説明

車両用操作レバー装置

【課題】幅が広くならず、カバー部に歪みが生じることなく、カバー部を容易に装着できる車両用操作レバー装置を提供する。
【解決手段】車両用操作レバー装置10は、操作レバー30のグリップ部32を被覆するカバー40に、グリップ部32の基端側が連なるレバー本体31側まで覆う本体カバー部42を設け、これに覆われるレバー本体31の所定箇所に、カバー40を取り付けるレバー本体開口35と、この外側に突起して先端部側がレバー本体開口35を部分的に覆う向きに屈曲した係止爪36とを設け、本体カバー部42に、係止爪36を受ける本体カバー部開口46と、これを覆うように本体カバー部42内側に突出してレバー本体開口35に嵌入可能な嵌入突出部45とを設け、嵌入突出部45をレバー本体開口35に嵌入させてレバー本体31の係止爪36を本体カバー部開口46が受ける位置で嵌入突出部45に係止するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベース部材に操作レバーを起倒可能に枢支し、操作レバーを引き起こすことにより、制動部に力を伝達して制動力を発生させ、操作レバーを倒した際に、操作レバーをイニシャル位置に規制することができる車両用操作レバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこのような車両用操作レバー装置としてパーキングブレーキ装置を例に挙げると、特許文献1に示すようなものがある。
このパーキングブレーキ装置は、ベース部材に操作レバーを起倒可能に枢支し、この操作レバーを手で引き起こすことにより、ケーブルが引っ張られて制動部に力が伝達されて制動力を発生させ、操作レバーを手で倒すと、引っ張られていたケーブルが緩んで制動力が消失するタイプのものである。
【0003】
このようなパーキングブレーキ装置は、一般に操作レバーのグリップ部に樹脂製のカバーを付けて握り感の向上を図っている。このカバーは、グリップ部のみを覆うものと、グリップ部からレバー本体の一部ないし全体までを覆う本体カバー部が形成されたものとがある。後者は、さらにグリップ部から本体カバー部までを一体に成形したものと、別個に形成してから取り付けたものとに分けられる。このようなカバーは、装着する相手部品であるグリップ部やレバー本体との間に締め代を持たせて圧入したり、接着したりして相手部品に固定される。
【0004】
カバーの素材には一般に塩化ビニル等が使用されており、操作レバーに接着したり、操作レバーに設けた突起に引っ掛けたりして装着されている。特許文献1の図には明示されていないが、例えば、図7に示した従来のパーキングブレーキ装置の操作レバー100では、取付け部101でカバー200がレバー本体110に固定されている。取付け部101は、拡大して図8に示されており、さらに図8のA−A線断面図が図9に示されている。カバー200は、本体カバー部210の側面に取付け穴220が穿設されており、レバー本体110に設けた突起120が取付け穴220に挿通されて、操作レバー100に装着され保持されている。すなわち、カバー200は、突起120によって保持されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−322951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の技術では、レバー本体110に設けた突起120によって本体カバー部210を止めた場合、本体カバー部210が部分的に引っ張られるために本体カバー部210に歪みが生じるという造形上の問題点があった。
【0007】
この歪みを緩和する目的で、本体カバー部210側の取付け部101を大きくすると、レバー本体110の突起120を大きくしなければならず、強度上の問題点が生じるおそれがある。
【0008】
また、同じ目的でレバー本体110側の突起120だけを大きくすると、操作レバー100の幅方向へ突出する突起120の突出度合いが大きくなるので、カバー200を装着した操作レバー100の幅が広くなって部品レイアウト上も好ましくない。
【0009】
さらに、このような構造であると、カバー200の装着を機械化することが困難であり、操作レバー100にカバー200を手で組み付けなければならないので、装着ミスが発生するおそれも有る。
【0010】
本発明は、このような従来の技術が有する問題点に着目してなされたもので、操作レバーにカバーを装着したときの幅が広くならず、カバーに歪みが生じることなく、カバーを容易かつ確実に操作レバーに装着できるパーキングブレーキ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
[1] ベース部材(20)に操作レバー(30)を起倒可能に枢支し、該操作レバー(30)を引き起こすことにより、制動部に力を伝達して制動力を発生させ、前記操作レバー(30)を倒した際に、該操作レバー(30)をイニシャル位置に規制することができる車両用操作レバー装置(10)において、
