説明

車両用充電装置

【課題】充電装置側との通信機能を有していない車両に充電する場合にも、充電コネクタの嵌合を検知してから充電を開始することが可能な車両用充電装置を提供する。
【解決手段】車両用充電装置1は、車両9に充電電流を出力するL端子111及びN端子112、及び嵌合検知端子115を有する充電コネクタ11と、第1の抵抗器R1を介して嵌合検知端子115から電圧を出力する電圧出力部23と、車両側コネクタ91との嵌合による第1の抵抗器R1の通電電流の変化を検出可能な第1の電圧計V1と、第1の電圧計V1によって検出した第1の抵抗器R1の通電電流の変化に基づいて充電コネクタ11と車両側コネクタ91との嵌合を検知し、この嵌合を検知したとき、L端子111及びN端子112からの充電電流の出力を可能な状態とする制御部20とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用の駆動源として電動機を有する、所謂プラグインハイブリッド車(Plug-in Hybrid Vehicle)等の車両に充電するための車両用充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に配慮して、車両の走行のための駆動源として電動機を用いた車両が普及しつつある。このような車両に対して充電を行うための充電スタンドとして、例えば特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載の充電スタンドは、充電スタンド側との通信機能を有する車両に充電用のコネクタが接続された場合には、当該車両との通信結果に基づいて電圧の印加を開始し、通信機能を有しない車両に充電用コネクタが接続された場合には、充電開始スイッチの操作によって電圧の印加を開始するように構成されている。なお、この充電用コネクタの規格や、充電スタンド側と車両側との通信仕様等を定めたものとして、SAEJ1772として定められた国際規格がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−283902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この充電スタンドでは、通信機能を有しない車両に充電しようとしたとき、充電開始スイッチが操作されたことのみをもって電圧の印加を開始すると、充電用コネクタが車両側に嵌合されていない状態でも電圧の印加が開始されるため、使用者の不適切な取り扱いによっては、漏電や感電等が発生するおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、充電装置側との通信機能を有していない車両に充電する場合にも、充電コネクタの嵌合を検知してから充電を開始することが可能な車両用充電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、走行用の駆動源として電動機を有する車両に充電電流を出力するための充電電流出力端子、及び前記車両に設けられた車両側コネクタとの嵌合を検知するための嵌合検知端子を有する充電コネクタと、第1の抵抗器を介して前記嵌合検知端子から電圧を出力する電圧出力部と、前記車両側コネクタとの嵌合による前記第1の抵抗器の通電電流の変化を検出可能な検出手段と、前記検出手段によって検出した前記第1の抵抗器の通電電流の変化に基づいて前記充電コネクタと前記車両側コネクタとの嵌合を検知し、前記嵌合を検知したとき、前記充電電流出力端子からの充電電流の出力を可能な状態とする制御部と、を有する車両用充電装置を提供する。
【0008】
また、前記第1の抵抗器と前記嵌合検知端子との間の接続を遮断状態に切り替え可能な切替回路を備え、前記制御部は、更に、前記充電コネクタと前記車両側コネクタとの嵌合を検知したとき、前記切替回路を遮断状態としてもよい。
【0009】
また、前記切替回路は、前記第1の抵抗器と前記嵌合検知端子とを接続する第1の接続状態と、一端が接地された第2の抵抗器の他端と前記嵌合検知端子とを接続する第2の接続状態とを切り替え可能であり、前記制御部は、前記切替回路の前記第2の接続状態における前記嵌合検知端子の電圧の変化によって前記充電コネクタの前記車両側コネクタからの離脱を検知し、前記離脱を検知したとき、前記充電電流出力端子からの充電電流の出力を不能な状態としてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、充電装置側との通信機能を有していない車両に充電する場合にも、充電コネクタの嵌合を検知してから充電を開始することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る車両用充電装置を示す概略構成図である。
