車両用信号灯
【課題】車両用信号灯のデザイン性を向上させ、車両用信号灯を適切な明るさで視認できる範囲を広げる。
【解決手段】車両用信号灯1は、光源3,4と、光源3,4又はその近傍に焦点を有し、光源3,4から発した光を前に反射させる放物面系反射面51,61と、光源3,4及び放物面系反射面51,61の前に配置された凸レンズ7と、を備える。
【解決手段】車両用信号灯1は、光源3,4と、光源3,4又はその近傍に焦点を有し、光源3,4から発した光を前に反射させる放物面系反射面51,61と、光源3,4及び放物面系反射面51,61の前に配置された凸レンズ7と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用信号灯に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタ型車両用灯具は、光源、楕円面系リフレクタ及び投影レンズを備えるものである(例えば、特許文献1参照)。楕円面系リフレクタは後ろ側の第一焦点と、前側の第二焦点とを有し、投影レンズが楕円面系リフレクタの前に配置され、投影レンズの焦点が楕円面系リフレクタの第二焦点近傍に位置し、光源が楕円面系リフレクタの第一焦点近傍に配置されている。光源から発した光は楕円面系リフレクタによって前方に反射され、その反射光が第二焦点に集光する。第二焦点に集光した反射光が投影レンズによって前方に投射される。投影レンズの焦点が楕円面系リフレクタの第二焦点近傍に位置しているから、投影レンズによって前方に投射された光がほぼ平行光である。このようなプロジェクタ型車両用灯具は、一般にヘッドランプに用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−12477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両のデザイン性を向上させるべく、DRL(Daytime Running Lamp)、ポジションランプ、テールランプ、ブレーキランプ等の信号灯にプロジェクタ型車両用灯具を用いると、プロジェクタ型車両用灯具の投影レンズから前方に投射された光がほぼ平行光であるから、プロジェクタ型車両用灯具を真正面から見た場合には、投影レンズが明るく輝いて見える。一方、プロジェクタ型車両用灯具を斜め前から見た場合には、投影レンズがそれほど明るく見えない。そのため、適切な明るさで視認できる範囲が狭くなってしまい、プロジェクタ型車両用灯具を信号灯に用いることができない。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、車両用信号灯のデザイン性を向上させ、車両用信号灯を適切な明るさで視認できる範囲を広げることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、本発明に係る車両用信号灯は、光源と、前記光源又はその近傍に焦点を有し、前記光源から発した光を前に反射させる放物面系反射面と、前記光源及び前記放物面系反射面の前に配置された凸レンズと、を備えることとした。
【0006】
好ましくは、前記車両用信号灯が、正面から見て前記凸レンズを囲うようにして、前記放物面系反射面と前記凸レンズとの間に設けられた鏡筒を更に備え、前記鏡筒の内壁面のうち前記放物面系反射面の焦点又はその近傍の位置に収容穴が形成され、前記光源が前記収容穴に収容されていることとした。
【0007】
好ましくは、前記凸レンズの中心軸が灯具光軸に対して傾斜していることとした。
【0008】
好ましくは、前記凸レンズの後側入射面がその中心点で前記中心軸に直行する平面であり、前記凸レンズの前側出射面が前記中心軸の回りに回転対称な球状凸面であることとした。
【0009】
好ましくは、前記凸レンズの後側入射面が前記中心軸の回りに回転対称な球状凹面であり、前記凸レンズの前側出射面が前記中心軸の回りに回転対称な球状凸面であることとした。
【0010】
好ましくは、前記放物面系反射面は、前記光源から発した光を、灯具光軸に対して水平面に沿って傾いた向きに反射させる複数の反射素子面からなることとした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光源から発した光が放物面系反射面によって前に反射されるが、その反射光が放物面系反射面と凸レンズとの間では集光しない。放物面系反射面で反射した光が凸レンズによって前方に投射されるが、その光が凸レンズの前で集光し、その集光した箇所よりも前方では発散する。そのため、凸レンズから前方に投射した光を、向きに関わらずほぼ均一の強度にすることができる。従って、車両用信号灯を適切な強度で視認することができる範囲を広くすることができる。
また、凸レンズの後に放物面系反射面が配置されているから、車両用信号灯を正面から見た場合に、凸レンズに映り出る像が今までにない斬新なものとなる。従って、車両用信号灯の見栄えを斬新にすることができ、車両用信号灯のデザイン性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第一実施形態に係る車両用信号灯を一部破断して示した水平断面図である。
【図2】同実施形態において凸レンズを鏡筒から外した状態で車両用信号灯を示す前方斜視図である。
【図3】光線が凸レンズの前側出射面で全反射する範囲を説明するための図面である。
【図4】本発明の第二実施形態に係る車両用信号灯を一部破断して示した水平断面図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係る車両用信号灯の配光を示した図面である。
【図6】本発明の第二実施形態に係る車両用信号灯の配光を示した図面である。
【図7】凸レンズの直径を60mmとした場合の実施例を示す水平断面図である。
【図8】凸レンズの直径を60mmとした場合の実施例を示す水平断面図である。
【図9】凸レンズの直径を60mmとした場合の実施例を示す水平断面図である。
【図10】凸レンズの直径を45mmとした場合の実施例を示す水平断面図である。
【図11】凸レンズの直径を45mmとした場合の実施例を示す水平断面図である。
【図12】凸レンズの直径を45mmとした場合の実施例を示す水平断面図である。
【図13】凸レンズの直径を30mmとした場合の実施例を示す水平断面図である。
