車両用天井材
【課題】 吸音性能をより一層高めることができる車両用天井材を提供する。
【解決手段】 半硬質ウレタンフォームからなる基材26と、基材26を挟むように配設される補強用の表面側繊維層27および裏面側繊維層28と、表面側繊維層27の表面に設けられ車室内の天井面を形成する表皮層31と、裏面側繊維層28の裏面に塗布した接着剤Sによって裏面側繊維層28に接着される通気止め用の裏面層32と、を積層してなる車両用天井材20であって、裏面側繊維層28と裏面層32との間に、裏面層32よりも幅狭の接着防止層33を介在させ、裏面層32は、裏面側繊維層28に接着される左右の接着領域と、左右の接着領域の間に設けられ接着防止層33により接着が防止される非接着領域と、を有する。
【解決手段】 半硬質ウレタンフォームからなる基材26と、基材26を挟むように配設される補強用の表面側繊維層27および裏面側繊維層28と、表面側繊維層27の表面に設けられ車室内の天井面を形成する表皮層31と、裏面側繊維層28の裏面に塗布した接着剤Sによって裏面側繊維層28に接着される通気止め用の裏面層32と、を積層してなる車両用天井材20であって、裏面側繊維層28と裏面層32との間に、裏面層32よりも幅狭の接着防止層33を介在させ、裏面層32は、裏面側繊維層28に接着される左右の接着領域と、左右の接着領域の間に設けられ接着防止層33により接着が防止される非接着領域と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用天井材に関し、より詳細には、基材、表皮層、繊維層、裏面層を積層した車両用天井材に、高い吸音性能を付与する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、基材の表面側に表皮層を設け、基材の裏面側に裏面層を設けた車両用天井材が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
図11は、従来の車両用天井材の構成例を説明する図であり、車両用天井材100は、ウレタン製の基材101と、基材101を挟むように配設される表面側繊維層102および裏面側繊維層103と、表面側繊維層102の表面に設けられ車室の天井面を形成する表皮層104と、裏面側繊維層103の裏面に設けられる裏面層105と、を積層してなる。
【0004】
車両用天井材100のうち、基材101、表面側繊維層102、裏面側繊維層103、表皮層104は、通気性の材料で構成される。このため、裏面層105を非通気性の材料で構成することにより、車室内から天井材100の裏側への空気の流れを止め、表皮層104の表面に埃等が付着することを防止している。
【0005】
このような天井材100の製造方法を図12に基づいて説明する。なお、図12では、成形素材の向きに合わせ、上位に表皮層104を配置し、下位に裏面層105を配置している。
【0006】
先ず、図12(a)に示すように、基材101、表面側繊維層102、裏面側繊維層103、表皮層104、裏面層105を積層させて、成形素材106を準備する。成形素材106のうち表面側繊維層102および裏面側繊維層103のそれぞれの表裏両面には、予め、接着剤107が全面に亘って塗布されている。次に、図12(b)に示すように、成形素材106を上型108および下型109で挟んでホットプレス成形を行う。このとき、表皮層104の裏面を表面側繊維層102の表面に接着し、裏面層105の表面を裏面側繊維層103の裏面に接着する。これにより、全ての層を一体化して所定形状の天井材100を得る。
【0007】
ところで、車両の静粛性が求められる中、吸音性能をより一層高めた天井材が求められている。しかしながら、従来の天井材100では、吸音性能が基材101の発泡密度や各層の厚みで決まるため、吸音性能の向上には限界がある。
【0008】
そこで、特許文献2では、車両用内装材において、内装基材(あるいは流出防止フィルム)と赤外線反射部材との間に制振部材を配置する技術が提案されている。この技術では、制振部材により振動を吸収して遮音効果を高めるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−280666号公報
【特許文献2】特開2009−126496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2に開示される技術においても、制振部材は、内装基材あるいは流出防止フィルムに単に貼られた1枚の層に過ぎず、上述した天井材100と同様に、吸音性能は各層の仕様(発泡密度や厚み)で決まるため、さらなる吸音性能向上は困難である。
【0011】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、吸音性能をより一層高めることができる車両用天井材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、基材と、前記基材の表面側に設けられ車室内の天井面を形成する表皮層と、前記基材の裏面側に設けられる補強用の繊維層と、前記繊維層の裏面に付着させた接着剤と、前記接着剤により前記繊維層に接着される通気止め用の裏面層と、を有する車両用天井材において、前記繊維層と前記裏面層との間に、前記裏面層よりも幅狭の接着防止層を有することを特徴とする。
【0013】