【図2】車両用充電装置、及び車両を示す概略構成図である。
【図3】充電コネクタの構成を示す正面図である。
【図4】車両用充電装置及び車両側の構成例を示す概略図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る車両用充電装置及び車両側の構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態に係る車両用充電装置及び車両用充電システムの一例を、図
1〜図4を参照して説明する。
【0013】
(車両用充電装置の構成)
図1は、本発明の実施の形態に係る車両用充電装置を示す概略構成図である。
【0014】
この車両用充電装置1は、充電コネクタ11が先端部に設けられた充電ガン12と、充電ガン12の内部にて充電コネクタ11に接続された充電ケーブル13と、充電ケーブル13及び充電コネクタ11を介して後述する車両9への充電を行う装置本体10と、プラグ140が先端部に設けられた電源ケーブル14とを備えて構成されている。
【0015】
充電ガン12にはリリースボタン120が設けられている。リリースボタン120には、係合突起120aが連結されており、リリースボタン120を押すことにより係合突起120aが動作して、後述する車両9に嵌合された充電コネクタ11の抜き取り操作が可能となるように構成されている。また、プラグ140は、商用電源に接続される第1及び第2の電源端子140a,104bと、接地端子140cとを有している。
【0016】
(車両用充電システムの構成)
図2は、本発明の実施の形態に係る車両用充電システム、及び車両を示す概略構成図である。
【0017】
この車両用充電システム100は、車両用充電装置1と、充電コネクタ11に嵌合される車両側コネクタ91と、車両側コネクタ91の入力端子に接続された充電制御回路92と、充電制御回路92を制御する制御装置93と、蓄電池94とを備えている。車両側コネクタ91,充電制御回路92,制御装置93,及び蓄電池94は、車体90に固定されている。蓄電池94は、例えば複数のセルを有するリチウムイオン電池からなる。
【0018】
車体90にはまた、車両9の走行用の駆動源としての電動機96と、蓄電池94に蓄えられた電力をPWM(Pulse Width Modulation)制御によりスイッチングされたモータ電流として電動機96に供給するインバータ95と、電動機96の出力を変速して前輪98に伝達する変速機97とが搭載されている。電動機96は、例えばIPM(Interior Permanent Magnet Motor:埋込磁石型モータ)からなる。なお、変速機97の出力を後輪99に伝達して後輪駆動車としてもよい。
【0019】
車両用充電装置1の電源ケーブル14のプラグ140は、例えば電圧200V、周波数50Hz又は60Hzの交流電力を出力するコンセントCに接続されている。これにより、装置本体10は、電源ケーブル14を介して商用電源に接続されている。
【0020】
(充電コネクタ11の構成)
図3は、車両用充電装置1の充電コネクタ11の構成を端子側から示す正面図である。この充電コネクタ11は、SAEJ1772に準拠している。
【0021】
充電コネクタ11は、ハウジング110と、車両9の充電のための電圧を出力する一対の充電電流出力端子としてのL端子111及びN端子112と、電気的に接地されたGND端子113と、充電制御端子としてのC端子114と、車両側コネクタ91との嵌合を検知するための嵌合検知端子としてのP端子115とを有している。
【0022】
(車両用充電装置1の回路構成)
図4は、車両用充電装置1、ならびに車両9側の車両側コネクタ91,充電制御回路92,制御装置93,蓄電池94,及びその周辺回路の構成例を示している。
【0023】
車両用充電装置1の装置本体10は、車両9側への充電電流の供給及び遮断等を制御する制御部20を有している。制御部20は、例えば予め記憶されたプログラムに従って動作するCPU(Central Processing Unit)、及びその周辺回路からなる。
【0024】
制御部20は、装置本体10に設けられたリレー回路21のオン(継電)又はオフ(遮断)を制御する。リレー回路21は、第1接点部21aと、第2接点部21bと、第1接点部21a及び第2接点部21bを動作させるためのコイル21cとを有している。制御部20からコイル21cに電流が供給されたときには、第1接点部21a及び第2接点部21bが共にオンし、制御部20から電流が供給されないときは、第1接点部21a及び第2接点部21bが共にオフ状態となる。
