説明

車両用制御装置

【課題】アイドリングストップ機能を損ねることなくエンジンスイッチの操作性の向上を図れ、無駄な燃料の消費を抑制する上で有利な車両制御装置を提供する。
【解決手段】エンジン12が自動停止された状態でエンジンスイッチ30が押圧された場合、操作時間Teが予め定められた基準時間Tr未満であるか基準時間Tr以上であるかの何れか一方の条件が成立するときにエンジン12を再始動させ、他方の条件が成立するときに供給モードを車両の電気系統の全てに対する電源の供給を停止する第1のモードあるいは車両の電気系統の一部に対する電源の供給を維持しかつ残りに対する電源の供給を停止する第2のモードに切り替えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアイドリングストップ機能を備える車両に搭載される車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンを始動、停止させるために押圧操作されるエンジンスイッチ(イグニッションスイッチ)を設けると共に、このエンジンスイッチの押圧操作により車両の電気系統に供給する電源の供給モードをオフモード、アクセサリモード、オンモードなど複数のモードに切り替えも行えるようにしたエンジン始動装置が提供されている(特許文献1参照)。また、運転状況に応じてエンジンを自動停止および再始動させるアイドリングストップ機能を有する車両が提供されている(特許文献2参照)。アイドリングストップ機能は、交差点などで車両が停止した場合、例えば、車速=0、ブレーキペダル操作がなされているという自動停止条件が成立した場合にエンジンを自動停止させる。また、ブレーキペダル操作が解除された、あるいは、アクセルペダル操作がなされたという再始動条件が成立した場合にエンジンを再始動させるものである。
【0003】
前記のエンジン始動装置およびアイドリングストップ機能を備える車両がアイドリングストップした場合、運転者が意図的にエンジンの再始動を早めたい状況、例えば、車両が交差点で右折待ちしているような状況であったとする。この場合、運転者は、交差点内で車両を動かすことができないので、ブレーキペダル操作を解除することでエンジンを再始動させることはできない。したがって、エンジンスイッチを押圧操作することでエンジンを再始動できるようになっている。すなわち、アイドリングストップ中にエンジンスイッチを操作することでエンジンを早めに再始動させることができるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−122058号公報
【特許文献2】特開平09−209790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、例えば、車両を駐車場の駐車スペースに入れて停車しアイドリングストップした場合、運転者が車両の電気系統を全てオフにしてから降車しようとする場合、次のような不都合が懸念される。この場合、エンジンは自動停止しているため、後は車両の電気系統を全てオフにすればよいことになる。したがって、ブレーキペダルを操作したままでエンジンスイッチを押圧操作して車両の電気系統を全てオフにしようとするのが最も合理的かつ自然な操作であえる。しかしながら、前記のようにアイドリングストップ中にエンジンスイッチを押圧操作するとエンジンは再始動してしまう。そのため、実際には、エンジンスイッチを押圧操作してエンジンを再始動させるか、あるいは、ブレーキペダルの操作を解除することでエンジンを再始動させ、次に、再度エンジンスイッチを押圧操作することで電源の供給モードをオンモードからオフモードに切り替える必要がある。この場合、供給モードがオフモードになると同時にエンジンも停止されることになる。したがって、このような場合は、エンジンスイッチの操作が煩雑となるばかりでなく、不必要なエンジンの再始動により燃料が無駄に消費されるといった不都合が生じる。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、アイドリングストップ機能を損ねることなくエンジンスイッチの操作性の向上を図れ、無駄な燃料の消費を抑制する上で有利な車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、エンジンを始動、停止させるために押圧操作されるエンジンスイッチと、車両の運転状況に応じて前記エンジンを自動停止および再始動させるアイドリングストップ制御手段と、前記エンジンスイッチの押圧操作に応じて車両の電気系統に供給する電源の供給モードの切り替えを行う電源制御手段とを備える車両用制御装置であって、前記エンジンスイッチが押圧操作される時間を操作時間としたとき、前記エンジンが自動停止された状態で前記エンジンスイッチが押圧された場合、前記操作時間が予め定められた基準時間未満であるか基準時間以上であるかの何れか一方の条件が成立するときに前記アイドリングストップ制御手段が前記エンジンを再始動させ、他方の条件が成立するときに前記電源制御手段は前記供給モードを車両の電気系統の全てに対する電源の供給を停止する第1のモードあるいは車両の電気系統の一部に対する電源の供給を維持しかつ残りに対する電源の供給を停止する第2のモードに切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アイドリングストップされた状態において、エンジンスイッチを押圧操作した際の操作時間を基準時間未満とするか、あるいは基準時間以上とするだけで、エンジンの再始動と、車両の電気系統に対する電源の供給停止とを簡単かつ確実に選択的に実施することができる。