上記発明は、前記裏面層に、前記基材側に凹むと共に前記接着防止層を潰して前記接着防止層の裏面に前記接着剤を染み出させる凹部を設け、前記凹部と前記接着防止層とを、前記染み出した接着剤により接着したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、裏面層は、接着防止層と重なる部分で繊維層との接着が防止される。これにより、裏面層が浮張で接着されるため、膜振動による吸音効果を得ることができる。結果、より高い吸音性能が得られる車両用天井材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかる第1実施形態の車両用天井材を備える車両の斜視図である。
【図2】図1のC矢視図であり、車両用天井材の平面図である。
【図3】第1実施形態の車両用天井材の層構成を説明する断面図である。
【図4】第1実施形態の車両用天井材の製造方法を説明する図であり、(a)は素材準備工程を説明する図、(b)は成形工程を説明する図である。
【図5】第1実施形態の車両用天井材の構成を説明する図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のb−b線断面図、(c)は(b)のc部拡大図である。
【図6】第2実施形態の車両用天井材の製造方法および構成を説明する図であり、(a)は素材準備工程を説明する図、(b)は車両用天井材の平面図である。
【図7】第3実施形態の車両用天井材の製造方法を説明する図であり、(a)は凸部の構成を説明する図、(b)は凸部の作用を説明する図である。
【図8】第3実施形態の車両用天井材の平面図である。
【図9】第4実施形態の車両用天井材の平面図である。
【図10】第4実施形態の車両用天井材の製造方法および構成を説明する図であり、(a)は凸部の構成を説明する図、(b)は凸部の作用を説明する図、(c)は凹部にワイヤーハーネスを固定した状態を表す断面図である。
【図11】従来の車両用天井材の基本構成を説明する図である。
【図12】(a)は従来の車両用天井材の層構成を説明する断面図、(b)は従来の車両用天井材の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための第1実施形態について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。また、左・右は、車両の進行方向に対する左・右とする。また、天井材の各層の表面は、車室に向く側の面とし、各層の裏面は、車両のルーフに向く側の面とする。
【0017】
図1に示すように、車両10は、車体11、前輪12、後輪13、車室14を備える。車体11は、車室14の上方を覆うルーフ15を備える。ルーフ15の内側には、車室14の天井面を内装する車両用天井材20が設けられる。
【0018】
図2に示すように、天井材20は、平面視で略長方形を呈しており、前部21が略平板状に形成される。前部21よりも後方部分には、中央に行くに従って高くなる湾曲部22が形成される。天井材20には、室内灯(いわゆるルームランプやマップランプなど)を取り付けるための開口部23や、サンバイザーを取り付けるための開口部24や、グリップを取り付けるための開口部25が設けられる。
【0019】
次に、天井材20の層構成を図3に基づいて説明する。
図3に示すように、天井材20は、基材26と、基材26を挟むように配設される補強用の表面側繊維層27および裏面側繊維層28と、表面側繊維層27の表面に設けられ車室14(図1参照)内の天井面を形成する表皮層31と、裏面側繊維層28の裏面に接着される通気止め用の裏面層32と、を積層してなる。そして、裏面側繊維層28と裏面層32との間には、裏面側繊維層28よりも面積の小さい幅狭の接着防止層33が介在される。なお、図3では、製造工程における各層の位置に合わせ、上位に表皮層31を配置し、下位に裏面層32を配置している。
【0020】
基材26は、半硬質ウレタンフォーム等の発泡材料からなる。表面側繊維層27および裏面側繊維層28は、ガラスマット等の繊維材料からなり、それぞれの表裏両面には、全面に亘って接着剤S(図中、多数の黒い点で表す)が塗布される。表面側繊維層27および裏面側繊維層28のそれぞれは、天井材20を補強する補強層であると共に、表皮層31および裏面層32を基材26側に接着する接着層としての役割も果たす。
【0021】
表皮層31は、不織布、織布、ニット等の通気性の材料から任意に選択される。裏面層32は、非通気性の材料で構成され、たとえば、車室内の温度上昇も抑制可能なアルミ蒸着フィルム等の遮熱材料から選択することが好ましい。接着剤Sとしては、イソシアネート等の湿気硬化型接着剤または熱硬化性樹脂接着剤が好適である。なお、ここでは、表面側繊維層27および裏面側繊維層28に接着剤Sを塗布して表皮層31および裏面層32を接着するようにしたが、基材26に接着剤を塗布または含侵させるようにしても差し支えない。この場合、基材26に塗布または含侵させた接着剤を表面側繊維層27および裏面側繊維層28に浸透させ、表面側繊維層27の表面および裏面側繊維層28の裏面に接着剤を付着させる。この付着した接着剤によって、表面側繊維層27および裏面側繊維層28のそれぞれに表皮層31および裏面層32を接着する。
【0022】
接着防止層33の長さ寸法(車両長さ方向の長さ)は、裏面層32の長さと同程度である。接着防止層33の幅寸法(車両幅方向の寸法)W1は、裏面層32や裏面側繊維層28の幅寸法W2よりも小さく設定される。接着防止層33の材質は、紙や、合成樹脂製フィルムなど、任意の材料から選択可能であるが、ポリエステル製スパンレースに代表される各種レースや不織布、スラブウレタン等の多孔質材料など、通気性を有する材料が好ましい。
【0023】
次に、第1実施形態の天井材20の製造方法を図4に基づいて説明する。
天井材20の製造方法は、成形素材を得る素材準備工程と、この成形素材を用いてホットプレス成形を行う成形工程とを含む。
【0024】
