える操作内容伝達手段を備え、車両備え付けの既存報知手段にて前記操作内容伝達手段が構成されていることをその要旨としている。
【0013】
同構成によると、パスワードを登録しようとする者は、操作内容伝達手段によって伝えられる内容に沿った所要の操作を行うだけで、簡単且つ正確にパスワードを登録することが可能となる。従って、利便性を向上できる。しかも、この操作内容伝達手段として車両備え付けの既存報知手段が用いられるので、ここでも車両価格の高騰を防止できる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の車両用パスワード入力装置において、前記パスワード登録モードに時間的な区切りが単数又は複数設けられ、区切りが単数の場合にあって、前記パスワード登録モードに遷移されてからその区切りまでの期間内に前記エンジン始動用操作手段が操作された回数によって規定される数字が前記パスワードの数字として設定され、区切りが複数の場合にあって、前記パスワード登録モードに遷移されてから最初の区切りまでの期間内に前記エンジン始動用操作手段が操作された回数によって規定される数字が前記パスワードの最上位の桁の数字として設定され、以降、一つの区切りから次の区切りまでの期間内に前記エンジン始動用操作手段が操作された回数によって規定される数字の順に前記パスワードの上位から下位に向かう桁の数字が設定されることをその要旨としている。
【0015】
同構成によると、パスワード登録モードにおいて、エンジン始動用操作手段の操作回数がそのままパスワードの数字に反映される。つまり、登録作業時の操作回数と該登録されるパスワードの数字とが密接に関連されており、パスワードの登録作業者にしてみれば、その登録作業を理解し易い態様で簡単に済ませることができ、また、自らが登録したパスワードの認識間違いを防止することもできる。従って、このパスワードを用いて車両制御を許可させようとする際、誤ったパスワードを入力するようなことはなく、正しいパスワードを入力することでもって、スムーズに車両制御を許可させることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の車両用パスワード入力装置において、前記エンジン始動用操作手段が本来の使用目的で操作されるときの通常操作とは異なる態様で特殊操作されたことを契機として電気的なキー認証が開始され、このときのキー認証により正規の電子キーが利用されたものと肯定判断されずに否定判断されたとき、車両制御が許可されるのに必要なパスワードの入力を受け付けるパスワード使用モードへ遷移され、このパスワード使用モード中に正規のパスワードが入力されたとき、車両制御が許可されることをその要旨としている。
【0017】
同構成によると、エンジン始動用操作手段が特殊操作された後、正規のパスワードが入力されたとき、車両制御が許可される。このため、本来、電気的なキー認証により正規の電子キーが利用されたものと肯定判断された場合にエンジン始動用操作手段が操作されたことを条件としてエンジンが始動されるところ、正規の電子キーを紛失してしまったような場合でも、正規のパスワードを入力することで、車両制御の1つとして例えばエンジン始動を許可することが可能となる。従って、キー紛失時のような不測の事態にも柔軟に対処することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
本発明によれば、秘匿性を守りつつ、車両価格を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】車両用パスワード入力装置が用いられる本実施形態の車両に適用されるスマートキーシステムの構成を示すブロック図。
【図2】車内スマート通信領域及び車内イモビ領域を示す説明図。
【図3】パスワードが登録/入力されるときの動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明をワンプッシュ式のスマートイグニッション機能を有するスマートキーシステムが適用された車両に用いられる車両用パスワード入力装置に具体化した一実施形態について説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の車両には、スマートキーシステム1が適用されている。スマートキーシステム1は、車両ユーザが所持するスマートキー2と、車両側に設けられるセキュリティ装置3とを備えるとともに、両者間で双方向通信が可能となっている。尚、前記スマートキー2は、その所持態様から一般的に携帯機と称されている。
【0022】
スマートキー2は、無線通信による受信機能及び無線通信による送信機能を有するとともに、受信アンテナ21、受信回路22、マイコン23、送信回路24、送信アンテナ25、トランスポンダ26を備えている。
【0023】
受信アンテナ21は、セキュリティ装置3から送信されてくるリクエスト信号を受信するための媒体である。受信回路22は、受信アンテナ21で受信されたリクエスト信号を復調して受信信号を生成するとともに、その受信信号をマイコン23に出力する。
【0024】