【0025】
リレー回路21の第1接点部21aは、電源ケーブル14を介して接続されたプラグ140の第1の電源端子140aと、充電ケーブル13を介して接続された充電コネクタ11のL端子111との間に設けられている。また、第2接点部21bは、プラグ140の第2の電源端子140bと充電コネクタ11のN端子112との間に設けられている。これにより、制御部20からコイル21cに電流が供給されると、第1の電源端子140aとL端子111、及び第2の電源端子140bとN端子112がそれぞれ接続される。
【0026】
また、制御部20は、装置本体10に設けられた切替回路22を制御する。切替回路22は、第1接点22a,第2接点22b,第3接点22c,及びコイル22dを有する2接点リレーであり、第1接点22aと第2接点22bとを接続する第1の接続状態と、第2接点22bと第3接点22cとを接続する第2の接続状態とを切り替え可能である。第1の接続状態では、第2接点22bと第3接点22cとの接続が遮断され、第2の接続状態では、第1接点22aと第2接点22bとの接続が遮断される。この切替回路22は、コイル22dへの非通電時に第1の接続状態となり、制御部20からコイル22dに電流が供給されたときに第2の接続状態となる。
【0027】
第1接点22aには、第1の抵抗器R1の一端が接続されている。第1の抵抗器R1の他端は、電圧出力部23に接続されている。電圧出力部23は、第1の電源端子140a及び第2の電源端子140bから供給される交流電流を例えば直流の5Vに変換して出力する直流電源である。また、第1の抵抗器R1の抵抗値は、例えば2700Ωである。
【0028】
第2接点22bは、充電ケーブル13を介して、充電コネクタ11内に配置されたスイッチ121に接続されている。スイッチ121は、充電ガン12のリリースボタン120に連動し、リリースボタン120が押されていない通常時に導通状態となり、リリースボタン120が押されると絶縁状態となる2つの接点121a,121bを有している。接点121aは、切替回路22の第2接点22bに接続され、接点121bは充電コネクタ11のP端子115に接続されている。
【0029】
また、第3接点22cには、第2の抵抗器R2の一端が接続されている。第2の抵抗器R2の他端は電気的に接地され、プラグ140の接地端子140cと同電位(基準電位)とされている。第2の抵抗器R2の抵抗値は例えば150Ωである。
【0030】
また、スイッチ121には、第3の抵抗器R3が並列に接続されている。第3の抵抗器R3の一端は接点121aに接続され、他端は接点121bに接続されている。第3の抵抗器R3の抵抗値は、例えば330Ωである。
【0031】
これにより、切替回路22の第1の接続状態では、第1の抵抗器R1がスイッチ121を介してP端子115に接続(短絡)される。一方、切替回路22の第2の接続状態では、第2の抵抗器R2がスイッチ121を介してP端子115に接続(短絡)される。また、切替回路22の第1の接続状態において、電圧出力部23は、第1の抵抗器R1、切替回路22、及びスイッチ121を介して、P端子115から電圧を出力可能である。
【0032】
切替回路22の第1接点22aには、第1接点22aの電圧(基準電位との電位差)を測定する第1の電圧計V1が接続されている。この第1の電圧計V1は、第1の抵抗器R1に電流が流れた際の電圧降下、すなわち第1の抵抗器R1の通電電流の変化を検出可能な検出手段の一例である。また、切替回路22の第3接点22cには、第3接点22cの電圧(基準電位との電位差)を測定する第2の電圧計V2が接続されている。
【0033】
第1の電圧計V1及び第2の電圧計V2としては、例えばアナログ信号をデジタル信号に変換するADコンバータを用いてもよく、所定の電圧値との大小を比較するコンパレータを用いてもよい。第1の電圧計V1及び第2の電圧計V2で検出した電圧値を示す検出信号は、制御部20に出力される。
【0034】
また、制御部20は、PWM(Pulse Width Modulation)制御されたパルス信号により、充電電流の許容電流値等の情報を車両9側へ送信する通信機能を有している。制御部20からの送信信号は、通信用抵抗器Rcを介して充電コネクタ11のC端子114から車両9側に出力される。また制御部20は、通信用抵抗器RcのC端子114側の電圧をモニタすることが可能である。
