説明

車両用ミラーホルダー

【課題】左右のドアミラーに共通して用いられるミラーホルダーにおいて、ハーネスを左右同一手順で取り回すとともに、取り回し後のハーネスの余長を左右で略等しくする。
【解決手段】ミラーホルダー3は、ミラー7の裏面に貼り付けられるホルダー本体部53と、ホルダー本体部53の中央部に設けられたピボット受部13と、第1及び第2アジャストギアと係合する第1〜第3アジャスタ嵌合部23,33,43と、ハーネス17a,27aを保持する第1〜第6ハーネス保持部63,64,73,74,83,84とを備えている。第1〜第3アジャスタ嵌合部23,33,43及び第1〜第6ハーネス保持部63,64,,73,74,83,84は、ピボット受部13の中心13aと第1アジャスタ嵌合部23の中心23aとを通る線に関して対称となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアミラーのミラーを保持するための車両用ミラーホルダーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用ドアミラーにおいては、その内部に組み込まれたミラー角度調整機構によって、ミラーの角度を電動で調整するものが知られている。このようなミラー角度調整機構には、ミラーホルダーを傾動可能に支持するピボットと、当該ピボットを中心として直角をなし且つ当該ピボットから等距離に位置する水平及び垂直角度調整アクチュエータとを備え、これら水平及び垂直角度調整アクチュエータを駆動させて、ピポットを中心として水平軸の周り及び垂直軸の周りにミラーホルダを傾動させることにより、ミラーの角度を調整するものが多い。
【0003】
ところで、ドアミラーのミラーの形状は、通常上下左右で非対称な形状であることから、ミラーの周縁部を保持するタイプのミラーホルダーでは、左右のミラーホルダーを共通仕様とすることができず、換言すると、左右で別の金型を製作しなければならず、金型制作費等の製造コストが嵩むという問題があったが、最近では、ミラーの周縁部を保持しないタイプのミラーホルダーが、具体的には、ミラーの裏面に貼り付けるタイプのミラーホルダーが提案されており(例えば特許文献1)、かかる問題は解消されつつある。
【0004】
そうして、ミラーの裏面に貼り付けるタイプのミラーホルダーを、上記のようなミラー角度調整機構が組み込まれたドアミラーに用いる場合には、例えば、ミラーホルダーの中央部に設けられたピボット受部の右側に水平角度調整アクチュエータが係合する第1係合部を設けるとともに、ピボット受部の上下両側に垂直角度調整アクチュエータが係合する第2及び第3係合部を設けることにより、右側のドアミラーでは、水平及び垂直角度調整アクチュエータをそれぞれ第1及び第3係合部に係合させる一方、かかるミラーホルダーを上下反転させて用いる左側のドアミラーでは、水平及び垂直角度調整アクチュエータをそれぞれ第1及び第2係合部に係合させることで、左右のミラーホルダーの共通を図ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−168605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の如く、ミラーの裏面に貼り付けるタイプのミラーホルダーによれば、左右のミラーホルダーを共通仕様とすることが可能となるが、その実用化に当たっては、さらに以下のような問題がある。
【0007】
すなわち、近年のドアミラーには、ミラー角度調整機構の他にも、ミラーを加熱するためのヒーターや、後方から接近する車両を検知するシステムの表示部などの電動機構が組み込まれているものが多く、電動機構を外部電源と接続するためのハーネスは、通常、これらの電動機構の近くに設けられたミラーホルダー上を取り回されて外部電源(車体側)へ至る。このように、ハーネスを取り回す場合には、ハーネスがミラーホルダーとミラー角度調整機構との間に挟まれるのを避けるべく、ミラーホルダーにおけるミラー角度調整機構に対応する部分よりも外側でハーネスを保持することが多いが、かかるミラーホルダーを上下反転又は左右反転させて反対側のドアミラーに適用した場合には、左右のドアミラーでハーネスを保持する部分の位置が変わるため、換言すると、ハーネスの取り回し経路が変わるため、作業者が作業しづらくなり、作業効率が低下するおそれがある。また、左右のドアミラーでハーネスの取り回し経路が異なると、取り回し後のハーネスの余長が左右でばらついてしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ミラー角度調整機構が組み込まれた左右の車両用ドアミラーに共通して用いることが可能なミラーホルダーにおいて、ドアミラーに設けられた電動機構のハーネスを左右同一手順で取り回すとともに、取り回し後のハーネスの余長を左右で略等しくする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明では、ドアミラーに設けられた電動機構のハーネスを保持するハーネス保持部を、ピボット中心と、ミラー角度調整機構の水平又は垂直角度調整アクチュエータと係合する係合部の中心と、を通る線に関して対称となるように形成している。
