説明

車両用変速装置の遊星歯車装置

【課題】キャリヤ(非回転部材)とケースとの連結部で発生する衝撃音を経年的性能低下なく抑制することができる車両用変速機装置の遊星歯車装置を提供する。
【解決手段】キャリヤCA1に嵌め着けられた金属から成る内輪26およびケース12の嵌合穴36に嵌め着けられた金属から成る外輪38に設けられ、円環状の隙間を挟んで相対向する円筒状外周面46および円筒状内周面48と、それら円筒状外周面46と円筒状内周面48との間の隙間内に転動可能に収容され、キャリヤCA1とケース12との周方向の一方向および他方向の相対回転に応じて円筒状外周面46と円筒状内周面48との隙間に食い込むことでそれ以上の相対回転を抑制する金属から成る複数のローラ56とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用変速装置の一部としてケース内に収容される遊星歯車装置において、その構成要素のいずれか1を非回転部材として前記ケースに相対回転不能に連結するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
サンギヤと、そのサンギヤに噛み合う複数のピニオンギヤを自転可能に支持するキャリヤと、それら複数のピニオンギヤに噛み合うリングギヤとを備えて車両用変速装置の一部としてケース内に収容され、前記サンギヤ、キャリヤ、およびリングギヤのいずれか1の構成要素が非回転部材として前記ケースに相対回転不能に嵌め着けられた車両用変速装置の遊星歯車装置が知られている。例えば、特許文献1に記載されたものがそれである。この特許文献1では、リングギヤがケースに相対回転不能に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平3−72144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の車両用変速装置の遊星歯車装置では、前記非回転部材とケースとを完全に固定した場合には耐久性や振動性に悪影響を及ぼすことから、スプライン嵌合により互いに径方向および回転方向に所定のガタを有する状態で連結されている。しかしながら、非回転部材とケースとのスプライン歯同士が車両の急発進時や急加減速時などにぶつかり合うことで衝撃音(歯打ち音)が発生するという問題があった。なお、上記所定のガタを少なくすることで衝撃音を小さくするということが考えられるが、上記固定部材およびケースは量産するための所定の寸法交差を有して製作されることから、上記ガタを少なくすることには限界がある。
【0005】
これに対して、前記特許文献1には、前記非回転部材としてのリングギヤのスプライン歯に弾性部材をコーティングして前記ガタを埋めることにより、前記衝撃音が発生することおよび遊星歯車装置で発生する噛合振動がスプライン嵌合部を通してケースや他の遊星歯車装置の噛み合い部などに伝わることを抑制する技術が記載されている。しかし、上記非回転部材とケースとの間のスプライン嵌合部は常に駆動力を受ける部位であるため、経年による弾性部材の耐久性の低下によって上記衝撃音抑制および噛合振動伝達抑制の効果が消失するという問題があった。
【0006】
本発明は以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的とするところは、遊星歯車装置の構成要素のいずれか1が非回転部材として前記ケースに相対回転不能に連結される形式のものにおいて、その非回転部材とケースとの連結部で発生する衝撃音を経年的性能低下なく抑制することができる車両用変速機装置の遊星歯車装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(1)サンギヤと、そのサンギヤに噛み合う複数のピニオンギヤを自転可能に支持するキャリヤと、それら複数のピニオンギヤに噛み合うリングギヤとを備えて車両用変速装置の一部としてケース内に収容され、前記サンギヤ、キャリヤ、およびリングギヤのいずれか1が非回転部材として前記ケースに相対回転不能に嵌め着けられた車両用変速装置の遊星歯車装置であって、(2)前記非回転部材の外周面またはそれに嵌め着けられた内軸の外周面および前記ケースの嵌合穴またはそれに嵌め着けられた外輪の内周面に設けられ、円環状の隙間を挟んで相対向する円筒状外周面および円筒状内周面と、(3)前記円筒状外周面と円筒状内周面との間の隙間内に転動可能に収容され、前記非回転部材と前記ケースとのいずれの方向の相対回転に応じて前記円筒状外周面と前記円筒状内周面との隙間に食い込むことでそれ以上の相対回転を抑制する複数の転動体とを備えることにある。