【0035】
(車両9側の構成)
車両側コネクタ91は、充電コネクタ11との嵌合により、L端子111,N端子112,GND端子113,C端子114,及びP端子115のそれぞれに接続される、第1端子911,第2端子912,第3端子913,第4端子914,及び第5端子915を有している。第3端子913と第5端子915の間には、第4の抵抗器R4が接続されている。第4の抵抗器R4の抵抗値は、例えば2700Ωである。
【0036】
充電制御回路92は、整流回路部921と、リレー回路922と、直流電源923と、スイッチ924と、第5の抵抗器R5とを有している。直流電源923は、例えば5V電源である。スイッチ924は、直流電源923と第5の抵抗器R5との間に設けられ、オン又はオフが制御装置93によって制御される。第5の抵抗器R5は、直流電源923の出力によってプルアップされるプルアップ抵抗であり、その抵抗値は例えば330Ωである。
【0037】
整流回路部921は、車両側コネクタ91の第1端子911及び第2端子912に接続されている。整流回路部921は、第1端子911及び第2端子912から入力される交流電流を整流してリレー回路922に出力する。整流回路部921は、例えばダイオードブリッジ回路からなる。なお、整流回路部921とリレー回路922との間には、充電開始時における突入電流を制限する突入電流制限回路等をさらに設けてもよい。
【0038】
リレー回路922は、制御装置93によってオン(継電)又はオフ(遮断)が制御される。リレー回路922がオンすると、第1端子911及び第2端子912から供給される電力によって蓄電池94が充電される。
【0039】
第5の抵抗器R5は、その一端が車両側コネクタ91の第5端子915及び制御装置93に接続されている。制御装置93は、第5の抵抗器R5の一端の電圧(基準電位との電位差)を検出可能である。
【0040】
制御装置93は、例えば蓄電池94への充電電流をモニタすることにより充電が開始されたことを検知し、充電開始を検知したとき、スイッチ924をオンにする。
【0041】
なお、本実施の形態に係る車両9は、車両用充電装置1との通信機能を有していないので、車両用充電装置1の制御部20からC端子114に出力される送信信号は制御装置93に入力されない。車両が通信機能を有している場合には、制御部20が車両側との通信が成立したことを以て充電コネクタ11が車両側コネクタ91に嵌合されたことを検知できるが、車両が通信機能を有していない場合には、他の方法によって充電コネクタ11と車両側コネクタ91との嵌合を検出する必要がある。
【0042】
本実施の形態では、第1の電圧計V1によって検出した電圧に基づいて充電コネクタ11と車両側コネクタ91との嵌合を検知する。次に、この嵌合検出方法について詳細に説明する。
【0043】
(嵌合検出方法)
プラグ140がコンセントCに接続され、充電コネクタ11が車両側コネクタ91に嵌合されていない未嵌合状態では、切替回路22が、第1接点22aと第2接点22bとが接続された第1の接続状態にある。
【0044】
この未嵌合状態では、第1接点22aに第1の抵抗器R1を介して電圧出力部23から直流の+5Vが供給される一方、第2接点22bにスイッチ121を介して接続されたP端子115は絶縁された状態であるので、第1の電圧計V1によって検出される第1接点22aの電圧、すなわちP端子115の電圧は+5Vとなる。
【0045】
充電コネクタ11が車両側コネクタ91に嵌合されると、充電コネクタ11のP端子115が車両側コネクタ91の第5端子915に接続される。また、第5端子915は、第4の抵抗器R4を介して第3端子913に接続され、第3端子913はGND端子113に接続される。
【0046】
これにより、電圧出力部23から供給される電圧により第1の抵抗器R1及び第4の抵抗器R4に電流I1が流れ、第1の電圧計V1によって検出される第1接点22aの電圧は、第1の抵抗器R1における電圧降下によって未嵌合状態よりも低下する。例えば第1の抵抗器R1及び第4の抵抗器R4の抵抗値が共通である場合には、第1の電圧計V1によって検出される電圧が、電圧出力部23の出力電圧の2分の1である+2.5Vとなる。
【0047】