マイコン23は、不揮発性のメモリ23aを備えるとともに、そのメモリ23aには、当該スマートキー2に対して個別に設定されたIDコード(スマートキー2のIDコード)が記憶されている。そして、マイコン23は、受信回路22からリクエスト信号に関する受信信号が入力されたとき、リクエスト信号に応答するために、スマートキー2のIDコードを含む信号(IDコード信号)を生成するとともに、そのIDコード信号を送信回路24に出力する。
【0025】
送信回路24は、マイコン23から入力されたIDコード信号を所定周波数(本実施形態では300MHz)の電波に変調する。送信アンテナ25は、送信回路24で変調されたIDコード信号を送信するための媒体である。
【0026】
尚、スマートキー2は、図示しない電池を備え、この電池から電力を賄って、リクエスト信号の受信からIDコード信号の送信に至る一連の動作を行うようになっている。
トランスポンダ26は、無電池でもって自身単独での無線通信が可能な電気部品であって、このトランスポンダ26には、当該トランスポンダ26に対して個別に設定されたトランスポンダコード、つまりこれが内蔵されたスマートキー2に対して個別に設定されたトランスポンダコード(スマートキー2のトランスポンダコード)が記憶されている。トランスポンダ26は、セキュリティ装置3から送信されてくるトランスポンダ起動用電波から電力を賄って、スマートキー2のトランスポンダコードを含む信号(トランスポンダコード信号)を所定周波数(本実施形態では134KHz)の電波に変調してそれを送信する。
【0027】
セキュリティ装置3は、無線通信による送信機能及び無線通信による受信機能を有するとともに、送信回路31、送信アンテナ32、受信アンテナ33、受信回路34、給電回路35、送受信回路36、送受信アンテナ37、照合制御装置38を備えている。尚、本実施形態の車両では、車内通信ネットワークを介して各種制御装置が電気的に接続されている。以下、説明の便宜上、これら各制御装置の総称を照合制御装置と呼び、これを符号38で示す。後に詳述するが、この照合制御装置38は、エンジンの始動許可に必要な電気的なキー認証に関するセキュリティ制御を主として行うものである。
【0028】
送信回路31は、照合制御装置38から入力されるリクエスト信号を所定周波数(本実施形態では134KHz)の電波に変調する。送信アンテナ32は、送信回路31で変調されたリクエスト信号を送信するための媒体である。
【0029】
ここで、図2に2点鎖線でその概略を示すように、送信アンテナ32からのリクエスト信号は、車内の略全域に及んで且つ車外に殆ど及ばない領域(車内スマート通信領域A32)の範囲内に送信される。そして、この車内スマート通信領域A32内において、スマートキー2とセキュリティ装置3との間での双方向通信が可能となっている。つまり、車内スマート通信領域A32内にリクエスト信号が送信されている状態で、この車内スマート通信領域A32内にスマートキー2が持ち込まれたとき、そのスマートキー2でリクエスト信号が受信されて同スマートキー2からIDコード信号が送信されるようになっている。
【0030】
図1に戻って、受信アンテナ33は、リクエスト信号に対する応答信号としてスマートキー2から送信されてくるIDコード信号を受信するための媒体である。受信回路34は、受信アンテナ33で受信されたIDコード信号を復調して受信信号を生成するとともに、その受信信号を照合制御装置38に出力する。
【0031】
給電回路35は、照合制御装置38から給電指令信号が入力されたとき、トランスポンダ起動用電波を生成するのに必要な電力を送受信回路36に供給する。送受信回路36は、照合制御装置38からトランスポンダ起動用信号が入力されたとき、給電回路35から供給される電力に基づいて所定周波数(本実施形態では134KHz)のトランスポンダ起動用電波を生成する。送受信アンテナ37は、送受信回路36で生成されたトランスポンダ起動用電波を送信するための媒体である。
【0032】
ここで、図2に示すように、送受信アンテナ37は、運転席の前方に設けられたパワースイッチ40に内蔵されたコイルアンテナよりなる。そして、図2に2点鎖線で誇張して示すように、送受信アンテナ37からのトランスポンダ起動用電波は、車内における極めて狭い領域、本実施形態では運転席に座った状態で手が届く領域、具体的には送受信アンテナ37から約20mm離れた地点までの領域(車内イモビ領域A37)の範囲内に送信される。そして、この車内イモビ領域A37内において、スマートキー2とセキュリティ装置3との間での双方向通信が可能となっている。つまり、車内イモビ領域A37内にトランスポンダ起動用電波が送信されている状態で、この車内イモビ領域A37内にトランスポンダ26が存在する態様でスマートキー2が持ち込まれたとき、そのトランスポンダ26がトランスポンダ起動用電波から電力を賄い、同トランスポンダ26からトランスポンダコード信号が送信されるようになっている。具体的には、トランスポンダ26をパワースイッチ40に向けるようにしてスマートキー2がパワースイッチ40に対して翳されると、トランスポンダ26からトランスポンダコード信号が送信されることとなる。
【0033】
図1に戻って、送受信アンテナ37は、トランスポンダ26から送信されてくるトランスポンダコード信号を受信するための媒体である。そして、送受信回路36は、送受信アンテナ37で受信されたトランスポンダコード信号を復調して受信信号を生成するとともに、その受信信号を照合制御装置38に出力する。