図4(a)に示すように、素材準備工程では、基材26、表面側繊維層27、裏面側繊維層28、表皮層31および裏面層32を積層させる共に、裏面側繊維層28と裏面層32の間に、接着防止層33を車両長さ方向に沿って介在させ、成形素材35を得る。このとき、接着防止層33の左右両端(車両幅方向両端)を裏面層32の両端よりも所定の幅(たとえば(W2−W1)/2)だけ中央側に位置させる
【0025】
次に、成形素材35を成形金型40に搬送し、セットする。成形工程では、表皮層31側を成形する第1の金型(上型)41および裏面層32側を成形する第2の金型(下型)42からなる成形金型40を用い、図4(b)に示すように、上型41と下型42を合わせて型締めし、成形素材35を上型41と下型42で挟む。このとき、裏面層32のうち、接着防止層33よりも車両幅方向外側の左右の領域では、裏面層32と裏面側繊維層28とを接触させる。一方、左右の領域の間では、接着防止層33により裏面層32と裏面側繊維層28とを接触させないようにして、ホットプレス成形を行う。
【0026】
すると、図5(a)および(b)に示すように、裏面層32は、裏面側繊維層28に接着される左右の接着領域Aと、接着が防止された非接着領域B(図5(a)中、斜線で模式的に示す領域)と、を有するようになる。
【0027】
すなわち、図5(c)に示すように、左右の接着領域Aでは、接着剤Sで裏面層32と裏面側繊維層28とがしっかりと接着されるが、中央側の非接着領域Bでは、接着防止層33によって、裏面層32と裏面側繊維層28とが接着されない。これにより、浮張の裏面層32が得られる。結果、裏面層32が矢印(1)で示す方向に振動可能になり、膜振動による吸音性能を天井材20に付与することができる。
【0028】
以上、説明した第1実施形態によれば、膜振動による吸音効果を得ることができる。結果、吸音性能をより一層高めることができる。また、接着防止層33の幅寸法W1を調整することにより、接着領域Aおよび非接着領域Bのそれぞれの位置や面積を調整することができるので、天井材20に求められる品質に応じて、容易に吸音性能を調整することができる。
【0029】
(第2実施形態)
次に、本発明にかかる第2実施形態を図6に基づいて説明する。なお、前述した第1実施形態と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする(第3実施形態以降についても同様)。
【0030】
前述した第1実施形態では、1枚の接着防止層を用いて1つの非接着領域を形成したが、この他、接着防止層を車両幅方向に複数枚に分割してもよい。たとえば、図6(a)に示すように、裏面側繊維層28と裏面層32との間に、複数枚(ここでは2枚)の接着防止層34を車両幅方向に離間させて並べる。そして、成形工程において、隣り合う2枚の接着防止層34の間では、裏面側繊維層28と裏面層32とを接着する。これにより、図6(b)に示すように、非接着領域B1を複数設け、隣り合う2列の非接着領域B1の間を接着領域A1として設定することができる。
【0031】
第2実施形態によれば、前述した第1実施形態と同様の作用効果が得られることに加え、左右の接着領域A以外の領域においても、裏面層32を部分的に接着することができる。これにより、裏面層32が中央付近で過度に浮くことを防止できる。また、接着領域および非接着領域のそれぞれの位置や面積をより細かく調整することができ、設計の自由度を高めることができる。
【0032】
(第3実施形態)
次に、本発明にかかる第3実施形態を図7に基づいて説明する。
図7(a)に示すように、第3実施形態では、前述した第1実施形態の基本構成において、下型42の成形面42aに、上型41に向けて突出する凸部43を設けたものである。凸部43は、車両長さ方向に延びるように形成される。なお、凸部43の構成は、車両長さ方向に延びる形態に限定されるものではない。たとえば、凸部43を車両幅方向あるいは斜め方向に延びるように形成してもよいし、複数の凸部43を任意の方向に並べたり互いに交差させたりしてもよい。
【0033】
凸部43の作用を説明する。図7(b)に示すように、成形工程では、凸部43を用いて、裏面層32の裏面に凹部44を成形する。同時に、接着防止層33を潰して、この潰した部分の裏面33aに接着剤Sを染み出させる。そして、染み出した接着剤Sにより、凹部44と接着防止層33とを接着する。結果、図8に示すように、非接着領域Bのたとえば中央部において、裏面層32と接着防止層33とが部分的に接着された接着領域A2を設けることが可能となる。
【0034】
ここで、裏面層32の裏面側の構成に着目する。一般に、裏面層32の裏面には、各種部品を組み付けるための開口部(図2中、符号23〜25)や組み付け位置を示す罫書線が設けられる。このような開口部や罫書線の周囲では、裏面層32が接着されていないと、開口部が浮いたり罫書線が見づらくなったりするため、部品の組み付けに支障が出るおそれがある。
【0035】
この点、第3実施形態では、非接着領域B内であっても、裏面層32と接着防止層33とを意図的に接着することが可能である。よって、開口部や罫書線の周囲など、裏面層32の必要箇所を部分的に接着することができ、支障なく部品の組み付けを行うことができる。なお、接着剤Sは、接着防止層33に浸透しやすい液状の湿気硬化型接着剤または熱硬化性樹脂接着剤を選択することが望ましい。
【0036】
ここで、接着防止層33の好適な質量について述べる。
