車両用フロアマットの敷設構造
【課題】フロアパネル2の踵載置領域に設けられた、前方に向かって高くなる傾斜踏面部11を、フロアパネルとは別体の足置部材22で構成する場合に、傾斜踏面部11から落下したゴミをフロアマット1で確実に受けるようにしつつ、フロアマット1の取付け及び取外しを容易にできるようにする。
【解決手段】足置部材22の下部に、フロアマット1上面に当接する当接部材23を設け、足置部材22を、当接部材23がフロアマット1上面を押圧することでフロアマット1をフロアパネル2に固定する第1形態と、当接部材23とフロアマット1上面との間に間隙が形成される第2形態とに切り換え可能に構成する。
【解決手段】足置部材22の下部に、フロアマット1上面に当接する当接部材23を設け、足置部材22を、当接部材23がフロアマット1上面を押圧することでフロアマット1をフロアパネル2に固定する第1形態と、当接部材23とフロアマット1上面との間に間隙が形成される第2形態とに切り換え可能に構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転席足元のフロアパネル上面を覆うように敷設された車両用フロアマットの敷設構造に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、女性や老人でも当たり前のように車両を運転するようになってきており、この結果、様々な体格の人が運転する状況にある。一方、近年の車両においては、上記の様々な体格の人が運転することを想定してはいるものの、ドライビングポジションについて詳細に議論されてはおらず、様々な体格の人についてドライビングポジションの適正化が図られているとは到底いえるものではない。ここで、ドライビングポジションは、基本的に、3つの要件、つまり、ボンネットに対するアイポイントの位置、運転手の足の付け根から操作ペダル(アクセルペダルやブレーキペダル)までの距離(つまり足の関節の角度)、及び、運転手の身体からステアリングハンドルまでの距離、で定義されるものである。特に女性や老人といった比較的小柄な運転手にとって上記3つの要件を全て満たすようなポジションは未だ確立されておらず、いずれかの要件が満たされない状況で運転しているのが現状である。
【0003】
そこで、本出願人は、様々な体格の運転者のドライビングポジションの適正化を図るべく、フロアパネルにおいて運転手の踵が載置される踵載置領域に、前方に向かって高くなる傾斜踏面部を設けることを提案した特許出願を既に行っている(特願2008−053870号)。
【0004】
一方、運転席足元のフロアパネル上面には、該上面の汚れの防止や見栄え向上の観点からフロアマットが敷設されることはよく知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−90831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようにフロアパネルの踵載置領域に傾斜踏面部を設ける場合、傾斜踏面部をフロアパネルに直接設けると、傾斜踏面部の僅かな変更でもフロアパネル全体を変更しなければならなくなる。すなわち、アクセルペダルの位置変更等の設計変更によって、傾斜踏面部の傾斜角度や形状等を変更する必要が生じるが、フロアパネル自体は出来る限り変更しない方が好ましい。
【0006】
そこで、傾斜踏面部を、フロアパネルとは別個の足置部材で構成することが考えられる。この場合、フロアマットの前端を足置部材に沿うようにすると、傾斜踏面部から落下した砂利等のゴミがフロアマットと傾斜踏面部との間の隙間に入り込んでそのゴミをフロアマットで受けることができなくなる。また、フロアマットの位置ずれ等によって上記隙間が大きくなる場合があり、このようになると、該隙間にゴミがより一層溜まり易くなるとともに、見栄えも悪化する。一方、フロアマットの前端を足置部材の下側に配置すると、ゴミをフロアマットで受けることができるものの、フロアマットが足置部材の下側にあることで、フロアマットを取り出す際や取り付ける際にその作業が面倒になるという問題がある。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、フロアパネルの踵載置領域に設けられた傾斜踏面部を、フロアパネルとは別体の足置部材で構成する場合に、傾斜踏面部から落下したゴミをフロアマットで確実に受けるようにしつつ、フロアマットの取付け及び取外しを容易にできるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明では、フロアパネルとは別体の足置部材の下部に、フロアマット上面に当接する当接部材を設け、その足置部材を、上記当接部材が上記フロアマット上面を押圧することでフロアマットをフロアパネルに固定する第1形態と、上記当接部材と上記フロアマット上面との間に間隙が形成される第2形態とに切り換え可能に構成した。
【0009】
具体的には、請求項1の発明では、車両の運転席足元のフロアパネル上面を覆うように敷設された車両用フロアマットの敷設構造を対象とする。
【0010】
そして、上記フロアパネルにおいて上記運転席に着座した運転手が操作ペダルを踏み込み操作する際に該運転手の踵が載置される踵載置領域に、前方に向かって高くなる傾斜踏面部を有する足置部材が該フロアパネルとは別体で設けられ、上記足置部材の下部には、上記フロアマット上面に当接する当接部材が設けられ、上記足置部材は、上記当接部材が上記フロアマット上面を押圧することで該フロアマットを上記フロアパネルに固定する第1形態と、上記当接部材と上記フロアマット上面との間に間隙が形成される第2形態とに切り換え可能に構成されているものとする。
【0011】
上記の構成により、フロアマットを敷設する場合には、フロアマットが足置部材の下側に位置することになるので、傾斜踏面部から落下したゴミをフロアマットで確実に受けることができるようになる。また、足置部材の第1形態では、当接部材がフロアマット上面を押圧するので、フロアマットの車両前後方向等への位置ずれを抑制することができる。そして、フロアマットの取付け及び取外しの際には、足置部材を第1形態から第2形態に切り換えることで、取付け及び取外しの作業が容易になる。
【0012】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、上記当接部材は、車幅方向に延びる軸周りに回動可能に構成されていて、スプリングにより上記フロアマット上面に押圧されるようになっているものとする。
【0013】
このことにより、スプリングの付勢力を調整することで、当接部材がフロアマット上面を押圧してフロアマットをフロアパネルに固定するようにすることができる。また、当接部材が車幅方向に延びる軸周りに回動可能に構成されていることで、第1形態と第2形態との切り換えが容易にできるようになるとともに、フロアマットの厚みが複数種類あって、それらのうちのどのフロアマットが敷設されても、当接部材がフロアマット上面を押圧するようにすることができ、しかも、足置部材とフロアマットとの間に隙間が生じるのを防止することができる。
【0014】
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明において、上記足置部材は、上記第1及び第2形態に加えて、上記フロアマットが上記フロアパネル上面に敷設されていない状態では、上記当接部材が該フロアパネル上面に当接する第3形態に切り換え可能に構成されているものとする。
【0015】
このことで、フロアマットが敷設されていない場合には、足置部材が第3形態に切り換えられて、当接部材がフロアパネル上面に当接するので、フロアマットがなくても、足置部材とフロアパネルとの間に、そのフロアマットの厚みに相当する隙間が生じるようなことはない。よって、フロアマットの非敷設時の見栄えを向上させることができる。
【0016】
請求項4の発明では、請求項1〜3のいずれか1つの発明において、上記フロアマットは、上記操作ペダル後方における該フロアマット後端部にて、上記フロアパネルに固定されているものとする。
【0017】
すなわち、フロアマットは、通常、水平に敷設されるので、運転手の踵等から前方へ向かう荷重を受け易くて、前方へずれ易くなる。しかし、本発明では、フロアマットが、操作ペダル後方における該フロアマット後端部にてフロアパネルに固定されているので、上記ずれを防止することができる。また、当接部材がフロアマット上面を押圧するので、フロアマットをその前後で固定して、フロアマットの前後方向中間部が上側に撓むのを防止することもできるようになる。
【0018】
請求項5の発明では、請求項1〜4のいずれか1つの発明において、上記当接部材は、上記足置部材における傾斜踏面部の後端部に車幅方向に延びる軸周りに回動可能に取り付けられているものとする。
【0019】
このことにより、当接部材の回動により、第1形態と第2形態との切り換えが容易にできるようになるとともに、フロアマットの厚みが複数種類あって、そられのうちのどのフロアマットが敷設されても、当接部材がフロアマット上面を押圧するようにすることができ、しかも、足置部材とフロアマットとの間に隙間が生じるのを防止することができる。また、当接部材が回動しても、傾斜踏面部の傾斜角度を変化させないようにすることができ、どのフロアマットが敷設されても、傾斜踏面部の傾斜角度を一定に維持することができ、ドライビングポジションの適正化を確実に図ることができる。
【0020】
請求項6の発明では、請求項3の発明において、上記当接部材は、上記足置部材における傾斜踏面部の後端部に車幅方向に延びる軸周りに回動可能に取り付けられていて、上記足置部材の第1形態においては、上記傾斜踏面部の下方位置にて上記フロアマット上面に沿って延びた状態で該当接部材の下面が該フロアマット上面を押圧する一方、上記足置部材の第3形態においては、上記傾斜踏面部の延長上に延びた状態で該当接部材における上記足置部材と反対側の端部が該フロアパネル上面に当接するように構成されているものとする。
【0021】
このことで、フロアマットを敷設する場合には、当接部材は、運転手の操作ペダルの操作の邪魔にならない位置にあるとともに、運転手から見えず、見栄えをより一層向上させることができる。一方、フロアマットを敷設しない場合には、足置部材を第3形態にすることで、当接部材が傾斜踏面部の延長上に位置することになり、運転手から見えても違和感はなく、また、当接部材を傾斜踏面部として機能させることができる。さらに、請求項5の発明と同様に、当接部材が回動しても、傾斜踏面部の傾斜角度を変化させないようにすることができ、フロアマットの有無に関係なく、ドライビングポジションの適正化を確実に図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明の車両用フロアマットによると、足置部材の下部に、フロアマット上面に当接する当接部材を設け、その足置部材を、上記当接部材が上記フロアマット上面を押圧することでフロアマットをフロアパネルに固定する第1形態と、上記当接部材と上記フロアマット上面との間に間隙が形成される第2形態とに切り換え可能に構成したことにより、傾斜踏面部から落下したゴミをフロアマットで確実に受けるようにしつつ、フロアマットの取付け及び取外しが容易にできるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る車両用フロアマット敷設構造が適用された運転席足元を示し、この車両用フロアマット1は、運転席足元(該運転席に着座した運転手の足元)のフロアパネル2(図2参照)上面を覆うように敷設されている。尚、このフロアマット1は、詳細な図示は省略するが、ゴムからなる基材とこの基材上に設けられた起毛層とからなる一般的なものである。
【0025】
図1において、5はいわゆるオルガン式のアクセルペダル、6はブレーキペダルである。本実施形態では、アクセルペダル5及びブレーキペダル6(特にアクセルペダル5)を本発明の操作ペダルと捉えている。この操作ペダルは上記運転手の右足で操作されるので、該右足を操作足という。
