説明

車両用ループキャリアクロスバー

【課題】荷物の積載のためにループのサイドバーの間に設けられ、ワイヤーを省略して製作コストが節減される車両用ループキャリアクロスバーの提供。
【解決手段】クロスバー本体(100)の両端に設けられた第1ブラケット(320)、第2ブラケット(340)と、第1ブラケット(320)の外部に対して出没するようにクロスバー本体(100)の一端に設けられた第1固定ピン(520)と、クロスバー本体(100)とは反対方向に連動し、第2ブラケット(340)の外部に対して出没するようにクロスバー本体(100)の他端と動力伝達部によって連結された第2固定ピン(540)と、第1ブラケット(320)に設けられたレバー(322)と、クロスバー本体(100)に復元力を提供するために、クロスバー本体(100)と第2ブラケット(340)との間に設けられた本体弾性部(120)とを含んでなる装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のループに荷物または装備を積載するために、その両側のサイドバーと共にループキャリアを構成するループキャリアクロスバーに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、余暇生活を楽しむためにRV車両やバン車両などが多く用いられている。この種の車両は、内部空間の制約のため、そのループに各種荷物やレジャー装備を搭載する必要がある。よって、車両のループにはループキャリアが取り付けられる。
車両用ループキャリアは、車両の長手方向にループの両側に沿って設けられたサイドバーと、これらのサイドバーの間に横設されたクロスバーとから構成される。クロスバーは、荷物の位置固定のためにサイドバーに固定されるが、その位置を移動させなければならない場合には固定解除の必要がある。
よって、ループキャリアは、車両の搭乗者が荷物の大きさおよび長さに応じてクロスバーを適切に位置合わせ、その位置でクロスバーがサイドバーに固定されるように操作するためのものである。
【0003】
次に、図1を参照して従来の車両用ループキャリアについて説明する。
車両のループの上端に車両の長手方向にサイドバー90が両側に設置され、これらのサイドバー90の間にはクロスバー10が横設される。クロスバー10の両端にはブラケット30が結合し、ブラケット30の端部には固定ピン70が突設されており、サイドバー90の内側には固定ピン70に対応する複数の固定溝92が一定の間隔で穿設されている。
【0004】
クロスバー10の固定ピン70は、選択的に突き出しまたは引っ込めを行うように設けられ、任意の固定溝92に係止される。よって、使用者は、固定ピン70を引っ込めた後、クロスバー10の位置を調整し、さらに固定ピン70を突き出してクロスバー10を固定する。勿論、クロスバー10は、サイドバー90の内側のレールに沿ってスライドされる。
【0005】
次に、図2および図3を参照して、前記ループキャリアを構成するクロスバー10の作動構造について説明する。
【0006】
以下、前記固定ピン70は、左側の固定ピン72と右側の固定ピン74に区分して説明する。クロスバー10は、その両端にブラケット30が設けられ、それぞれのブラケット30の内側にはカム形式のレバー52、54が設けられ且つ固定ピン72、74も設置される。
左側のレバー52は右側の固定ピン74と第1ワイヤー12で連結され、右側のレバー54は左側の固定ピン72と第2ワイヤー14で連結される。左側のレバー52は、ヒンジ軸52で固定されたカム形式であって、左側のレバー52を引っ張る場合、カムの動きに応じて左側の固定ピン72が引っ張られて固定溝92の内側に引っ込められる。右側の固定ピン74も、第1ワイヤー12によって引っ張られて固定溝の内側に引っ込められる。
左側のレバー52のみを引っ張っても、両方とも固定ピン72、74がクロスバー10側に引っ張られて固定が解除される構造である。これは、右側のレバー54の場合も同様である。また、2つのワイヤー12、14は、中央部でバネ16によって連結され、ワイヤーの張力と復元力が維持されるようにした。
【0007】
ところが、このような従来の車両用ループキャリアのクロスバーは、多数のワイヤー、バネおよびレバーを使用することにより、その構造が複雑になり、製作コストが高く、ワイヤーの長期使用の際に老巧化による製品の耐久性に問題があった。
また、レバーがカム方式であって作動感がスムーズではなく、ブラケットの形状がレバーのカム部分を完全には覆っておらず、ブラケットの部品耐久性に問題があった。
【0008】
