車両用側突検出装置
【課題】広範囲の衝突検出を可能とし、省スペース化、および、配置の容易化を図ることができる車両用側突検出装置を提供する。
【解決手段】側面ドア1は、外板11と、内板12と、補強部材13を備えている。内板12と補強部材13との間は、ドアガラス30とドアガラス30の下辺に取り付けられたステー31の移動空間である。コイル2はドアガラス30の内板12側に配置され、コイル2は内板12と対向する方向に磁界を発生している。コイル2は磁性体である内板12を被検出部材としている。衝突時には補強部材13の変形を伴う外板11の変形によりコイル2も内板12側に移動し、内板12との離間距離の変化を磁束の変化量として検出する。そして、この検出値に基づいて判定手段が車両と物体とが衝突したことを判定する。
【解決手段】側面ドア1は、外板11と、内板12と、補強部材13を備えている。内板12と補強部材13との間は、ドアガラス30とドアガラス30の下辺に取り付けられたステー31の移動空間である。コイル2はドアガラス30の内板12側に配置され、コイル2は内板12と対向する方向に磁界を発生している。コイル2は磁性体である内板12を被検出部材としている。衝突時には補強部材13の変形を伴う外板11の変形によりコイル2も内板12側に移動し、内板12との離間距離の変化を磁束の変化量として検出する。そして、この検出値に基づいて判定手段が車両と物体とが衝突したことを判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面ドアに物体が衝突したことを検出する車両用側突検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用側突検出装置として、例えば、特開平5−93735号公報(特許文献1)に記載されたものがある。図11(a)、(b)に特許文献1記載の車両用側突検出装置の検出センサの側面ドアへの取り付け構造を垂直断面図で示す。特許文献1記載の車両用側突検出装置は、図11(a)、(b)に示すように、検出センサ218及び219は、側面ドア内部に配置された補強部材213に近接するように内板212側から支脚217を介して内板212に取り付けられている。検出センサ218及び219は、内板212側に配置されており、物体が側面ドアに衝突した場合は補強部材213が内板212側に変形するので、補強部材213の変形を検出することができる。図11(a)の検出センサ218は、衝撃センサであり、図11(b)の検出センサ219は、電気コイルである。
【特許文献1】特開平5−93735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、補強部材と内板との間には、側面ドアのドアガラスを上下に開閉するためのスペースとなっている。そして、ドアガラスを固定し、上下に駆動するステー等がドアガラス下辺に設けられており(図1及び図2参照)、ドアガラスの開閉にともなってステー等が上下に移動する。従って、ドアガラス及びステーが上下に移動する範囲には検出センサを特許文献1に記載されたような方法で配置しづらい。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、コイルの磁束を利用した側突検出装置において、側面ドアへの物体の広範囲の衝突検出を可能とし、省スペース化、および、配置の容易化を図ることができる車両用側突検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の車両用側突検出装置は、
車両に搭載される側面ドアの外板と、
外板の車室内側に外板に対向して配置される側面ドアの内板と、
を備え、
内板、内板のうち外板側の面側に取り付けられる内側部材、および外板と内板との間に配置される補強部材のうち少なくとも何れか一つである被検出部材は、磁性体からなり、
さらに、被検出部材と外板との間であって被検出部材から離隔した状態で側面ドア内に配置され、被検出部材の方向に磁界を発生させ、被検出部材との離間距離の変化にともない変化する磁束を検出するコイルを有する検出手段と、
検出手段の検出した磁束の変化に基づいて車両と物体とが衝突したことを判定する判定手段と、
を備える車両用側突検出装置において、
コイルは、側面ドアのドアガラスまたはドアガラス支持部材に配置されていることを特徴とする。
【0006】
本発明の車両用側突検出装置は、コイルは、外板と内板との間に位置するドアガラスまたはドアガラス支持部材に配置されている。そして、被検出部材である内板、内板に取り付けられた内側部材、または補強部材と対向する方向に磁界を発生させている。物体が外板に衝突して補強部材が変形した場合、外板及び補強部材は内板に近づくように移動して、さらに、ドアガラス及びドアガラス(またはドアガラス支持部材)に配置されたコイルを内板側に移動させる。この移動にともない、コイルが発生する磁界によって、被検出部材である内板、内側部材あるいは補強部材に渦電流が流れる。この渦電流により磁界が発生し、コイルの磁束が少なくなるように作用する。このように、コイルを貫通する磁束は、被検出部材とコイルとの離間距離の変化に応じて変化する。
【0007】
また、補強部材と内板との間にはドアガラスが配置されていて、ドアガラスの開閉にともないドアガラスの下辺に固定されたステーが上下する。しかし、コイルはドアガラスまたはドアガラス支持部材に取り付けられているので、配置スペースの点でも、あるいは磁気による検出作用の点でも、ステーと干渉することがない。従って、コイルはドアガラスまたはドアガラス支持部材の車両前後方向広範囲に亘って配置することができ、側突検出可能範囲を広範囲とすることができる。さらに、ドアガラスは平坦な面状であるので、平面状コイルの取り付けが容易である。
【0008】
また、ドアガラスは補強部材より内板側に配置されているため、外板が変形したとしても、補強部材が変形しない程度の衝撃であれば、コイルと内板との離間距離、またはコイルと補強部材との離間距離は変化せず、衝突していないと判定し、乗員保護装置の起動をしない。一方、補強部材が変形するような衝撃を受けた場合にはドアガラスにも容易に変形が及ぶため、コイルと内板との離間距離及びコイルと補強部材との離間距離は変化し、確実に衝突検出ができる。
【0009】
本発明の好適な態様として、コイルは、平面状からなり、
車両用側突検出装置は、さらに、金属体または強磁性体からなり、ドアガラスまたはドアガラス支持部材に取り付けられ、被検出部材の側の面にコイルが取り付けられる平面状シールド部材を備える。
【0010】
本構成によれば、コイルは、被検出部材の方向に対して磁束を集中し、反対側の変形の影響を少なくする効果がある。また、平面状シールド部材にあらかじめコイルを取り付けておくことで、コイルのドアガラスまたはドアガラス支持部材への取り付けなどの作業、コイルの取り扱いが容易になる。
【0011】
また、本発明が平面状シールド部材を備える場合に、コイルと平面状シールド部材は一体成形されているとよい。これにより、コイルの取付状態を安定的にすることができるため、コイルの初期インダクタンスのばらつきが生じることを、より防止できる。また、両者を一体とすることで、当該一体部材のドアガラスまたはドアガラス支持部材への取り付けが容易となる。
【0012】
さらに、平面状シールド部材は、コイルの外形より大きく形成され、コイルがその外縁から飛び出さないようにコイルが取り付けられるとよい。仮に、コイルが平面状シールド部材の外縁から飛び出した状態で取り付けられると、コイルのうち平面状シールド部材から飛び出している部分により、コイルの初期インダクタンスのばらつきが生じるおそれがある。そこで、上記のように、コイルが平面状シールド部材の外縁から飛び出さないように取り付けられることで、より安定的に、コイルの初期インダクタンスのばらつきを防止できる。
【0013】
また、本発明の他の好適な態様として、内板は、貫通穴が形成され、内側部材は、貫通穴を塞ぐように内板に取り付けられ、被検出部材は、内側部材と内板とする。
【0014】
側面ドアの内板には、側面ドアの内部に配置するパワーウインド機構やスピーカなどの組み付けや調整用、および、側面ドア内に取り付けられるコイルの組み付けや調整用を目的としたサービスホールが形成されることがある。内板にサービスホールなどの貫通穴が形成されている場合、貫通穴がコイルの磁束の変化に対して影響を及ぼすことがある。そこで、このような場合には、内板そのものを被検出部材とするのではなく、内板に貫通穴を塞ぐように取り付けられた別部材である内側部材と内板とを被検出部材とすることで、サービスホールの影響を受けること防止できる。つまり、サービスホールが形成されているとしても、確実に、側突検出が可能となる。