【図14】凸レンズの直径を30mmとした場合の実施例を示す水平断面図である。
【図15】凸レンズの直径を30mmとした場合の実施例を示す水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0014】
〔第1の実施の形態〕
図1は、車両用信号灯1を一部破断して示した水平断面図である。図1の断面は、灯具としての光軸Axを通る水平面に沿って破断して、それを上から見て示したものである。
この車両用信号灯1は、例えば、DRL(Daytime Running Lamp)、ポジションランプ、テールランプ、ブレーキランプ、バックランプ、方向指示ランプ、ハイマウントストップランプ又はテールランプ・ブレーキランプ兼用灯に用いられる。図1に示すように、この車両用信号灯1の光軸Axは、前後方向に延びている。この車両用信号灯1は、鏡筒2、光源3,4、リフレクタ5,6及び凸レンズ7等を備える。
【0015】
図2は、凸レンズ7を鏡筒2から外した状態で車両用信号灯1を示す前方斜視図である。
図1、図2に示すように、鏡筒2は略円筒状に形成されており、その中心軸が前後方向に延びている。具体的には、鏡筒2の内壁面2bは、光軸Axに平行な母線を光軸Ax回りに回転移動して得られた円柱面である。鏡筒2の内壁面2bのうち左右両側には、収容穴2c,2dが形成されている。収容穴2cが光軸Axに関して収容穴2dの線対称となる位置に配置され、これら収容穴2c,2dが対向配置されている。
【0016】
収容穴2cには、光源3が収容され、収容穴2dには、光源4が収容されている。これら光源3,4は、鏡筒2の内壁面2bよりも内側には突き出ておらず、鏡筒2の内壁面2bよりも収容穴2c,2d内に引き込んでいる。光源3,4は、発光ダイオード、無機エレクトロルミネッセンス素子、有機エレクトロルミネッセンス素子その他の発光素子である。光源3,4はそれぞれ基板13,14に搭載されており、光源3,4が鏡筒2の外側から収容穴2c,2dにそれぞれ差し込まれて、基板13,14が鏡筒2の外壁面2eに当接している。
【0017】
光源3,4が同時に発光してもよいし、光源3,4が異なるタイミングで発光してもよい。例えば、車両用信号灯1をテールランプ・ブレーキランプに兼用する場合には、光源3,4のどちらか一方が発光した時は、車両用信号灯1が車両の後部を表示し、光源3,4の両方が発光した時は、車両用信号灯1が制動を表示する。勿論、光源3,4の両方が発光した時は、車両用信号灯1が車両の後部を表示し、光源3,4の両方が更に高強度で発光した時は、車両用信号灯1が制動を表示してもよい。
【0018】
リフレクタ5,6が鏡筒2の後側開口を閉塞するようにして鏡筒2の後端部に設けられ、鏡筒2とリフレクタ5,6が一体成形されている。正面から見て、リフレクタ5が、鏡筒2内の領域のうち光軸Axよりも左の領域を占めており、リフレクタ6が、鏡筒2内の領域のうち光軸Axよりも右の領域を占めている。そして、リフレクタ5の右端とリフレクタ6の左端が連接され、リフレクタ5とリフレクタ6が一体成形されている。
【0019】
リフレクタ5の前面には、凹面状の放物面系反射面51が形成されている。放物面系反射面51は、焦点F5から前に延びる軸Ax5を回転軸とした回転放物面を基準面とするとともに、反射光の向きをエイミングするための複数の反射素子面51aからなる。放物面系反射面51の基準となる回転放物面の回転軸Ax5が光軸Axの左側に位置し、回転軸Ax5と光軸Axが互いにほぼ平行である。放物面系反射面51の基準となる回転放物面の焦点F5は、光源3又はその近傍に位置している。反射素子面51aは、正面から見て、上下方向に延びる帯状に形成されている。水平断面における反射素子面51aの断面形状は所定の曲率を有した凸状曲線であり、反射素子面51aは、その凸状曲線を基準の回転放物面に沿って上下に移動することによって得られる凸面である。放物面系反射面51は、これら反射素子面51aによって回転放物面に近似されている。
【0020】
リフレクタ6の前面には、凹面状の放物面系反射面61が形成されている。放物面系反射面61は、放物面系反射面51と同様に、複数の反射素子面61aによって回転放物面に近似された面である。放物面系反射面61の基準となる回転放物面の回転軸Ax6が光軸Axの右側に位置し、回転軸Ax6と光軸Axが互いにほぼ平行である。放物面系反射面61の基準となる回転放物面の焦点F6は、光源4又はその近傍に位置している。
【0021】
凸レンズ7は、鏡筒2の前側開口2aを閉塞するように鏡筒2の前端部に取り付けられ、正面から見て、鏡筒2は、凸レンズ7を囲繞するように設けられている。凸レンズ7は平凸レンズであり、凸レンズ7の後側入射面7aが平面であり、凸レンズ7の前側出射面7bが球状凸面である。前側出射面7bは、後側入射面7aの中心点で後側入射面7aに直交する中心軸(回転対称軸)Ax7の回りに回転対称な球面である。後側入射面7aが光軸Axに対して斜めに交わっている。凸レンズ7の中心軸Ax7が光軸Axから水平面に沿って右に傾斜するように、凸レンズ7が傾いて設置されている。凸レンズ7が傾いて設置されているから、凸レンズ7が光軸Axに関する回転対称体ではなく、前側出射面7bが光軸Axに関して非球面である。
【0022】
図3に示すように、凸レンズ7を上から見て、前側出射面7bの右縁における接線7cが光軸Axから水平面に沿って右に傾斜している。これは、前側出射面7bが球面状となる凸レンズ7が右に傾いて設置されているためである。
また、互いに等しい口径の凸レンズ7と非球面凸レンズ907を比較すると、凸レンズ7の前側出射面7bが、非球面凸レンズ907の前側出射面907bよりも、中心軸Ax7方向に膨出している。
なお、図1に示すように、この凸レンズ7の後側入射面7aは、改良前の凸レンズの後側入射面97aを基準として角度θ(例えば、3°)のオフセットを設定したものである。改良前の凸レンズの前側出射面の曲率は凸レンズ7の前側出射面7bの曲率と同じであり、凸レンズ7の前側出射面7bの右側の部分が改良前の凸レンズの前側出射面の右側の部分よりも広くなっている。
上述の非球面凸レンズ907や改良前の凸レンズを鏡筒2、光源3,4及びリフレクタ5,6と組み合わせて用いた車両用信号灯も、凸レンズ7を用いた車両用信号灯1と同様に、本発明の範囲に含まれる。
【0023】
この車両用信号灯1による光の作用について説明する。
