説明

車両用前照灯

【課題】従来の車両用前照灯では、配光パターンをハイビーム用配光パターンからカットオフラインを有する配光パターンまで無段階で変化させることにおいて課題がある。
【解決手段】この発明は、シェード5と、シェード5を回転させる回転装置8と、を備える。シェード5は、反射面11と投影レンズ4との間に、車両の幅方向の軸O−O方向に配置されていて、かつ、軸O−O回りに回転可能に構成されている。また、シェード5は、軸O−Oから外周面までの径方向距離が周方向の角度位置変化に伴って徐変する曲面からなる楕円柱形状をなし、左側部分5Lと右側部分5Rとが長軸方向にずれていて、かつ、短軸方向においてずれがない。この結果、この発明は、配光パターンをハイビーム用配光パターンからカットオフラインを有する配光パターンまで無段階で変化させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の前方に照射される配光パターンを変化させることができるプロジェクタタイプの車両用前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用前照灯は、従来からある(たとえば、特許文献1)。以下、従来の車両用前照灯について説明する。従来の車両用前照灯は、シェードが車両の幅方向の軸方向に沿って配置されていてかつその軸回りに回転可能な回動軸部材から構成されていて、シェードの外周面に第1配光生成部と第2配光生成部と第3配光生成部とがそれぞれ設けられている。シェードを回転させて、第1配光生成部を所定位置に位置させると、左配光ロービーム用配光パターンが車両の前方に照射され、第2配光生成部を所定位置に位置させると、右配光ロービーム用配光パターンが車両の前方に照射され、第3配光生成部を所定位置に位置させると、ハイビーム用配光パターンが車両の前方に照射される。
【0003】
ところが、従来の車両用前照灯は、左配光ロービーム用配光パターンと、右配光ロービーム用配光パターンと、ハイビーム用配光パターンとに三段階に変化するものであり、配光パターンをハイビーム用配光パターンからカットオフラインを有する配光パターンまで無段階で変化させることにおいて課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−349120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする問題点は、従来の車両用前照灯では、配光パターンをハイビーム用配光パターンからカットオフラインを有する配光パターンまで無段階で変化させることにおいて課題があるという点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明(請求項1にかかる発明)は、光源と、リフレクタと、投影レンズと、反射面と投影レンズとの間に、車両の幅方向の軸方向に配置されていて、かつ、軸回りに回転可能に構成されていて、反射面からの反射光の一部を遮蔽するシェードと、シェードを軸回りに回転させる回転装置と、を備え、シェードが、軸から外周面までの径方向距離が周方向の角度位置変化に伴って徐変する曲面からなる柱形状をなし、左側部分と右側部分とが軸に対して交差する方向にずれていて、かつ、軸から外周面までの径方向距離が最短となる部位においてずれがなくハイビーム用配光パターンを形成する部材である、ことを特徴とする。
【0007】
また、この発明(請求項2にかかる発明)は、シェードが、楕円柱形状をなし、左側部分と右側部分とが長軸方向にずれていて、かつ、短軸方向においてずれがない、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明(請求項1にかかる発明)の車両用前照灯は、シェードが回転装置の駆動で軸回りに回転することにより、車両の前方に照射される配光パターンがハイビーム用配光パターンからカットオフラインを有する配光パターンまで無段階で変化する。この結果、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用前照灯は、配光パターンをハイビーム用配光パターンからカットオフラインを有する配光パターンまで急激な変化がなくスムーズに変化させることができ、しかも、車両の様々な走行状況に応じた配光パターンが得られる。
【0009】