前記操作レバー(30)のグリップ部(32)を被覆するカバー(40)を有し、該カバー(40)に、前記操作レバー(30)のグリップ部(32)の基端側が連なるレバー本体(31)側まで覆う本体カバー部(42)を設け、
前記本体カバー部(42)に覆われるレバー本体(31)の所定箇所に、前記カバー(40)を取り付けるためのレバー本体開口(35)と、該レバー本体開口(35)の外側に突起して先端部側が前記レバー本体開口(35)を部分的に覆う向きに屈曲した係止爪(36)とを設け、
前記レバー本体(31)の所定箇所を覆う前記本体カバー部(42)に、前記係止爪(36)を受ける本体カバー部開口(46)と、該本体カバー部開口(46)を覆うように前記本体カバー部(42)内側に突出し、前記レバー本体開口(35)に嵌入可能な嵌入突出部(45)とを設け、
前記本体カバー部(42)の嵌入突出部(45)を前記レバー本体開口(35)に嵌入させ、前記レバー本体(31)の係止爪(36)を前記本体カバー部開口(46)が受ける位置で前記嵌入突出部(45)に係止させることにより、前記カバー(40)を前記レバー本体(31)に装着可能としたことを特徴とする車両用操作レバー装置(10)。
【0012】
[2] 前記本体カバー部(42)は、前記カバー(40)の一部として一体成形することを特徴とする[1]に記載の車両用操作レバー装置(10)。
【0013】
[3] 前記本体カバー部(42)の嵌入突出部(45)に係止した前記レバー本体(31)の係止爪(36)の前記先端部側は、前記本体カバー部(42)の外側まで至らずに屈曲していることを特徴とする[1]または[2]に記載の車両用操作レバー装置(10)。
【0014】
前記本発明は次のように作用する。
操作レバー(30)が倒れているときは、操作レバー(30)と制動部とを連結しているケーブルが緩んでおり、制動部には制動力が発生していない。この非制動状態から操作レバー(30)を引き起こすことにより、ケーブルが引っ張られて制動力が発生する。操作レバー(30)を引き起こすことによってケーブルに緩みがなくなると、その後は操作レバー(30)の引き起こしによって操作力が制動部に伝達されて制動力が発生し、引き起こすほど制動力が大きくなる。
【0015】
この操作レバー(30)にはグリップ部(32)を被覆するカバー(40)が装着されているので、グリップ部(32)を握持したときのグリップ感が良く、また、見た目の美観を呈している。カバー(40)は、本体カバー部(42)を別個に設けてもよいし、本体カバー部(42)と一体成形したものでもよい。カバー(40)は、例えば塩化ビニルなどの合成樹脂製である。
【0016】
このカバー(40)を、グリップ部(32)からレバー本体(31)まで覆うように組み付けるためには、グリップ部(32)をカバー(40)に挿入し、レバー本体(31)の所定箇所が本体カバー部(42)に覆われるようにする。すなわち、本体カバー部(42)の嵌入突出部(45)がレバー本体(31)に設けられた係止爪(36)に外側から当たっており、かつ、レバー本体開口(35)と向き合った状態にする。このとき、係止爪(36)は、本体カバー部開口(46)と向き合った状態になっている。
【0017】
このような状態にカバー(40)を被せてから嵌入突出部(45)を設けてある本体カバー部(42)の部分を外側からレバー本体(31)に向けて押す。レバー本体(31)の係止爪(36)は、その先端部側がレバー本体開口(35)を部分的に覆う向きに屈曲しているので、嵌入突出部(45)を乗り越えて嵌入突出部(45)に係止する。嵌入突出部(45)に係止している係止爪(36)は、本体カバー部開口(46)に受けられている。一方、本体カバー部(42)の嵌入突出部(45)は、レバー本体開口(35)に嵌入している。
【0018】
これにより、カバー(40)はレバー本体(31)に固定される。このように組み付けられたカバー(40)にその装着状態をずらすような方向の力が加わっても、係止爪(36)が本体カバー部開口(46)内で動きを規制されるので、カバー(40)がずれることはない。また、レバー本体開口(35)に嵌入突出部(45)が嵌入しているので、より確実にカバー(40)のずれを防止することができる。
【0019】
このように、カバー(40)は容易に装着できる。また、係止爪(36)が嵌入突出部(45)を乗り越えて嵌入突出部(45)に係止することによってカバー(40)が固定されるので確実に装着することができる。カバー(40)の装着された操作レバー(30)は、レバー本体(31)側面と本体カバー部(42)側面との間に介在するものがないので、それらの間にほとんど隙間が生じないようにできる。したがって、操作レバー(30)の幅が広くなってしまうことがない。また、嵌入突出部(45)は、本体カバー部開口(46)周辺の強度を補強する効果があるので、レバー本体(31)の係止爪(36)を本体カバー部(42)の嵌入突出部(45)に引っ掛けるとともに、嵌入突出部(45)をレバー本体開口(35)に嵌入して組み付けた状態でも本体カバー部(42)には歪みが生じることがない。
