説明

車両用導電路

【課題】外径を小さくでき、レイアウトの自由度を向上することが可能な車両用導電路を提供する。
【解決手段】少なくとも1本の制御用ケーブル2と、制御用ケーブル2が収容される所望の形状に成形可能な金属製のパイプ3と、金属製のパイプ3の外周に配置される複数の電源ケーブル4と、複数の電源ケーブル4と制御用ケーブル2を収容した金属製のパイプ3とを一括包囲し、シールドするための編組シールド5と、編組シールド5の周囲を覆う可とう性を有する樹脂製のチューブ6と、を備え、複数の電源ケーブル4は、その断面形状が金属製のパイプ3の外周に沿う円弧状に形成されると共に、金属製のパイプ3の外周に沿って配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車、電気自動車などに用いられる車両用導電路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用導電路においては、車載される機器や制御用ケーブル等(以下、車載される機器等とする)へのノイズの影響を考え、シールド手段を有していることはもちろん、その他に、例えば車両のボディー下面などにおいて配線形状を所望の形状(レイアウト)に保持したいという要求がある。
【0003】
従来、金属製のパイプに複数本の電線を一括して収容した車両用導電路が用いられている。複数本の電線をシールド手段としての金属製のパイプに収容することによって、車載される機器等へのノイズを抑制することができると共に、金属製のパイプを所望の形状に成形することで、複数本の電線を所望の形状に保持することが可能である。
【0004】
特許文献1では、内側金属パイプに制御用ケーブルと補助電源ケーブルとを収容すると共に、その制御用ケーブルと補助電源ケーブルが収容された内側金属パイプと、主電源ケーブルとを外側金属パイプに収容した車両用導電路が提案されている。特許文献1によれば、配線形状を所望の形状(レイアウト)に保持できると共に、内側金属パイプが制御用ケーブルのシールドの役目を果たすので、大電流が流れる主電源ケーブルにて発生するノイズが制御用ケーブルを伝搬する電気信号に影響を及ぼしてしまうことを抑制できる。また外側金属パイプもシールドの役目を果たすので、大電流が流れる主電源ケーブルにて発生するノイズによる車載される機器等への影響を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−87628号公報
【特許文献2】特開2006−269201号公報
【特許文献3】特開平11−329100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の車両用導電路では、内側金属パイプと外側金属パイプとの間に、断面円形状の主電源ケーブルを配置する構造であるため、内側金属パイプと外側金属パイプとの間に不要な空間ができやすく、車両用導電路の外径(ここでは外側金属パイプの外径)が大きくなってしまうという問題がある。車両用導電路の外径が大きくなると、狭いスペースでの配線が困難となり、レイアウトの自由度が低下することとなり、好ましくない。
【0007】
また、車両用導電路は、例えば、ハイブリッド車、電気自動車などにおいて、モータとインバータとの間、又はインバータとバッテリとの間を接続するものであり、電源ケーブルには高電圧が印加される。このように高電圧が印加される導電路には所定の色(高電圧部であることを示す橙色)の着色をすることが国際規格により統一されているが、特許文献1では、最外層に位置する部材が金属製のパイプであるため、この金属製のパイプを所定の色に塗装する必要が生じる。