説明

車両用内装部品

【課題】衝撃吸収性能だけでなく吸音性能にもすぐれる車両用内装部品を提供する。
【解決手段】車両の床面に載置される車両用内装部品であって、発泡樹脂材料から構成され、車体側となる下面に有底の音封止穴を少なくとも1つ以上凹設し、該音封止穴30から車両内部側となる上面に通じ、前記音封止穴の横断面に対する開口率が1〜11%である音通過孔40を貫通開設してなるパッド部20を有するものである。パッド部20には、その下面を覆うよう吸音材層50を配置することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の如き車両の床面に載置され、乗員の下肢部を保護するティビアパッドや嵩上げ材のような車両用内装部品に関するものであり、より具体的には、衝撃吸収性能だけでなく吸音性能にもすぐれる車両用内装部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
衝撃吸収性能を有する車両用内装部品として、ティビアパッドと称される衝撃吸収パッドが知られている。ティビアパッドは、車両の床面に載置され、車両の衝突時に乗員の下肢部を保護するものである。
【0003】
上記ティビアパッドに衝撃吸収性能だけでなく、吸音性能を具備し、車両内の静音性を高めるようにしたティビアパッドが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載のティビアパッドは、発泡樹脂成形体からなり、車体側となる下面に複数の突起を有する平板状のパッド部を含み、該パッド部の下面を覆うように突起に吸音材層を嵌めて形成される。吸音性能を高めることができるように、ティビアパッドには、前記パッド部の上下方向に複数の貫通孔を開設し、車両内部側で生じた騒音を貫通孔から吸音材層に導き、該吸音材層にて吸収するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4302725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、貫通孔を通過した音の一部が吸音材層で反射して、再度車両内部に侵入してしまう虞がある。
【0007】
本発明の目的は、衝撃吸収性能だけでなく吸音性能にもすぐれる車両用内装部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の車両用内装部品は、
車両の床面に載置される車両用内装部品であって、
発泡樹脂材料から構成され、車体側となる下面に有底の音封止穴を少なくとも1つ以上凹設し、該音封止穴から車両内部側となる上面に通じ、前記音封止穴の横断面に対する開口率が1〜11%である音通過孔を貫通開設してなるパッド部を有する。
【0009】
パッド部には、その下面を覆うよう吸音材層を配置することが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車両用内装部品によれば、車両内部の騒音は、音通過孔を通って音封止穴に到達する。音封止穴に到達した音は、音封止穴内で減衰したり、音封止穴の内面に当たって減衰する。また、音封止穴から車両外部へ放出される。
また、車両外部の騒音は、音封止穴の内面に当たって減衰し、音通過孔から車両内部に侵入することが殆んどない。
従って、本発明の車両用内装部品は、すぐれた吸音性能を具備し、車両内部の静音性を可及的に高めることができる。
【0011】
特に、パッド部の音封止穴側に吸音材層を配置した場合には、音封止穴に侵入した音は吸音材層で吸収される。このとき、一部の音が吸音材層で反射することがあるが、反射した音は音封止穴の内面に当たって減衰すると共に、音封止穴の内面でさらに反射した音は再度吸音材層に導かれて吸収される。
即ち、本発明の車両用内装部品は、音封止穴と吸音材層により、音通過孔から侵入する車両内部の騒音を効果的に封止することができるから、吸音性能を可及的に高めることができる。
【0012】
また、エンジン音や車両外部から車両用内装部品を通過して車両内部に侵入する騒音は、吸音材層で吸収されるが、吸音材層を通過した場合でも、音封止穴の内面に当たって減衰すると共に、音封止穴の内面でさらに反射した音は再度吸音材層に導かれて吸収される。
従って、本発明の車両用内装部品は、音封止穴と吸音材層により、車両外部からの騒音を効果的に封止することができるから、吸音性能を可及的に高めることができる。
【0013】
また、本発明の車両用内装部品は、パッド部を発泡樹脂材料から形成しているから、プラスチック樹脂等により形成した場合に比べて吸音性能にすぐれ、さらに、衝撃吸収性能にすぐれる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施例を示す車両用内装部品を斜め上方から見た斜視図である。
