説明

車両用保護固定部材付ワイヤーハーネス

【課題】ワイヤーハーネスを保護しつつ車両に取付けるための構成を、より少ない部品点数及びより簡易な工程によって実現できるようにすること。
【解決手段】複数の電線が結束されたワイヤーハーネス20と、不織材料が加熱及び加圧されることにより形成され、ワイヤーハーネス20の少なくとも一部を保護する保護固定部材30とを備える。保護固定部材30は、ワイヤーハーネス20を部分的に保護する第1保護部分32と、第1保護部分32の隣りでワイヤーハーネス20を部分的に保護するように設けられ、車両における配設態様箇所となる隙間に圧入可能な程度に第1保護部分32よりも太く、かつ、第1保護部分32よりも柔らかい第2保護部分34とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用保護固定部材付ワイヤーハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載された各種電気部品を接続するために、電線を所定の配線形態で束ねたワイヤーハーネスが用いられる。車両に対するワイヤーハーネスの固定は、ワイヤーハーネスに対して結束バンド或は粘着テープ等でクリップ部品を取付け、このクリップ部品を車両に形成された取付孔に挿入固定することで行われる。また、上記ワイヤーハーネスに対しては、保護目的或は経路規制目的等で、コルゲートチューブ等の外装品が取付けられる。
【0003】
なお、不織布成形品に関する技術として、特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−1484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来では、ワイヤーハーネスを保護しつつ車両に固定するためには、クリップ部品及び外装部品等の多数の部品が必要となる。また、それらクリップ部品及び外装部品をワイヤーハーネスに取付ける作業も繁雑である。
【0006】
そこで、本発明は、ワイヤーハーネスを保護しつつ車両に取付けるための構成を、より少ない部品点数及びより簡易な工程によって実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1の態様は、複数の電線が結束されたワイヤーハーネスと、不織材料が加熱及び加圧されることにより形成され、前記ワイヤーハーネスの少なくとも一部を保護する保護固定部材とを備え、前記保護固定部材は、前記ワイヤーハーネスを部分的に保護する第1保護部分と、前記第1保護部分の隣りで前記ワイヤーハーネスを部分的に保護するように設けられ、車両における配設態様箇所となる隙間に圧入可能な程度に前記第1保護部分よりも太く、かつ、前記第1保護部分よりも柔らかい第2保護部分とを有する。
【0008】
第2の態様は、第1の態様に係る車両用保護固定部材付ワイヤーハーネスであって、前記第2保護部分に、車両に形成された凹部又は凸部と嵌まり合う固定用凸部又は固定用凹部が設けられている。
【0009】
第3の態様は、第2の態様に係る車両用保護固定部材付ワイヤーハーネスであって、前記固定用凸部又は固定用凹部は、前記第2保護部分よりも硬くなっている。
【発明の効果】
【0010】
第1の態様によると、第1保護部分及び第2保護部分によってワイヤーハーネスを保護することができる。また、第2保護部分を車両における配設態様箇所となる隙間に圧入することによって、ワイヤーハーネスを車両に固定できる。しかも、かかる構成を、不織材料が加熱及び加圧されることにより形成された保護固定部材を、前記ワイヤーハーネスの少なくとも一部を覆うように取付けることにより、より少ない部品点数及びより簡易な製法によって実現できる。
【0011】
第2の態様によると、前記第2保護部分に形成された固定用凸部又は固定用凹部と車両に形成された凹部又は凸部とを嵌め合うことで、ワイヤーハーネスをより確実に車両に固定することができる。
【0012】
第3の態様によると、前記固定用凸部又は固定用凹部は、前記第2保護部分よりも硬いため、前記第2保護部分に形成された固定用凸部又は固定用凹部と車両に形成された凹部又は凸部との嵌め合い関係をより確実に維持することができ、ワイヤーハーネスをより確実に車両に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係る車両用保護固定部材付ワイヤーハーネスを示す概略図である。
