説明

車両用ホイールの製造方法

【課題】ウエル部に形成した環状壁部をその外周端部まで確実かつ安定して折り曲げることにより、リム部にリム空洞部を安定して形成し得る車両用ホイールの製造方法を提供する。
【解決手段】アウターリム部8および/またはインナーリム部内にリム空洞部21を形成する方法であって、リム部3のウエル部14に設けた環状壁部53の外周端部53aに傾斜外端部53bを周成した後に、該環状壁部53を絞り加工によって折り曲げることにより、前記傾斜外端部53bによって折曲加工具31とフランジ部10とを非接触とする逃げ溝29が形成されるようにした製造方法である。これにより、折曲加工具31とフランジ部10とを接触することなく、環状壁部53を安定して折り曲げることができるため、環状壁部53の外周端部53bとフランジ部10とを充分かつ容易に接合することができ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車軸に連結されるディスク部とタイヤを取り付けるリム部とを備えた車両用ホイールを鋳造により成形する車両用ホイールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム合金等の軽金属合金により成形される車両用ホイールは、鋳造により成形されることが一般的である。このような軽金属合金製の車両用ホイールにあっては、近年、環境性を配慮し、燃費向上を目的として高強度化、薄肉化、軽量化への要求が大きい。
【0003】
上記した軽金属合金製の車両用ホイールにあって、表側のフランジ部とビードシート部とを備えたアウターリム部は、ディスク部のスポーク部が連成される部位であり、厚肉形状に成形されている。このアウターリム部は、過大な強度(剛性)を有していることから、このアウターリム部を減肉することにより、軽量化する方法が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、アウターリム部内に中空部を備えた構成が提案されており、その成形方法として、リム部の外表面から径方向外方へ突出した環状縦壁を周方向に沿って成形し、該環状縦壁を折り曲げ加工して表側フランジ部と接合することによって、中空部を備えたアウターリム部を成形する方法が開示されている。さらに、この特許文献1には、前記同様にインナーリム部内に中空部を備えた構成も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−90925号公報(段落番号[0025]、図7参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の特許文献1に開示された成形方法に従って、実際の製造工程で環状縦壁を折り曲げ加工する場合には、スピニング加工方法のように、ローラー状の折曲加工具を環状縦壁に押し付けることにより絞り加工する方法が行われる。詳述すると、リム部に設けられた表裏方法のウエル部に、その外表面から径方向外方へ突出する環状縦壁を表側フランジ部寄りに周成した鋳造成形体を、鋳造により成形する。この鋳造成形体は、所望の車両用ホイールに無駄肉が付いた状態のものである。この鋳造成形体の環状縦壁にその裏側から、絞り加工用の折曲加工具を押し付けて、該折曲加工具を表裏方向に沿って移動させることによって、環状縦壁を折り曲げる絞り加工を行う。これにより、環状縦壁を折り曲げて、その外端部を表側フランジ部に当接させる。その後、折り曲げた環状縦壁の外端部と表側フランジ部とを溶接することにより、内部に中空部を備えたアウターリム部を形成する。
【0007】
ところで、上記した環状縦壁を折り曲げる工程にあっては、ローラー状の折曲加工具を環状縦壁の外端部の先端まで移動させると、該折曲加工具が表側フランジ部に接触してしまう。そのため、折曲加工具と表側フランジ部との接触を避けるために、折曲加工具を環状縦壁の外端部の先端まで絞り加工できず、これに伴って環状縦壁をその外端部の先端まで充分に折り曲げられることが極めて困難であった。ここで、折り曲げた環状縦壁をその外端部の先端まで適正に折り曲げられない場合には、該環状縦壁の外端部と表側フランジ部とが非接触となったり、これら両者の接触状態が不安定となってしまう。このような場合には、これら両者を溶接する際に充分かつ安定して溶接することが難しく、溶接不良の発生が懸念される。以上のことから、環状縦壁を、その外端部まで確実かつ安定して折り曲げることができる方法が求められている。
【0008】
尚、上記した絞り加工用の折曲加工具として、比較的小さい形態のものを適用し、当該折曲加工具をできるだけ環状縦壁の外端部の先端まで移動することにより、上記した不具合の発生を抑制することも可能である。しかし、折曲加工具としては、比較的大きい形態のものを用いることにより、成形安定性が向上するという利点がある。そのため、できるだけ大きい形態の折曲加工具を適用して絞り加工しても、環状縦壁の外端部まで安定して折り曲げることができる方法が求められている。
【0009】