【0034】
照合制御装置38は、不揮発性のメモリ38aを備えるとともに、そのメモリ38aには、当該セキュリティ装置3が搭載されている車両に適合するスマートキー2(=正規のスマートキー2)のIDコードと同一のIDコード(基準IDコード)が記憶されている。また、同メモリ38aには、正規のスマートキー2のトランスポンダコードと同一のトランスポンダコード(基準トランスポンダコード)が記憶されている。
【0035】
照合制御装置38は、ドアが開けられた旨を検出したとき、正規のスマートキー2の所持者による乗車(車内スマート通信領域A32に対する進入)を監視するため、後にドアが閉められた旨を検出したことを条件として、送信回路31にリクエスト信号を出力する。つまり、この場合、照合制御装置38は、車内スマート通信制御を実行する。その結果、送信アンテナ32から車内スマート通信領域A32内にリクエスト信号が送信される。また、照合制御装置38は、ドアが開けられた旨を検出したとき、正規のスマートキー2の所持者によるパワースイッチ40に対するスマートキー2の翳し操作を監視するため、後にドアが閉められた旨を検出したことを条件として、給電回路35に給電指令信号を出力するとともに、送受信回路36にトランスポンダ起動用信号を出力する。つまり、この場合、照合制御装置38は、車内イモビ通信制御を実行する。その結果、送受信アンテナ37からトランスポンダ起動用電波が送信される。
【0036】
尚、照合制御装置38は、ドアが開けられた旨を検出したとき、後にドアが閉められた旨を検出したことを条件として、車内スマート通信制御と車内イモビ通信制御とを時期をずらして交互に実行する。その結果、送信アンテナ32から送信されるリクエスト信号と、送受信アンテナ37から送信されるトランスポンダ起動用電波とが、車内において互いに干渉することがないよう配慮されている。
【0037】
照合制御装置38は、車内スマート通信制御を実行したことに伴って、受信回路34からIDコード信号に関する受信信号が入力されたとき、その受信信号に含まれているIDコードと基準IDコードとが一致しているか否かを判断する。つまり、この場合、照合制御装置38は、IDコード照合を実行する。そして、照合制御装置38は、このIDコード照合により両IDコードが一致したとき、正規のスマートキー2が利用された旨(正規のスマートキー2が車内に存在する旨)を認識する。
【0038】
照合制御装置38には、パワースイッチ40が電気的に接続されている。このパワースイッチ40は、外部から押圧操作可能なボタンを備えたモーメンタリ式のプッシュスイッチよりなり、車両の電源をオフ位置からアクセサリ位置やイグニッションオン位置、さらにはエンジン始動位置に遷移させるために操作されるものである。
【0039】
そして、照合制御装置38は、車内スマート通信制御を実行したことに伴って、正規のスマートキー2が利用された旨(正規のスマートキー2が車内に存在する旨)を認識している状態で、パワースイッチ40が操作されたとき、ブレーキ操作が行われていることを条件として、エンジンを始動させる。
【0040】
このように本実施形態の車両には、電気的なキー認証により正規のスマートキー2が利用された(正規のスマートキー2が車内に存在する)ものと肯定判断された場合にパワースイッチ40が押圧操作されたことを条件としてエンジンの始動が許可される機能(ワンプッシュ式のスマートイグニッション機能)が適用されている。
【0041】
ところで、照合制御装置38は、車内イモビ通信制御を実行したことに伴って、送受信回路36からトランスポンダコード信号に関する受信信号が入力されたとき、その受信信号に含まれているトランスポンダコードと基準トランスポンダコードとが一致しているか否かを判断する。つまり、この場合、照合制御装置38は、トランスポンダコード照合を実行する。そして、照合制御装置38は、このトランスポンダコード照合により両トランスポンダコードが一致したとき、正規のスマートキー2が利用された旨(正規のスマートキー2が車内に存在する旨)を認識する。
【0042】
そして、照合制御装置38は、車内イモビ通信制御を実行したことに伴って、正規のスマートキー2が利用された旨(正規のスマートキー2が車内に存在する旨)を認識している状態で、パワースイッチ40が操作されたとき、ブレーキ操作が行われていることを条件として、エンジンを始動させる。
【0043】
これらのように本実施形態の車両では、正規のスマートキー2が利用された場合、つまりスマートキー2に電池切れが生じていない場合にあって、車内にスマートキー2が持ち込まれたとき、また、スマートキー2に電池切れが生じているような場合にあって、スマートキー2がパワースイッチ40に対して翳されたとき、エンジン始動が許可される。ここに、本実施形態の車両では、正規のスマートキー2を紛失してしまったような場合に備えて、正規のスマートキー2を利用することに代えて、正規のパスワードを入力することでも、エンジン始動が許可されるよう配慮されている。
【0044】