【図2】車両用保護固定部材付ワイヤーハーネスを車両に配設した状態を示す概略図である。
【図3】図2のIII−III線における概略断面図である。
【図4】ワイヤーハーネスの長手方向に直交する面における成形型の断面を示す概略図である。
【図5】ワイヤーハーネスの長手方向における成形型の断面を示す概略図である。
【図6】車両用保護固定部材付ワイヤーハーネスの一製造工程において成形型が閉じた状態を示す説明図である。
【図7】固定用凸部の取付構成に関する変形例を示す図である。
【図8】変形例に係る固定用凹部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<車両用保護固定部材付ワイヤーハーネス>
以下、実施形態に係る車両用保護固定部材付ワイヤーハーネスについて説明する。図1は車両用保護固定部材付ワイヤーハーネス10を示す概略図である。
【0015】
この車両用保護固定部材付ワイヤーハーネス10は、ワイヤーハーネス20と、保護固定部材30とを備えている。
【0016】
ワイヤーハーネス20は、複数の電線22が結束された構成とされている。より具体的には、ワイヤーハーネス20は、複数の電線22が敷設対象となる車両への配線形態に応じて分岐しつつ結束された構成とされている。もっとも、ワイヤーハーネス20は、必ずしも分岐している必要はない。また、ワイヤーハーネス20に対して、他の光ケーブル等が結束されていてもよい。このワイヤーハーネス20の少なくとも一部を覆うようにして上記保護固定部材30が設けられている。
【0017】
保護固定部材30は、上記ワイヤーハーネス20の少なくとも一部分を覆うようにして設けられている。ここでは、保護固定部材30が、ワイヤーハーネス20の線状部分の一部分を覆うようにして設けられる例で説明する。もっとも、保護固定部材は、ワイヤーハーネスの全体或はワイヤーハーネスの分岐部分等を覆う構成であってもよい。
【0018】
また、保護固定部材30は、不織材料が加圧及び加熱されることにより形成された部材である。
【0019】
ここで、不織材料は、加熱工程を経ることにより硬くなって、ワイヤーハーネス20を覆った一定形状を維持することが可能な材料である。かかる不織材料としては、絡み合う基本繊維と、接着樹脂(バインダとも呼ばれる)とを含むものを用いることができる。接着樹脂は、基本繊維の融点よりも低い融点を有する樹脂である。そして、不織材料を、基本繊維の融点よりも低くかつ接着樹脂の融点よりも高い加工温度に加熱することで、接着樹脂が溶融して基本繊維間に染みこむ。この後、不織材料が接着樹脂の融点よりも低い温度になると、基本繊維同士を結合した状態で接着樹脂が固化する。これより、不織材料が加熱前の状態よりも硬くなり、加熱時の成形形状に維持されるようになる。かかる不織材料は、不織布ともいわれる。
【0020】
接着樹脂は、粒状であっても繊維状であってもよい。芯繊維の外周に接着樹脂層を形成してバインダ繊維を構成し、これを基本繊維と絡み合わせるようにしてもよい。この場合の芯繊維としては、上記基本繊維と同材料のものを用いることができる。
【0021】
上記基本繊維としては、接着樹脂の融点で繊維状態を保ち得ればよく、樹脂繊維の他、各種繊維を用いることができる。また、接着樹脂としては、基本繊維の融点よりも低い融点を持つ熱可塑性樹脂繊維を用いることができる。基本繊維と接着樹脂の組合わせとしては、基本繊維をPET(ポリエチレンテレフタレート)の樹脂繊維とし、接着樹脂をPETとPEI(ポリエチレンイソフタレート)の共重合樹脂とした例が挙げられる。この場合、基本繊維の融点は接着樹脂の融点よりも大きく、このため、不織材料をその融点間の温度に加熱すると、接着樹脂が溶融し、溶融せずに繊維状を保つ基本繊維間に染込む。そして、不織材料が接着樹脂の融点よりも低い温度になると、基本繊維同士を結合した状態で接着樹脂が固化し、不織材料は硬くなって加熱時の成形形状を維持する。つまり、上記不織材料を、成型用の金型面を有する金型間に挟込み、加熱状態で金型に圧を加えることで、不織材料が前記金型面に応じた所定形状に金型成型され、冷却されると、当該金型成型された形状に維持される。かかる加工方法をホットプレスということもある。保護固定部材30を製造するより具体的な例については後で説明する。
