説明

車両用冷暖房装置に用いられる制御弁

【課題】複数の蒸発器が機能する運転状態を有する車両用冷暖房装置において、その除湿性能を安定に確保する。
【解決手段】車両用冷暖房装置は、第1の蒸発器および第2の蒸発器を含む冷媒循環通路を備え、第1の蒸発器の下流側に設けられた制御弁50の上流側圧力と下流側圧力との差圧を調整することにより、第1の蒸発器の蒸発圧力を第2の蒸発器の蒸発圧力よりも高くする運転状態を実行可能な車両用冷暖房装置であって、制御弁50として、その上流側圧力と下流側圧力との差圧により開弁方向の力が作用する弁体118と、通電量に応じて弁体に作用する閉弁方向の力を変化させる駆動部とを有する電気駆動弁が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用冷暖房装置および制御弁に関し、特に車両用冷暖房装置の蒸発器の下流側に設けられるのに好適な制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関を搭載した車両においてはエンジンの燃焼効率が向上したこともあり、熱源として利用してきた冷却水が暖房に必要な温度にまで上昇し難くなっている。一方、内燃機関と電動機を併用したハイブリッド車両においては内燃機関の稼働率が低いため、そのような冷却水の利用がさらに難しい。電気自動車に至っては内燃機関による熱源そのものがない。このため、冷房のみならず暖房にも冷媒を用いたサイクル運転を行い、車室内を除湿暖房可能なヒートポンプ式の車両用冷暖房装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような車両用冷暖房装置は、圧縮機、室外熱交換器、蒸発器、室内熱交換器等を含む冷凍サイクルを有し、暖房運転時と冷房運転時とで室外熱交換器の機能が切り替えられる。暖房運転時においては室外熱交換器が蒸発器として機能する。その際、冷凍サイクルを冷媒が循環する過程で室内熱交換器が放熱し、その熱により車室内の空気が加熱される。一方、冷房運転時においては室外熱交換器が凝縮器として機能する。その際、室外熱交換器にて凝縮された冷媒が蒸発器にて蒸発し、その蒸発潜熱により車室内の空気が冷却される。その際、除湿も行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−240266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このように冷凍サイクルの運転状態によって複数の蒸発器が機能する場合、一方の蒸発器による熱吸収と他方の蒸発器による除湿とを適正に行うことで、その除湿性能を確保する必要がある。この点につき、一方の蒸発器の蒸発圧力を他方の蒸発器の蒸発圧力よりも高くすることで、その蒸発圧力の差圧により各蒸発器における冷媒の蒸発量の比率を調整することが考えられるが、安定した制御状態を保つためには、その蒸発圧力の差圧を安定に維持する必要がある。
【0006】
本発明の目的は、複数の蒸発器が機能する運転状態を有する車両用冷暖房装置において、その除湿性能を安定に確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用冷暖房装置は、第1の蒸発器および第2の蒸発器を含む冷媒循環通路を備え、第1の蒸発器の下流側に設けられた制御弁の上流側圧力と下流側圧力との差圧を調整することにより、第1の蒸発器の蒸発圧力を第2の蒸発器の蒸発圧力よりも高くする運転状態を実行可能な車両用冷暖房装置であって、制御弁として、その上流側圧力と下流側圧力との差圧により開弁方向の力が作用する弁体と、通電により前記弁体に閉弁方向の力を作用させる駆動部とを有する電気駆動弁が設けられる。
【0008】
この態様によると、第1の蒸発器の下流側に設けられた制御弁へ通電することにより、その上流側圧力と下流側圧力との差圧を調整することができ、それにより第1の蒸発器の蒸発圧力と第2の蒸発器の蒸発圧力との差圧を調整することができる。その結果、その制御弁への通電により各蒸発器における冷媒の蒸発量の比率を調整でき、車両用冷暖房装置における除湿性能を良好に保つことができる。また、制御弁への通電をオフにするとたとえその前後差圧が小さくても速やかに全開状態となるため、制御弁における圧力損失を抑制することができ、安定した冷媒循環を維持することができる。