また、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用前照灯は、前記の課題を解決するための手段により、シェードの形状や構造が簡単となり、その分、配光制御を正確にかつ確実に行うことができ、しかも、製造コストを安価にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、この発明にかかる車両用前照灯の実施例を示す縦断面図(垂直断面図)である。
【図2】図2は、同じく、横断面図(水平断面図)である。
【図3】図3は、同じく、シェードを示す斜視図である。
【図4】図4は、同じく、図3におけるIV矢視図である。
【図5】図5は、同じく、シェードの作動状態を示す説明図である。
【図6】図6は、同じく、シェードの作動状態を示す説明図である。
【図7】図7は、同じく、シェードの作動により得られるスクリーン上の配光パターンを示す説明図である。
【図8】図8は、同じく、シェードの作動により得られるスクリーン上の配光パターンを示す説明図である。
【図9】図9は、同じく、シェードの作動により得られる路面上の配光パターンを示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、この発明にかかる車両用前照灯の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。この明細書あるいは特許請求の範囲において、「上、下、前、後、右、左」は、車両用前照灯を車両に装備された際の「上、下、前、後、右、左」である。図面において、符号「F」は、車両の前側(車両の前進方向側)を示す。符号「B」は、車両の後側を示す。符号「U」は、ドライバー側から前側を見た上側を示す。符号「D」は、ドライバー側から前側を見た下側を示す。符号「L」は、ドライバー側から前側を見た場合の左側を示す。符号「R」は、ドライバー側から前側を見た場合の右側を示す。符号「VU−VD」は、スクリーンの上下の垂直線を示す。符号「HL−HR」は、スクリーンの左右の水平線を示す。
【0012】
図5(A)は、シェードが左側通行用の配光パターンにおける基準位置に位置するときのシェードの側面図である。図5(A1)は、図5(A)におけるA1矢視図である。図5(B)は、シェードが左側通行用の配光パターンにおける基準位置から時計方向に約45°回転したときのシェードの側面図である。図5(B1)は、図5(B)におけるB1矢視図である。図5(C)は、シェードが左側通行用の配光パターンにおける基準位置から時計方向に約90°回転したときのシェードの側面図である。図5(C1)は、図5(C)におけるC1矢視図である。図5(D)は、シェードが左側通行用の配光パターンにおける基準位置から時計方向に約135°回転したときのシェードの側面図である。図5(D1)は、図5(D)におけるD1矢視図である。
【0013】
図6(A)は、シェードが右側通行用の配光パターンにおける基準位置に位置するときのシェードの側面図である。図6(A1)は、図6(A)におけるA1矢視図である。図6(B)は、シェードが右側通行用の配光パターンにおける基準位置から時計方向に約45°回転したときのシェードの側面図である。図6(B1)は、図6(B)におけるB1矢視図である。図6(C)は、シェードが右側通行用の配光パターンにおける基準位置から時計方向に約90°回転したときのシェードの側面図である。図6(C1)は、図6(C)におけるC1矢視図である。図6(D)は、シェードが右側通行用の配光パターンにおける基準位置から時計方向に約135°回転したときのシェードの側面図である。図6(D1)は、図6(D)におけるD1矢視図である。
【0014】
図7(A)は、シェードが左側通行用の配光パターンにおける基準位置に位置するときのスクリーン上のハイビーム用配光パターンの説明図である。図7(B)は、シェードが左側通行用の配光パターンにおける基準位置から時計方向に約45°回転したときのスクリーン上のハイウエイ(モータウエイ)用配光パターンの説明図である。図7(C)は、シェードが左側通行用の配光パターンにおける基準位置から時計方向に約90°回転したときのスクリーン上のロービーム用配光パターンの説明図である。図7(D)は、シェードが左側通行用の配光パターンにおける基準位置から時計方向に約135°回転したときのスクリーン上の第2ロービーム用配光パターンの説明図である。
【0015】