しかし、この塗装には、耐熱性や、成形時に剥がれない機械的な強度(密着性)が要求され、また、これらの信頼性を考慮して塗装むらなどがない良好な塗装とする必要があるため、作業に非常に手間がかかり、コストも高くなってしまうという問題が生じる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、外径を小さくでき、レイアウトの自由度を向上することが可能であり、かつ製造の容易な車両用導電路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、少なくとも1本の制御用ケーブルと、該制御用ケーブルが収容される所望の形状に成形可能な金属製のパイプと、該金属製のパイプの外周に配置される複数の電源ケーブルと、該複数の電源ケーブルと前記制御用ケーブルを収容した前記金属製のパイプとを一括包囲し、シールドするための編組シールドと、該編組シールドの周囲を覆う可とう性を有する樹脂製のチューブと、を備え、前記複数の電源ケーブルは、その断面形状が前記金属製のパイプの外周に沿う円弧状に形成されると共に、前記金属製のパイプの外周に沿って配置される車両用導電路である。
【0010】
前記複数の電源ケーブルは、前記金属製のパイプの周方向における均等な位置に配置されてもよい。
【0011】
複数の補機用電源ケーブルをさらに備え、前記複数の電源ケーブルと前記複数の補機用電源ケーブルは、前記金属製のパイプの外周に交互に配置されてもよい。
【0012】
前記複数の補機用電源ケーブルは、前記金属製のパイプの外周に沿う円弧状に形成されてもよい。
【0013】
前記金属製のパイプの外周に貼付された両面粘着テープをさらに備え、前記複数の電源ケーブルは、前記両面粘着テープにより前記金属製のパイプに接着固定されてもよい。
【0014】
前記樹脂製のチューブは、コルゲートチューブからなってもよい。
【0015】
前記制御用ケーブルを収容した前記金属製のパイプの外周に前記複数の電源ケーブルを配置し、その周囲を前記編組シールドで一括包囲し、かつ、前記編組シールドの周囲を覆うように前記樹脂製のチューブを設けた後、機械曲げ加工により所望の形状に成形するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、外径を小さくでき、レイアウトの自由度を向上することが可能であり、かつ製造の容易な車両用導電路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係る車両用導電路の横断面図である。
【図2】図1の車両用導電路の製造方法を示す図であり、金属製のパイプに制御用ケーブルを収容したときの斜視図である。
【図3】図1の車両用導電路の製造方法を示す図であり、(a)はケーブルバンドルの分解斜視図と斜視図、(b)はその横断面図である。
【図4】図1の車両用導電路の製造方法を示す図であり、(a)はケーブルバンドルを編組シールドで一括包囲することを示す分解斜視図と斜視図、(b)はその横断面図である。
【図5】図1の車両用導電路の製造方法を示す図であり、(a)は編組シールドで一括包囲したケーブルバンドルをコルゲートチューブに収容することを示す分解斜視図と斜視図、(b)はその横断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る車両用導電路の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0019】
図1は、本実施の形態に係る車両用導電路の横断面図である。
【0020】
図1に示すように、車両用導電路1は、少なくとも1本の制御用ケーブル(低圧線)2と、制御用ケーブル2が収容される所望の形状に成形可能な金属製のパイプ(形状保持材)3と、金属製のパイプ3の外周に配置される複数の電源ケーブル(高圧線)4と、複数の電源ケーブル4と制御用ケーブル2を収容した金属製のパイプ3とを一括包囲し、シールドするための編組シールド5と、編組シールド5の周囲を覆う可とう性を有する樹脂製のチューブとしてのコルゲートチューブ6と、を備える。
【0021】
本実施の形態では、1本の制御用ケーブル2と、三相交流を想定した3本の電源ケーブル4を用いる場合を説明する。
【0022】
制御用ケーブル2は、中心導体2aの外周に絶縁体2bを被覆してなる。本実施の形態では、制御用ケーブル2として、外径が7.0mmのものを用いた。この制御用ケーブル2は、例えば、CAN(Controller Area Network)などに用いられるものである。