本発明は、ウエル部に形成した環状壁部を折り曲げることにより、内部にリム空洞部を形成するようにした製造方法にあって、環状壁部をその外周端部まで確実且つ安定して折り曲げ加工することができる車両用ホイールの製造方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一発明としては、タイヤのビードを支持する表裏のフランジ部およびビードシート部と表裏のビードシート部間に形成された表裏方向のウエル部とを具備するリム部と、車軸に連結されるディスク部とを備えた車両用ホイールの製造方法において、前記リム部のウエル部の外表面から径方向外方へ突出する環状壁部を、少なくとも表裏いずれか一方のフランジ部寄りに周成する鋳造工程と、前記リム部の環状壁部に他方のフランジ部側から所定の折曲加工具を押し当てて該環状壁部の外周端部まで絞り加工することにより、該環状壁部を一方のフランジ部側へ折り曲げて、該環状壁部の外周端部を当該フランジ部にホイール周方向に亘って当接させる折曲加工工程と、折曲加工した環状壁部の外周端部とフランジ部とをホイール周方向全周に亘って接合する接合工程とを順次実行することにより、前記ビードシート部とホイール周方向に沿って周成されたリム空洞部とを備えたアウターリム部および/又はインナーリム部を形成する製造方法であって、前記鋳造工程後かつ折曲加工工程前に、前記環状壁部の外周端部に、他方のフランジ部側から径方向外方へ向かって傾斜する傾斜外端部をホイール周方向に亘って形成する端部加工工程を実行し、前記折曲加工工程で、絞り加工により折り曲げる環状壁部の傾斜外端部によって、該環状壁部の外周端部まで絞り加工した折曲加工具とフランジ部とを非接触とするための逃げ溝が形成されるようにしていることを特徴とする車両用ホイールの製造方法である。
【0011】
かかる製造方法にあっては、端部加工工程により環状壁部の外周端部に傾斜外端部を周成した後に、折曲加工工程を実行するようにしたから、該折曲加工工程の絞り加工により折り曲げた環状壁部の傾斜外端部によってフランジ部との間に逃げ溝を形成する。そして、この逃げ溝によって折曲加工具とフランジ部とが接触することなく、該折曲加工具により環状壁部の外周端部まで安定して折り曲げることができる。ここで、傾斜外端部は先端に向かって細くなっていることから、当該環状壁部の該傾斜外端部を除く部位よりも低剛性である。そのため、環状壁部の外周端部まで絞り加工すれば、折曲加工具が傾斜外端部を直接的に押し付けなくとも、他部位が折り曲げられることに従って同様に折り曲げられ、環状壁部の外周端部(傾斜外端部)まで充分に折り曲げることができる。これにより、折曲加工工程により、環状壁部の外周端部とフランジ部とを確実かつ安定して当接することができる。そして、接合工程によりこれら両者を接合することによって、折り曲げた環状壁部の外周端部とフランジ部とを充分かつ容易に接合することができるため、内部にリム空洞部を有するアウターリム部および/またはインナーリム部を安定して形成することができる。したがって、本発明の製造方法によれば、上述した従来方法のように接合不良(溶接不良)の発生を可及的に抑制できる。
【0012】
尚、本発明と異なる方法として、例えば、折曲加工具とフランジ部が接触しないように、フランジ部に段差状の逃げ周部を周成することによっても、環状壁部を安定して折り曲げることが可能である。しかし、このフランジ部に逃げ周部を設けた場合には、該逃げ周部の段差幅に従ってフランジ部を肉厚化する必要がある。そのため、リム空洞部の体積が制限されて、軽量化効果に限界が生じてしまう。これに対して、上述した本発明の方法によれば、フランジ部の肉厚化を抑制できるため、高い軽量化効果を得ることができるという優れた利点を有する。
【0013】
本発明の製造方法にあって、環状壁部は、表側フランジ部寄りに形成した構成が好適である。この製造方法によれば、リム空洞部を有するアウターリム部を形成することができ、高い軽量化効果を得ることができる。一方、裏側フランジ部寄りに環状壁部を形成して、リム空洞部を有するインナーリム部を形成するようにした場合にあっては、当該インナーリム部がその形状効果によって強度(剛性)向上する。そのため、インナーリム部を薄肉化して、所望の強度を保ちつつ、軽量化することができ得る。
【0014】
上述した車両用ホイールの製造方法にあって、環状壁部と接合するフランジ部の接合面部に、該環状壁部の外周端部を係止する係合段部を形成する段部加工工程を、鋳造工程後且つ折曲加工工程前に実行するようにしている方法が提案される。
【0015】
かかる方法にあっては、折曲加工工程で、環状壁部の外周端部をフランジ部の係合段部に係止するまで絞り加工することにより、折り曲げた環状壁部を確実にフランジ部に当接させることができる。すなわち、折曲加工具が環状壁部の傾斜外端部を直接的に押し付けなくとも、容易かつ安定して環状壁部の外周端部とフランジ部とを当接することができる。そのため、上述したように折曲加工具とフランジ部とを接触させることなく、環状壁部を所望の折曲した形状に安定して形成することができる。
【0016】
尚、フランジ部に設ける係合段部としては、その表裏方向幅を可及的に短くすることが好適である。これにより、フランジ部の板厚増加を充分に抑制できるため、軽量化効果を高め得る。
【0017】
