説明

車両用冷却収納装置

【課題】製造コストが著しく増大する事態を抑えて断熱性を向上させること。
【解決手段】車両に搭載され、冷却ユニットから供給される冷却空気によって内部を所望の冷却温度に維持するようにした車両用冷却収納装置において、車両の発熱源となるエンジンE、トランスミッションT、圧縮機32に対向する部位には、これら発熱源の周囲に対向する部位に構成した断熱部110よりも熱伝達率が小さい真空断熱材121によって高断熱部120を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される冷却収納装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
国内外の食品流通分野では、商品である食品を低温状態で流通させる手法が主流となっている。この低温流通手段の実現には、流通拠点に設けられた保冷倉庫の間や保冷倉庫から各店舗の保冷ケースに商品を運搬するための車両用冷却収納装置が不可欠となる。
【0003】
この種の車両用冷却収納装置では、周囲を断熱材で覆うことによって商品収納域を構成し、冷却ユニットによって温度調整した冷却空気を商品収納域の内部に供給することにより、商品収納域に収納した商品を低温状態に維持するようにしている。
【0004】
ここで、エンジンやトランスミッション等、運転時に発熱源となるものが近接配置されている。従って、冷却エネルギーを増大することなく同じ冷却温度状態に維持するには、断熱性を向上させる必要がある。
【0005】
断熱性を高めるには、その部分に配設する断熱材の板厚を大きくすれば良い。しかしながら、車両に搭載できるコンテナには外形寸法に制限がある。従って、断熱材の板厚を大きく確保するには、商品収納域の寸法を減少させざるを得ず、商品の収納能力に大きな影響を与えることになる。このため、従来では、真空断熱材等、熱伝導率が小さく、大きな断熱効果を期待することのできる断熱材を適用することによって断熱性の向上を図るようにしたものが提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−295970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、真空断熱材等、熱伝導率の小さい断熱材はきわめて高価である。この結果、車両用冷却収納装置を製造する際のコストが著しく増大することになる。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みて、製造コストが著しく増大する事態を抑えて断熱性を向上させることのできる車両用冷却収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る車両用冷却収納装置は、車両に搭載され、冷却ユニットから供給される冷却空気によって内部を所望の冷却温度に維持するようにした車両用冷却収納装置において、車両の発熱源に対向する部位には、発熱源の周囲に対向する部位に構成した断熱部よりも熱伝達率が小さい高断熱部を構成したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上述した車両用冷却収納装置において、車両のエンジン及びトランスミッションに対向する部位に前記高断熱部を構成したことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上述した車両用冷却収納装置において、真空断熱材を配設することによって前記高断熱部を構成したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上述した車両用冷却収納装置において、前記高断熱部を構成する真空断熱材を着脱可能に配設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車両の発熱源に対向する部位にのみ、周囲よりも熱伝達率の小さい高断熱部を構成するようにしている。このため、製造コストが著しく増大する事態を招来することなく断熱性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施の形態である冷却収納装置を適用した車両の要部を概念的に示す側面図である。
【図2】図2は、図1に示した車両の要部を示す平面図である。
【図3】図3は、図1中のAで示した断熱部の拡大図である。
【図4−1】図4−1は、図1のBで示した高断熱部の拡大断面図である。
【図4−2】図4−2は、図1のBで示した高断熱部の拡大分解断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る車両用冷却収納装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1及び図2は、本発明の実施の形態である冷却収納装置を適用した車両を示したものである。ここで例示する車両は、車体フレームFの前方部に走行用のエンジンE及びトランスミッションTが搭載され、エンジンEの上方部にキャビンCが設けられたキャブオーバーと称されるタイプのトラックである。図には明示していないが、キャビンCの内部には、運転者が着座する運転席や車両を操作するための操作部が設けられている。
【0017】
この車両には、車体フレームFにおいてキャビンCよりも後方となる部位に冷却収納装置1のコンテナ10が搭載されている。コンテナ10は、上壁11a、下壁11b、前壁11c、後壁11d、左壁11e、右壁11fを備えた直方体状を成すもので、その内部に商品収納域20を構成している。コンテナ10の前壁11cには、キャビンCよりも上方となる位置にユニット筐体30が設けてある。ユニット筐体30は、吹出口17を通じてコンテナ10の内部に連通した箱体であり、内部に蒸発器31を収容している。蒸発器31は、車体フレームFの中央部に搭載した圧縮機32と、図示していない凝縮器及び膨張機と間に冷媒が循環供給される冷却ユニットを構成するものである。この蒸発器31は、ユニット筐体30を介してコンテナ10の内部に供給される空気の通過領域に配設してあり、通過する空気を所望の冷却温度まで冷却する機能を有している。