【0023】
金属製のパイプ3としては、軽量かつ低コストなアルミニウム製のパイプを用いるとよい。金属製のパイプ3の厚さは、強度を保つため1mm以上とすることが望ましい。これは、金属製のパイプ3の厚さを1mm未満の厚さにすると、強度が保てずに車両用導電路1自体の自重による撓みなどが生じる可能性があるためである。この金属製のパイプ3は、配線形状を所望の形状に保持する役割と、制御用ケーブル2のシールドの役割を兼ねている。本実施の形態では、金属製のパイプ3として、内径が9.0mm、外径が12.0mm、厚さが1.5mmのものを用いた。
【0024】
電源ケーブル4は、中心導体4aの外周に絶縁体4bを被覆してなる。
【0025】
本実施の形態に係る車両用導電路1では、電源ケーブル4は、その断面形状が金属製のパイプ3の外周に沿う円弧状に形成され、金属製のパイプ3の周囲を覆うように、金属製のパイプ3の外周に沿って配置される。
【0026】
電源ケーブル4の中心導体4aとしては、車両用導電路1を所望の形状に成形する際の曲げ加工のし易さの観点から、複数の素線を撚り合わせた撚線導体を用いることが望ましい。また、電源ケーブル4の中心導体4aとしては、軽量化の観点から、アルミニウムからなるものを用いることが望ましい。
【0027】
電源ケーブル4は、金属製のパイプ3の周方向における均等な位置に配置される。本実施の形態では、3本の電源ケーブル4を用いているため、各電源ケーブル4は、金属製のパイプ3の周方向における120°ずつずれた位置に配置されることになる。
【0028】
電源ケーブル4は、金属製のパイプ3の外周に螺旋状に巻回(疎巻き)して貼付された両面粘着テープ7(図2参照)により、金属製のパイプ3に接着固定される。本実施の形態では、電源ケーブル4を金属製のパイプ3の外周に沿うよう円弧状に形成しているため、電源ケーブル4が金属製のパイプ3に接触する接触面積を大きくでき、電源ケーブル4と金属製のパイプ3とを両面粘着テープ7により強固に固定することが可能となる。両面粘着テープ7を貼付する方法は、螺旋状に巻回するものに限定されず、金属製のパイプ3の長手方向にわたって直線状に貼付する方法や、金属製のパイプ3の長手方向の一部の外周に巻回して貼付する方法等、種々の変更が可能である。
【0029】
また、本実施の形態では、車両用導電路1は、複数(ここでは3本)の補機用電源ケーブル8をさらに備えている。この補機用電源ケーブル8は、エアコンなどの補機に電源供給するためのものであり、中心導体8aの外周に絶縁体8bを被覆してなる。
【0030】
補機用電源ケーブル8は、隣り合う電源ケーブル4の間に配置される。つまり、車両用導電路1では、金属製のパイプ3の外周に、電源ケーブル4と補機用電源ケーブル8とを交互に配置するようにされる。補機用電源ケーブル8は、電源ケーブル4と同様に、両面粘着テープ7により金属製のパイプ3に接着固定される。
【0031】
電源ケーブル4と補機用電源ケーブル8は、電源ケーブル4と補機用電源ケーブル8との間に隙間が生じないよう密着して配置されることが望ましい。本実施の形態では、隣り合う電源ケーブル4同士の間隔が補機用電源ケーブル8の外径と略等しくなるように、かつ、電源ケーブル4の厚さが補機用電源ケーブル8の外径と略等しくなるように、各電源ケーブル4を形成した。これにより、金属製のパイプ3の外周に電源ケーブル4と補機用電源ケーブル8とを配置した状態での断面形状は、略円形状となる。以下、制御用ケーブル2を収容した金属製のパイプ3の外周に、電源ケーブル4と補機用電源ケーブル8とを配置したものをケーブルバンドル9と呼称する。
【0032】
ケーブルバンドル9の外周には、編組シールド5が設けられる。編組シールド5は、例えば、銅やアルミニウムからなる金属素線を編み込んで形成されたものである。軽量化の観点からは、編組シールド5として、アルミニウムからなる金属素線を編み込んで形成されたものを用いることが望ましい。編組シールド5は、電源ケーブル4で発生するノイズ(電磁波)が外部に放射され、車載される機器等へ影響を及ぼすことを抑制するシールドの役割を果たす。本実施の形態においては、編組シールド5の厚さを1.0mmとした。