図8(A)は、シェードが右側通行用の配光パターンにおける基準位置に位置するときのスクリーン上のハイビーム用配光パターンの説明図である。図8(B)は、シェードが右側通行用の配光パターンにおける基準位置から時計方向に約45°回転したときのスクリーン上のハイウエイ(モータウエイ)用配光パターンの説明図である。図8(C)は、シェードが右側通行用の配光パターンにおける基準位置から時計方向に約90°回転したときのスクリーン上のロービーム用配光パターンの説明図である。図8(D)は、シェードが右側通行用の配光パターンにおける基準位置から時計方向に約135°回転したときのスクリーン上の第2ロービーム用配光パターンの説明図である。
【0016】
図9(A)は、左側通行用の配光パターンがハイビーム用配光パターン、ハイウエイ用配光パターン、ロービーム用配光パターン、第2ロービーム用配光パターンに無段階に変化する状態を示す路面上の配光パターンの説明図である。図9(B)は、右側通行用の配光パターンがハイビーム用配光パターン、ハイウエイ用配光パターン、ロービーム用配光パターン、第2ロービーム用配光パターンに無段階に変化する状態を示す路面上の配光パターンの説明図である。
【実施例】
【0017】
以下、この実施例にかかる車両用前照灯の構成について説明する。図1および図2において、符号1は、この実施例にかかる車両用前照灯である。前記車両用前照灯1は、自動車(車両)の前部の左右にそれぞれ装備される、たとえば、プロジェクタタイプのヘッドランプである。
【0018】
前記車両用前照灯1は、図1および図2に示すように、光源としての放電灯2と、リフレクタ3と、投影レンズ(集光レンズ、凸レンズ)4と、シェード5と、補助シェード(固定シェード)6と、フレーム7と、回転装置8と、ランプハウジング(図示せず)と、図示しないランプレンズ(たとえば、素通しのアウターレンズなど)と、を備えるものである。
【0019】
前記放電灯2および前記リフレクタ3および前記投影レンズ4および前記シェード5および前記補助シェード6および前記フレーム7および前記回転装置8は、ランプユニットを構成する。前記ランプユニットは、前記ランプハウジングおよび前記ランプレンズにより区画されている灯室(図示せず)内に、たとえば光軸調整機構(図示せず)を介して配置されている。
【0020】
前記放電灯2は、メタルハライドランプなどの高圧金属蒸気放電灯、高輝度放電灯(HID)などの放電灯である。前記放電灯2は、前記リフレクタ3にソケット9を介して着脱可能に取り付けられている。前記放電灯2は、発光部10を有する。なお、前記放電灯2としては、前記放電灯以外に、ハロゲン電球、白熱電球でも良い。
【0021】
前記リフレクタ3は、前側(前記車両用前照灯1の光の照射方向側、投影レンズ4側)が開口し、かつ、後側が閉塞した中空の凹形状をなす。前記リフレクタ3の内凹面には、アルミ蒸着もしくは銀塗装などが施されていて、反射面11が形成されている。前記反射面11は、前記放電灯2の前記発光部10から放射される光を前側すなわち前記シェード5および前記投影レンズ4側に反射させるものである。
【0022】
前記反射面11は、楕円を基調とした反射面、たとえば、回転楕円面や楕円を基本とした自由曲面(NURBS曲面)などの反射面(図1の垂直断面が楕円面をなし、かつ、図2の水平断面が放物面ないし変形放物面をなす反射面)からなる。このために、前記反射面11は、第1基準焦点(もしくは第1擬似焦点、以下、「第1焦点」と称する)F1と第2基準焦点(もしくは第2擬似焦点、以下、「第2焦点」と称する。水平断面上の焦線、すなわち、上(平面)から見て両端が前記投影レンズ33側に位置し中央が前記第1光源2側に位置するような湾曲した焦線)F2と、基準光軸(もしくは擬似光軸、以下、「光軸」と称する)Z1−Z1と、を有する。前記第2焦点F2は、水平断面上の焦線、すなわち、上(平面)から見て両端が前側に位置し中央が後側に位置するような湾曲した焦線となる。
【0023】
前記リフレクタ3の後側の閉塞部のうち、前記反射面11の光軸Z1−Z1が交差する箇所には、透孔12が設けられている。前記放電灯2が前記透孔12中から前記リフレクタ3内に挿入された状態で、前記ソケット9が前記透孔12の縁に着脱可能に取り付けられている。この結果、前記放電灯2は、前記リフレクタ3に前記ソケット9を介して着脱可能に取り付けられている。また、前記放電灯2の前記発光部10は、前記反射面11の前記第1焦点F1にもしくはその近傍に位置する。すなわち、前記反射面11の前記第1焦点F1は、光源(前記放電灯2)に位置する。