接着防止層33を潰したとき、接着剤Sを良好に染み出させるため、接着防止層33の材質は、接着剤Sが浸透しやすい通気性の材料、たとえば、ポリエステル製スパンレースに代表される各種レースや不織布、スラブウレタン等の多孔質材料など、から選択することが有効である。また、膜振動を得るためには、膜振動発生層まで音が入射する必要があり、この点においても、接着防止層33を構成する材料は、通気性の材料であることが好ましい。但し、裏面側繊維層28の裏面の接着剤Sに対して、接着防止層33の質量を小さく設定しすぎると、非接着領域Bにおいて接着防止層33の裏面に接着剤Sが染み出してしまい、膜振動が得られなくなるおそれがある。
【0037】
一方、接着防止層33の質量を大きく設定しすぎると、潰した部分の裏面33aに接着剤Sが染み出さず、非接着領域Bを部分的に接着することができなくなる。したがって、接着防止層33を潰さない部分では、接着剤Sが染み出さず、接着防止層33を潰した部分では、接着剤Sが染み出るように、接着剤Sの塗布量に応じて接着防止層33の質量を設定することが好ましい。
【0038】
そこで、本発明者らは、接着防止層33の好適な単位面積当たりの質量を調査した。調査の結果、接着防止層33の質量をm1とし、裏面側繊維層28の裏面に塗布される接着剤Sの質量をm2としたとき、(m1−m2)が15(g/m2)以下であると、接着防止層33を潰さなくても接着剤Sが染み出てしまい、(m1−m2)が35(g/m2)以上であると、接着防止層33を潰しても接着剤Sが染み出さないことが分かった。すなわち、(m1−m2)を15〜35(g/m2)の範囲から設定すれば、接着防止層33を潰さない部分では、接着剤Sの染み出しが防止され、接着防止層33を潰した部分では、接着剤Sが染み出すことを見出した。たとえば、接着剤Sにイソシアネートを用い、接着防止層33にスパンレースを用いた場合、イソシアネートの質量15〜19(g/m2)に対し、スパンレースの質量を30〜50(g/m2)に設定することが好適である。
【0039】
(第4実施形態)
次に、本発明にかかる第4実施形態を図9および図10に基づいて説明する。
図9に示すように、第4実施形態にかかる車両用天井材20Aは、裏面層32の裏面に固定されるワイヤーハーネス45,46を有し、凹部44Aは、ワイヤーハーネス45,46が通されて固定される溝である。ワイヤーハーネス45は、湾曲部22の中央に設けられるルームランプ47や、前部21の中央に設けられるマップランプ48に接続される。ワイヤーハーネス46は、前部21の側端から湾曲部22の側縁に沿って後方に延びた後、湾曲部22の後側を車両幅方向に延びるように配線され、たとえばリヤワイパーの駆動系統等に接続される。ワイヤーハーネス45,46は、配線経路上に設けた凹部44Aに通され、耐熱テープ49により凹部44Aの内面(底面や側面)に固定される。
【0040】
このような凹部44Aを形成する車両用天井材20Aの製造方法を図10に基づいて説明する。
図10(a)に示すように、第3実施形態の基本構成において、下型42の凸部43Aの幅をワイヤーハーネスの外径よりも大きく設定し、凸部43Aの高さを、たとえばワイヤーハーネスの外径と同程度またはそれ以上に設定する。このような凸部43Aを用い、図10(b)に示すように、基材26が凹む程度まで凹部44Aを深く成形する。このとき、接着防止層33を潰して、図中の矢印で示すように、接着剤Sを接着防止層33の裏面33aに染み出させ、この染み出した接着剤Sにより、凹部44Aを接着防止層33に接着する。
【0041】
そして、図10(c)に示すように、成形した凹部44Aにワイヤーハーネス45,46を通した後、ワイヤーハーネス45,46を凹部44Aの底面に耐熱テープ49で固定する。
【0042】
仮に、凹部44Aを設けずに、ワイヤーハーネス45,46を固定した場合を考える。この場合、浮張の裏面層32にワイヤーハーネス45,46を固定するため、ワイヤーハーネス45,46を安定的に固定することは難しい。このため、天井材20に振動が加わると、ワイヤーハーネス45,46が動いてしまい、異音が発生するなどの不具合が生じる。また、裏面層32を構成するアルミ蒸着層が、ワイヤーハーネス45,46の動きで擦れて損傷するおそれもある。
【0043】
この点、第4実施形態では、接着防止層33にしっかりと接着された凹部44Aにワイヤーハーネス45,46を安定的に固定できるので、天井材20に振動が加わっても、ワイヤーハーネス45,46が動いて異音を発生させたり、アルミ蒸着層を損傷したりする心配がない。
【0044】
なお、第4実施形態においても、接着防止層33から染み出した接着剤Sで、凹部44Aを接着防止層33に接着するため、接着防止層33の材質や好適な質量は、第3実施形態における構成と同様である。
【0045】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0046】
たとえば、実施形態では、裏面層における車両幅方向両端を含む領域を接着領域としたが、接着防止層の車両長さ方向の長さを繊維層の長さよりも短く設定して、裏面層における車両長さ方向両端を含む前後の領域を接着領域としてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 車両
14 車室
20 車両用天井材
20A 車両用天井材
26 基材
28 裏面側繊維層(繊維層)
31 表皮層
32 裏面層
33 接着防止層
33a 裏面
34 接着防止層
44 凹部
44A 凹部
A 接着領域
A1 接着領域
A2 接着領域
B 非接着領域
B1 非接着領域
S 接着剤
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用天井材に関し、より詳細には、基材、表皮層、繊維層、裏面層を積層した車両用天井材に、高い吸音性能を付与する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、基材の表面側に表皮層を設け、基材の裏面側に裏面層を設けた車両用天井材が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