【0033】
編組シールド5は、予め金属素線を編んで筒状に形成しておいて、それをケーブルバンドル9に挿通するものでもよいが、ケーブルバンドル9に金属素線を複数回交叉させるように巻き付けることにより、編組シールド5としてもよい。後者だと、金属素線を強固に巻き付けることにより、電源ケーブル4と金属製のパイプ3の固定をより強くすることができるので、振動による電源ケーブル4の摩耗を更に低減できる。つまり、後者の場合、編組シールド5は、シールド機能と、固定を強固にするための機能とを有する。
【0034】
編組シールド5の外周には、可とう性を有する樹脂製のチューブとしてのコルゲートチューブ6が設けられる。なお、コルゲートチューブとは、蛇腹のついた中空のチューブであり、スリットチューブ、可とう電線管などとも呼ばれる。
【0035】
コルゲートチューブ6は、予め所定の色(高電圧部であることを示す橙色)に着色される。コルゲートチューブ6に用いる樹脂は、特に限定するものではないが、耐熱性、難燃性の良好な樹脂を用いることが望ましい。また、コルゲートチューブ6に用いる樹脂は、薬品(例えば、融雪剤としてのCaCl2)からの保護を考慮して耐薬品性を有することが好ましい。これは、例えば、CaCl2をまいた雪道を車両が走行する際に、CaCl2がコルゲートチューブ6に付着してコルゲートチューブ6が損傷してしまうのを低減するためである。さらに、コルゲートチューブ6に用いる樹脂は、電源ケーブル4や補機用電源ケーブル8に対する外的な干渉物(例えば、飛び石等)からの保護を考慮して、外的な干渉物からの保護ができる程度の強度を有するものを用いることが望ましい。なお、本実施の形態では、可とう性を有する樹脂製のチューブとしてコルゲートチューブ6を用いたが、コルゲートチューブ6は、表面積が大きく放熱性が良いという利点からも車両用導電路1に用いるのに望ましい。樹脂製のチューブとしては、コルゲートチューブ6に限らず、可とう性のある樹脂製またはゴム製のチューブであればどのようなものを用いてもよい。
【0036】
また、車両用導電路1では、制御用ケーブル2を収容した金属製のパイプ3の外周に電源ケーブル4と補機用電源ケーブル8とを配置してケーブルバンドル9を形成し、そのケーブルバンドル9の周囲を編組シールド5で一括包囲し、かつ、編組シールド5の外周を覆うようにコルゲートチューブ6を設けた後、機械曲げ加工(ベンダー曲げ加工)により所望の形状に成形するようにされる。
【0037】
機械曲げ加工を最終工程とする理由は、金属製のパイプ3を所望の形状に成形した後に、金属製のパイプ3の外周に沿わせて電源ケーブル4(および補機用電源ケーブル8)を配置する場合、金属製のパイプ3の曲がり部分に沿わせて電源ケーブル4(および補機用電源ケーブル8)を配置することが困難となり、さらには、その周囲に編組シールド5やコルゲートチューブ6を設ける際にも、曲がり部分があるために作業に時間がかかり、結果的に製造コストが高くなってしまうためである。
【0038】
次に、車両用導電路1の製造方法について図2〜5を用いて説明する。
【0039】
車両用導電路1を製造する際は、まず、図2に示すように、金属製のパイプ3に制御用ケーブル2を通し、金属製のパイプ3の外周に両面粘着テープ7を螺旋状に巻回(疎巻き)して貼付する。
【0040】
その後、図3(a),(b)に示すように、金属製のパイプ3の外周に、予め金属製のパイプ3の外周に沿う円弧状に形成された電源ケーブル4と補機用電源ケーブル8とを交互に配置し、電源ケーブル4と補機用電源ケーブル8とを両面粘着テープ7により金属製のパイプ3に接着固定してケーブルバンドル9を形成する。
【0041】
ケーブルバンドル9を形成した後、図4(a),(b)に示すように、ケーブルバンドル9を編組シールド5に通して、ケーブルバンドル9の周囲を編組シールド5で一括包囲する。
【0042】
ケーブルバンドル9の周囲を編組シールド5で一括包囲した後、図5(a),(b)に示すように、編組シールド5で一括包囲したケーブルバンドル9をコルゲートチューブ6に通すと、車両用導電路1が得られる。更に、所望の形状にそった機械曲げ加工(ベンダー曲げ加工)を行うことにより、所望の形状に形成された車両用導電路1が得られる。