したがって、アイドリングストップ機能を損ねることなくエンジンスイッチの操作性の向上を図れ、無駄な燃料の消費を抑制する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施の形態における車両制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】エンジン始動時の動作を示すフローチャートである。
【図3】エンジン停止時の動作を示すフローチャートである。
【図4】電動パーキングロック機能が設けられた車両におけるアイドリングストップの動作を示すフローチャートである。
【図5】電動パーキングロック機能が設けられていない車両におけるアイドリングストップの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態の車両制御装置10が搭載された車両の制御系の構成を示すブロック図である。本実施の形態では、車両は、走行用の駆動源である内燃機関としてのエンジン12と、エンジン12から出力される動力が入力される自動変速機としてのCVT14(Continuously Variable Transmission)とが搭載されており、したがってこの車両はAT車である。本発明は、CVTを含む従来公知の自動変速機を備えるAT車に適用可能である。
車両には、CVT制御ECU16、ABS制御ECU18、ボディコントロールECU20、電源制御ECU22、エンジン制御ECU24、アイドリングストップ制御ECU26などの複数のECUがCAN(Controller Area Network)バスなどを含むなどの従来公知の通信ライン28を介して接続され、情報、データの授受を行う。各ECU16、18、20、22、24、26は、CPU、制御プログラム等を格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成されており、前記制御プログラムを実行することにより動作する。さらに通信ライン28には、車両の種々の情報を表示するメータ29が接続されている。各ECU16、18、20、22、24、26については後述する。
【0010】
また、車両には、エンジンスイッチ30、ブレーキペダルセンサ32、レンジポジションセンサ34、車速センサ35、通信部36、電動ハンドルロック機構38、ACCリレー40、IGリレー42、エンジン始動回路44、スタータモータ46、ドアスイッチ48などが設けられている。
【0011】
エンジンスイッチ30は、エンジン12を始動、停止させるために押圧操作され、また、車両の電気系統に供給する電源の供給モードの切り替えを行うために押圧操作されるものである。車両の電気系統は、以下の2つに大別される。
(1)アクセサリ機器:照明装置、メータ、空調装置、オーディオ装置、ナビゲーション装置など。
(2)アクセサリ機器以外の電子機器:車両の走行に関連して動作する種々の電子機器であり、エンジン12、制動装置、CVT14、前記の各ECU16、18、20、22、24、26を含む。
本実施の形態では、電源の供給モードとして以下の3種類のモードが設定されている。
(1)オフモード:アクセサリ機器を含む電子機器の全て(車両の電気系統の全て)に対する電源の供給を停止するモード。
(2)ACCモード(アクセサリモード):アクセサリ機器にのみ電源を供給し、アクセサリ機器以外の電子機器に対する電源の供給を停止するモード。
(3)オンモード:オフモード:アクセサリ機器を含む電子機器の全てに対する電源の供給を実施するモード。
なお、オフモードが特許請求の範囲の第1のモードに相当し、ACCモードが特許請求の範囲の第2のモードに相当する。
【0012】
ブレーキペダルセンサ32は、ブレーキペダルが操作されたか(踏み込まれたか)、その操作が解除されたか(踏み込みが解除されたか)を検出して、その検出信号を電源制御ECU22およびアイドリングストップ制御ECU26に供給するものである。レンジポジションセンサ34は、自動変速機の走行レンジを切り替えるレンジ切り替えレバー(セレクターレバー)の位置を検出して、その検出信号を電源制御ECU22およびアイドリングストップ制御ECU26に供給するものである。走行レンジとしては、P(パーキング)、R(リバース)、N(ニュートラル)、D(ドライブ)、2(セカンド)、L(ロー)が例示される。車速センサ35は、車両の走行速度を検出しその検出結果を通信ライン28を介して電源制御ECU22およびアイドリングストップ制御ECU26に供給するものである。