図11は、従来の車両用天井材の構成例を説明する図であり、車両用天井材100は、ウレタン製の基材101と、基材101を挟むように配設される表面側繊維層102および裏面側繊維層103と、表面側繊維層102の表面に設けられ車室の天井面を形成する表皮層104と、裏面側繊維層103の裏面に設けられる裏面層105と、を積層してなる。
【0004】
車両用天井材100のうち、基材101、表面側繊維層102、裏面側繊維層103、表皮層104は、通気性の材料で構成される。このため、裏面層105を非通気性の材料で構成することにより、車室内から天井材100の裏側への空気の流れを止め、表皮層104の表面に埃等が付着することを防止している。
【0005】
このような天井材100の製造方法を図12に基づいて説明する。なお、図12では、成形素材の向きに合わせ、上位に表皮層104を配置し、下位に裏面層105を配置している。
【0006】
先ず、図12(a)に示すように、基材101、表面側繊維層102、裏面側繊維層103、表皮層104、裏面層105を積層させて、成形素材106を準備する。成形素材106のうち表面側繊維層102および裏面側繊維層103のそれぞれの表裏両面には、予め、接着剤107が全面に亘って塗布されている。次に、図12(b)に示すように、成形素材106を上型108および下型109で挟んでホットプレス成形を行う。このとき、表皮層104の裏面を表面側繊維層102の表面に接着し、裏面層105の表面を裏面側繊維層103の裏面に接着する。これにより、全ての層を一体化して所定形状の天井材100を得る。
【0007】
ところで、車両の静粛性が求められる中、吸音性能をより一層高めた天井材が求められている。しかしながら、従来の天井材100では、吸音性能が基材101の発泡密度や各層の厚みで決まるため、吸音性能の向上には限界がある。
【0008】
そこで、特許文献2では、車両用内装材において、内装基材(あるいは流出防止フィルム)と赤外線反射部材との間に制振部材を配置する技術が提案されている。この技術では、制振部材により振動を吸収して遮音効果を高めるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−280666号公報
【特許文献2】特開2009−126496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2に開示される技術においても、制振部材は、内装基材あるいは流出防止フィルムに単に貼られた1枚の層に過ぎず、上述した天井材100と同様に、吸音性能は各層の仕様(発泡密度や厚み)で決まるため、さらなる吸音性能向上は困難である。
【0011】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、吸音性能をより一層高めることができる車両用天井材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、基材と、前記基材の表面側に設けられ車室内の天井面を形成する表皮層と、前記基材の裏面側に設けられる補強用の繊維層と、前記繊維層の裏面に付着させた接着剤と、前記接着剤により前記繊維層に接着される通気止め用の裏面層と、を有する車両用天井材において、前記繊維層と前記裏面層との間に、前記裏面層よりも幅狭の接着防止層を有することを特徴とする。
【0013】
上記発明は、前記裏面層に、前記基材側に凹むと共に前記接着防止層を潰して前記接着防止層の裏面に前記接着剤を染み出させる凹部を設け、前記凹部と前記接着防止層とを、前記染み出した接着剤により接着したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、裏面層は、接着防止層と重なる部分で繊維層との接着が防止される。これにより、裏面層が浮張で接着されるため、膜振動による吸音効果を得ることができる。結果、より高い吸音性能が得られる車両用天井材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかる第1実施形態の車両用天井材を備える車両の斜視図である。
【図2】図1のC矢視図であり、車両用天井材の平面図である。
【図3】第1実施形態の車両用天井材の層構成を説明する断面図である。
【図4】第1実施形態の車両用天井材の製造方法を説明する図であり、(a)は素材準備工程を説明する図、(b)は成形工程を説明する図である。
【図5】第1実施形態の車両用天井材の構成を説明する図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のb−b線断面図、(c)は(b)のc部拡大図である。
【図6】第2実施形態の車両用天井材の製造方法および構成を説明する図であり、(a)は素材準備工程を説明する図、(b)は車両用天井材の平面図である。
【図7】第3実施形態の車両用天井材の製造方法を説明する図であり、(a)は凸部の構成を説明する図、(b)は凸部の作用を説明する図である。
【図8】第3実施形態の車両用天井材の平面図である。
【図9】第4実施形態の車両用天井材の平面図である。
【図10】第4実施形態の車両用天井材の製造方法および構成を説明する図であり、(a)は凸部の構成を説明する図、(b)は凸部の作用を説明する図、(c)は凹部にワイヤーハーネスを固定した状態を表す断面図である。
【図11】従来の車両用天井材の基本構成を説明する図である。
