説明

車両用ベッド構造

【課題】車両用ベッド構造に関し、簡素な構成で車両の運転室にベッドを備えながら、荷室スペースを広く確保するとともに、運転室のスペース効率を向上させ乗員の居住性を向上させることができるようにする。
【解決手段】車両の運転席20後方に車幅方向に延在して配設されたベッド本体部30と、ベッド本体部30の一部を前方へ延出して形成されたベッド延出部40と、下部51がベッド延出部40の車幅方向両側でベッド延出部40に対して起立状態と傾倒状態とをとりうるべく回動可能に軸支され、中間部52が起立状態でベッド本体部30の上面に沿って車両前後方向に延びる形状に形成されるとともにベッド本体部30の車両前後方向の中途で上方へ屈曲する形状に形成された屈曲フレーム50と、屈曲フレーム50の上部53,54に車幅方向に延在して装着された緩衝材60とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に大型トラック等の運転室に用いて好適の、車両用ベッド構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長距離走行の機会の多い大型トラックでは、図5に示すように、一般に、乗員の仮眠用ベッド100が運転室の運転席110後方のスペースに備えられることが多い。こうした構成は、例えば、特許文献1に開示されている。
一方、トラックは、法規によりその最大全長が規制されているので、車両の使用目的上、輸送効率を高めるために荷室スペースを広くすると、運転室のスペースが狭くなってしまう。
【0003】
したがって、特に仮眠用ベッドが運転室内部に備えられる場合には、運転室はよりスペース的制約を受けるので、乗員の居住性をできる限り向上させるために、運転室のスペース効率を向上させる必要がある。
こうした必要性に応えるため、例えば、特許文献2には、仮眠用ベッドを運転室内部の上部スペースに取り付ける技術が開示されている。
【特許文献1】実開平4−28140号公報
【特許文献2】特開2003−112670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2記載のような技術によれば、運転室の前後方向スペースにおいて、仮眠用ベッドのためのスペースを確保する必要がなく、運転席や助手席及びインスツルメントパネルを備えるスペースを確保すれば良いので、荷室スペースを広く確保しながらも仮眠用ベッドのスペースを十分に確保することができる。
しかしながら、特許文献2記載のような技術では、仮眠用ベッドを上部スペースに備えるために運転室が二段構造になる等、その構成が複雑となっており、コストがかかる。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、簡素な構成で車両の運転室にベッドを備えながら、荷室スペースを広く確保するとともに、運転室のスペース効率を向上させ乗員の居住性を向上させることができるようにした、車両用ベッド構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の本発明の車両用ベッド構造は、車両の運転席後方に車幅方向に延在して配設されたベッド本体部と、該ベッド本体部の一部を前方へ延出して形成されたベッド延出部と、下部が該ベッド延出部の車幅方向両側で該ベッド延出部に対して起立状態と傾倒状態とをとりうるべく回動可能に軸支され、中間部が該起立状態で該ベッド本体部の上面に沿って車両前後方向に延びる形状に形成されるとともに該ベッド本体部の該車両前後方向の中途で上方へ屈曲する形状に形成された屈曲フレームと、該屈曲フレームの上部に、該車幅方向に延在して装着された緩衝材とを備えたことを特徴としている。
【0007】
請求項2記載の本発明の車両用ベッド構造は、請求項1記載の車両用ベッド構造において、該緩衝材の該車両前後方向の後面側には、硬質の板材が配設されていることを特徴としている。
請求項3記載の本発明の車両用ベッド構造は、請求項1又は2記載の車両用ベッド構造において、該屈曲フレームの回動を阻止するロック装置を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の本発明の車両用ベッド構造によれば、屈曲フレームの下部をベッド延出部に対して傾倒状態に回動すれば(即ち、屈曲フレームを傾倒状態に回動すれば)、ベッド延出部をベッド本体部とともにベッドとして利用し、ベッドを広く形成することができる。また、屈曲フレームを起立状態に回動すれば、ベッド延出部をベッド本体部の一部と合わせてシートの座面として利用し、屈曲フレームと緩衝材とからなるシートバックとともにシートを形成することもできる。つまり、ベッドのスペースとシートのスペースとを共通利用して、運転室のスペース効率を向上させ乗員の居住性を向上させることができるとともに、共通利用した分だけ運転室のスペースを狭めることができるので、荷室スペースを広く確保することができる。