【0015】
また、本発明の他の好適な態様として、内板は、樹脂モジュールからなり、被検出部材は、内側部材とする。例えば、内板が樹脂モジュールの場合には、内板が磁性体ではないため、内板を被検出部材とすることができない。このような場合には、樹脂モジュールからなる内板に取り付けた内側部材を被検出部材とする。この場合の内側部材はコイルの上下の移動範囲全般にわたって形成されている。これにより、確実に、側突検出が可能となる。
【0016】
また、本発明の他の好適な態様として、被検出部材は、磁性体からなる内板とするとよい。一般に、内板は、鉄などの磁性体により形成されることが多い。従って、内板そのものを被検出部材として利用することは容易である。さらに、内板は、当然に、コイルの外形より大きい。つまり、コイルは、コイルより大きな内板に対向することになる。従って、コイルが内板に近づくことによるコイルの磁束の変化が大きくなる。つまり、側突検出の感度が良好となる。
【0017】
また、被検出部材は、磁性体である補強部材とするものでもよい。コイルが補強部材に対向している場合には、外板への物体の衝突により外板が変形し、さらに、補強部材が変形した場合、コイルと補強部材との離間距離が小さくなるように変化する。従って、コイルの磁束が変化するので、確実に側突検出ができる。
【0018】
また、本発明では、上記したようにコイルをドアガラスまたはドアガラス支持部材に配置している。従って、乗員保護が必要な側突時には補強部材が変形し、さらに、コイルがドアガラスとともに内板側に変形する。そこで、コイルを平面状として外板や補強部材より柔軟性が高く形成することで、ドアガラスが変形あるいは破損した場合であっても、コイルが破損する確率が低くなる。つまり、確実にコイルと内板あるいは内側部材、さらには、補強部材との離間距離の変化を検出できる。
【0019】
また、本発明の車両用側突検出装置において、好適な態様として、判定手段は、検出手段の検出した磁束の量が第一閾値より小さくなった場合に車両と物体とが衝突したと判定する。これにより、確実に側突検出が可能となる。
【0020】
また、本発明の車両用側突検出装置において、他の好適な態様として、判定手段は、検出手段の検出した磁束の単位時間あたりの変化量の絶対値が第二閾値を超えた場合に車両と物体とが衝突したと判定する。この場合にも、確実に側突検出が可能となる。
【0021】
また、本発明の車両用側突検出装置において、上記二つの好適な態様より好適な態様として、判定手段は、検出手段の検出した磁束の量が第一閾値より小さくなった場合、または検出手段の検出した磁束の単位時間あたりの変化量の絶対値が第二閾値を超えた場合に車両と物体とが衝突したと判定する。つまり、磁束の量そのものに加えて、磁束の単位時間あたりの変化量を用いて、その何れか一方が側突を検出した場合を側突したと判定している。従って、より早期に側突検出が可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、側面ドア内に配置されたコイルの磁束を利用した車両用側突検出装置において、コイルの配置をドアガラスとともに上下するステーと干渉することのない配置とし、乗員保護が必要な衝突による車両変形を確実、かつ広範囲に検出可能とした車両用側突検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態についてより詳しく説明する。
【0024】
<第一実施形態>
第一実施形態の車両用側突検出装置について、図1〜図7を参照して説明する。
【0025】
第一実施形態は、平面状コイルが側面ドアのドアガラスに直接取り付けられた形態であって、衝突時には平面状コイルは、内板との離間距離の変化を磁束の変化に基づいて検出する。
【0026】
図1は、本発明の第一実施形態が適用される側面ドア1を車室内からみた正面図である。説明の便宜上、内板を取り除いた図としてある。図2は、図1のI―I垂直断面図であって、側面ドア1を車両の左右方向に垂直に切断した断面図である。ドアガラスは最下位に位置している状態(窓が全開の状態)を示している。なお、図1では、ドアガラスが最下位に位置している状態(窓が全開の状態)を実線で示し、ドアガラスが最上位に位置している状態(窓が閉まっている状態)を一点鎖線で示している。
【0027】
図1および図2に示すように、側面ドア1は、車外側に位置する外板11と、外板11から車室内側に離隔して且つ外板11に対向して配置される磁性体の内板12とを備える。さらに、側面ドア1は、車両前後方向に延びるように、外板11と内板12との間のうち車両左右方向の外板11側であって、車両上下方向の下方に配置されている円柱棒状の補強部材13を備えている。
【0028】
補強部材13と内板12との間には、ドアガラス30が上下に移動するスペースが設けられている。また、ドアガラス30の下辺に固定され、ドアガラス30を上下に移動させるためにパワーウインド機構のステー31(本発明のドアガラス支持部材に含まれる)が位置している。ドアガラスレギュレータ32が内板12に固定され、ドアガラスレギュレータ32にはアーム33aの一端が水平方向に移動可能に結合され、アーム33aの他端がステー31に回転可能に結合されている。ステー31にアーム33bの他端が回転可能に結合され、アーム33bの一端に取り付けられた図示しないパワーウインドモータにより、ステー31は、上下方向に駆動される。
【0029】
図1、図2に示すように、ドアガラス30の下部の内板12側には、平面状のコイル2が配置されている。そして、コイル2は、図示しない発信器から交流電圧を供給されてコイル2の法線方向(コイル2のコイル軸方向)、すなわち、平面状のコイル2と対向する内板12の方向に磁界を発生している。ここで、図1では、ドアガラス30が最下位に位置している状態(窓が全開の状態)を実線で表し、ドアガラス30が最上位に位置している状態(窓が閉まっている状態)を一点鎖線で表している。従って、どちらの場合でも、コイル2と内板12との間にステー31が入り込むことはない。また、コイル2とステー31とは上下に一定の間隔を保つ関係にあるため、ドアガラス30のいかなる開閉状態においても、ステー31がコイル2と内板12との間に入り込むことはない。従って、コイル2を配置する上でも、コイル2によって内板12との離間距離を検出する上でも、コイル2がステー31と干渉することがない。
【0030】
補強部材13は、内板12に対向して離隔配置されており、少なくとも外板11の曲げ剛性より高い曲げ剛性を有する。つまり、外板11に物体が衝突した場合に、曲げ剛性の低い外板11が変形したとしても、補強部材13により側面ドア1全体が変形することを抑制している。しかし、補強部材13が内板12側に変形するような衝突であれば、その変形はドアガラス30にも及び、ドアガラス30とともに、平面状コイル2も内板12側に移動する。ここで、第一実施形態においては、内板12が本発明における被検出部材となる。
【0031】
コイル2は、図3に示すように、全体として平面状に形成されている。このコイル2は、平面状コイル21と、一対のフィルム22とから構成されている。平面状コイル21は、例えば銅などの導電性材料により平面状に巻回するようにパターン印刷形成されている。一対のフィルム22は、平面状コイル21を両面から挟持して、平面状コイル21が露出しないように被覆している。このフィルム22は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)またはPEN(ポリエチレンナフタレート)などの可撓性材料により薄膜状に形成されている。つまり、フィルム22は、屈曲自在である。また、平面状コイル21自体についても屈曲変形可能である。従って、コイル2全体として、屈曲変形可能であり、非常に柔軟性が高い。つまり、少なくともコイル2は外板11や補強部材13よりも柔軟性が高いため、ドアガラスが変形あるいは破損した場合であっても、コイル2は破損することなく屈曲する。
【0032】