【0026】
上記アクセルペダル5の後端部は、該アクセルペダル5をフロアパネル2に支持するためのアクセルペダル取付基部25上に、車幅方向に延びる軸周りに回動自在に支持されている。このアクセルペダル取付基部25は、フロアパネル2に固定されている。
【0027】
上記フロアマット1は、運転席のシートクッション前端部の下方位置から、アクセルペダル取付基部25の直ぐ後方位置ないしブレーキペダル6の下方位置まで車両前後方向に延びている。このフロアマット1の前端(車幅方向においてアクセルペダル5側(車両右側)の前端)は、アクセルペダル取付基部25の周縁(後縁及び車両左側側縁)に沿った形状をなしている。
【0028】
図2に示すように、上記フロアパネル2上面には、インシュレータ3を介して車両マット4が固着されており、車両マット4の上面を、実質的には、フロアパネル2の上面と見做すことができる。そして、フロアマット1は、この車両マット4上に敷設されることになる。尚、この車両マット4も、フロアマット1と同様に、基材とこの基材上に設けられた起毛層とからなる。
【0029】
上記フロアパネル2(車両マット4)において上記運転手がアクセルペダル5又はブレーキペダル6を操作足で踏み込み操作する際に該運転手の操作足の踵が載置される踵載置領域に、前方に向かって高くなる傾斜踏面部11を有する足置部材22がフロアパネル2とは別体で設けられている。この傾斜踏面部11の前後における踵載置領域は、水平に形成されている。
【0030】
上記踵載置領域は、アクセルペダル5又はブレーキペダル6の操作時に運転手の操作足の踵が載置される可能性がある全ての部分をいう。踵載置領域の車両前後方向の範囲は、例えば図2に示すような範囲となり、踵載置領域の前端は、操作ペダルの後端(車両後側端)の下方に位置し、踵載置領域の後端は、後述の高身長者の踵が載置される部分の最も後側に位置する。また、踵載置領域の車幅方向の範囲は、図1に示す傾斜踏面部11の車幅方向の範囲と略同じである。
【0031】
上記傾斜踏面部11は、様々な体格の運転者のドライビングポジションの適正化を図るために設けたものである。すなわち、運転席に着座する運転手が身長の異なる者に乗り換わると、その身長に略比例して運転手の座高、腕の長さ及び足の長さ等が変化するため、これに対応して運転手のアイポイント、及び、ステアリングハンドル20(図4参照)や操作ペダルに対する操作性も変化する。したがって、新たに運転席に着座した運転手は、安楽姿勢を維持しつつ、ステアリングハンドル20を適正状態で把持するとともに、アクセルペダル5の所定の最適踏み込みポイント5aに操作足の拇指球部(最も踏み込み易い部分)を適正状態で当接させ、かつアイポイントを適正ラインL(図4参照)に一致させて前方視界を適正に確保できるように、運転席の前後位置等を調整しようとする。
【0032】
上記運転席には、身長が150cm未満の者から186cm以上の者まで様々な身長を有する運転手が着座する可能性があるため、これらの者が運転席に安楽姿勢で着座して適正に運転操作を行えるようにする必要がある。例えば、米国において運転席に着座する機会が最も多い平均身長者M(図4参照)の身長を、米人男性の平均値に基づいて173cmと設定し、この平均身長者Mの安楽姿勢を統計的に解析した結果、以下のようなデータが得られた。
【0033】
上記安楽姿勢とは、長期間に亘りその着座姿勢を維持可能でかつステアリングハンドル20や操作ペダルの操作に適した着座姿勢である。具体的には、図4に示すように、操作ペダルを操作する操作足の足首角度θ1が85°〜95°程度であり、膝角度θ2が115°〜135°程度であり、腰骨部から肩部までの上半身と大腿部との折曲角度θ3が約95°である。また、上記平均身長者Mの場合、水平線に対して大腿部がなす角度であるサイ角θ4の適正角度が、運転席のシートクッション(図示せず)の傾斜角度に約1.5°を加算した値であることが、人間工学的実験により確認されている。さらに、ステアリンハンドル20を適正に操作することができる肘角θ5は100°〜130°程度であり、脇角θ6は20°〜45°程度であり、かつアクセルペダル5を適正に操作することができる足裏角度、つまり水平線に対する足裏の傾斜角度θ7は約52°である。
【0034】
したがって、上記平均身長者Mが、例えば上記足首角度θ1を90°に、上記膝角度θ2を125°に、上記折曲角度θ3を95°に、上記サイ角θ4を17°にそれぞれ設定して運転席に着座した場合、平均身長者MのアイポイントImを、約8°の角度で前下がりに傾斜する適正ラインLに一致させることができるように、運転席のシートクッションの前後基準位置、上下基準位置及び基準傾斜角度が設定されている。この平均身長者Mの基準着座状態では、上記肘角θ5及び脇角θ6がそれぞれ上記範囲内に設定されてステアリングハンドル20を適正に把持することが可能であり、かつ上記操作足の踵Kmが予め設定された基準位置に載置された状態でアクセルペダル5の最適踏み込みポイント5aに操作足の拇指球部を、上記足裏傾斜角度θ7が適正角度(52°)になる状態で当接させることができるようになっている。
【0035】
尚、図4において、Hmは、運転席に着座した平均身長者Mのヒップポイント(着座基準点)である。また、平均身長者Mが操作足の踵Kmを載置する基準位置は傾斜踏面部11の後端位置に設定されている。
【0036】
上記運転席に着座する運転手が平均身長者Mから、図4の一点鎖線で示すように、女性等の低身長者Sに乗り換わった場合、この低身長者Sは、ステアリングハンドル20や操作ペダルの操作性を確保しつつ、アイポイントIsを上記適正ラインLに一致させ得るように、運転席のシートクッションを前方に移動させかつシートクッションの設置高さを上昇させ(シートクッションは前側へ移動するに連れてその設置高さが上昇するようになっている)、そして、水平線に対するシートクッションの傾斜角度を減少させる。
【0037】
例えば、150cmの身長を有する低身長者Sが運転席に着座した場合、低身長者Sは、そのヒップポイントHsが平均身長者MのヒップポイントHmに対して105mm程度前方でかつ25mm程度上方へ移動するようにシートクッションを前方へ移動させ、そして、サイ角θ4が10.5°程度になるようにシートクッションの傾斜角度を変化させる。この結果、平均身長者Mに比べて手の短い低身長者Sの上半身を前方へ移動させてステアリングハンドル20を適正状態で把持できるとともに、平均身長者Mに比べて座高の低い低身長者SのアイポイントIsを、前方かつ上方へ移動させることにより、適正ラインLに一致させることができる。
【0038】
また、上記シートクッションの前方かつ上方への移動に応じて低身長者Sの操作足が前方かつ上方へ移動する傾向があるため、低身長者Sは、これに対応させて上記膝角度θ2を130°程度に増大させることにより、足首角度θ1を90°に維持するとともに、足裏傾斜角度θ7を適正角度(52°)に近い角度に維持しつつ、低身長者Sの拇指球部をアクセルペダル5の最適踏み込みポイント5aに当接させることが可能になる。
【0039】
図5に示すように、低身長者Sの踵Ksから拇指球部までの距離(15.5cm程度)は、平均身長者Mの同距離(18cm程度)に比べて約2.5cm短いため、低身長者Sの足首角度θ1及び足裏傾斜角度θ7を上記角度に維持しつつ、操作足の拇指球部をアクセルペダル5の最適踏み込みポイント5aに当接させようとすると、踵Ksが平均身長者Mの踵Kmよりも約2cm(sin52°×2.5cm)だけ上方に位置させる必要がある。
【0040】
したがって、傾斜踏面部11の傾斜角を約52°とすれば(この傾斜踏面部11を図5に破線で示す)、低身長者Sが操作足の踵Ksを傾斜踏面部11上に載置しつつ、その操作足の拇指球部をアクセルペダル5の最適踏み込みポイント5aに正確に当接させることができる(このときの低身長者Sの操作足を図5に一点鎖線で示す)。しかし、傾斜踏面部11の傾斜角を52°程度と大きな値に設定した場合には、踵Ksの滑りを生じ易いので、その載置状態を安定させることが困難である。
【0041】
このため、本実施形態では、傾斜踏面部11の傾斜角度αを13.5°〜23.5°の範囲内(例えば18.5°)としている。これにより、図5に実線で示すように、低身長者Sが足裏傾斜角度θ7を適正角度(52°)から6°程度増大させて約58°にすることにより、操作足の踵Ksを傾斜踏面部11に載置した状態で、その拇指球部をアクセルペダル5の最適踏み込みポイント5aに当接させることができるようになっている。
【0042】
尚、上記足裏傾斜角度θ7を52°から58°に変化させるのに対応して操作足の足首角度θ1が90°よりも小さくなる傾向にあるが、足裏傾斜角度θ7の増大に対応して低身長者Sの膝角度θ2を130°よりも大きくして膝を伸ばし気味にすることにより、足首角度θ1が適正範囲よりも小さくなる(85°よりも小さくなる)ことを防止することができる。さらに、操作足の拇指球部をアクセルペダル5の最適踏み込みポイント5aよりもやや下方に位置させるようにすれば、足首角度θ1の変化をより効果的に抑制することができる。
【0043】
一方、図6に示すように、例えば186cmの身長を有する高身長者Tが運転席に着座した場合、高身長者Tは、そのヒップポイントHtが平均身長者MのヒップポイントHmに対して85mm程度後方でかつ20mm程度下方へ移動するようにシートクッションを後方へ移動させ、サイ角θ4が20°程度になるようにシートクッションの傾斜角度を変化させる。この結果、平均身長者Mに比べて手の長い高身長者Tの上半身を後方へ移動させてステアリングハンドル20を適正状態で把持できるとともに、平均身長者Mに比べて座高の高い高身長者TのアイポイントItを、後方かつ下方へ移動させることにより、適正ラインLに一致させることができる。
【0044】
また、上記シートクッションの後方かつ下方への移動に応じて高身長者Tの操作足が後方かつ下方へ移動する傾向があるため、高身長者Tは、これに対応させて上記膝角度θ2を120°程度に減少させることにより、足首角度θ1を90°に維持するとともに、足裏傾斜角度θ7を適正角度(52°)に近い角度に維持しつつ、高身長者Tの拇指球部をアクセルペダル5の最適踏み込みポイント5aに当接させることが可能になる。
【0045】
尚、図7に示すように、高身長者Tの踵Ktから拇指球部までの距離(19.5cm程度)は、平均身長者Mの同距離(18cm程度)に比べて約1.5cm長いため、高身長者Tの足首角度θ1及び足裏傾斜角度θ7を上記角度に維持しつつ、操作足の拇指球部をアクセルペダル5の最適踏み込みポイント5aに当接させようとすると、踵Ktが平均身長者Mの踵Kmよりも約1.2cm(sin52°×1.5cm)だけ下方に位置させる必要がある(このときの高身長者Tの操作足を図7に一点鎖線で示す)。しかし、図7に実線で示すように、高身長者Tの足裏傾斜角度θ7を適正角度(52°)から4°程度減少させて約48°にすることにより、高身長者Tの踵Ksを、傾斜踏面部11後方の水平な踵載置領域に載置した状態で、操作足の拇指球部をアクセルペダル5の最適踏み込みポイント5aに当接させることが可能である。
【0046】
また、足裏傾斜角度θ7を52°から48°に変化させるのに対応して操作足の足首角度θ1が90°よりも大きくなる傾向にあるが、足裏傾斜角度θ7の減少に対応して高身長者Tの膝角度θ2を120°よりも小さくして膝を曲げ気味にすることにより、足首角度θ1が適正範囲よりも大きくなる(95°よりも大きくなる)ことを防止することができる。さらに、操作足の拇指球部をアクセルペダル5の最適踏み込みポイント5aよりもやや上方に位置させるようにすれば、足首角度θ1の変化をより効果的に抑制することができる。
【0047】