【0010】
具体的には、第1の発明は、車両用ドアミラーに組み込まれたミラー角度調整機構のピボット軸により傾動可能に支持されるとともに、当該ミラー角度調整機構に設けられた、当該ピボット軸を中心として直角をなし且つ当該ピボット軸から等距離に位置する水平及び垂直角度調整アクチュエータによって当該ピボット軸を中心として傾動される、ミラーを保持するための車両用ミラーホルダーを対象とする。
【0011】
そして、一面側が上記ミラーの裏面に貼り付けられるホルダー本体部と、上記ホルダー本体部の他面側の中央部に設けられ、上記ピボット軸と係合するピボット受部と、上記ホルダー本体部の他面側における上記水平角度調整アクチュエータに対応する位置に設けられ、当該水平角度調整アクチュエータと係合する第1係合部と、上記ホルダー本体部の他面側における上記垂直角度調整アクチュエータに対応する位置に設けられ、当該垂直角度調整アクチュエータと係合する第2係合部と、上記ドアミラーに設けられた電動機構を外部電源と接続するためのハーネスを、上記第1及び第2係合部よりも外側で保持するように、上記ホルダー本体部の外周縁部に設けられたハーネス保持部と、を備え、上記第1及び第2係合部並びに上記ハーネス保持部は、上記ピボット受部の中心と当該第1係合部の中心又は当該第2係合部の中心とを通る線に関して対称となるようにそれぞれ形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
なお、本発明において、「ピボット受部の中心」、「第1係合部の中心」及び「第2係合部の中心」とは、ミラーホルダーを他面側から見た場合における、ピボット受部、第1係合部及び第2係合部の平面的な中心を意味する。
【0013】
第1の発明では、水平角度調整アクチュエータと垂直角度調整アクチュエータとが、ピボット軸を中心として直角をなし且つピボット軸から等距離に位置するようにミラー角度調整機構に設けられているところ、これら水平及び垂直角度調整アクチュエータに対応する位置にそれぞれ設けられた第1及び第2係合部も、ホルダー本体部の他面側において、ピボット軸と係合するピボット受部を中心として直角をなし且つピボット受部から等距離に位置することになる。
【0014】
そうして、第1及び第2係合部は、ピボット受部の中心と当該第1係合部(又は当該第2係合部)の中心とを通る線に関して対称となるようにそれぞれ形成されていることから、例えば、水平角度調整アクチュエータがピボット軸の右側に位置し、且つ、垂直角度調整アクチュエータがピボット軸の下側に位置している場合には、ピボット受部の右側(又は左右両側)に第1係合部が位置するとともに、ピボット受部の上下両側(又は下側)に上側及び下側第2係合部が位置することになる。これにより、例えば、右側のドアミラーでは、水平及び垂直角度調整アクチュエータをそれぞれ第1係合部及び下側第2係合部に係合させる一方、かかるミラーホルダーを上下反転させて用いる左側のドアミラーでは、水平及び垂直角度調整アクチュエータをそれぞれ第1係合部及び反転して下側に位置する上側第2係合部に係合させることで、ミラーホルダーを左右の車両用ドアミラーに共通して用いることが可能となる。
【0015】
一方、ホルダー本体部の外周縁部に設けられたハーネス保持部は、電動機構を外部電源と接続するためのハーネスを、第1及び第2係合部よりも外側で保持していることから、ミラーの角度調整がハーネスによって阻害されるのを(例えば、ミラーホルダーとミラー角度調整機構との間にハーネスが挟まれることによって調整角度に不足が生じるのを)抑えることができる。
【0016】
そうして、ハーネス保持部は、ピボット受部の中心と第1係合部(又は第2係合部)の中心とを通る線に関して対称となるようにそれぞれ形成されていることから、ミラーホルダーを上下(又は左右)反転させて反対側のドアミラーに適用した場合には、左右対称であることを除けば、左右のドアミラーでハーネス保持部の位置が同じになることから、作業者はハーネスを左右同一手順で取り回すことができ、作業効率が向上する。また、左右のドアミラーでハーネスの取り回し経路が同じになることから、取り回し後のハーネスの余長を左右で略等しくすることが可能となる。
