説明

車両用内装材

【課題】複合板と可撓性シートとの結合強度が高く、耐久性に優れた車両用内装材を提供する。
【解決手段】床敷材11は、熱可塑性樹脂からなる複合板13と、複合板13の周縁に熱溶着された熱可塑性樹脂製の可撓性シート15と、を備えている。複合板13は、互いに厚さ方向に離間して対向配置された第1層17および第2層19と、これらの第1層17と第2層19とを結合する中間層21とを有する。前記可撓性シート15は、前記第2層19上に載置され、複合板13の周縁に配置された端末部が可撓性シート15と共に加熱されて所定の厚さに押し潰され所定の長さに切断されることによって被覆フランジ29となり、被覆フランジ29が根本29aを中心に折り曲げられて複合板13の側端55に可撓性シート15を介して熱溶着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の車室後部に画成されたラゲッジルームの床面には、工具等を収容する収容凹部が形成されており、この収容凹部および該収容凹部の近傍の床面には、車両用内装材である床敷材が載置される。該床敷材は、例えば特許文献1に示すように、平板状に形成された樹脂製の基板材(複合板)と該基板材の端部に結合された樹脂製の繊維材(可撓性シート)とからなり、前記基板材によって収容凹部の上部開口を塞ぐと共に、前記繊維材によって床面を覆って外観向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2601712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の床敷材においては、基板材の端部に縫製加工やステイプル等によって繊維材を結合しているため、基板材と繊維材との結合強度が低く、長期間使用すると繊維材が基板材から外れやすくなるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、複合板と可撓性シートとの結合強度が高く、耐久性に優れた車両用内装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用内装材は、熱可塑性樹脂からなる複合板と、該複合板の周縁に熱溶着された熱可塑性樹脂製の可撓性シートと、を備えている。前記複合板は、互いに厚さ方向に離間して対向配置された平板状の第1層および第2層と、これらの第1層と第2層とを結合すると共に中空部を有する中間層とを有し、前記可撓性シートは、前記第2層上に載置され、前記複合板の周縁に配置された端末部が可撓性シートと共に加熱されて所定の厚さに押し潰され所定の長さに切断されることによって被覆フランジとなり、該被覆フランジが根本を中心に折り曲げられて前記複合板の側端に可撓性シートを介して熱溶着されることによって、前記可撓性シートが複合板の側端と被覆フランジとで挟持された状態で複合板の周縁に熱溶着されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車両用内装材においては、可撓性シートが複合板の側端と被覆フランジとで挟持された状態で複合板の周縁に熱溶着されているため、可撓性シートと複合板との結合強度が高くなり、車両用内装材の耐久性が向上する。また、熱溶着によって可撓性シートを複合板に結合させるため、接着剤等の他の結合部材が不要になり、コスト低減につながる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態による車室内後部のラゲッジルームを示す斜視図であり、床敷材を外した状態を示している。
【図2】図1のラゲッジルームの床面に床敷材を設置した状態を示す斜視図である。
【図3】図2のA−A線による断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態による床敷材の断面図である。
【図5】複合板と可撓性シートとを端末処理装置のテーブル上に載せた状態を示す断面図である。
【図6】図5の熱刃を下降させて複合板の周縁に被覆フランジを形成した状態を示す断面図である。
【図7】図6の状態から熱刃を上昇させた状態を示す断面図である。
【図8】上下スライド部材を上昇させて、被覆フランジを根本を中心に折り曲げた状態を示す断面図である。
【図9】本発明の第1実施形態による床敷材の完成品を示す断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態による床敷材を設置した車室内後部のラゲッジルームを示す斜視図である。
【図11】図10の断面図である。
【図12】実施例による引張試験の実施要領を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0010】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
【0011】
図1に示すように、車室内後部には、後部シート1が配設されており、該後部シート1を構成するシートバック3の後方には、ラゲッジルーム5が設けられている。このラゲッジルーム5の床面はフロアパネル7であり、該フロアパネル7の後部には下方に凹んだ収容部9が形成されており、この収容部9内に工具等を収容することができる。
【0012】
図1〜3に示すように、収容部9は、底面9aと、該底面9aの前端から上方に延びる前壁9bと、前記底面9aの後端から上方に延びる後壁9cと、前記底面9aの側端から上方に延びる側壁9dと、から画成されている。また、前壁9b、後壁9c、側壁9dの上端には、段差部10が環状に繋がって形成されている。
【0013】