【0043】
車両用導電路1を車両に搭載する際には、金属製のパイプ3の端部から延出した制御用ケーブル2を機器(図示せず)に接続することになるが、このとき、金属製のパイプ3の端部に可とう性を有するシールド線の一端を電気的に接続し、そのシールド線で金属製のパイプ3の端部より延出された制御用ケーブル2の周囲を覆って、制御用ケーブル2をシールドすることが望ましい。また、シールド線の他端部を、制御用ケーブル2が接続される機器のシールドケースに電気的に接続し、金属製のパイプ3と機器のシールドケースとを、シールド線を介して電気的に接続することが望ましい。
【0044】
本実施の形態の作用を説明する。
【0045】
本実施の形態に係る車両用導電路1では、複数の電源ケーブル4を、金属製のパイプ3の外周に沿う円弧状の断面形状に形成し、金属製のパイプ3の外周に沿わせるように複数の電源ケーブル4を配置している。
【0046】
電源ケーブル4には大電流が流れるため、電源ケーブル4においては、中心導体4aの断面積をある程度大きくする必要があるが、車両用導電路1によれば、中心導体4aの断面積が同じ断面円形状の電源ケーブルを用いた場合と比較して、電源ケーブル4の厚さを薄くし、車両用導電路1全体の外径を小さくすることが可能になる。よって、狭いスペースでの配線を可能とし、レイアウトの自由度を向上させることができる。
【0047】
また、車両用導電路1では、制御用ケーブル2を収容した金属製のパイプ3と電源ケーブル4とを予め着色したコルゲートチューブ6に収容しているため、従来行っていた金属製のパイプに塗装を行う塗装工程を省略することが可能となる。これにより製造の容易な車両用導電路1を実現でき、結果的に製造コストも削減できる。また、本実施の形態では、金属製のパイプ3には塗装を施さないので、金属製のパイプに塗装を施す従来技術と比較してリサイクルし易い車両用導電路1を実現できる。
【0048】
また、車両用導電路1では、複数の電源ケーブル4を、金属製のパイプ3の周方向における均等な位置に配置している。例えば、複数の電源ケーブル4を金属製のパイプ3の周方向において偏って配置した場合、機械曲げ加工(ベンダー曲げ加工)を行う際に曲げ易い方向と曲げ難い方向ができてしまうが、車両用導電路1によれば、どの方向にも略同じ条件で曲げ加工を行うことが可能となる。
【0049】
さらに、車両用導電路1では、複数の補機用電源ケーブル8をさらに備え、金属製のパイプ3の外周に、複数の電源ケーブル4と複数の補機用電源ケーブル8とを交互に配置するようにしている。これにより、エアコン等の補機に電源供給する補機用電源ケーブル8もコルゲートチューブ6内に配置することが可能になり、補機用電源ケーブル8を別体として配線する場合と比較して、配線がコンパクトになる。また、金属製のパイプ3の外周に電源ケーブル4と補機用電源ケーブル8とを交互に配置することで、どの方向にも略同じ条件で曲げ加工を行うことが可能となる。
【0050】
また、車両用導電路1では、金属製のパイプ3の外周に、両面粘着テープ7を螺旋状に巻回して貼付し、該両面粘着テープ7により、金属製のパイプ3に複数の電源ケーブル4を接着固定するようにしている。車両用導電路1では、電源ケーブル4を金属製のパイプ3の外周に沿うよう円弧状に形成しており、電源ケーブル4が金属製のパイプ3に接触する接触面積が大きくなっているため、電源ケーブル4と金属製のパイプ3とを両面粘着テープ7により強固に固定することができる。よって、振動による電源ケーブル4の摩耗・断線などの不具合の発生を防止し、かつ、機械曲げ加工(ベンダー曲げ加工)を行う際等に電源ケーブル4が位置ずれしてしまうことを抑制できる。
【0051】
さらに、車両用導電路1では、制御用ケーブル2を収容した金属製のパイプ3の外周に複数の電源ケーブル4を配置してケーブルバンドル9を形成し、そのケーブルバンドル9の周囲を編組シールド5で一括包囲し、かつ、編組シールド5の周囲を覆うようにコルゲートチューブ6を設けた後、機械曲げ加工により所望の形状に成形するようにしている。