【図2】図2は、図1の車両用内装部品を斜め下方から見た分解斜視図である。
【図3】図3は、図1の線A−Aに沿う矢視断面図である。
【図4】図4は、本発明の車両用内装部品を成形する金型の断面図である。
【図5】図5は、テストピースの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の車両用内装部品の一実施例について、図面を参照しながら説明する。
図1及び図2は、本発明の車両用内装部品をティビアパッド(10)に適用した実施例であって、図1は、ティビアパッド(10)を斜め上方から見た斜視図、図2は、ティビアパッド(10)を斜め下方から見た斜視図であって、後述するパッド部(20)と吸音材層(50)を分解して示している。なお、図1中、上側が車両内部側、下側が車体側であり、左奥側が車両前方側、右手前側が車両後方側となる。
【0016】
ティビアパッド(10)は、車両内部の例えば運転席や助手席、後部座席等の床面に載置して使用されるものであり、その形状は、載置位置の床形状等に応じて適宜決定することができる。ティビアパッド(10)の上には、フロアカーペット等が敷設される。
【0017】
本発明の実施例に係るティビアパッド(10)は、発泡樹脂材料からなるパッド部(20)を有する。パッド部(20)には、必要に応じて車体側となる下面を覆うように吸音材層(50)を配備した構成とすることができる。
パッド部(20)には、車体側となる下面に1又は複数の有底の音封止穴(30)(30)が上向きに凹設されており、音封止穴(30)(30)の上面側には、音封止穴(30)(30)と車両内部とを上下方向に連通する1又は複数の音通過孔(40)(40)が貫通開設されている。
吸音材層(50)は、後述のとおり、繊維材などから形成することができ、パッド部(20)の下面側を覆うように配備される。
【0018】
以下、ティビアパッド(10)のパッド部(20)と吸音材層(50)について順に説明する。
【0019】
パッド部(20)は、乗員の踵を載せる水平部(21)と、該水平部(21)の前端から上向きに屈曲して形成され、乗員のつま先を載せる傾斜部(22)を一体に成形したものであり、熱可塑性の発泡樹脂材料から構成される。パッド部(20)の厚さ(T)は、要求される衝撃吸収効果に応じて適宜決定することができるが、30mm〜50mmとすることが好適である。
【0020】
パッド部(20)を構成する発泡樹脂材料として、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネート系樹脂、ポリ乳酸系樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリスチレンとポリエチレンとを含む複合樹脂を用いることが好ましい。
【0021】
泡樹脂材料は、ビーズ状のものを使用することができ、その発泡倍率は、5〜50倍であり、20〜40倍が好ましい。発泡倍率が5倍未満のビーズでは、強度が強く、衝撃吸収材料として好適ではない場合がある。また、発泡倍率が50倍を超えるビーズでは、強度が弱く、十分な衝撃吸収効果を具備できない虞があるためである。
【0022】
パッド部(20)には、図2及び図3に示すように、水平部(21)の車体側となる下面に1つ又は複数の有底の音封止穴(30)(30)が凹設されている。音封止穴(30)(30)間は、下向きにリブ(24)(24)が突設され、音封止穴(30)(30)を区画すると共に、該リブ(24)(24)が音封止穴(30)(30)の内面の一部を構成する。
【0023】
図2では、水平部(21)に形成された音封止穴(30)(30)の内、前方側の音封止穴(30)の前端側にはリブを形成していないが、音吸収性能の観点から全周にリブを形成することが望ましい。
また、図示の実施例では、水平部(21)にのみ音封止穴(30)(30)を形成しているが、傾斜部(22)にも音封止穴を形成することができる。
【0024】
具体的実施形態として、音封止穴(30)(30)は、以下の形状、寸法等となるように形成することができる。
【0025】
音封止穴(30)(30)の形状は、図示のように横断面が略矩形となるようにすることができる。また、横断面が円形、楕円形、台形、その他の多角形形状とすることも勿論可能である。
【0026】
音封止穴(30)(30)を横断面が略矩形となるように形成する場合、前後方向を基準として横方向となる幅(W)が25mm以上120mm以下、前後方向に平行な長さ(L)が25mm以上120mm以下とすることが望ましい。