【0009】
また、一般に備えられている運転席後方のベッドであるベッド本体部の一部を延出したベッド延出部をベッドとしてもシートとしても利用するという簡素な構成で、運転室にベッドを備えることができる。
さらに、屈曲フレームの傾倒状態では、屈曲フレームの中間部はベッド本体部から離隔した位置で上下方向に延在するので、ベッド延出部をベッドとして利用しながら、屈曲フレームの中間部をベッドの柵として機能させることができる。
【0010】
請求項2記載の本発明の車両用ベッド構造によれば、屈曲フレームの傾倒状態では、緩衝材の後面側に配設された硬質の板材が上面を向くので、硬質の板材をテーブルとして利用することができる。したがって、乗員の居住性をより向上させることができる。
請求項3記載の本発明の車両用ベッド構造によれば、ロック装置が備えられているので、屈曲フレームが不用意に回動しないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。
[一実施形態]
図1〜図3は本発明の一実施形態に係る車両用ベッド構造を示すもので、図1はその斜視図、図2はその一構成要素であるロック装置の拡大側面図、図3はその一構成要素である屈曲フレームの拡大斜視図である。
【0012】
本実施形態では、トラックの運転室に適用した車両用ベッド構造について説明する。
<構成>
図1に示すように、トラックの運転室10には、前部に図示しないインスツルメントパネルが配設され、前後方向中央部の一側(ここでは右側)に運転席20が配設され、後部にベッド(ベッド本体部)30が配設されている。
【0013】
ベッド30は、車幅方向に延在しており、また、その一部が前方に延出して形成されたクッション部(ベッド延出部)40を備えている。
クッション部40の車幅方向両側には、段状に屈曲した屈曲フレーム50の下端部51L(図2参照)が、クッション部40に対して起立状態と傾倒状態とをとりうるべく回動可能に軸支されて取り付けられている。
【0014】
屈曲フレーム50は、図3に示すように、起立状態において、下端部51Lから所定の長さだけ上方に向かって延びる一対の第一フレーム部(下部)51と、各第一フレーム部51の上端部から略直角に屈曲しベッド30の上面に沿って所定の長さDだけ車両前後方向に延びる一対の第二フレーム部(中間部)52と、各第二フレーム部52の後端部から略直角に屈曲し再び上方に向かって延びる一対の第三フレーム部(上部)53と、各第三フレーム部53の上端部を連結する第四フレーム部(上部)54とを有している。
【0015】
第一フレーム部51の下端部51Lは、ここでは、他のフレーム部分がパイプ状に形成されているのに対し、いびつな板状に広がって形成されている。
第二フレーム部52の所定の長さDは、第二フレーム部52が、第一フレーム部51の前後方向位置を基点にベッド30の上面に沿ってベッド30の前後方向中程まで到達する長さに設定されている。
【0016】
第三フレーム部53と第四フレーム部54とは、組み合わせて、正面視で略門型状をなしている。また、第三フレーム部53と第四フレーム部54とには、緩衝材60が装着されている。緩衝材60は、略矩形状に形成されるととともに、その3辺が第三フレーム部53と第四フレーム部54とに支持されている。
つまり、屈曲フレーム50と緩衝材60とで、シートバック(背もたれ部)70が形成されるようになっている。
【0017】
また、図1に示すように、屈曲フレーム50の起立状態での緩衝材60の前後方向後面側(即ち、傾倒状態での緩衝材60の上面側)には硬質の板材80が配設されている。硬質の板材80は、ここでは、緩衝材60と同様に略矩形状に形成され、且つ、緩衝材60の後面を略全面覆うようになっている。
さらに、屈曲フレーム50は、下端部51Lに配置された回動軸O(図2参照)を中心に回動するようになっているが、一側(ここでは左側)の回動軸Oの周囲には、屈曲フレーム50の回動を阻止するロック装置90が設けられている。
【0018】