【0024】
前記投影レンズ4は、非球面レンズの凸レンズである。前記投影レンズ4の前方側は、凸非球面をなし、一方、前記投影レンズ4の後方側は、平非球面(平面)をなす。前記投影レンズ4は、レンズ焦点(物空間側の焦点面であるメリジオナル像面)F3と、レンズ光軸Z3−Z3と、を有する。前記投影レンズ4のレンズ焦点F3と前記反射面11の第2焦点F2とは、一致もしくはほぼ一致する。したがって、前記投影レンズ4のレンズ焦点F3は、前記反射面11の第2焦点F2と同様に焦線である。また、前記投影レンズ4の光軸Z3−Z3と、前記反射面11の光軸Z1−Z1とは、図1に示すように、一致もしくはほぼ一致する。なお、前記投影レンズ4の光軸Z3−Z3と、前記反射面11の光軸Z1−Z1とは、左右にずれていても良い。
【0025】
前記シェード5は、光不透過部材から構成されている。前記シェード5は、前記反射面11と前記投影レンズ4との間に、車両(図示せず)の幅方向(左右水平方向)の軸O−O方向に配置されていて、かつ、前記軸O−O回りに回転可能に構成されている。すなわち、前記シェード5の左右両端面には、回転軸13がそれぞれ固定されている。前記回転軸13は、前記リフレクタ3もしくは前記フレーム7に軸受14を介して回転可能に取り付けられている。
【0026】
前記回転装置8は、この例では、ステッピングモータもしくは通常のモータからなる。前記回転装置8は、前記リフレクタ3もしくは前記フレーム7もしくは前記ランプハウジングに固定されている。前記回転装置の出力軸と前記シェード5の前記回転軸13とは、減速機構15を介して連結されている。前記減速機構15は、この例では、ギア群から構成されている。前記回転装置8は、前記シェード5を前記軸O−O回りに回転させるものである。前記回転装置8は、制御装置(図示せず)を介して、車両の走行状況に応じて自動にあるいは車両用前照灯の1の切替スイッチ(図示せず)の操作により手動により駆動制御されるものである。
【0027】
前記シェード5は、前記反射面11からの反射光L1の一部を遮蔽するものである。前記シェード5は、中実もしくは中空の楕円柱形状をなし、中間部分5Cを介して左側部分5Lと右側部分5Rとが長軸方向にずれていて、かつ、短軸方向においてずれがない。すなわち、前記シェード5は、前記軸O−Oから外周面までの径方向距離が周方向の角度位置変化に伴って連続的に徐変する曲面からなる柱形状をなし、左側部分5Lと右側部分5Rとが前記軸O−Oに対して交差する方向にずれていて、かつ、前記軸O−Oから外周面までの径方向距離が最短となる部位においてずれがなくハイビーム用配光パターンHPを形成する部材である。なお、前記のずれは、数ミリ程度である。また、前記シェード5は、前記回転装置8の駆動で前記軸O−O回りに回転することにより、車両の前方に照射される配光パターンを前記ハイビーム用配光パターンHPL、HPRからカットオフラインを有する配光パターンMPL、MPR、LP1L、LP1R、LP2L、LP2Rまで無段階で変化させる部材である。
【0028】
図4に示すように、楕円柱形状の前記左側部分5Lの長軸LL−LLと、楕円柱形状の前記右側部分5Rの長軸LR−LRとは、一致する。一方、楕円柱形状の前記左側部分5Lの短軸SL−SLと、楕円柱形状の前記右側部分5Rの短軸SR−SRとは、ずらした分の距離を保って平行である。前記シェード5の回転中心でありかつ前記回転軸13の中心軸である前記軸O−Oは、前記左側部分5Lの長軸LL−LLおよび前記右側部分5Rの長軸LR−LR上であって、前記左側部分5Lの中心OL−OLと前記右側部分5Rの中心OR−ORとの間の中点に位置する。
【0029】
なお、図4において、符号「SC−SC」は、前記軸O−Oを通り、かつ、前記短軸SL−SL、SR−SRと平行な基準短軸である。また、符号「16L」は、楕円柱形状の前記左側部分5Lの外周面のうち、前記基準短軸SC−SCから前記左側部分5Lの短軸SL−SL側の外周面であって、前記長軸LL−LL、LR−LRと交わる交線であって、左側基準エッジである。さらに、符号「16R」は、楕円柱形状の前記右側部分5Rの外周面のうち、前記基準短軸SC−SCから前記右側部分5Rの短軸SR−SR側の外周面であって、前記長軸LL−LL、LR−LRと交わる交線であって、右側基準エッジである。
【0030】