また、特許文献には、クロスバー両端にそれぞれ取り付けられる作動モジュールと各作動モジュールを連動させるケーブルから構成されるロック装置が提案されているが、この装置においても、ワイヤーの長期使用に伴う老巧化による製品の耐久性に問題があった。
【特許文献1】特表2008−518139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、かかる問題点を解決するためのもので、その目的とするところは、ループキャリアクロスバーのワイヤー構造を省略し、レバーを一方にのみ設置して部品耐久性を増大させ、製作コストを低めるうえ、作動感を向上させる車両用ループキャリアクロスバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、ループの両側に設けられたサイドバーの間を横切るクロスバー本体の両端に設けられた第1ブラケットおよび第2ブラケットと、クロスバー本体と一緒に左右に連動し、第1ブラケットの外部に対して出没するようにクロスバー本体の一端に設けられた第1固定ピンと、クロスバー本体とは反対方向に連動し、第2ブラケットの外部に対して出没するようにクロスバー本体の他端と動力伝達部によって連結された第2固定ピンと、第1ブラケットに設けられ、クロスバー本体を第2ブラケット側に移動させて第1および第2固定ピンの両方を内側に引っ込めるためのレバーと、クロスバー本体と第2ブラケットとの間に設けられ、クロスバー本体に復元力を加えて第1および第2固定ピンを突出させるための本体弾性部とを含んでなることを特徴とする。
【0011】
前記動力伝達部は交差する2つのリンクから構成され、その交差点は第2ブラケットにヒンジ固定され、各リンクはクロスバー本体および第2固定ピンと交わるように連結されることが好ましい。
【0012】
または、前記動力伝達部は、第2固定ピンとクロスバー本体にそれぞれ対向するように設けられたラックギアと、これらのラックギアの間に噛み合うように設けられたピニオンギアとから構成されることが好ましい。
【0013】
前記レバーは、第1固定ピンに端部が係止されるように第1ブラケットにヒンジ固定され、引っ張りの際に第1固定ピンがクロスバー本体を押圧するように構成されることが好ましい。
【0014】
また、前記クロスバー本体の復元の際に第1固定ピンに突出力が提供されるように、第1固定ピンとクロスバー本体との間にはピン弾性部が備えられることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両用ループキャリアクロスバーによれば、ワイヤー構造がなくて構造が単純であり、コストが節減されるうえ、耐久性が向上する。
また、本発明によれば、レバーがカム方式ではなくて優れた作動感を有し、一側レバーの省略によってコストが節減される。ブラケットの場合、レバーを完全に覆うことが可能な一体型構造であって、部品の耐久性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図4は車両用ループクロスバーの斜視図である。ループの両側に設けられたサイドバーの間を横切るクロスバー本体100が設けられ、クロスバー本体100の両端には第1ブラケット320および第2ブラケット340が結合する。各ブラケットの外側には固定ピンが突出しており、サイドバーに選択的に固定される。レバー322は、作動力を提供する部分であって、第1ブラケット320に設けられる。
【0017】
図5(A)〜(C)はレバーを示す斜視図である。図5(A)を参照すると、レバー322は、第1ブラケット320の第1固定ピン520に係止されるように設置される。レバー322は、第1固定ピン520に端部が係止され、第1ブラケット320にヒンジ固定されることにより、平常の際には閉じた状態で第1固定ピン520が突出しているが、レバー322を上方に引っ張る場合、レバー322はヒンジ324を中心に回転しながら第1固定ピン520をブラケット内に引っ込める。クロスバー本体100は第1固定ピン520によって左側に押圧され、これにより後述の第2固定ピン540も第2ブラケット340の内側に引っ込められる。
また、クロスバー本体100は、ブラケットの内側に結合した状態で左、右に一定の距離だけ移動可能でなければならないことは自明である。このための一実施例として、クロスバー本体100はブラケットの内側でスライドされるように結合する。
【0018】
図5(B)および図5(C)を参照してレバー322をさらに考察すると、レバー322の端部は下方に折り曲げられて係止部326を形成し、係止部326は第1固定ピン520の中空に挿入される。レバー322はヒンジ324を中心に回転し、これにより、係止部326は第1固定ピン520を引っ込める。