光源3が発光し、光源3から発した光が放物面系反射面51によって前方に反射する。放物面系反射面51が回転放物面を基準としているため、放物面系反射面51による反射光は略平行光である。また、放物面系反射面51がエイミング用の複数の反射素子面51aからなるので、放物面系反射面51によって反射した反射光の向きは、光軸Axから水平面に沿って左に傾いた向きである。
【0024】
一方、光源4から発した光が、放物面系反射面61によって略平行光として前方に反射し、反射素子面61aによって偏向される反射光の向きは、光軸Axから水平面に沿って右に傾いた向きである。
【0025】
放物面系反射面51,61によって反射した光は、放物面系反射面51,61と凸レンズ7との間では集光しない。放物面系反射面51,61が回転放物面を基準としており、放物面系反射面51,61による反射光が略平行光であるためである。
【0026】
放物面系反射面51,61によって反射した光が凸レンズ7の後側入射面7aに入射して屈折し、その入射光が凸レンズ7の前側出射面7bから出射して屈折する。このように凸レンズ7によって前方に投射された光は、凸レンズ7の前方の領域α(図1参照)内に集光する。領域αを通過した光は、領域αを原点として発散する。
【0027】
以上のように、凸レンズ7に入射する光が略平行光であるから、凸レンズ7のすぐ前の領域αに集光し、それよりも前方では発散光となる。そのため、凸レンズ7の正面から凸レンズ7を見た場合でも、いわゆる点光りが発生しない。点光りとは、凸レンズ7の正面の或る角度から凸レンズ7を見た場合に、他の角度から凸レンズ7を見た場合よりも明るく見えることをいう。つまり、凸レンズ7から投射した光は、向きに関わらずほぼ均一の強度となる。そのため、車両用信号灯1を適切な強度で視認することができる範囲が広くなる。
【0028】
また、光源3,4が収容穴2c,2dにそれぞれ収容されているから、光源3,4から発した直射光が凸レンズ7に入射せず、いわゆる点光りを防止することができる。また、正面から見たときには、光源3,4が隠れているから、車両用信号灯1の見栄えが良くなる。
【0029】
また、放物面系反射面51,61が後ろ側に配置され、凸レンズ7が放物面系反射面51,61の前に配置されているから、凸レンズ7の前側出射面7bに映る像が今までにない斬新なものとなる。従って、この車両用信号灯1を正面から見た場合に、見栄えが斬新になって、車両用信号灯1のデザイン性が向上する。
【0030】
また、球面状の前側出射面7bの中心軸Ax7を光軸Axに対して傾けて凸レンズ7を配置したから、前側出射面7bにおいて内面反射して前方に出射しない光の量を減らすことができる。そのため、光の有効利用をすることができる。
【0031】
ここで、図3に示すように、非球面凸レンズ907では、光線γが前側出射面907bで全反射し、光線γよりも左側では前側出射面907bから光が出射し、光線γよりも右側では前側出射面907bから光が全反射によって出射しない。同様に、凸レンズ7では、光線βが前側出射面7bで全反射し、光線βよりも左側では前側出射面7bから光が出射し、光線βよりも右側では前側出射面907bから光が全反射によって出射しない。図3から明らかなように、光線βが光線γよりも右側にあるから、光が全反射により出射しない範囲は、凸レンズ7の方が非球面凸レンズ907よりも狭い。そのため、光の有効利用をすることができる。
【0032】
なお、光源3,4の発光色を車両用信号灯1が表示する信号に応じたものとすることが好ましい。また、光源3,4の発光色が白色である場合には、必要に応じてカラーフィルタを適切な位置に設け、光源3,4の直射光、放物面系反射面51,61による反射光又は凸レンズ7による投射光がカラーフィルタを透過するようにしてもよい。また、光源3,4の発光色が白色である場合には、凸レンズ7自体に染料又は顔料が含まれ、凸レンズ7によって前に投射される光が凸レンズ7によって変色してもよい。
【0033】
〔第2の実施の形態〕
図4は、車両用信号灯1Aを一部破断して示した水平断面図である。図4に示された車両用信号灯1Aと図1に示された車両用信号灯1との間で互いに対応する部分には、同一の符号を付す。
【0034】
図4に示すように、車両用信号灯1Aでは、凸レンズ7が凸メニスカスレンズであり、凸レンズ7の後側入射面7aが球状凹面であり、凸レンズ7の前側出射面7bが球状凸面である。後側入射面7a及び前側出射面7bは、中心軸Ax7の回りに回転対称な球面である。凸レンズ7が右に傾いて設置され、中心軸Ax7が光軸Axから水平面に沿って右に傾斜している。
【0035】
以上に説明したことを除いて、車両用信号灯1Aと車両用信号灯1との間で互いに対応する部分は、同様に設けられている。
【0036】
この車両用信号灯1Aでも、放物面系反射面51,61によって反射した光が凸レンズ7によって前方に投射される。凸レンズ7によって投射された光は、凸レンズ7の前方の領域ε(図4参照)内に集光し、領域εよりも前方では発散する。そのため、いわゆる点光りを防止することができる。
【0037】
また、凸レンズ7が凸メニスカスレンズであるから、凸レンズ7を薄くすることができる。
【0038】
また、凸レンズ7が凸メニスカスレンズであるから、光束利用率が更に向上する。つまり、図1に示された平凸レンズ7では、前側出射面7bの周縁部(図3に示された光線βよりも外側)で光が内面反射してしまうのに対し、図4に示された凸メニスカスレンズ7では、光が内面反射する周縁部の範囲を狭くすることができる。
【0039】
図5は、図4に示された車両用信号灯1Aの配光をグレースケールで示したものである。図6は、図1に示された車両用信号灯1の配光をグレースケールで示したものである。図5、図6中、色が白くなるにつれて、光度が高くなる。
【0040】
図5、図6に示すように、車両用信号灯1Aは、車両用信号灯1よりも、中心部分(ECE規格により定められた上下10°、左右20°の範囲内)の光度が高いことがわかる。
【0041】
なお、車両用信号灯1の光束利用率が2.40lmである場合、凸レンズ7以外の条件が車両用信号灯1と同じである車両用信号灯1Aの光束利用率は3.26lmである。
【0042】
〔変形例〕
本発明を適用可能な実施形態は、上述した各実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、凸レンズ7が平凸レンズや凸メニスカスレンズに限らず、他の凸レンズであってもよい。例えば、凸レンズ7が非球面凸レンズであってもよい。