【発明の効果】
【0008】
請求項1にかかる発明の車両用変速装置の遊星歯車装置によれば、前記非回転部材の外周面またはそれに嵌め着けられた内軸の外周面および前記ケースの嵌合穴またはそれに嵌め着けられた外輪の内周面に設けられ、円環状の隙間を挟んで相対向する円筒状外周面および円筒状内周面と、前記円筒状外周面と円筒状内周面との間の隙間内に転動可能に収容され、前記非回転部材と前記ケースとのいずれの方向の相対回転に応じて前記円筒状外周面と前記円筒状内周面との隙間に食い込むことでそれ以上の相対回転を抑制する複数の転動体とを備えることから、トルク伝達時において、非回転部材とケースとの相対回転に応じてそれら又はそれらに嵌め着けられた内軸および外輪に設けられた円筒状外周面および円筒状内周面と転動体との接触圧力が連続的に増加し、それに伴い連続的に増加する円筒状外周面および円筒状内周面と転動体との間の摩擦力が非回転部材に入力されるトルクの増加に伴って連続的に増加する反力トルクとして作用して非回転部材とケースとの相対回転を抑制するので、その相対回転区間で非回転部材とケースとの連結部で衝撃音が発生することを抑制することができる。また、転動体、および円筒状外周面および円筒状内周面が形成される部材が、経年的性質変化が比較的起こりにくい部材例えば鋼などの金属等から成る場合には、非回転部材とケースとの連結部で衝撃音が発生することを経年的性能低下なく抑制することができる。
【0009】
ここで、好適には、本発明は、前記キャリヤが前記ケースに所定以上の相対回転不能に嵌め着けられた車両用変速装置の遊星歯車装置に適用される。そして、上記遊星歯車装置は、外周部に円筒状外周面を有してキャリヤの外周面に嵌め着けられた内軸と、円環状の隙間を挟んでその内軸の円筒状外周面に対向する円筒状内周面を有してケースの嵌合穴に嵌め着けられた外輪と、上記円筒状外周面と円筒状内周面との間の隙間内に転動可能に収容され、キャリヤとケースとの周方向の一方向および他方向の相対回転に応じて円筒状外周面と円筒状内周面との隙間に食い込むことでそれ以上の相対回転を抑制する複数の転動体とを備えて構成される。
【0010】
また、好適には、前記円筒状外周面と円筒状内周面との少なくとも一方は、それら円筒状外周面と円筒状内周面との間の隙間の半径方向の間隔が周方向の一方向および他方向に向かうほど小さくなるように形成された複数の第1凹部および第2凹部を有しており、前記複数の転動体は、それら複数の第1凹部および第2凹部に対応する前記円筒状外周面と円筒状内周面との間の隙間内に転動可能に収容される。
【0011】
また、好適には、前記複数の第1凹部および第2凹部は、前記円筒状内周面に穿設された前記外輪の軸心と平行な複数本の溝により形成されたものであり、前記複数の転動体は、それら複数の第1凹部および第2凹部と前記円筒状外周面との間の隙間内にそれぞれ配設された円筒状部材である。このようにすれば、転動体と円筒状外周面および円筒状内周面とが線接触となるので、例えば転動体や円筒状外周面および円筒状内周面が摩耗することによってそれらの間に所定以上のガタが形成されることによる経年的性能低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の車両用変速機の遊星歯車装置の一部を示す図であって、図2のI-I視断面図である。
【図2】図1のII-II矢視部断面を含む遊星歯車装置を示す一部断面図である。
【図3】従来の車両用変速装置の遊星歯車装置において、キャリヤとケースとの連結部分を一部を切欠いて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明の車両用変速機の遊星歯車装置10の一部を示す断面図である。なお、図1では、回転中心である軸心Cの下半分が省略されている。図2は、図1のII-II矢視部断面を含む遊星歯車装置10を示す一部断面図である。図1および図2において、この遊星歯車装置10は、車両用変速機の一部としてケース12内に収容されている。本実施例では、遊星歯車装置10は、例えば、軸心Cまわりの回転可能に設けられたサンギヤS1と、そのサンギヤS1に噛み合う複数のピニオンギヤP1をそれぞれ複数のピニオンシャフト14を介して回転可能に支持するキャリヤCA1と、それら複数のピニオンギヤP1に噛み合うリングギヤR1とを備えて構成されている。上記サンギヤS1は、軸心Cまわりの回転可能に軸受16を介してケース12に支持されるとともに図示しない電動機等のトルクが伝達される回転軸18の外周部に例えばスプライン嵌合により嵌め着けられている。また、上記キャリヤCA1は、非回転部材としてケース12に所定以上の相対回転不能に嵌め着けられている。また、上記リングギヤR1は、軸受20を介してケース12に軸心Cまわりの回転可能に支持されている。なお、そのリングギヤR1の外周部には、駆動輪側の例えば差動歯車装置等に連結される出力ギヤ22が一体的に設けられている。