【図12】(a)は従来の車両用天井材の層構成を説明する断面図、(b)は従来の車両用天井材の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための第1実施形態について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。また、左・右は、車両の進行方向に対する左・右とする。また、天井材の各層の表面は、車室に向く側の面とし、各層の裏面は、車両のルーフに向く側の面とする。
【0017】
図1に示すように、車両10は、車体11、前輪12、後輪13、車室14を備える。車体11は、車室14の上方を覆うルーフ15を備える。ルーフ15の内側には、車室14の天井面を内装する車両用天井材20が設けられる。
【0018】
図2に示すように、天井材20は、平面視で略長方形を呈しており、前部21が略平板状に形成される。前部21よりも後方部分には、中央に行くに従って高くなる湾曲部22が形成される。天井材20には、室内灯(いわゆるルームランプやマップランプなど)を取り付けるための開口部23や、サンバイザーを取り付けるための開口部24や、グリップを取り付けるための開口部25が設けられる。
【0019】
次に、天井材20の層構成を図3に基づいて説明する。
図3に示すように、天井材20は、基材26と、基材26を挟むように配設される補強用の表面側繊維層27および裏面側繊維層28と、表面側繊維層27の表面に設けられ車室14(図1参照)内の天井面を形成する表皮層31と、裏面側繊維層28の裏面に接着される通気止め用の裏面層32と、を積層してなる。そして、裏面側繊維層28と裏面層32との間には、裏面側繊維層28よりも面積の小さい幅狭の接着防止層33が介在される。なお、図3では、製造工程における各層の位置に合わせ、上位に表皮層31を配置し、下位に裏面層32を配置している。
【0020】
基材26は、半硬質ウレタンフォーム等の発泡材料からなる。表面側繊維層27および裏面側繊維層28は、ガラスマット等の繊維材料からなり、それぞれの表裏両面には、全面に亘って接着剤S(図中、多数の黒い点で表す)が塗布される。表面側繊維層27および裏面側繊維層28のそれぞれは、天井材20を補強する補強層であると共に、表皮層31および裏面層32を基材26側に接着する接着層としての役割も果たす。
【0021】
表皮層31は、不織布、織布、ニット等の通気性の材料から任意に選択される。裏面層32は、非通気性の材料で構成され、たとえば、車室内の温度上昇も抑制可能なアルミ蒸着フィルム等の遮熱材料から選択することが好ましい。接着剤Sとしては、イソシアネート等の湿気硬化型接着剤または熱硬化性樹脂接着剤が好適である。なお、ここでは、表面側繊維層27および裏面側繊維層28に接着剤Sを塗布して表皮層31および裏面層32を接着するようにしたが、基材26に接着剤を塗布または含侵させるようにしても差し支えない。この場合、基材26に塗布または含侵させた接着剤を表面側繊維層27および裏面側繊維層28に浸透させ、表面側繊維層27の表面および裏面側繊維層28の裏面に接着剤を付着させる。この付着した接着剤によって、表面側繊維層27および裏面側繊維層28のそれぞれに表皮層31および裏面層32を接着する。
【0022】
接着防止層33の長さ寸法(車両長さ方向の長さ)は、裏面層32の長さと同程度である。接着防止層33の幅寸法(車両幅方向の寸法)W1は、裏面層32や裏面側繊維層28の幅寸法W2よりも小さく設定される。接着防止層33の材質は、紙や、合成樹脂製フィルムなど、任意の材料から選択可能であるが、ポリエステル製スパンレースに代表される各種レースや不織布、スラブウレタン等の多孔質材料など、通気性を有する材料が好ましい。
【0023】
次に、第1実施形態の天井材20の製造方法を図4に基づいて説明する。
天井材20の製造方法は、成形素材を得る素材準備工程と、この成形素材を用いてホットプレス成形を行う成形工程とを含む。
【0024】
図4(a)に示すように、素材準備工程では、基材26、表面側繊維層27、裏面側繊維層28、表皮層31および裏面層32を積層させる共に、裏面側繊維層28と裏面層32の間に、接着防止層33を車両長さ方向に沿って介在させ、成形素材35を得る。このとき、接着防止層33の左右両端(車両幅方向両端)を裏面層32の両端よりも所定の幅(たとえば(W2−W1)/2)だけ中央側に位置させる
【0025】
次に、成形素材35を成形金型40に搬送し、セットする。成形工程では、表皮層31側を成形する第1の金型(上型)41および裏面層32側を成形する第2の金型(下型)42からなる成形金型40を用い、図4(b)に示すように、上型41と下型42を合わせて型締めし、成形素材35を上型41と下型42で挟む。このとき、裏面層32のうち、接着防止層33よりも車両幅方向外側の左右の領域では、裏面層32と裏面側繊維層28とを接触させる。一方、左右の領域の間では、接着防止層33により裏面層32と裏面側繊維層28とを接触させないようにして、ホットプレス成形を行う。
【0026】
すると、図5(a)および(b)に示すように、裏面層32は、裏面側繊維層28に接着される左右の接着領域Aと、接着が防止された非接着領域B(図5(a)中、斜線で模式的に示す領域)と、を有するようになる。
【0027】
すなわち、図5(c)に示すように、左右の接着領域Aでは、接着剤Sで裏面層32と裏面側繊維層28とがしっかりと接着されるが、中央側の非接着領域Bでは、接着防止層33によって、裏面層32と裏面側繊維層28とが接着されない。これにより、浮張の裏面層32が得られる。結果、裏面層32が矢印(1)で示す方向に振動可能になり、膜振動による吸音性能を天井材20に付与することができる。