また、凸レンズ7の中心軸Ax7が光軸Axに対して傾いているものとしたが、凸レンズ7の中心軸Ax7が光軸Axに対して平行であってもよい。
【実施例1】
【0043】
(1)凸レンズの直径が60mmの場合
図7は、車両用信号灯1を示した水平断面図である。図8は、車両用信号灯1Aを示した水平断面図である。図9は、車両用信号灯901を示したものである。図9に示された車両用信号灯901は、図7に示された車両用信号灯1の凸レンズ7を非球面凸レンズ907に代えたものである。
【0044】
図7に示すように、凸レンズ7は、光軸Axに正対する位置から28.6°傾いて配置されている。凸レンズ7の前側出射面7bの右縁における接線7cは、光軸Axから右に9.44°だけ傾いている。
図8に示す車両用信号灯1Aの場合では、凸レンズ7の前側出射面7bの右縁における接線7cは、光軸Axから右に1.37°だけ傾いている。
一方、図9に示すように、非球面凸レンズ907の前側出射面907bの右縁における接線907cは、光軸Axから左に6.52°だけ傾いている。
【0045】
図7〜図9から明らかなように、図7や図8に示す凸レンズ7の前側出射面7bが、図9に示す非球面凸レンズ907の前側出射面907bよりも中心軸Ax7方向に膨出しているとともに、図7や図8に示す接線7cが、図9に示す接線907cよりも大きく右に傾いている。そのため、光が全反射により出射しない範囲は図7や図8に示す凸レンズ7の方が図9に示す非球面凸レンズ907よりも狭く、図7や図9に示す凸レンズ7の方が光を有効利用することができる。
【0046】
(2)凸レンズの直径が45mmの場合
図10は、車両用信号灯1を示した水平断面図である。図11は、車両用信号灯1Aを示した水平断面図である。図12は、車両用信号灯901を示したものである。図12に示された車両用信号灯901は、図10に示された車両用信号灯1の凸レンズ7を非球面凸レンズ907に代えたものである。
【0047】
図10に示すように、凸レンズ7は、光軸Axに正対する位置から15.18°傾いて配置されている。前側出射面7bの右縁における接線7cは、光軸Axから右に3.22°だけ傾いている。
図11に示す車両用信号灯1Aの場合では、前側出射面7bの右縁における接線7cは、光軸Axから左に12.05°だけ傾いている。
図12に示すように、前側出射面907bの右縁における接線907cは、光軸Axから左に23.09°だけ傾いている。
図10や図11に示す前側出射面7bが図12に示す前側出射面907bよりも中心軸Ax7方向に膨出しているとともに、図10や図11に示す接線7cが図12に示す接線907cよりも大きく右に傾いている。そのため、光が全反射により出射しない範囲は図10や図11に示す凸レンズ7の方が図12に示す非球面凸レンズ907よりも狭く、図10や図11に示す凸レンズ7の方が光を有効利用することができる。
【0048】
(3)凸レンズの直径が30mmの場合
図13は、車両用信号灯1を示した水平断面図である。図14は、車両用信号灯1Aを示した水平断面図である。図15は、車両用信号灯901を示したものである。図15に示された車両用信号灯901は、図13に示された車両用信号灯1の凸レンズ7を非球面凸レンズ907に代えたものである。
【0049】
図13に示すように、凸レンズ7は、光軸Axに正対する位置から7.34°傾いて配置されている。凸レンズ7の前側出射面7bの右縁における接線7cは、光軸Axから左に14.32°だけ傾いている。
図14に示す車両用信号灯1Aの場合では、前側出射面7bの右縁における接線7cは、光軸Axから左に19.92°だけ傾いている。
図15に示すように、非球面凸レンズ907の前側出射面907bの右縁における接線907cは、光軸Axから左に27.3°だけ傾いている。
図13や図14に示す前側出射面7bが図15に示す前側出射面907bよりも中心軸Ax7方向に膨出しているとともに、図15に示す接線907cが図13や図14に示す接線7cよりも大きく左に傾いている。そのため、光が全反射により出射しない範囲は図13や図14に示す凸レンズ7の方が図15に示す非球面凸レンズ907よりも狭く、図13や図14に示す凸レンズ7の方が光を有効利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1、1A、901 車両用信号灯
2 鏡筒
2b 内壁面
2c,2d 収容穴
3,4 光源
7、907 凸レンズ
7a 後側入射面
7b 前側出射面
51,61 放物面系反射面
51a,61a 反射素子面
Ax 光軸
Ax7 中心軸
F5,F6 焦点
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用信号灯に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタ型車両用灯具は、光源、楕円面系リフレクタ及び投影レンズを備えるものである(例えば、特許文献1参照)。楕円面系リフレクタは後ろ側の第一焦点と、前側の第二焦点とを有し、投影レンズが楕円面系リフレクタの前に配置され、投影レンズの焦点が楕円面系リフレクタの第二焦点近傍に位置し、光源が楕円面系リフレクタの第一焦点近傍に配置されている。光源から発した光は楕円面系リフレクタによって前方に反射され、その反射光が第二焦点に集光する。第二焦点に集光した反射光が投影レンズによって前方に投射される。投影レンズの焦点が楕円面系リフレクタの第二焦点近傍に位置しているから、投影レンズによって前方に投射された光がほぼ平行光である。このようなプロジェクタ型車両用灯具は、一般にヘッドランプに用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−12477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両のデザイン性を向上させるべく、DRL(Daytime Running Lamp)、ポジションランプ、テールランプ、ブレーキランプ等の信号灯にプロジェクタ型車両用灯具を用いると、プロジェクタ型車両用灯具の投影レンズから前方に投射された光がほぼ平行光であるから、プロジェクタ型車両用灯具を真正面から見た場合には、投影レンズが明るく輝いて見える。一方、プロジェクタ型車両用灯具を斜め前から見た場合には、投影レンズがそれほど明るく見えない。そのため、適切な明るさで視認できる範囲が狭くなってしまい、プロジェクタ型車両用灯具を信号灯に用いることができない。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、車両用信号灯のデザイン性を向上させ、車両用信号灯を適切な明るさで視認できる範囲を広げることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、本発明に係る車両用信号灯は、光源と、前記光源又はその近傍に焦点を有し、前記光源から発した光を前に反射させる放物面系反射面と、前記光源及び前記放物面系反射面の前に配置された凸レンズと、を備えることとした。