尚、ブレーキペダル5の操作性もアクセルペダル6と同様であり、上記のようにしてアクセルペダル5の操作の適正化が図れれば、ブレーキペダル5の操作の適正化も図れることになる。
【0048】
上記踵載置領域には、上記のように傾斜踏面部11が足置部材22によって形成されており、上記フロアマット1は、該フロアマット1の前端部が傾斜踏面部11の下側に位置するように敷設されている。
【0049】
上記足置部材22の前端は、ヒンジ部材31を介してフロアパネル2に固定されている(車両マット4ではなく直接フロアパネル2に固定されている)。このヒンジ部材31は、車幅方向に延びるヒンジ軸31aを有し、ヒンジ部材31においてヒンジ軸31aよりも前側部分に位置する前側部31bと、ヒンジ軸31aよりも後側に位置する後側部31cとが、ヒンジ軸31a周りに回動可能になっている。そして、前側部31bがフロアパネル2に固定され、後側部31cに足置部材22の前端部が取付固定されており、このことで、足置部材22全体がヒンジ軸31a周りに回動可能になっている。
【0050】
上記足置部材22の下部には、フロアマット1上面に当接する当接部材23が設けられている。本実施形態では、当接部材23は、足置部材22に一体形成されたものであって、足置部材22の下面における後端部及び左右両側端部に設けられている。そして、上記足置部材22は、当接部材23が上記フロアマット1上面を押圧することでフロアマット1をフロアパネル2に固定する第1形態と、当接部材23とフロアマット1上面との間に間隙が形成される第2形態とに切り換え可能に構成されている。また、足置部材23は、上記第1及び第2形態に加えて、フロアマット1がフロアパネル2上面に敷設されていない状態では、当接部材23がフロアパネル2上面に当接する第3形態に切り換え可能に構成されている。すなわち、フロアパネル2上にフロアマット1が敷設されている場合には、当接部材23の下面がフロアマット1上面に当接する一方、フロアパネル2上にフロアマット1が敷設されていない場合には、足置部材22全体のヒンジ軸31a周りの回動によって、図3に示すように、当接部材23の下面がフロアパネル2上面(車両マット4)に当接するようになっている。また、フロアマット1が敷設されている場合には、当接部材23がフロアパネル2上面に当接した状態から、足置部材22全体のヒンジ軸31a周りの回動によって、当接部材23を上昇させることで、当接部材23とフロアマット1上面との間に間隙が形成されるようになる。尚、足置部材22の下面における上記当接部材23が設けられていない部分は、足置部材22の上面に沿った形状をなしていて、フロアマット1との間に空間が形成されている。
【0051】
本実施形態では、上記ヒンジ軸31aの周囲には、図示省略のねじりコイルスプリングが設けられており、このねじりコイルスプリングによって、ヒンジ部材31の後側部31c、つまり足置部材22及び当接部材23がヒンジ軸31a周りに、図2で時計回り方向に付勢されている。このねじりコイルスプリングの付勢力によって、当接部材23がフロアマット1上面を押圧してフロアマット1をフロアパネル2に固定する。尚、上記ねじりコイルスプリングは必ずしも必要ではなく、ねじりコイルスプリングがなくても、足置部材22及び当接部材23の重量が大きい場合には、その自重で回動して、当接部材23がフロアマット1上面を押圧する。
【0052】
また、本実施形態では、足置部材22の下面における上記当接部材23が設けられていない部分に、係合部13が下側に突出するように形成されている。この係合部13は、フロアマット1に形成された差込口1aから差し込まれて、その下側におけるフロアパネル2上に固定した筒状部材41の中心部に上下に延びるように形成された係合孔41aに係合される。これにより、フロアマット1が車両前後方向等に移動するを防止するようにしている。この係合部13は、差込口1aからの差し込み及び引き抜き並びに係合孔41aとの係合及び係合解除を容易にすべく、足置部材22の下面に所定の可撓性を有するように形成されている。
【0053】
尚、上記係合部13をフロアマット1の差込口1aを介して筒状部材41の係合孔41aに係合する構成は必ずしも必要でなく、上記ねじりコイルスプリングの付勢力を調整することで、当接部材23の上記押圧により、フロアマット1の移動を防止するようにすることは可能である。
【0054】
上記フロアマット1は、上記操作ペダル後方における該フロアマット1後端部にて、上記フロアパネル2(車両マット4)に固定されている。この固定には、スナップボタン18(図1及び図2参照)が用いられている。すなわち、フロアマット1の下面(ゴム状基材の下面)には、スナップボタン18の雄ボタン18aが取付固定され、車両マット4の上面(基材の上面)には、スナップボタン18の雌ボタン18bが取付固定されており(車両マット4の基材における雌ボタンが取付固定された部分には起毛層が取り除かれている)、上記雄ボタン18aと雌ボタン18bとの嵌合によりフロアマット1が車両マット4に着脱自在に固定されるようになっている。尚、スナップボタン18に限らず、種々の変形が可能であり、例えば、直線状に延びる雄部と雌部とを嵌合させるものであってもよく、フロアマット1の下面に設けたピンを、車両マット4及びインシュレータ3を貫通して、フロアパネル2に設けた孔に嵌合させるものであってもよい。要するに、フロアマット1をフロアパネル2(車両マット4)に着脱自在に固定することができればよい。また、フロアマット1後端部の上記固定は必ずしも必要なものではない。
【0055】
上記フロアマット1を取り外すには、足置部材22及び当接部材23をヒンジ軸31a周りに、ねじりコイルスプリングの付勢力に抗して図2で反時計回り方向に回動させることで足置部材22を第2形態とし(図2の二点鎖線を参照)、これにより、係合部13を筒状部材41の係合孔41a及びフロアマット1の差込口1aから引き抜き、こうして係合部13をフロアマット1の差込口1aから引き抜いた後、フロアマット1の前端部を後側へずらす。また、フロアマット1後端部におけるスナップボタン18による固定を解除する。そして、フロアマット1を持ち上げれば、フロアパネル2上(車両マット4上)から取り外すことができる。このようにフロアマット1を取り外した後、足置部材22及び当接部材23をヒンジ軸31a周りに、ねじりコイルスプリングの付勢力により図2で時計回り方向に回動させれば、当接部材23がフロアパネル2上(車両マット4上)に当接することになる。フロアマット1を敷設しない車種では、この状態と同じになる。
【0056】
一方、フロアマット1を敷設するには、先ず、フロアマット1後端部をスナップボタン18により固定する。続いて、足置部材22及び当接部材23をヒンジ軸31a周りに、ねじりコイルスプリングの付勢力に抗して図2で反時計回り方向に回動させた状態で、フロアマット1を敷設する。このとき、上記スナップボタン18による固定によりフロアマット1がフロアパネル2に対して位置決めされるので、フロアマット1の敷設により、上記差込口1aが係合孔41a上に自然に位置することになり、フロアマット1の敷設が容易である。その後、足置部材22及び当接部材23をヒンジ軸31a周りに、ねじりコイルスプリングの付勢力により図2で時計回り方向に回動させて、当接部材23をフロアマット1上に当接させる。こうしてフロアマット1の敷設が完了する。尚、スナップボタン18による固定はフロアマット1の敷設の最後であってもよい。
【0057】
したがって、本実施形態では、足置部材22をフロアパネル2とは別体で設けて、この足置部材22に傾斜踏面部11を形成するようにしたので、車種変更等に伴ってアクセルペダル5の位置変更等の設計変更があっても、フロアパネル2自体を変更することなく、ヒンジ部材31や足置部材22を変更するだけで容易に対応することができる。
【0058】
そして、フロアマット1を、その前端部が傾斜踏面部11の下側に位置するように敷設し、足置部材22の下部に、フロアマット1上面に当接する当接部材23を設け、足置部材22を、当接部材23がフロアマット1上面を押圧することでフロアマット1をフロアパネル2に固定する第1形態と、当接部材23とフロアマット1上面との間に間隙が形成される第2形態とに切り換え可能に構成したことにより、傾斜踏面部11から落下したゴミをフロアマット1で確実に受けることができるようになるとともに、足置部材22の第1形態では、当接部材23がフロアマット1上面を押圧するので、フロアマット1の車両前後方向等への位置ずれを抑制することができる。また、フロアマット1の取付け及び取外しの際には、足置部材22を第1形態から第2形態に切り換えることで、取付け及び取外しの作業が容易になる。
【0059】
さらに、フロアマット1が敷設されていない場合には、足置部材22が第3形態に切り換えられて、当接部材23がフロアパネル2上面に当接するので、フロアマット1がなくても、足置部材22(当接部材23)とフロアパネル2(車両マット4)との間に、そのフロアマット1の厚みに相当する隙間が生じるようなことはなくて、フロアマット1の非敷設時の見栄えを向上させることができる。
【0060】
(実施形態2)
図8は、本発明の実施形態2を示し(尚、以下の各実施形態では、図1及び図2と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する)、足置部材22及び当接部材23の構成を上記実施形態1とは異ならせたものである。
【0061】
すなわち、本実施形態では、足置部材22と当接部材23とが別部材で構成されており、足置部材22は、アクセルペダル取付基部25の後端部に車幅方向に延びる軸22a周りに回動可能に取り付けられ、当接部材23は、足置部材22における傾斜踏面部11の後端部に車幅方向に延びる軸23a周りに回動可能に取り付けられている。そして、当接部材23は、フロアマット1が敷設されている場合における足置部材22の第1形態において、傾斜踏面部11(足置部材22)の下方位置にてフロアマット1上面に沿って水平に延びた状態にあり、この状態で当接部材23の下面がフロアマット1上面を押圧する。
【0062】
また、当接部材23は、フロアマット1が敷設されていない場合における足置部材22の第3形態において、図9及び図10に示すように、傾斜踏面部11の延長上に延びた状態(足置部材22の上面(傾斜踏面部11)と当接部材23の上面とが同一面上に位置する状態)にあり、この状態で当接部材23における足置部材22と反対側の端部がフロアパネル2上面に当接する。尚、当接部材23の長さは、フロアマット1の有無に関係なく傾斜踏面部11の傾斜角度αが一定になるような長さ(フロアマットの厚み/sinα)に設定されている。
【0063】
上記足置部材22は、傾斜踏面部11の後端部がフロアマット1側に移動するように(軸22a周りに図8で時計回り方向に回動するように)、不図示のねじりコイルスプリングにより付勢されている。一方、上記当接部材23は、軸23a周りに図8で反時計回り方向に回動するように(当接部材23がフロアマット1上面に当接するように)、不図示のねじりコイルスプリングにより付勢されている。この当接部材23の反時計回り方向の回動は、傾斜踏面部11の延長上に延びた状態で止まるようにストッパが設けられている。これら足置部材22及び当接部材23の付勢により、足置部材22の第1形態において、当接部材23がフロアマット1上面を押圧するとともに、当接部材23がフロアマット1上面を押圧してフロアマット1の移動を防止するようにしている。尚、本実施形態では、上記実施形態1のような係合部13が足置部材22に設けられていないが、係合部13を設けるようにしてもよい。
【0064】
本実施形態においても、上記実施形態1と同様に、フロアマット1は、スナップボタン18により、操作ペダル後方における該フロアマット1後端部にて、フロアパネル2(車両マット4)に固定されているが、固定しないようにしてもよい。
【0065】