前記シェード5の基準短軸SC−SCにおいて、図5(A)、(A1)および図6(A)、(A1)に示すように、前記中間部分5Cの外周面と前記左側部分5Lの外周面と前記右側部分の外周面とは、ずれがないので面一となる。
【0031】
また、前記シェード5の基準短軸SC−SCから前記左側部分5Lの短軸SL−SL側において、図5(B)、(B1)、(C)、(C1)、(D)、(D1)に示すように、前記中間部分5Cの外周面は、ずらした分傾斜しており、また、前記左側部分5Lの外周面は、前記右側部分5Rの外周面に対して、ずらした分外側に突出している。すなわち、前記左側部分5Lの外周面と前記右側部分5Rの外周面とは、傾斜する前記中間部分5Cの外周面を介して段違いとなる。
【0032】
さらに、前記シェード5の基準短軸SC−SCから前記右側部分5Rの短軸SR−SR側において、図6(B)、(B1)、(C)、(C1)、(D)、(D1)に示すように、前記中間部分5Cの外周面は、ずらした分傾斜しており、また、前記右側部分5Rの外周面は、前記左側部分5Lの外周面に対して、ずらした分外側に突出している。すなわち、前記左側部分5Lの外周面と前記右側部分5Rの外周面とは、傾斜する前記中間部分5Cの外周面を介して段違いとなる。
【0033】
前記シェード5の中間部分5Cの外周面のうち、前記基準短軸SC−SCから前記左側部分5Lの短軸SL−SL側の外周面であって、前記反射光L1と交わる交線は、図7(B)、(C)、(D)に示すように、左側配光パターンMPL、LP1L、LP2Lの斜めカットオフラインCL1Lを形成するエッジとなる。
【0034】
また、前記シェード5の左側部分5Lの外周面のうち、前記基準短軸SC−SCから前記左側部分5Lの短軸SL−SL側の外周面であって、前記反射光L1と交わる交線は、図7(B)、(C)、(D)に示すように、左側配光パターンMPL、LP1L、LP2Lの上水平カットオフラインCL2Lを形成するエッジ(前記左側基準エッジ16Lを含む)となる。
【0035】
さらに、前記シェード5の右側部分5Rの外周面のうち、前記基準短軸SC−SCから前記右側部分5Rの短軸SR−SR側の外周面であって、前記反射光L1と交わる交線は、図7(B)、(C)、(D)に示すように、左側配光パターンMPL、LP1L、LP2Lの下水平カットオフラインCL3Lを形成するエッジとなる。
【0036】
一方、前記シェード5の中間部分5Cの外周面のうち、前記基準短軸SC−SCから前記右側部分5Rの短軸SR−SR側の外周面であって、前記反射光L1と交わる交線は、図8(B)、(C)、(D)に示すように、右側配光パターンMPR、LP1R、LP2Rの斜めカットオフラインCL1Rを形成するエッジとなる。
【0037】
また、前記シェード5の右側部分5Rの外周面のうち、前記基準短軸SC−SCから前記右側部分5Rの短軸SR−SR側の外周面であって、前記反射光L1と交わる交線は、図8(B)、(C)、(D)に示すように、右側配光パターンMPR、LP1R、LP2Rの上水平カットオフラインCL2Rを形成するエッジ(前記右側基準エッジ16Rを含む)となる。
【0038】
さらに、前記シェード5の左側部分5Lの外周面のうち、前記基準短軸SC−SCから前記左側部分5Lの短軸SL−SL側の外周面であって、前記反射光L1と交わる交線は、図8(B)、(C)、(D)に示すように、右側配光パターンMPR、LP1R、LP2Rの下水平カットオフラインCL3Rを形成するエッジとなる。
【0039】
前記左側配光パターンMPL、LP1L、LP2Lの斜めカットオフラインCL1Lと下水平カットオフラインCL3Lとの交点は、左側エルボー点である。また、前記右側配光パターンMPR、LP1R、LP2Rの斜めカットオフラインCL1Rと下水平カットオフラインCL3Rとの交点は、右側エルボー点である。
【0040】
前記補助シェード6は、前記リフレクタ3と前記フレーム7との間に固定されている。前記補助シェード6には、前記シェード5で遮蔽されなかった反射光L1を前記投影レンズ4側に通す開口部17が設けられている。
【0041】
前記フレーム7は、筒形状をなす。前記フレーム7の前端の内周面には、前記投影レンズ4の全周縁が取り付けられている。この結果、前記投影レンズ4は、前記フレーム7に固定保持されている。また、前記リフレクタ3および前記補助シェード6も、前記フレーム7に固定保持されている。
【0042】