【0006】
好ましくは、前記車両用信号灯が、正面から見て前記凸レンズを囲うようにして、前記放物面系反射面と前記凸レンズとの間に設けられた鏡筒を更に備え、前記鏡筒の内壁面のうち前記放物面系反射面の焦点又はその近傍の位置に収容穴が形成され、前記光源が前記収容穴に収容されていることとした。
【0007】
好ましくは、前記凸レンズの中心軸が灯具光軸に対して傾斜していることとした。
【0008】
好ましくは、前記凸レンズの後側入射面がその中心点で前記中心軸に直行する平面であり、前記凸レンズの前側出射面が前記中心軸の回りに回転対称な球状凸面であることとした。
【0009】
好ましくは、前記凸レンズの後側入射面が前記中心軸の回りに回転対称な球状凹面であり、前記凸レンズの前側出射面が前記中心軸の回りに回転対称な球状凸面であることとした。
【0010】
好ましくは、前記放物面系反射面は、前記光源から発した光を、灯具光軸に対して水平面に沿って傾いた向きに反射させる複数の反射素子面からなることとした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光源から発した光が放物面系反射面によって前に反射されるが、その反射光が放物面系反射面と凸レンズとの間では集光しない。放物面系反射面で反射した光が凸レンズによって前方に投射されるが、その光が凸レンズの前で集光し、その集光した箇所よりも前方では発散する。そのため、凸レンズから前方に投射した光を、向きに関わらずほぼ均一の強度にすることができる。従って、車両用信号灯を適切な強度で視認することができる範囲を広くすることができる。
また、凸レンズの後に放物面系反射面が配置されているから、車両用信号灯を正面から見た場合に、凸レンズに映り出る像が今までにない斬新なものとなる。従って、車両用信号灯の見栄えを斬新にすることができ、車両用信号灯のデザイン性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第一実施形態に係る車両用信号灯を一部破断して示した水平断面図である。
【図2】同実施形態において凸レンズを鏡筒から外した状態で車両用信号灯を示す前方斜視図である。
【図3】光線が凸レンズの前側出射面で全反射する範囲を説明するための図面である。
【図4】本発明の第二実施形態に係る車両用信号灯を一部破断して示した水平断面図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係る車両用信号灯の配光を示した図面である。
【図6】本発明の第二実施形態に係る車両用信号灯の配光を示した図面である。
【図7】凸レンズの直径を60mmとした場合の実施例を示す水平断面図である。
【図8】凸レンズの直径を60mmとした場合の実施例を示す水平断面図である。
【図9】凸レンズの直径を60mmとした場合の実施例を示す水平断面図である。
【図10】凸レンズの直径を45mmとした場合の実施例を示す水平断面図である。
【図11】凸レンズの直径を45mmとした場合の実施例を示す水平断面図である。
【図12】凸レンズの直径を45mmとした場合の実施例を示す水平断面図である。
【図13】凸レンズの直径を30mmとした場合の実施例を示す水平断面図である。
【図14】凸レンズの直径を30mmとした場合の実施例を示す水平断面図である。
【図15】凸レンズの直径を30mmとした場合の実施例を示す水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0014】
〔第1の実施の形態〕
図1は、車両用信号灯1を一部破断して示した水平断面図である。図1の断面は、灯具としての光軸Axを通る水平面に沿って破断して、それを上から見て示したものである。
この車両用信号灯1は、例えば、DRL(Daytime Running Lamp)、ポジションランプ、テールランプ、ブレーキランプ、バックランプ、方向指示ランプ、ハイマウントストップランプ又はテールランプ・ブレーキランプ兼用灯に用いられる。図1に示すように、この車両用信号灯1の光軸Axは、前後方向に延びている。この車両用信号灯1は、鏡筒2、光源3,4、リフレクタ5,6及び凸レンズ7等を備える。
【0015】
図2は、凸レンズ7を鏡筒2から外した状態で車両用信号灯1を示す前方斜視図である。
図1、図2に示すように、鏡筒2は略円筒状に形成されており、その中心軸が前後方向に延びている。具体的には、鏡筒2の内壁面2bは、光軸Axに平行な母線を光軸Ax回りに回転移動して得られた円柱面である。鏡筒2の内壁面2bのうち左右両側には、収容穴2c,2dが形成されている。収容穴2cが光軸Axに関して収容穴2dの線対称となる位置に配置され、これら収容穴2c,2dが対向配置されている。
【0016】
収容穴2cには、光源3が収容され、収容穴2dには、光源4が収容されている。これら光源3,4は、鏡筒2の内壁面2bよりも内側には突き出ておらず、鏡筒2の内壁面2bよりも収容穴2c,2d内に引き込んでいる。光源3,4は、発光ダイオード、無機エレクトロルミネッセンス素子、有機エレクトロルミネッセンス素子その他の発光素子である。光源3,4はそれぞれ基板13,14に搭載されており、光源3,4が鏡筒2の外側から収容穴2c,2dにそれぞれ差し込まれて、基板13,14が鏡筒2の外壁面2eに当接している。
【0017】