上記フロアマット1を取り外すには、足置部材22を、上記付勢力に抗して軸22a周りに図8で反時計回り方向に回動させる。これにより、当接部材23は、フロアマット1上面との間に間隙が形成される状態となる(足置部材22が第2形態となる(図8の二点鎖線を参照))とともに、上記ねじりコイルスプリングにより図8で反時計回り方向に回動して、傾斜踏面部11の延長上に延びかつ当接部材23とフロアマット1上面との間に間隙が形成された状態となる。この状態で、フロアマット1の前端部を後側へずらす。また、フロアマット1後端部におけるスナップボタン18による固定を解除する。そして、フロアマット1を持ち上げれば、フロアパネル2上(車両マット4上)から取り外すことができる。このようにフロアマット1を取り外した後、足置部材22から手を離せば、足置部材22は図9及び図10の状態(フロアマット1を敷設しない場合と同じ状態)となる。尚、尚、図10中、7はクラッチペダル、8は運転手の左足(操作足とは反対側の足)を置くためのフットレストである。
【0066】
一方、フロアマット1を敷設するには、先ず、フロアマット1後端部をスナップボタン18により固定する。続いて、足置部材22を、上記付勢力に抗して軸22a周りに図9で反時計回り方向に回動させる。この後、当接部材23を付勢力に抗して図9で時計回り方向に回動させ、足置部材22の下側に位置させる。この状態を維持して、フロアマット1を、その前端部が足置部材22の下側に位置するように敷設し、その後、足置部材22を軸22a周りに図9で時計回り方向に回動させて、当接部材23をフロアマット1上に当接させる。こうしてフロアマット1の敷設が完了する。
【0067】
したがって、本実施形態では、フロアマット1を、その前端部が足置部材22の傾斜踏面部11の下側に位置するように敷設し、足置部材22を、アクセルペダル取付基部25の後端部に車幅方向に延びる軸22a周りに回動可能に取り付け、当接部材23を、足置部材22における傾斜踏面部11の後端部に車幅方向に延びる軸23a周りに回動可能に取り付け、当接部材23を、足置部材22の第1形態においては、傾斜踏面部11の下方位置にてフロアマット1上面に沿って延びた状態で当接部材23の下面がフロアマット1上面を押圧する一方、足置部材22の第3形態においては、傾斜踏面部11の延長上に延びた状態で当接部材23における足置部材22と反対側の端部がフロアパネル2上面に当接するように構成したので、上記実施形態1と同様に、傾斜踏面部11から落下したゴミをフロアマット1で確実に受けるようにすることができるとともに、足置部材22を第1形態から第2形態に切り換えることで、フロアマット1の取付け及び取外しの作業が容易になる。また、フロアマット1が敷設されている場合には、当接部材23は、運転手の操作ペダルの操作の邪魔にならない位置にあるとともに、運転手から見えず、見栄えを向上させることができる一方、フロアマット1を敷設されていない場合には、当接部材23は、傾斜踏面部11の延長上に位置して、運転手から見えても違和感を生じないようにし、また、当接部材23の上面を傾斜踏面部11として機能させることができる。
【0068】
さらに、本実施形態では、フロアマット1の有無に関係なく、傾斜踏面部11の傾斜角度が変化しないので、ドライビングポジションの適正化を確実に図ることができる。ここで、上記実施形態1の場合には、フロアマット1の厚みの分だけ、フロアマット1の有無に応じて、傾斜踏面部11の傾斜角度が変化するが、フロアマット1の厚みは小さいので、傾斜角度の変化量は小さく、よって、ドライビングポジションの適正化を十分に図ることが可能である。
【0069】
尚、上記実施形態2では、フロアマット1が敷設されている場合に、当接部材23が傾斜踏面部11の下方(軸23aの前側)に位置するようにしたが、軸23aの後側に位置するようにしてもよい。この場合、当接部材23の上面に運転手(高身長者T)の踵が載置されることになる。この当接部材23の付勢方向は、上記実施形態2とは逆になる。また、この当接部材23が回動しさえすれば、足置部材22は必ずしも回動する必要はなくなる。このように足置部材22が回動しない場合には、フロアマット1の敷設の際に、当接部材23を持ち上げた状態(足置部材22の第2形態)でフロアマット1の前端部を足置部材22の下側へ差し込むようにすればよい。
【0070】
(実施形態3)
図11及び図12は、本発明の実施形態3を示し、足置部材22及び当接部材23の構成を上記実施形態1及び2とは異ならせたものであり、足置部材22及び当接部材23が回動しない構成としたものである。尚、本実施形態においても、上記実施形態2と同様に、アクセルペダル5及びブレーキペダル6に加えて、クラッチペダル7とフットレスト8とが設けられている。
【0071】
すなわち、本実施形態では、足置部材22の下面における前端部の左右両側側部に、第1係合部35が下側に突出するようにそれぞれ形成されている。この各第1係合部35は、車両マット4及びインシュレータ3を貫通して、その下側におけるフロアパネル2上に固定した第1筒状部材42の中心部に上下に延びるように形成された係合孔42aにそれぞれ係合される。また、足置部材22における後端部の左右両側側部には、第2係合部36が下側に突出するようにそれぞれ形成されている。この各第2係合部36は、フロアマット1に形成された貫通孔1bから差し込まれて、その下側におけるフロアパネル2上に固定した第2筒状部材43の中心部に上下に延びるように形成された係合孔43aにそれぞれ係合される。第1係合部35と係合孔42aとの係合及び第2係合部36と係合孔43aとの係合は、例えば圧入嵌合により行われ、足置部材22がフロアパネル2から容易に外れないようにする。そして、これら係合時に、足置部材22の下面における後端部をフロアマット1に当接させてフロアマット1上面に押し付けるようにする(足置部材22の第1形態)。つまり、足置部材22の下面における後端部に当接部材23が一体形成されており、この当接部材23がフロアマット1上面を押圧することで、フロアマット1が車両前後方向等に移動するのを防止する。
【0072】
上記フロアマット1を取り外すには、足置部材22の下面における後端部(当接部材23)を持ち上げることで、足置部材22を撓ませて第2形態として、第2係合部36を第2筒状部材43の係合孔43a及び貫通孔1bから引き抜き、この後、フロアマット1の前端部を後側へずらす。また、フロアマット1後端部におけるスナップボタン18による固定を解除する。そして、フロアマット1を持ち上げれば、フロアパネル2上(車両マット4上)から取り外すことができる。このようにフロアマット1を取り外した後、第2係合部36を係合孔43aに係合させる。このときには、図13に示すように、足置部材22を撓ませて、当接部材23が車両マット4上面を押圧するように第2係合部36を係合孔43aに押し込むようにする(足置部材22の第3形態)。尚、フロアマット1を敷設するには、上記取り外し作業とは逆に行えばよい。
【0073】
本実施形態においても、上記実施形態1及び2と同様に、フロアマット1は、スナップボタン18により、操作ペダル後方における該フロアマット1後端部にて、フロアパネル2(車両マット4)に固定されているが、固定しないようにしてもよい。
【0074】
したがって、本実施形態においても、上記実施形態1と同様に、傾斜踏面部11から落下したゴミをフロアマット1で確実に受けるようにすることができるとともに、足置部材22を第1形態から第2形態に切り換えることで、フロアマット1の取付け及び取外しの作業が容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、車両の運転席足元のフロアパネル上面を覆うように敷設された車両用フロアマットの敷設構造として、踵載置領域に前方に向かって高くなる傾斜踏面部が形成されている場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施形態1に係る車両用フロアマット敷設構造が適用された運転席足元を示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】車両用フロアマットが敷設されていない状態における図2相当図である。
【図4】平均身長者及び低身長者の着座状態を示す側面図である。
【図5】平均身長者及び低身長者の踵載置状態を示す側面図である。
【図6】高身長者及び平均身長者の着座状態を示す側面図である。
【図7】高身長者の踵載置状態を示す側面図である。
【図8】実施形態2に係る車両用フロアマット敷設構造が適用された運転席足元を示す、アクセルペダル取付基部の側方で車両前後方向に沿って切断した断面図である。
【図9】車両用フロアマットが敷設されていない状態における図8相当図(図10のIX−IX線断面図)である。
【図10】図9に対応する運転席足元を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施形態3に係る車両用フロアマット敷設構造が適用された運転席足元を示す斜視図である。
【図12】図11のXII−XII線断面図である。
【図13】車両用フロアマットが敷設されていない状態における図12相当図である。
【符号の説明】
【0077】
1 車両用フロアマット
2 フロアパネル
5 アクセルペダル(操作ペダル)
6 ブレーキペダル(操作ペダル)
11 傾斜踏面部
22 足置部材
23 当接部材
31 ヒンジ部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転席足元のフロアパネル上面を覆うように敷設された車両用フロアマットの敷設構造に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、女性や老人でも当たり前のように車両を運転するようになってきており、この結果、様々な体格の人が運転する状況にある。一方、近年の車両においては、上記の様々な体格の人が運転することを想定してはいるものの、ドライビングポジションについて詳細に議論されてはおらず、様々な体格の人についてドライビングポジションの適正化が図られているとは到底いえるものではない。ここで、ドライビングポジションは、基本的に、3つの要件、つまり、ボンネットに対するアイポイントの位置、運転手の足の付け根から操作ペダル(アクセルペダルやブレーキペダル)までの距離(つまり足の関節の角度)、及び、運転手の身体からステアリングハンドルまでの距離、で定義されるものである。特に女性や老人といった比較的小柄な運転手にとって上記3つの要件を全て満たすようなポジションは未だ確立されておらず、いずれかの要件が満たされない状況で運転しているのが現状である。
【0003】
そこで、本出願人は、様々な体格の運転者のドライビングポジションの適正化を図るべく、フロアパネルにおいて運転手の踵が載置される踵載置領域に、前方に向かって高くなる傾斜踏面部を設けることを提案した特許出願を既に行っている(特願2008−053870号)。
【0004】
一方、運転席足元のフロアパネル上面には、該上面の汚れの防止や見栄え向上の観点からフロアマットが敷設されることはよく知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−90831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようにフロアパネルの踵載置領域に傾斜踏面部を設ける場合、傾斜踏面部をフロアパネルに直接設けると、傾斜踏面部の僅かな変更でもフロアパネル全体を変更しなければならなくなる。すなわち、アクセルペダルの位置変更等の設計変更によって、傾斜踏面部の傾斜角度や形状等を変更する必要が生じるが、フロアパネル自体は出来る限り変更しない方が好ましい。
【0006】