【0009】
本発明の別の態様は、制御弁である。この制御弁は、第1の蒸発器および第2の蒸発器を含む車両用冷暖房装置における第1の蒸発器の下流側に設けられ、その上流側圧力と下流側圧力との差圧を調整することにより、第1の蒸発器の蒸発圧力を第2の蒸発器の蒸発圧力よりも高くする制御弁であって、上流側圧力と下流側圧力との差圧により開弁方向の力が作用する弁体と、通電により前記弁体に閉弁方向の力を作用させる駆動部と、を備える。
【0010】
この態様の制御弁を車両用冷暖房装置に適用すれば、その制御弁へ通電することにより、その上流側圧力と下流側圧力との差圧を調整することができ、それにより第1の蒸発器の蒸発圧力と第2の蒸発器の蒸発圧力との差圧を調整することができる。その結果、その制御弁への通電により各蒸発器における冷媒の蒸発量の比率を調整でき、車両用冷暖房装置における除湿性能を良好に保つことができる。また、制御弁への通電をオフにするとたとえその前後差圧が小さくても速やかに全開状態となるため、制御弁における圧力損失を抑制することができ、安定した冷媒循環を維持することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の蒸発器が機能する運転状態を有する車両用冷暖房装置において、その除湿性能を安定に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態に係る車両用冷暖房装置の概略構成および動作を表す図である。
【図2】第1実施形態に係る制御弁の具体的構成および動作を表す断面図である。
【図3】第1実施形態に係る制御弁の具体的構成および動作を表す断面図である。
【図4】第2実施形態に係る制御弁の具体的構成を表す断面図である。
【図5】第3実施形態に係る制御弁の具体的構成および動作を表す断面図である。
【図6】第3実施形態に係る制御弁の具体的構成および動作を表す断面図である。
【図7】第4実施形態に係る制御弁の具体的構成および動作を表す断面図である。
【図8】第4実施形態に係る制御弁の具体的構成および動作を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る車両用冷暖房装置の概略構成および動作を表す図である。同図下段にシステム構成が示され、同図上段には冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図が示されている。本実施形態は、本発明の車両用冷暖房装置を電気自動車の冷暖房装置として具体化したものである。
【0014】
車両用冷暖房装置1は、圧縮機2、室内凝縮器3、室外熱交換器5、蒸発器7およびアキュムレータ8を配管にて接続した冷凍サイクル(冷媒循環回路)を備える。車両用冷暖房装置1は、冷媒としての代替フロン(HFO−1234yf)が冷凍サイクル内を状態変化しながら循環する過程で、その冷媒の熱を利用して車室内の空調を行うヒートポンプ式の冷暖房装置として構成されている。
【0015】
車両用冷暖房装置1は、また、冷房運転時と暖房運転時とで複数の冷媒循環通路を切り替えるように運転される。そして、この冷凍サイクルは、室内凝縮器3と室外熱交換器5とが凝縮器として並列に動作可能に構成され、また、蒸発器7と室外熱交換器5とが蒸発器として並列に動作可能に構成されている。
【0016】
具体的には、圧縮機2の吐出室につながる通路が分岐し、その一方である第1通路21が室内凝縮器3の入口につながり、他方である第2通路22が室外熱交換器5の一方の出入口につながっている。室内凝縮器3の出口につながる第3通路23は、その下流側で分岐し、その一方である第1分岐通路26が第4通路24を介して蒸発器7につながり、他方である第2分岐通路27が第5通路25を介して室外熱交換器5の他方の出入口につながっている。
【0017】
第4通路24と第5通路25とは、接続通路28により接続されている。また、第2通路22の中間部においてバイパス通路29が分岐し、アキュムレータ8ひいては圧縮機2につながっている。さらに、蒸発器7の出口につながる戻り通路30が、バイパス通路29と第2制御弁32(後述する)の下流側にて接続され、アキュムレータ8ひいては圧縮機2につながっている。