一方、本発明の第二発明としては、タイヤのビードを支持する表裏のフランジ部およびビードシート部と、表裏のビードシート部間に形成された表裏方向のウエル部と、表側のビードシート部とウエル部とを連成するウエル壁部とを具備するリム部と、車軸に連結されるディスク部とを備えた車両用ホイールの製造方法において、前記リム部のウエル部の外表面から径方向外方へ突出する環状壁部を周成する鋳造工程と、前記リム部の環状壁部に、裏側から所定の折曲加工具を押し当てて該環状壁部の外周端部まで絞り加工することにより、該環状壁部をウエル壁部にホイール周方向に亘って当接させる折曲加工工程と、折曲加工した環状壁部の外周端部とフランジ部とをホイール周方向全周に亘って接合することにより、ホイール周方向に亘ってリム空洞部を形成する接合工程とを順次実行する製造方法であって、前記鋳造工程後かつ折曲加工工程前に、前記環状壁部の外周端部に、裏側から径方向外方へ向かって傾斜する傾斜外端部をホイール周方向に亘って形成する端部加工工程を実行し、前記折曲加工工程で、絞り加工により折り曲げる環状壁部の傾斜外端部によって、該環状壁部の外周端部まで絞り加工した折曲加工具とウエル壁部とを非接触とするための逃げ溝が形成されるようにしていることを特徴とする車両用ホイールの製造方法である。
【0018】
かかる製造方法により成形する車両用ホイールは、ウエル部にリム空洞部が形成され、その形状効果により当該ウエル部の剛性を向上するものであり、該剛性の向上効果に基づく板厚低減によって軽量化効果を奏し得る。本製造方法にあっては、鋳造工程で成形した環状壁部を絞り加工により折り曲げて、該環状壁部をウエル壁部に当接し、これら両者を接合することによりリム空洞部を形成する。ここで、傾斜外端部を形成した環状壁部を折り曲げた場合にその傾斜外端部によって逃げ溝が形成されることから、折曲加工具とウエル壁部とを接触することなく、環状壁部をその外周端部の先端まで安定して折り曲げることができる。これにより、環状壁部の外周端部とウエル壁部とを確実に当接させ得る。すなわち、本第二発明は、ウエル部にリム空洞部を形成するように環状壁部を成形して絞り加工するようにした方法であり、本質的に上述した第一発明と同じものである。したがって、本第二発明にあっても、上述した第一発明と同様の作用効果を奏し得る。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかる第一発明の車両用ホイールの製造方法は、上述したように、アウターリム部および/またはインナーリム部内にリム空洞部を形成する方法であって、鋳造工程により成形する環状壁部の外周端部に傾斜外端部を周成した後に、該環状壁部を絞り加工によって折り曲げることにより、前記傾斜外端部によって折曲加工具とフランジ部とを非接触とする逃げ溝が形成されるようにした製造方法である。本製造方法によれば、折曲加工具とフランジ部とを接触することなく、環状壁部の外周端部の先端まで安定して折り曲げることができるから、環状壁部の外周端部をフランジ部に確実かつ安定して当接させることができる。そのため、環状壁部の外周端部とフランジ部とを充分かつ容易に接合することができ、接合不良等の不具合の発生を抑制することができ得る。したがって、アウターリム部および/またはインナーリム部内にリム空洞部を形成して所望の強度(剛性)を発揮し且つ高い軽量化効果を有する構成の、車両用ホイールを製造することができ得る。
【0020】
上述した車両用ホイールの製造方法にあって、環状壁部と接合するフランジ部の接合面部に、該環状壁部の外周端部を係止する係合段部を形成する段部加工工程を、鋳造工程後且つ折曲加工工程前に実行するようにした場合には、折曲加工具とフランジ部とを接触しない絞り加工によっても、環状壁部の外周端部をフランジ部の係合段部に係止するまで一層容易かつ安定して折り曲げることができる。これにより、上述した本発明の作用効果を一層高め得る。
【0021】
また、本発明にかかる第二発明の車両用ホイールの製造方法は、上述したように、ウエル部にリム空洞部を形成するための方法であって、鋳造工程により成形する環状壁部の外周端部に傾斜外端部を周成した後に、該環状壁部を絞り加工によって折り曲げることにより、前記傾斜外端部によって折曲加工具とウエル壁部とを非接触とする逃げ溝が形成されるようにした製造方法である。本製造方法によれば、折曲加工具とウエル壁部とを接触することなく、環状壁部の外周端部の先端まで安定して折り曲げることができため、環状壁部の外周端部をウエル壁部に確実かつ安定して当接させることができる。これにより、ウエル部にリム空洞部を形成して所望の強度(剛性)を発揮し且つ高い軽量化効果を有する構成の、車両用ホイールを製造することができ得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1の車両用ホイール1の縦断面図である。
【図2】図1中のX部の拡大図である。
【図3】環状壁部53の外周端部53aに傾斜外端部53bを形成する端部加工工程を示す説明図である。
【図4】実施例1にかかる折曲加工工程を示す説明図である。
【図5】比較例にかかる折曲加工工程を示す説明図である。
【図6】実施例2の車両用ホイール61の縦断面図である。
【図7】図5中のY部の拡大図である。
【図8】実施例2にかかる折曲加工工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0023】
本発明にかかる車両用ホイール1の製造方法により成形される車両用ホイールを、図1,2に従って説明する。この車両用ホイール1は、アルミニウム合金を鋳造により一体成形してなるものであり、車軸が連結されるディスク部2と、タイヤが装着されるリム部3とを備えてなる。尚、本実施例1にあって、ディスク部2の背面側から意匠面側へ向かう方向を表方とし、逆向きを裏方としている。また、車両用ホイール1の中心軸線Oと直交するホイール径方向に沿って、該中心軸線Oへ向かう方向を径方向内方とし、逆向きを径方向外方としている。