図示のように、幅(W)に対して長さ(L)が長くなるように形成することで、前後方向に長くリブ(24)(24)を突設することができるから、前方からの衝撃吸収効果を高めることができる。また、幅(W)に対して長さ(L)が短くなるように形成することで、左右方向に長くリブ(24)(24)を突設することができるから、側方からの衝撃吸収効果を高めることができる。
【0027】
音封止穴(30)(30)は、深くするほど音吸収性能を高めることができるが、深くすることで、リブ(24)(24)が高くなってしまい、衝撃吸収性能を確保できなくなることがある。従って、音封止穴(30)(30)の深さ(D)は、20mm以上40mm以下とすることが望ましい。
【0028】
各音封止穴(30)(30)の容積(V)は、12cm以上1570cm以下となるように形成することが望ましい。容積(V)が12cm未満となると、十分な音封止効果を得ることができず、1570cmを超えると、リブ(24)(24)の間隔が大きくなって、衝撃吸収性能を具備できなくなることがある。
【0029】
音封止穴(30)(30)は、下面側に向けて拡径するテーパ状に形成することが好適である。即ち、リブ(24)(24)は、下面側に向けて幅が狭くなるように形成する。テーパ角度は、1〜3°程度とすることが望ましい。これにより、音封止穴(30)(30)に侵入した音をテーパ面に当てて、外部に逃さず吸音材層で吸収させることができる。
【0030】
リブ(24)(24)の幅、すなわち、音封止穴(30)(30)どうしの間隔は、10mm以上とすることが好適である。リブ(24)の幅が10mm未満となると、要求される衝撃吸収性能を具備できない虞があるからである。なお、リブ(24)が幅広になる程、音封止穴(30)(30)の占める面積は小さくなり、音封止穴(30)(30)による吸音効果は低下してしまう。従って、リブ(24)の幅は、上限を14mmとすることが好適である。
【0031】
前記音封止穴(30)(30)には、図1乃至図3に示すように、音通過孔(40)(40)が上下方向に貫通開設されている。音通過孔(40)(40)は、車両内部で生じた騒音を音封止穴(30)(30)に導く開口である。望ましくは、音通過穴(40)は、各音封止穴(30)(30)に複数形成する。
【0032】
音通過孔(40)(40)は、音封止穴(30)(30)との関係において、音封止穴の横断面に対する開口率が1〜11%となるように形成する。この開口率が1%未満となると、上記と同様、音封止穴(30)(30)へ導くことのできる音が低減するからであり、また、開口率が11%を超えると、強度が低下し、十分な衝撃吸収性能を得ることができない場合があるからである。
【0033】
また、音通過孔(40)(40)は、パッド部の上面に対する開口率が3〜8%となるように形成することが望ましい。この開口率が3%未満となると、音封止穴(30)(30)へ導くことのできる音が低減するからであり、また、開口率が8%を超えると、強度が低下し、十分な衝撃吸収性能を得ることができない場合があるからである。
【0034】
音通過孔(40)(40)の直径(φ)は、音封止穴(30)(30)の幅(W)及び長さ(L)により適宜決定することができるが、音封止穴(30)(30)の幅(W)及び長さ(L)よりも小径とすることが好適であり、また、十分な音通過性能を具備するには、10mm以上20mm以下とすることが望ましい。
【0035】
また、音通過孔(40)(40)の深さ(d)は、必要とされるパッド部(20)の強度により決定されるが、音通過孔(40)(40)を通過した音を再度車両内部に逃さないために、深さ(d)は、10mm以上とすることが望ましい。
【0036】
さらに、音通過孔(40)(40)を、音封止穴(30)(30)の夫々に複数開設する場合、音通過穴(40)(40)どうしのピッチ(P)は、25mm以上35mm以下とすることが望ましい。
【0037】
上記構成のパッド部(20)は、下記要領で作製することができる。
パッド部(20)の成形は、図4に示すような金型を用いて行なうことができる。
図4(a)及び(b)は、金型(7)の断面図であり、金型(7)は雄型(70)と雌型(71)を突き合わせて構成され、両型(70)(71)間のキャビティ(72)に発泡性樹脂が導入される。可動型である雄型(70)は雌型(71)に対して接近、離間する方向に移動するが、雌型(71)が移動してもよい。
【0038】
雄型(70)には、図4に示すように、前記パッド部(20)の音封止穴(30)を形成する突部(70a)を有しており、該突部(70a)の先端には、音通過孔(40)を形成する突起(70b)が形成されている。突起(70b)は、図4(a)に示すように、雄型(70)と雌型(71)とを接近させたときに、先端が雌型(71)に当接する高さとなっている。
【0039】