【0018】
圧縮機2は、ハウジング内にモータと圧縮機構を収容する電動圧縮機として構成され、図示しないバッテリからの供給電流により駆動され、モータの回転数に応じて冷媒の吐出容量が変化する。
【0019】
室内凝縮器3は、車室内に設けられ、室外熱交換器5とは別に冷媒を放熱させる補助凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧の冷媒が室内凝縮器3を通過する際に放熱する。車室内に導入された空気は、室内凝縮器3を通過する過程で温められる。
【0020】
室外熱交換器5は、車室外に配置され、冷房運転時に内部を通過する冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時には内部を通過する冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する。室外熱交換器5が室内蒸発器として機能する際には、膨張装置(後述する第2比例弁42)の通過により低温・低圧となった冷媒が、室外熱交換器5を通過する際に蒸発する。
【0021】
蒸発器7は、車室内に配置され、内部を通過する冷媒を蒸発させる室内蒸発器として機能する。すなわち、膨張装置(後述する第1比例弁41)の通過により低温・低圧となった冷媒は、蒸発器7を通過する際に蒸発する。車室内に導入された空気は、その蒸発潜熱によって冷却され、除湿される。このとき冷却・除湿された空気は、室内凝縮器3の通過過程で加熱される。
【0022】
アキュムレータ8は、蒸発器から送出された冷媒を気液分離して溜めておく装置であり、液相部と気相部とを有する。このため、仮に蒸発器7から想定以上の液冷媒が導出されたとしても、その液冷媒を液相部に溜めおくことができ、気相部の冷媒を圧縮機2に導出することができる。
【0023】
室内凝縮器3と室外熱交換器5との間には、第1制御弁31および第2制御弁32が設けられている。第1制御弁31は、第2通路22を開閉する弁部と、その弁部を駆動するソレノイドを備え、供給電流の有無によって弁部を開閉することにより第2通路22の開度を調整する。本実施形態では、第1制御弁31として、通電有無によって開閉する開閉弁(オン/オフ弁)が用いられる。一方、第2制御弁32は、バイパス通路29を開閉する弁部と、その弁部を駆動するソレノイドを備え、電流供給によって弁部の開度を調整することによりバイパス通路29の開度を調整する。なお、本実施形態では、第2制御弁32として通電有無によって開閉する開閉弁(オン/オフ弁)が用いられ、その開弁頻度により一定時間あたりの開弁時間を調整することにより開度を調整する。変形例においては、弁部の開口面積そのものを調整可能な比例弁や差圧弁として構成してもよい。
【0024】
室内凝縮器3の出口と蒸発器7の入口との間には第1比例弁41が設けられ、室内凝縮器3の出口と室外熱交換器5の出入口との間には第2比例弁42が設けられている。第1比例弁41は、第1分岐通路26を開閉する弁部と、その弁部を駆動するアクチュエータを備える。第2比例弁42は、第2分岐通路27を開閉する第1弁と、接続通路28を開閉する第2弁と、これら第1弁および第2弁を駆動する共通のアクチュエータを備える。
【0025】
さらに、蒸発器7の出口とアキュムレータ8の入口との間には、第3制御弁33が設けられている。第3制御弁33は、戻り通路30を開閉する弁部と、その弁部を駆動するソレノイドを備え、電流供給によって弁部の開度を調整することにより戻り通路30の開度を調整する。なお、本実施形態では、第3制御弁33として通電有無によって開閉する開閉弁(オン/オフ弁)が用いられ、その開弁頻度により一定時間あたりの開弁時間を調整することにより開度を調整する。変形例においては、弁部の開口面積そのものを調整可能な比例弁や差圧弁として構成してもよい。
【0026】