【0013】
通信部36は、運転者が携帯する無線キー2とアンテナ(不図示)を介して無線通信を行うものであり、この無線通信によって電源制御ECU22が後述するID照合を行うものである。電動ハンドルロック機構38は、電源制御ECU22の制御に基づいてステアリング(ハンドル)を回動不能に固定し盗難防止を図るものである。
【0014】
ACCリレー40は、アクセサリ機器への電源供給をオン、オフするリレーである。IGリレー42は、アクセサリ機器以外の電子機器への電源供給をオン、オフするリレーである。
【0015】
エンジン始動回路44は、電源制御ECU22の制御に基づいてスタータモータ46を回転させるものである。スタータモータ46は、回転することでエンジン12の始動を行うものである。ドアスイッチ48は、車両のドアの開閉を検出し、検出信号をボディコントロールECU20に供給するものである。
【0016】
CVT制御ECU16は、CVT14の変速の制御を行うものである。ABS制御ECU18は、制動装置におけるABS(Antilock Brake System)の制御を行うものである。ボディコントロールECU20は、ドアスイッチ48からの検出信号を受け付け、車両のドアの解錠、施錠などを制御するものである。電源制御ECU22は、エンジンスイッチ30、ブレーキペダルセンサ32、通信部36からの信号に基づいて、電動ハンドルロック機構38、ACCリレー40、IGリレー42、エンジン始動回路44の制御を行うものである。エンジン制御ECU24は、エンジン12の動作制御を行うものである。
【0017】
アイドリングストップ制御ECU26は、車両の運転状況に応じてエンジン12を自動停止および再始動させるものであり、アイドリングストップ機能を実現するものである。本実施の形態では、アイドリングストップ制御ECU26は、アイドルストップ禁止スイッチ50のオン、オフに基づいてアイドリングストップ機能を無効、あるいは、有効とすることができるようになっている。
【0018】
本実施の形態では、車両制御装置10は、エンジンスイッチ30、電源制御ECU22、アイドリングストップ制御ECU26を含んで構成されている。電源制御ECU22は、エンジンスイッチ30の押圧操作に応じて車両の電気系統に供給する電源の供給モードの切り替えを行う電源制御手段を構成している。アイドリングストップ制御ECU26は、車両の運転状況に応じてエンジン12を自動停止および再始動させるアイドリングストップ制御手段を構成する。なお、本実施の形態では、電源制御手段およびアイドリングストップ制御手段をそれぞれ独立した2つのECUで実現する場合について説明する。しかしながら、電源制御手段およびアイドリングストップ制御手段を1つのECU、あるいは、3つ以上のECUで実現するなど任意である。また、電源制御ECU22は、予め定められた切り替え許容条件が成立した状態でエンジンスイッチ30が押圧操作されると、押圧操作される毎に、予め定められた順序、すなわち、オフモード→ACCモード→オンモードの順番で前記の電源の供給モードを切り替えるように構成されている。切り替え許容条件としては、例えば、車両が駐車場や自宅の車庫などに停車してエンジン30が停止し、ブレーキペダルの操作が解除された状態が挙げられる。
【0019】
次に、車両制御装置10の動作について説明する。まず、停止状態にあるエンジン12を始動させる場合の動作について図2のフローチャートを参照して説明する。予めエンジン12が停止され、ACCリレー40、IGリレー42がオフであるものとする。電源制御ECU22は、エンジンスイッチ30が押圧操作されたか否かを判定する(ステップS10)。ステップS10が肯定ならば、電源制御ECU22はブレーキペダルセンサ32の検出結果に基づいてブレーキペダルが操作されたか否かを判定する(ステップS12)。なお、ステップS12の判定は、エンジンスイッチ30が押圧操作される時間である操作時間の長短に拘わらずなされる。ステップS12が肯定ならば、電源制御ECU22は通信部36を介して運転者が携帯する無線キー2と無線通信を行い、無線キー2に格納されているID情報が登録済みのものでるか否かを判定する。すなわち、ID照合を行う(ステップS14)。ステップS14の照合結果が肯定であれば、電源制御ECU22は電動ハンドルロック機構38を制御して電動ハンドルロックを解除させステアリング操作が可能な状態とする(ステップS16)。
次いで、電源制御ECU22は、電源状態をスタートモード(イグニッションキーでいうスタート位置)とし、エンジン始動回路44にエンジン始動指令を与え、これによりエンジン始動回路44がスタータモータ46を駆動し、クランキングが開始されエンジン12が始動する(ステップS18)。この場合、エンジン始動に不要な機器には電源供給されない状態となっている。
