説明

車両用手すり構造

【課題】表示機能を維持させつつ、照明光による乗客等への刺激を緩和できる車両用手すり構造を提供する。
【解決手段】車両用手すり構造1では、凹部12の壁面20が鏡面となっている。このため、手すり本体部6の両端部16の外周面18と凹部12の壁面20との間の空間Sに照射された照明光は、鏡面によって繰り返し反射されて淡い光となった後、凹部12の外に出射される。したがって、この車両用手すり構造1では、淡い光となった照明光によって手すり本体部6が照らされるので、表示機能を維持させつつ、乗客等への刺激を緩和できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両等に装備される車両用手すり構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用手すり構造として、例えば特許文献1に記載の発光式握り棒がある。この従来の発光握り棒では、長孔が形成された中空のステンレス管に透明樹脂棒が挿入されている。透明樹脂棒の一端と他端には、照明灯と反射板とがそれぞれ固定されており、透明樹脂棒を通った照明光が反射板に反射されてステンレス管の長孔から外部に出射するようになっている。
【特許文献1】特開2007−230380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来の車両用手すり構造は、鉄道車両のドア開閉装置と連動して照明灯を点灯させることにより、乗客に対するドア開閉表示装置として機能する。しかしながら、様々な乗客等の利用が想定される車両においては、表示機能を維持させつつ、照明光による乗客等への刺激は、可能な限り緩和しておく必要がある。
【0004】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、表示機能を維持させつつ、照明光による乗客等への刺激を緩和できる車両用手すり構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題の解決のため、本発明に係る車両用手すり構造は、棒状をなす手すり本体部と、手すり本体部における少なくとも一方の端部の外周面との間に一定の空間が形成されるように、外周面を囲む壁面を有する包囲部と、手すり本体部の端部側から空間に向けて照明光を入射させる光源とを備えていることを特徴とする。
【0006】
この車両用手すり構造では、手すり本体部の少なくとも一方の端部側に光源が設けられている。このため、手すり本体部の端部の外周面と包囲部の壁面との間の空間に端部側から照射された照明光は、包囲部内で淡い光となった後、包囲部の外に出射される。したがって、この車両用手すり構造では、淡い光となった照明光によって手すり本体部が照らされるので、表示機能を維持させつつ、乗客等への刺激を緩和できる。
【0007】
また、包囲部の壁面が光反射面となっていることが好ましい。この場合、繰り返し反射によって照明光が一層淡い光となる。また、光量の損失も抑えられるので、表示機能の強化も図られる。
【0008】
また、壁面に面する手すり本体部の外周面が光反射面となっていることが好ましい。この場合、繰り返し反射によって照明光が一層淡い光となる。また、光量の損失も抑えられるので、表示機能の強化も図られる。
【0009】
また、手すり本体部において、端部を除いた部分の外周面を覆うように、照明光を伝播させる伝播部材が設けられていることが好ましい。この場合、包囲部の外に出射した照明光が伝播部材と介して手すり本体部の外周面を伝播するので、手すり本体部の全体に表示機能を持たせることが可能となる。
【0010】
また、包囲部において、空間からの照明光の出射部分には、光透過部材によって形成された蓋部が設けられていることが好ましい。このような蓋部により、光反射面が保護され、塵や埃の付着や外傷の発生を抑制できる。
【0011】
また、光反射面は、鏡面であることが好ましい。この場合、光量の損失を更に抑えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る車両用手すり構造によれば、表示機能を維持させつつ、照明光による乗客等への刺激を緩和できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る車両用手すり構造の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用手すり構造を示す斜視図である。図1に示すように、車両用手すり構造1は、例えば鉄道車両のドア2脇に取り付けられるものであり、固定部4と、手すり本体部6とを備えて構成されている。
【0015】
固定部4は、例えば鉄道車両のドア2脇に設けられ、鉄道車両の高さ方向に形成された略柱状の部材である。固定部4には、鉛直方向に刳り貫かれた断面略矩形状の刳り貫き部8が設けられている。刳り貫き部8に面する固定部4の上面10a及び下面10bには、断面略円形状の凹部12が形成されている。
【0016】
手すり本体部6は、例えばステンレス等の部材によって棒状に形成されている。手すり本体部6の両端は、ボルト等の固定具によって凹部12の底面14に固定されている。
【0017】
上述した構成を有する車両用手すり構造1は、手すり本体部6が照明光によって光ることで、乗客等に対してドア開閉を表示する機能を有している。この表示機能を構成する各構成要素について、図2を参照しながら詳細に説明する。図2は、手すり本体部6の両端近傍の拡大斜視図である。なお、説明の便宜上、下方側の構成を図示しているが、上方側の構成も同様である。
【0018】
同図に示すように、固定部4の凹部12は、手すり本体部6の直径の2倍程度の内径を有しており、手すり本体部6の両端部16の外周面18を囲む壁面20を有している。手すり本体部6の端は、凹部12における底面14の中心部分に固定されている。すなわち、壁面20は、手すり本体部6の両端部16の外周面18と所定の間隔をもって対面しており、この外周面18との間に断面略円筒形状の空間Sを形成する包囲部となっている。壁面20には、例えばアルミニウム等の金属コーティングにより、鏡面加工が施されている。