以上のように構成された車両用冷暖房装置1は、図示しない制御部により制御される。制御部は、車両の乗員によりセットされた室温を実現するために各アクチュエータの制御量を演算し、各アクチュエータの駆動回路に制御信号を出力する。制御部は、車室内外の温度、蒸発器7の吹き出し空気温度等、各種センサにて検出された所定の外部情報に基づいて各制御弁の制御量(弁開度や開閉状態)を決定し、その制御量が実現されるようソレノイドに電流を供給する。制御部は、第2制御弁32および第3制御弁33への電流供給に際してそのオン・オフのデューティ比を設定し、そのデューティ比にそって各制御弁への通電を制御する。なお、変形例においては各制御弁のアクチュエータとしてステッピングモータ等の電動機を設けてもよく、その場合には、制御部は、各制御弁の制御量が実現されるようステッピングモータに制御パルス信号を出力する。
【0027】
次に、本実施形態の冷凍サイクルの主要動作について説明する。図1には、車両用冷暖房装置の特定暖房運転時の状態が例示されている。ここでいう「特定暖房運転」は、暖房運転において特に除湿の機能を高めた運転状態である。同図上段のモリエル線図は、その横軸がエンタルピーを表し、縦軸が各種圧力を表している。図中の太線および矢印が冷媒の流れを示し、符号a〜hはモリエル線図のそれと対応している。また、図中の「×」は冷媒の流れが遮断されていることを示している。
【0028】
図示のように、特定暖房運転時においては、第1制御弁31が閉弁され、第2制御弁32および第3制御弁33が開弁される。一方、第1比例弁41が開弁される。また、第2比例弁42の第1弁が開弁され、第2弁が閉弁される。このとき、室外熱交換器5は室外蒸発器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、一方で室内凝縮器3、第1比例弁41、蒸発器7、第3制御弁33、アキュムレータ8を経由するように冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻り、他方で室内凝縮器3、第2比例弁42の第1弁、室外熱交換器5、第2制御弁32、アキュムレータ8を経由するように冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻る。
【0029】
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮される(b点→c点)。そして、第1比例弁41にて断熱膨張された冷温・低圧の気液二相冷媒となり(c点→f点)、蒸発器7にて蒸発する(f点→g点)。一方、第2比例弁42の第1弁にて断熱膨張された冷温・低圧の気液二相冷媒は、室外熱交換器5にて蒸発する(d点→e点)。このとき、室外熱交換器5および蒸発器7の両蒸発器にて蒸発される比率が、第1比例弁41と第2比例弁42の第1弁の各開度の設定により制御される。それにより、蒸発器7での蒸発量を確保でき、除湿機能を確保することができる。また、潤滑オイルを蒸発器7に滞留させることなく圧縮機2へ戻すことができる。
【0030】
このとき、制御部は、室外熱交換器5による熱吸収と蒸発器7による除湿とを適正に行うべく、室外熱交換器5における冷媒の蒸発量と蒸発器7における冷媒の蒸発量との比率を適正に調整する。そのために、例えば第3制御弁33を全開状態とし、室外熱交換器5の蒸発圧力Poと蒸発器7の蒸発圧力Peとの差圧ΔP=Po−Peが適正となるよう第2制御弁32を開閉制御する。このとき、蒸発圧力Peは、圧縮機2の吸入圧力Psに実質的に等しくなる。
【0031】
すなわち、差圧ΔPが大きくなると、室外熱交換器5における蒸発量が相対的に小さくなる(蒸発器7における蒸発量が相対的に大きくなる)。逆に、差圧ΔPが小さくなると、室外熱交換器5における蒸発量が相対的に大きくなる(蒸発器7における蒸発量が相対的に小さくなる)。制御部は、その差圧ΔPが適正となるように制御することで、特定暖房運転時における除湿機能を確保する。なお、本実施形態では、室外熱交換器5の蒸発圧力Poを室外熱交換器5の入口側の温度Toを検出することで特定する。また、蒸発器7の出口の圧力Peを蒸発器7の入口側の温度Teを検出することで特定する。
【0032】
なお、運転状態によっては室外熱交換器5の蒸発圧力Poよりも蒸発器7の蒸発圧力Peを高く設定する場合もある。その場合には、第2制御弁32を全開状態とし、蒸発器7の蒸発圧力Peと室外熱交換器5の蒸発圧力Poとの差圧ΔP=Pe−Poが適正となるよう第3制御弁33を開閉制御する。このとき、蒸発圧力Poは、圧縮機2の吸入圧力Psに実質的に等しくなる。