【0015】
以下では、非回転部材としてのキャリヤCA1とケース12との連結構造に関して詳しく説明する。
【0016】
上記キャリヤCA1は、ピニオンギヤP1の軸心C方向の両側に設けられ、そのピニオンギヤP1に挿通されたピニオンシャフト14の両端を支持する一対の円環状のキャリヤ本体部24、およびそれら一対のキャリヤ本体部24を相互に一体的に連結する図示しない連結部とを備えて構成されている。
【0017】
上記一対のキャリヤ本体部24のうち軸受16側の一方(以下、キャリヤ本体部24の一方と記載する)の外周部には、例えば鋼などの金属から成る円筒状の内輪(内軸)26が例えば圧入により嵌め着けられている。その内輪26の内周面28およびキャリヤ本体部24の一方の外周面30には、半径方向外側に向けて複数の凹部32および凸部34がそれぞれ設けられている。内輪26およびキャリヤ本体部24の一方は、それら凸部32と凹部34とが嵌め合わされることにより相対回転不能に固定されている。
【0018】
ケース12の内周面の一部には、円筒状の内周面を有する嵌合穴36が形成されており、その嵌合穴36には、例えば鋼などの金属から成る円筒状の外輪38が例えば圧入により嵌め着けられている。その外輪38の外周面40および嵌合穴36には、半径方向外側に向けて複数の凸部42および凹部44がそれぞれ設けられている。外輪38およびケース12は、それら凸部42と凹部44とが嵌め合わされることにより相対回転不能に固定されている。
【0019】
上記内輪26の外周部(外周面)および外輪38の内周部(内周面)には、円環状の隙間を挟んで径方向に対向する円筒状外周面46および円筒状内周面48が形成されている。そして、上記円筒状内周面48は、円筒状外周面46との間の隙間の半径方向の間隔が周方向の一方向すなわち図2のA方向に向かうほど除々に小さくなるように周方向に所定間隔で複数位置(本実施例では3位置)形成された複数の第1凹部50と、円筒状外周面46との間の隙間の半径方向の間隔が周方向の他方向すなわち図2のB方向に向かうほど除々に小さくなるように周方向に所定間隔で複数位置(本実施例では3位置)形成された複数の第2凹部52とを有している。これら複数の第1凹部50および第2凹部52は、円筒状内周面48に穿設された軸心Cと平行な複数本の溝54により形成されている。
【0020】
上記複数の第1凹部50および第2凹部52と円筒状外周面46との間の隙間内には、それら隙間内で転動可能な例えば鋼などの金属から成る円筒状のローラ56が収容されている。第1凹部50と円筒状外周面46との間の隙間内に収容されたローラ56は、内輪26と外輪との周方向の一方向の相対回転に応じて第1凹部50と円筒状外周面46との隙間に食い込むことでそれ以上の相対回転を抑制するようになっている。また、第2凹部52と円筒状外周面46との間の隙間内に収容されたローラ56は、内輪26と外輪との周方向の他方向の相対回転に応じて第2凹部52と円筒状外周面46との隙間に食い込むことでそれ以上の相対回転を抑制するようになっている。
【0021】
このように構成された遊星歯車装置10では、前記電動機等から回転軸18に入力されたトルクが、サンギヤS1およびピニオンギヤP1を通してリングギヤR1に入力されるまでに増幅されて伝達されるようになっている。このとき、キャリヤCA1にも所定のトルクが入力されるが、そのキャリヤCA1およびそれに連結された内輪26が外輪38に対して相対回転しようとする場合には、前述のように、ローラ56が内輪26の円筒状外周面46と外輪38の円筒状内周円48との間の隙間に食い込むことで内輪26およびキャリヤCA1のそれ以上の回転を抑制するようになっているため、キャリヤCA1はケース12に対して所定以上の相対回転不能に固定されるようになっている。すなわち、キャリヤCA1とケース12との相対回転に応じてそれらの間に設けられた内輪26および外輪38とローラ56との接触圧力が連続的に増加し、それに伴い連続的に増加する内輪26および外輪38とローラ56との間の摩擦力の接線方向成分が前記キャリヤCAおよび内輪26に入力されるトルクの増加に伴って連続的に増加する反力トルクとして作用するようになっている。このように、内輪26および外輪38との間の隙間においてローラ56が挟まれることで連続的に増加する反力トルクによりキャリヤCA1とケース12との相対回転を抑制するようになっているため、後述の図3に示すようなスプライン嵌合によりキャリヤCA1とケース12とを固定する形式のように歯打ち音等の衝撃音が発生しない。