【0028】
以上、説明した第1実施形態によれば、膜振動による吸音効果を得ることができる。結果、吸音性能をより一層高めることができる。また、接着防止層33の幅寸法W1を調整することにより、接着領域Aおよび非接着領域Bのそれぞれの位置や面積を調整することができるので、天井材20に求められる品質に応じて、容易に吸音性能を調整することができる。
【0029】
(第2実施形態)
次に、本発明にかかる第2実施形態を図6に基づいて説明する。なお、前述した第1実施形態と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする(第3実施形態以降についても同様)。
【0030】
前述した第1実施形態では、1枚の接着防止層を用いて1つの非接着領域を形成したが、この他、接着防止層を車両幅方向に複数枚に分割してもよい。たとえば、図6(a)に示すように、裏面側繊維層28と裏面層32との間に、複数枚(ここでは2枚)の接着防止層34を車両幅方向に離間させて並べる。そして、成形工程において、隣り合う2枚の接着防止層34の間では、裏面側繊維層28と裏面層32とを接着する。これにより、図6(b)に示すように、非接着領域B1を複数設け、隣り合う2列の非接着領域B1の間を接着領域A1として設定することができる。
【0031】
第2実施形態によれば、前述した第1実施形態と同様の作用効果が得られることに加え、左右の接着領域A以外の領域においても、裏面層32を部分的に接着することができる。これにより、裏面層32が中央付近で過度に浮くことを防止できる。また、接着領域および非接着領域のそれぞれの位置や面積をより細かく調整することができ、設計の自由度を高めることができる。
【0032】
(第3実施形態)
次に、本発明にかかる第3実施形態を図7に基づいて説明する。
図7(a)に示すように、第3実施形態では、前述した第1実施形態の基本構成において、下型42の成形面42aに、上型41に向けて突出する凸部43を設けたものである。凸部43は、車両長さ方向に延びるように形成される。なお、凸部43の構成は、車両長さ方向に延びる形態に限定されるものではない。たとえば、凸部43を車両幅方向あるいは斜め方向に延びるように形成してもよいし、複数の凸部43を任意の方向に並べたり互いに交差させたりしてもよい。
【0033】
凸部43の作用を説明する。図7(b)に示すように、成形工程では、凸部43を用いて、裏面層32の裏面に凹部44を成形する。同時に、接着防止層33を潰して、この潰した部分の裏面33aに接着剤Sを染み出させる。そして、染み出した接着剤Sにより、凹部44と接着防止層33とを接着する。結果、図8に示すように、非接着領域Bのたとえば中央部において、裏面層32と接着防止層33とが部分的に接着された接着領域A2を設けることが可能となる。
【0034】
ここで、裏面層32の裏面側の構成に着目する。一般に、裏面層32の裏面には、各種部品を組み付けるための開口部(図2中、符号23〜25)や組み付け位置を示す罫書線が設けられる。このような開口部や罫書線の周囲では、裏面層32が接着されていないと、開口部が浮いたり罫書線が見づらくなったりするため、部品の組み付けに支障が出るおそれがある。
【0035】
この点、第3実施形態では、非接着領域B内であっても、裏面層32と接着防止層33とを意図的に接着することが可能である。よって、開口部や罫書線の周囲など、裏面層32の必要箇所を部分的に接着することができ、支障なく部品の組み付けを行うことができる。なお、接着剤Sは、接着防止層33に浸透しやすい液状の湿気硬化型接着剤または熱硬化性樹脂接着剤を選択することが望ましい。
【0036】
ここで、接着防止層33の好適な質量について述べる。
接着防止層33を潰したとき、接着剤Sを良好に染み出させるため、接着防止層33の材質は、接着剤Sが浸透しやすい通気性の材料、たとえば、ポリエステル製スパンレースに代表される各種レースや不織布、スラブウレタン等の多孔質材料など、から選択することが有効である。また、膜振動を得るためには、膜振動発生層まで音が入射する必要があり、この点においても、接着防止層33を構成する材料は、通気性の材料であることが好ましい。但し、裏面側繊維層28の裏面の接着剤Sに対して、接着防止層33の質量を小さく設定しすぎると、非接着領域Bにおいて接着防止層33の裏面に接着剤Sが染み出してしまい、膜振動が得られなくなるおそれがある。
【0037】
一方、接着防止層33の質量を大きく設定しすぎると、潰した部分の裏面33aに接着剤Sが染み出さず、非接着領域Bを部分的に接着することができなくなる。したがって、接着防止層33を潰さない部分では、接着剤Sが染み出さず、接着防止層33を潰した部分では、接着剤Sが染み出るように、接着剤Sの塗布量に応じて接着防止層33の質量を設定することが好ましい。
【0038】
そこで、本発明者らは、接着防止層33の好適な単位面積当たりの質量を調査した。調査の結果、接着防止層33の質量をm1とし、裏面側繊維層28の裏面に塗布される接着剤Sの質量をm2としたとき、(m1−m2)が15(g/m2)以下であると、接着防止層33を潰さなくても接着剤Sが染み出てしまい、(m1−m2)が35(g/m2)以上であると、接着防止層33を潰しても接着剤Sが染み出さないことが分かった。すなわち、(m1−m2)を15〜35(g/m2)の範囲から設定すれば、接着防止層33を潰さない部分では、接着剤Sの染み出しが防止され、接着防止層33を潰した部分では、接着剤Sが染み出すことを見出した。たとえば、接着剤Sにイソシアネートを用い、接着防止層33にスパンレースを用いた場合、イソシアネートの質量15〜19(g/m2)に対し、スパンレースの質量を30〜50(g/m2)に設定することが好適である。