エンジン12の始動がなされたならば、電源制御ECU22は、電源状態をスタートモード(スタート位置)からオンモード(オン位置)として、アクセサリ機器およびそれ以外の電子機器の全てに対する電源の供給を実施する(ステップS20)。なお、ステップS10、S12、S14の判定結果が否定の場合は処理を終了する。
【0020】
次に、動作状態にあるエンジン12を停止させる場合の動作について図3のフローチャートを参照して説明する。本例では、予めエンジン12が動作しており、車速が一定以下であり、ACCリレー40、IGリレー42がオンであるものとする。電源制御ECU22は、エンジンスイッチ30が押圧操作されたか否かを判定する(ステップS30)。なお、ステップS30の判定は、エンジンスイッチ30が押圧操作される時間である操作時間の長短に拘わらずなされる。ステップS30が肯定であれば、電源制御ECU22は、IGリレー42をオフし(ステップS32)、通信ライン28を介してエンジン制御ECU24にエンジン停止指令(燃料供給停止指令)を与え、これによりエンジン制御ECU24がエンジン12を停止させる(ステップS34)。さらに、電源制御ECU22は、レンジポジションセンサ34の検出結果に基づいて走行レンジがP(パーキング)であるか否かを判定する(ステップS36)。ステップS36が肯定であれば、電源制御ECU22はACCリレー40をオフする(ステップS38)。一方、ステップS36が否定であれば、ACCリレー40のオン状態を維持して処理を終了する。また、ステップS30が否定であれば、処理を終了する。
なお、上記は車速が一定以下の場合に実施される一般的な制御内容を示している。車速が一定以上の場合は、電源制御ECU22は、シフト位置等は関係なく、エンジンスイッチ30が短押されても電源状態の切換えは実施しない。ただし、車速が一定以上でもエンジンスイッチ30の長押しや連打の場合、電源制御ECU22は、緊急停止操作と判断して、IGリレー42のみオフしてアクセサリ機器およびそれ以外の電子機器の全てに対する電源の供給は継続する。
【0021】
次に、アイドリングストップ時の動作について説明する。以下では、電動パーキングロック機能が車両に設けられている場合と設けられていない場合とに分けてアイドリングストップ時の動作を説明する。まず、電動パーキングロック機能について説明する。電動ハンドルロック機構38が設けられた車両における動作を以下のように例示する。
走行レンジがP(パーキング)の状態でエンジンスイッチ30の押圧操作によって(運転者の意思によって)電源の供給モードをオフモードに切り替えると、運転席のドア開などのユーザーの降車意思が確認されたのち、ACCリレー40およびIGリレー42の双方がオフにされ、次いで、電動ハンドルロック機構38によりハンドルがロック(施錠)される。なお、本例では、ACCリレー40およびIGリレー42のオフ動作と電動ハンドルロック機構38によるハンドルのロック(施錠)動作とが連動する場合について説明するが、それら2つの動作が連動しなくてもかまわない。
本例において、電動パーキングロック機能は、走行レンジがP以外である場合に、エンジンスイッチ30の押圧操作によって電源の供給モードをオフモードに切り替えると、走行レンジが自動的にPに切り替えられたのち、ACCリレー40およびIGリレー42の双方がオフされたのち、電動ハンドルロック機構38によりハンドルがロック(施錠)される。
電動パーキングロック機能が設けられていない車両では、走行レンジがPであれば、上述したようにエンジンスイッチ30の押圧操作による電源の供給モードのオフモードへの切り替えに連動して、ACCリレー40およびIGリレー42の双方をオフにし、電動ハンドルロック機構38によるハンドルのロック(施錠)を行う動作に問題はない。
しかしながら、走行レンジがP以外の場合に電動ハンドルロック機構38によるロックを禁止する場合は、仮にエンジンスイッチ30の押圧操作によって電源の供給モードをオフモードに切り替えようとしても、ACCリレー40のオンが維持され、IGリレー42のみがオフとなるACCモードに強制的に設定される。
【0022】
まず、車両に電動パーキングロック機能が設けられている場合について図4のフローチャートを参照して説明する。アイドリング制御ECU26は、エンジン12を自動停止させるべき自動停止条件が成立したか否かを判定する(ステップS40)。自動停止条件としては、ブレーキペダルが操作されていること(ブレーキペダルが踏み込まれていること)と、走行速度がゼロであることを含む。ブレーキペダルの操作の有無はブレーキペダルセンサ32の検出結果に基づいて判定し、走行速度がゼロであるかの判定は車速センサ35の検出結果に基づいて判定する。ステップS40が肯定であれば、アイドリング制御ECU26は、通信ライン28を介してエンジン制御ECU24にエンジン停止指令を与え、これによりエンジン制御ECU24がエンジン12を自動停止させる(ステップS42)。すなわち、アイドリングストップ動作が実行される。ステップS40が否定であれば処理を終了する。なお、アイドリングストップ動作中(エンジン12の自動停止中)は、電源制御ECU22は、電源供給モードをオンモードに維持している。