【0022】
また、上記保護固定部材30は、ワイヤーハーネス20を部分的に保護する第1保護部分32と、第1保護部分32の隣りでワイヤーハーネス20を部分的に保護する第2保護部分34とを有している。ここでは、第2保護部分34の両端部に一対の第1保護部分32が設けられている。第1保護部分32と第2保護部分34とは共通する不織材料によって一体形成されていることが好ましい。もっとも、第1保護部分32と第2保護部分34とは、それぞれ別々の不織材料によって形成され、適宜接着剤等によって接合されて一体化されてもよい。
【0023】
上記第1保護部分32は、ワイヤーハーネス20の一部分の外周囲全体を覆っている。これにより、ワイヤーハーネス20の一部分が外部部品等との接触から保護される。第1保護部分32は、ワイヤーハーネス20を車両の配設対象箇所となる隙間(図2及び図3参照)に容易に配設できるようになるべく細くなっていることが好ましく、ここでは、第1保護部分32は第2保護部分34よりも細くなっている。また、第1保護部分32は、ワイヤーハーネス20をより確実に保護し、かつ、ワイヤーハーネス20の経路規制を行うため、硬くなっていることが好ましく、ここでは、第1保護部分32は第2保護部分よりも硬くなっている。
【0024】
また、第2保護部分34は、ワイヤーハーネス20のうち上記第1保護部分32の隣の一部分の外周囲全体を覆っている。これにより、第2保護部分34も、ワイヤーハーネス20の一部分を外部部品等の接触から保護している。
【0025】
また、第2保護部分34は、車両における配設対象箇所となる隙間に圧入可能な程度(換言すれば、強干渉可能な程度)に第1保護部分32よりも太くなっている(図2及び図3参照)。より具体的には、本ワイヤーハーネス20を車両において直線的に連続する隙間或は曲りつつ連続する隙間に配設する場合において、第1保護部分32は当該隙間に容易に配設できるように当該隙間の寸法よりも小さく設定され、第2保護部分34は当該隙間に圧入できるように当該隙間の幅寸法よりも大きい幅寸法に形成された部分を有している(図2及び図3参照)。ここでは、第2保護部分34は、一対の第1保護部分32の間で略球状に膨出する形状に形成されており、ワイヤーハーネス20の長手方向ほぼ中央部(より具体的には、ワイヤーハーネス20を当該隙間或は車両に固定したい箇所)で最も太径になっていて前記隙間に圧入できるようになっている。もっとも、第2保護部分34は、直方体状、円柱状等であってもよい。
【0026】
また、この第2保護部分34は、上記隙間に圧入する際に当該隙間内に配設可能な程度に弾性変形できるように、上記第1保護部分32よりも柔らかくなっている。つまり、上記第1保護部分32は、ワイヤーハーネス20を保護しかつ経路規制をするために第2保護部分34よりも相対的に硬くなっており、第2保護部分34は隙間内に圧入できるように変形できるように、第1保護部分32よりも相対的に柔らかくなっている。
【0027】
また、この第2保護部分34には、固定用凸部36が形成されている。この固定用凸部36は、車両に形成された凹部に嵌め込み可能な凸状に形成されている(図2及び図3参照)。ここでは、固定用凸部36は、第2保護部分34のうち最も太くなる部分の外周周りの一部から突出するように形成されている。固定用凸部36は、ここでは、球状凸部に形成され、その基端部が若干狭まる形状に形成されている。もっとも、固定用凸部は、半球状、円柱状、角柱状、錐形状等であってもよく、また、先端側で太くなる形状であってもよい。つまり、固定用凸部は、車両に形成された凹部に嵌め込み可能な形状であればよい。
【0028】
この固定用凸部36は、上記第2保護部分34よりも硬いことが好ましい。すなわち、上記第2保護部分34を弾性変形させつつ車両の隙間に挟込んだ状態で、本固定用凸部36自体は形状を可及的に維持することで凹部104に嵌め込まれた状態が維持されることが好ましい。
【0029】