【0039】
(第4実施形態)
次に、本発明にかかる第4実施形態を図9および図10に基づいて説明する。
図9に示すように、第4実施形態にかかる車両用天井材20Aは、裏面層32の裏面に固定されるワイヤーハーネス45,46を有し、凹部44Aは、ワイヤーハーネス45,46が通されて固定される溝である。ワイヤーハーネス45は、湾曲部22の中央に設けられるルームランプ47や、前部21の中央に設けられるマップランプ48に接続される。ワイヤーハーネス46は、前部21の側端から湾曲部22の側縁に沿って後方に延びた後、湾曲部22の後側を車両幅方向に延びるように配線され、たとえばリヤワイパーの駆動系統等に接続される。ワイヤーハーネス45,46は、配線経路上に設けた凹部44Aに通され、耐熱テープ49により凹部44Aの内面(底面や側面)に固定される。
【0040】
このような凹部44Aを形成する車両用天井材20Aの製造方法を図10に基づいて説明する。
図10(a)に示すように、第3実施形態の基本構成において、下型42の凸部43Aの幅をワイヤーハーネスの外径よりも大きく設定し、凸部43Aの高さを、たとえばワイヤーハーネスの外径と同程度またはそれ以上に設定する。このような凸部43Aを用い、図10(b)に示すように、基材26が凹む程度まで凹部44Aを深く成形する。このとき、接着防止層33を潰して、図中の矢印で示すように、接着剤Sを接着防止層33の裏面33aに染み出させ、この染み出した接着剤Sにより、凹部44Aを接着防止層33に接着する。
【0041】
そして、図10(c)に示すように、成形した凹部44Aにワイヤーハーネス45,46を通した後、ワイヤーハーネス45,46を凹部44Aの底面に耐熱テープ49で固定する。
【0042】
仮に、凹部44Aを設けずに、ワイヤーハーネス45,46を固定した場合を考える。この場合、浮張の裏面層32にワイヤーハーネス45,46を固定するため、ワイヤーハーネス45,46を安定的に固定することは難しい。このため、天井材20に振動が加わると、ワイヤーハーネス45,46が動いてしまい、異音が発生するなどの不具合が生じる。また、裏面層32を構成するアルミ蒸着層が、ワイヤーハーネス45,46の動きで擦れて損傷するおそれもある。
【0043】
この点、第4実施形態では、接着防止層33にしっかりと接着された凹部44Aにワイヤーハーネス45,46を安定的に固定できるので、天井材20に振動が加わっても、ワイヤーハーネス45,46が動いて異音を発生させたり、アルミ蒸着層を損傷したりする心配がない。
【0044】
なお、第4実施形態においても、接着防止層33から染み出した接着剤Sで、凹部44Aを接着防止層33に接着するため、接着防止層33の材質や好適な質量は、第3実施形態における構成と同様である。
【0045】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0046】
たとえば、実施形態では、裏面層における車両幅方向両端を含む領域を接着領域としたが、接着防止層の車両長さ方向の長さを繊維層の長さよりも短く設定して、裏面層における車両長さ方向両端を含む前後の領域を接着領域としてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 車両
14 車室
20 車両用天井材
20A 車両用天井材
26 基材
28 裏面側繊維層(繊維層)
31 表皮層
32 裏面層
33 接着防止層
33a 裏面
34 接着防止層
44 凹部
44A 凹部
A 接着領域
A1 接着領域
A2 接着領域
B 非接着領域
B1 非接着領域
S 接着剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の表面側に設けられ車室内の天井面を形成する表皮層と、前記基材の裏面側に設けられる補強用の繊維層と、前記繊維層の裏面に付着させた接着剤と、前記接着剤により前記繊維層に接着される通気止め用の裏面層と、を有する車両用天井材において、
前記繊維層と前記裏面層との間に、前記裏面層よりも幅狭の接着防止層を有することを特徴とする車両用天井材。
【請求項2】
前記裏面層に、前記基材側に凹むと共に前記接着防止層を潰して前記接着防止層の裏面に前記接着剤を染み出させる凹部を設け、
前記凹部と前記接着防止層とを、前記染み出した接着剤により接着したことを特徴とする請求項1に記載の車両用天井材。
【請求項1】
基材と、前記基材の表面側に設けられ車室内の天井面を形成する表皮層と、前記基材の裏面側に設けられる補強用の繊維層と、前記繊維層の裏面に付着させた接着剤と、前記接着剤により前記繊維層に接着される通気止め用の裏面層と、を有する車両用天井材において、
前記繊維層と前記裏面層との間に、前記裏面層よりも幅狭の接着防止層を有することを特徴とする車両用天井材。
【請求項2】
前記裏面層に、前記基材側に凹むと共に前記接着防止層を潰して前記接着防止層の裏面に前記接着剤を染み出させる凹部を設け、
前記凹部と前記接着防止層とを、前記染み出した接着剤により接着したことを特徴とする請求項1に記載の車両用天井材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−47070(P2013−47070A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186465(P2011−186465)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】
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