光源3,4が同時に発光してもよいし、光源3,4が異なるタイミングで発光してもよい。例えば、車両用信号灯1をテールランプ・ブレーキランプに兼用する場合には、光源3,4のどちらか一方が発光した時は、車両用信号灯1が車両の後部を表示し、光源3,4の両方が発光した時は、車両用信号灯1が制動を表示する。勿論、光源3,4の両方が発光した時は、車両用信号灯1が車両の後部を表示し、光源3,4の両方が更に高強度で発光した時は、車両用信号灯1が制動を表示してもよい。
【0018】
リフレクタ5,6が鏡筒2の後側開口を閉塞するようにして鏡筒2の後端部に設けられ、鏡筒2とリフレクタ5,6が一体成形されている。正面から見て、リフレクタ5が、鏡筒2内の領域のうち光軸Axよりも左の領域を占めており、リフレクタ6が、鏡筒2内の領域のうち光軸Axよりも右の領域を占めている。そして、リフレクタ5の右端とリフレクタ6の左端が連接され、リフレクタ5とリフレクタ6が一体成形されている。
【0019】
リフレクタ5の前面には、凹面状の放物面系反射面51が形成されている。放物面系反射面51は、焦点F5から前に延びる軸Ax5を回転軸とした回転放物面を基準面とするとともに、反射光の向きをエイミングするための複数の反射素子面51aからなる。放物面系反射面51の基準となる回転放物面の回転軸Ax5が光軸Axの左側に位置し、回転軸Ax5と光軸Axが互いにほぼ平行である。放物面系反射面51の基準となる回転放物面の焦点F5は、光源3又はその近傍に位置している。反射素子面51aは、正面から見て、上下方向に延びる帯状に形成されている。水平断面における反射素子面51aの断面形状は所定の曲率を有した凸状曲線であり、反射素子面51aは、その凸状曲線を基準の回転放物面に沿って上下に移動することによって得られる凸面である。放物面系反射面51は、これら反射素子面51aによって回転放物面に近似されている。
【0020】
リフレクタ6の前面には、凹面状の放物面系反射面61が形成されている。放物面系反射面61は、放物面系反射面51と同様に、複数の反射素子面61aによって回転放物面に近似された面である。放物面系反射面61の基準となる回転放物面の回転軸Ax6が光軸Axの右側に位置し、回転軸Ax6と光軸Axが互いにほぼ平行である。放物面系反射面61の基準となる回転放物面の焦点F6は、光源4又はその近傍に位置している。
【0021】
凸レンズ7は、鏡筒2の前側開口2aを閉塞するように鏡筒2の前端部に取り付けられ、正面から見て、鏡筒2は、凸レンズ7を囲繞するように設けられている。凸レンズ7は平凸レンズであり、凸レンズ7の後側入射面7aが平面であり、凸レンズ7の前側出射面7bが球状凸面である。前側出射面7bは、後側入射面7aの中心点で後側入射面7aに直交する中心軸(回転対称軸)Ax7の回りに回転対称な球面である。後側入射面7aが光軸Axに対して斜めに交わっている。凸レンズ7の中心軸Ax7が光軸Axから水平面に沿って右に傾斜するように、凸レンズ7が傾いて設置されている。凸レンズ7が傾いて設置されているから、凸レンズ7が光軸Axに関する回転対称体ではなく、前側出射面7bが光軸Axに関して非球面である。
【0022】
図3に示すように、凸レンズ7を上から見て、前側出射面7bの右縁における接線7cが光軸Axから水平面に沿って右に傾斜している。これは、前側出射面7bが球面状となる凸レンズ7が右に傾いて設置されているためである。
また、互いに等しい口径の凸レンズ7と非球面凸レンズ907を比較すると、凸レンズ7の前側出射面7bが、非球面凸レンズ907の前側出射面907bよりも、中心軸Ax7方向に膨出している。
なお、図1に示すように、この凸レンズ7の後側入射面7aは、改良前の凸レンズの後側入射面97aを基準として角度θ(例えば、3°)のオフセットを設定したものである。改良前の凸レンズの前側出射面の曲率は凸レンズ7の前側出射面7bの曲率と同じであり、凸レンズ7の前側出射面7bの右側の部分が改良前の凸レンズの前側出射面の右側の部分よりも広くなっている。
上述の非球面凸レンズ907や改良前の凸レンズを鏡筒2、光源3,4及びリフレクタ5,6と組み合わせて用いた車両用信号灯も、凸レンズ7を用いた車両用信号灯1と同様に、本発明の範囲に含まれる。
【0023】
この車両用信号灯1による光の作用について説明する。
光源3が発光し、光源3から発した光が放物面系反射面51によって前方に反射する。放物面系反射面51が回転放物面を基準としているため、放物面系反射面51による反射光は略平行光である。また、放物面系反射面51がエイミング用の複数の反射素子面51aからなるので、放物面系反射面51によって反射した反射光の向きは、光軸Axから水平面に沿って左に傾いた向きである。
【0024】
一方、光源4から発した光が、放物面系反射面61によって略平行光として前方に反射し、反射素子面61aによって偏向される反射光の向きは、光軸Axから水平面に沿って右に傾いた向きである。
【0025】
放物面系反射面51,61によって反射した光は、放物面系反射面51,61と凸レンズ7との間では集光しない。放物面系反射面51,61が回転放物面を基準としており、放物面系反射面51,61による反射光が略平行光であるためである。
【0026】
放物面系反射面51,61によって反射した光が凸レンズ7の後側入射面7aに入射して屈折し、その入射光が凸レンズ7の前側出射面7bから出射して屈折する。このように凸レンズ7によって前方に投射された光は、凸レンズ7の前方の領域α(図1参照)内に集光する。領域αを通過した光は、領域αを原点として発散する。
【0027】
以上のように、凸レンズ7に入射する光が略平行光であるから、凸レンズ7のすぐ前の領域αに集光し、それよりも前方では発散光となる。そのため、凸レンズ7の正面から凸レンズ7を見た場合でも、いわゆる点光りが発生しない。点光りとは、凸レンズ7の正面の或る角度から凸レンズ7を見た場合に、他の角度から凸レンズ7を見た場合よりも明るく見えることをいう。つまり、凸レンズ7から投射した光は、向きに関わらずほぼ均一の強度となる。そのため、車両用信号灯1を適切な強度で視認することができる範囲が広くなる。
【0028】
また、光源3,4が収容穴2c,2dにそれぞれ収容されているから、光源3,4から発した直射光が凸レンズ7に入射せず、いわゆる点光りを防止することができる。また、正面から見たときには、光源3,4が隠れているから、車両用信号灯1の見栄えが良くなる。
【0029】