【0022】
ここで、キャリヤCA1とケース12とは、上述のようにローラ56が内輪26の円筒状外周面46と外輪38の円筒状内周面48との間の隙間に食い込むまでは僅かに相対回転するようになっており、この所定の相対回転区間で反力トルクが連続的に増加する過程において遊星歯車装置10で発生する噛合振動がケース12に伝達されずに吸収されるようになっている。なお、上記ローラ56が隙間に食い込むまでのキャリヤCA1とケース12との相対回転量や第1凹部50および第2凹部52の形状は、例えば遊星歯車装置10で発生する噛合振動がケース12に伝達されずに効果的に吸収されるように予め実験的に求められて設定される。
【0023】
因みに、図3は、従来の車両用変速装置の遊星歯車装置におけるキャリヤCA1とケース12との連結部分を一部を切欠いて示す図である。図3において、従来の遊星歯車装置では、キャリヤCA1とケース12とは、スプライン嵌合により互いに径方向および回転方向に所定のガタを有する状態で連結されている。上記ガタは、完全に固定される場合に耐久性や振動性に与える悪影響を無くするためのもの、すなわち遊星歯車装置10で発生する噛合振動をケース12に伝達される前に吸収するために設けられるものであるが、キャリヤCA1とケース12とのスプライン歯同士が車両の急発進時や急加減速時などにぶつかり合うことで衝撃音(歯打ち音)が発生するという問題が生じる。
【0024】
上述のように、本実施例の車両用変速装置の遊星歯車装置10によれば、非回転部材としてのキャリヤCA1の外周部に嵌め着けられた内輪(内軸)26の外周面およびケース12の嵌合穴36に嵌め着けられた外輪38の内周面に設けられ、円環状の隙間を挟んで相対向する円筒状外周面46および円筒状内周面48と、それら円筒状外周面46と円筒状内周面48との間の隙間内に転動可能に収容され、キャリヤCA1とケース12との周方向の一方向および他方向の相対回転に応じて円筒状外周面46と円筒状内周面48との隙間に食い込むことでそれ以上の相対回転を抑制する複数のローラ(転動体)56とを備えることから、トルク伝達時において、キャリヤCA1とケース12との相対回転に応じてそれらの間に設けられた内輪26および外輪38とローラ56との接触圧力が連続的に増加し、それに伴い連続的に増加する内輪26および外輪38とローラ56との間の摩擦力の接線方向成分が前記キャリヤCA1および内輪26に入力されるトルクの増加に伴って連続的に増加する反力トルクとして作用してキャリヤCA1とケース12との相対回転を抑制するので、その相対回転区間でキャリヤCA1とケース12との連結部で衝撃音が発生することを抑制することができる。また、ローラ56、内輪26、および外輪38が、経年的性質変化が比較的起こりにくい部材例えば鋼などの金属から成るので、キャリヤCA1とケース12との連結部で衝撃音が発生することを経年的性能低下なく抑制することができる。
【0025】
また、本実施例の車両用変速装置の遊星歯車装置10によれば、円筒状内周面48は、円筒状外周面46との間の隙間の半径方向の間隔が周方向の一方向および他方向に向かうほど小さくなるように形成された複数の第1凹部50および第2凹部52を有しており、複数のローラ56は、それら複数の第1凹部50および第2凹部52に対応する円筒状内周面48と円筒状外周面46との間の隙間内に転動可能に収容されることから、トルク伝達時において、キャリヤCA1とケース12との一方向および他方向の相対回転に応じてそれらの間に設けられた内輪26および外輪38とローラ56との接触力が増加し、それに伴い増加する内輪26および外輪38とローラ56との間の摩擦力の接線方向成分が前記キャリヤCAおよび内輪26に入力される一方向および他方向のトルクに抗う反力トルクとして作用するようになっているので、キャリヤCA1とケース12との連結部で衝撃音が発生することを抑制することができる。
【0026】
また、本実施例の車両用変速装置の遊星歯車装置10によれば、複数の第1凹部50および第2凹部52は、円筒状内周面48に穿設された軸心Cと平行な複数本の溝54により形成されたものであり、複数のローラ56は、それら複数の第1凹部50および第2凹部52と円筒状外周面46との間の隙間内にそれぞれ配設された円筒状部材であることから、ローラ56と円筒状外周面46および円筒状内周面48とが線接触となるので、例えばローラ56や円筒状外周面46および円筒状内周面48が摩耗することによってそれらの間に所定以上のガタが形成されることによる経年的性能低下を抑制することができる。