図2は車両用保護固定部材付ワイヤーハーネス10を車両に配設した状態を示す概略図であり、図3は図2のIII−III線における概略断面図である。すなわち、金属板等で形成された車体フレーム102と車内側の樹脂製の内装部品又は車内側の金属等のパネル106との間の隙間にワイヤーハーネス20が敷設されるとする。なお、車体フレーム102には、プレス成型等によって、底部を有する凹部104が形成されている。車両用保護固定部材付ワイヤーハーネス10を隙間内に配設する際には、第2保護部分34を隙間内に押込んで圧入するようにして保護固定部材30を隙間内に配設する。これにより、第2保護部分34が隙間の幅に応じて圧縮変形される。このように、第2保護部分34が隙間内に圧入されることによって、ワイヤーハーネス20が車両に対して一定位置に固定される。
【0030】
同時に、固定用凸部36を車体フレーム102の凹部104に嵌め込む。この嵌め込み構造によって、ワイヤーハーネス20が車両に対してより確実に一定位置に固定されることになる。
【0031】
以上のように構成された車両用保護固定部材付ワイヤーハーネス10によると、第1保護部分32及び第2保護部分34によってワイヤーハーネス20を保護することができる。また、第2保護部分34を車両における配設対象箇所となる隙間に圧入することによって、ワイヤーハーネス20を車両に固定することができる。しかも、そのような保護及び固定するための構成を、不織材料が加熱及び加圧されることにより形成された保護固定部材30を、ワイヤーハーネス20の少なくとも一部を覆うように取付けることにより実現できる。これにより、従来、固定のために用いていたクリップ部品及び保護のために用いていたコルゲートチューブ等を省略することができ、部品点数をより少なくできると共に、簡易な製法とすることができる。特に、クリップ部品を削除できることによって、従来、クリップ部品を取付けるために用いていたクリップ取付用図板を省略することができ、この点からも製造工程及び製造設備の簡素化を図ることができる。
【0032】
また、従来、ワイヤーハーネスが隙間内で干渉し、傷付き、磨耗することを抑制するため、ワイヤーハーネスをウレタン部材で覆うこともあったが、本実施形態では、第2保護部分34が隙間に圧入固定されているため、そのような別途部品による干渉対策を省略することもできる。
【0033】
また、第2保護部分34に、車両側の凹部104と嵌まり合う固定用凸部36が設けられているため、当該凹部104と固定用凸部36との嵌め合い構造によってワイヤーハーネス20をより確実に一定位置で車両に固定することができる。
【0034】
しかも、固定用凸部36は、第2保護部分34よりも硬いため、第2保護部分34を隙間に圧入しつつ、固定用凸部36と凹部104との嵌め合い関係をより確実に維持することができ、ワイヤーハーネス20をより確実に車両に固定することができる。
【0035】
もっとも、基本的には、第2保護部分34の圧入構造によってワイヤーハーネス20を固定できることから、固定用凸部36は必須ではない。
【0036】
<車両用保護固定部材付ワイヤーハーネスの一製造方法例>
上記車両用保護固定部材付ワイヤーハーネス10の製造方法の一例について説明する。
【0037】
まず、保護固定部材30を形成するための成形型の一例について説明する。図4はワイヤーハーネス20の長手方向に直交する面における成形型の断面を示す概略図であり、図5はワイヤーハーネス20の長手方向における成形型の断面を示す概略図である。
【0038】
この成形型40は、下型50と、上型60とを有している。
【0039】
下型50は、熱伝導性に優れた金属等により形成された長尺部材であり、その一主面(上面)に下金型面52が形成されている。下金型面52は、概略的には、第2保護部分34の下半部を成型するための半円球面状の第2下金型面52bと、当該第2下金型面52bの両側に延在するように形成され、第1保護部分32の下半部を成型するための半円溝状の第1下金型面52aとを有している。
【0040】
上型60は、熱伝導性に優れた金属等により形成された長尺部材であり、その一主面(下面)に上金型面62が形成されている。上金型面62は、概略的には、第2保護部分34の上半部を成型するための半円球面状の第2上金型面62bと、当該第2上金型面62bの両側に延在するように形成され、第1保護部分32の下半部を成型するための半円溝状の第1上金型面62aとを有している。また、第2上金型面62bの頂点部分には、固定用凸部36を形成するための球状の第3上金型面62cが形成されている。