【0024】
上記のディスク部2は、略円盤状のハブ取付部4と、該ハブ取付部4の外周縁から外方へ放射状に設けられた複数のスポーク部5とを備えている。ここで、ハブ取付部4には、その中央にハブ孔17が設けられ、該ハブ孔17の外側に周方向で互いに均等間隔となる位置に複数のボルト孔18が設けられている。また、互いに隣り合うスポーク部5の間に飾り孔6が夫々に形成されている。
【0025】
また、上記のリム部3には、その両端開口縁部にタイヤのビードを側方から保持する表裏のフランジ部10,11が形成され、各フランジ部10,11に、タイヤのビードを着座させて支持固定する表裏のビートシート部12,13が夫々に連成されている。さらに、表裏両側のビードシート部12,13の間には、タイヤ装着時に、タイヤのビードを落とすためのウエル部14が表裏方向に沿って設けられている。そして、表側ビードシート部12とウエル部14とがウエル壁部15を介して連成されている。ここで、表側フランジ部10から表側ビードシート部12とウエル壁部15とを介してウエル部14に連成されている部位が、本発明にかかるアウターリム部8であり、裏側フランジ部11から裏側ビードシート部13に至る部位が、本発明にかかるインナーリム部9である。
【0026】
ここで、表側フランジ部10は、表側ビードシート部12から径方向外側へ起立するように周成されている。換言すると、表側フランジ部10は、表裏方向のウエル部14に対して径方向外側へ起立するように形成されている。また、前記したウエル壁部15は、アウターリム部8を構成するものであって、ウエル部14から径方向外側へ所定角度により連成されている。一方、裏側フランジ部11にあっても、同様に、裏側ビードシート部13から径方向外側へ起立するように周成されている。
【0027】
さらに、本実施例1の車両用ホイール1にあっては、そのリム部3のアウターリム部8内に、異形断面形状(本実施例1では断面略四角形状)の内部空域により構成されるリム空洞部21が周成されている。
【0028】
尚、この車両用ホイール1にあっては、車両に装着された場合にホイール外観となるディスク部2の表面により、所謂意匠面が構成されている。そして、車両用ホイール1の上記した各部位はそれぞれ、中心軸線Oを中心とする同心状に形成されている。
【0029】
次に、上記した本実施例1の車両用ホイール1を製造するための製造方法について説明する。
所定温度に加熱保持したアルミニウム合金の溶湯を、上記した車両用ホイール1を成形するための鋳造金型のキャビティに充填し、冷却した後、鋳造成形体51(図3(A)参照)を取り出す鋳造工程を行う。
【0030】
この鋳造工程により成形される鋳造成形体51は、上記した車両用ホイール1に無駄肉が全体的に付いた形状であり、後述する切削加工工程で表面を切削加工することにより所望の車両用ホイール1の寸法形状に成形される。尚、図3,4にあっては、無駄肉の部分を省略しており、該車両用ホイール1の各構成が形成される部位には、同じ名称と符号を記して説明する。本実施例1の鋳造成形体51にあっては、図3のように、リム部3に、表側フランジ部10、ウエル部14、裏側ビードシート部13、裏側フランジ部11が形成されている。そして、ウエル部14の、表側フランジ部10寄りの部位には、該ウエル部14の外表面から外方へ突出する環状壁部53が周成されている。尚、この鋳造成形体51には、表側ビードシート部12が形成されていない。
【0031】
ここで、環状壁部53は、表側フランジ部10と対向するように、ホイール径方向に沿った略円環板形状に形成されている。この表側フランジ部10の裏側面は、上記のようにウエル部14に対して径方向外方へ起立する面状を成す。この表側フランジ部10の裏側面を有する部位が、本発明にかかる接合面部10aである。また、この環状壁部53は、そのホイール径方向に沿った径方向幅が、表側フランジ部10との表裏方向距離よりも長くなるように設定されている。このように環状壁部53の表裏方向位置と径方向幅とが設定される。
【0032】
このような鋳造工程にあっては、上記した鋳造成形体51を成形できるように設計された鋳造金型を用いている。尚、この鋳造工程は、従来から用いられている高圧鋳造、低圧鋳造、重力鋳造などの鋳造方法を適用できるため、その詳細については省略する。
【0033】
この鋳造工程の後に、本実施例1にあっては、鋳造成形体51の表側フランジ部10の接合面部10aに、係合段部25を形成する段部加工工程を行う。この段部加工工程では、切削加工によって、図3(A)のように、段差状の係合段部25をホイール周方向に亘って形成する。この係合段部25は、上記した環状壁部53を後述する折曲加工工程で折り曲げた場合にその外周端部53aを係止するためのものである。そのため、折り曲げた後の環状壁部53がアウターリム部8の表側フランジ部10を構成するように、ウエル部14の外表面から径方向外方への所定高さ位置に、係合段部25を設ける。また、係合段部25は、環状壁部53の外周端部53aを係止すれば良いことから、その表裏方向幅を可及的に短くするようにしている。このように係合段部25を設けた以外は、表側フランジ部10の接合面部10aに段差状となる部位を設けておらず、当該接合面部10aは、係合段部25から滑らかに径方向外方へ延成されている。
【0034】
さらに、段部加工工程では、表側フランジ部10の接合面部10aを切削加工することにより、該接合面部10aの鋳肌面を削除するようにしている。