本実施形態のコイル2と内板12との離間距離と、コイル2の磁束との関係について説明する。上記したように、側面ドア1の外板11に物体が衝突すると、外板11が車室内側に変形する。そして、この衝撃が大きく、補強部材13を車室内側へ変形させる程度であると、外板11及び補強部材13と同時にドアガラス30をも内板12側へ移動させる。これにより、ドアガラス30に取り付けられたコイル2との離間距離が短くなる。そうすると、コイル2が発生する磁界によって、内板12に渦電流が流れ内板12に磁界が発生する。磁界の方向は、内板12とコイル2とが対向する方向である。つまり、衝突によって内板12とコイル2との離間距離が短くなることに伴って、コイル2に鎖交する渦電流によって発生したコイル2に鎖交する磁界、すなわちコイル2を通過する磁束が増加する。この磁束はコイル2の磁束を減ずるように作用するので、コイル2のインダクタンスが減少することとなる。
【0033】
図4に、内板12と平面状のコイル2との離間距離と、コイル2のインダクタンスLsとの関係を示す。図4のグラフにおいて、例えば、衝突前のコイル2と内板12との離間距離をdとし、衝突後の離間距離をd1と短くなったとすると、コイル2のインダクタンスLsは、図の縦軸に示すように衝突前のAから衝突後のA1へと減少する。このように、コイル2のインダクタンスLsは、内板12とコイル2との離間距離の変化に応じて変化する。なお、側面ドア1の外板11に物体が衝突した場合であっても、ドアガラス30に変形が及ばなければ、コイル2のインダクタンスLsは変化しない。
【0034】
次に、本実施形態の車両用側突検出装置は、図5に示すように、発振回路40と、検出回路50と、衝突判定手段60とから構成される。検出回路50は本発明の検出手段に該当し、衝突判定手段60は本発明の判定手段に該当する。
【0035】
検出回路50はコイル2と検出抵抗Roを備えている。コイル2はインダクタンスLsと抵抗Rsの直列回路に相当する。コイル2の一端は発振回路40に接続され、コイル2の他端は検出抵抗Ro及び衝突判定手段60に接続されている。発振回路40は発振周波数Fの交流電圧Viを検出回路50に印加している。ここで、上記したように、衝突によりコイル2と内板12との離間距離が小さくなった場合には、コイル2のインダクタンスLsは減少する。コイル2のインダクタンスLsが減少することにより、コイル2のインピーダンスが小さくなる。従って、検出抵抗Roの検出電圧Voは相対的に大きくなる。衝突判定手段60は、検出回路50のこの検出電圧Voに基づいて物体が衝突したか否かを判定する。
【0036】
次に、本実施形態の衝突判定手段について、図6、図7を参照して説明する。
【0037】
図6は、コイル2と内板12との離間距離と、コイル2の磁束との関係を示している。図6において、横軸はコイル2の内板12側への移動距離を表している。縦軸はコイル2と錯交する磁束の量(大きさ)を表している。図6に示すように、衝突まではコイル2と内板12の離間距離は変化しないので磁束の量も変わらず一定であるが、衝突によりコイル2が内板12に近づくことにより磁束の量は小さくなる。すなわち、コイル2の移動距離が大きい(コイル2が内板12に近づく)程、磁束の量は小さくなる。本実施形態では、この磁束の量があらかじめ設定された一定の値(図6の第一閾値)より小さくなった場合に、衝突であると判定する。なお、この磁束の量は、上記したように、図5に示す検出回路50の検出抵抗Roの検出電圧Voとして検出される。本実施形態の検出回路50では、磁束の量が小さくなるほど、検出電圧Voは大きくなる。
【0038】
さらに、本実施形態の衝突判定手段は、以下の方法によっても衝突か否かの判定をおこなっている。図7は、検出電圧Voに基づいて、コイル2の単位時間当たりの磁束の変化量を算出したものである。縦軸は磁束の量の時間変化量であり、横軸は衝突からの時間を表している。図6に示されているように、衝突までは、コイル2に錯交する磁束の量に変化がないので、磁束の量の時間変化量は零である。しかし、衝突直後は磁束の量の時間変化量が大きい(コイル2が急速に内板12側に移動する)、そして、変形が終わった時点で時間変化量は再び零となる。ここで、磁束の量の時間変化量に閾値(図7の第2閾値)を設定して、その閾値を超えた場合に、衝突による変形であると判定する。
【0039】
本実施形態の衝突判定手段60は、磁束の量が第一閾値より小さくなった場合に衝突と判定する方法と、磁束の量の時間変化量が第二閾値を超えた場合に衝突と判定する方法を持ち、そのどちらか時間的に早い判定に従い車両への衝突を判定し、乗員保護が必要であると判断している。本構成によれば、より早期に衝突判定が可能となる。
【0040】
<第一実施形態の変形態様>
本変形態様の第一実施形態と異なる点は、衝突判定手段60が行う衝突判定方法である。その他の構成、動作などは第一実施形態と同様である。従って、相違点についてのみ述べる。
【0041】
第一実施形態においては、衝突判定手段60が、磁束の量が第一閾値より小さくなった場合と、磁束の量の時間変化量が第二閾値を超えた場合とのどちらか時間的に早い判定に従い車両への衝突を判定し、乗員保護が必要であると判断している。
【0042】
これとは別に本変形態様は、上記の判定方法の何れか一方のみにより、衝突を検出するようにしている。すなわち、衝突判定手段60は、検出した磁束の量が第一閾値より小さくなった場合にのみ、外板11に物体が衝突して補強部材13及びコイル2を変形させたと判定する構成とする。また、他の方法は、衝突判定手段60は、磁束の量の時間変化量が第二閾値を超えた場合にのみ、外板11に物体が衝突して補強部材13及びコイル2を変形させたと判定する構成とする。このように、本変形態様の衝突判定手段は、どちらか一方の判定方法のみで構成されている。
【0043】
<第二実施形態>
第二実施形態の第一実施形態と異なる点は、コイルのドアガラスへの配置方法である。第一実施形態では、コイルを直接ドアガラスに取り付けたが、本実施形態では、コイルは、シールド部材を介してドアガラスに取り付けられる。その他の構成、動作などは第一実施形態と同様である。従って、相違点についてのみ述べる。
【0044】
第二実施形態の車両用側突検出装置について、図8を参照して説明する。第二実施形態は、平面状コイル21が、金属体または強磁性体からなる平面状シールド部材100を介してドアガラス30に取り付けられた形態であって、平面状コイル21と内板12との離間距離の変化を検出する形態である。
【0045】
図8は、側面ドア1を車両左右方向の垂直に切断した断面図である。第一実施形態においては、コイル2をドアガラス30に直接取り付けたが、本実施形態においては、コイル2を平面状シールド部材100に取り付けている。ここで、平面状シールド部材100は、矩形の平板状の金属や強磁性体からなる。そして、平面状シールド部材100は、コイル2が内板12側となるようにドアガラス30に取り付けられている。
【0046】
コイル2の平面状コイル21の外形は、平面状シールド部材100の外形より小さく形成されている。このコイル2は、平面状コイル21が平面状シールド部材100の外縁から飛び出さないように、平面状シールド部材100の内板12側の面に取り付けられている。さらに、平面状シールド部材100とコイル2とは、上記のような配置関係となるように、一体成形されている。このとき、平面状シールド部材100と平面状コイル21とが電気的に導通しないように、両者は一体成形されている。
【0047】
この場合の衝突検出は、第一実施形態と同様である。ただし、磁束の変化を検出する平面状コイル21の外板11側には、平面状シールド部材100が配置されるので外板11側の変形による磁束への影響を軽減する効果がある。例えば、乗員保護の必要のない外板のみの軽微な変形などの場合などである。さらに、コイル2と平面状シールド部材100とを一体成形していることにより、平面状コイル21の取付状態を安定的にすることができる。その結果、平面状コイル21の初期インダクタンスLsのばらつきを、より少なくすることができる。また、両者を一体とすることで、当該一体部材のドアガラス30への取り付けが容易となる。
【0048】
さらに、平面状シールド部材100は、平面状コイル21の外形より大きく形成され、平面状コイル21がその外縁から飛び出さないように取り付けられている。仮に、平面状コイル21が平面状シールド部材100の外縁から飛び出した状態で取り付けられると、平面状コイル21のうち平面状シールド部材100から飛び出している部分により、平面状コイル21の初期インダクタンスLsのばらつきが生じるおそれがある。上記のように、平面状コイル21が平面状シールド部材100の外縁から飛び出さないように取り付けられることで、より安定的に、平面状コイル21の初期インダクタンスLsのばらつきを防止できる。
【0049】
<第二実施形態の変形態様>