前記収容部9と該収容部9の前側のフロアパネル7の上には、本実施形態による車両用内装材である床敷材11が載置(設置)される。具体的には、前記段差部10には後述する複合板13が嵌め込まれることによって、収容部9の上部開口が複合板13で覆われ、収容部9の前側のフロアパネル7は後述する熱可塑性樹脂製の可撓性シート15によって覆われている。なお、図3に示すように、段差部10の深さは複合板13の厚さと略同一であるため、複合板13の上面と可撓性シート15とは略面一状に配置される。また、可撓性シート15の前端部15aは、シートバック3の背面3aの下端部に溶着されている。
【0014】
前記床敷材11は、図4に示すように、熱可塑性樹脂からなる複合板13と、該複合板13の周縁に熱溶着された不織布からなる可撓性シート15と、を備えている。なお、第1実施形態では、可撓性シート15が出てくる側を表側とし、その反対側を裏側として、図4に示す裏側がフロアパネル7および段差部10に当接するように構成している。しかし、後述する第2実施形態のように、表裏を逆にして使用することもできる、いわゆるリバーシブル構造になっている。
【0015】
また、前記複合板13は、互いに厚さ方向に離間して対向配置された平板状の第1層17および第2層19と、これらの第1層17と第2層19とを結合すると共に中空部27を有する中間層21と、前記第1層17の裏側(図4の下側)に貼着された不織布23と、第2層19の表側(図4の上側)に貼着された不織布24と、から構成されている。図4においては、前記第1層17が床敷材11の使用状態における裏側となり、第2層19が表側となる。前記中間層21は、平板上に多数の凸部25が設けられることにより、中空部27が形成されている。そして、前記可撓性シート15は、詳細に後述するように、複合板13の周縁の被覆フランジ29が根本29aを中心に折り曲げられて前記複合板13の側端に可撓性シート15を介して熱溶着されることによって、前記可撓性シート15が複合板13の側端と被覆フランジ29とで挟持された状態で熱溶着されている。なお、前記可撓性シート15は、ポリオレフィン繊維(ポリプロピレン繊維PP)、ポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維PET)、およびレーヨン繊維が混毛された不織布からなり、この不織布の目付量は、200〜400g/mが望ましい。
【0016】
なお、本実施形態では、前記第1層17、第2層19、中間層21、および不織布23,24は、互いに溶着されており、溶着は熱溶着、溶融型接着剤による溶着などの手法によっても良い。また、粘着型接着剤や固化型接着剤などやその他の方法で各層が貼り合わされた複合板13であっても良い。複合板13を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンやオレフィン系樹脂および、これらの混合材料などの熱可塑性樹脂が挙げられる。全ての層を同種の樹脂材料で形成しても良いが、いずれかの層が異なる樹脂材料であっても良い。
【0017】
以下に、図5〜図9を用いて、本実施形態による床敷材11の製造方法を説明する。
【0018】
まず、床敷材11の周縁に端末処理を施して可撓性シート15を熱溶着させる端末処理装置31の説明をする。
【0019】
図5に示すように、端末処理装置31は、図外の床面に載置されたテーブル33と、該テーブル33の上方に配置され、上下移動可能に支持された抑え板35と、テーブル33の側方に配置されて、駆動源であるシリンダ37によって上下スライド部材39を上下移動させるスライド装置41と、該スライド装置41の上方に上下移動可能に支持されると共に、下端部に下方に向けて刃先43が突出する熱刃45と、を備えている。
【0020】
初期状態では、上下スライド部材39の上面39aとテーブル33の上面33aとは同一高さに配置されている。さらに、熱刃45における下端部は、前記刃先43と、側面47に対して直交して配置された底面49と、を有する。なお、熱刃45は、前記複合板13および可撓性シート15の材質である熱可塑性樹脂の融点以上に加熱される。
【0021】
まず、図5に示すように、テーブル33の上面33aと上下スライド部材39の上面39aの上に、前述した複合板13と可撓性シート15を第1層17が下側になるように載置したのち、抑え板35を下降させ、抑え板35と、テーブル33および上下スライド部材41とによって複合板13および可撓性シート15を上下から押さえつける。なお、前記複合板13については、予め、前記第1層17、第2層19、中間層21、および不織布23,24が互いに溶着されており、不織布24の上に可撓性シート15を載置させる。また、複合板13および可撓性シート15を合わせた厚さはTである。
【0022】
そして、図6に示すように、加熱された熱刃45を下降させると、刃先43が可撓性シート15と複合板13を切断しながら、熱刃45の底面49が複合板13の端末部を加熱して所定厚さに押し潰したのち、熱刃45を上昇させることによって、図7に示すように端末部が被覆フランジ29に成形される。なお、符号55は、複合板13の側端である。この被覆フランジ29は、上側から、可撓性シート15、不織布24、第2層19、中間層21、第1層17、および不織布23からなり、長さがLとなる。また、被覆フランジ29の長さLは、前記厚さTと略同一寸法に設定されている。
【0023】
次いで、図8に示すように、上下スライド部材39を上方に移動させ、上下スライド部材39の上面39aで被覆フランジ29を下側から押し上げると、被覆フランジ29は、根本29aを中心として折れ曲がり、図9に示すように、可撓性シート15が複合板13の側端55と被覆フランジ29とで挟持された状態で熱溶着される。これにより、本実施形態による床敷材11の成形が完了する。なお、床敷材11を使用する際には、図9の矢印に示すように可撓性シート15を折り返して、複合板13の面方向に沿って延ばした状態にする。
【0024】