また、放物面系反射面51,61が後ろ側に配置され、凸レンズ7が放物面系反射面51,61の前に配置されているから、凸レンズ7の前側出射面7bに映る像が今までにない斬新なものとなる。従って、この車両用信号灯1を正面から見た場合に、見栄えが斬新になって、車両用信号灯1のデザイン性が向上する。
【0030】
また、球面状の前側出射面7bの中心軸Ax7を光軸Axに対して傾けて凸レンズ7を配置したから、前側出射面7bにおいて内面反射して前方に出射しない光の量を減らすことができる。そのため、光の有効利用をすることができる。
【0031】
ここで、図3に示すように、非球面凸レンズ907では、光線γが前側出射面907bで全反射し、光線γよりも左側では前側出射面907bから光が出射し、光線γよりも右側では前側出射面907bから光が全反射によって出射しない。同様に、凸レンズ7では、光線βが前側出射面7bで全反射し、光線βよりも左側では前側出射面7bから光が出射し、光線βよりも右側では前側出射面907bから光が全反射によって出射しない。図3から明らかなように、光線βが光線γよりも右側にあるから、光が全反射により出射しない範囲は、凸レンズ7の方が非球面凸レンズ907よりも狭い。そのため、光の有効利用をすることができる。
【0032】
なお、光源3,4の発光色を車両用信号灯1が表示する信号に応じたものとすることが好ましい。また、光源3,4の発光色が白色である場合には、必要に応じてカラーフィルタを適切な位置に設け、光源3,4の直射光、放物面系反射面51,61による反射光又は凸レンズ7による投射光がカラーフィルタを透過するようにしてもよい。また、光源3,4の発光色が白色である場合には、凸レンズ7自体に染料又は顔料が含まれ、凸レンズ7によって前に投射される光が凸レンズ7によって変色してもよい。
【0033】
〔第2の実施の形態〕
図4は、車両用信号灯1Aを一部破断して示した水平断面図である。図4に示された車両用信号灯1Aと図1に示された車両用信号灯1との間で互いに対応する部分には、同一の符号を付す。
【0034】
図4に示すように、車両用信号灯1Aでは、凸レンズ7が凸メニスカスレンズであり、凸レンズ7の後側入射面7aが球状凹面であり、凸レンズ7の前側出射面7bが球状凸面である。後側入射面7a及び前側出射面7bは、中心軸Ax7の回りに回転対称な球面である。凸レンズ7が右に傾いて設置され、中心軸Ax7が光軸Axから水平面に沿って右に傾斜している。
【0035】
以上に説明したことを除いて、車両用信号灯1Aと車両用信号灯1との間で互いに対応する部分は、同様に設けられている。
【0036】
この車両用信号灯1Aでも、放物面系反射面51,61によって反射した光が凸レンズ7によって前方に投射される。凸レンズ7によって投射された光は、凸レンズ7の前方の領域ε(図4参照)内に集光し、領域εよりも前方では発散する。そのため、いわゆる点光りを防止することができる。
【0037】
また、凸レンズ7が凸メニスカスレンズであるから、凸レンズ7を薄くすることができる。
【0038】
また、凸レンズ7が凸メニスカスレンズであるから、光束利用率が更に向上する。つまり、図1に示された平凸レンズ7では、前側出射面7bの周縁部(図3に示された光線βよりも外側)で光が内面反射してしまうのに対し、図4に示された凸メニスカスレンズ7では、光が内面反射する周縁部の範囲を狭くすることができる。
【0039】
図5は、図4に示された車両用信号灯1Aの配光をグレースケールで示したものである。図6は、図1に示された車両用信号灯1の配光をグレースケールで示したものである。図5、図6中、色が白くなるにつれて、光度が高くなる。
【0040】
図5、図6に示すように、車両用信号灯1Aは、車両用信号灯1よりも、中心部分(ECE規格により定められた上下10°、左右20°の範囲内)の光度が高いことがわかる。
【0041】
なお、車両用信号灯1の光束利用率が2.40lmである場合、凸レンズ7以外の条件が車両用信号灯1と同じである車両用信号灯1Aの光束利用率は3.26lmである。
【0042】
〔変形例〕
本発明を適用可能な実施形態は、上述した各実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、凸レンズ7が平凸レンズや凸メニスカスレンズに限らず、他の凸レンズであってもよい。例えば、凸レンズ7が非球面凸レンズであってもよい。
また、凸レンズ7の中心軸Ax7が光軸Axに対して傾いているものとしたが、凸レンズ7の中心軸Ax7が光軸Axに対して平行であってもよい。
【実施例1】
【0043】
(1)凸レンズの直径が60mmの場合
図7は、車両用信号灯1を示した水平断面図である。図8は、車両用信号灯1Aを示した水平断面図である。図9は、車両用信号灯901を示したものである。図9に示された車両用信号灯901は、図7に示された車両用信号灯1の凸レンズ7を非球面凸レンズ907に代えたものである。
【0044】
図7に示すように、凸レンズ7は、光軸Axに正対する位置から28.6°傾いて配置されている。凸レンズ7の前側出射面7bの右縁における接線7cは、光軸Axから右に9.44°だけ傾いている。
図8に示す車両用信号灯1Aの場合では、凸レンズ7の前側出射面7bの右縁における接線7cは、光軸Axから右に1.37°だけ傾いている。
一方、図9に示すように、非球面凸レンズ907の前側出射面907bの右縁における接線907cは、光軸Axから左に6.52°だけ傾いている。
【0045】
図7〜図9から明らかなように、図7や図8に示す凸レンズ7の前側出射面7bが、図9に示す非球面凸レンズ907の前側出射面907bよりも中心軸Ax7方向に膨出しているとともに、図7や図8に示す接線7cが、図9に示す接線907cよりも大きく右に傾いている。そのため、光が全反射により出射しない範囲は図7や図8に示す凸レンズ7の方が図9に示す非球面凸レンズ907よりも狭く、図7や図9に示す凸レンズ7の方が光を有効利用することができる。
【0046】
(2)凸レンズの直径が45mmの場合
図10は、車両用信号灯1を示した水平断面図である。図11は、車両用信号灯1Aを示した水平断面図である。図12は、車両用信号灯901を示したものである。図12に示された車両用信号灯901は、図10に示された車両用信号灯1の凸レンズ7を非球面凸レンズ907に代えたものである。
【0047】
図10に示すように、凸レンズ7は、光軸Axに正対する位置から15.18°傾いて配置されている。前側出射面7bの右縁における接線7cは、光軸Axから右に3.22°だけ傾いている。