【0018】
コンテナ10を構成する上壁11a、下壁11b、前壁11c、後壁11d、左壁11e、右壁11fには、それぞれ図3に代表して示すように、断熱部110が構成してある。断熱部110は、コンテナ10の外壁面及び内壁面を構成する2枚の金属板111,112の間に、合板113を介してスラブ状に成形した発泡ウレタンや発泡スチレン等の断熱材114を配設することによって構成した断熱部分である。断熱材114の熱伝導率は、20mw/mk程度となるように構成してある。
【0019】
さらに、コンテナ10の前壁11c及び下壁11bにおいてエンジンE、トランスミッションT、圧縮機32に対向する部位には、それぞれ高断熱部120が構成してある。高断熱部120は、上述した断熱部110よりも高い断熱性を有した断熱部分である。高断熱部120としては、図4−1及び図4−2に示すように、2枚の金属板111,112の間の断熱材114に収容域114aを構成し、この収容域114aに高断熱材、例えば真空断熱材121を配設することによって構成してある。真空断熱材121は、従前と同様の構成であり、熱伝導率が3mw/mk程度で、例えばアルミニウムを蒸着してガスの透過を抑制したフィルム状の袋体に、芯材となる多孔質体を内包して内部を真空引きし、その後に袋体の開口を封止して構成したものを適用することができる。
【0020】
真空断熱材121の周囲には、熱伝導率の小さい合成樹脂材、あるいはセラミック材から成る支持部材122を配設している。この支持部材122は、2枚の金属板111,112の間に介在し、金属板111,112に外力が加えられた場合にも、その外力が真空断熱材121に影響を及ぼさないように支持するためのものである。支持部材122と真空断熱材121との間や、金属板111,112と真空断熱材121との間には、上述した発泡ウレタンや発泡スチレン等の断熱材114を充填することによって隙間が残らないようにしてある。
【0021】
コンテナ10の内壁面を構成する金属板112は、高断熱部120に対応する部位が周囲とは別体の蓋体112aとして構成してあり、図示せぬネジ等の締結手段を介して取り外し可能に固定してある。この蓋体112aを取り外せば、収容域114aが外部に露出されることになり、真空断熱材121を交換することが可能となる。
【0022】
上記のように構成した冷却収納装置1では、冷却ユニットを駆動すれば、蒸発器31を通過して冷却された冷却空気が、コンテナ10の内部に構成した商品収納域20に供給される。従って、商品収納域20に収納した商品を冷却した状態に維持することができ、例えば、保冷倉庫が設けられた流通拠点の間に冷凍食品を−20℃の温度を維持して運搬することが可能となる。
【0023】
さらに、上述の冷却収納装置1によれば、コンテナ10においてエンジンE、トランスミッションT、圧縮機32といった運転時に発熱源となるものに対向する部位に高断熱部120を構成しているため、これら発熱源から放出される熱がコンテナ10の内部に侵入する事態を大きく抑制することができる。従って、冷却ユニットを運転するためのエネルギーを大きく増大せずとも、収納商品に温度上昇等の問題を招来する恐れがなくなり、省エネルギーに寄与する。
【0024】
しかも、高断熱部120としては、板厚を増大することなく熱伝導率が小さい真空断熱材121を適用しているため、コンテナ10の収納能力に影響を与えることもない。加えて、エンジンE、トランスミッションT、圧縮機32と行った発熱源の周囲に対向する部位には、比較的安価な断熱材114によって断熱部110を構成しているため、適用する車両の製造コストが著しく増大する事態を招来することもない。
【0025】
尚、高断熱部120を構成する真空断熱材121に対して、周囲の断熱部110や車両自体は、より長期に渡って所望の機能を果たすことが可能である。従って、真空断熱材121が寿命に達した時点でこれを交換しさえすれば、初期の断熱機能を回復した車両用冷却収納装置1として長期の使用が可能となる。
【符号の説明】
【0026】
1 車両用冷却収納装置
10 コンテナ
11a 上壁
11b 下壁
11c 前壁
11d 後壁
11e 左壁
11f 右壁
17 吹出口
20 商品収納域
30 ユニット筐体
31 蒸発器
32 圧縮機
110 断熱部
111,112 金属板
112a 蓋体
113 合板
114 断熱材
114a 収容域
120 高断熱部
121 真空断熱材
122 支持部材
E エンジン
T トランスミッション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、冷却ユニットから供給される冷却空気によって内部を所望の冷却温度に維持するようにした車両用冷却収納装置において、
車両の発熱源に対向する部位には、発熱源の周囲に対向する部位に構成した断熱部よりも熱伝達率が小さい高断熱部を構成したことを特徴とする車両用冷却収納装置。
【請求項2】
車両のエンジン及びトランスミッションに対向する部位に前記高断熱部を構成したことを特徴とする請求項1に記載の車両用冷却収納装置。
【請求項3】
真空断熱材を配設することによって前記高断熱部を構成したことを特徴とする請求項1に記載の車両用冷却収納装置。
【請求項4】
前記高断熱部を構成する真空断熱材を着脱可能に配設したことを特徴とする請求項3に記載の車両用冷却収納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【公開番号】特開2013−113545(P2013−113545A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262166(P2011−262166)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】