【0035】
この段部加工工程の後に、本実施例1にあっては、鋳造成形体51の環状壁部53の外周端部53aに、傾斜外端部53bを形成する端部加工工程を行う。この端部加工工程では、環状壁部53の外周端部53aを、その裏面側(裏側フランジ部11側)から径方向外方に向かって傾斜状に切削加工することにより、図3(B)のように、傾斜外端部53bをホイール周方向に亘って形成する。この傾斜外端部53bが裏面側に形成されることによって、後述する折曲加工工程により環状壁部53を折り曲げた際に当該傾斜外端部53bが径方向外側となる。ここで、傾斜外端部53bは、ホイール径方向に対して10度以上かつ60度以下の範囲で傾斜する形状として形成する。尚、傾斜外端部53bは、全体的に前記の角度範囲内であれば、直線状に傾斜していても湾曲状に傾斜していても良い。
【0036】
さらに、端部加工工程では、傾斜外端部53bを形成すると共に、環状壁部53の表側面と裏側面とを切削加工することにより、環状壁部53の鋳肌面を削除するようにしている。
【0037】
上記した端部加工工程の後に、スピニング加工(絞り加工)により環状壁部53を表側フランジ部10側へ折り曲げる折曲加工工程を実施する。この折曲加工工程では、鋳造成形体51をその中心軸線Oを回転中心として所定回転速度で回転させながら、スピニング加工用のローラー状の折曲加工具31を裏側から環状壁部53に押し付けて表側へ移動させることにより、該環状壁部53を折り曲げる。詳述すると、図4(A)のように、回転させた鋳造成形体51の環状壁部53の裏側面53cに、前記折曲加工具31を裏側から押し付ける。そして、折曲加工具31を表方へ移動させることにより、環状壁部53を表側へ折り曲げていき、図4(B)のように、折曲加工具31を、環状壁部53の傾斜外端部53bに基縁まで移動させる。これにより、環状壁部53の外周端部53aまでスピニング加工する。ここで、環状壁部53の傾斜外端部53bを折曲加工具31により直接押し付けていないが、傾斜外端部53bは、その形状により環状壁部53の他部位に比して低剛性となっていることから、前記のように傾斜外端部53bの基縁まで折曲加工具31を押付けることによって、傾斜外端部53bを折り曲げることができる。そして、環状壁部53の外周端部53a(傾斜外端部53b)を、表側フランジ部10の係合段部25に係止させることができる。
【0038】
さらに、折曲加工具31を押し付けて環状壁部53を折り曲げることにより、該環状壁部53と表側フランジ部10との間に、傾斜外端部53bによってホイール周方向に亘って逃げ溝29が形成される。この逃げ溝29(傾斜外端部53b)により、折曲加工具31が環状壁部53(傾斜外端部53b)と接触せず、傾斜外端部53bを直接折り曲げることができない。そのため、折曲加工具31を、当該逃げ溝29の基縁まで移動させる。そして、この逃げ溝29によって、当該逃げ溝29の基縁まで移動した折曲加工具31が表側フランジ部10の接合面部10aに接触しない。
【0039】
このように、折曲加工工程では、折曲加工具31を環状壁部53に押し付けてその傾斜外端部53bの基縁まで移動することにより、該折曲加工具31と表側フランジ部10とを非接触としつつ、環状壁部53を折り曲げることができる。そして、環状壁部53の外周端部53aが表側フランジ部10の係合段部25に係止するまで、当該環状壁部53を折り曲げることができるため、当該スピニング加工によって環状壁部53を所望の折曲形態に安定して成形できる。
【0040】
尚、傾斜外端部53bによって形成される逃げ溝29が、折曲加工具31と表側フランジ部10とを非接触とする表裏方向幅に形成されるように、上記した端部加工工程で傾斜外端部53bの傾斜角度を適宜設定している。
【0041】
上記の折曲加工工程の後に、該折曲加工工程により折り曲げた環状壁部53の外周端部53aと表側フランジ部10とを溶接する接合工程を実施する。この接合工程では、溶接により、ホイール周方向に亘って全周溶接する。これにより、内部にホイール周方向に亘ってリム空洞部21を有するアウターリム部8を形成する。ここで、折り曲げた環状壁部53の外周端部53aと表側フランジ部10の係合段部25とが確実かつ安定して当接(係止)していることから、これら両者を容易に溶接することができる。これにより、当該溶接によって溶接不良が生ずることを可及的に抑制できる。さらに、本実施例1にあっては、環状壁部53の鋳肌面を除去し且つ表側フランジ部10の鋳肌面を除去していることから、溶接金属を安定して溶け込ませ易く、比較的容易かつ安定して溶接することができる。さらにまた、本実施例1にあっては、上記した逃げ溝29が形成されており、該逃げ溝29が外方へ拡開する形状に形成されることから、溶接の際に環状壁部53の外周端部53aと表側フランジ部10との内部まで充分に溶接することができるという優れた利点も有する。以上のことから、折り曲げた環状壁部53と表側フランジ部10とを強固に溶接することができ、所望の強度を有するアウターリム部8を形成できる。
【0042】