雌型(71)の外側、雄型(70)の外側には、加熱蒸気が導入される第1加熱室(73)、第2加熱室(74)が夫々形成され、第1加熱室(73)は第1蒸気導入筒(75)と蒸気が排出される第1ドレン弁(76)を、第2加熱室(74)は第2蒸気導入筒(77)と蒸気が排出される第2ドレン弁(78)を夫々具える。キャビティ(72)内へは、供給筒(79)から発泡樹脂の粒子が供給される。
【0040】
雌型(71)、雄型(70)には蒸気が通過することができる微小孔(図示せず)が開設され、該微小孔の径は成形される発泡性樹脂の径よりも小さく、発泡性樹脂は微小孔から脱落しない。
【0041】
成形は、「金型加熱」、「一方加熱」、「逆一方加熱」及び「両面加熱」の4工程から構成することができる。
「金型加熱」とは、成形開始前に冷えている金型(7)を暖める目的で、第1、第2蒸気導入筒(75)(77)から夫々第1、第2加熱室(73)(74)に加熱蒸気を導入するが、両ドレン弁(76)(78)は開いている工程を指す。従って、第1、第2加熱室(73)(74)に入った蒸気は金型(7)を暖めるとともに金型内の余分な空気を排除し、ドレン弁(76)(78)から排出される。
「一方加熱」とは、第1ドレン弁(76)を閉じて、第1蒸気導入筒(75)から第1加熱室(73)に加熱蒸気を導入する工程であって、第2ドレン弁(78)は開いている。加熱蒸気はキャビティ(72)内の発泡成形体を加熱した後に、第2ドレン弁(78)から排出される。
【0042】
「逆一方加熱」とは「一方加熱」の次の工程であって、第2ドレン弁(78)を閉じて、第2蒸気導入筒(77)から第2加熱室(74)に加熱蒸気を導入し、第1ドレン弁(76)を閉じている。加熱蒸気はキャビティ(72)内の発泡成形体を第2加熱室(74)側から加熱する。
「両面加熱」とは、「逆一方加熱」の後の工程であって、両ドレン弁(76)(78)を閉じて、両蒸気導入筒(75)(77)から加熱蒸気を第1、第2加熱室(73)(74)に導入する工程である。加熱蒸気は、キャビティ(72)内の発泡成形体を加熱して、発泡成形体の表面の延びを促進させることができる。
【0043】
上記金型(7)を用いて、パッド部(20)を成形する際に、クラッキングと呼ばれる手法が用いられる。これは、雄型(70)と雌型(71)を突き合わせて、発泡成形体となる発泡性樹脂の粒子をキャビティ(72)内に充填するが、この後、図4(b)に示すように、発泡性樹脂の粒子が漏れない程度に、雄型(70)を僅かに雌型(71)から離すことを意味する。雄型(70)を雌型(71)から離す距離(図4(b)のL’)をクラッキング量と称される。これは、キャビティ(72)内の一部の箇所にて、何かの拍子に発泡性樹脂の粒子が充填されていない部分が生じることがあり、かかる充填不足を解消する為の手法である。
【0044】
成形されたパッド部(20)には、必要に応じて、下面側に吸音材層(50)が接着又は溶着等により取り付ける。
なお、吸音材層(50)は、前述の通り、フェルト等の不織布からなる繊維材を例示できる。吸音材層(50)の厚さは、0.1〜20mmとすることが好適である。
【0045】
作製されたティビアパッド(10)は、車両の床面に吸音材層(50)が向くよう配置して使用することができる。本発明のティビアパッド(10)を配置することで、車両内部の騒音は、音通過孔(40)を通って音封止穴(30)に到達し、音封止穴(30)に面した吸音材層(50)に吸収される。なお、一部の音が吸音材層(50)で反射したとしても、反射した音は音封止穴(30)の内面に当たって減衰すると共に、音封止穴(30)の内面でさらに反射しても、再度吸音材層(50)に導かれて吸収される。
従って、本発明のティビアパッド(10)は、音封止穴(30)と吸音材層(50)により、音通過孔(40)から侵入する車両内部の騒音を効果的に封止することができ、吸音性能を可及的に高めることができる。
【0046】
また、エンジン音や車両外部からティビアパッド(10)を通過して車両内部に侵入する騒音は、吸音材層(50)で吸収されるが、吸音材層(50)を通過しても、音封止穴(30)の内面に当たって減衰すると共に、音封止穴(30)の内面でさらに反射し再度吸音材層(50)に導かれて吸収される。
従って、本発明のティビアパッド(10)は、音封止穴(30)と吸音材層(50)により、車両外部からの騒音を効果的に封止することができるから、吸音性能を可及的に高めることができる。
【0047】
<実施例>
以下の形状のテストピース(60)(実施例1〜実施例10)を作製し、吸音試験を実施した。
テストピース(60)は、図5及び表1に示すように、直径100mmの有底円筒状の形状であり、厚さ(T)が30〜50mm、下面側に形成される音封止穴(30)の容積(V)を10.0〜201.0cmとした。また、音封止穴(30)に形成される音通過孔(40)は、音封止穴(30)の横断面に対する開口率が1.2〜12.0%となるように形成した。