本変形態様の第二実施形態と異なる点は、コイルの配置方法である。例えば、図8のように外板11と内板12の間に補強部材13及びドアガラス30が配置されている構成において、コイル2を図8のように、ドアガラス30の内板12側に配置するのではなく、ドアガラス30の補強部材13側に配置する。さらに、コイル2は、ドアガラス30の下辺と、ドアガラス30の下辺に固定されているドアガラ支持部材であるステー31に亘って、平面状シールド部材100を介して補強部材13と対向するようにドアガラス30及びステー31に取り付けられている(図示せず)。本変形態様によれば、補強部材13を被検出部材として、補強部材13の変形によるコイル2と補強部材13の離間距離の変化を、コイル2の磁束の変化として確実に検出することができる。その他、磁束の検出方法、衝突の判定方法等は第二実施形態と同様である。
【0050】
<第三実施形態>
本実施形態の第一実施形態と異なる点は、内板12に被検出部材として、内側部材を取り付ける点である。その他の構成、動作などは第一実施形態と同様である。従って、相違点についてのみ述べる。
【0051】
第三実施形態の車両用側突検出装置について、図9〜図10を参照して説明する。
【0052】
図9は、側面ドア1の車室内側から見た斜視図である。図10は、図9の側面ドア1のII―II水平断面図である。第一実施形態においては、内板12が貫通穴を有しない磁性体からなる平板状としたが、第三実施形態においては、内板112が、サービスホール112aなどの貫通穴を有している。このサービスホール112aは、側面ドア1の内部に配置するパワーウインド機構やスピーカなどの組み付けや調整用、および、補強部材13に取り付けられるコイル2の組み付けや調整用に設けられている。
【0053】
この場合、サービスホール112aがコイル2に対向する位置に位置していると、平面状コイル21が磁束の変化を検出する際にサービスホール112aが影響を及ぼすことがある。そこで、図9に一点鎖線で示すように、サービスホール112aを塞ぐように、磁性体からなる内側部材110を内板12の車外側の面に取り付けている。図10は、図9のコイル2と内側部材110の位置関係を水平断面図で示したものである。図10に示すように内側部材110は、コイル2と対向して配置され、サービスホール112aを塞いでいる。従って、ドアガラス30に取り付けられたコイル2がドアガラス30の開閉にともなっていずれの位置に位置していてもコイル2に対向する内板112および内側部材110は磁性体である。これにより、サービスホール112aの影響を抑制できる。
【0054】
<第三実施形態の変形態様>
第三実施形態の変形態様として、内板12に貫通孔の有無に関わらず、内板12が例えば樹脂モジュールなどの非磁性体からなる場合にも、上記の内側部材110を内板12に取り付けることで、確実にコイル2のインダクタンスLsの変化を検出できる。内板12が樹脂モジュールの場合には、平面状コイル21と内板12との離間距離に応じて、平面状コイル21のインダクタンスLsが変化しない。このように内板12が非磁性体である場合には、コイル2がドアガラス30の開閉にともなって上下に移動する範囲全体にわたって磁性体の内側部材110を内板12のドアガラス30側に取り付ける。これにより、確実に側突検出ができる。
【0055】
なお、第二実施形態またはその変形態様における特徴部分を、第三実施形態またはその変形態様に適用することもできる。この場合には、第二実施形態またはその変形態様の構成による効果、および、第三実施形態またはその変形態様の構成による効果を奏することができる。
【0056】
<その他>
以上、本発明の車両用側突検出装置について説明した。しかしながら実施形態は上記形態に限定されるものではない。例えば、第1実施形態では、コイルはフィルム等で被覆してコイル部材として構成したものをドアガラスに取り付けた。しかし、ドアガラスにコイルを直接パターン印刷して形成してもよい。
【0057】
また、第1実施形態ではドアガラスに配置するコイルを一個としているが車両前後方向に複数個のコイルを配置するものでもよい。複数のコイルを配置する場合は、コイル一個当たりの車両前後方向の幅を小さくすることができる。すなわち、コイルの断面積を小さくすることができるので、コイルの感度を向上させることができる。
【0058】
また、補強部材がドアガラスよりも内板側にある場合、コイルはコイルと内板との距離の変化を検出しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】第一実施形態における側面ドア1を車室内側から見た側面図である。
【図2】図1のI―I垂直断面図である。
【図3】コイル2を示す斜視図である。
【図4】内板12とコイル2との離間距離に対する平面状コイル21のインダクタンスLsの関係を示す図である。
【図5】車両用側突検出装置を示す回路構成図である。
【図6】コイル2の内板12側への移動距離に対するコイル2の検出した磁束の量(大きさ)を示す図である。
【図7】衝突からの経過時間に対して、コイル2が検出した磁束の量の単位時間あたりの変化量(時間微分値)の絶対値を示す図である。
【図8】第二実施形態におけるコイルのドアガラスへの取り付け方法を示すドアガラス1の垂直断面図である。
【図9】第三実施形態における内側部材の説明図であり、側面ドア1を車室内側から見た斜視図である。
【図10】図9のII―II水平面断面図である。
【図11】(a)は、従来の検出センサ(衝撃センサ)の配置を示す側面ドアの断面図である。(b)は、従来の検出センサ(電気コイル)の配置を示す側面ドアの断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1:側面ドア
11:外板、 12、112:内板、 112a:サービスホール、 13:補強部材
2:コイル、 21:平面状コイル、 22:フィルム
30:ドアガラス、 31:ステー、 32:ドアガラスレギュレータ
40:発振回路
50:検出回路
60:衝突判定手段
100:平面状シールド部材
110:内側部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面ドアに物体が衝突したことを検出する車両用側突検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用側突検出装置として、例えば、特開平5−93735号公報(特許文献1)に記載されたものがある。図11(a)、(b)に特許文献1記載の車両用側突検出装置の検出センサの側面ドアへの取り付け構造を垂直断面図で示す。特許文献1記載の車両用側突検出装置は、図11(a)、(b)に示すように、検出センサ218及び219は、側面ドア内部に配置された補強部材213に近接するように内板212側から支脚217を介して内板212に取り付けられている。検出センサ218及び219は、内板212側に配置されており、物体が側面ドアに衝突した場合は補強部材213が内板212側に変形するので、補強部材213の変形を検出することができる。図11(a)の検出センサ218は、衝撃センサであり、図11(b)の検出センサ219は、電気コイルである。
【特許文献1】特開平5−93735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、補強部材と内板との間には、側面ドアのドアガラスを上下に開閉するためのスペースとなっている。そして、ドアガラスを固定し、上下に駆動するステー等がドアガラス下辺に設けられており(図1及び図2参照)、ドアガラスの開閉にともなってステー等が上下に移動する。従って、ドアガラス及びステーが上下に移動する範囲には検出センサを特許文献1に記載されたような方法で配置しづらい。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、コイルの磁束を利用した側突検出装置において、側面ドアへの物体の広範囲の衝突検出を可能とし、省スペース化、および、配置の容易化を図ることができる車両用側突検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の車両用側突検出装置は、
車両に搭載される側面ドアの外板と、
外板の車室内側に外板に対向して配置される側面ドアの内板と、
を備え、
内板、内板のうち外板側の面側に取り付けられる内側部材、および外板と内板との間に配置される補強部材のうち少なくとも何れか一つである被検出部材は、磁性体からなり、
さらに、被検出部材と外板との間であって被検出部材から離隔した状態で側面ドア内に配置され、被検出部材の方向に磁界を発生させ、被検出部材との離間距離の変化にともない変化する磁束を検出するコイルを有する検出手段と、