この実施例における車両用前照灯1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0043】
まず、放電灯2を点灯発光させる。すると、放電灯2からの光は、反射面11で反射する。その反射光L1は、反射面11の第2焦点F2に収束しさらに反射面11の第2焦点F2から放射(拡散)する。その際に、反射光L1の一部は、シェード5で遮蔽されて、遮蔽されない反射光L1は、ハイビーム用配光パターンHPL、HPRからカットオフラインを有する配光パターンMPL、MPR、LP1L、LP1R、LP2L、LP2Rまでの任意の配光パターンとして車両の前方に照射される。
【0044】
ここで、シェード5が、図5(A)、(A1)に示す左側通行用の配光パターンにおける基準位置に位置する。すると、シェード5の左側部分5Lの外周面と中間部分5Cの外周面と右側部分5Rの外周面とは、面一となる。この結果、図7(A)の左側通行のハイビーム用配光パターンHPLが車両の前方に照射される。
【0045】
つぎに、回転装置8の駆動でシェード5が、図5(A)、(A1)に示す基準位置から実線矢印方向(時計方向)に約45°回転して、図5(B)、(B1)に示す位置に位置する。すると、シェード5の左側部分5Lの外周面が右側部分5Rの外周面よりも外側に突出する。すなわち、シェード5の左側部分5Lの外周面が右側部分5Rの外周面よりも反射面11の第2焦点F2および投影レンズ4の焦点F3側に位置する。この結果、図7(B)の左側通行のハイウエイ用配光パターンMPLが車両の前方に照射される。
【0046】
つづいて、回転装置8の駆動でシェード5が、図5(B)、(B1)に示す位置から実線矢印方向(時計方向)に約45°回転して、図5(C)、(C1)に示す位置に位置する。すると、シェード5の左側部分5Lの外周面が右側部分5Rの外周面よりも外側に突出する。すなわち、シェード5の左側部分5Lの外周面が右側部分5Rの外周面よりも反射面11の第2焦点F2および投影レンズ4の焦点F3側に位置して、左側基準エッジ16Lが反射面11の第2焦点F2および投影レンズ4の焦点F3側に位置する。この結果、図7(C)の左側通行のロービーム用配光パターンLP1Lが車両の前方に照射される。この図7(C)の左側通行のロービーム用配光パターンLP1Lは、左側基準エッジ16Lが反射面11の第2焦点F2および投影レンズ4の焦点F3側に位置するので、カットオフラインCL1L、CL2L、CL3Lは、図7(C)の太線で示すように、明確なラインとなる。
【0047】
それから、回転装置8の駆動でシェード5が、図5(C)、(C1)に示す位置から実線矢印方向(時計方向)に約45°回転して、図5(D)、(D1)に示す位置に位置する。すると、シェード5の左側部分5Lの外周面が右側部分5Rの外周面よりも外側に突出する。すなわち、シェード5の左側部分5Lの外周面が右側部分5Rの外周面よりも反射面11の第2焦点F2および投影レンズ4の焦点F3側に位置する。この結果、図7(D)の左側通行の第2ロービーム用配光パターンLP2Lが車両の前方に照射される。この図7(D)の左側通行の第2ロービーム用配光パターンLP2Lは、前記の左側通行のロービーム用配光パターンLP1Lと比較して、配光パターン全体が下側に下がっている。
【0048】
そして、回転装置8の駆動でシェード5が、図5(D)、(D1)に示す位置から実線矢印方向(時計方向)に約45°回転して、図6(A)、(A1)に示す右側通行用の配光パターンにおける基準位置に位置する。すると、シェード5の左側部分5Lの外周面と中間部分5Cの外周面と右側部分5Rの外周面とは、面一となる。この結果、図8(A)の右側通行のハイビーム用配光パターンHPRが車両の前方に照射される。この図8(A)の右側通行のハイビーム用配光パターンHPRと前記の図7(A)の左側通行のハイビーム用配光パターンHPLとは、同一の配光パターンをなす。
【0049】
つぎに、回転装置8の駆動でシェード5が、図6(A)、(A1)に示す基準位置から実線矢印方向(時計方向)に約45°回転して、図6(B)、(B1)に示す位置に位置する。すると、シェード5の右側部分5Rの外周面が左側部分5Lの外周面よりも外側に突出する。すなわち、シェード5の右側部分5Rの外周面が左側部分5Lの外周面よりも反射面11の第2焦点F2および投影レンズ4の焦点F3側に位置する。この結果、図8(B)の右側通行のハイウエイ用配光パターンMPRが車両の前方に照射される。
