説明

車両用内装材の組付構造

【課題】組付部品の意匠面の造形に拘わらずに、型成形時におけるスライドコアのスライド成立と、相手部品への組付け性との両立を図る。
【解決手段】ドアトリム1の裏面の取付台座10を構成する積層下段の筺形断面部10Aの側方開放部と、積層上段の筺形断面部10Bの側方開放部の位相を互いに異ならせている。これにより、筺形断面部10Aは意匠面2と略平行にスライドするスライドコア30により、および、筺形断面部10Bは座面がドアインナパネル20と平行となるように別のスライドコア31により型成形が可能となり、クリップ9の挿入係着方向と、ドアトリム1のドアインナパネル20に対する面直な組付方向とを一致させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアトリムやリャサイドトリム等に代表される合成樹脂製の車両用内装材の組付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のドアトリム等の車両用内装材は、その裏面に一般に隠しクリップと称されている止着構造を構成し、クリップやビス等の止着部品が意匠面側(外側)に露出して外観を損なわないように工夫されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、トリム部品の裏面の複数ヶ所に、一側が開放した筺形断面の取付台座を突出して設け、該取付台座の座面にクリップを配設して、該クリップを介して相手部品である車体パネルに係着固定するようにした構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−362249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トリム部品は、適宜の合成樹脂材をもって金型を用いて射出成形されるが、上述の取付台座はその頂壁が型抜き方向と交差するため、該取付台座はスライドコアを用いて成形される。従って、取付台座の一側の開放方向は、このスライドコアのスライド方向に一致している。
【0006】
このように、スライドコアを用いてトリム部品の裏面に取付台座を一体成形する場合、スライドコアのスライドを成立させるために、取付台座の座面と、これに対向するトリム部品の意匠面とを略平行に設計する必要がある。
【0007】
従って、トリム部品の意匠面が車体パネル面と平行であれば、取付台座の座面を意匠面と平行に形成して、車体パネル面と面直の組付け性と、スライドコアのスライド成立とを両立することができる。
【0008】
しかし、トリム部品の意匠面が車幅方向に傾斜し、もしくは緩やかに弯曲しているような場合には、スライドコアのスライドを成立させるためには取付台座の座面をこの意匠面の傾斜もしくは弯曲形状に見合う角度に車幅方向に傾斜して形成する必要がある。
【0009】
このため、傾斜した座面に配設したクリップの車体パネルに対する挿入係着方向(係着軸線)と、トリム部品の車体パネル面の面直な組付方向とにずれが生じて、トリム部品の組付け性が損なわれてしまう。
【0010】
そこで、本発明は組付部品の意匠面の造形に拘わらずに、型成形時におけるスライドコアのスライド成立と、相手部品への組付け性とを両立することができる車両用内装材の組付構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の車両用内装材の組付構造にあっては、組付部品の裏面に、少なくとも一側が開放した筺形断面の取付台座を突出して設け、該組付部品を前記取付台座の座面に突出して設けたクリップを相手部品に係着して組付けるようにした構造としている。
【0012】
そして、前記取付台座を、互いに側方開放部の位相が異なる複数の筺形断面部が前記突出方向に多段に積層状に連設した形状として構成し、この積層上段の筺形断面部の頂壁を前記クリップが配設される座面として構成したことを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、取付台座を構成する積層下段の筺形断面部の側方開放部と、積層上段の筺形断面部の側方開放部の位相を互いに異ならせているため、積層下段の筺形断面部は組付部品の意匠面と略平行にスライドするスライドコアにより、および、積層上段の筺形断面部は頂壁の底面が相手部品と平行となるように別のスライドコアにより型成形が可能となる。
【0014】
これにより、組付部品の意匠面の造形形状に拘わることなく組付台座の座面を、ここに配設するクリップの挿入係着方向(係着軸線)が、該組付部品の相手部品に対する面直な組付方向となるように型成形することが可能となる。
【0015】
従って、相手部品に対するクリップの挿入係着方向と、この相手部品に対する組付部品の面直な組付方向とを一致させることができ、該組付部品の型成形時におけるスライドコアのスライドの成立と、相手部品への組付性とを両立することが可能となる。
【0016】
また、取付台座が、その突出方向に積層形成された下段の筺形断面部と、上段の筺形断面部とで多段に構成されるため、該取付台座の強度,剛性を高められて、クリップによる組付剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の対象とする車両用内装材の一例を示す側面説明図。
【図2】図1のA範囲部を裏面側から見た本発明の一実施形態を示す斜視図。
【図3】図2に示した実施形態のトリム部品を車体パネルに組付けた状態を示す図2のB−B線に沿う断面図。
【図4】図2に示した実施形態のトリム部品を型成形する場合のスライドコアとの関係を示す図2のB−B線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を組付部品としてドアトリムを、および相手部品としてドアインナパネルを例に採って図面と共に詳述する。
【0019】
図1に示す本実施形態のドアトリム1は、適宜の合成樹脂材をもって金型を用いて射出成形され、車室側のドア側面を構成する意匠面2には、ドアアームレスト3やドアポケット4等、仕様に応じた造形形状に設計されている。
【0020】