検出手段の検出した磁束の変化に基づいて車両と物体とが衝突したことを判定する判定手段と、
を備える車両用側突検出装置において、
コイルは、側面ドアのドアガラスまたはドアガラス支持部材に配置されていることを特徴とする。
【0006】
本発明の車両用側突検出装置は、コイルは、外板と内板との間に位置するドアガラスまたはドアガラス支持部材に配置されている。そして、被検出部材である内板、内板に取り付けられた内側部材、または補強部材と対向する方向に磁界を発生させている。物体が外板に衝突して補強部材が変形した場合、外板及び補強部材は内板に近づくように移動して、さらに、ドアガラス及びドアガラス(またはドアガラス支持部材)に配置されたコイルを内板側に移動させる。この移動にともない、コイルが発生する磁界によって、被検出部材である内板、内側部材あるいは補強部材に渦電流が流れる。この渦電流により磁界が発生し、コイルの磁束が少なくなるように作用する。このように、コイルを貫通する磁束は、被検出部材とコイルとの離間距離の変化に応じて変化する。
【0007】
また、補強部材と内板との間にはドアガラスが配置されていて、ドアガラスの開閉にともないドアガラスの下辺に固定されたステーが上下する。しかし、コイルはドアガラスまたはドアガラス支持部材に取り付けられているので、配置スペースの点でも、あるいは磁気による検出作用の点でも、ステーと干渉することがない。従って、コイルはドアガラスまたはドアガラス支持部材の車両前後方向広範囲に亘って配置することができ、側突検出可能範囲を広範囲とすることができる。さらに、ドアガラスは平坦な面状であるので、平面状コイルの取り付けが容易である。
【0008】
また、ドアガラスは補強部材より内板側に配置されているため、外板が変形したとしても、補強部材が変形しない程度の衝撃であれば、コイルと内板との離間距離、またはコイルと補強部材との離間距離は変化せず、衝突していないと判定し、乗員保護装置の起動をしない。一方、補強部材が変形するような衝撃を受けた場合にはドアガラスにも容易に変形が及ぶため、コイルと内板との離間距離及びコイルと補強部材との離間距離は変化し、確実に衝突検出ができる。
【0009】
本発明の好適な態様として、コイルは、平面状からなり、
車両用側突検出装置は、さらに、金属体または強磁性体からなり、ドアガラスまたはドアガラス支持部材に取り付けられ、被検出部材の側の面にコイルが取り付けられる平面状シールド部材を備える。
【0010】
本構成によれば、コイルは、被検出部材の方向に対して磁束を集中し、反対側の変形の影響を少なくする効果がある。また、平面状シールド部材にあらかじめコイルを取り付けておくことで、コイルのドアガラスまたはドアガラス支持部材への取り付けなどの作業、コイルの取り扱いが容易になる。
【0011】
また、本発明が平面状シールド部材を備える場合に、コイルと平面状シールド部材は一体成形されているとよい。これにより、コイルの取付状態を安定的にすることができるため、コイルの初期インダクタンスのばらつきが生じることを、より防止できる。また、両者を一体とすることで、当該一体部材のドアガラスまたはドアガラス支持部材への取り付けが容易となる。
【0012】
さらに、平面状シールド部材は、コイルの外形より大きく形成され、コイルがその外縁から飛び出さないようにコイルが取り付けられるとよい。仮に、コイルが平面状シールド部材の外縁から飛び出した状態で取り付けられると、コイルのうち平面状シールド部材から飛び出している部分により、コイルの初期インダクタンスのばらつきが生じるおそれがある。そこで、上記のように、コイルが平面状シールド部材の外縁から飛び出さないように取り付けられることで、より安定的に、コイルの初期インダクタンスのばらつきを防止できる。
【0013】
また、本発明の他の好適な態様として、内板は、貫通穴が形成され、内側部材は、貫通穴を塞ぐように内板に取り付けられ、被検出部材は、内側部材と内板とする。
【0014】
側面ドアの内板には、側面ドアの内部に配置するパワーウインド機構やスピーカなどの組み付けや調整用、および、側面ドア内に取り付けられるコイルの組み付けや調整用を目的としたサービスホールが形成されることがある。内板にサービスホールなどの貫通穴が形成されている場合、貫通穴がコイルの磁束の変化に対して影響を及ぼすことがある。そこで、このような場合には、内板そのものを被検出部材とするのではなく、内板に貫通穴を塞ぐように取り付けられた別部材である内側部材と内板とを被検出部材とすることで、サービスホールの影響を受けること防止できる。つまり、サービスホールが形成されているとしても、確実に、側突検出が可能となる。
【0015】
また、本発明の他の好適な態様として、内板は、樹脂モジュールからなり、被検出部材は、内側部材とする。例えば、内板が樹脂モジュールの場合には、内板が磁性体ではないため、内板を被検出部材とすることができない。このような場合には、樹脂モジュールからなる内板に取り付けた内側部材を被検出部材とする。この場合の内側部材はコイルの上下の移動範囲全般にわたって形成されている。これにより、確実に、側突検出が可能となる。
【0016】
また、本発明の他の好適な態様として、被検出部材は、磁性体からなる内板とするとよい。一般に、内板は、鉄などの磁性体により形成されることが多い。従って、内板そのものを被検出部材として利用することは容易である。さらに、内板は、当然に、コイルの外形より大きい。つまり、コイルは、コイルより大きな内板に対向することになる。従って、コイルが内板に近づくことによるコイルの磁束の変化が大きくなる。つまり、側突検出の感度が良好となる。
【0017】
また、被検出部材は、磁性体である補強部材とするものでもよい。コイルが補強部材に対向している場合には、外板への物体の衝突により外板が変形し、さらに、補強部材が変形した場合、コイルと補強部材との離間距離が小さくなるように変化する。従って、コイルの磁束が変化するので、確実に側突検出ができる。
【0018】
また、本発明では、上記したようにコイルをドアガラスまたはドアガラス支持部材に配置している。従って、乗員保護が必要な側突時には補強部材が変形し、さらに、コイルがドアガラスとともに内板側に変形する。そこで、コイルを平面状として外板や補強部材より柔軟性が高く形成することで、ドアガラスが変形あるいは破損した場合であっても、コイルが破損する確率が低くなる。つまり、確実にコイルと内板あるいは内側部材、さらには、補強部材との離間距離の変化を検出できる。
【0019】
また、本発明の車両用側突検出装置において、好適な態様として、判定手段は、検出手段の検出した磁束の量が第一閾値より小さくなった場合に車両と物体とが衝突したと判定する。これにより、確実に側突検出が可能となる。
【0020】
また、本発明の車両用側突検出装置において、他の好適な態様として、判定手段は、検出手段の検出した磁束の単位時間あたりの変化量の絶対値が第二閾値を超えた場合に車両と物体とが衝突したと判定する。この場合にも、確実に側突検出が可能となる。
【0021】
また、本発明の車両用側突検出装置において、上記二つの好適な態様より好適な態様として、判定手段は、検出手段の検出した磁束の量が第一閾値より小さくなった場合、または検出手段の検出した磁束の単位時間あたりの変化量の絶対値が第二閾値を超えた場合に車両と物体とが衝突したと判定する。つまり、磁束の量そのものに加えて、磁束の単位時間あたりの変化量を用いて、その何れか一方が側突を検出した場合を側突したと判定している。従って、より早期に側突検出が可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、側面ドア内に配置されたコイルの磁束を利用した車両用側突検出装置において、コイルの配置をドアガラスとともに上下するステーと干渉することのない配置とし、乗員保護が必要な衝突による車両変形を確実、かつ広範囲に検出可能とした車両用側突検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態についてより詳しく説明する。
【0024】
<第一実施形態>
第一実施形態の車両用側突検出装置について、図1〜図7を参照して説明する。
【0025】
第一実施形態は、平面状コイルが側面ドアのドアガラスに直接取り付けられた形態であって、衝突時には平面状コイルは、内板との離間距離の変化を磁束の変化に基づいて検出する。
【0026】