制御部20は、この電圧の変化(低下)、すなわち第1の抵抗器R1の通電電流の変化によって充電コネクタ11と車両側コネクタ91との嵌合を検知する。制御部20は、この嵌合を検知すると、リレー回路21のコイル21cに電流を供給し、第1接点部21a及び第2接点部21bを共にオンさせる。なお、充電コネクタ11と車両側コネクタ91との嵌合を検知した後、L端子111と第1端子911との接触、及びN端子112と第2端子912との接触が安定する所定の時間の経過後に、第1接点部21a及び第2接点部21bをオンさせてもよい。このように、制御部20は、充電コネクタ11と車両側コネクタ91との嵌合を検知したとき、L端子111及びN端子112からの充電電流の出力を可能な状態とする。
【0048】
また、制御部20は、充電コネクタ11と車両側コネクタ91との嵌合を検知したとき、直ちにコイル22dに電流を供給し、切替回路22を第2の接続状態に切り替える。これにより、第1の抵抗器R1とP端子115との接続が遮断され、第2の抵抗器R2とP端子115とが接続される。
【0049】
この第2の接続状態への切り替えは、車両9側の制御装置93が、充電ガン12のリリースボタン120が押されたことを検知することができるようにするための処置である。つまり、使用者によってリリースボタン120が押された場合、充電コネクタ11が車両側コネクタ91から抜かれる可能性が高いので、活線状態でL端子111と第1端子911、及びN端子112と第2端子912が離間することによるスパークの発生等を抑えるべく、リレー回路922をすみやかにオフにする必要がある。
【0050】
制御装置93は、第5端子915の電圧の変化によってリリースボタン120が押されたことを検知する。すなわち、リリースボタン120が押されると、スイッチ121の接点121aと接点121bとの接続が解除され、第5の抵抗器R5の一端から接地電位までの抵抗値が変化する。より具体的には、第5の抵抗器R5の一端から接地電位までの抵抗値が、リリースボタン120が押される前の抵抗値(第2の抵抗器R2と第4の抵抗器R4の並列抵抗値)から、第2の抵抗器R2及び第3の抵抗器R3の直列抵抗と第4の抵抗器R4との並列抵抗値に変化し、第5の抵抗器R5の一端から接地電位までの抵抗値が大きくなる。この結果、第5の抵抗器R5を流れる電流I2の電流値が変化するので、第5の抵抗器R5の一端の電圧が変化する。制御装置93は、この電圧の変化によってリリースボタン120が押されたことを検知する。
【0051】
また、制御部20は、第2の電圧計V2によって検出される切替回路22の第3接点22cの電圧の変化によって、充電コネクタ11の車両側コネクタ91からの離脱を検知し、この離脱を検知したとき、リレー回路21のコイル21cへの電流の供給を停止し、第1接点部21a及び第2接点部21bを共にオフさせる。
【0052】
つまり、充電コネクタ11が車両側コネクタ91から離脱すると、直流電源923の出力が車両用充電装置1側に供給されなくなるので、切替回路22の第3接点22cの電圧、すなわちP端子115の電圧がゼロとなる。制御部20は、この電圧の変化によって充電コネクタ11の離脱を検知し、この離脱を検知したとき、L端子111及びN端子112からの充電電流の出力を不能な状態とする。この処置は、充電コネクタ11が離脱した状態における使用者の感電や漏電を防止するためのものである。
【0053】
(第1の実施の形態の作用及び効果)
以上説明した第1の実施の形態によれば、以下のような作用及び効果が得られる。
【0054】
(1)車両9側が車両用充電装置1との通信機能を有していなくても、充電コネクタ11の車両側コネクタ91との嵌合を検知でき、この嵌合を検知した後に充電を開始することができる。よって、充電コネクタ11の未嵌合状態でL端子114及びN端子115に電圧が表れることがないので、使用者の感電等を未然に防止することが可能となる。
【0055】
(2)制御部20は、充電コネクタ11の車両側コネクタ91との嵌合を検知したとき、切替回路22を直ちに(例えば、制御装置93が立ち上がり、制御装置93が第5の抵抗器R5の一端の電圧(基準電位との電位差)を検出可能となる前に)第2の接続状態とするので、電圧出力部23からの電圧が第5端子915を介して車両9側に供給される時間を短縮し、車両9側の動作に影響を与えることを抑制できると共に、充電コネクタ11の車両側コネクタ91からの離脱を検知することが可能な状態となる。
ここで、上述の「車両9側の動作への影響」に関し、以下に詳しく述べる。
電圧出力部23からの電圧が車両9側に供給される時間が「短縮」ではなく、例えば、「一定の時間」である場合、第2の接続状態となる前に制御装置93が立ち上がってしまい、制御装置93は、電圧出力部23からの電圧の影響を受けた第5の抵抗器R5の一端の電圧を検出することとなる。この場合、制御装置93は、異常な電圧を検出したと判断し、車両9をスリープ状態あるいは充電拒否状態に至らせる可能性がある。そこで、上述の構成を採用している。