【0041】
なお、上記下型50及び上型60には、加熱装置としてのヒータ70が設けられる。ヒータ70は、下金型面52及び上金型面62を、基本繊維の融点よりも低くかつ接着樹脂の融点よりも高い温度に加熱するものである。本ヒータ70は、下型50及び上型60内に埋設されたものであってもよいし、下型50及び上型60の外面に熱伝達可能な態様で取付けられたものであってもよい。
【0042】
また、上型60は、下型50に対して接近及び離間移動可能に配設支持されており、上型60が下型50に最接近した状態で、第1下金型面52aに対して第1上金型面62aが対向配置されると共に、第2下金型面52bに対して第2上金型面62bが対向配置されるようになっている。そして、下金型面52と上金型面62との間で不織材料46を挟込んで加熱及び加圧することによって、当該不織材料46が下金型面52と上金型面62との形状に応じた形状に成型されるようになっている。
【0043】
この成形型40を用いた車両用保護固定部材付ワイヤーハーネス10の製造方法を説明する。
【0044】
まず、図4及び図5に示すように、下金型面52上に、不織材料46とワイヤーハーネス20の一部分と不織材料46とが配設された状態とする。より具体的には、下金型面52上に一枚の不織材料46が配設されている。不織材料46は、下金型面52の略全体に亘って配設可能な厚手のシート状に形成されている。この不織材料46の幅方向中央部上に、ワイヤーハーネス20の一部分が下金型面52の延在方向に沿って載置され、さらに、それらの上に他の一枚の不織材料46重ね合せられるように配設されている。つまり、2枚の不織材料46の間にワイヤーハーネス20の一部分が挟まれた状態で、それらが下金型面52上に配設されている。
【0045】
この後、下型50及び上型60を加熱した状態で、下型50及び上型60を近接移動させ、両者間に圧を加える。すると、図6に示すように、第1下金型面52aと第1上金型面62aとの間で、ワイヤーハーネス20の一部を挟込んだ状態で不織材料46が加熱及び加圧され、一対の不織材料46が接合されると共に、当該第1下金型面52aと第1上金型面62aとの形状に応じた形状を有する第1保護部分32に成型される。また、第2下金型面52bと第2上金型面62bとの間で、ワイヤーハーネス20の一部を挟込んだ状態で不織材料46が加熱及び加圧され、一対の不織材料46が接合されると共に、第2下金型面52bと第2上金型面62bとに応じた形状を有する第2保護部分34に成型される。さらに、不織材料46が上記第3上金型面62cにも押込まれ、当該第3上金型面62cに応じた形状を有する固定用凸部36に成型される。
【0046】
なお、下金型面52と上金型面62との両側部で一対の不織材料46の両側部を挟込んで加圧及び加熱し、一対の不織材料46同士をより確実に接合するようにしてもよい。
【0047】
この後、下型50及び上型60を離間移動させ、両者間から金型成型された保護固定部材30部分を取出すと、車両用保護固定部材付ワイヤーハーネス10が得られる。加熱及び加圧後の冷却は、下型50と上型60との間に存在する状態で行われてもよいし、それらの間から取出された状態で行われてもよい。
【0048】
ところで、上記第1保護部分32、第2保護部分34、固定用凸部36の各形状自体は、加熱及び加圧する際の金型面形状によって作分けることができる。
【0049】
また、上記第1保護部分32、第2保護部分34、固定用凸部36の硬さ、柔らかさの作分けは、例えば、不織材料を圧縮する前の体積に対する不織材料の圧縮後の体積の比率(圧縮率)を変更することによって実現することができる。例えば、第1保護部分32については圧縮率40%以上とし、第2保護部分34については圧縮率20%以下とし、固定用凸部36については圧縮率40%程度とすればよい。より具体的には、加工後の体積、望む圧縮率等から、加工対象となる不織材料46の厚み、幅寸法等を調整することで加熱及び加圧対象となる不織材料46の体積を調整すればよい。
【0050】