また、クロスバー本体100の復元の際に第1固定ピン520に突出力が提供されるように、第1固定ピン520とクロスバー本体100との間にはピン弾性部522を備えることが好ましく、一例としてはコイルバネを挿入することができる。これにより、レバー322の引張解除の際に安定的に第1固定ピン520が突出できる。
【0019】
図6および図7は本発明に係る動力伝達部の一実施例を示すものである。図6はリンク結合体を示し、図7はギア結合体を示す。
動力伝達部は、クロスバー本体100の運動方向とは反対方向に第2固定ピン540に動力を伝達する役割を果たすものである。本発明に係るクロスバー本体100は、従来の技術とは異なり、ワイヤーが介在されず、クロスバー本体100自体が動く構造になれる。
さらに詳しく説明すると、第1固定ピン520を第1ブラケット320の内側に引っ込めるためにレバー322を引っ張る場合、第1固定ピン520によってクロスバー本体100が第2ブラケット340側に押圧され、動力伝達部に従って、第2固定ピン540もクロスバー本体100とは反対方向である第2ブラケット340の内側に引っ込められる。
【0020】
したがって、動力伝達部が第2固定ピン540とクロスバー本体100とを連結するため、第1ブラケット320にのみ位置したレバー322を引っ張っても、第1固定ピン520および第2固定ピン540の両方ともがブラケットの内側に引っ込められる。その結果、クロスバーの固定は解除され、クロスバーはサイドバーとの間でその位置固定が可能になる。
【0021】
レバー322を放す場合にはさらに固定ピンの突出が必要であるが、これはクロスバー本体100と第2ブラケット340との間に介在された本体弾性部120によって復元力が加わる。
すなわち、レバー322を放す場合、クロスバー本体100が移動しながら、収縮していた本体弾性部120は復元力をもってクロスバー本体100を原位置に押圧し、クロスバー本体100が原位置に戻ることにより第2固定ピン540が動力伝達部によって突出し、第1固定ピン520もクロスバー本体100とピン弾性部522によって突出する。
突出した固定ピンはさらにサイドバーの固定溝に係止されてクロスバーの位置が固定される。また、本体弾性部120もコイルバネからなることが好ましい。
【0022】
図6の動力伝達部は、交差する2つのリンク760からなるリンク結合体である。その交差点は第2ブラケット340にヒンジ固定され、各リンク760はクロスバー本体100および第2固定ピン540と交わるように連結される。
ヒンジを中心として挟みのように運動するので、第2固定ピン540とクロスバー本体100は反対方向に運動が可能になる。各リンク760は、端部に長孔762が設けられており、クロスバー本体100の動きに従ってヒンジを中心に一定の角度だけ回転するようにする。
【0023】
図7の動力伝達部は、ギア結合体であって、第2固定ピン540とクロスバー本体100との間にそれぞれ対向するように設けられたラックギア720と、ラックギア720の間に噛み合うように設けられたピニオンギア740とから構成される。これもクロスバー本体100と第2固定ピン540が互いに反対方向に連動するようにする。
クロスバー本体100が第2ブラケット340側に押圧されると、ラックギア720に従ってピニオンギア740が回転し、ラックギア720に従って第2固定ピン540が内側に引っ込められる。
クロスバー本体100と第2ブラケット340との間には本体弾性部120としてコイルバネが介在される。コイルバネは2つ備えられる。コイルバネの一つは第2固定ピン540とクロスバー本体100との間に介在されることが、第2固定ピン540の安定動作のために好ましい。
【0024】
前述した車両用ループキャリアクロスバーの作動を順次考察すると、平常の際に固定ピンは突出してサイドバーに係止されている。レバーを引っ張ると、第1固定ピンが内側に引っ込められ、第1固定ピンはクロスバー本体を押し出し、それとは反対に、第2固定ピンは内側に引っ込められる。この場合、クロスバーの固定は解除され、レバーを放した場合には各弾性部によってクロスバー本体がさらに原位置に戻り、固定ピンがさらに突出してサイドバーに固定される。
【0025】