【0017】
以上により、ミラー角度調整機構が組み込まれた左右の車両用ドアミラーに共通して用いることが可能なミラーホルダーにおいて、ドアミラーに設けられた電動機構のハーネスを左右同一手順で取り回すとともに、取り回し後のハーネスの余長を左右で略等しくすることができる。
【0018】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記ホルダー本体部は、略板状であり、且つ、上記ピボット受部の中心と上記第1係合部の中心又は上記第2係合部の中心とを通る線に関して対称となるように形成され、上記各ハーネス保持部は、上記ホルダー本体部の外周縁部に設けられた一対のスリット状開口部の間に形成された舌状片であり、その先端部が他面側に反るように形成されているとともに、当該一対のスリット状開口部を繋ぐように、当該舌状片が延びる方向と直交する方向に延び、且つ、一面側に開口する溝部を、基端部側に有していることを特徴とするものである。
【0019】
第2の発明によれば、ハーネス保持部は、例えば、ホルダー本体部の外周縁部から外側に突出するように形成されたものとは異なり、ホルダー本体部の外周縁部に設けられた一対のスリット状開口部の間に形成された舌状片であることから、換言すると、ハーネス保持部の先端はホルダー本体部の外周縁よりも外側に飛び出していないことから、ハーネス保持部が簡単に折れるのを抑えることができる。
【0020】
また、ハーネス保持部は略板状のホルダー本体部に形成された舌状片であり可撓性を有しているところ、他面側に反るように形成されたハーネス保持部の先端部にハーネスを近づけて、ハーネスをハーネス保持部の基端部側に引っ張ると、当該ハーネスの一部が、可撓性を有するハーネス保持部とミラーの裏面との間を簡単にすり抜けて、基端部側に形成された溝部に収容される。このように、ハーネスを簡単な作業でハーネス保持部に保持させることが可能となることから、作業効率をより一層向上させることができる。
【0021】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記ホルダー本体部の他面側には、当該ホルダー本体部の剛性を高めるための補強リブが上記ハーネス保持部を避けるように突設されていることを特徴とするものである。
【0022】
第3の発明によれば、補強リブがハーネス保持部を避けるように突設されていることから、ハーネス保持部の可撓性を維持しつつ、ホルダー本体部の剛性を高めることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る車両用ミラーホルダーによれば、ハーネス保持部は、ピボット受部の中心と第1係合部の中心又は当該第2係合部の中心とを通る線に関して対称となるように形成されていることから、ミラーホルダーを上下反転又は左右反転させて左右のドアミラーに適用すると、左右のドアミラーでハーネス保持部の位置が同じになることから、作業者はハーネスを左右同一手順で取り回すことができる。また、左右のドアミラーでハーネスの取り回し経路が同じになることから、取り回し後のハーネスの余長を左右で略等しくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用ドアミラーを示す斜視図である。
【図2】車両用ドアミラーの分解斜視図である。
【図3】ミラー角度調整ユニットを示す斜視図である。
【図4】ミラーホルダーを車両前後方向前側から見た図である。
【図5】図4のV−V線の矢視断面図である。
【図6】図4のVI−VI線の矢視断面図である。
【図7】右側のミラーに貼り付けられたミラーホルダーを車両前後方向前側から見た図である。
【図8】左側のミラーに貼り付けられたミラーホルダーを車両前後方向前側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用ドアミラーを示す斜視図であり、図2は、ドアミラーの分解斜視図である。このドアミラー1は、運転者の後方確認のために用いられるものであり、図1に示すように、フロントドア31のアウターパネル31aにミラーベース21が固定されるようになっている。なお、以下の説明では、主として右側のドアミラー1について説明するが、左側のドアミラーについては、右側のドアミラー1と左右対称であることを除けば同様の構成であることから、その説明を一部省略する。
【0027】
このドアミラー1は、図2に示すように、後方確認用のミラー7と、ミラー7を保持するためのミラーホルダー3と、ミラー7の角度を電動で調整するためのミラー角度調整ユニット5と、ミラー角度調整ユニット5が固定されるバイザー9と、当該バイザー9にミラー角度調整ユニット5とは反対側で固定される電動格納ユニット39と、バイザー9の下側部分を覆う樹脂製のアンダーパネル19と、バイザー9の上側部分を覆う樹脂製のアッパーパネル29と、アウターパネル31aに対してバイザー9を支持するためのミラーベース21と、を備えている。