このドアトリム1の裏面周縁部の複数ヶ所には、その裏面に一般に隠しクリップと称されている止着構造を構成し、後述するドアインナパネルに組付ける場合に、クリップやビス等の止着部品が意匠面側(外側)に露出して外観を損なわないように工夫されている。
【0021】
図2は、図1のA範囲部分の裏側における上述の隠しクリップと称される止着構造を構成した部分を示している。
【0022】
ドアトリム1の裏面周縁部の所要部位には、筺形断面の取付台座10を一体に突出して形成してある。
【0023】
この取付台座10の座面にはクリップ9を突出して設けてあり、該クリップ9を図3に示すようにドアインナパネル20に設けた取付孔21に挿入係着することにより、ドアトリム1をドアインナパネル20に組付けるようにしている。
【0024】
取付台座10は、上述のようにドアトリム1に一体に射出成形されるが、その座面が金型の型抜き方向と交差するため、後述するようにスライドコアを用いて成形される、そのため、取付台座10の少なくとも一側は、このスライドコアの移動方向に開放している。
【0025】
ここで、本実施形態では取付台座10を、互いに側方開放部の位相が異なる複数の筺形断面部10A,10Bが前記突出方向に多段に積層状に連設した形状として構成している。
【0026】
そして、積層上段の筺形断面部10Bの頂壁を前記クリップが配設される座面として構成している。
【0027】
図2に示す例では、積層下段の筺形断面部10Aは、ドアトリム1の下辺に向けて側方が開放し、積層上段の筺形断面部10Bは、ドアトリム1の側辺のフランジ縁1aに向けて側方が開放し、これら上,下段の筺形断面部10A,10Bの側方開放部が略90°位相を異にした構成としている。
【0028】
従って、下段の筺形断面部10Aと、上段の筺形断面部10Bは、仕切壁11を境にして多段に積層状に一体成形されている。
【0029】
本実施形態にあっては、仕切壁11と積層上段の筺形断面部10Bの頂壁とを縦リブ12で連設して補強している。また、この積層上段の筺形断面部10Bの頂壁で構成する座面にホルダー孔13を切欠形成して、ここに別体のクリップ9を差し込み係着しているが、該クリップ9を座面と一体成形することも可能である。
【0030】
図4は、上述の取付台座10の成形の一例を示している。積層下段の筺形断面部10Aは、矢印a方向にスライド移動するスライドコア30を用いて成形される。積層上段の筺形断面部10Bは、スライドコア30とは略90°スライド移動方向が異なる矢印b方向にスライド移動するスライドコア31を用いて成形される。
【0031】
このとき、前記仕切壁11はスライドコア30により、ドアトリム1の意匠面2と略平行に成形される。
【0032】
一方、積層上段の筺形断面部10Bの頂壁で構成する座面は、スライドコア31によりドアインナパネル20の取付孔21を設けた取付面と略平行に成形される。
【0033】
以上の構成からなる本実施形態によれば、ドアトリム1の裏面の筺形断面の取付台座10を、複数の筺形断面部10Aと10Bとが突出方向に多段に積層状に連設した形状として構成し、積層下段の筺形断面部10Aの側方開放部と、積層上段の筺形断面部10Bの側方開放部とを互いに位相を異ならせて構成している。
【0034】
これにより、積層下段の筺形断面部10Aはドアトリム1の意匠面2と略平行にスライドするスライドコア30により、および積層上段の筺形断面部10Bは頂壁の座面がドアインナパネル20と平行となるように別のスライドコア31により型成形することが可能となる。
【0035】
これにより、ドアトリム1の意匠面2の造形形状に拘わることなく取付台座10の座面を、ここに配設するクリップ9のドアインナパネル20に対する挿入係着方向(係着軸線)が、ドアインナパネル20に対する面直な組付方向となるように型成形することが可能となる。
【0036】
従って、ドアインナパネル20に対するクリップ9の挿入係着方向(係着軸線)と、該ドアインナパネル20に対するドアトリム1の面直な組付方向とを一致させることができる。
【0037】
この結果、ドアトリム1の型成形時におけるスライドコア30,31のスライド移動の成立と、ドアインナパネル20への組付け性とを両立することができる。
【0038】
また、取付台座10が、その突出方向に積層形成された下段の筺形断面部10Aと、上段の筺形断面部10Bとで多段に構成されるため、該取付台座10の強度,剛性を高められて、クリップ9による組付剛性を高めることができる。
【0039】
なお、前記実施形態では組付部品と相手部品を、ドアトリム1とドアインナパネル20を例に採って説明したが、リャサイドトリムやピラーガーニッシュ等の内装材とそれらに対応した車体パネルとに適用することができる。
【0040】
また、この他、トリム部材を相手部品とし、これに別体のトリム部品を組付部品として組付ける構造に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0041】
1…ドアトリム(組付部品)
2…意匠面
9…クリップ
10…取付台座
10A…積層下段の筺形断面部
10B…積層上段の筺形断面部
11…仕切壁
20…ドアインナパネル(相手部品)
21…取付孔
30,31…スライドコア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組付部品の裏面に、少なくとも一側が開放した筺形断面の取付台座を突出して設け、該組付部品を前記取付台座の座面に突出して設けたクリップを相手部品に係着して組付けるようにした構造であって、
前記取付台座を、互いに側方開放部の位相が異なる複数の筺形断面部が前記突出方向に多段に積層状に連設した形状として構成し、
積層上段の筺形断面部の頂壁を前記クリップが配設される座面として構成したことを特徴とする車両用内装材の組付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−35322(P2013−35322A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170631(P2011−170631)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】