ここで、本実施形態の車両では、前記パワースイッチ40を用いて、パスワードの登録や入力を行えるようになっている。従って、このパワースイッチ40は、エンジン始動用操作手段及びパスワード入力手段に相当する。尚、前記照合制御装置38には、メータマルチインフォメーション50及びメータホーン60といった既存報知手段が電気的に接続され、これらの報知手段によって、パスワードを登録しようとする者に対して、パスワードの登録に必要な操作の内容が伝えられるようになっている。従って、これらメータマルチインフォメーション50及びメータホーン60は、それぞれ操作内容伝達手段に相当する。
【0045】
次に、パスワードの登録方法について、図3を参照しながら説明する。
パスワードを登録しようとする者によって、パワースイッチ40が、本来の使用目的で操作されるときの通常操作とは異なる態様で特殊操作されたとき、これを契機として当該車両がパスワードモードへ遷移され、電気的なキー認証が開始される(ステップS1〜ステップS3)。即ち、この場合、パワースイッチ40内蔵の送受信アンテナ37からトランスポンダ起動用電波が送信されるとともに、パスワードモードへ遷移された旨のメッセージがメータマルチインフォメーション50及びメータホーン60を通じて伝えられる。
【0046】
尚、パワースイッチ40の通常操作とは、エンジンを始動させる目的で行われる操作であって、パワースイッチ40が短押し操作(常識の範囲でプッシュ操作を1回行うのに必要な時間のうち最も長い時間を1秒間としたとき、連続して1秒間に及ぶパワースイッチ40のプッシュ操作がこれに相当する)されることを指す。一方、パワースイッチ40の特殊操作とは、本実施形態では、パワースイッチ40が通常操作よりも長い時間に亘って連続してプッシュ操作されることを指し、具体的にはパワースイッチ40が3秒間以上に亘って連続してプッシュ操作されることを指す。また、上記旨のメッセージとしては、「パスワード登録可能です。キーを翳して下さい。」等のように、分かり易く且つ簡単な内容のものが挙げられる。
【0047】
そして、こうしたメッセージに沿って、正規のスマートキー2がパワースイッチ40に対して翳されると、トランスポンダコード照合により両コードが一致し、パスワードモードから、それよりも1つだけ階層の深いパスワード登録モードへ遷移される(ステップS4〜ステップS6)。また、この場合、パスワード登録モードへ遷移された旨のメッセージがメータマルチインフォメーション50及びメータホーン60を通じて伝えられる。尚、この旨のメッセージとしては、「パスワード登録可能です。最高9回までパワースイッチを押して下さい。」等が挙げられる。
【0048】
ここで、ステップS7のパスワードの登録処理について説明する。パスワードとして例えば「85」を登録する場合、上記メッセージに沿って、パワースイッチ40が8回だけ短押し操作される。照合制御装置38は、パスワード登録モードへ遷移してからの経過時間を測定し、所定の時間(本実施形態では20秒間)が経過するまでの第1の登録期間内にパワースイッチ40が操作された回数(この場合、8回)によって規定される数字(「8」)をパスワードの最上位の桁の数字として設定する。そして、この第1の登録期間が完了すると、次の桁の登録を促すメッセージがメータマルチインフォメーション50及びメータホーン60を通じて伝えられる。尚、このメッセージとしては、「8を設定しました。次の桁を登録して下さい。」等が挙げられる。
【0049】
そして、このメッセージに沿って、パワースイッチ40が5回だけ短押し操作されると、照合制御装置38は、第1の登録期間完了の区切りから前記所定の時間が経過するまでの第2の登録期間内にパワースイッチ40が操作された回数(この場合、5回)によって規定される数字(「5」)をパスワードの次の上位の桁の数字として設定する。そして、この第2の登録期間が完了すると、次の桁の登録を促すメッセージがメータマルチインフォメーション50及びメータホーン60を通じて伝えられる。尚、このメッセージとしては、「85を設定しました。次の桁を登録して下さい。」等が挙げられる。
【0050】
そして、こうしたメッセージを受けるも、パスワードとして「85」を登録しようとする者によって、次の桁が登録されることなく、スマートキー2がパワースイッチ40に対して再び翳されたとき、これを契機として当該車両がパスワード登録モードから、スマートイグニッション機能によるエンジンの始動が可能な通常モードへ遷移される。即ち、この場合、パスワード登録に関する一連の処理が終了される。尚、パスワード登録モード中にパワースイッチ40が再び特殊操作されたとき、それまでの登録内容がキャンセルされるようになっている。この場合、パワースイッチ40をもう一度特殊操作することで、上記した流れに沿って、パスワードの登録が最初からやり直されることになる。
【0051】
次に、登録済みのパスワードを入力することによるエンジンの始動方法について、先程の図3を参照しながら説明する。尚、ここでは、正規のパスワードとして「85」が登録されていることとする。
【0052】
正規のスマートキー2を利用することなくエンジンを始動させようとする者によって、パワースイッチ40が、先の説明と同様、特殊操作されたとき、これを契機として当該車両がパスワードモードへ遷移され、電気的なキー認証が開始される(ステップS1〜ステップS3)。即ち、この場合、先の説明と同様、パワースイッチ40内蔵の送受信アンテナ37からトランスポンダ起動用電波が送信されるとともに、「パスワード登録可能です。キーを翳して下さい。」等といったメッセージがメータマルチインフォメーション50及びメータホーン60を通じて伝えられる。