【0028】
ミラー7は、後述するように、ミラーホルダー3及びミラー角度調整ユニット5を介してバイザー9に保持されている一方、アンダーパネル19及びアッパーパネル29は、バイザー9に固定された電動格納ユニット39を覆うように、バイザー9に対してミラー取付側とは反対側から取り付けられており、これらミラー7、ミラーホルダー3、ミラー角度調整ユニット5、バイザー9、電動格納ユニット39、アンダーパネル19及びアッパーパネル29が、ドアミラー1のミラーボディ11を構成している。
【0029】
ミラーベース21は、当該ミラーベース21とアウターパネル31aとの間にシールラバー41を介設させるようにして、アウターパネル31aに固定されており、かかるミラーベース21の上端部には、電動格納ユニット39の回転軸(図示せず)が取り付けられている。これにより、電動格納ユニット39を動作させると、ミラーボディ11が回転軸周りに回動して、ドアミラー1が、格納姿勢(ミラー面と略垂直な方向と車幅方向とが略一致した姿勢)と、展開姿勢(ミラー面と略垂直な方向と車両前後方向とが略一致した姿勢)と、を採ることになる。
【0030】
なお、以下の説明では、便宜上ドアミラー1が展開姿勢をとった状態について説明し、ミラー面と略垂直な方向を「車両前後方向」、ドアミラー1の幅方向を「車幅方向」、ミラーホルダー3におけるミラー取付側を「後側」、ミラーホルダー3におけるミラー取付側とは反対側を「前側」という。
【0031】
上記ミラー7は、その裏面(前側の面)に、当該ミラー7を加熱するためのヒーター17と、後方から接近する車両を検知するシステムの表示ユニット27と、を備えている。ヒーター17は、通電されることでミラー7を加熱して、ミラー7の鏡面に付着した水滴を除去するように構成されている一方、表示ユニット27は、隣車線上で後方から接近する車両をシステムが検知すると、検知した側のミラー7の鏡面でインジケーターを点灯させて、車線変更の中断等を運転者に促すように構成されている。これらヒーター(電動機構)17及び表示ユニット(電動機構)27は、ハーネス(より厳密にはハーネスを構成する束ねられた2本の電線)17a,27aを介して車体側の外部電源(図示せず)とそれぞれ接続されている。なお、ミラー7は、ヒーター17及び表示ユニット27を一対に装備しているタイプでもよいし、ヒーター17及び表示ユニット27を後付けするタイプでもよい。
【0032】
上記ミラー角度調整ユニット(ミラー角度調整機構)5は、ミラーホルダー3の設置角度を左右方向及び上下方向に微調整することにより、ミラーホルダー3に保持されるミラー7の角度を調整するものであり、バイザー9に固定されてドアミラー1の内部に組み込まれている。このミラー角度調整ユニット5は、図3に示すように、ミラーホルダー3を傾動可能に支持するためのピボットセンター(ピボット軸)15と、その内部に設けられた不図示の電動モータによって駆動される第1及び第2アジャストギア25,35とを有している。なお、図3中の符号45は、ミラーホルダー3の前側に当接することによりミラー7の角度を検出するスライドピンを示す。
【0033】
ピボットセンター15は、ミラー角度調整ユニット5の中央部から車両前後方向後側に突設されているとともに、その先端部(後側の端部)に概略球状をした球状部15aを有しており、かかる球状部15aが後述するミラーホルダー3のピボット受部13に嵌められることで、ミラーホルダー3を支持するようになっている。
【0034】
第1及び第2アジャストギア25,35は、ミラー角度調整ユニット5が右側のドアミラー1に組み込まれた状態では、第1アジャストギア25がピボットセンター15に対して車幅方向外側(右側)に位置する一方、第2アジャストギア35がピボットセンター15の下側に位置し、且つ、第1アジャストギア25とピボットセンター15との中心間距離と、第2アジャストギア35とピボットセンター15との中心間距離とが等しくなるように配置されている。換言すると、第1及び第2アジャストギア25,35は、ピボットセンター15を中心として直角をなし且つ当該ピボットセンター15から等距離に位置している。各アジャストギア25,35は、その先端部(後側の端部)に、後述するミラーホルダー3の各アジャスタ嵌合部25,35,45に係合する球状部25a,35aを有するとともに、その基端寄り(前側寄り)に、電動モータによって駆動されて、前側に引っ込んだり、後側に突出したりする略円筒状の胴部25b,35bを有している。