【0048】
テストピース(60)の成形は、発泡樹脂ビーズを予備発泡させて、図4を用いて説明した金型(7)にクラッキング量(L’)0.003〜0.008mmで充填し、蒸気圧力0.06〜1MPaの蒸気を使用して、上述した金型加熱2秒、一方加熱8秒、逆一方加熱6秒、両面加熱10秒を行ない、水冷した後、金型(7)から取り出すことにより行なった。
【0049】
表1中、実施例1〜実施例10で示すテストピース用パッド部(20)を得、実施例4については、厚さ6mmのフェルト製吸音材層(50)を接着した。
【0050】
【表1】

【0051】
<吸音試験>
作製されたテストピース(60)について、ISO 10534-2(Determination of Sound Absorption coefficient and Impedance in impedance tubes Part 2: Transfer-function method)及びASTM E 1050に準拠した吸音試験を行った。
すなわち、垂直入射吸音率測定システム4206型音響インピーダンス管(ブリューエル アンド ケアー社製)及び計測ソフトウェアMS1021型(松下テクノトレーディング社製)を用い、測定条件は温度20℃、テストピースサイズ直径100mm、テストピースの背面空気層なしで周波数領域50Hz以上1600Hz以下の範囲を測定した。
【0052】
結果を表1に示している。表1を参照すると、何れもすぐれたピーク吸音率を有していることがわかる。特に、音封止穴(30)の容積(V)が10.0cmを超えると、可及的にピーク吸音率が向上していることがわかる。すなわち、音封止穴(30)の容積(V)が10.0cm以下となると、音封止穴(30)内で十分に音を反射、吸収、減衰できないものと考えられる。
【0053】
また、音通過孔(40)の開口率が12.0%未満、望ましくは11.0%以下となることで、可及的にピーク吸音率が向上している。音通過孔(40)の開口率が12.0%以上となると、一旦音通過孔(40)を通って音封止穴(30)に侵入した音が再度音通過孔(40)から漏れ出しているためと考えられる。
【0054】
吸音材層(50)を設けた実施例4については、音通過孔(40)を通って音封止穴(30)に侵入した音が吸音材層(50)によって、より効果的に吸音できていることがわかる。勿論、他の実施例についても、吸音材層(50)を設けることで、同様に吸音効果を高めることができる。
【0055】
上記より、音封止穴(30)の容積(V)は、10.0cmを超えることが望ましいことがわかる。また、音通過孔(40)の開口率は、12%未満、望ましくは11%以下とすることが望ましいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、吸音性能にすぐれるティビアパッド等の車両用内装部品として好適である。
【符号の説明】
【0057】
(10) ティビアパッド
(20) パッド部
(24) リブ
(30) 音封止穴
(40) 音通過孔
(50) 吸音材層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の床面に載置される車両用内装部品であって、
発泡樹脂材料から構成され、車体側となる下面に有底の音封止穴を少なくとも1つ以上凹設し、該音封止穴から車両内部側となる上面に通じ、前記音封止穴の横断面に対する開口率が1〜11%である音通過孔を貫通開設してなるパッド部を具えることを特徴とする車両用内装部品。
【請求項2】
パッド部の下面を覆うように吸音材層が配置される請求項1に記載の車両用内装部品。
【請求項3】
音封止穴は、幅及び長さが25mm以上120mm以下である請求項1又は請求項2に記載の車両用内装部品。
【請求項4】
音封止穴は複数形成され、音封止穴間は幅10mm以上のリブで仕切られる請求項1乃至請求項3の何れかに記載の車両用内装部品。
【請求項5】
音封止穴は、深さが20mm以上40mm以下である請求項1乃至請求項4の何れかに記載の車両用内装部品。
【請求項6】
音封止穴は、容積が12cm以上1570cm以下である請求項1乃至請求項5の何れかに記載の車両用内装部品。
【請求項7】
音封止穴は、下面側に向けて拡径する請求項1乃至請求項6の何れかに記載の車両用内装部品。
【請求項8】
音通過孔は、パッド部の上面に対する開口率が3〜8%である請求項1乃至請求項7の何れかに記載の車両用内装部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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