【0052】
これにより、曲げのない直線状態の金属製のパイプ3の外周に電源ケーブル4(および補機用電源ケーブル8)を配置することが可能となり、湾曲した金属製のパイプに電源ケーブル4を沿わす労力を削減できる。また、曲げのない直線状態のケーブルバンドル9の周囲に編組シールド5を設けるので、編組シールド5を容易に設けることができ、さらには、編組シールド5で一括包囲したケーブルバンドル9を容易にコルゲートチューブ6に通すことができ、作業時間を短縮することが可能になる。つまり、車両用導電路1によれば、製造工程を簡略化することができ、結果的に製造コストを削減することが可能になる。
【0053】
なお、金属製のパイプ3に予め機械曲げ加工を施した場合、ケーブルバンドル9に曲げ部分ができ、その曲げ部分に対応するために、コルゲートチューブ6の内径を編組シールド5の外径よりもある程度大きくして、クリアランスを大きくとる必要が生じるが、本実施の形態では、曲げ部分のない直線状態でケーブルバンドル9と編組シールド5とをコルゲートチューブ6内に挿入できるので、曲げ部分がある場合と比較してクリアランスを小さくすることが可能となり、コルゲートチューブ6の径を小さくして、車両用導電路1全体の外径をさらに小さくすることが可能となる。
【0054】
また、車両用導電路1では、金属製のパイプ3の径を小さくできるので、小さい曲げ半径で曲げても、従来の全体を太い金属製のパイプで包囲したものと比較して、金属製のパイプ3が座屈しにくい。よって、金属製のパイプ3の厚さを薄くすることも可能となり、金属製のパイプ3に用いる材料の無駄を少なくできる。
【0055】
また、車両用導電路1では、金属製のパイプ3と編組シールド5とが直接接触しないので、例えば、金属製のパイプ3としてアルミニウムを用い、編組シールド5として銅を用いた場合であっても、異種金属間の腐食が発生しない。
【0056】
本発明の他の実施の形態を説明する。
【0057】
図6に示す車両用導電路61は、図1の車両用導電路1において、補機用電源ケーブル8を金属製のパイプの外周に沿う円弧状に形成し、補機用電源ケーブル8を変形させることによって空いたスペースに他のケーブル62を補機用電源ケーブル8に重ねるように配置したものである。他のケーブル62は、補機用電源ケーブル8と同様に、中心導体の外周に絶縁体を被覆してなる。他のケーブル62は、円弧状に形成された補機用電源ケーブル8の外周に沿う円弧状に形成される。このとき、補機用電源ケーブル8と他のケーブル62との合計の厚さは電源ケーブル4の厚さと略同一であることが望ましい。
【0058】
車両用導電路61によれば、車両用導電路1と同様に車両用導電路61全体の外径を小さくでき、かつ、他のケーブル62を通すことが可能になる。
【0059】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0060】
例えば、上記実施の形態では、1本の制御用ケーブル2を金属製のパイプ3内に収容する場合を説明したが、金属製のパイプ3内に収容する制御用ケーブル2は2本以上であってもよいし、制御用ケーブル2に加えて、金属製のパイプ3内に制御用ケーブル2以外のケーブルを収容するようにしてもよい。
【0061】
また、上記実施の形態では、3相交流を想定して3本の電源ケーブル4を用いる場合を説明したが、電源ケーブル4の本数はこれに限らず、例えば、2相交流を想定して2本の電源ケーブル4を用いるようにしてもよい。
【0062】
さらに、上記実施の形態では、電源ケーブル4と補機用電源ケーブル8とを、両面粘着テープ7により金属製のパイプ3に接着固定したが、電源ケーブル4と補機用電源ケーブル8の金属製のパイプ3への固定をより強固にするために、例えば、長手方向の所定間隔離れた位置にてテープ材を用いて結束固定するようにしてもよい。テープ材としては、粘着性を有するテープ、粘着性を有さないテープのどちらを用いてもよく、またプラスチックバンドなどを用いることもできる。
【0063】