【0035】
このミラー角度調整ユニット5と上記ミラー7との間に設けられる上記ミラーホルダー3は、ポリプロピレン等の合成樹脂成型品であり、その後側(一面側)でミラー7を保持する一方、その前側(他面側)でミラー角度調整ユニット5に支持されている。このミラーホルダー3は、図4に示すように、略板状のホルダー本体部53と、ホルダー本体部53の前側面の中央部に設けられたピボット受部13と、ホルダー本体部53の前側面における第1アジャストギア25に対応する位置に設けられた第1アジャスタ嵌合部23と、ホルダー本体部53の前側面における第2アジャストギア35に対応する位置に設けられた第2アジャスタ嵌合部33と、ピボット受部13の中心13aと第1アジャスタ嵌合部23の中心23aとを通る線に関して第2アジャスタ嵌合部33と対称となるように設けられた第3アジャスタ嵌合部43と、第1〜第3アジャスタ嵌合部23,33,43よりも外側でハーネス17a,27aを保持するように、ホルダー本体部53の外周縁部に設けられた第1〜第6ハーネス保持部63,64,73,74,83,84と、を備えている。なお、ピボット受部13の中心13aとは、ミラーホルダー3を車側から見た場合における、ピボット受部13の平面的な中心を意味し、第1アジャスタ嵌合部23の中心23aとは、ミラーホルダー3を車側から見た場合における、第1アジャスタ嵌合部23の平面的な中心を意味する。
【0036】
ホルダー本体部53は、略六角形状の樹脂プレートの車幅方向内側の側縁部をコ字状に切り欠いたような形状に形成されており、図4から明らかなように、ピボット受部13の中心13aと第1アジャスタ嵌合部23の中心23aとを通る線(本実施形態では、ドアミラー1の車体取付状態における、ピボット受部13の中心13aを通る水平線Hと一致)に関して対称な形状となっている。
【0037】
このホルダー本体部53は、不図示の両面テープ又は接着剤によりその後側面がミラー7の裏面7a(より厳密にはヒーター17の前側面)に貼り付けられるところ、図5及び図6に示すように、その後側面の中央部に略平らに形成された平面領域53cと、当該平面領域53cの外側に湾曲形成された曲面領域53dとを有していることから、平面鏡及び凸面鏡のいずれでも安定して保持することが可能となっている。また、ホルダー本体部53の前側面には、ピボット受部13を中心として放射状に延びる第1補強リブ53aと、これと交差するように、ピボット受部13を中心とする略円弧状に形成された第2補強リブ53bと、が突設されており、これにより、略板状のホルダー本体部53の剛性が高められている。なお、このホルダー本体部53は、コ字状の切欠部53eを有していることから、ハーネス17aの基端の位置がヒーター17の種類によって多少異なっても、ヒーター17から延びるハーネス17aと干渉しないようになっている。
【0038】
ピボット受部13は、概略筒状に形成されていて、その内部にピボットセンター15の球状部15aが入り込んで係合するように構成されており、これにより、ミラーホルダー3がミラー角度調整ユニット5に当該球状部15aを中心として傾動可能に支持されている。
【0039】
第1アジャスタ嵌合部(第1係合部)23は、第1アジャストギア25に対応するように、ピボット受部13に対して車幅方向外側(右側)に位置している。この第1アジャスタ嵌合部23は、図5に示すように、半球状の空間部23bを有するように形成されており、かかる空間部23bに第1アジャストギア25の球状部25aが嵌められることにより、第1アジャストギア25と係合している。このため、第1アジャストギア25の胴部25bが電動モータによって駆動されて、前側に引っ込んだり、後側に突出したりすると、これに伴ってミラーホルダー3がピボット受部13を中心として垂直軸の周りに傾動し、ミラー7の水平角度が変化する。つまり、ミラー角度調整ユニット5が右側のドアミラー1に組み込まれた状態では、第1アジャストギア25はミラー7の水平角度を調整する水平角度調整アクチュエータとして機能する。
【0040】
他方、第2アジャスタ嵌合部(第2係合部)33は、第2アジャストギア35に対応するように、ピボット受部13の下側に位置している。この第2アジャスタ嵌合部33は、第1アジャスタ嵌合部23と同様に、半球状の空間部を有するように形成されており、かかる空間部に第2アジャストギア35の球状部35aが嵌められることにより、第2アジャストギア35と係合している。このため、第2アジャストギア35の胴部35bが電動モータによって駆動されて、前側に引っ込んだり、後側に突出したりすると、これに伴ってミラーホルダー3がピボット受部13を中心として水平軸Hの周りに傾動し、ミラー7の鉛直角度が変化する。つまり、ミラー角度調整ユニット5が右側のドアミラー1に組み込まれた状態では、第2アジャストギア35はミラー7の垂直角度を調整する垂直角度調整アクチュエータとして機能する。