図11に示す車両用信号灯1Aの場合では、前側出射面7bの右縁における接線7cは、光軸Axから左に12.05°だけ傾いている。
図12に示すように、前側出射面907bの右縁における接線907cは、光軸Axから左に23.09°だけ傾いている。
図10や図11に示す前側出射面7bが図12に示す前側出射面907bよりも中心軸Ax7方向に膨出しているとともに、図10や図11に示す接線7cが図12に示す接線907cよりも大きく右に傾いている。そのため、光が全反射により出射しない範囲は図10や図11に示す凸レンズ7の方が図12に示す非球面凸レンズ907よりも狭く、図10や図11に示す凸レンズ7の方が光を有効利用することができる。
【0048】
(3)凸レンズの直径が30mmの場合
図13は、車両用信号灯1を示した水平断面図である。図14は、車両用信号灯1Aを示した水平断面図である。図15は、車両用信号灯901を示したものである。図15に示された車両用信号灯901は、図13に示された車両用信号灯1の凸レンズ7を非球面凸レンズ907に代えたものである。
【0049】
図13に示すように、凸レンズ7は、光軸Axに正対する位置から7.34°傾いて配置されている。凸レンズ7の前側出射面7bの右縁における接線7cは、光軸Axから左に14.32°だけ傾いている。
図14に示す車両用信号灯1Aの場合では、前側出射面7bの右縁における接線7cは、光軸Axから左に19.92°だけ傾いている。
図15に示すように、非球面凸レンズ907の前側出射面907bの右縁における接線907cは、光軸Axから左に27.3°だけ傾いている。
図13や図14に示す前側出射面7bが図15に示す前側出射面907bよりも中心軸Ax7方向に膨出しているとともに、図15に示す接線907cが図13や図14に示す接線7cよりも大きく左に傾いている。そのため、光が全反射により出射しない範囲は図13や図14に示す凸レンズ7の方が図15に示す非球面凸レンズ907よりも狭く、図13や図14に示す凸レンズ7の方が光を有効利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1、1A、901 車両用信号灯
2 鏡筒
2b 内壁面
2c,2d 収容穴
3,4 光源
7、907 凸レンズ
7a 後側入射面
7b 前側出射面
51,61 放物面系反射面
51a,61a 反射素子面
Ax 光軸
Ax7 中心軸
F5,F6 焦点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源又はその近傍に焦点を有し、前記光源から発した光を前に反射させる放物面系反射面と、
前記光源及び前記放物面系反射面の前に配置された凸レンズと、を備えることを特徴とする車両用信号灯。
【請求項2】
正面から見て前記凸レンズを囲うようにして、前記放物面系反射面と前記凸レンズとの間に設けられた鏡筒を更に備え、
前記鏡筒の内壁面のうち前記放物面系反射面の焦点又はその近傍の位置に収容穴が形成され、前記光源が前記収容穴に収容されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用信号灯。
【請求項3】
前記凸レンズの中心軸が灯具光軸に対して傾斜していることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用信号灯。
【請求項4】
前記凸レンズの後側入射面がその中心点で前記中心軸に直行する平面であり、前記凸レンズの前側出射面が前記中心軸の回りに回転対称な球状凸面であることを特徴とする請求項3に記載の車両用信号灯。
【請求項5】
前記凸レンズの後側入射面が前記中心軸の回りに回転対称な球状凹面であり、前記凸レンズの前側出射面が前記中心軸の回りに回転対称な球状凸面であることを特徴とする請求項3に記載の車両用信号灯。
【請求項6】
前記放物面系反射面は、前記光源から発した光を、灯具光軸に対して水平面に沿って傾いた向きに反射させる複数の反射素子面からなることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の車両用信号灯。
【請求項1】
光源と、
前記光源又はその近傍に焦点を有し、前記光源から発した光を前に反射させる放物面系反射面と、
前記光源及び前記放物面系反射面の前に配置された凸レンズと、を備えることを特徴とする車両用信号灯。
【請求項2】
正面から見て前記凸レンズを囲うようにして、前記放物面系反射面と前記凸レンズとの間に設けられた鏡筒を更に備え、
前記鏡筒の内壁面のうち前記放物面系反射面の焦点又はその近傍の位置に収容穴が形成され、前記光源が前記収容穴に収容されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用信号灯。
【請求項3】
前記凸レンズの中心軸が灯具光軸に対して傾斜していることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用信号灯。
【請求項4】
前記凸レンズの後側入射面がその中心点で前記中心軸に直行する平面であり、前記凸レンズの前側出射面が前記中心軸の回りに回転対称な球状凸面であることを特徴とする請求項3に記載の車両用信号灯。
【請求項5】
前記凸レンズの後側入射面が前記中心軸の回りに回転対称な球状凹面であり、前記凸レンズの前側出射面が前記中心軸の回りに回転対称な球状凸面であることを特徴とする請求項3に記載の車両用信号灯。
【請求項6】
前記放物面系反射面は、前記光源から発した光を、灯具光軸に対して水平面に沿って傾いた向きに反射させる複数の反射素子面からなることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の車両用信号灯。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2011−222476(P2011−222476A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213078(P2010−213078)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
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