説明

車両用制御装置

【課題】車両用制御装置において、左右のウインカーを同時に点滅させている時に、ハザードスイッチの操作によるキャンセルを受け付けないようにし、適式な事故処理をしない限り、ハザードランプの点滅の解除を不可能とすることにある。
【解決手段】制御手段(6)は、衝突検出手段(5)により衝突が検出されて左右のウインカー(4)を同時に点滅させる強制点滅手段(6A)が実行させる時に、ハザードスイッチ(2)の操作による強制点滅手段(6A)のキャンセルを受け付けない手動操作不可手段(6B)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用制御装置に係り、特に事故の発生を他車両に知らせる車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両の走行時に異常が発生した場合に、ハザードスイッチをオン/オフ操作して、ハザードランプを点滅させ、後続車両等の他車両に知らせている。
また、車両には、車両信号を監視して、車両が何らかの衝突を起こしたと判定した場合に、その衝突を検知して、ハザードスイッチのオンによらずに、制御手段から出力される信号によって自動的にハザードランプを点滅する装置を搭載しているものがある。
ハザードランプの点滅にあっては、制御手段から出力される左右のウインカーを制御するCAN信号によってオン/オフを行って実現している場合が多く、ハザードスイッチをオンにすれば、ハザードランプが点滅し、ハザードスイッチをオフにすれば、ハザードランプの点滅が解除されて消灯する構成のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2−60636号公報
【特許文献2】特開平4−278849号公報
【0004】
特許文献1に係る自動非常点滅装置は、衝突検出センサの動作時に動作してフラッシャと左右のターンシグナルランプ(ウインカー)を接続することによって各ターンランプを点滅するリレーを設けたものである。
特許文献2に係るハザードランプ点灯回路は、エアバックが作動したときに、ハザードランプを自動的に点滅作動させるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の特許文献1、2では、第1に、手動操作によるハザードランプの点滅の解除には解除用の回路が必要になるが、その回路の故障等で普段の使用時に、ハザードランプの点滅できなくなるという不具合が発生するおそれがあった。第2に、二次災害防止のためには、ハザードランプを点滅させておく方が望ましいが、運転者が誤ってハザードランプの点滅を解除してしまうことが考えられ、あるいは、事故発生後に、運転していた車両を用いて衝突現場を立ち去ろうとする運転者が、周囲に異常を知らせたくないために、自らハザードランプの点滅を解除することができてしまうという不具合があった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、適式な事故処理をしない限り、ハザードランプの点滅の解除を不可能とする車両用制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、ハザードスイッチの操作に応じて同時に点滅する左右のウインカーを設け、車両の衝突を検出する衝突検出手段を設け、この衝突検出手段により車両の衝突が検出された時に、前記ハザードスイッチが操作されなくても、前記左右のウインカーを同時に点滅させる強制点滅手段が備えられた制御手段を設けた車両用制御装置において、前記制御手段は、前記衝突検出手段により車両の衝突が検出されて前記左右のウインカーを同時に点滅させる前記強制点滅手段が実行させる時に、前記ハザードスイッチの操作による前記強制点滅手段のキャンセルを受け付けない手動操作不可手段を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の車両用制御装置は、適式な事故処理をしない限り、ハザードランプの点滅の解除を不可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は車両用制御のフローチャートである。(実施例)
【図2】図2は車両用制御装置のシステム構成図である。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明は、適式な事故処理をしない限り、ハザードランプの点滅の解除を不可能とする目的を、左右のウインカーを同時に点滅させている時に、ハザードスイッチの操作によるキャンセルを受け付けないようにして実現するものである。
【実施例】
【0011】
図1、図2は、この発明の実施例を示すものである。
図2において、1は車両に搭載される車両用制御装置である。
この車両用制御装置1には、車両の乗員によってオン/オフ操作されるハザードスイッチ2と、このハザードスイッチ2の操作に応じて同時に点滅するハザードランプ3を構成する左右のウインカー4と、車両の衝突を検出する衝突検出手段5とを設ける。左右のウインカー4は、ハザードスイッチ2が操作されると、ハザードランプ3としての機能を発揮するように点滅するものである。
この衝突検出手段5は、Gセンサからの加速度信号やエアバックコントローラからのエアバック作動信号を用いて衝突を検出することが可能なものである。
また、車両用制御装置1には、衝突検出手段5により車両の衝突が検出された時に、ハザードスイッチ2が操作されなくても、左右のウインカー4を同時に点滅させる強制点滅手段6Aが備えられた制御手段(ECU)6を設ける。
また、この制御手段6は、衝突検出手段5により車両の衝突が検出されて左右のウインカー4を同時に点滅させる強制点滅手段6Aが実行させる時には、ハザードスイッチ2の操作による強制点滅手段6Aのキャンセルを受け付けない手動操作不可手段6Bを備えている。