【0019】
また、凹部12の開口22には、例えばアクリル等の光透過部材によって略円形状に形成された蓋部24が嵌め込まれている。
【0020】
壁面20に面する手すり本体部6の外周面18には、例えば研磨による鏡面加工が施されている。また、手すり本体部6において、開口22よりも外側となる外周面19は、照明光を伝播する伝播部材26で覆われている。伝播部材26は、例えばアクリル等の材料によって形成されている。
【0021】
さらに、凹部12の底部には、光源28が複数(本実施形態では8個)埋設されている。光源28は、複数の色で発光可能なLEDである。光源28は、鉄道車両のドア開閉装置(図示せず)と連動することにより、例えば扉が閉じている場合には白色に発光し、扉が開いている場合には赤色に発光する。光源28は、手すり本体部6の長手方向から見て、手すり本体部6の周りに同心円状に配置され、各光源28の出射面は、凹部12の底面14と面一になっている。
【0022】
光源28から出射される照明光は、手すり本体部6の両端部16側から空間Sに入射する。空間Sに入射された照明光は、凹部12の壁面20及び手すり本体部6の両端部16の外周面18に形成された鏡面(光反射面)によって反射を繰り返した後、淡い光となって凹部12の開口22から出射する。開口22から出射した照明光は、手すり本体部6の凹部12に近い部分を光らせ、また、その一部は、手すり本体部6の外周面19に設けられた伝播部材26を伝播して手すり本体部6全体を光らせる。
【0023】
以上のような構成を有する車両用手すり構造1では、凹部12の壁面20及び手すり本体部6の両端部16の外周面18が鏡面となっている。このため、手すり本体部6の両端部16の外周面18と凹部12の壁面20との間の空間Sに照射された照明光は、鏡面によって繰り返し反射されて淡い光となった後、凹部12の外に出射される。したがって、この車両用手すり構造1では、淡い光となった照明光によって手すり本体部6が照らされるので、表示機能を維持させつつ、乗客等への刺激を緩和できる。
【0024】
また、手すり本体部6において、開口22よりも外側となる外周面19を覆うように、照明光を伝播させる伝播部材26が設けられているので、手すり本体部6の全体に表示機能を持たせることが可能となる。
【0025】
また、凹部12の開口22には、蓋部24が嵌め込まれているので、鏡面が保護され、塵や埃の付着や外傷の発生を抑制できる。
【0026】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上述した実施形態では、光源28が手すり本体部6の外周面18を囲むように配置されているが、図3に示す車両用手すり構造30のように、手すり本体部6の長手方向から見て、光源28を車室内側の半周部分にだけ配置してもよい。この場合には、乗客等から光源28が見えにくくなるので、意匠性の向上が図られる。
【0027】
また、上述した実施形態では、金属コーティングや研磨により鏡面加工が施されているが、例えば鏡面加工が施されたフィルムを貼り付けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用手すり構造を示す斜視図である。
【図2】手すり本体部の両端近傍の拡大斜視図である。
【図3】本発明の変形例に係る車両用手すり構造の手すり本体部の両端近傍の拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1…車両用手すり構造、6…手すり本体部、12…凹部(包囲部)、16…両端部(端部)、18、19…外周面、20…壁面、24…蓋部、26…伝播部材、28…光源、S…空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状をなす手すり本体部と、
前記手すり本体部における少なくとも一方の端部の外周面との間に一定の空間が形成されるように、前記外周面を囲む壁面を有する包囲部と、
前記手すり本体部の前記端部側から前記空間に向けて照明光を入射させる光源とを備えることを特徴とする車両用手すり構造。
【請求項2】
前記包囲部の前記壁面が光反射面となっていることを特徴とする請求項1記載の車両用手すり構造。
【請求項3】
前記壁面に面する前記手すり本体部の前記外周面が光反射面となっていることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用手すり構造。
【請求項4】
前記手すり本体部において、前記端部を除いた部分の外周面を覆うように、前記照明光を伝播させる伝播部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の車両用手すり構造。
【請求項5】
前記包囲部において、前記空間からの前記照明光の出射部分には、光透過部材によって形成された蓋部が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の車両用手すり構造。
【請求項6】
前記光反射面は、鏡面であることを特徴とする請求項2又は3記載の車両用手すり構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−269549(P2009−269549A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123708(P2008−123708)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)
【出願人】(000110479)ナカ工業株式会社 (125)
【出願人】(398022017)東亜技研株式会社 (3)
【Fターム(参考)】