【0041】
なお、第3アジャスタ嵌合部43は、右側のドアミラー1においては機能しないが、上述の如く、ピボット受部13の中心13aと第1アジャスタ嵌合部23の中心23aとを通る線に関して第2アジャスタ嵌合部33と対称となるように設けられていることから、第2アジャスタ嵌合部33と同様の構造及び機能を有している。
【0042】
第1及び第2ハーネス保持部63,73は、各々ホルダー本体部53の上側の外周縁部に設けられた一対のスリット状開口部93a,93aの間に形成された舌状片であり、各々ピボット受部13を中心とする放射状に延びている。なお、以下の説明では、第1ハーネス保持部63について説明するが、第2ハーネス保持部73については、第1ハーネス保持部63と同様の構成であることから、その説明を省略する。
【0043】
第1ハーネス保持部63は、図6に示すように、その付根部から前方に突設された内側横板部63aと、当該内側横板部63aの前端から外側に延びる竪板部63bと、当該竪板部63bの外側端から後側に延びる外側横板部63cと、当該外側横板部63cの後端から外側に向かうほど前側に傾斜して延びる先端板部63dとを有している。換言すると、第1ハーネス保持部63は、その先端部63eが前側に反るように形成されている一方、一対のスリット状開口部93a,93aを繋ぐように、舌状片が延びる方向と直交する方向に延び、且つ、後側に開口する溝部63fを、その基端部側に有している。
【0044】
このように形成された第1ハーネス保持部63は、略板状のホルダー本体部53に形成された舌状片であり可撓性を有していることから、図6に示すように、前側に反るように形成された第1ハーネス保持部63の先端部63eに、表示ユニット27のハーネス27aを近づけて、ハーネス27aを第1ハーネス保持部63の基端部側(白抜き矢印の方向)に引っ張ると、当該ハーネス27aの一部(図7の点線部分)が、第1ハーネス保持部63とミラー7の裏面7aとの間を簡単にすり抜けて溝部63fに収容されるようになっている。
【0045】
加えて、溝部63fは、一対のスリット状開口部93a,93aを繋ぐように、放射状に延びている第1ハーネス保持部63と直交するように延びており、且つ、第2ハーネス保持部73も同様の溝部73aを有していることから、これらの溝部63f,73aに収容されるハーネス27aは、図7に示すように、第1〜第3アジャスタ嵌合部23,33,43よりも外側で、ピボット受部13を中心とする放射線と直交する円弧状をなすように保持される。これにより、ミラーホルダー3とミラー角度調整ユニット5との間にハーネス27aが挟まれるのを抑えて、ミラー7の角度調整がハーネス27aによって阻害されるのを回避することができる。
【0046】
なお、第4及び第5ハーネス保持部64,74は、右側のドアミラー1においては機能しないが、ピボット受部13の中心13aと第1アジャスタ嵌合部23の中心23aとを通る線に関して第1及び第2ハーネス保持部63,73と対称となるように形成されていることから、第1及び第2ハーネス保持部63,73と同様の構造及び機能を有している。
【0047】
第3ハーネス保持部83は、ホルダー本体部53のコ字状の切欠部53eの上側に形成されたコ字状のスリット状開口部93bに囲まれた、上方に延びる舌状片である。第3ハーネス保持部83は、第1及び第2ハーネス保持部63,73と同様に、その先端部が前側に反るように形成されている一方、車幅方向に延び且つ後側に開口する溝部83aを、基端部側に有している。これにより、ヒーター17のハーネス17aと表示ユニット27のハーネス27aとを束ねた後、これらのハーネス17a,27aを第3ハーネス保持部83の先端部に近づけて下側に引っ張ると、当該ハーネス17a,27aの一部が、第3ハーネス保持部83とミラー7の裏面7aとの間を簡単にすり抜けて溝部83aに収容されるようになっている。
【0048】
なお、第6ハーネス保持部84は、右側のドアミラー1においては機能しないが、ピボット受部13の中心13aと第1アジャスタ嵌合部23の中心23aとを通る線に関して第3ハーネス保持部83と対称となるように形成されていることから、第3ハーネス保持部83と同様の構造及び機能を有している。また、上記第1及び第2補強リブ53a,53bは、これら第1〜第6ハーネス保持部63,64,…を避けるように突設されていることから、各ハーネス保持部63,64,…の可撓性は維持されている。
【0049】