さらにまた、上記実施の形態では、金属製のパイプ3の外周に、両面粘着テープ7を螺旋状に巻回して貼付したが、これに限らず、所定の長さに切った両面粘着テープ7を金属製のパイプ3の長手方向に沿って貼付するようにしてもよい。この場合、金属製のパイプ3の周方向に所定間隔(電源ケーブル4と金属製のパイプ3とを十分強固に接着固定できる間隔)で両面粘着テープを貼付するようにすればよい。
【0064】
また、上記実施の形態では、ケーブルバンドル9の周囲に編組シールド5、コルゲートチューブ6を順次設けた後に、機械曲げ加工により所望の形状に成形する場合を説明したが、機械曲げ加工で編組シールド5やコルゲートチューブ6の損傷が懸念される場合などは、ケーブルバンドル9を形成した後、あるいはケーブルバンドル9の周囲に編組シールド5を設けた後に、機械曲げ加工を行うようにしてもよい。この場合でも、湾曲した金属製のパイプに沿わせて電源ケーブル4を配置する場合よりも作業時間や製造コストを削減できる。
【0065】
さらに、上記実施の形態では、補機用電源ケーブル8を備えた場合を説明したが、補機用電源ケーブル8は必須ではなく、省略可能である。補機用電源ケーブル8を省略する場合、電源ケーブル4間に隙間が形成されないように、すなわち、電源ケーブル4が金属製のパイプ3の外周を完全に覆ってしまうように、電源ケーブル4を偏平に形成することで、車両用導電路1全体の外径をより小さくすることが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 車両用導電路
2 制御用ケーブル
3 金属製のパイプ
4 電源ケーブル
5 編組シールド
6 コルゲートチューブ(樹脂製のチューブ)
7 両面粘着テープ
8 補機用電源ケーブル
9 ケーブルバンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1本の制御用ケーブルと、
該制御用ケーブルが収容される所望の形状に成形可能な金属製のパイプと、
該金属製のパイプの外周に配置される複数の電源ケーブルと、
該複数の電源ケーブルと前記制御用ケーブルを収容した前記金属製のパイプとを一括包囲し、シールドするための編組シールドと、
該編組シールドの周囲を覆う可とう性を有する樹脂製のチューブと、を備え、
前記複数の電源ケーブルは、その断面形状が前記金属製のパイプの外周に沿う円弧状に形成されると共に、前記金属製のパイプの外周に沿って配置されることを特徴とする車両用導電路。
【請求項2】
前記複数の電源ケーブルは、前記金属製のパイプの周方向における均等な位置に配置される請求項1記載の車両用導電路。
【請求項3】
複数の補機用電源ケーブルをさらに備え、
前記複数の電源ケーブルと前記複数の補機用電源ケーブルは、前記金属製のパイプの外周に交互に配置される請求項2記載の車両用導電路。
【請求項4】
前記複数の補機用電源ケーブルは、前記金属製のパイプの外周に沿う円弧状に形成される請求項3記載の車両用導電路。
【請求項5】
前記金属製のパイプの外周に貼付された両面粘着テープをさらに備え、前記複数の電源ケーブルは、前記両面粘着テープにより前記金属製のパイプに接着固定される請求項1〜4いずれかに記載の車両用導電路。
【請求項6】
前記樹脂製のチューブは、コルゲートチューブからなる請求項1〜5いずれかに記載の車両用導電路。
【請求項7】
前記制御用ケーブルを収容した前記金属製のパイプの外周に前記複数の電源ケーブルを配置し、その周囲を前記編組シールドで一括包囲し、かつ、前記編組シールドの周囲を覆うように前記樹脂製のチューブを設けた後、機械曲げ加工により所望の形状に成形するようにした請求項1〜6いずれかに記載の車両用導電路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−228136(P2011−228136A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97231(P2010−97231)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】