上記の接合工程の後に、所定の熱処理工程を実施し、その後、切削加工により所望の製品形状に成形する切削加工工程を行う。この切削加工工程では、環状壁部53を折り曲げたアウターリム部8を切削加工することにより、ウエル壁部15と表側ビードシート部12とを成形する。これにより、図2のように、上記したウエル部14から、ウエル壁部15と表側ビードシート部12とを介して表側フランジ部10に至る形状を整え、所望の形状のアウターリム部8を形成する。ここで、アウターリム部8を構成する環状壁部53を、その外周端部53aが表側フランジ部10の係合段部25に確実かつ安定して係止するように折り曲げていることから、これら両者を充分に溶接しており、溶接不良の発生を可及的に抑制できる。そのため、当該切削加工工程で切削加工により、亀裂の発生や溶接内部に発生した空隙の露出などの不具合が生じることを抑制できる。さらに、折り曲げた環状壁部53が上記接合工程により表側フランジ部10と強固に接合していることから、この切削加工によってアウターリム部8に変形等を生じない。以上のように、本実施例1の場合には、アウターリム部8を所望の形状に容易かつ適正に形成でき得る。
【0043】
さらに、ボルト孔やバルブ孔を穿設する工程、塗装工程、所定の検査工程を実施して、上記した本実施例1の車両用ホイール1を製造できる。これら塗装工程などは、従来と同様の方法を適用できるため、その詳細については省略する。
【0044】
このような本実施例1の車両用ホイール1の製造方法によれば、環状壁部53の外周端部53aに傾斜外端部53bを周成した後に、当該環状壁部53をスピニング加工して折り曲げることにより、傾斜外端部53bによって表側フランジ部10との間に逃げ溝29を周方向に亘って形成することから、折曲加工具31と表側フランジ部10とを接触することなく、環状壁部53を安定且つ適正に折り曲げることができる。ここで、傾斜外端部53bは、環状壁部53の他部位に比して板厚が薄くなっていることから、折曲加工具31により直接的に押し付けなくとも、表側フランジ部10に接触するように折り曲げることができる。そして、接合工程で溶接することにより、折り曲げた環状壁部53と表側フランジ部10とを充分に溶接することができるため、溶接不良の発生を可及的に抑制できる。これにより、所望の寸法形状と強度(剛性)とを有するアウターリム部8を安定して形成できる。このように、本実施例1の製造方法によって、内部にリム空洞部21を有するアウターリム部8を備えた構成の車両用ホイール1を、容易かつ安定して生産することができる。そして、この車両用ホイール1は、アウターリム部8がリム空洞部21により軽量化されていることから、所望の強度(剛性)を持ちつつ、軽量化した構成となっている。
【0045】
さらに、本実施例1の製造方法によれば、リム空洞部21を比較的大きな空域として形成することができ、車両用ホイール1の軽量化を一層進めることができ得る。例えば、傾斜外周部を形成しない環状壁部103をスピニング加工する比較例の場合と比較することによって説明する。この比較例では、図5(A)のように、鋳造加工により鋳造成形体101を成形した後かつ折曲加工工程の前に、表側フランジ部110の接合面部110aに、係合段部109と、該係合段部109よりも径方向外側部位に段差状の逃げ周部108とを周成する。この逃げ周部108は、当該環状壁部103をスピニング加工した際に、折曲加工具31と表側フランジ部110とが接触しないようにするためのものであり、これに基づいて当該逃げ周部108の表裏方向幅を設定している。そして、上述した実施例1の折曲加工工程と同様に、図5(B)のように、スピニング加工により環状壁部103を折り曲げる。ここで、比較例の場合には、表側フランジ部110に逃げ周部108が周成されていることから、折曲加工具31を環状壁部103の外周端部103aまで押し付けても、該折曲加工具31と表側フランジ部110とが接触しない。これにより、比較例の構成にあっても、環状壁部103を表側フランジ部110に当接するように確実に折り曲げることが可能である。しかし、比較例の場合には、表側フランジ部110に逃げ周部108を形成していることから、当該逃げ周部108より径方向内側部位の肉厚を厚くしなければならない。すなわち、本実施例1の表側フランジ部10に比して、比較例の表側フランジ部110は、その逃げ周部108の表裏方向幅に規定される余肉部位mだけ厚くなる。そのため、比較例の場合に環状壁部103を折り曲げて形成したリム空洞部111の体積が、本実施例1のリム空洞部21に比して小さくなってしまう。したがって、本実施例1の製造方法によれば、このような比較例による場合に比して、優れた軽量化効果を有する車両用ホイール1を製造することができる。
【0046】
尚、上記の比較例の場合は、上記のように、環状壁部103に傾斜外周部を形成せず且つ表側フランジ部110に逃げ周部108を形成した以外は実施例1と同じであり、実施例1と同じ構成要素には同じ符号を記し、その説明を省略している。
【実施例2】
【0047】
実施例2は、図6,7のように、リム部63のウエル部64にリム空洞部81が形成された車両用ホイール61の製造方法である。そして、アウターリム部68内には、空域(リム空洞部)を有していない。尚、実施例2にあっては、ウエル部64にリム空洞部81を形成し且つアウターリム部68がリム空洞部を有していない構成とした以外は上述した実施例1と同じ構成であるから、同じ構成要素には同じ符号を記してその説明を省略している。
【0048】