以上のように、本実施形態に係るミラーホルダー3は、ホルダー本体部53、第1〜第3アジャスタ嵌合部23,33,43及び第1〜第6ハーネス保持部63,64,…が、ピボット受部13の中心13aと第1アジャスタ嵌合部23の中心23aとを通る線に関して対称となるように形成されていることから、図8に示すように、当該ミラーホルダー3を上下反転させることにより、左側のドアミラーにも適用することが可能となっている。
【0050】
この場合には、第2アジャストギア35がピボットセンター15に対して車幅方向外側(左側)に位置する一方、第1アジャストギア25がピボットセンター15の下側に位置する。そうして、第1アジャスタ嵌合部23は、ピボット受部13に対して車幅方向外側(左側)に位置して、第2アジャストギア35と係合する一方、第3アジャスタ嵌合部(第2係合部)43は、ピボット受部13の下側に位置して、第1アジャストギア25と係合する。したがって、ミラー角度調整ユニット5が左側のドアミラーに組み込まれた状態では、第2アジャストギア35がミラー7の水平角度を調整する水平角度調整アクチュエータとして機能する一方、第1アジャストギア25がミラー7の垂直角度を調整する垂直角度調整アクチュエータとして機能することになる。
【0051】
そうして、左側のドアミラーでは、第4、第5及び第6ハーネス保持部64,74,84が、ミラーホルダー3の上側に位置することになるが、これら第4、第5及び第6ハーネス保持部64,74,84は、左右対称であることを除いて、第1、第2及び第3ハーネス保持部63,73,83と同じ位置となるので、作業者はハーネス17a,27aを右側のドアミラー1と同一手順で取り回すことができる。また、左右のドアミラーでハーネス17a,27aの取り回し経路が同じになることから、取り回し後のハーネス17a,27aの余長を左右で略等しくすることができる。
【0052】
−効果−
本実施形態によれば、ホルダー本体部53の外周縁部に設けられた第1〜第6ハーネス保持部63,64,…は、ヒーター17及び表示ユニット27のハーネス17a,27aを、第1〜第3アジャスタ嵌合部23,33,43よりも外側で保持することから、ミラー7の角度調整がハーネス27aによって阻害されるのを抑えることができる。
【0053】
また、ミラーホルダー3を上下反転させて左側のドアミラーに適用した場合には、左右のドアミラーで第1〜第3ハーネス保持部63,73,83の位置と第4〜第6ハーネス保持部64,74,84の位置とが同じになることから、作業者はハーネス17a,27aを左右同一手順で取り回すことができ、作業効率が向上する。また、左右のドアミラーでハーネス17a,27aの取り回し経路が同じになることから、取り回し後のハーネス17a,27aの余長を左右で略等しくすることが可能となる。
【0054】
さらに、第1〜第6ハーネス保持部63,64,…の先端はホルダー本体部53の外周縁よりも外側に飛び出していないので、第1〜第6ハーネス保持部63,64,…が簡単に折れるのを抑えることができる。
【0055】
また、ハーネス17a,27aは、簡単な作業で第1〜第6ハーネス保持部63,64,…の溝部に収容されることから、作業効率をより一層向上させることができる。
【0056】
さらに、第1及び第2補強リブ53a,53bが第1〜第6ハーネス保持部63,64,…を避けるように突設されていることから、第1〜第6ハーネス保持部63,64,…の可撓性を維持しつつ、ホルダー本体部53の剛性を高めることができる。
【0057】
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0058】
上記実施形態では、第1〜第3アジャスタ嵌合部23,33,43及び第1〜第6ハーネス保持部63,64,…を、ピボット受部13の中心13aと第1アジャスタ嵌合部23の中心23aとを通る線に関して対称となるように形成したが、これに限らず、第1〜第3アジャスタ嵌合部23,33,43及び第1〜第6ハーネス保持部63,64,…を、ピボット受部13の中心13aと第2アジャスタ嵌合部33の中心とを通る線に関して対称となるように形成してもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、ホルダー本体部53も、ピボット受部13の中心13aと第1アジャスタ嵌合部23の中心23aとを通る線に関して対称となるように形成したが、これに限らず、ホルダー本体部53自体は線対称形状としなくてもよい。
【0060】