なお、スリープ状態とは、リレー922が閉状態とならず、蓄電池94への充電が開始されない状態のことをいう。この状態では、更に、車両9内でエラーランプが点灯したり、車両9から所有者へ携帯電話を通じてエラーメッセージを届けたりし、車両9が積極的に障害解決を訴える状態となることもある。
【0056】
(3)制御部20は、充電コネクタ11の車両側コネクタ91からの離脱を検知したとき、リレー回路21の第1接点部21a及び第2接点部21bを共にオフにするので、使用者の感電や漏電を防止することができる。
【0057】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について、図5を参照して説明する。図5は、第2の実施の形態に係る車両用充電装置1、ならびに車両9側の車両側コネクタ91,充電制御回路92,制御装置93,蓄電池94,及びその周辺回路の構成例を示している。図5において、第1の実施の形態について説明したものと共通する機能を有する要素については、同一の符号を付してその重複した説明を省略する。
【0058】
本実施の形態では、電圧出力部23に接続された第1の抵抗器R1が、スイッチ24を介して電コネクタ11のP端子115に接続されている。第1の抵抗器R1の抵抗値は、例えば270Ωである。スイッチ24は、制御部20によってオン(短絡)又はオフ(遮断)が切り替えられ充電コネクタ11の未嵌合状態ではスイッチ24がオン状態とされている。
【0059】
第1の抵抗器R1の電圧出力部23側と、第1の抵抗器R1のスイッチ24側との間には、第1の電圧計V1が接続されている。この第1の電圧計V1は、第1の抵抗器R1の通電電流による電圧降下を検出可能であり、第1の電圧計V1の検出値に基づいて第1の抵抗器R1の通電電流の変化を検出可能である。つまり、第1の電圧計V1は、本発明の検出手段の一例である。
【0060】
また、装置本体10には、充電コネクタ11のP端子115の電圧(基準電位との電位差)を検出可能な第2の電圧計V2が設けられている。第1の電圧計V1及び第2の電圧計V2で検出した電圧値を示す検出信号は、制御部20に出力される。
【0061】
充電コネクタ11のP端子115とGND端子113との間には、リリースボタン120に連動するスイッチ121と第6の抵抗器R6が直列に接続され、スイッチ121には、第7の抵抗器R7が並列に接続されている。第6の抵抗器R6の抵抗値は例えば150Ω、第7の抵抗器R7の抵抗値は例えば330Ωである。
【0062】
充電コネクタ11と車両側コネクタ91との未嵌合状態では、第1の抵抗器R1,第6の抵抗器R6,及びスイッチ121を経路とする閉回路に電流が流れ、第1の抵抗器R1及び第6の抵抗器R6の合計の抵抗値に応じた電流がこの閉回路に流れる。
【0063】
充電コネクタ11が車両側コネクタ91に嵌合されると、充電コネクタ11のP端子115が車両側コネクタ91の第5端子915に接続され、また第3端子913がGND端子113に接続される。これにより、第6及び第7の抵抗器R6,R7、及びスイッチ121からなる回路に第4の抵抗器R4が並列に接続される。このため、電圧出力部23から接地電位に至る抵抗値が小さくなり、第1の抵抗器R1の通電電流が大きくなるため、第1の電圧計V1によって検出される電圧が大きくなる。これにより、充電コネクタ11と車両側コネクタ91との嵌合を検知することができる。
【0064】
制御部20は、充電コネクタ11と車両側コネクタ91との嵌合を検知すると、リレー回路21のコイル21cに電流を供給し、L端子111及びN端子112からの充電電流の出力を可能な状態とする。
【0065】
また、制御部20は、充電コネクタ11と車両側コネクタ91との嵌合を検知すると、スイッチ24をオフにする。その後、車両9側のスイッチ924がオンされると、直流電源923の出力が第5の抵抗器R5及び第5端子915を介してP端子115に出力され、第2の電圧計V2によって直流電源923の出力電圧が検出される。
【0066】
そして、充電コネクタ11が車両側コネクタ91から離脱すると、P端子115に直流電源923の出力電圧が表れなくなるので、第2の電圧計V2による検出値がゼロとなる。これにより、充電コネクタ11の車両側コネクタ91からの離脱を検知することができる。
【0067】
また、スイッチ121がオフ状態になることによっても、第2の電圧計V2による検出値が変化するので、第2の電圧計V2による検出値に基づいてリリースボタン120が押されたことを検知することができる。