【0027】
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、別の態様でも実施され得る。
【0028】
たとえば、前述の実施例において、遊星歯車装置10は、キャリヤCA1が非回転部材としてケース12に連結される形式のものであったが、これに限らず、サンギヤS1或いはリングギヤR1がケース12に連結される形式のものであってもよい。その際、その連結部には、内輪26、外輪38、および複数のローラ56を備える連結装置が用いられてもよい。
【0029】
また、前述の実施例において、円筒状外周面46および円筒状内周面48は、キャリヤCA1の外周部に嵌め着けられた内輪26の外周面およびケース12に嵌め着けられた外輪38の内周面に形成されていたが、これに限らない。例えば、円筒状外周面46は、キャリヤCA1の外周部に形成されてもよいし、また、円筒状内周面48は、ケースの嵌合穴36に形成されてもよい。そのため、内輪26および外輪38は、必ずしも設けられなくてもよい。
【0030】
また、前述の実施例において、第1凹部50および第2凹部52は、円筒状内周面48に備えられていたが、これに限らず、円筒状外周面46および円筒状内周面48のどちらか一方または両方に備えられてもよい。
【0031】
また、前述の実施例において、ローラ56は、円筒状部材から成るものであったが、これに限らず、例えば、球状部材や楕円筒状部材などの転動体であってもよい。
【0032】
また、前述の実施例では、円筒状内周面48に形成された第1凹部50および第2凹部52と円筒状外周面46との間の隙間内に複数のローラ56が収容され、内輪26と外輪38との相対回転時にそれら複数のローラ56が第1凹部50および第2凹部52と円筒状外周面46との隙間に食い込むことで、それ以上の相対回転を抑制するようになっていたが、これに限られない。例えば、上記第1凹部50および第2凹部52は形成されず、円筒状内周面48と円筒状外周面46との間の隙間に非真円形状例えば楕円形状や角が丸い多角形状、或いはそれらが組合わされた形状の断面を有する複数の筒状部材(転動体)が収容され、内輪26と外輪38との相対回転時にそれら複数の筒状部材が円筒状内周面48と円筒状外周面46との隙間に食い込むことで、それ以上の相対回転を抑制するよう構成されてもよい。
【0033】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0034】
10 遊星歯車装置
12 ケース
26 内輪(内軸)
36 嵌合穴
38 外輪
46 円筒状外周面
48 円筒状内周面
50 第1凹部
52 第2凹部
56 ローラ(転動体)
CA1 キャリヤ
P1 ピニオンギヤ
R1 リングギヤ
S1 サンギヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンギヤと、該サンギヤに噛み合う複数のピニオンギヤを自転可能に支持するキャリヤと、該複数のピニオンギヤに噛み合うリングギヤとを備えて車両用変速装置の一部としてケース内に収容され、該サンギヤ、キャリヤ、およびリングギヤのいずれか1が非回転部材として前記ケースに相対回転不能に嵌め着けられた車両用変速装置の遊星歯車装置であって、
前記非回転部材の外周面またはそれに嵌め着けられた内軸の外周面および前記ケースの嵌合穴またはそれに嵌め着けられた外輪の内周面に設けられ、円環状の隙間を挟んで相対向する円筒状外周面および円筒状内周面と、
前記円筒状外周面と円筒状内周面との間の隙間内に転動可能に収容され、前記非回転部材と前記ケースとのいずれの方向の相対回転に応じて前記円筒状外周面と前記円筒状内周面との隙間に食い込むことでそれ以上の相対回転を抑制する複数の転動体と
を、備えることを特徴とする車両用変速装置の遊星歯車装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−216592(P2010−216592A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65243(P2009−65243)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】