これは、仮に、ACCリレー20あるいはIGリレー22をオフしてしまうと、車両の電源系統が停止され、アクセサリ機器あるいはアクセサリ機器以外の電子機器が使用不能となり不便であるからである。次いで、アイドリング制御ECU26は、自動停止されたエンジン12を再始動させるべき再始動条件が成立するか否かを判定する(ステップS44)。再始動条件としては、ブレーキペダルの操作が解除されていること(ブレーキペダルの踏み込みが解除されていること)を含む。ステップS44が肯定ならば、アイドリング制御ECU26は、エンジン始動回路44にエンジン始動指令を与え、これによりエンジン始動回路44がスタータモータ46を駆動し、クランキングが開始されエンジン12が始動する(ステップS50)。
【0023】
ステップS44が否定ならば、電源制御ECU22は、エンジンスイッチ30が押圧操作されたか否かを判定する(ステップS46)。なお、電源制御ECU22は、ステップS42の処理が実行されると、アイドリング制御ECU26から通信ライン28を介してアイドリング停止中である旨の情報を受け付けており、アイドリング停止中であるか否かの状況を認識している。ステップS46が否定ならばステップS44に戻る。ステップS46が肯定ならば、電源制御ECU22は、エンジンスイッチ30の操作時間Teが予め定められた基準時間Tr未満であるか否か(Te<Trという条件が成立するか否か)を判定する(ステップS48)。ステップS48が肯定であれば、ステップS50に移行しエンジン12が再始動される。
【0024】
ステップS48が否定であれば、言い換えると、エンジンスイッチ30の操作時間Teが予め定められた基準時間Tr以上であれば(Te<Trという条件が不成立であれば)、電源制御ECU22は、レンジポジションセンサ34の検出結果に基づいて走行レンジがP(パーキング)であるか否かを判定する(ステップS52)。ステップS52が肯定であれば、電源制御ECU22は、電源の供給モードをオフモードとしACCリレー40およびIGリレー42の双方をオフする(ステップS54)。次いで、電源制御ECU22は電動ハンドルクロック機構38を制御してハンドルロックを行って処理を終了する(ステップS56)。なお、ステップS46、S48,S52、S54,S56の一連の処理は、運転者がブレーキペダルの操作を継続した状態でなされる。言い換えると、アイドリングストップが実施された際のブレーキペダル操作を継続したままで、エンジンスイッチ30を押圧操作することで電源の供給が停止されることになる。このような操作は、走行中にブレーキペダルを操作して車両を停車させたのち、ブレーキペダルの操作を継続した状態で走行レンジをP(パーキング)に入れてエンジンスイッチ30を押圧操作してエンジン12を停止させるといった通常の駐車操作と変わらない。そのため、アイドリングストップ時において、運転者に対して通常の操作と異なる操作を強いることがなく操作性を確保する上で有利となっている。一方、ステップS52が否定であれば、電源制御ECU22は、レンジポジションセンサ34の検出結果に基づいて走行レンジがR(リバース)であるか否かを判定する(ステップS58)。ステップS58が肯定であれば、ステップS50に移行してエンジン12を再始動させる。ステップS58が否定であれば、前記の電動パーキング機能により走行レンジがP(パーキング)に自動的に切り替えられ、ステップS54に移行する。
【0025】
次に、車両に電動パーキングロック機能が設けられていない場合について図5のフローチャートを参照して説明する。図5において図4と同一のステップについては同一の符号を付してその説明を省略し、図4と相違する点についてのみ説明する。図5に示すように、図4と相違するのは、ステップS58の判定結果が否定、すなわち、走行レンジがP、R以外であった場合の処理である。走行レンジがP、R以外の場合は、電源制御ECU22は、電源の供給モードをACCモードとしIGリレー42をオフとしACCリレー40のオンを維持して処理を終了する(ステップS62)。
【0026】
以上説明したように、本実施の形態では、エンジン12が自動停止された状態でエンジンスイッチ30が押圧された場合、操作時間Teが予め定められた基準時間Tr未満であるか基準時間Tr以上であるかの何れか一方の条件が成立するときにエンジン12を再始動させ、他方の条件が成立するときに供給モードを車両の電気系統の全てに対する電源の供給を停止する第1のモードあるいは車両の電気系統の一部に対する電源の供給を維持しかつ残りに対する電源の供給を停止する第2のモードに切り替えるようにした。そのため、アイドリングストップされた状態において、エンジンスイッチ30の操作時間Teを基準時間Tr未満とするか、あるいは基準時間Tr以上とするだけで、エンジン12の再始動と、車両の電気系統に対する電源の供給停止とを簡単かつ確実に選択的に実施することができる。すなわち、交差点などのように意図的に再始動を行いたい場合であっても、駐車場などでの停車時のように直ちに電気系統への電源の供給を停止したい場合であっても、エンジンスイッチ30の操作時間を変えるという簡単な操作だけで運転者の意思に沿った動作を的確に実施させることができる。しかも、電源供給の停止を行う際には、従来のようにいったん自動停止したエンジン12を再始動させる必要がないため、燃料の無駄な消費を招くことが防止できる。したがって、アイドリングストップ機能を損ねることなくエンジンスイッチ30の操作性の向上を図れ、無駄な燃料の消費を抑制する上で有利となる。