【0050】
つづいて、回転装置8の駆動でシェード5が、図6(B)、(B1)に示す位置から実線矢印方向(時計方向)に約45°回転して、図6(C)、(C1)に示す位置に位置する。すると、シェード5の右側部分5Rの外周面が左側部分5Lの外周面よりも外側に突出する。すなわち、シェード5の右側部分5Rの外周面が左側部分5Lの外周面よりも反射面11の第2焦点F2および投影レンズ4の焦点F3側に位置して、右側基準エッジ16Rが反射面11の第2焦点F2および投影レンズ4の焦点F3側に位置する。この結果、図8(C)の右側通行のロービーム用配光パターンLP1Rが車両の前方に照射される。この図8(C)の右側通行のロービーム用配光パターンLP1Rは、右側基準エッジ16Rが反射面11の第2焦点F2および投影レンズ4の焦点F3側に位置するので、カットオフラインCL1R、CL2R、CL3Rは、図8(C)の太線で示すように、明確なラインとなる。
【0051】
それから、回転装置8の駆動でシェード5が、図6(C)、(C1)に示す位置から実線矢印方向(時計方向)に約45°回転して、図6(D)、(D1)に示す位置に位置する。すると、シェード5の右側部分5Rの外周面が左側部分5Lの外周面よりも外側に突出する。すなわち、シェード5の右側部分5Rの外周面が左側部分5Lの外周面よりも反射面11の第2焦点F2および投影レンズ4の焦点F3側に位置する。この結果、図8(D)の右側通行の第2ロービーム用配光パターンLP2Rが車両の前方に照射される。この図8(D)の右側通行の第2ロービーム用配光パターンLP2Rは、前記の右側通行のロービーム用配光パターンLP1Rと比較して、配光パターン全体が下側に下がっている。
【0052】
そして、回転装置8の駆動でシェード5が、図6(D)、(D1)に示す位置から実線矢印方向(時計方向)に約45°回転して、図5(A)、(A1)に示す右側通行用の配光パターンにおける基準位置に位置する。これにより、シェード5は、360°1回転する。
【0053】
このように、シェード5を回転装置8で回転させることにより、車両の前方に照射する配光パターンを、図9(A)に示すように、左側通行のハイビーム用配光パターンHPLからカットオフラインを有する配光パターンすなわちハイウエイ用配光パターンMPL、ロービーム用配光パターンLP1L、第2ロービーム用配光パターンLP2Lまで連続的に変化させることができ、また、図9(B)に示すように、右側通行のハイビーム用配光パターンHPRからカットオフラインを有する配光パターンすなわちハイウエイ用配光パターンMPR、ロービーム用配光パターンLP1R、第2ロービーム用配光パターンLP2Rまで連続的に変化させることができる。
【0054】
この実施例における車両用前照灯1は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0055】
この実施例における車両用前照灯1は、シェード5を回転装置8で回転させることにより、車両の前方に照射する配光パターンを、図9(A)に示すように、左側通行のハイビーム用配光パターンHPLからカットオフラインを有する配光パターンすなわちハイウエイ用配光パターンMPL、ロービーム用配光パターンLP1L、第2ロービーム用配光パターンLP2Lまで連続的に変化させることができ、また、図9(B)に示すように、右側通行のハイビーム用配光パターンHPRからカットオフラインを有する配光パターンすなわちハイウエイ用配光パターンMPR、ロービーム用配光パターンLP1R、第2ロービーム用配光パターンLP2Rまで連続的に変化させることができる。この結果、この実施例における車両用前照灯1は、配光パターンをハイビーム用配光パターンHPL、HPRからカットオフラインCL1L、CL2L、CL3L、CL1R、CL2R、CL3Rを有する配光パターンMPL、MPR、LP1L、LP2、MPR、LP1R、LP2Rまで急激な変化がなくスムーズに変化させることができ、しかも、車両の様々な走行状況に応じた配光パターンが得られる。
【0056】
すなわち、この実施例における車両用前照灯1は、車両の様々な走行状況に応じて、基準のハイビーム用配光パターンHPL、HPRの上側の部分を遮蔽して、カットオフラインCL1L、CL2L、CL3L、CL1R、CL2R、CL3Rを有する配光パターンMPL、MPR、LP1L、LP2、MPR、LP1R、LP2Rのうちから任意の配光パターンを得ることができる。