そこで、傾斜踏面部を、フロアパネルとは別個の足置部材で構成することが考えられる。この場合、フロアマットの前端を足置部材に沿うようにすると、傾斜踏面部から落下した砂利等のゴミがフロアマットと傾斜踏面部との間の隙間に入り込んでそのゴミをフロアマットで受けることができなくなる。また、フロアマットの位置ずれ等によって上記隙間が大きくなる場合があり、このようになると、該隙間にゴミがより一層溜まり易くなるとともに、見栄えも悪化する。一方、フロアマットの前端を足置部材の下側に配置すると、ゴミをフロアマットで受けることができるものの、フロアマットが足置部材の下側にあることで、フロアマットを取り出す際や取り付ける際にその作業が面倒になるという問題がある。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、フロアパネルの踵載置領域に設けられた傾斜踏面部を、フロアパネルとは別体の足置部材で構成する場合に、傾斜踏面部から落下したゴミをフロアマットで確実に受けるようにしつつ、フロアマットの取付け及び取外しを容易にできるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明では、フロアパネルとは別体の足置部材の下部に、フロアマット上面に当接する当接部材を設け、その足置部材を、上記当接部材が上記フロアマット上面を押圧することでフロアマットをフロアパネルに固定する第1形態と、上記当接部材と上記フロアマット上面との間に間隙が形成される第2形態とに切り換え可能に構成した。
【0009】
具体的には、請求項1の発明では、車両の運転席足元のフロアパネル上面を覆うように敷設された車両用フロアマットの敷設構造を対象とする。
【0010】
そして、上記フロアパネルにおいて上記運転席に着座した運転手が操作ペダルを踏み込み操作する際に該運転手の踵が載置される踵載置領域に、前方に向かって高くなる傾斜踏面部を有する足置部材が該フロアパネルとは別体で設けられ、上記足置部材の下部には、上記フロアマット上面に当接する当接部材が設けられ、上記足置部材は、上記当接部材が上記フロアマット上面を押圧することで該フロアマットを上記フロアパネルに固定する第1形態と、上記当接部材と上記フロアマット上面との間に間隙が形成される第2形態とに切り換え可能に構成されているものとする。
【0011】
上記の構成により、フロアマットを敷設する場合には、フロアマットが足置部材の下側に位置することになるので、傾斜踏面部から落下したゴミをフロアマットで確実に受けることができるようになる。また、足置部材の第1形態では、当接部材がフロアマット上面を押圧するので、フロアマットの車両前後方向等への位置ずれを抑制することができる。そして、フロアマットの取付け及び取外しの際には、足置部材を第1形態から第2形態に切り換えることで、取付け及び取外しの作業が容易になる。
【0012】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、上記当接部材は、車幅方向に延びる軸周りに回動可能に構成されていて、スプリングにより上記フロアマット上面に押圧されるようになっているものとする。
【0013】
このことにより、スプリングの付勢力を調整することで、当接部材がフロアマット上面を押圧してフロアマットをフロアパネルに固定するようにすることができる。また、当接部材が車幅方向に延びる軸周りに回動可能に構成されていることで、第1形態と第2形態との切り換えが容易にできるようになるとともに、フロアマットの厚みが複数種類あって、それらのうちのどのフロアマットが敷設されても、当接部材がフロアマット上面を押圧するようにすることができ、しかも、足置部材とフロアマットとの間に隙間が生じるのを防止することができる。
【0014】
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明において、上記足置部材は、上記第1及び第2形態に加えて、上記フロアマットが上記フロアパネル上面に敷設されていない状態では、上記当接部材が該フロアパネル上面に当接する第3形態に切り換え可能に構成されているものとする。
【0015】
このことで、フロアマットが敷設されていない場合には、足置部材が第3形態に切り換えられて、当接部材がフロアパネル上面に当接するので、フロアマットがなくても、足置部材とフロアパネルとの間に、そのフロアマットの厚みに相当する隙間が生じるようなことはない。よって、フロアマットの非敷設時の見栄えを向上させることができる。
【0016】
請求項4の発明では、請求項1〜3のいずれか1つの発明において、上記フロアマットは、上記操作ペダル後方における該フロアマット後端部にて、上記フロアパネルに固定されているものとする。
【0017】
すなわち、フロアマットは、通常、水平に敷設されるので、運転手の踵等から前方へ向かう荷重を受け易くて、前方へずれ易くなる。しかし、本発明では、フロアマットが、操作ペダル後方における該フロアマット後端部にてフロアパネルに固定されているので、上記ずれを防止することができる。また、当接部材がフロアマット上面を押圧するので、フロアマットをその前後で固定して、フロアマットの前後方向中間部が上側に撓むのを防止することもできるようになる。
【0018】
請求項5の発明では、請求項1〜4のいずれか1つの発明において、上記当接部材は、上記足置部材における傾斜踏面部の後端部に車幅方向に延びる軸周りに回動可能に取り付けられているものとする。
【0019】
このことにより、当接部材の回動により、第1形態と第2形態との切り換えが容易にできるようになるとともに、フロアマットの厚みが複数種類あって、そられのうちのどのフロアマットが敷設されても、当接部材がフロアマット上面を押圧するようにすることができ、しかも、足置部材とフロアマットとの間に隙間が生じるのを防止することができる。また、当接部材が回動しても、傾斜踏面部の傾斜角度を変化させないようにすることができ、どのフロアマットが敷設されても、傾斜踏面部の傾斜角度を一定に維持することができ、ドライビングポジションの適正化を確実に図ることができる。
【0020】
請求項6の発明では、請求項3の発明において、上記当接部材は、上記足置部材における傾斜踏面部の後端部に車幅方向に延びる軸周りに回動可能に取り付けられていて、上記足置部材の第1形態においては、上記傾斜踏面部の下方位置にて上記フロアマット上面に沿って延びた状態で該当接部材の下面が該フロアマット上面を押圧する一方、上記足置部材の第3形態においては、上記傾斜踏面部の延長上に延びた状態で該当接部材における上記足置部材と反対側の端部が該フロアパネル上面に当接するように構成されているものとする。
【0021】
このことで、フロアマットを敷設する場合には、当接部材は、運転手の操作ペダルの操作の邪魔にならない位置にあるとともに、運転手から見えず、見栄えをより一層向上させることができる。一方、フロアマットを敷設しない場合には、足置部材を第3形態にすることで、当接部材が傾斜踏面部の延長上に位置することになり、運転手から見えても違和感はなく、また、当接部材を傾斜踏面部として機能させることができる。さらに、請求項5の発明と同様に、当接部材が回動しても、傾斜踏面部の傾斜角度を変化させないようにすることができ、フロアマットの有無に関係なく、ドライビングポジションの適正化を確実に図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明の車両用フロアマットによると、足置部材の下部に、フロアマット上面に当接する当接部材を設け、その足置部材を、上記当接部材が上記フロアマット上面を押圧することでフロアマットをフロアパネルに固定する第1形態と、上記当接部材と上記フロアマット上面との間に間隙が形成される第2形態とに切り換え可能に構成したことにより、傾斜踏面部から落下したゴミをフロアマットで確実に受けるようにしつつ、フロアマットの取付け及び取外しが容易にできるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る車両用フロアマット敷設構造が適用された運転席足元を示し、この車両用フロアマット1は、運転席足元(該運転席に着座した運転手の足元)のフロアパネル2(図2参照)上面を覆うように敷設されている。尚、このフロアマット1は、詳細な図示は省略するが、ゴムからなる基材とこの基材上に設けられた起毛層とからなる一般的なものである。
【0025】
図1において、5はいわゆるオルガン式のアクセルペダル、6はブレーキペダルである。本実施形態では、アクセルペダル5及びブレーキペダル6(特にアクセルペダル5)を本発明の操作ペダルと捉えている。この操作ペダルは上記運転手の右足で操作されるので、該右足を操作足という。
【0026】
上記アクセルペダル5の後端部は、該アクセルペダル5をフロアパネル2に支持するためのアクセルペダル取付基部25上に、車幅方向に延びる軸周りに回動自在に支持されている。このアクセルペダル取付基部25は、フロアパネル2に固定されている。
【0027】
上記フロアマット1は、運転席のシートクッション前端部の下方位置から、アクセルペダル取付基部25の直ぐ後方位置ないしブレーキペダル6の下方位置まで車両前後方向に延びている。このフロアマット1の前端(車幅方向においてアクセルペダル5側(車両右側)の前端)は、アクセルペダル取付基部25の周縁(後縁及び車両左側側縁)に沿った形状をなしている。
【0028】
図2に示すように、上記フロアパネル2上面には、インシュレータ3を介して車両マット4が固着されており、車両マット4の上面を、実質的には、フロアパネル2の上面と見做すことができる。そして、フロアマット1は、この車両マット4上に敷設されることになる。尚、この車両マット4も、フロアマット1と同様に、基材とこの基材上に設けられた起毛層とからなる。
【0029】
上記フロアパネル2(車両マット4)において上記運転手がアクセルペダル5又はブレーキペダル6を操作足で踏み込み操作する際に該運転手の操作足の踵が載置される踵載置領域に、前方に向かって高くなる傾斜踏面部11を有する足置部材22がフロアパネル2とは別体で設けられている。この傾斜踏面部11の前後における踵載置領域は、水平に形成されている。
【0030】
上記踵載置領域は、アクセルペダル5又はブレーキペダル6の操作時に運転手の操作足の踵が載置される可能性がある全ての部分をいう。踵載置領域の車両前後方向の範囲は、例えば図2に示すような範囲となり、踵載置領域の前端は、操作ペダルの後端(車両後側端)の下方に位置し、踵載置領域の後端は、後述の高身長者の踵が載置される部分の最も後側に位置する。また、踵載置領域の車幅方向の範囲は、図1に示す傾斜踏面部11の車幅方向の範囲と略同じである。
【0031】
上記傾斜踏面部11は、様々な体格の運転者のドライビングポジションの適正化を図るために設けたものである。すなわち、運転席に着座する運転手が身長の異なる者に乗り換わると、その身長に略比例して運転手の座高、腕の長さ及び足の長さ等が変化するため、これに対応して運転手のアイポイント、及び、ステアリングハンドル20(図4参照)や操作ペダルに対する操作性も変化する。したがって、新たに運転席に着座した運転手は、安楽姿勢を維持しつつ、ステアリングハンドル20を適正状態で把持するとともに、アクセルペダル5の所定の最適踏み込みポイント5aに操作足の拇指球部(最も踏み込み易い部分)を適正状態で当接させ、かつアイポイントを適正ラインL(図4参照)に一致させて前方視界を適正に確保できるように、運転席の前後位置等を調整しようとする。
【0032】
上記運転席には、身長が150cm未満の者から186cm以上の者まで様々な身長を有する運転手が着座する可能性があるため、これらの者が運転席に安楽姿勢で着座して適正に運転操作を行えるようにする必要がある。例えば、米国において運転席に着座する機会が最も多い平均身長者M(図4参照)の身長を、米人男性の平均値に基づいて173cmと設定し、この平均身長者Mの安楽姿勢を統計的に解析した結果、以下のようなデータが得られた。
【0033】