ロック装置90は、図2に示すように、クッション部40の幅方向一側に取り付けられた基板91と、一側の第一フレーム部51の下端部51Lの下縁に設けられた切り欠き92と、屈曲フレーム50が起立状態にあるときに切り欠き92に嵌合するロックバー93と、一端部にロックバー93を固定して取り付けるとともに他端部に設定され基板91に取り付けられた傾動軸Pを中心に傾動するフレーム94と、フレーム94の他端部に取り付けられフレーム94をロック方向に付勢するバネ95と、基板91上に取り付けられ回動軸Oを中心に傾動可能なレバー96とを備えている。
【0019】
レバー96は、乗員によって傾動操作されるものであって、通常時には(ロック状態では)、図2に実線で示すように、フレーム94に干渉しないように取り付けられている。一方、乗員がレバー96を前方へ傾動操作すると、レバー96の下端部がフレーム94の一端部に徐々に接触し、図2に二点鎖線で示すように、フレーム94を下方に押し下げるようになっている。
【0020】
フレーム94は、ロック状態では、図2に実線で示すように、バネ95によってロック方向に付勢され、一端部に固定されたロックバー93が屈曲フレーム50の下端部51Lの切り欠き92に嵌合するようになっている。つまり、切り欠き92にロックバー93が引っかかることで、屈曲フレーム50の回動にロックがかかるようになっている。一方、上述のように、乗員の操作によってレバー96が傾動操作されると、図2に二点鎖線で示すように、フレーム94は下方に押し下げられ、ロックバー93が切り欠き92から外れ、ロックが解除されるようになっている。
そして、ロックが解除された状態で、屈曲フレーム50は乗員の操作によって車両前方側へ向かって略90度回動するようになっている。
【0021】
<作用・効果>
本発明の一実施形態にかかる車両用ベッド構造は上述のように構成されているので、以下のような作用・効果がある。
【0022】
シードバック70を前側に転動させて傾倒状態にすると、クッション部40をベッド30として使用することができ、従来のベッドスペースに比べて、クッション部40の分だけ広いベッドスペースを確保することができる。
また、傾倒状態にある屈曲フレーム50をベッド30の柵として機能させることができる。つまり、屈曲フレーム50を傾倒状態とした場合には、屈曲フレーム50の第二フレーム部52の長さDは、図1に二点鎖線で示すように、上下方向の長さ(高さ)となり、第二フレーム部52は、ベッド30の水平面に対して略垂直に立ち上がっているので、ベッド30の柵の機能を果たす。
【0023】
また、屈曲フレーム50の傾倒状態では、緩衝材60の後面側に配設された硬質の板材80が上面を向くので、硬質の板材80をテーブルとして利用することができる。したがって、乗員の居住性を向上させることができる。
一方、シートバック70を起立状態にすると、シートバック70の前後方向位置はベッド30の前後方向中程に位置し、クッション部40とベッド30の一部とをシートクッション(座面)として使用することができる。即ち、クッション部40とベッド30の一部とシートバック70とで、シート(助手席)を形成することができる。
【0024】
つまり、クッション部40をベッド30にもシートにも兼用し、ベッド30とシートのスペースを共通利用することができるので、運転室のスペース効率を向上させ、乗員の居住性を向上させることができる。特に、ベッド30を広く利用できるとともに、助手席のシートポジションを後方に設置でき、助手席前方のスペースを広く確保することができるので、助手席に着座した際の足元スペース等を広く設定することができ、乗員の居住性を向上させることができる。
【0025】
さらに、クッション部40とベッド30とで助手席の座面を形成したので、共通利用した分だけ運転室の前後方向寸法も小さくでき、荷室寸法を長くできる。つまり、荷室スペースを拡大し積載効率及び輸送効率を高めることができ、これらの向上による輸送コストを低減することができる。
また、ベッド30の一部を前方へ延出してクッション部40を形成し、且つ屈曲フレーム50と緩衝材60とからなるシートバック70の下端部51Lをクッション部40の車幅方向両側に取り付けただけなので、簡素な構成でベッド30を備えることができる。
また、ロック装置90が備えられているので、クッション部40を助手席の座面として利用している際に、シートバック70が不用意に回動しないように回動を阻止することができる。
【0026】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【0027】
