説明

車両用後部座席

【課題】製造費が安価な車両用後部座席を提供する。
【解決手段】右縦枠部23Aをパイプ材によって構成する。右縦枠部23Aの上端部には、断面円形のガイド筒部23cを形成する。このガイド筒部23cの周壁部には、これを径方向に貫通する貫通孔23dを形成する。この貫通孔23dには、ロック機構8のロッド83を上下方向へ移動可能に挿通する。これによって、ロッド83の水平方向における位置決めをする。ガイド筒部23cから上方に突出したロッド83の上端部には、ノブ(図示せず)を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用の座席、特に前倒し可能な後部座席に関する。
【背景技術】
【0002】
近年ワンボックスカー等においては、後部座席が前倒し可能に設けられていることが多い。このような後部座席は、下記特許文献1に記載されているように、シートバックフレームを有している。シートバックフレームの下端部の左右両端部は、車体に使用位置と前倒し位置との間を回転可能に支持されている。シートバックフレームの上部の左右両端部には、ロック機構が設けられている。このロック機構は、シートバックフレームが使用位置に位置しているときには、車体に設けられたストライカーに係脱可能に係合して、シートバックフレームを使用位置に位置固定する。その一方、ストライカーとの係合が解除されると、シートバックフレームが使用位置から前倒し位置まで回転することを許容する。
【0003】
ロック機構は、上方に延びるロッドを有しており、ロッドの上端部に設けられたノブを上方へ引き上げると、ロック機構のストライカーに対する係合が解除される。
【0004】
シートバックフレームの上端部の左右両端部には、位置決め部材が設けられている。この位置決め部材は、ロッドの上下方向への移動は許容するが、水平方向、つまり前後方向及び左右方向へのロッドの移動を僅かな範囲を除いて阻止する。これにより、ロッドの水平方向の位置決めがなされ、ノブがほぼ一定の位置に維持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−6900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の後部座席においては、ロック機構のロッドを位置決めするために、シートバックフレームに位置決め部材が設けられている。このため、位置決め部材の分だけ部品点数が増えてしまい、後部座席の製造費が高騰するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、 左右方向に延びる上下一対の横枠部、及びこの一対の横枠部の左右の両端部間にそれぞれ設けられた左右一対の縦枠部によって略四角形の枠状に形成され、下端部が車体に使用位置と前倒し位置との間を回転可能に支持されたシートバックフレームと、このシートバックフレームの上記一対の縦枠部の少なくとも一方に取り付けられ、車体に設けられたストライカーに係脱可能に係合するロック機構とを備え、上記ロック機構が上記ストライカーに係合することによって上記シートバックフレームが上記使用位置に回転不能に位置固定され、上記ロック機構の上方に延びるロッドを上方へ引き上げると、上記ロック機構の上記ストライカーに対する係合が解除されて上記シートバックフレームが上記使用位置から上記前倒し位置まで回転可能になる車両用後部座席において、上記ロック機構が取り付けられた上記一方の縦枠部が上記上側の横枠部と別体に、かつパイプ材によって構成され、上記一方の縦枠部の上端部には、その周壁部を貫通する貫通孔が形成され、上記ロッドが上記貫通孔を上下方向へ移動可能に貫通して、上記一方の縦枠部の上記貫通孔より上側の部分に上下方向へ移動可能に挿入されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
上記特徴を有するこの発明によれば、ロッドが貫通孔を通って縦枠部内に挿入されているので、ロッドの水平方向への移動が縦枠部を構成するパイプ材とロッドとの間の僅かな隙間の範囲内だけに制限される。つまり、縦枠部によってロッドの水平方向における位置決めがなされる。したがって、ロッドの位置決めのための部材が不要になり、その分だけ部品点数を減らすことができる。よって、後部座席の製造費を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、この発明に係る車両の後部座席のシートバックフレームを車両の前方から見て示す斜視図である。
【図2】図2は、シートバックフレームの図1における右側部分を拡大して示す斜視図である。
【図3】図3は、シートバックフレームの図1における右下端部を後方から見て示す斜視図である。
【図4】図4は、図3に示す部分の分解斜視図である。
【図5】図5は、図1に示すシートバックフレームの右上端部を拡大して示す斜視図である。
【図6】図6は、図5のX矢視図である。
【図7】図7は、図5に示す部分の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、この発明に係る車両用後部座席のシートバックフレームを示す斜視図である。シートバックフレーム1は、枠体2を有している。枠体2は、左右方向に延びる下横枠部(横枠部)21と、この下横枠部21に対して上方に離間し、かつ下横枠部21とほぼ平行に配置された上横枠部(横枠部)22と、下横枠部21と上横枠部22との右端部間及び左端部間にそれぞれ設けられた右縦枠部(縦枠部)23A及び左縦枠部(縦枠部)23Bとにより、左右方向に長い略四角形の枠状に形成されている。なお、この実施の形態のシートバックフレーム1は、左右対称に構成されている。そこで、以下においては、シートバックフレーム1の右側の部分の構成だけを説明することとし、左側の構成については右側の部分と同様な構成に同一符号を付してその説明を省略する。