【0053】
しかし、この場合、正規のスマートキー2がパワースイッチ40に対して翳されることはなく、トランスポンダコードが一致しないまま、やがてトランスポンダコード照合の制限時間を過ぎると、パスワードモードから、それよりも1つだけ階層の深いパスワード使用モードへ遷移される(ステップS8)。また、この場合、パスワード使用モードへ遷移された旨のメッセージがメータマルチインフォメーション50及びメータホーン60を通じて伝えられる。尚、この旨のメッセージとしては、「パスワードを入力して下さい。」等が挙げられる。
【0054】
ここで、ステップS9のパスワードの入力処理について説明する。パスワードとして例えば「85」を入力する場合、上記メッセージに沿って、パワースイッチ40が8回だけ短押し操作される。照合制御装置38は、パスワード使用モードへ遷移してからの経過時間を測定し、所定の時間(本実施形態では20秒間)が経過するまでの第1の入力期間内にパワースイッチ40が操作された回数(この場合、8回)によって規定される数字(「8」)をパスワードの最上位の桁の数字として認識する。そして、この第1の入力期間が完了すると、次の桁の入力を促すメッセージがメータマルチインフォメーション50及びメータホーン60を通じて伝えられる。尚、このメッセージとしては、「次の桁を入力して下さい。」等が挙げられる。
【0055】
そして、このメッセージに沿って、パワースイッチ40が5回だけ短押し操作されると、照合制御装置38は、第1の入力期間完了の区切りから前記所定の時間が経過するまでの第2の入力期間内にパワースイッチ40が操作された回数(この場合、5回)によって規定される数字(「5」)をパスワードの次の上位の桁の数字として認識する。そして、この第2の入力期間が完了すると、次の桁の入力を促すメッセージがメータマルチインフォメーション50及びメータホーン60を通じて伝えられる。尚、このメッセージとしては、「次の桁を入力して下さい。」等が挙げられる。
【0056】
そして、こうしたメッセージを受けるも、パスワードとして「85」を入力しようとする者によって、次の桁が入力されることなく、やがて第2の入力期間の完了を迎えたとき、この場合、パスワードが一致するので、ブレーキ操作が行われていることを条件として、エンジンが始動され、パスワード使用モードから通常モードへ遷移される。即ち、この場合、パスワード入力に関する一連の処理が終了される。尚、パスワード使用モード中にパワースイッチ40が再び特殊操作されたとき、それまでの入力内容がキャンセルされるようになっている。この場合、パワースイッチ40をもう一度特殊操作することで、上記した流れに沿って、パスワードの入力が最初からやり直されることになる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)車両制御が許可されるのに必要なパスワードを登録/入力するためのツール(パスワード入力手段)として、車両備え付けのパワースイッチ40が用いられる。このため、パスワードの登録/入力を他人に依存することなく車両ユーザ自らが行えるので、秘匿性を守ることができる。
【0058】
(2)既存のパワースイッチ40を用いてパスワードの登録や入力を行えるので、車両価格の高騰を防止できる。
(3)上記(1)及び(2)から、秘匿性を守りつつ、車両価格を抑制することができる。
【0059】
(4)先に挙げた特許文献1に開示される構成では、車両備え付けのカーナビゲーション装置を用いて、パスワードの登録や入力を行えるようになっているが、これとの決定的な違いについて、以下記載する。即ち、カーナビゲーション装置は、車内での快適性を向上できる点においてそれが備え付けられていると確かに便利なものではあるが、車両を走行させる上で、必ずしも必要な訳ではない。これに対し、本実施形態においてパスワード入力手段として用いられるパワースイッチ40は、車両を走行させる上で、なくてはならないものである。要するに、車両設備として必須のものをパスワード入力手段として用いる点に本構成の嬉しさがある。つまり、本構成では、必須の車両設備がパスワード入力手段として兼用されるので、部品点数を確実に削減できるのに対し、特許文献1記載の構成では、必ずしも必須ではない車両設備がパスワード入力手段として用いられることから、当該車両設備は、いわばパスワード入力手段のためだけに使用されている点を否定できず、無駄が生じる。
【0060】
(5)車両の心臓部とも言えるエンジンの始動に供されるパワースイッチ40は、その重要性及びセキュリティ性等の観点から照合制御装置38等のセキュリティ関連部品に電気的に接続されることが一般的に多く、また、本構成のパスワード入力についてもセキュリティ性に大きく関与するものである。従って、セキュリティ関連のものを集約できることによる嬉しさも少なからず得られる。例えば、その嬉しさの一つとして、車両のセキュリティ管理をいわば一箇所で集中的に行うことができ、総じてセキュリティ管理を容易且つ確実に行える点が挙げられる。また、必要以上に配線の引き回しが長くなるようなことが回避され、この点、情報の漏洩或いは盗聴等の防止にも役立つ。