【0027】
また、本実施の形態では、操作時間Teが基準時間Tr未満である場合にエンジン12を再始動し、操作時間Teが基準時間Tr以上である場合に電源供給を停止するようにした。したがって、エンジン再始動時の操作を短時間で行うことができ、運転者の意思に応じたエンジン12の再始動を迅速に行う上で有利となる。
【0028】
なお、本実施の形態とは逆に、操作時間Teが基準時間Tr未満である場合に電源供給を停止し、操作時間Teが基準時間Tr以上である場合にエンジン12を再始動するようにしてもかまわない。この場合は、電源供給を停止の操作を短時間で行うことができ、運転者の意思に応じた電源供給の停止を迅速に行う上で有利となる。
【0029】
また、本実施の形態では、アイドリングストップ時のエンジンスイッチ30の押圧操作によって電気系統への電源供給の停止を行う場合に、ACCリレー20およびIGリレー22の双方をオフとし、したがって、電源系統の全てに対する電源の供給を停止するようにした。しかしながら、例えば、ACCリレー20のオンを維持してIGリレー22をオフとし、ACCモードとするようにしてもよい。言い換えると、電源系統の一部に対する電源の供給を停止するようにしてもよい。ACCモードの場合に電源の供給をオフモードとするためには、ACCモードの状態でブレーキペダルの操作を解除したのち、エンジンスイッチ30を押圧操作することでACCモードからオフモードに切り替えればよい。この場合、エンジンスイッチ30の操作時間Teの長短に拘わらず電源の供給モードの切り替えがなされる。このようにすると、エンジン12を停止させた後も一定時間アクセサリ機器を使用したいといった要請に対応でき利便性の向上を図る上で有利となる。
【符号の説明】
【0030】
10……車両用制御装置、12……エンジン、22……電源制御ECU(電源制御手段)、26……アイドリングストップ制御ECU(アイドリングストップ制御手段)、30……エンジンスイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを始動、停止させるために押圧操作されるエンジンスイッチと、
車両の運転状況に応じて前記エンジンを自動停止および再始動させるアイドリングストップ制御手段と、
前記エンジンスイッチの押圧操作に応じて車両の電気系統に供給する電源の供給モードの切り替えを行う電源制御手段とを備える車両用制御装置であって、
前記エンジンスイッチが押圧操作される時間を操作時間としたとき、前記エンジンが自動停止された状態で前記エンジンスイッチが押圧された場合、
前記操作時間が予め定められた基準時間未満であるか基準時間以上であるかの何れか一方の条件が成立するときに前記アイドリングストップ制御手段が前記エンジンを再始動させ、他方の条件が成立するときに前記電源制御手段は前記供給モードを車両の電気系統の全てに対する電源の供給を停止する第1のモードあるいは車両の電気系統の一部に対する電源の供給を維持しかつ残りに対する電源の供給を停止する第2のモードに切り替える、
ことを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
前記一方の条件は前記操作時間が前記基準時間未満であるという条件であり、前記他方の条件は前記操作時間が前記基準時間以上であるという条件である、
ことを特徴とする請求項1記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記一方の条件は前記操作時間が前記基準時間以上であるという条件であり、前記他方の条件は前記操作時間が前記基準時間未満であるという条件である、
ことを特徴とする請求項1記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記第2のモードにおいて電源供給が維持される電気系統は、車両に設けられたアクセサリ機器である、
ことを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載の車両用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−102664(P2012−102664A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251628(P2010−251628)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】