図1は、本発明の第一実施形態が適用される側面ドア1を車室内からみた正面図である。説明の便宜上、内板を取り除いた図としてある。図2は、図1のI―I垂直断面図であって、側面ドア1を車両の左右方向に垂直に切断した断面図である。ドアガラスは最下位に位置している状態(窓が全開の状態)を示している。なお、図1では、ドアガラスが最下位に位置している状態(窓が全開の状態)を実線で示し、ドアガラスが最上位に位置している状態(窓が閉まっている状態)を一点鎖線で示している。
【0027】
図1および図2に示すように、側面ドア1は、車外側に位置する外板11と、外板11から車室内側に離隔して且つ外板11に対向して配置される磁性体の内板12とを備える。さらに、側面ドア1は、車両前後方向に延びるように、外板11と内板12との間のうち車両左右方向の外板11側であって、車両上下方向の下方に配置されている円柱棒状の補強部材13を備えている。
【0028】
補強部材13と内板12との間には、ドアガラス30が上下に移動するスペースが設けられている。また、ドアガラス30の下辺に固定され、ドアガラス30を上下に移動させるためにパワーウインド機構のステー31(本発明のドアガラス支持部材に含まれる)が位置している。ドアガラスレギュレータ32が内板12に固定され、ドアガラスレギュレータ32にはアーム33aの一端が水平方向に移動可能に結合され、アーム33aの他端がステー31に回転可能に結合されている。ステー31にアーム33bの他端が回転可能に結合され、アーム33bの一端に取り付けられた図示しないパワーウインドモータにより、ステー31は、上下方向に駆動される。
【0029】
図1、図2に示すように、ドアガラス30の下部の内板12側には、平面状のコイル2が配置されている。そして、コイル2は、図示しない発信器から交流電圧を供給されてコイル2の法線方向(コイル2のコイル軸方向)、すなわち、平面状のコイル2と対向する内板12の方向に磁界を発生している。ここで、図1では、ドアガラス30が最下位に位置している状態(窓が全開の状態)を実線で表し、ドアガラス30が最上位に位置している状態(窓が閉まっている状態)を一点鎖線で表している。従って、どちらの場合でも、コイル2と内板12との間にステー31が入り込むことはない。また、コイル2とステー31とは上下に一定の間隔を保つ関係にあるため、ドアガラス30のいかなる開閉状態においても、ステー31がコイル2と内板12との間に入り込むことはない。従って、コイル2を配置する上でも、コイル2によって内板12との離間距離を検出する上でも、コイル2がステー31と干渉することがない。
【0030】
補強部材13は、内板12に対向して離隔配置されており、少なくとも外板11の曲げ剛性より高い曲げ剛性を有する。つまり、外板11に物体が衝突した場合に、曲げ剛性の低い外板11が変形したとしても、補強部材13により側面ドア1全体が変形することを抑制している。しかし、補強部材13が内板12側に変形するような衝突であれば、その変形はドアガラス30にも及び、ドアガラス30とともに、平面状コイル2も内板12側に移動する。ここで、第一実施形態においては、内板12が本発明における被検出部材となる。
【0031】
コイル2は、図3に示すように、全体として平面状に形成されている。このコイル2は、平面状コイル21と、一対のフィルム22とから構成されている。平面状コイル21は、例えば銅などの導電性材料により平面状に巻回するようにパターン印刷形成されている。一対のフィルム22は、平面状コイル21を両面から挟持して、平面状コイル21が露出しないように被覆している。このフィルム22は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)またはPEN(ポリエチレンナフタレート)などの可撓性材料により薄膜状に形成されている。つまり、フィルム22は、屈曲自在である。また、平面状コイル21自体についても屈曲変形可能である。従って、コイル2全体として、屈曲変形可能であり、非常に柔軟性が高い。つまり、少なくともコイル2は外板11や補強部材13よりも柔軟性が高いため、ドアガラスが変形あるいは破損した場合であっても、コイル2は破損することなく屈曲する。
【0032】
本実施形態のコイル2と内板12との離間距離と、コイル2の磁束との関係について説明する。上記したように、側面ドア1の外板11に物体が衝突すると、外板11が車室内側に変形する。そして、この衝撃が大きく、補強部材13を車室内側へ変形させる程度であると、外板11及び補強部材13と同時にドアガラス30をも内板12側へ移動させる。これにより、ドアガラス30に取り付けられたコイル2との離間距離が短くなる。そうすると、コイル2が発生する磁界によって、内板12に渦電流が流れ内板12に磁界が発生する。磁界の方向は、内板12とコイル2とが対向する方向である。つまり、衝突によって内板12とコイル2との離間距離が短くなることに伴って、コイル2に鎖交する渦電流によって発生したコイル2に鎖交する磁界、すなわちコイル2を通過する磁束が増加する。この磁束はコイル2の磁束を減ずるように作用するので、コイル2のインダクタンスが減少することとなる。
【0033】
図4に、内板12と平面状のコイル2との離間距離と、コイル2のインダクタンスLsとの関係を示す。図4のグラフにおいて、例えば、衝突前のコイル2と内板12との離間距離をdとし、衝突後の離間距離をd1と短くなったとすると、コイル2のインダクタンスLsは、図の縦軸に示すように衝突前のAから衝突後のA1へと減少する。このように、コイル2のインダクタンスLsは、内板12とコイル2との離間距離の変化に応じて変化する。なお、側面ドア1の外板11に物体が衝突した場合であっても、ドアガラス30に変形が及ばなければ、コイル2のインダクタンスLsは変化しない。
【0034】
次に、本実施形態の車両用側突検出装置は、図5に示すように、発振回路40と、検出回路50と、衝突判定手段60とから構成される。検出回路50は本発明の検出手段に該当し、衝突判定手段60は本発明の判定手段に該当する。
【0035】
検出回路50はコイル2と検出抵抗Roを備えている。コイル2はインダクタンスLsと抵抗Rsの直列回路に相当する。コイル2の一端は発振回路40に接続され、コイル2の他端は検出抵抗Ro及び衝突判定手段60に接続されている。発振回路40は発振周波数Fの交流電圧Viを検出回路50に印加している。ここで、上記したように、衝突によりコイル2と内板12との離間距離が小さくなった場合には、コイル2のインダクタンスLsは減少する。コイル2のインダクタンスLsが減少することにより、コイル2のインピーダンスが小さくなる。従って、検出抵抗Roの検出電圧Voは相対的に大きくなる。衝突判定手段60は、検出回路50のこの検出電圧Voに基づいて物体が衝突したか否かを判定する。
【0036】
次に、本実施形態の衝突判定手段について、図6、図7を参照して説明する。
【0037】
図6は、コイル2と内板12との離間距離と、コイル2の磁束との関係を示している。図6において、横軸はコイル2の内板12側への移動距離を表している。縦軸はコイル2と錯交する磁束の量(大きさ)を表している。図6に示すように、衝突まではコイル2と内板12の離間距離は変化しないので磁束の量も変わらず一定であるが、衝突によりコイル2が内板12に近づくことにより磁束の量は小さくなる。すなわち、コイル2の移動距離が大きい(コイル2が内板12に近づく)程、磁束の量は小さくなる。本実施形態では、この磁束の量があらかじめ設定された一定の値(図6の第一閾値)より小さくなった場合に、衝突であると判定する。なお、この磁束の量は、上記したように、図5に示す検出回路50の検出抵抗Roの検出電圧Voとして検出される。本実施形態の検出回路50では、磁束の量が小さくなるほど、検出電圧Voは大きくなる。
【0038】
さらに、本実施形態の衝突判定手段は、以下の方法によっても衝突か否かの判定をおこなっている。図7は、検出電圧Voに基づいて、コイル2の単位時間当たりの磁束の変化量を算出したものである。縦軸は磁束の量の時間変化量であり、横軸は衝突からの時間を表している。図6に示されているように、衝突までは、コイル2に錯交する磁束の量に変化がないので、磁束の量の時間変化量は零である。しかし、衝突直後は磁束の量の時間変化量が大きい(コイル2が急速に内板12側に移動する)、そして、変形が終わった時点で時間変化量は再び零となる。ここで、磁束の量の時間変化量に閾値(図7の第2閾値)を設定して、その閾値を超えた場合に、衝突による変形であると判定する。
【0039】