【0061】
(6)パワースイッチ40が特殊操作されたことを契機として電気的なキー認証が開始され、このときのキー認証により正規のスマートキー2が利用されたものと肯定判断されたとき、パスワードを登録可能なパスワード登録モードへ遷移される。このため、誰もがパスワードを登録できる訳ではなく、それをできる者は正規のスマートキー2の所持者に限られる。従って、セキュリティ性を向上できる。
【0062】
(7)上記(6)について補足すると、スマートキー2の紛失時には、当然、正規ユーザであれスマートキー2を利用できないので、こうした場合に備えて、パスワード入力によるエンジン始動が許可されるよう配慮しているものの、パスワードの登録時には、スマートキー2の利用をいわば義務付けている。従って、正規ユーザがスマートキー2を紛失する前の段階にあって、正規ユーザ以外の第三者によって勝手にパスワードが登録されてしまうようなことがなく、この点において、セキュリティ性を向上できるという訳である。尚、正規ユーザは、スマートキー2の紛失時に備えて、スマートキー2を所持している段階において、予めパスワード登録しておけばよいことは言うまでもない。
【0063】
(8)パスワードの登録に必要な操作の内容を伝える操作内容伝達手段として、メータマルチインフォメーション50及びメータホーン60を備えている。このため、パスワードを登録しようとする者は、前記操作内容伝達手段によって伝えられる内容に沿った所要の操作を行うだけで、簡単且つ正確にパスワードを登録することが可能となる。従って、利便性を向上できる。
【0064】
(9)上記(8)に関連して、前記操作内容伝達手段として、車両備え付けの既存報知手段であるメータマルチインフォメーション50及びメータホーン60が用いられるので、ここでも車両価格の高騰を防止できる。
【0065】
(10)パスワード登録モードにおいて、パワースイッチ40の操作回数がそのままパスワードの数字に反映される。つまり、登録作業時の操作回数と該登録されるパスワードの数字とが密接に関連されており、パスワードの登録作業者にしてみれば、その登録作業を理解し易い態様で簡単に済ませることができ、また、自らが登録したパスワードの認識間違いを防止することもできる。従って、このパスワードを用いてエンジン始動等の車両制御を許可させようとする際、誤ったパスワードを入力するようなことはなく、正しいパスワードを入力することでもって、スムーズに車両制御を許可させることができる。
【0066】
(11)パワースイッチ40が特殊操作された後、正規のパスワードが入力されたとき、エンジン始動等の車両制御が許可される。このため、本来、電気的なキー認証により正規のスマートキー2が利用されたものと肯定判断された場合にパワースイッチ40が操作されたことを条件としてエンジンが始動されるところ、正規のスマートキー2を紛失してしまったような場合でも、正規のパスワードを入力することで、エンジン始動を許可することが可能となる。従って、キー紛失時のような不測の事態にも柔軟に対処することができる。また、エンジン始動という重要な車両制御に関して、スマートイグニッション機能と同等或いはキーを所持しなくても済む分だけそれ以上の好適な利便性及び高いセキュリティ性を確保することができる。
【0067】
(12)パスワード入力専用のテンキーや高価なタッチパネル等を車両にわざわざ設けなくても、パワースイッチ40で代用できる。従って、車両の部品点数を削減できることから車両の小型軽量化に貢献でき、また、車両の燃費向上等にも少なからず寄与できる。
【0068】
(13)パワースイッチ40をいわばテンキーを操作する場合と同じ感覚で操作することによって、操作に迷うことなく簡単にパスワードを入力でき、また、その操作がパスワードに反映されることで高い秘匿性が得られ、優れた操作性及び高いセキュリティ性でもって、エンジンを始動させることができる。
【0069】
(14)運転席に座る者にとって操作し易い場所にあるパワースイッチ40を用いてパスワードを入力することが可能である。従って、スマートキー2を所持していない場合でも、それを所持しているときと同じ感覚でエンジンを始動させることができる。
【0070】
(15)プッシュスイッチであるパワースイッチ40を用いてパスワードの入力することができるので、例えば操作部を回転操作させるようなロータリースイッチを用いる場合と比較して、操作が単純であり、その操作性を極めて良好なものとすることができる。
【0071】
(16)プッシュスイッチの中でもモーメンタリ式のものをパワースイッチ40として採用しているので、特にパスワードの入力に際し、一度押し込んだものを引っ張り出す必要はなく、パスワードの入力作業をスムーズに遂行することができる。
【0072】
(17)パスワードの登録に際して、パスワード入力に関する上記(12)〜(16)と同様の作用効果を奏することができる。
(18)メータマルチインフォメーション50及びメータホーン60についても、運転席に座る者から見易い場所に設けられるものであるので、パスワード登録に関する助言を車両側から享受し易く、パスワードの登録作業をスムーズに遂行することができる。