【0033】
本実施形態では第2制御弁32および第3制御弁33をソレノイドの非通電時に開弁状態となる常開型の電磁弁として構成している。このため、以上のような制御を実行する場合、第2制御弁32および第3制御弁33は、ソレノイドの非通電時には全開状態となって流動抵抗を生じさせない構成とするのが望ましい。本実施形態では、第2制御弁32および第3制御弁33を、そのような全開状態を確保可能な構造を有する電磁弁として構成している。
【0034】
次に、本実施形態の主要部である第2制御弁32および第3制御弁33の具体的構成について説明する。図2および図3は、第1実施形態に係る制御弁の具体的構成および動作を表す断面図である。なお、本実施形態では第2制御弁32と第3制御弁33とが同様の構成を有するため、これらを制御弁50として説明する。
【0035】
図2に示すように、制御弁50は、内部に弁機構を収容した弁本体102と、その弁機構を駆動するソレノイド104とを組み付けて構成される。弁本体102におけるボディ105の下端中央には上流側通路につながる導入ポート110が設けられ、側部には下流側通路につながる導出ポート112が設けられている。導入ポート110と導出ポート112とをつなぐ内部通路には、弁孔114が設けられ、その下流側開口端部に弁座116が形成されている。
【0036】
弁孔114の下流側の圧力室には、有底円筒状の弁体118が配設されている。弁体118の下面から下方に複数の脚部が延設されている。その脚部が弁孔114に摺動可能に内挿されることで、弁体118の軸線方向への安定した開閉動作が担保されている。弁体118とボディ105との間には、弁体118を開弁方向に付勢するスプリング120が介装されている。
【0037】
一方、ソレノイド104は、ボディ105の上端開口部を封止するように取り付けられている。ソレノイド104は、ボディ105を封止するように連結されたコア130と、コア130の上半部を固定するように収容する有底円筒状のスリーブ132と、スリーブ132内でコア130に軸線方向に対向配置されたプランジャ134と、スリーブ132に外挿嵌合されたボビン136と、ボビン136に巻回された電磁コイル138と、電磁コイル138を外部から覆うようにコア130に組み付けられたケース140とを含む。
【0038】
プランジャ134の下半部には、長尺円筒状の作動ロッド142の上端部が圧入されている。作動ロッド142は、プランジャ134から下方に延出してコア130を貫通し、その先端が弁体118の底部に当接している。作動ロッド142は、プランジャ134および弁体118と一体に動作する。プランジャ134は、円筒状をなし、その軸線方向に沿って連通路144が形成されている。連通路144は、スリーブ132内の底部側に形成される背圧室146と連通する。
【0039】
また、コア130の下面中央には、円ボス状のガイド部148が下方に延設されており、弁体118がガイド部148に摺動可能に外挿されている。すなわち、弁体118は、その上半部がガイド部148にガイドされ、下半部が弁孔114にガイドされつつ安定に支持されている。このような構成により、弁体118とコア130との間に背圧室150が区画形成される。弁体118の底部には、背圧室150と上流側の圧力室とを連通させる連通孔119が形成されている。このため、図3に示すような制御弁50の制御時には背圧室150に上流側圧力Pinが満たされるようになる。
【0040】
以上のように構成された制御弁50は、図2に示すようにソレノイド104がオフにされた状態(非通電状態)では、コア130とプランジャ134との間に吸引力が作用しないため、スプリング120によって開弁方向に付勢されて全開状態となる。一方、図3に示すようにソレノイド104がオンにされた状態(通電状態)では、コア130とプランジャ134との間に吸引力が作用するため、そのソレノイド力が作動ロッド142を介して弁体118に伝達される。その結果、弁体118が閉弁方向に動作する。
【0041】