【0057】
また、この実施例における車両用前照灯1は、シェード5が、楕円柱形状をなし、左側部分5Lと右側部分5Rとが長軸方向LL−LL、LR−LRにずれていて、かつ、短軸方向SL−SL、SR−SRにおいてずれがない形状をなすものである。この結果、この実施例における車両用前照灯1は、シェード5の形状や構造が簡単となり、その分、配光制御を正確にかつ確実に行うことができ、しかも、製造コストを安価にすることができる。
【0058】
なお、この実施例においては、シェード5が楕円柱形状をなすものである。ところが、この発明においては、シェードの形状は、楕円柱形状以外の形状、たとえば、長円柱形状、その他の柱形状であれば良い。すなわち、断面が非円形でありかつ外周面が連続する曲面からなる柱形状であれば良い。
【符号の説明】
【0059】
1 車両用前照灯
2 放電灯(光源)
3 リフレクタ
4 投影レンズ
5 シェード
5L 左側部分
5C 中間部分
5R 右側部分
6 補助シェード
7 フレーム
8 回転装置
9 ソケット
10 発光部
11 反射面
12 透孔
13 回転軸
14 軸受
15 減速機構
16L 左側基準エッジ
16R 右側基準エッジ
17 開口部
HPL 左側通行のハイビーム用配光パターン
MPL 左側通行のハイウエイ用配光パターン
LP1L 左側通行のすれ違い用配光パターン
LP2L 左側通行の第2すれ違い用配光パターン
CL1L 左側配光パターンの下水平カットオフライン
CL2L 左側配光パターンの斜めカットオフライン
CL3L 左側配光パターンの上水平カットオフライン
EL 左側エルボー点
HPR 右側通行のハイビーム用配光パターン
MPR 右側通行のハイウエイ用配光パターン
LP1R 右側通行のすれ違い用配光パターン
LP2R 右側通行の第2すれ違い用配光パターン
CL1R 右側配光パターンの下水平カットオフライン
CL2R 右側配光パターンの斜めカットオフライン
CL3R 右側配光パターンの上水平カットオフライン
ER 右側エルボー点
HL−HR スクリーンの左右の水平線
VU−VD スクリーンの上下の垂直線
F1 反射面の第1焦点
F2 反射面の第2焦点
F3 投影レンズの焦点
Z1−Z1 第1反射面の光軸
Z3−Z3 投影レンズの光軸
L1 反射面からの反射光
F 前側
B 後側
U 上側
D 下側
L 左側
R 右側
O−O 軸
OL−OL 左側部分の中心
OR−OR 右側部分の中心
LL−LL 左側部分の長軸
LR−LR 右側部分の長軸
SL−SL 左側部分の短軸
SR−SR 右側部分の短軸
SC−SC 基準短軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロジェクタタイプの車両用前照灯において、
光源と、
前記光源からの光を反射させる反射面を有するリフレクタと、
前記反射面からの反射光を車両の前方に投影する投影レンズと、
前記反射面と前記投影レンズとの間に、車両の幅方向の軸方向に配置されていて、かつ、前記軸回りに回転可能に構成されていて、前記反射面からの反射光の一部を遮蔽するシェードと、
前記シェードを前記軸回りに回転させる回転装置と、
を備え、
前記シェードは、前記軸から外周面までの径方向距離が周方向の角度位置変化に伴って徐変する曲面からなる柱形状をなし、左側部分と右側部分とが前記軸に対して交差する方向にずれていて、かつ、前記軸から外周面までの径方向距離が最短となる部位においてずれがなくハイビーム用配光パターンを形成する部材であって、前記回転装置の駆動で前記軸回りに回転することにより、車両の前方に照射される配光パターンを前記ハイビーム用配光パターンからカットオフラインを有する配光パターンまで無段階で変化させる部材である、
ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記シェードは、楕円柱形状をなし、左側部分と右側部分とが長軸方向にずれていて、かつ、短軸方向においてずれがない、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−40248(P2011−40248A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185654(P2009−185654)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】