【0073】
(19)パスワードを登録/入力できるようにするに際し、新たなハードウェア構成を車両に追加することなく、照合制御装置等のソフトウェアを変更することで、既存のスマートキーシステムを略そのまま活用できる。このため、パスワード入力によるエンジン始動制御機能を既存のスマートキーシステムに後付けし易くすることができる。従って、既存のスマートキーシステムに汎用性を持たせることができるとともに、既存のスマートキーシステムに付加的な価値を容易に与えることができる。
【0074】
(20)一旦パスワード登録モードへ遷移されると、スマートキー2がパワースイッチ40に対して再び翳されるまで、いわば自由に何桁でもパスワードを登録することができる。従って、ユーザ自身が忘れない範囲で、所望するセキュリティレベルに応じて、任意の桁数のパスワードを設定することができる。
【0075】
尚、前記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・前記実施形態では、パワースイッチ40の長押し操作を契機としてパスワードモードへ遷移するようになっていたが、こうした長押し操作に代えて又は加えて、次のような操作を契機としてパスワードモードへ遷移するようにしてもよい。即ち、パワースイッチ40及びそれとは別のスイッチの同時操作を契機としてパスワードモードへ遷移するようにしてもよい。要するに、エンジン始動用操作手段の特殊操作は、パワースイッチ40単独での長押し操作に限定されず、パワースイッチ40を含む複数の操作手段の同時操作も含まれる。尚、パワースイッチ40とは別のスイッチ(操作手段)として、車内での快適性を向上するためのスイッチ類を採用してもよいが、どちらかと言うと、車両設備として必須のスイッチ類を採用した方が好ましく、さらにはセキュリティ関連のスイッチ類を採用することがより好ましい。
【0076】
・エンジン始動用操作手段は、モーメンタリ式のプッシュスイッチに限らず、モーメンタリ式のロータリスイッチであってもよい。また、これらが組み合わさった構造を有するものであってもよい。勿論、モーメンタリ式のものに限定されず、オルタネート式のものであってもよい。
【0077】
・前記実施形態では、メータマルチインフォメーション50及びメータホーン60といった車両備え付けの既存報知手段を、パスワードの登録に必要な操作の内容を伝える操作内容伝達手段として用いたが、それ以外の既存報知手段を操作内容伝達手段として用いてもよい。勿論、パスワードを登録しようとする者から見易い場所にこれが設けられている方がよい。また、操作内容伝達手段として車両備え付けの既存操作手段を採用した方がよいことは当然のこととして、その中でも、車内での快適性を向上するためのカーナビゲーション装置のようなものよりも、車両設備として必須の報知手段を採用することの方が好ましい。
【0078】
・前記実施形態では、スマートキー2がパワースイッチ40に対して翳されたことを契機としてパスワード登録モードへ遷移するようになっていたが、遠隔操作によりドアロックを施解錠する目的でスマートキー2に備え付けられているロックボタンやアンロックボタンが操作されたことを契機としてパスワード登録モードへ遷移するようにしてもよい。尚、前記実施形態では説明を割愛したが、これらのボタンが操作されたとき、スマートキー2からドアロックの施解錠を要求する旨の操作コードとスマートキー2のIDコードとを含む遠隔操作信号が送信される。そして、この信号がセキュリティ装置3の受信アンテナ33で受信されたとき、前記実施形態での説明と同様、照合制御装置38にてIDコード照合が行われ、両コードが一致したとき、正規のスマートキー2が利用された旨が照合制御装置38で認識される。従って、このように認識された場合に限り、パスワード登録モードへ遷移されるようにすれば、前記実施形態の(6)及び(7)の作用効果を奏することができる。尚、パスワード登録モードから通常モードへ抜ける場合も同様である。
【0079】
・パスワード登録モードに設けられる時間的な区切りは単数であってもよい。この場合、パスワード登録モードに遷移されてからその区切りまでの登録期間内にパワースイッチ40が操作された回数によって規定される数字がパスワードの数字として設定される。尚、このときの登録期間内に許容されるパワースイッチ40の操作回数は、0〜9回であってもよいし、10〜99回であってもよいし、100〜999回であってもよいし、それ以上であってもよい。要するに、この登録期間内の操作回数が1桁であれ2桁であれ3桁であれそれ以上であれ、スマートキー2がパワースイッチ40に対して再び翳されるまで、或いは制限時間に達するまで、その操作回数がそのままパスワードに反映されるよう、いわば自由に何桁でもパスワードを登録できるようにしてもよい。
【0080】
・パワースイッチ40の操作回数に代えて、パワースイッチ40の連続操作時間がパスワードに反映される構成を採用してもよい。この場合、パスワードの登録期間内にパワースイッチ40が連続して操作され続けられた時間によって規定される数字がパスワードの数字として設定される。例えば、一つの登録期間内にパワースイッチ40が連続して8秒5の時間に亘って操作され続けられたとき、パスワードとして「85」が設定される。
【0081】