本実施形態では、背圧室150に上流側圧力Pinを導入することにより、弁体118において上流側圧力Pinと下流側圧力Poutとの差圧(Pin−Pout)が開弁方向に作用する面積(A−B)を、弁孔114の断面積Aよりも小さくしている。それにより、比較的小さなソレノイド力で弁体118を閉弁方向に駆動することが可能となっている。一方、その差圧(Pin−Pout)が開弁方向に作用するため、ソレノイド104がオンの状態からオフにされると、弁体118が速やかに開弁方向に動作するようになる。なお、変形例においては、ガイド部148および連通孔119をなくすことにより、背圧室150が形成されない構成としてもよい。
本実施形態においては、制御弁50のソレノイド104の通電状態(オン)と非通電状態(オフ)との時間の比率、つまりオン・オフのデューティ比を調整することにより、その前後差圧の平均値である平均差圧を適切な値に制御することができる。
【0042】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用冷暖房装置は、第2制御弁32および第3制御弁33の構成が第1実施形態と異なるが、その他の部分については共通する。このため、第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図4は、第2実施形態に係る制御弁の具体的構成を表す断面図である。なお、本実施形態においても第2制御弁32と第3制御弁33とが同様の構成を有するため、これらを制御弁250として説明する。
【0043】
制御弁250においては、ボディ105の側部に上流側通路につながる導入ポート110が設けられ、下端中央に下流側通路につながる導出ポート112が設けられている。そして、弁体218が弁孔114の上流側の圧力室に配設されている。弁体218は、その内径Bが弁孔114の内径Aよりも大きくなるよう、第1実施形態の弁体118よりも大きく構成されている。それに伴い、コア130から下方に延出するガイド部148の外径も大きく形成されている。弁体218の底部には、背圧室150と下流側の圧力室とを連通させる連通孔220が形成されている。このため、制御弁250の制御時には背圧室150に下流側圧力Poutが満たされるようになる。
【0044】
以上のように構成された制御弁250は、ソレノイド104がオフにされた状態(非通電状態)では、スプリング120によって開弁方向に付勢されて全開状態となる。一方、ソレノイド104がオンにされた状態(通電状態)では、ソレノイド力が作動ロッド142を介して弁体218に伝達され、弁体218が閉弁方向に動作する。
【0045】
本実施形態では上述のように、背圧室150に下流側圧力Poutを導入することにより、弁体218において上流側圧力Pinと下流側圧力Poutとの差圧(Pin−Pout)が開弁方向に作用する面積(B−A)を、弁孔114の断面積Aよりも小さくしている。それにより、比較的小さなソレノイド力で弁体218を閉弁方向に駆動することが可能となっている。一方、その差圧(Pin−Pout)が開弁方向に作用するため、ソレノイド104がオンの状態からオフにされると、弁体218が速やかに開弁方向に動作するようになる。 本実施形態においても、制御弁250のソレノイド104のオン・オフのデューティ比を調整することにより、その前後差圧の平均値である平均差圧を適切な値に制御することができる。
【0046】
[第3実施形態]
本実施形態に係る車両用冷暖房装置は、第2制御弁32および第3制御弁33の構成が第1実施形態と異なるが、その他の部分については共通する。このため、第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図5および図6は、第3実施形態に係る制御弁の具体的構成および動作を表す断面図である。なお、本実施形態においても第2制御弁32と第3制御弁33とが同様の構成を有するため、これらを制御弁350として説明する。
【0047】
制御弁350においては、弁体118の内方に段付円柱状の伝達ロッド340(「伝達部材」に該当する)が設けられている。伝達ロッド340は、その下端部が弁体118の中央を貫通し、弁体118に対して軸線方向に相対変位可能となっている。一方、伝達ロッド340の下端部には係止リング342が嵌着されており、伝達ロッド340の軸線方向の相対変位が規制されている。伝達ロッド340の上端部中央には凹部が形成され、作動ロッド142の下端部が挿通されるようにして連結されている。