上述した実施例1と同様に鋳造工程により、鋳造成形体71を成形する。この鋳造成形体71は、上述した実施例1と同様に、無駄肉の部分を省略して表示している。この実施例2の鋳造成形体71のリム部63に、表側フランジ部10からウエル部64に至るアウターリム部68を備え、該アウターリム部68により表側ビードシート部12とウエル壁部65とを構成している。そして、本実施例2にあっては、ウエル部64に、その外表面から外方へ突出する環状壁部73が周成されている。ここで、環状壁部73は、ウエル壁部65と対向するように、ホイール径方向に沿った略円環板形状に形成されており、その径方向幅がウエル壁部65との表裏方向距離よりも長くなるように設定されている。
【0049】
この鋳造工程の後に、上記した実施例1と同様の段部加工工程を実行して、ウエル壁部65に段差状の係合段部75を形成する(図8(A)参照)。この係合段部75は、後述する折曲加工工程で折り曲げた環状壁部73の外周端部73aを係止するように、その高さ位置が設定されている。さらに、段部加工工程により、ウエル壁部65の外表面を切削加工して鋳肌面を除去する。
【0050】
この段部加工工程の後に、上記した実施例1と同様の端部加工工程を実行して、環状壁部73の外周端部73aに傾斜外端部73bを周成する(図8(A)参照)。この傾斜外端部73bは、環状壁部73の外周端部73aの裏面側から径方向外方に向かって傾斜状に切削加工することにより形成する。さらに、端部加工工程により、環状壁部73の表側面と裏側面とを切削加工して鋳肌面を除去する。
【0051】
この端部加工工程の後に、図8のように、環状壁部73をスピニング加工により折り曲げる折曲加工工程を行う。折曲加工工程のスピニング加工としては、上述した実施例1と同様に、鋳造成形体71を中心軸線Oを中心として回転させながら、折曲加工具31を裏側から環状壁部73に押し付けて表方へ移動させることにより、該環状壁部73を折り曲げていく。これにより、環状壁部73をウエル壁部65側へ折り曲げて、その外周端部73aをウエル壁部65の係合段部75に係止する。ここで、本実施例2の場合にあっても、環状壁部73の傾斜外端部73bによって、ウエル壁部65との間に逃げ溝79が周成される。スピニング加工では、前記逃げ溝79によって、折曲加工具31とウエル壁部65とを非接触とすることができると共に、該非接触としても環状壁部73の傾斜外端部53bが低剛性であることから、該環状壁部73の外周端部73aまで適正に折り曲げてウエル壁部65と接触させることができる。このようにスピニング加工することによって、環状壁部73を所望の折曲形態に安定して成形することができる。
【0052】
上記の折曲加工工程の後に、接合工程により、該折曲加工工程により折り曲げた環状壁部73の外周端部73aとウエル壁部15とを溶接する。これにより、リム空洞部81をホイール周方向に亘って形成する。ここで、本実施例2にあっても、折り曲げた環状壁部73とウエル壁部65とが確実かつ安定して当接(係止)していることから、これら両者を充分に溶接することができるため、溶接不良の発生を可及的に抑制できる。さらに、環状壁部73およびウエル壁部15の鋳肌面を除去していることから、溶接を安定して行い得る。さらにまた、上記した逃げ溝79が径方向外方へ拡開する形状に形成されていることから、内部まで充分に溶接できるという優れた利点も有する。
【0053】
この接合工程後に熱処理工程を実行した後に、上述した実施例1と同様の切削加工工程により所望の製品形状に成形する。この切削加工工程では、上記した無駄肉を除去して所定板厚とする。ここで、折曲加工した環状壁部73とウエル壁部15とは、上述したように充分に溶接されていることから、これら両者を溶接した部位を切削加工しても、溶接不良に伴って生じ得る亀裂の発生や空隙の露出等の不具合が生じることを抑制できる。このように、本実施例2にあっても、リム空洞部81を有するウエル部64を、所望の寸法形状と強度(剛性)とを有するものとして安定して形成できる。
【0054】
本実施例2の製造方法によれば、環状壁部73を折曲加工することにより、ウエル部64にリム空洞部81を有する車両用ホイール61を安定して製造することができる。本実施例2の場合にあっても、上述した実施例1と同様に、環状壁部73の外周端部73aに傾斜外端部73bを形成して該環状壁部73を折り曲げるようにしていることから、実施例1と同様の作用効果を奏し得る。すなわち、折曲加工具31とウエル壁部15とを非接触とし且つ環状壁部73を安定して折り曲げることができると共に、折り曲げた環状壁部73とウエル壁部65との溶接不良が生ずることを可及的に抑制できる。
【0055】
本実施例2の製造方法により成形される車両用ホイール61は、環状壁部73を折り曲げてリム空洞部81を形成した形状効果によってウエル部64の剛性が向上する。そのため、この剛性向上に相当する軽量化を実行することもでき得る。さらに、本実施例2にあっても、上述した実施例1の比較例と同様に逃げ周部をウエル壁部に形成した場合に比して、リム空洞部81の体積を大きく形成できるため、前記軽量化効果にも一層優れている。
【0056】
一方、上述した実施例1にあっては、アウターリム部にリム空洞部を有する構成とした車両用ホイールを成形するようにしているが、インナーリム部にリム空洞部を形成するようにしても良い。かかる場合には、ウエル部の裏側フランジ部寄りに環状壁部が周成された鋳造成形体を鋳造し、実施例1と同様に、端部加工工程、段部加工工程、折曲加工工程、接合工程などを順次実行することにより、所望の車両用ホイールを製造することができる。このようにインナーリム部にリム空洞部を形成した場合にあっても、環状隔壁を安定して折り曲げることができ、所望のインナーリム部を形成できるという、上述した実施例1と同様の作用効果を奏する。尚、リム空洞部を有するインナーリム部を形成することによって、その形状効果により当該インナーリム部の剛性を向上することができる。そのため、この剛性向上に相当する軽量化を行うことも可能である。