上記安楽姿勢とは、長期間に亘りその着座姿勢を維持可能でかつステアリングハンドル20や操作ペダルの操作に適した着座姿勢である。具体的には、図4に示すように、操作ペダルを操作する操作足の足首角度θ1が85°〜95°程度であり、膝角度θ2が115°〜135°程度であり、腰骨部から肩部までの上半身と大腿部との折曲角度θ3が約95°である。また、上記平均身長者Mの場合、水平線に対して大腿部がなす角度であるサイ角θ4の適正角度が、運転席のシートクッション(図示せず)の傾斜角度に約1.5°を加算した値であることが、人間工学的実験により確認されている。さらに、ステアリンハンドル20を適正に操作することができる肘角θ5は100°〜130°程度であり、脇角θ6は20°〜45°程度であり、かつアクセルペダル5を適正に操作することができる足裏角度、つまり水平線に対する足裏の傾斜角度θ7は約52°である。
【0034】
したがって、上記平均身長者Mが、例えば上記足首角度θ1を90°に、上記膝角度θ2を125°に、上記折曲角度θ3を95°に、上記サイ角θ4を17°にそれぞれ設定して運転席に着座した場合、平均身長者MのアイポイントImを、約8°の角度で前下がりに傾斜する適正ラインLに一致させることができるように、運転席のシートクッションの前後基準位置、上下基準位置及び基準傾斜角度が設定されている。この平均身長者Mの基準着座状態では、上記肘角θ5及び脇角θ6がそれぞれ上記範囲内に設定されてステアリングハンドル20を適正に把持することが可能であり、かつ上記操作足の踵Kmが予め設定された基準位置に載置された状態でアクセルペダル5の最適踏み込みポイント5aに操作足の拇指球部を、上記足裏傾斜角度θ7が適正角度(52°)になる状態で当接させることができるようになっている。
【0035】
尚、図4において、Hmは、運転席に着座した平均身長者Mのヒップポイント(着座基準点)である。また、平均身長者Mが操作足の踵Kmを載置する基準位置は傾斜踏面部11の後端位置に設定されている。
【0036】
上記運転席に着座する運転手が平均身長者Mから、図4の一点鎖線で示すように、女性等の低身長者Sに乗り換わった場合、この低身長者Sは、ステアリングハンドル20や操作ペダルの操作性を確保しつつ、アイポイントIsを上記適正ラインLに一致させ得るように、運転席のシートクッションを前方に移動させかつシートクッションの設置高さを上昇させ(シートクッションは前側へ移動するに連れてその設置高さが上昇するようになっている)、そして、水平線に対するシートクッションの傾斜角度を減少させる。
【0037】
例えば、150cmの身長を有する低身長者Sが運転席に着座した場合、低身長者Sは、そのヒップポイントHsが平均身長者MのヒップポイントHmに対して105mm程度前方でかつ25mm程度上方へ移動するようにシートクッションを前方へ移動させ、そして、サイ角θ4が10.5°程度になるようにシートクッションの傾斜角度を変化させる。この結果、平均身長者Mに比べて手の短い低身長者Sの上半身を前方へ移動させてステアリングハンドル20を適正状態で把持できるとともに、平均身長者Mに比べて座高の低い低身長者SのアイポイントIsを、前方かつ上方へ移動させることにより、適正ラインLに一致させることができる。
【0038】
また、上記シートクッションの前方かつ上方への移動に応じて低身長者Sの操作足が前方かつ上方へ移動する傾向があるため、低身長者Sは、これに対応させて上記膝角度θ2を130°程度に増大させることにより、足首角度θ1を90°に維持するとともに、足裏傾斜角度θ7を適正角度(52°)に近い角度に維持しつつ、低身長者Sの拇指球部をアクセルペダル5の最適踏み込みポイント5aに当接させることが可能になる。
【0039】
図5に示すように、低身長者Sの踵Ksから拇指球部までの距離(15.5cm程度)は、平均身長者Mの同距離(18cm程度)に比べて約2.5cm短いため、低身長者Sの足首角度θ1及び足裏傾斜角度θ7を上記角度に維持しつつ、操作足の拇指球部をアクセルペダル5の最適踏み込みポイント5aに当接させようとすると、踵Ksが平均身長者Mの踵Kmよりも約2cm(sin52°×2.5cm)だけ上方に位置させる必要がある。
【0040】
したがって、傾斜踏面部11の傾斜角を約52°とすれば(この傾斜踏面部11を図5に破線で示す)、低身長者Sが操作足の踵Ksを傾斜踏面部11上に載置しつつ、その操作足の拇指球部をアクセルペダル5の最適踏み込みポイント5aに正確に当接させることができる(このときの低身長者Sの操作足を図5に一点鎖線で示す)。しかし、傾斜踏面部11の傾斜角を52°程度と大きな値に設定した場合には、踵Ksの滑りを生じ易いので、その載置状態を安定させることが困難である。
【0041】
このため、本実施形態では、傾斜踏面部11の傾斜角度αを13.5°〜23.5°の範囲内(例えば18.5°)としている。これにより、図5に実線で示すように、低身長者Sが足裏傾斜角度θ7を適正角度(52°)から6°程度増大させて約58°にすることにより、操作足の踵Ksを傾斜踏面部11に載置した状態で、その拇指球部をアクセルペダル5の最適踏み込みポイント5aに当接させることができるようになっている。
【0042】
尚、上記足裏傾斜角度θ7を52°から58°に変化させるのに対応して操作足の足首角度θ1が90°よりも小さくなる傾向にあるが、足裏傾斜角度θ7の増大に対応して低身長者Sの膝角度θ2を130°よりも大きくして膝を伸ばし気味にすることにより、足首角度θ1が適正範囲よりも小さくなる(85°よりも小さくなる)ことを防止することができる。さらに、操作足の拇指球部をアクセルペダル5の最適踏み込みポイント5aよりもやや下方に位置させるようにすれば、足首角度θ1の変化をより効果的に抑制することができる。
【0043】
一方、図6に示すように、例えば186cmの身長を有する高身長者Tが運転席に着座した場合、高身長者Tは、そのヒップポイントHtが平均身長者MのヒップポイントHmに対して85mm程度後方でかつ20mm程度下方へ移動するようにシートクッションを後方へ移動させ、サイ角θ4が20°程度になるようにシートクッションの傾斜角度を変化させる。この結果、平均身長者Mに比べて手の長い高身長者Tの上半身を後方へ移動させてステアリングハンドル20を適正状態で把持できるとともに、平均身長者Mに比べて座高の高い高身長者TのアイポイントItを、後方かつ下方へ移動させることにより、適正ラインLに一致させることができる。
【0044】
また、上記シートクッションの後方かつ下方への移動に応じて高身長者Tの操作足が後方かつ下方へ移動する傾向があるため、高身長者Tは、これに対応させて上記膝角度θ2を120°程度に減少させることにより、足首角度θ1を90°に維持するとともに、足裏傾斜角度θ7を適正角度(52°)に近い角度に維持しつつ、高身長者Tの拇指球部をアクセルペダル5の最適踏み込みポイント5aに当接させることが可能になる。
【0045】
尚、図7に示すように、高身長者Tの踵Ktから拇指球部までの距離(19.5cm程度)は、平均身長者Mの同距離(18cm程度)に比べて約1.5cm長いため、高身長者Tの足首角度θ1及び足裏傾斜角度θ7を上記角度に維持しつつ、操作足の拇指球部をアクセルペダル5の最適踏み込みポイント5aに当接させようとすると、踵Ktが平均身長者Mの踵Kmよりも約1.2cm(sin52°×1.5cm)だけ下方に位置させる必要がある(このときの高身長者Tの操作足を図7に一点鎖線で示す)。しかし、図7に実線で示すように、高身長者Tの足裏傾斜角度θ7を適正角度(52°)から4°程度減少させて約48°にすることにより、高身長者Tの踵Ksを、傾斜踏面部11後方の水平な踵載置領域に載置した状態で、操作足の拇指球部をアクセルペダル5の最適踏み込みポイント5aに当接させることが可能である。
【0046】
また、足裏傾斜角度θ7を52°から48°に変化させるのに対応して操作足の足首角度θ1が90°よりも大きくなる傾向にあるが、足裏傾斜角度θ7の減少に対応して高身長者Tの膝角度θ2を120°よりも小さくして膝を曲げ気味にすることにより、足首角度θ1が適正範囲よりも大きくなる(95°よりも大きくなる)ことを防止することができる。さらに、操作足の拇指球部をアクセルペダル5の最適踏み込みポイント5aよりもやや上方に位置させるようにすれば、足首角度θ1の変化をより効果的に抑制することができる。
【0047】
尚、ブレーキペダル5の操作性もアクセルペダル6と同様であり、上記のようにしてアクセルペダル5の操作の適正化が図れれば、ブレーキペダル5の操作の適正化も図れることになる。
【0048】
上記踵載置領域には、上記のように傾斜踏面部11が足置部材22によって形成されており、上記フロアマット1は、該フロアマット1の前端部が傾斜踏面部11の下側に位置するように敷設されている。
【0049】
上記足置部材22の前端は、ヒンジ部材31を介してフロアパネル2に固定されている(車両マット4ではなく直接フロアパネル2に固定されている)。このヒンジ部材31は、車幅方向に延びるヒンジ軸31aを有し、ヒンジ部材31においてヒンジ軸31aよりも前側部分に位置する前側部31bと、ヒンジ軸31aよりも後側に位置する後側部31cとが、ヒンジ軸31a周りに回動可能になっている。そして、前側部31bがフロアパネル2に固定され、後側部31cに足置部材22の前端部が取付固定されており、このことで、足置部材22全体がヒンジ軸31a周りに回動可能になっている。
【0050】
上記足置部材22の下部には、フロアマット1上面に当接する当接部材23が設けられている。本実施形態では、当接部材23は、足置部材22に一体形成されたものであって、足置部材22の下面における後端部及び左右両側端部に設けられている。そして、上記足置部材22は、当接部材23が上記フロアマット1上面を押圧することでフロアマット1をフロアパネル2に固定する第1形態と、当接部材23とフロアマット1上面との間に間隙が形成される第2形態とに切り換え可能に構成されている。また、足置部材23は、上記第1及び第2形態に加えて、フロアマット1がフロアパネル2上面に敷設されていない状態では、当接部材23がフロアパネル2上面に当接する第3形態に切り換え可能に構成されている。すなわち、フロアパネル2上にフロアマット1が敷設されている場合には、当接部材23の下面がフロアマット1上面に当接する一方、フロアパネル2上にフロアマット1が敷設されていない場合には、足置部材22全体のヒンジ軸31a周りの回動によって、図3に示すように、当接部材23の下面がフロアパネル2上面(車両マット4)に当接するようになっている。また、フロアマット1が敷設されている場合には、当接部材23がフロアパネル2上面に当接した状態から、足置部材22全体のヒンジ軸31a周りの回動によって、当接部材23を上昇させることで、当接部材23とフロアマット1上面との間に間隙が形成されるようになる。尚、足置部材22の下面における上記当接部材23が設けられていない部分は、足置部材22の上面に沿った形状をなしていて、フロアマット1との間に空間が形成されている。
【0051】
本実施形態では、上記ヒンジ軸31aの周囲には、図示省略のねじりコイルスプリングが設けられており、このねじりコイルスプリングによって、ヒンジ部材31の後側部31c、つまり足置部材22及び当接部材23がヒンジ軸31a周りに、図2で時計回り方向に付勢されている。このねじりコイルスプリングの付勢力によって、当接部材23がフロアマット1上面を押圧してフロアマット1をフロアパネル2に固定する。尚、上記ねじりコイルスプリングは必ずしも必要ではなく、ねじりコイルスプリングがなくても、足置部材22及び当接部材23の重量が大きい場合には、その自重で回動して、当接部材23がフロアマット1上面を押圧する。
【0052】
また、本実施形態では、足置部材22の下面における上記当接部材23が設けられていない部分に、係合部13が下側に突出するように形成されている。この係合部13は、フロアマット1に形成された差込口1aから差し込まれて、その下側におけるフロアパネル2上に固定した筒状部材41の中心部に上下に延びるように形成された係合孔41aに係合される。これにより、フロアマット1が車両前後方向等に移動するを防止するようにしている。この係合部13は、差込口1aからの差し込み及び引き抜き並びに係合孔41aとの係合及び係合解除を容易にすべく、足置部材22の下面に所定の可撓性を有するように形成されている。