本実施形態の衝突判定手段60は、磁束の量が第一閾値より小さくなった場合に衝突と判定する方法と、磁束の量の時間変化量が第二閾値を超えた場合に衝突と判定する方法を持ち、そのどちらか時間的に早い判定に従い車両への衝突を判定し、乗員保護が必要であると判断している。本構成によれば、より早期に衝突判定が可能となる。
【0040】
<第一実施形態の変形態様>
本変形態様の第一実施形態と異なる点は、衝突判定手段60が行う衝突判定方法である。その他の構成、動作などは第一実施形態と同様である。従って、相違点についてのみ述べる。
【0041】
第一実施形態においては、衝突判定手段60が、磁束の量が第一閾値より小さくなった場合と、磁束の量の時間変化量が第二閾値を超えた場合とのどちらか時間的に早い判定に従い車両への衝突を判定し、乗員保護が必要であると判断している。
【0042】
これとは別に本変形態様は、上記の判定方法の何れか一方のみにより、衝突を検出するようにしている。すなわち、衝突判定手段60は、検出した磁束の量が第一閾値より小さくなった場合にのみ、外板11に物体が衝突して補強部材13及びコイル2を変形させたと判定する構成とする。また、他の方法は、衝突判定手段60は、磁束の量の時間変化量が第二閾値を超えた場合にのみ、外板11に物体が衝突して補強部材13及びコイル2を変形させたと判定する構成とする。このように、本変形態様の衝突判定手段は、どちらか一方の判定方法のみで構成されている。
【0043】
<第二実施形態>
第二実施形態の第一実施形態と異なる点は、コイルのドアガラスへの配置方法である。第一実施形態では、コイルを直接ドアガラスに取り付けたが、本実施形態では、コイルは、シールド部材を介してドアガラスに取り付けられる。その他の構成、動作などは第一実施形態と同様である。従って、相違点についてのみ述べる。
【0044】
第二実施形態の車両用側突検出装置について、図8を参照して説明する。第二実施形態は、平面状コイル21が、金属体または強磁性体からなる平面状シールド部材100を介してドアガラス30に取り付けられた形態であって、平面状コイル21と内板12との離間距離の変化を検出する形態である。
【0045】
図8は、側面ドア1を車両左右方向の垂直に切断した断面図である。第一実施形態においては、コイル2をドアガラス30に直接取り付けたが、本実施形態においては、コイル2を平面状シールド部材100に取り付けている。ここで、平面状シールド部材100は、矩形の平板状の金属や強磁性体からなる。そして、平面状シールド部材100は、コイル2が内板12側となるようにドアガラス30に取り付けられている。
【0046】
コイル2の平面状コイル21の外形は、平面状シールド部材100の外形より小さく形成されている。このコイル2は、平面状コイル21が平面状シールド部材100の外縁から飛び出さないように、平面状シールド部材100の内板12側の面に取り付けられている。さらに、平面状シールド部材100とコイル2とは、上記のような配置関係となるように、一体成形されている。このとき、平面状シールド部材100と平面状コイル21とが電気的に導通しないように、両者は一体成形されている。
【0047】
この場合の衝突検出は、第一実施形態と同様である。ただし、磁束の変化を検出する平面状コイル21の外板11側には、平面状シールド部材100が配置されるので外板11側の変形による磁束への影響を軽減する効果がある。例えば、乗員保護の必要のない外板のみの軽微な変形などの場合などである。さらに、コイル2と平面状シールド部材100とを一体成形していることにより、平面状コイル21の取付状態を安定的にすることができる。その結果、平面状コイル21の初期インダクタンスLsのばらつきを、より少なくすることができる。また、両者を一体とすることで、当該一体部材のドアガラス30への取り付けが容易となる。
【0048】
さらに、平面状シールド部材100は、平面状コイル21の外形より大きく形成され、平面状コイル21がその外縁から飛び出さないように取り付けられている。仮に、平面状コイル21が平面状シールド部材100の外縁から飛び出した状態で取り付けられると、平面状コイル21のうち平面状シールド部材100から飛び出している部分により、平面状コイル21の初期インダクタンスLsのばらつきが生じるおそれがある。上記のように、平面状コイル21が平面状シールド部材100の外縁から飛び出さないように取り付けられることで、より安定的に、平面状コイル21の初期インダクタンスLsのばらつきを防止できる。
【0049】
<第二実施形態の変形態様>
本変形態様の第二実施形態と異なる点は、コイルの配置方法である。例えば、図8のように外板11と内板12の間に補強部材13及びドアガラス30が配置されている構成において、コイル2を図8のように、ドアガラス30の内板12側に配置するのではなく、ドアガラス30の補強部材13側に配置する。さらに、コイル2は、ドアガラス30の下辺と、ドアガラス30の下辺に固定されているドアガラ支持部材であるステー31に亘って、平面状シールド部材100を介して補強部材13と対向するようにドアガラス30及びステー31に取り付けられている(図示せず)。本変形態様によれば、補強部材13を被検出部材として、補強部材13の変形によるコイル2と補強部材13の離間距離の変化を、コイル2の磁束の変化として確実に検出することができる。その他、磁束の検出方法、衝突の判定方法等は第二実施形態と同様である。
【0050】
<第三実施形態>
本実施形態の第一実施形態と異なる点は、内板12に被検出部材として、内側部材を取り付ける点である。その他の構成、動作などは第一実施形態と同様である。従って、相違点についてのみ述べる。
【0051】
第三実施形態の車両用側突検出装置について、図9〜図10を参照して説明する。
【0052】
図9は、側面ドア1の車室内側から見た斜視図である。図10は、図9の側面ドア1のII―II水平断面図である。第一実施形態においては、内板12が貫通穴を有しない磁性体からなる平板状としたが、第三実施形態においては、内板112が、サービスホール112aなどの貫通穴を有している。このサービスホール112aは、側面ドア1の内部に配置するパワーウインド機構やスピーカなどの組み付けや調整用、および、補強部材13に取り付けられるコイル2の組み付けや調整用に設けられている。
【0053】
この場合、サービスホール112aがコイル2に対向する位置に位置していると、平面状コイル21が磁束の変化を検出する際にサービスホール112aが影響を及ぼすことがある。そこで、図9に一点鎖線で示すように、サービスホール112aを塞ぐように、磁性体からなる内側部材110を内板12の車外側の面に取り付けている。図10は、図9のコイル2と内側部材110の位置関係を水平断面図で示したものである。図10に示すように内側部材110は、コイル2と対向して配置され、サービスホール112aを塞いでいる。従って、ドアガラス30に取り付けられたコイル2がドアガラス30の開閉にともなっていずれの位置に位置していてもコイル2に対向する内板112および内側部材110は磁性体である。これにより、サービスホール112aの影響を抑制できる。
【0054】
<第三実施形態の変形態様>
第三実施形態の変形態様として、内板12に貫通孔の有無に関わらず、内板12が例えば樹脂モジュールなどの非磁性体からなる場合にも、上記の内側部材110を内板12に取り付けることで、確実にコイル2のインダクタンスLsの変化を検出できる。内板12が樹脂モジュールの場合には、平面状コイル21と内板12との離間距離に応じて、平面状コイル21のインダクタンスLsが変化しない。このように内板12が非磁性体である場合には、コイル2がドアガラス30の開閉にともなって上下に移動する範囲全体にわたって磁性体の内側部材110を内板12のドアガラス30側に取り付ける。これにより、確実に側突検出ができる。
【0055】
なお、第二実施形態またはその変形態様における特徴部分を、第三実施形態またはその変形態様に適用することもできる。この場合には、第二実施形態またはその変形態様の構成による効果、および、第三実施形態またはその変形態様の構成による効果を奏することができる。
【0056】
<その他>
以上、本発明の車両用側突検出装置について説明した。しかしながら実施形態は上記形態に限定されるものではない。例えば、第1実施形態では、コイルはフィルム等で被覆してコイル部材として構成したものをドアガラスに取り付けた。しかし、ドアガラスにコイルを直接パターン印刷して形成してもよい。
【0057】