例えば、上記実施形態では、ベッド30の前端縁のうち運転席20が位置しない部分全てを前方へ延出させてクッション部40を形成したが、図4に示すように、上記運転席20が位置しない部分の一部(ここでは、一例として中間部)を前方へ延出させてクッション部40Aを形成しても良い。
また、上記実施形態では、屈曲フレーム50の第一フレーム部51と第二フレーム部52と第三フレーム部53とは略直角に折れ曲がる段状に形成されているが、その屈曲角度は必ずしも略直角に限定されるものではない。つまり、第二フレーム部52の長さDが、屈曲フレーム50が傾倒状態にあるときに上下方向高さとして変換されるように、第一フレーム部51,第二フレーム部52及び第三フレーム部53の屈曲角度が設定されていれば良い。より好ましくは、屈曲フレーム50が傾倒状態にあるときに、第三フレーム部53が水平面内に収まり、第三フレーム部53に支持された緩衝材60及び硬質の板材80が水平に広がるように、第一フレーム部51,第二フレーム部52及び第三フレーム部53の屈曲角度が設定されていれば良い。
【0028】
また、上記実施形態では、屈曲フレーム50の第三フレーム部53と第四フレーム部54とが正面視で略門型状に構成されているが、この構成はこれに限らず、例えば、第四フレーム部54に代えて一対の第三フレーム部53の適宜の場所を連結する複数のフレーム部を備えても良いし、第三フレーム部53間に板部材を貼り付けても良い。
また、上記実施形態では、ロック装置90は、基板91と切り欠き92とロックバー93とフレーム94とバネ95とレバー96とを備えて構成されているが、その他の周知のロック装置に代えて、シートバック70の不用意の回動を阻止するようにしても良い。
【0029】
さらに、上記実施形態では、本発明の車両用ベッド構造をトラックに適用した場合について説明したが、車両用ベッドを有する乗用車等の車両であれば、適宜変形して適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用ベッド構造を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る車両用ベッド構造のロック装置を拡大して示す側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る車両用ベッド構造の屈曲フレームを拡大して示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態の変形例に係る車両用ベッド構造を示す斜視図である。
【図5】従来技術に係る車両用ベッド構造を備えた運転室内部の上面図である。
【符号の説明】
【0031】
10 運転室
20 運転席
30 ベッド(ベッド本体部)
40 クッション部(ベッド延出部)
50 屈曲フレーム
51 第一フレーム部(下部)
52 第二フレーム部(中間部)
53 第三フレーム部(上部)
54 第四フレーム部(上部)
60 緩衝材
70 シートバック(背もたれ部)
80 硬質の板材
90 ロック装置
91 基板
92 切り欠き
93 ロックバー
94 フレーム
95 バネ
96 レバー
100 仮眠用ベッド
110 運転席
D 第二フレーム部の長さ
O 屈曲フレームの回動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転席後方に車幅方向に延在して配設されたベッド本体部と、
該ベッド本体部の一部を前方へ延出して形成されたベッド延出部と、
下部が該ベッド延出部の車幅方向両側で該ベッド延出部に対して起立状態と傾倒状態とをとりうるべく回動可能に軸支され、中間部が該起立状態で該ベッド本体部の上面に沿って車両前後方向に延びる形状に形成されるとともに該ベッド本体部の該車両前後方向の中途で上方へ屈曲する形状に形成された屈曲フレームと、
該屈曲フレームの上部に、該車幅方向に延在して装着された緩衝材とを備えた
ことを特徴とする、車両用ベッド構造。
【請求項2】
該緩衝材の該車両前後方向の後面側には、硬質の板材が配設されている
ことを特徴とする、請求項1記載の車両用ベッド構造。
【請求項3】
該屈曲フレームの回動を阻止するロック装置を備えている
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の車両用ベッド構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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