【0053】
尚、上記係合部13をフロアマット1の差込口1aを介して筒状部材41の係合孔41aに係合する構成は必ずしも必要でなく、上記ねじりコイルスプリングの付勢力を調整することで、当接部材23の上記押圧により、フロアマット1の移動を防止するようにすることは可能である。
【0054】
上記フロアマット1は、上記操作ペダル後方における該フロアマット1後端部にて、上記フロアパネル2(車両マット4)に固定されている。この固定には、スナップボタン18(図1及び図2参照)が用いられている。すなわち、フロアマット1の下面(ゴム状基材の下面)には、スナップボタン18の雄ボタン18aが取付固定され、車両マット4の上面(基材の上面)には、スナップボタン18の雌ボタン18bが取付固定されており(車両マット4の基材における雌ボタンが取付固定された部分には起毛層が取り除かれている)、上記雄ボタン18aと雌ボタン18bとの嵌合によりフロアマット1が車両マット4に着脱自在に固定されるようになっている。尚、スナップボタン18に限らず、種々の変形が可能であり、例えば、直線状に延びる雄部と雌部とを嵌合させるものであってもよく、フロアマット1の下面に設けたピンを、車両マット4及びインシュレータ3を貫通して、フロアパネル2に設けた孔に嵌合させるものであってもよい。要するに、フロアマット1をフロアパネル2(車両マット4)に着脱自在に固定することができればよい。また、フロアマット1後端部の上記固定は必ずしも必要なものではない。
【0055】
上記フロアマット1を取り外すには、足置部材22及び当接部材23をヒンジ軸31a周りに、ねじりコイルスプリングの付勢力に抗して図2で反時計回り方向に回動させることで足置部材22を第2形態とし(図2の二点鎖線を参照)、これにより、係合部13を筒状部材41の係合孔41a及びフロアマット1の差込口1aから引き抜き、こうして係合部13をフロアマット1の差込口1aから引き抜いた後、フロアマット1の前端部を後側へずらす。また、フロアマット1後端部におけるスナップボタン18による固定を解除する。そして、フロアマット1を持ち上げれば、フロアパネル2上(車両マット4上)から取り外すことができる。このようにフロアマット1を取り外した後、足置部材22及び当接部材23をヒンジ軸31a周りに、ねじりコイルスプリングの付勢力により図2で時計回り方向に回動させれば、当接部材23がフロアパネル2上(車両マット4上)に当接することになる。フロアマット1を敷設しない車種では、この状態と同じになる。
【0056】
一方、フロアマット1を敷設するには、先ず、フロアマット1後端部をスナップボタン18により固定する。続いて、足置部材22及び当接部材23をヒンジ軸31a周りに、ねじりコイルスプリングの付勢力に抗して図2で反時計回り方向に回動させた状態で、フロアマット1を敷設する。このとき、上記スナップボタン18による固定によりフロアマット1がフロアパネル2に対して位置決めされるので、フロアマット1の敷設により、上記差込口1aが係合孔41a上に自然に位置することになり、フロアマット1の敷設が容易である。その後、足置部材22及び当接部材23をヒンジ軸31a周りに、ねじりコイルスプリングの付勢力により図2で時計回り方向に回動させて、当接部材23をフロアマット1上に当接させる。こうしてフロアマット1の敷設が完了する。尚、スナップボタン18による固定はフロアマット1の敷設の最後であってもよい。
【0057】
したがって、本実施形態では、足置部材22をフロアパネル2とは別体で設けて、この足置部材22に傾斜踏面部11を形成するようにしたので、車種変更等に伴ってアクセルペダル5の位置変更等の設計変更があっても、フロアパネル2自体を変更することなく、ヒンジ部材31や足置部材22を変更するだけで容易に対応することができる。
【0058】
そして、フロアマット1を、その前端部が傾斜踏面部11の下側に位置するように敷設し、足置部材22の下部に、フロアマット1上面に当接する当接部材23を設け、足置部材22を、当接部材23がフロアマット1上面を押圧することでフロアマット1をフロアパネル2に固定する第1形態と、当接部材23とフロアマット1上面との間に間隙が形成される第2形態とに切り換え可能に構成したことにより、傾斜踏面部11から落下したゴミをフロアマット1で確実に受けることができるようになるとともに、足置部材22の第1形態では、当接部材23がフロアマット1上面を押圧するので、フロアマット1の車両前後方向等への位置ずれを抑制することができる。また、フロアマット1の取付け及び取外しの際には、足置部材22を第1形態から第2形態に切り換えることで、取付け及び取外しの作業が容易になる。
【0059】
さらに、フロアマット1が敷設されていない場合には、足置部材22が第3形態に切り換えられて、当接部材23がフロアパネル2上面に当接するので、フロアマット1がなくても、足置部材22(当接部材23)とフロアパネル2(車両マット4)との間に、そのフロアマット1の厚みに相当する隙間が生じるようなことはなくて、フロアマット1の非敷設時の見栄えを向上させることができる。
【0060】
(実施形態2)
図8は、本発明の実施形態2を示し(尚、以下の各実施形態では、図1及び図2と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する)、足置部材22及び当接部材23の構成を上記実施形態1とは異ならせたものである。
【0061】
すなわち、本実施形態では、足置部材22と当接部材23とが別部材で構成されており、足置部材22は、アクセルペダル取付基部25の後端部に車幅方向に延びる軸22a周りに回動可能に取り付けられ、当接部材23は、足置部材22における傾斜踏面部11の後端部に車幅方向に延びる軸23a周りに回動可能に取り付けられている。そして、当接部材23は、フロアマット1が敷設されている場合における足置部材22の第1形態において、傾斜踏面部11(足置部材22)の下方位置にてフロアマット1上面に沿って水平に延びた状態にあり、この状態で当接部材23の下面がフロアマット1上面を押圧する。
【0062】
また、当接部材23は、フロアマット1が敷設されていない場合における足置部材22の第3形態において、図9及び図10に示すように、傾斜踏面部11の延長上に延びた状態(足置部材22の上面(傾斜踏面部11)と当接部材23の上面とが同一面上に位置する状態)にあり、この状態で当接部材23における足置部材22と反対側の端部がフロアパネル2上面に当接する。尚、当接部材23の長さは、フロアマット1の有無に関係なく傾斜踏面部11の傾斜角度αが一定になるような長さ(フロアマットの厚み/sinα)に設定されている。
【0063】
上記足置部材22は、傾斜踏面部11の後端部がフロアマット1側に移動するように(軸22a周りに図8で時計回り方向に回動するように)、不図示のねじりコイルスプリングにより付勢されている。一方、上記当接部材23は、軸23a周りに図8で反時計回り方向に回動するように(当接部材23がフロアマット1上面に当接するように)、不図示のねじりコイルスプリングにより付勢されている。この当接部材23の反時計回り方向の回動は、傾斜踏面部11の延長上に延びた状態で止まるようにストッパが設けられている。これら足置部材22及び当接部材23の付勢により、足置部材22の第1形態において、当接部材23がフロアマット1上面を押圧するとともに、当接部材23がフロアマット1上面を押圧してフロアマット1の移動を防止するようにしている。尚、本実施形態では、上記実施形態1のような係合部13が足置部材22に設けられていないが、係合部13を設けるようにしてもよい。
【0064】
本実施形態においても、上記実施形態1と同様に、フロアマット1は、スナップボタン18により、操作ペダル後方における該フロアマット1後端部にて、フロアパネル2(車両マット4)に固定されているが、固定しないようにしてもよい。
【0065】
上記フロアマット1を取り外すには、足置部材22を、上記付勢力に抗して軸22a周りに図8で反時計回り方向に回動させる。これにより、当接部材23は、フロアマット1上面との間に間隙が形成される状態となる(足置部材22が第2形態となる(図8の二点鎖線を参照))とともに、上記ねじりコイルスプリングにより図8で反時計回り方向に回動して、傾斜踏面部11の延長上に延びかつ当接部材23とフロアマット1上面との間に間隙が形成された状態となる。この状態で、フロアマット1の前端部を後側へずらす。また、フロアマット1後端部におけるスナップボタン18による固定を解除する。そして、フロアマット1を持ち上げれば、フロアパネル2上(車両マット4上)から取り外すことができる。このようにフロアマット1を取り外した後、足置部材22から手を離せば、足置部材22は図9及び図10の状態(フロアマット1を敷設しない場合と同じ状態)となる。尚、尚、図10中、7はクラッチペダル、8は運転手の左足(操作足とは反対側の足)を置くためのフットレストである。
【0066】
一方、フロアマット1を敷設するには、先ず、フロアマット1後端部をスナップボタン18により固定する。続いて、足置部材22を、上記付勢力に抗して軸22a周りに図9で反時計回り方向に回動させる。この後、当接部材23を付勢力に抗して図9で時計回り方向に回動させ、足置部材22の下側に位置させる。この状態を維持して、フロアマット1を、その前端部が足置部材22の下側に位置するように敷設し、その後、足置部材22を軸22a周りに図9で時計回り方向に回動させて、当接部材23をフロアマット1上に当接させる。こうしてフロアマット1の敷設が完了する。
【0067】
したがって、本実施形態では、フロアマット1を、その前端部が足置部材22の傾斜踏面部11の下側に位置するように敷設し、足置部材22を、アクセルペダル取付基部25の後端部に車幅方向に延びる軸22a周りに回動可能に取り付け、当接部材23を、足置部材22における傾斜踏面部11の後端部に車幅方向に延びる軸23a周りに回動可能に取り付け、当接部材23を、足置部材22の第1形態においては、傾斜踏面部11の下方位置にてフロアマット1上面に沿って延びた状態で当接部材23の下面がフロアマット1上面を押圧する一方、足置部材22の第3形態においては、傾斜踏面部11の延長上に延びた状態で当接部材23における足置部材22と反対側の端部がフロアパネル2上面に当接するように構成したので、上記実施形態1と同様に、傾斜踏面部11から落下したゴミをフロアマット1で確実に受けるようにすることができるとともに、足置部材22を第1形態から第2形態に切り換えることで、フロアマット1の取付け及び取外しの作業が容易になる。また、フロアマット1が敷設されている場合には、当接部材23は、運転手の操作ペダルの操作の邪魔にならない位置にあるとともに、運転手から見えず、見栄えを向上させることができる一方、フロアマット1を敷設されていない場合には、当接部材23は、傾斜踏面部11の延長上に位置して、運転手から見えても違和感を生じないようにし、また、当接部材23の上面を傾斜踏面部11として機能させることができる。
【0068】
さらに、本実施形態では、フロアマット1の有無に関係なく、傾斜踏面部11の傾斜角度が変化しないので、ドライビングポジションの適正化を確実に図ることができる。ここで、上記実施形態1の場合には、フロアマット1の厚みの分だけ、フロアマット1の有無に応じて、傾斜踏面部11の傾斜角度が変化するが、フロアマット1の厚みは小さいので、傾斜角度の変化量は小さく、よって、ドライビングポジションの適正化を十分に図ることが可能である。
【0069】