【0011】
下横枠部21は、金属製のパイプ材からなるものであり、その右端部の外周には、補強パイプ21aが嵌合固定されている。これにより、下枠部21の右端部が二重筒構造に形成されている。図3及び図4に示すように、二重筒構造をなす部分の先端側の略半分が前後方向から押し潰されることにより、平坦部21bが形成されている。
【0012】
上横枠部22は、金属製のパイプ材からなるものであり、その右端部が前後方向から押し潰されている。これにより、上横枠部22の右端部には、断面形状が長円状をなす当接部22aが形成されている。
【0013】
右縦枠部23Aは、金属製のパイプ材からなるものであり、図3及び図4に示すように、下端部にはその内面どうしが突き当たるまで前後方向から押し潰されることにより、平板部23aが形成されている。この平板部23aは、下枠部21の平坦部21bの前面に突き当てられ、溶接等によって固定されている。平板部23aは、平坦部21bの背面に固定してもよい。右縦枠部23の上端部の左側を向く部分には、上横枠部22の当接部22aの先端面(上横枠部22の右端面)が突き当てられ、溶接等によって固定されている。当接部22aは、その前面又は背面が右縦枠部23の上端部の外周面に突き当たるようにして固定してよい。同様にして左縦枠部23Bの上下の各端部には、下横枠部21及び上横枠部22がそれぞれ固定されている。これにより、枠体2が構成されている。
【0014】
枠体2の上下の横枠部21,22間には、複数の縦補強部材3が掛け渡されている。枠体2の左右の縦枠部23A,23B間には、1本の横補強部材4が掛け渡されている。勿論、横補強部材4は、複数設けてもよい。このようにしてシートバックフレーム1が構成されている。シートバックフレーム1には、周知の後部座席のシートバックフレームと同様に、シートバッククッション及び表皮(いずれも図示せず)が設けられている。
【0015】
シートバックフレーム1の下端部の左右両端部は、車両の車体(図示せず)に支持ブラケット5を介して前後方向へ回転可能に支持されている。すなわち、図3及び図4に示すように、下横枠部21の平坦部21bの先端部には、これを前後方向に貫通する貫通孔21cが形成されている。また、平坦部21bの前面には、雌ねじ部材6が固定されている。この雌ねじ部材6は、その軸線を貫通孔21cの軸線と一致させて配置されている。平坦部21b及び平板部23aの固定部には、両者を前後方向に貫通する係合孔7が形成されている。
【0016】
支持ブラケット5は、車体側取付部材51と枠体側取付部材52とを有している。車体側取付部材51は、車体に固定されている。一方、枠体側取付部材52には、係合突起52a及び貫通孔52bが形成されている。係合突起52aは、係合孔7にその径方向へ移動不能に挿入されている。貫通孔52bには、雄ねじ部材(図示せず)が挿通されている。この雄ねじ部材は、貫通孔21cを貫通して雌ねじ部材6に螺合されている。そして、雄ねじ部材(図示せず)を締め付けることにより、枠体側取付部材52が下横枠部21の右端部に固定されている。枠体側取付部材52は、車体側取付部材51に左右方向に延びる水平な回転軸53を介して回転可能に連結されている。これにより、シートバックフレーム1の下端部の右端部(下横枠部21の右端部)が、車体に前後方向へ回転可能に支持されている。シートバックフレーム1は、周知の後部座席のシートバックフレームと同様に、使用位置と前倒し位置との間を回転可能である。なお、使用位置は、後部座席に乗員が腰掛けるときの位置であり、シートバックフレーム1が水平線に対して100°〜110°程度傾斜している。前倒し位置は、シートバックフレーム1の背面上に荷物を乗せるときの位置であり、シートバックフレーム1がほぼ水平になっている。
【0017】
図7に示すように、右縦枠部23Aの上部には、左側(枠体2の内側)に向かって凹む凹部23bが形成されている。縦枠部23Aの右側を向く外面の凹部23bに対して上下に隣接する箇所には、平坦部23cがそれぞれ形成されている。この平坦部23c,23cには、周知の構造を有するロック機構8のケーシング81の上下の両端部がそれぞれ固定されている。このロック機構8は、上下一対の係合片82,82を有している。係合片82,82は、シートバックフレーム1が前倒し位置側から使用位置まで回転すると、車体に設けられたストライカー9に自動的に係合する。これにより、シートバックフレーム1が使用位置に位置固定される。なお、シートバックフレーム1が使用位置に位置しているときには、ストライカー9の一部が凹部23b内に入り込んでいる。
【0018】
ロック機構8は、ロッド83を有している。ロッド83は、ケーシング81から外部に突出して上方に延びている。そして、このロッド83を上方へ引き上げると、係合片82,82が互いに離間するように変位して係合片82,82とストライカー9との係合が解除する。この結果、シートバックフレーム1が使用位置から前倒し位置側へ回転可能になる。シートバックフレーム1を使用位置から前倒し位置側へ回転させた後、ロッド83を自由に移動し得る状態にすると、ロック機構8のケーシング81内に設けられたバネ等の付勢手段によってロッド83が元の位置まで戻されるとともに、係合片82,82が元の位置に戻される。