【0057】
上述した実施例1,2にあっては、環状壁部に傾斜外端部を形成する端部加工工程とフランジ部又はウエル壁部に係合段部を形成する段部加工工程とを別々に実行するようにしているが、両者を一つの工程として実行するようにしても良い。また、別々に実行する場合にあって、端部加工工程の後に段部加工工程を実行するようにしても良い。
【0058】
上述した実施例1,2にあっては、リム空洞部を形成して軽量化または剛性向上効果を発揮する車両用ホイールを成形するようにしているが、その他、リム空洞部によりヘルムホルツレゾネータなどの吸音空域を構成した車両用ホイールの製造方法にも適用できる。この場合にあっては、上述した実施例1,2と同様にリム空洞部を形成し、その他に吸音空域に必要な構成部位を形成する工程を適宜行う。このように、本発明にかかる製造方法によれば、ロードノイズを低減するという優れた効果を発揮する車両用ホイールも製造することができる。
【0059】
本発明にあっては、上述した実施例に限定されるものではなく、その他の構成についても、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0060】
1、61 車両用ホイール
2 ディスク部
3,63 リム部
8,68 アウターリム部
9 インナーリム部
10 表側フランジ部
10a 接合面部
11 裏側フランジ部
12 表側ビードシート部
13 裏側ビードシート部
14,64 ウエル部
15,65 ウエル壁部
21,81 リム空洞部
25,75 係合段部
29,79 逃げ溝
53,73 環状壁部
53a,73a 外周端部
53b,73b 傾斜外端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤのビードを支持する表裏のフランジ部およびビードシート部と表裏のビードシート部間に形成された表裏方向のウエル部とを具備するリム部と、車軸に連結されるディスク部とを備えた車両用ホイールの製造方法において、
前記リム部のウエル部の外表面から径方向外方へ突出する環状壁部を、少なくとも表裏いずれか一方のフランジ部寄りに周成する鋳造工程と、
前記リム部の環状壁部に他方のフランジ部側から所定の折曲加工具を押し当てて該環状壁部の外周端部まで絞り加工することにより、該環状壁部を一方のフランジ部側へ折り曲げて、該環状壁部の外周端部を当該フランジ部にホイール周方向に亘って当接させる折曲加工工程と、
折曲加工した環状壁部の外周端部とフランジ部とをホイール周方向全周に亘って接合する接合工程と
を順次実行することにより、前記ビードシート部とホイール周方向に沿って周成されたリム空洞部とを備えたアウターリム部および/又はインナーリム部を形成する製造方法であって、
前記鋳造工程後かつ折曲加工工程前に、前記環状壁部の外周端部に、他方のフランジ部側から径方向外方へ向かって傾斜する傾斜外端部をホイール周方向に亘って形成する端部加工工程を実行し、
前記折曲加工工程で、絞り加工により折り曲げる環状壁部の傾斜外端部によって、該環状壁部の外周端部まで絞り加工した折曲加工具とフランジ部とを非接触とするための逃げ溝が形成されるようにしていることを特徴とする車両用ホイールの製造方法。
【請求項2】
環状壁部と接合するフランジ部の接合面部に、該環状壁部の外周端部を係止する係合段部を形成する段部加工工程を、鋳造工程後且つ折曲加工工程前に実行するようにしていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ホイールの製造方法。
【請求項3】
タイヤのビードを支持する表裏のフランジ部およびビードシート部と、表裏のビードシート部間に形成された表裏方向のウエル部と、表側のビードシート部とウエル部とを連成するウエル壁部とを具備するリム部と、
車軸に連結されるディスク部とを備えた車両用ホイールの製造方法において、
前記リム部のウエル部の外表面から径方向外方へ突出する環状壁部を周成する鋳造工程と、
前記リム部の環状壁部に、裏側から所定の折曲加工具を押し当てて該環状壁部の外周端部まで絞り加工することにより、該環状壁部をウエル壁部にホイール周方向に亘って当接させる折曲加工工程と、
折曲加工した環状壁部の外周端部とフランジ部とをホイール周方向全周に亘って接合することにより、ホイール周方向に亘ってリム空洞部を形成する接合工程と
を順次実行する製造方法であって、
前記鋳造工程後かつ折曲加工工程前に、前記環状壁部の外周端部に、裏側から径方向外方へ向かって傾斜する傾斜外端部をホイール周方向に亘って形成する端部加工工程を実行し、
前記折曲加工工程で、絞り加工により折り曲げる環状壁部の傾斜外端部によって、該環状壁部の外周端部まで絞り加工した折曲加工具とウエル壁部とを非接触とするための逃げ溝が形成されるようにしていることを特徴とする車両用ホイールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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