尚、上記実施形態2では、フロアマット1が敷設されている場合に、当接部材23が傾斜踏面部11の下方(軸23aの前側)に位置するようにしたが、軸23aの後側に位置するようにしてもよい。この場合、当接部材23の上面に運転手(高身長者T)の踵が載置されることになる。この当接部材23の付勢方向は、上記実施形態2とは逆になる。また、この当接部材23が回動しさえすれば、足置部材22は必ずしも回動する必要はなくなる。このように足置部材22が回動しない場合には、フロアマット1の敷設の際に、当接部材23を持ち上げた状態(足置部材22の第2形態)でフロアマット1の前端部を足置部材22の下側へ差し込むようにすればよい。
【0070】
(実施形態3)
図11及び図12は、本発明の実施形態3を示し、足置部材22及び当接部材23の構成を上記実施形態1及び2とは異ならせたものであり、足置部材22及び当接部材23が回動しない構成としたものである。尚、本実施形態においても、上記実施形態2と同様に、アクセルペダル5及びブレーキペダル6に加えて、クラッチペダル7とフットレスト8とが設けられている。
【0071】
すなわち、本実施形態では、足置部材22の下面における前端部の左右両側側部に、第1係合部35が下側に突出するようにそれぞれ形成されている。この各第1係合部35は、車両マット4及びインシュレータ3を貫通して、その下側におけるフロアパネル2上に固定した第1筒状部材42の中心部に上下に延びるように形成された係合孔42aにそれぞれ係合される。また、足置部材22における後端部の左右両側側部には、第2係合部36が下側に突出するようにそれぞれ形成されている。この各第2係合部36は、フロアマット1に形成された貫通孔1bから差し込まれて、その下側におけるフロアパネル2上に固定した第2筒状部材43の中心部に上下に延びるように形成された係合孔43aにそれぞれ係合される。第1係合部35と係合孔42aとの係合及び第2係合部36と係合孔43aとの係合は、例えば圧入嵌合により行われ、足置部材22がフロアパネル2から容易に外れないようにする。そして、これら係合時に、足置部材22の下面における後端部をフロアマット1に当接させてフロアマット1上面に押し付けるようにする(足置部材22の第1形態)。つまり、足置部材22の下面における後端部に当接部材23が一体形成されており、この当接部材23がフロアマット1上面を押圧することで、フロアマット1が車両前後方向等に移動するのを防止する。
【0072】
上記フロアマット1を取り外すには、足置部材22の下面における後端部(当接部材23)を持ち上げることで、足置部材22を撓ませて第2形態として、第2係合部36を第2筒状部材43の係合孔43a及び貫通孔1bから引き抜き、この後、フロアマット1の前端部を後側へずらす。また、フロアマット1後端部におけるスナップボタン18による固定を解除する。そして、フロアマット1を持ち上げれば、フロアパネル2上(車両マット4上)から取り外すことができる。このようにフロアマット1を取り外した後、第2係合部36を係合孔43aに係合させる。このときには、図13に示すように、足置部材22を撓ませて、当接部材23が車両マット4上面を押圧するように第2係合部36を係合孔43aに押し込むようにする(足置部材22の第3形態)。尚、フロアマット1を敷設するには、上記取り外し作業とは逆に行えばよい。
【0073】
本実施形態においても、上記実施形態1及び2と同様に、フロアマット1は、スナップボタン18により、操作ペダル後方における該フロアマット1後端部にて、フロアパネル2(車両マット4)に固定されているが、固定しないようにしてもよい。
【0074】
したがって、本実施形態においても、上記実施形態1と同様に、傾斜踏面部11から落下したゴミをフロアマット1で確実に受けるようにすることができるとともに、足置部材22を第1形態から第2形態に切り換えることで、フロアマット1の取付け及び取外しの作業が容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、車両の運転席足元のフロアパネル上面を覆うように敷設された車両用フロアマットの敷設構造として、踵載置領域に前方に向かって高くなる傾斜踏面部が形成されている場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施形態1に係る車両用フロアマット敷設構造が適用された運転席足元を示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】車両用フロアマットが敷設されていない状態における図2相当図である。
【図4】平均身長者及び低身長者の着座状態を示す側面図である。
【図5】平均身長者及び低身長者の踵載置状態を示す側面図である。
【図6】高身長者及び平均身長者の着座状態を示す側面図である。
【図7】高身長者の踵載置状態を示す側面図である。
【図8】実施形態2に係る車両用フロアマット敷設構造が適用された運転席足元を示す、アクセルペダル取付基部の側方で車両前後方向に沿って切断した断面図である。
【図9】車両用フロアマットが敷設されていない状態における図8相当図(図10のIX−IX線断面図)である。
【図10】図9に対応する運転席足元を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施形態3に係る車両用フロアマット敷設構造が適用された運転席足元を示す斜視図である。
【図12】図11のXII−XII線断面図である。
【図13】車両用フロアマットが敷設されていない状態における図12相当図である。
【符号の説明】
【0077】
1 車両用フロアマット
2 フロアパネル
5 アクセルペダル(操作ペダル)
6 ブレーキペダル(操作ペダル)
11 傾斜踏面部
22 足置部材
23 当接部材
31 ヒンジ部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転席足元のフロアパネル上面を覆うように敷設された車両用フロアマットの敷設構造であって、
上記フロアパネルにおいて上記運転席に着座した運転手が操作ペダルを踏み込み操作する際に該運転手の踵が載置される踵載置領域に、前方に向かって高くなる傾斜踏面部を有する足置部材が該フロアパネルとは別体で設けられ、
上記足置部材の下部には、上記フロアマット上面に当接する当接部材が設けられ、
上記足置部材は、上記当接部材が上記フロアマット上面を押圧することで該フロアマットを上記フロアパネルに固定する第1形態と、上記当接部材と上記フロアマット上面との間に間隙が形成される第2形態とに切り換え可能に構成されていることを特徴とする車両用フロアマットの敷設構造。
【請求項2】
請求項1記載の車両用フロアマットの敷設構造において、
上記当接部材は、車幅方向に延びる軸周りに回動可能に構成されていて、上記足置部材の第1形態においてスプリングにより上記フロアマット上面を押圧するようになっていることを特徴とする車両用フロアマットの敷設構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両用フロアマットの敷設構造において、
上記足置部材は、上記第1及び第2形態に加えて、上記フロアマットが上記フロアパネル上面に敷設されていない状態では、上記当接部材が該フロアパネル上面に当接する第3形態に切り換え可能に構成されていることを特徴とする車両用フロアマットの敷設構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両用フロアマットの敷設構造において、
上記フロアマットは、上記操作ペダル後方における該フロアマット後端部にて、上記フロアパネルに固定されていることを特徴とする車両用フロアマットの敷設構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の車両用フロアマットの敷設構造において、
上記当接部材は、上記足置部材における傾斜踏面部の後端部に車幅方向に延びる軸周りに回動可能に取り付けられていることを特徴とする車両用フロアマットの敷設構造。
【請求項6】
請求項3記載の車両用フロアマットの敷設構造において、
上記当接部材は、上記足置部材における傾斜踏面部の後端部に車幅方向に延びる軸周りに回動可能に取り付けられていて、上記足置部材の第1形態においては、上記傾斜踏面部の下方位置にて上記フロアマット上面に沿って延びた状態で該当接部材の下面が該フロアマット上面を押圧する一方、上記足置部材の第3形態においては、上記傾斜踏面部の延長上に延びた状態で該当接部材における上記足置部材と反対側の端部が該フロアパネル上面に当接するように構成されていることを特徴とする車両用フロアマットの敷設構造。
【請求項1】
車両の運転席足元のフロアパネル上面を覆うように敷設された車両用フロアマットの敷設構造であって、
上記フロアパネルにおいて上記運転席に着座した運転手が操作ペダルを踏み込み操作する際に該運転手の踵が載置される踵載置領域に、前方に向かって高くなる傾斜踏面部を有する足置部材が該フロアパネルとは別体で設けられ、
上記足置部材の下部には、上記フロアマット上面に当接する当接部材が設けられ、
上記足置部材は、上記当接部材が上記フロアマット上面を押圧することで該フロアマットを上記フロアパネルに固定する第1形態と、上記当接部材と上記フロアマット上面との間に間隙が形成される第2形態とに切り換え可能に構成されていることを特徴とする車両用フロアマットの敷設構造。
【請求項2】
請求項1記載の車両用フロアマットの敷設構造において、
上記当接部材は、車幅方向に延びる軸周りに回動可能に構成されていて、上記足置部材の第1形態においてスプリングにより上記フロアマット上面を押圧するようになっていることを特徴とする車両用フロアマットの敷設構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両用フロアマットの敷設構造において、
上記足置部材は、上記第1及び第2形態に加えて、上記フロアマットが上記フロアパネル上面に敷設されていない状態では、上記当接部材が該フロアパネル上面に当接する第3形態に切り換え可能に構成されていることを特徴とする車両用フロアマットの敷設構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両用フロアマットの敷設構造において、
上記フロアマットは、上記操作ペダル後方における該フロアマット後端部にて、上記フロアパネルに固定されていることを特徴とする車両用フロアマットの敷設構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の車両用フロアマットの敷設構造において、
上記当接部材は、上記足置部材における傾斜踏面部の後端部に車幅方向に延びる軸周りに回動可能に取り付けられていることを特徴とする車両用フロアマットの敷設構造。
【請求項6】
請求項3記載の車両用フロアマットの敷設構造において、
上記当接部材は、上記足置部材における傾斜踏面部の後端部に車幅方向に延びる軸周りに回動可能に取り付けられていて、上記足置部材の第1形態においては、上記傾斜踏面部の下方位置にて上記フロアマット上面に沿って延びた状態で該当接部材の下面が該フロアマット上面を押圧する一方、上記足置部材の第3形態においては、上記傾斜踏面部の延長上に延びた状態で該当接部材における上記足置部材と反対側の端部が該フロアパネル上面に当接するように構成されていることを特徴とする車両用フロアマットの敷設構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−83291(P2010−83291A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253671(P2008−253671)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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