【0048】
伝達ロッド340の上端部には、半径方向外向きに延出するフランジ部が設けられ、そのフランジ部と弁体118の底部との間に弁体118を閉弁方向に付勢するスプリング344が介装されている。ソレノイド104がオンにされることで伝達ロッド340が下死点に変位することでスプリング344による設定荷重が負荷される。そして、スプリング344とスプリング120の荷重のバランスにより差圧弁としての設定差圧が決まる。すなわち、制御弁350は、上流側圧力Pinと下流側圧力Poutとの差圧(Pin−Pout)がスプリング344とスプリング120とにより設定された設定差圧となるよう弁体118が動作する差圧弁として機能する。
【0049】
すなわち、制御弁350は、図5に示すようにソレノイド104がオフにされた状態(非通電状態)では、スプリング120によって開弁方向に付勢されて全開状態となる。一方、図6に示すようにソレノイド104がオンにされた状態(通電状態)では、ソレノイド力が作動ロッド142を介して伝達ロッド340に伝達され、伝達ロッド340が下死点に変位する。それにより、上流側圧力Pinと下流側圧力Poutとの差圧(Pin−Pout)が設定差圧となるよう弁体118が動作するようになる。すなわち、伝達ロッド340と弁体118とが相対変位可能な構成であることから、弁体118は、スプリング120による開弁方向の力、スプリング344による閉弁方向の力、および差圧(Pin−Pout)による開弁方向の力がバランスする位置に保持される。一方、ソレノイド104がオンの状態からオフにされると、ソレノイド104による閉弁方向の力が作用しなくなるため、スプリング120の付勢力により弁体118が速やかに開弁方向に動作する。
なお、本実施形態においては、制御弁350のソレノイド104の通電状態(オン)と非通電状態(オフ)との時間の比率、つまりオン・オフのデューティ比を調整することにより、設定差圧を変化させることができる。
【0050】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第2制御弁32および第3制御弁33の構成が第1実施形態と異なるが、その他の部分については共通する。このため、第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図7および図8は、第4実施形態に係る制御弁の具体的構成および動作を表す断面図である。なお、本実施形態においても第2制御弁32と第3制御弁33とが同様の構成を有するため、これらを制御弁450として説明する。
【0051】
制御弁450は、アクチュエータとしてのモータユニット420により駆動される。ボディ105の上端開口部はモータユニット420のボディ430により封止されている。モータユニット420は、ロータ432とステータ434とを含むステッピングモータとして構成されている。ロータ432の下端部には弁作動体436が嵌合している。弁作動体436の外周面には雄ねじ部が形成され、ボディ430の下端部内面に形成された雌ねじ部と螺合する。このような構成により、弁作動体436は、モータユニット420の回転駆動力を受けて回転し、その回転力を並進力に変換する。
【0052】
ボディ430の下端面からはガイド部148が下方に延設されている。弁体418は、その上半部がガイド部148に内挿されるようにして摺動可能に支持されている。弁体418とボディ430との間には背圧室150が形成されている。背圧室150には、弁作動体436の下端面に当接するようにばね受け440が配設されている。ばね受け440と弁体418との間には、弁体418を閉弁方向に付勢するスプリング442が介装されている。弁体418の底部中央には、背圧室150と上流側の圧力室とを連通させる連通孔446が設けられている。
【0053】
このような構成により、弁作動体436は回転により軸線方向に変位し、ばね受け440およびスプリング442を介して弁体418を開閉方向に駆動する。制御部は、設定開度に応じた駆動ステップ数を演算し、ステータ434の励磁コイルに駆動電流(駆動パルス)を供給する。それによりロータ432が回転し、図8に示すように弁作動体436が回転駆動されて制御弁450の開度が設定開度に調整される。図7に示すように弁作動体436を上死点に変位させることで、弁体118を確実に全開状態とすることができる。