以上、本発明の特定の実施例に関連して図示、説明したが、特許請求の範囲によって提供される本発明の技術的思想から逸脱しない範疇内において、本発明に様々な改良および変化を加え得ることは、当業界における通常の知識を有する者には自明であろう。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、車両のループに荷物または装備を積載する装置に関する分野に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】従来の実施例に係る車両用ループキャリアクロスバーが設置された状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示した車両用ループキャリアクロスバーのレバーを示す斜視図である。
【図3】図1に示した車両用ループキャリアクロスバーの作動状態を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施例に係る車両用ループキャリアクロスバーを示す斜視図である。
【図5】(A)は図4に示した車両用ループキャリアクロスバーのレバーが取り付けられた状態を示す斜視図であり、(B)は図4に示した車両用ループキャリアクロスバーのレバーが取り付けられた状態を示す別の斜視図、(C)は図4に示した車両用ループキャリアクロスバーのレバーを示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施例に係る車両用ループキャリアクロスバーの動力伝達部が取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図7】本発明の他の実施例に係る車両用ループキャリアクロスバーの動力伝達部が取り付けられた状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
100 クロスバー本体
120 本体弾性部
320 第1ブラケット
322 レバー
324 レバーヒンジ
326 係止部
340 第2ブラケット
520 第1固定ピン
522 ピン弾性部
540 第2固定ピン
720 ラックギア
740 ピニオンギア
760 リンク
762 長孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ループの両側に設けられたサイドバーの間を横切るクロスバー本体の両端に設けられた第1ブラケットおよび第2ブラケットと、
前記クロスバー本体と一緒に左右に連動し、前記第1ブラケットの外部に対して出没するように前記クロスバー本体の一端に設けられた第1固定ピンと、
前記クロスバー本体とは反対方向に連動し、前記第2ブラケットの外部に対して出没するように前記クロスバー本体の他端と動力伝達部によって連結された第2固定ピンと、
前記第1ブラケットに設けられ、前記クロスバー本体を前記第2ブラケット側に移動させて前記第1および第2固定ピンの両方を内側に引っ込めるためのレバーと、
前記クロスバー本体と前記第2ブラケットとの間に設けられ、前記クロスバー本体に復元力を加えて前記第1および第2固定ピンを突出させるための本体弾性部とを含んでなることを特徴とする、車両用ループキャリアクロスバー。
【請求項2】
前記動力伝達部は交差する2つのリンクから構成され、その交差点は前記第2ブラケットにヒンジ固定され、各リンクは前記クロスバー本体および前記第2固定ピンと交わるように連結されたことを特徴とする、請求項1に記載の車両用ループキャリアクロスバー。
【請求項3】
前記動力伝達部は、前記第2固定ピンと前記クロスバー本体にそれぞれ対向するように設けられたラックギアと、これらのラックギアの間に噛み合うように設けられたピニオンギアとから構成されることを特徴とする、請求項1に記載の車両用ループキャリアクロスバー。
【請求項4】
前記レバーは、前記第1固定ピンに端部が係止されるように前記第1ブラケットにヒンジ固定され、引っ張りの際に前記第1固定ピンが前記クロスバー本体を押圧するように構成されたことを特徴とする、請求項1に記載の車両用ループキャリアクロスバー。
【請求項5】
前記クロスバー本体の復元の際に前記第1固定ピンに突出力が提供されるように、前記第1固定ピンと前記クロスバー本体との間にはピン弾性部が備えられたことを特徴とする、請求項1に記載の車両用ループキャリアクロスバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−190721(P2009−190721A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144137(P2008−144137)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(500518050)起亞自動車株式会社 (449)
【出願人】(305002084)エコプラスチック株式会社 (4)
【Fターム(参考)】