さらに、上記実施形態では、ピボット受部13の中心13aと第1アジャスタ嵌合部23の中心23aとを通る線と、ドアミラー1の車体取付状態におけるピボット受部13の中心13aを通る水平線Hとが一致するようにしたが、第1〜第3アジャスタ嵌合部23,33,43及び第1〜第6ハーネス保持部63,64,…が、ピボット受部13の中心13aと第1又は第2アジャスタ嵌合部23,33の中心23a,33aとを通る線に関して対称である限り、これらの線が水平又は垂直方向に延びている必要はない(水平又は垂直方向に対して傾いていてもよい)。
【0061】
また、上記実施形態では、ミラーホルダー3に、先端部が他面側に反るとともに溝部が形成されたハーネス保持部を6つ設けたが、ハーネス保持部の形状及び個数はこれに限定されない。
【0062】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上説明したように、本発明は、車両用ドアミラーのミラーを保持するためのミラーホルダー等について有用である。
【符号の説明】
【0064】
1 車両用ドアミラー
3 ミラーホルダー
5 ミラー角度調整ユニット(ミラー角度調整機構)
7 ミラー
13 ピボット受部
13a 中心
15 ピボットセンター(ピボット軸)
17 ヒーター(電動機構)
17a ハーネス
23 第1アジャスタ嵌合部(第1係合部)
25 第1アジャストギア(水平角度調整アクチュエータ)
27 表示ユニット(電動機構)
27a ハーネス
33 第2アジャスタ嵌合部(第2係合部)
35 第2アジャストギア(垂直角度調整アクチュエータ)
43 第3アジャスタ嵌合部(第2係合部)
53 ホルダー本体部
53a 第1補強リブ(補強リブ)
53b 第2補強リブ(補強リブ)
63 第1ハーネス保持部(ハーネス保持部)
63e 先端部
63f 溝部
64 第4ハーネス保持部(ハーネス保持部)
73 第2ハーネス保持部(ハーネス保持部)
74 第5ハーネス保持部(ハーネス保持部)
93a スリット状開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアミラーに組み込まれたミラー角度調整機構のピボット軸により傾動可能に支持されるとともに、当該ミラー角度調整機構に設けられた、当該ピボット軸を中心として直角をなし且つ当該ピボット軸から等距離に位置する水平及び垂直角度調整アクチュエータによって当該ピボット軸を中心として傾動される、ミラーを保持するための車両用ミラーホルダーであって、
一面側が上記ミラーの裏面に貼り付けられるホルダー本体部と、
上記ホルダー本体部の他面側の中央部に設けられ、上記ピボット軸と係合するピボット受部と、
上記ホルダー本体部の他面側における上記水平角度調整アクチュエータに対応する位置に設けられ、当該水平角度調整アクチュエータと係合する第1係合部と、
上記ホルダー本体部の他面側における上記垂直角度調整アクチュエータに対応する位置に設けられ、当該垂直角度調整アクチュエータと係合する第2係合部と、
上記ドアミラーに設けられた電動機構を外部電源と接続するためのハーネスを、上記第1及び第2係合部よりも外側で保持するように、上記ホルダー本体部の外周縁部に設けられたハーネス保持部と、を備え、
上記第1及び第2係合部並びに上記ハーネス保持部は、上記ピボット受部の中心と当該第1係合部の中心又は当該第2係合部の中心とを通る線に関して対称となるようにそれぞれ形成されていることを特徴とする車両用ミラーホルダー。
【請求項2】
請求項1記載の車両用ミラーホルダーにおいて、
上記ホルダー本体部は、略板状であり、且つ、上記ピボット受部の中心と上記第1係合部の中心又は上記第2係合部の中心とを通る線に関して対称となるように形成され、
上記各ハーネス保持部は、上記ホルダー本体部の外周縁部に設けられた一対のスリット状開口部の間に形成された舌状片であり、その先端部が他面側に反るように形成されているとともに、当該一対のスリット状開口部を繋ぐように、当該舌状片が延びる方向と直交する方向に延び、且つ、一面側に開口する溝部を、基端部側に有していることを特徴とする車両用ミラーホルダー。
【請求項3】
請求項2記載の車両用ミラーホルダーにおいて、
上記ホルダー本体部の他面側には、当該ホルダー本体部の剛性を高めるための補強リブが上記ハーネス保持部を避けるように突設されていることを特徴とする車両用ミラーホルダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−10383(P2013−10383A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143156(P2011−143156)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000147660)株式会社石▲崎▼本店 (28)
【Fターム(参考)】