【0054】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0055】
上記実施形態では、図1の下段に示したように、蒸発器7の下流側と、室外熱交換器5(室外蒸発器として作用するとき)の下流側との双方に制御弁50(第2制御弁32,第3制御弁33)を設ける例を示したが、いずれかの蒸発器の下流側にのみ設けるようにしてもよい。例えば、蒸発器7の下流側に制御弁50を設け、室外熱交換器5(室外蒸発器として作用するとき)の下流側には制御弁50を設けない構成としてもよい。
【0056】
上記実施形態では、本発明の車両用冷暖房装置を電気自動車に適用した例を示したが、内燃機関を搭載した自動車や、内燃機関と電動機を同載したハイブリッド式の自動車に提供することが可能であることは言うまでもない。上記実施形態では、圧縮機2として電動圧縮機を採用した例を示したが、エンジンの回転を利用して容量可変を行う可変容量圧縮機を採用することもできる。
【符号の説明】
【0057】
1 車両用冷暖房装置、 2 圧縮機、 3 室内凝縮器、 5 室外熱交換器、 7 蒸発器、 8 アキュムレータ、 31 第1制御弁、 32 第2制御弁、 33 第3制御弁、 41 第1比例弁、 42 第2比例弁、 50 制御弁、 102 弁本体、 104 ソレノイド、 105 ボディ、 110 導入ポート、 112 導出ポート、 114 弁孔、 116 弁座、 118,218 弁体、 250 制御弁、 340 伝達ロッド、 350 制御弁、 418 弁体、 420 モータユニット、 430 ボディ、 432 ロータ、 434 ステータ、 436 弁作動体、 450 制御弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の蒸発器および第2の蒸発器を含む車両用冷暖房装置における前記第1の蒸発器の下流側に設けられ、その上流側圧力と下流側圧力との差圧を調整することにより、前記第1の蒸発器の蒸発圧力を前記第2の蒸発器の蒸発圧力よりも高くする制御弁であって、
上流側圧力と下流側圧力との差圧により開弁方向の力が作用する弁体と、
通電により前記弁体に閉弁方向の力を作用させる駆動部と、
を備えることを特徴とする制御弁。
【請求項2】
前記弁体が下流側に開弁する弁構造を有することを特徴とする請求項1に記載の制御弁。
【請求項3】
前記弁体が上流側に開弁する弁構造を有することを特徴とする請求項1に記載の制御弁。
【請求項4】
前記駆動部への通電時に前記弁体に閉弁方向の力を作用させる電磁弁であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の制御弁。
【請求項5】
前記駆動部への通電時に前記弁体に閉弁方向の力を作用させることにより、上流側圧力と下流側圧力との差圧の設定値である設定差圧を設定可能な電気駆動弁であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の制御弁。
【請求項6】
前記駆動部による閉弁方向の力により閉弁方向の所定位置に駆動される伝達部材と、
前記弁体と前記伝達部材との間に介装されて前記弁体を閉弁方向に付勢するスプリングと、を備え、
前記弁体と前記伝達部材とが相対変位可能に設けられ、前記伝達部材が閉弁方向に変位したときの前記スプリングの荷重により前記設定差圧が設定されることを特徴とする請求項5に記載の制御弁。
【請求項7】
前記弁体において上流側圧力と下流側圧力との差圧が開弁方向に作用する面積が、弁孔の断面積よりも小さくなるように構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−106574(P2012−106574A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256124(P2010−256124)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000133652)株式会社テージーケー (280)
【Fターム(参考)】