【0019】
右縦枠部23Aの上端部、つまり上側の平坦部23cより上側に位置する上端部は、断面円形のガイド筒部23dになっている。このガイド筒部23dの上端部は、上方に向かって開口している。ガイド筒部23dの周壁部の前側を向く部分には、当該周壁部を径方向に貫通する貫通孔23eが形成されている。この貫通孔23eは、ロッド83が右縦枠部23Aの前側に配置されていることに対応して周壁部の前側を向く部分に配置されているが、ロッド83の位置が変更される場合には、それに応じて周壁部の右側又は後側を向く部分に配置される。また、貫通孔23eは、長手方向を上下方向に向けた長孔として形成されているが、単なる円形の孔としてもよい。
【0020】
ケーシング81から上方に突出したロッド83は、その中間部の二箇所において屈曲されており、その二箇所の屈曲部間に傾斜部83aが形成されている。この傾斜部83aは、貫通孔23eに上下方向へ移動可能に挿通されている。傾斜部83aから上側に位置するロッド83の上端部は、ガイド筒部23dと平行に延びる平行部83bとされており、この平行部83bは、ガイド筒部23dに上下方向へ移動可能に挿通されている。これにより、ロッド83の水平方向における位置決めがなされている。すなわち、ロッド83は、その外径とガイド筒部23dの内径との差の分だけ水平方向(前後方向及び左右方向)へ移動可能であるが、それらの直径差はわずかである。したがって、ロッド83がガイド筒部23d内において水平方向へ移動することができる範囲はわずかであり、ロッド83は、ガイド筒部23dによって水平方向の位置決めがなされている。図2に示すように、平行部83bの上端部には、ノブ10の脚部10aが取り付けられている。このノブ10を上方へ持ち上げることにより、ロッド83を上方へ引き上げることができる。
【0021】
上記構成の車両用後部座席においては、ロック機構8のロッド83が貫通孔23eを通って右縦枠部23A(左縦枠部23B)のガイド筒部23dに挿通され、それによってロッド83の位置決めがなされているから、ロッド83の位置決めをするための部材を殊更設ける必要がない。したがって、位置決め部材の分だけ部品点数を減らすことができ、それによって後部座席の製造費を低減することができる。
【0022】
特に、この実施の形態においては、右縦枠部23A(左縦枠部23B)に平坦部23cを形成し、この平坦部23cにロック機構8のケーシング81を直接固定しているから、ケーシング81を右縦枠部23Aに取り付けるためのブラケット(図示せず)を右縦枠部23Aに取り付ける必要がない。したがって、後部座席の製造費をより一層低減することができる。
【0023】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施の形態を採用することができる。
例えば、上記の実施の形態においては、ロック機構8が左右の縦枠部23A,23Bの両者に設けられているが、いずれか一方にだけ設けてもよい。
また、上記の実施の形態においては、ロッド83の上端部が右縦枠部23Aのガイド筒部23dから上方へ突出させられているが、ロッド83の上端は、ガイド筒部23dの上端面と貫通孔23eとの間に位置させてもよい。その場合には、ノブ10の脚部10aがガイド筒部23d内に挿入されて、ロッド83の上端部に固定される。
【産業上の利用可能性】
【0024】
この発明は、前倒し可能な車両用後部座席に利用可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 シートバックフレーム
21 下横枠部(横枠部)
22 上横枠部(横枠部)
23A 右縦枠部(縦枠部)
23B 左縦枠部(縦枠部)
23d ガイド筒部
23e 貫通孔
8 ロック機構
9 ストライカー
83 ロッド


【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に延びる上下一対の横枠部、及びこの一対の横枠部の左右の両端部間にそれぞれ設けられた左右一対の縦枠部によって略四角形の枠状に形成され、下端部が車体に使用位置と前倒し位置との間を回転可能に支持されたシートバックフレームと、このシートバックフレームの上記一対の縦枠部の少なくとも一方に取り付けられ、車体に設けられたストライカーに係脱可能に係合するロック機構とを備え、上記ロック機構が上記ストライカーに係合することによって上記シートバックフレームが上記使用位置に回転不能に位置固定され、上記ロック機構の上方に延びるロッドを上方へ引き上げると、上記ロック機構の上記ストライカーに対する係合が解除されて上記シートバックフレームが上記使用位置から上記前倒し位置まで回転可能になる車両用後部座席において、
上記ロック機構が取り付けられた上記一方の縦枠部が上記上側の横枠部と別体に、かつパイプ材によって構成され、上記一方の縦枠部の上端部には、その周壁部を貫通する貫通孔が形成され、上記ロッドが上記貫通孔を上下方向へ移動可能に貫通して、上記一方の縦枠部の上記貫通孔より上側の部分に上下方向へ移動可能に挿入されていることを特徴とする車両用後部座席。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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