【0068】
制御部20は、充電コネクタ11の車両側コネクタ91からの離脱、又はリリースボタン120が押されたことを検知すると、リレー回路21のコイル21cへの電流の供給を停止し、L端子111及びN端子112からの充電電流の出力を不能な状態とする。
【0069】
このように、本実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様の作用及び効果が得られる。
【0070】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0071】
また、本発明は上記第1及び第2の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。例えば、上記第1及び第2の実施の形態では、第1の電圧計V1の検出信号の変化によって第1の抵抗器R1の通電電流の変化を検出したが、これに限らず、第1の抵抗器R1の通電電流を例えばホール素子を用いた電流計によって検出してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1…車両用充電装置、9…車両、10…装置本体、11…充電コネクタ、12…充電ガン、13…充電ケーブル、14…電源ケーブル、20…制御部、21…リレー回路、21a…第1接点部、21b…第2接点部、21c…コイル、22…切替回路、22a…第1接点、22b…第2接点、22c…第3接点、22d…コイル、23…電圧出力部、24…スイッチ、90…車体、91…車両側コネクタ、92…充電制御回路、93…制御装置、94…蓄電池、95…インバータ、96…電動機、97…変速機、98…前輪、99…後輪、100…車両用充電システム、110…ハウジング、111…L端子(充電電流出力端子)、112…N端子(充電電流出力端子)、113…GND端子、114…C端子、115…P端子(嵌合検知端子)、120…リリースボタン、120a…係合突起、121…スイッチ、121a,121b…接点、140…プラグ、140a,104b…電源端子、140c…接地端子、911〜915…第1〜第5端子、921…整流回路部、922…リレー回路、923…直流電源、924…スイッチ、C…コンセント、R1〜R7…第1〜第7の抵抗器、Rc…通信用抵抗器、V1…第1の電圧計(検出手段)、V2…第2の電圧計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の駆動源として電動機を有する車両に充電電流を出力するための充電電流出力端子、及び前記車両に設けられた車両側コネクタとの嵌合を検知するための嵌合検知端子を有する充電コネクタと、
第1の抵抗器を介して前記嵌合検知端子から電圧を出力する電圧出力部と、
前記車両側コネクタとの嵌合による前記第1の抵抗器の通電電流の変化を検出可能な検出手段と、
前記検出手段によって検出した前記第1の抵抗器の通電電流の変化に基づいて前記充電コネクタと前記車両側コネクタとの嵌合を検知し、前記嵌合を検知したとき、前記充電電流出力端子からの充電電流の出力を可能な状態とする制御部と、
を有する車両用充電装置。
【請求項2】
前記第1の抵抗器と前記嵌合検知端子との間の接続を遮断状態に切り替え可能な切替回路を備え、
前記制御部は、更に、前記充電コネクタと前記車両側コネクタとの嵌合を検知したとき、前記切替回路を遮断状態とする、
請求項1に記載の車両用充電装置。
【請求項3】
前記切替回路は、前記第1の抵抗器と前記嵌合検知端子とを接続する第1の接続状態と、一端が接地された第2の抵抗器の他端と前記嵌合検知端子とを接続する第2の接続状態とを切り替え可能であり、
前記制御部は、前記切替回路の前記第2の接続状態における前記嵌合検知端子の電圧の変化によって前記充電コネクタの前記車両側コネクタからの離脱を検知し、前記離脱を検知したとき、前記充電電流出力端子からの充電電流の出力を不能な状態とする、
請求項2に記載の車両用充電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−78254(P2013−78254A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−180742(P2012−180742)
【出願日】平成24年8月17日(2012.8.17)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】