その他、不織材料を加熱及び加圧する際の加熱温度、加圧時間等を異ならせることに、溶融樹脂の溶融度合を異ならせることによっても、硬い部分と柔らかい部分とを作り分けることができる。
【0051】
また、第1保護部分32、第2保護部分34、固定用凸部36のそれぞれを形成する不織材料として、基本繊維の材質、接着樹脂の材質、これらの混合度合、かさ密度等が異なる不織材料を用いることによって、加熱及び加圧による加工後の性状を異ならせるようにしてもよい。
【0052】
もっとも、第1保護部分32、第2保護部分34、固定用凸部36とは、1つの加熱及び加圧工程において同時に一体形成される必要はない。例えば、第1保護部分32及び第2保護部分34を加熱及び加圧形成すると共に、これとは別に固定用凸部36を別途加熱及び加圧形成し、両者を接着剤等で接着してもよい。また、より多数の金型を用い、不織材料を他方向から加熱及び加圧することで、各部の加圧力を調整してもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、ワイヤーハーネス20の外周囲に保護固定部材30を一体的に金型成型する例で説明したが、ワイヤーハーネス20とは別に保護固定部材30を形成し、当該保護固定部材30を、粘着テープ等を用いてワイヤーハーネス20に固定するようにしてもよい。
【0054】
<変形例>
なお、上記実施形態では、車体フレーム102に有底の凹部104が形成される例で説明したが、必ずしもその必要はない。例えば、図7に示すように、車体フレーム102に凹部として貫通する孔105が形成され、固定用凸部36が当該孔105に嵌め込まれていてもよい。もっとも、有底の凹部104の方が防水性に優れるという利点がある。
【0055】
また、図8に示す変形例に係る保護固定部材230のように、上記第2保護部分34に対応する第2保護部分234に、上記固定用凸部36の代りに固定用凹部236が形成されていてもよい。この場合、車体フレーム102に凸部204が形成され、当該凸部204が固定用凹部236に嵌め込まれる構成とするとよい。
【0056】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0057】
上記説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0058】
10 車両用保護固定部材付ワイヤーハーネス
20 ワイヤーハーネス
22 電線
30 保護固定部材
32 第1保護部分
34 第2保護部分
36 固定用凸部
102 車体フレーム
104 凹部
105 孔
106 車内側の樹脂製の内装部品又は車内側の金属等のパネル
204 凸部
230 保護固定部材
236 固定用凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線が結束されたワイヤーハーネスと、
不織材料が加熱及び加圧されることにより形成され、前記ワイヤーハーネスの少なくとも一部を保護する保護固定部材と、
を備え、
前記保護固定部材は、
前記ワイヤーハーネスを部分的に保護する第1保護部分と、
前記第1保護部分の隣りで前記ワイヤーハーネスを部分的に保護するように設けられ、車両における配設態様箇所となる隙間に圧入可能な程度に前記第1保護部分よりも太く、かつ、前記第1保護部分よりも柔らかい第2保護部分と、
を有する、車両用保護固定部材付ワイヤーハーネス。
【請求項2】
請求項1記載の車両用保護固定部材付ワイヤーハーネスであって、
前記第2保護部分に、車両に形成された凹部又は凸部と嵌まり合う固定用凸部又は固定用凹部が設けられた、車両用保護固定部材付ワイヤーハーネス。
【請求項3】
請求項2記載の車両用保護固定部材付ワイヤーハーネスであって、
前記固定用凸部又は固定用凹部は、前記第2保護部分よりも硬い、車両用保護固定部材付ワイヤーハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−97880(P2012−97880A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248436(P2010−248436)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】