また、前記実施形態のように登録期間が複数設けられている場合、最初の登録期間内にパワースイッチ40が連続して8秒間に亘って操作され続けられた後、次の登録期間内にパワースイッチ40が連続して5秒間に亘って操作され続けられることで、パスワードとして「85」が設定される。
【0082】
尚、こうした構成では、パスワードの入力に際し、それを人が行う以上、登録時と同じ時間に亘ってパワースイッチ40を操作し続けることが比較的困難であると考えられる。従って、パスワードの入力に際して、登録時と同じ時間に亘ってパワースイッチ40が操作し続けられたことを条件として、パスワード一致と認識されても勿論よいが、登録時にはパワースイッチ40の連続操作時間を採用する一方で、入力時には前記実施形態のようなパワースイッチ40の操作回数を採用した方が実用的であると考えられる。後者の場合、例えば、一つの登録期間内にパワースイッチ40が連続して8秒5の時間に亘って操作され続けられてパスワードとして「85」が設定され、単数又は複数の入力期間内にパワースイッチ40が一度に85回又は8回と5回に分けられて操作されたことを条件として、パスワード一致と認識される。
【0083】
ちなみに、パワースイッチ40の特殊操作と登録時の連続操作とを区別するために、パワースイッチ40の特殊操作として、先に説明した複数スイッチの同時操作を採用し、これを契機としてパスワードモードへ遷移されるようにした方が都合がよい。
【0084】
・本発明のエンジンには、一般的な車両に搭載されている内燃機関のみならず、電気自動車或いはハイブリッドカー等で用いられるモータ等の動力源も含まれる。
【符号の説明】
【0085】
1…スマートキーシステム(電子キーシステム)、2…スマートキー(電子キー)、40…パワースイッチ(車両備え付けのエンジン始動用操作手段、パスワード入力手段)、50…メータマルチインフォメーション(操作内容伝達手段、車両備え付けの既存報知手段)、60…メータホーン(操作内容伝達手段、車両備え付けの既存報知手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的なキー認証により正規の電子キーが利用されたものと肯定判断された場合に車両備え付けのエンジン始動用操作手段が操作されたことを条件としてエンジンが始動される電子キーシステムが適用された車両に用いられ、車両制御が許可されるのに必要なパスワードを登録/入力するための車両用パスワード入力装置において、
前記パスワードを登録/入力するためのパスワード入力手段として前記エンジン始動用操作手段を用いる
ことを特徴とする車両用パスワード入力装置。
【請求項2】
前記エンジン始動用操作手段が本来の使用目的で操作されるときの通常操作とは異なる態様で特殊操作されたことを契機として電気的なキー認証が開始され、このときのキー認証により正規の電子キーが利用されたものと肯定判断されたとき、前記パスワードを登録可能なパスワード登録モードへ遷移される
請求項1に記載の車両用パスワード入力装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用パスワード入力装置において、
前記パスワードの登録に必要な操作の内容を伝える操作内容伝達手段を備え、
車両備え付けの既存報知手段にて前記操作内容伝達手段が構成されている
ことを特徴とする車両用パスワード入力装置。
【請求項4】
前記パスワード登録モードに時間的な区切りが単数又は複数設けられ、
区切りが単数の場合にあって、前記パスワード登録モードに遷移されてからその区切りまでの期間内に前記エンジン始動用操作手段が操作された回数によって規定される数字が前記パスワードの数字として設定され、
区切りが複数の場合にあって、前記パスワード登録モードに遷移されてから最初の区切りまでの期間内に前記エンジン始動用操作手段が操作された回数によって規定される数字が前記パスワードの最上位の桁の数字として設定され、以降、一つの区切りから次の区切りまでの期間内に前記エンジン始動用操作手段が操作された回数によって規定される数字の順に前記パスワードの上位から下位に向かう桁の数字が設定される
請求項2又は請求項3に記載の車両用パスワード入力装置。
【請求項5】
前記エンジン始動用操作手段が本来の使用目的で操作されるときの通常操作とは異なる態様で特殊操作されたことを契機として電気的なキー認証が開始され、このときのキー認証により正規の電子キーが利用されたものと肯定判断されずに否定判断されたとき、車両制御が許可されるのに必要なパスワードの入力を受け付けるパスワード使用モードへ遷移され、このパスワード使用モード中に正規のパスワードが入力されたとき、車両制御が許可される
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の車両用パスワード入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−902(P2011−902A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143277(P2009−143277)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】