また、第1実施形態ではドアガラスに配置するコイルを一個としているが車両前後方向に複数個のコイルを配置するものでもよい。複数のコイルを配置する場合は、コイル一個当たりの車両前後方向の幅を小さくすることができる。すなわち、コイルの断面積を小さくすることができるので、コイルの感度を向上させることができる。
【0058】
また、補強部材がドアガラスよりも内板側にある場合、コイルはコイルと内板との距離の変化を検出しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】第一実施形態における側面ドア1を車室内側から見た側面図である。
【図2】図1のI―I垂直断面図である。
【図3】コイル2を示す斜視図である。
【図4】内板12とコイル2との離間距離に対する平面状コイル21のインダクタンスLsの関係を示す図である。
【図5】車両用側突検出装置を示す回路構成図である。
【図6】コイル2の内板12側への移動距離に対するコイル2の検出した磁束の量(大きさ)を示す図である。
【図7】衝突からの経過時間に対して、コイル2が検出した磁束の量の単位時間あたりの変化量(時間微分値)の絶対値を示す図である。
【図8】第二実施形態におけるコイルのドアガラスへの取り付け方法を示すドアガラス1の垂直断面図である。
【図9】第三実施形態における内側部材の説明図であり、側面ドア1を車室内側から見た斜視図である。
【図10】図9のII―II水平面断面図である。
【図11】(a)は、従来の検出センサ(衝撃センサ)の配置を示す側面ドアの断面図である。(b)は、従来の検出センサ(電気コイル)の配置を示す側面ドアの断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1:側面ドア
11:外板、 12、112:内板、 112a:サービスホール、 13:補強部材
2:コイル、 21:平面状コイル、 22:フィルム
30:ドアガラス、 31:ステー、 32:ドアガラスレギュレータ
40:発振回路
50:検出回路
60:衝突判定手段
100:平面状シールド部材
110:内側部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される側面ドアの外板と、
前記外板の車室内側に前記外板に対向して配置される前記側面ドアの内板と、
を備え、
前記内板、前記内板のうち前記外板側の面側に取り付けられる内側部材、および前記外板と前記内板との間に配置される補強部材のうち少なくとも何れか一つである被検出部材は、磁性体からなり、
さらに、前記被検出部材と前記外板との間であって前記被検出部材から離隔した状態で前記側面ドア内に配置され、前記被検出部材の方向に磁界を発生させ、前記被検出部材との離間距離の変化にともない変化する磁束を検出するコイルを有する検出手段と、
前記検出手段の検出した磁束の変化に基づいて前記車両と物体とが衝突したことを判定する判定手段と、
を備える車両用側突検出装置において、
前記コイルは、前記側面ドアのドアガラスまたはドアガラス支持部材に配置されていることを特徴とする車両用側突検出装置。
【請求項2】
前記コイルは、平面状からなり、
前記車両用側突検出装置は、さらに、金属体または強磁性体からなり、前記ドアガラスまたは前記ドアガラス支持部材に取り付けられ、前記被検出部材の側の面に前記コイルが取り付けられる平面状シールド部材を備える請求項1に記載の車両用側突検出装置。
【請求項3】
前記コイルと前記平面状シールド部材は一体成形されている請求項2に記載の車両用側突検出装置。
【請求項4】
前記平面状シールド部材は、前記コイルの外形より大きく形成され、前記コイルがその外縁から飛び出さないように前記コイルが取り付けられる請求項2または3に記載の車両用側突検出装置。
【請求項5】
前記内板は、貫通穴が形成され、
前記内側部材は、前記貫通穴を塞ぐように前記内板に取り付けられ、
前記被検出部材は、前記内板と、前記内側部材とである請求項1に記載の車両用側突検出装置。
【請求項6】
前記内板は、樹脂モジュールからなり、
前記被検出部材は、前記内側部材である請求項1に記載の車両用側突検出装置。
【請求項7】
前記被検出部材は、前記内板である請求項1に記載の車両用側突検出装置。
【請求項8】
前記被検出部材は、前記補強部材である請求項1に記載の車両用側突検出装置。
【請求項9】
前記コイルは、平面状からなり、前記外板や前記補強部材より柔軟性が高く形成される請求項1〜8の何れか一項に記載の車両用側突検出装置。
【請求項10】
前記判定手段は、前記磁束の量が第一閾値より小さくなった場合に前記車両と物体とが衝突したと判定する請求項1〜9の何れか一項に記載の車両用側突検出装置。
【請求項11】
前記判定手段は、前記磁束の単位時間あたりの変化量の絶対値が第二閾値を超えた場合に前記車両と物体とが衝突したと判定する請求項1〜9の何れか一項に記載の車両用側突検出装置。
【請求項12】
前記判定手段は、前記磁束の量が第一閾値より小さくなった場合または前記磁束の単位時間あたりの変化量の絶対値が第二閾値を超えた場合に前記車両と物体とが衝突したと判定する請求項1〜9の何れか一項に記載の車両用側突検出装置。
【請求項1】
車両に搭載される側面ドアの外板と、
前記外板の車室内側に前記外板に対向して配置される前記側面ドアの内板と、
を備え、
前記内板、前記内板のうち前記外板側の面側に取り付けられる内側部材、および前記外板と前記内板との間に配置される補強部材のうち少なくとも何れか一つである被検出部材は、磁性体からなり、
さらに、前記被検出部材と前記外板との間であって前記被検出部材から離隔した状態で前記側面ドア内に配置され、前記被検出部材の方向に磁界を発生させ、前記被検出部材との離間距離の変化にともない変化する磁束を検出するコイルを有する検出手段と、
前記検出手段の検出した磁束の変化に基づいて前記車両と物体とが衝突したことを判定する判定手段と、
を備える車両用側突検出装置において、
前記コイルは、前記側面ドアのドアガラスまたはドアガラス支持部材に配置されていることを特徴とする車両用側突検出装置。
【請求項2】
前記コイルは、平面状からなり、
前記車両用側突検出装置は、さらに、金属体または強磁性体からなり、前記ドアガラスまたは前記ドアガラス支持部材に取り付けられ、前記被検出部材の側の面に前記コイルが取り付けられる平面状シールド部材を備える請求項1に記載の車両用側突検出装置。
【請求項3】
前記コイルと前記平面状シールド部材は一体成形されている請求項2に記載の車両用側突検出装置。
【請求項4】
前記平面状シールド部材は、前記コイルの外形より大きく形成され、前記コイルがその外縁から飛び出さないように前記コイルが取り付けられる請求項2または3に記載の車両用側突検出装置。
【請求項5】
前記内板は、貫通穴が形成され、
前記内側部材は、前記貫通穴を塞ぐように前記内板に取り付けられ、
前記被検出部材は、前記内板と、前記内側部材とである請求項1に記載の車両用側突検出装置。
【請求項6】
前記内板は、樹脂モジュールからなり、
前記被検出部材は、前記内側部材である請求項1に記載の車両用側突検出装置。
【請求項7】
前記被検出部材は、前記内板である請求項1に記載の車両用側突検出装置。
【請求項8】
前記被検出部材は、前記補強部材である請求項1に記載の車両用側突検出装置。
【請求項9】
前記コイルは、平面状からなり、前記外板や前記補強部材より柔軟性が高く形成される請求項1〜8の何れか一項に記載の車両用側突検出装置。
【請求項10】
前記判定手段は、前記磁束の量が第一閾値より小さくなった場合に前記車両と物体とが衝突したと判定する請求項1〜9の何れか一項に記載の車両用側突検出装置。
【請求項11】
前記判定手段は、前記磁束の単位時間あたりの変化量の絶対値が第二閾値を超えた場合に前記車両と物体とが衝突したと判定する請求項1〜9の何れか一項に記載の車両用側突検出装置。
【請求項12】
前記判定手段は、前記磁束の量が第一閾値より小さくなった場合または前記磁束の単位時間あたりの変化量の絶対値が第二閾値を超えた場合に前記車両と物体とが衝突したと判定する請求項1〜9の何れか一項に記載の車両用側突検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−214765(P2009−214765A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61708(P2008−61708)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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