以下に、本実施形態による作用効果を説明する。
【0025】
本実施形態に係る床敷材11(車両用内装材)においては、可撓性シート15が複合板13の側端55と被覆フランジ29とで挟持された状態で複合板13の周縁に熱溶着されているため、可撓性シート15と複合板13との結合強度が高くなり、床敷材11の耐久性が向上する。即ち、可撓性シート15を面方向に引っ張っても、この引張荷重を被覆フランジ29によって支持するため、複合板13から外れにくくなる結果、床敷材11の耐久性が向上する。また、熱溶着によって可撓性シート15を複合板13の周縁に結合させるため、接着剤等の他の結合部材が不要になり、コスト低減につながる。
【0026】
[第2実施形態]
次いで、本発明の第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態と同一構造の部位には同一符号を付けて、その説明を省略する。
【0027】
図10および図11に示すように、後部シート1は、フロアパネル7上のシートクッション2と、下端部3aを中心にして前後に回動可能なシートバック3と、該シートバック3の上端に配設されたヘッドレスト4と、を備えている。そして、シートバック3の後側(背面側)には、第1実施形態における複合板13からなる背板59が設けられている。一方、ラゲッジルーム5のフロアパネル7および収容部9には、床敷材11が載置されており、前記背板59の下端部59aに、床敷材11の可撓性シート15の前端15aが熱溶着されている。
【0028】
従って、シートバック3の後側の複合板13とフロアパネル7上の床敷材11の複合板13とが、可撓性シート15を介して連結されている。なお、第2実施形態においては、図3に示す第1実施形態に対して床敷材11の上下位置が逆に配置されており、フロアパネル7上の床敷材11では複合板13の下側から可撓性シート15が延びており、シートバック3の背板59における下端部59aの前側に可撓性シート15の前端15aが熱溶着されている。
【0029】
以下に、本実施形態による作用効果を説明する。
【0030】
本実施形態においては、シートバック3の背面に配設した、複合板13からなる背板59の下端部59aに、床敷材11の可撓性シート15の前端15aが熱溶着されている。このため、シートバック3とラゲッジルーム5のフロアパネル7との隙間が可撓性シート15によって覆われるので、外観向上を図ることができる。
【実施例】
【0031】
次いで、実施例を通じて本発明を更に具体的に説明する。
【0032】
実施例においては、可撓性シートを折り返した状態で保持し、複合板を引っ張って剥離するときの引張強度を測定した。
【0033】
本発明例による床敷材は、前述した本発明の第1および第2実施形態で用いたものと同一とした。
【0034】
比較例1による床敷材は、本発明の第1および第2実施形態で用いたものと同一の複合板13と可撓性シート15を準備し、この可撓性シート15の上から加熱した状態の加熱バーを下降させて押圧することにより、可撓性シート15を複合板13に熱溶着させて成形した。即ち、高温の加熱バーによって、可撓性シート15と複合板13とを熱溶着部を介して結合した。こののち、可撓性シート15を折り返して引張試験を行った。
【0035】
また、比較例2による床敷材は、複合板13の端部に可撓性シート15を1つのクリップで係止したものを用いた。
【0036】
引張試験は、図12に示すように、可撓性シート15を保持した状態で、幅寸法が50mmで長さが150mmの複合板13を上方に引っ張り、複合板13が可撓性シート15から剥離したときの荷重を測定して、引張強度とした。なお、試験時の温度は常温とした。
【0037】
本発明例による床敷材の引張強度は105N、比較例1による床敷材の引張強度は47N、比較例2による床敷材の引張強度は89Nであった。これにより、本発明例よる床敷材が最も可撓性シートと複合板との結合強度が高いことが確認された。
【0038】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されず、本発明の技術思想に基づいて種々の変更および変形が可能である。
【符号の説明】
【0039】
11…床敷材(車両用内装材)
13…複合板
15…可撓性シート
17…第1層
19…第2層
21…中間層
27…中空部
29…被覆フランジ
29a…根本
55…側端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる複合板と、該複合板の周縁に熱溶着された熱可塑性樹脂製の可撓性シートと、を備えた車両用内装材であって、
前記複合板は、互いに厚さ方向に離間して対向配置された平板状の第1層および第2層と、これらの第1層と第2層とを結合すると共に中空部を有する中間層とを有し、
前記可撓性シートは、前記第2層上に載置され、
前記複合板の周縁に配置された端末部が可撓性シートと共に加熱されて所定の厚さに押し潰され所定の長さに切断されることによって被覆フランジとなり、該被覆フランジが根本を中心に折り曲げられて前記複合板の側端に可撓性シートを介して熱溶着されることによって、前記可撓性シートが複合板の側端と被覆フランジとで挟持された状態で複合板の周縁に熱溶着されることを特徴とする車両用内装材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−82282(P2013−82282A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222689(P2011−222689)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000244280)盟和産業株式会社 (48)
【Fターム(参考)】