これにより、運転者は、車両の衝突発生により自動的に点滅しているハザードランプ3の点滅を解除することができない。従って、運転者が誤ってハザードランプ3を解除してしまうことを防止することができる。また、衝突発生後に、運転していた車両を用いて衝突現場から立ち去ることを防止することができる。
【0012】
更に、制御手段6は、不揮発性メモリ(EEPROM)6Cを備える。そして、制御手段6内において、手動操作不可手段6Bは、強制点滅手段6Aが一旦実行されると、手動操作不可情報(手動解除不可フラグ)を不揮発性メモリ6Cに記憶させる。
制御手段6には、車両のバッテリの取付け/取外しを検知するバッテリスイッチ7と、イグニッションスイッチ8とが連絡している。
これにより、車両のバッテリが外されたり、イグニッションスイッチ8がオフにされたりしても、その情報の記憶内容を消去することができない。
【0013】
また、不揮発性メモリ6C内に記憶されている手動操作不可情報(手動解除不可フラグ)は、専用の解除信号(書き換えの解除コマンド)によってのみ消去される。この場合、制御手段6には、解除用端末9が連絡する。この専用の解除信号(書き換えの解除コマンド)、解除用端末9は、事故処理を行う警察官のみが所有するものとする。
これにより、ハザードランプ3の点滅を容易に解除することができないようにする一方、ハザードランプ3の点滅の必要性が無くなった時には、ハザードランプ3の点滅を解除することができる。
【0014】
次に、この実施例に係る制御を、図1のフローチャートに基づいて説明する。
図1に示すように、制御手段6のプログラムがスタートし(ステップA01)、車両の衝突が検出されると(ステップA02)、ハザードランプ3が点滅、つまり、左右のウインカー4が点滅する(ステップA03)。
そして、手動操作不可情報としての手動解除不可フラグを立て(「1」とする)、不揮発性メモリ6Cにその情報を書き込む(ステップA04)。
その後、適式な解除処理として、警察による解除処理が終了したら、専用の解除信号としての書き換えの解除コマンドを送信して、手動解除不可フラグを下ろす(「0」とする)(ステップA05)。
そして、ハザードスイッチ2をオフとし(ステップA06)、ハザードランプ3が消灯し(ステップA07)、プログラムをエンドとする(ステップA08)。
【0015】
即ち、この実施例では、制御手段6に、ハザードスイッチ2のオン/オフ操作を受け付けないようにする手動操作不可情報(手動操作不可フラグ)を備えて、自動的にハザードランプ3の点灯と同時に、その手動操作不可フラグを「1」にする。これにより、ハザードスイッチ2の操作は、無効となり、手動では解除できなくなる。
また、手動操作不可フラグの状態は、制御手段6に備えられた不揮発性メモリ6Cに書き込むようにして、イグニションスイッチ8のオフ、あるいは、バッテリを外しても、手動操作不可フラグの状態が変わらないようにする。
その後、警察による適式な事故処理の後の解除により、ハザードランプ3が消灯し、警察車両若しくは警察署において解除用端末9を用意し、故障診断コネクタ等の車両CANにアクセスできるバスに接続し、CAN信号により不揮発性メモリ6Cの手動操作不可フラグを「0」に書き換える解除コマンドを送信する。これにより、ハザードスイッチ2の操作が有効となり、解除可能になる。
【0016】
なお、この実施例では、ハザードランプの点滅の解除のみならず、車両の異常や緊急状態を表す音や振動等の全ての状況に対して、この実施例に係る車両用制御装置を用いれば、様々な車両状態を警察若しくは消防や救急でないと解除できないようにすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0017】
この発明に係る車両用制御装置を、四輪車のみならず、二輪車等の各種車両に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0018】
1 車両用制御装置
2 ハザードスイッチ
3 ハザードランプ
4 左右のウインカー
5 衝突検出手段
6 制御手段
6A 強制点滅手段
6B 手動操作不可手段
6C 不揮発性メモリ
9 解除用端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハザードスイッチの操作に応じて同時に点滅する左右のウインカーを設け、車両の衝突を検出する衝突検出手段を設け、この衝突検出手段により車両の衝突が検出された時に、前記ハザードスイッチが操作されなくても、前記左右のウインカーを同時に点滅させる強制点滅手段が備えられた制御手段を設けた車両用制御装置において、前記制御手段は、前記衝突検出手段により車両の衝突が検出されて前記左右のウインカーを同時に点滅させる前記強制点滅手段が実行させる時に、前記ハザードスイッチの操作による前記強制点滅手段のキャンセルを受け付けない手動操作不可手段を備えていることを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、不揮発性メモリを備え、前記手動操作不可手段は、前記強制点滅手段が一旦実行されると、手動操作不可情報を前記不揮発性メモリに記憶させることを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記不揮発性メモリ内に記憶されている手動操作不可情報は、専用の解除信号によってのみ消去されることを特徴とする請求項2に記載の車両用制御装置。

【図1】
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【図2】
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