【0020】
なお、レバー本体(31)の屈曲した係止爪(36)は、本体カバー部開口(46)内に受け入れられるので、カバー(40)を組み付けた状態で、係止爪(36)の先端部側が本体カバー部開口(46)から外側に出ないように屈曲しておくことにより、より確実に操作レバー(30)の幅が広くならないようにすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる車両用操作レバー装置によれば、所定の状態でカバーを操作レバー側に押すだけでカバー側の嵌入突出部が操作レバー側のレバー本体開口に嵌入してレバー本体開口に支持され、レバー側の係止爪が嵌入突出部に係止するので、カバーに歪みが生じることなく、カバーを容易かつ確実に操作レバーに装着でき、また、カバーが操作レバーに装着された状態では、係止爪が本体カバー部開口内に受け入れられており、本体カバー部の外側に突き出ないように屈曲しているので、操作レバーにカバーを装着したときの幅が広くならないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面に基づき本発明にかかる車両用操作レバー装置の好適な一実施の形態であるパーキングブレーキ装置を説明する。
図1〜図6は、本発明の一実施の形態にかかるパーキングブレーキ装置を示している。
図1は、車両用操作レバー装置としてのパーキングブレーキ装置の操作レバーおよびカバー並びにその内部構造を示し、図2は、図1における操作レバーおよびカバーを示している。図3は、図2における操作レバーのレバー本体に設けたレバー本体開口およびその周辺部を拡大して示す部分拡大図である。図4は、図2におけるカバーの本体カバー部およびその周辺部を拡大して示す部分拡大図である。図5は、操作レバーへのカバーの組み付けを説明する説明図である。図6は、図5におけるB−B断面図である。
【0023】
本実施の形態に係るパーキングブレーキ装置10は、乗用車等の車両に装備され、操作レバー30の操作によって制動および制動解除を行うものであり、車両の運転席近傍に据え付けるベース部材20に、操作レバー30を枢軸11を介して起倒可能に枢支して成る。
【0024】
本パーキングブレーキ装置10では、図1中において矢印Aで示す方向に操作レバー30を引き起こすことにより、図示省略したケーブルを介して制動部に操作力を伝達して制動力を発生させる制動状態となる。一方、操作レバー30を倒すことによって、前記ケーブルが緩んで制動力が消失した非制動状態となり、該非制動状態において操作レバー30をイニシャル位置に規制するように構成されている。
【0025】
図1に示すように、ベース部材20には、その側面部の下端側に運転席近傍の据付け部位に対して固定する取付脚部21が一体に設けられており、該取付脚部21を据付け部位にボルト止めすることで設置される。取付脚部21は、略垂直に立ち上がるベース部材20の側面部に対し、側方に略水平に延びるように折曲されている。この取付脚部21は、次述する操作レバー30のストッパ部33が係脱する部位として設定されている。
【0026】
操作レバー30は、前記ベース部材20に枢支するレバー本体31と、該レバー本体31より一方向に直線状に延び出たグリップ部32と、該グリップ部32を被覆するカバー40とを有して成る。操作レバー30は、グリップ部32が握持しやすい円筒状に形成され、レバー本体31は、左右の側面部の隙間が下方に開いた溝形断面形状に形成されている。
【0027】
カバー40は、例えば塩化ビニル等の合成樹脂により一体成形されるものであり、前記グリップ部32に外嵌させて装着する筒状のグリップカバー部41の他、該グリップカバー部41よりも後方に延出して、グリップ部32の基端側が連なるレバー本体31側まで覆う本体カバー部42が一体成形されている。なお、グリップカバー部41と本体カバー部42とは、別体に形成したものを組み合わせて取り付けるようにしてもよい。
【0028】
操作レバー30は、レバー本体31がカバー40の本体カバー部42に被覆されている。この本体カバー部42に被覆されたレバー本体31の所定箇所には本体カバー部42を取り付けるためのレバー本体開口35が横長の貫通口として穿設されている。このレバー本体開口35には、操作レバー30にカバー40が被覆された状態で、後述するカバー40の嵌入突出部45が嵌入している。レバー本体開口35は、嵌入した嵌入突出部45との間に僅かにクリアランスが残る大きさと形状を有している。
【0029】
レバー本体31からは、レバー本体開口35の外側に、すなわち、カバー40側に突起して途中から先端部側がレバー本体開口35を上から下に向かって部分的に覆うように屈曲した係止爪36が設けられている。
【0030】
レバー本体31の所定箇所を覆う本体カバー部42には、レバー本体31の係止爪36を受ける本体カバー部開口46が穿設された装着部が設けられている。本体カバー部開口46は、受け入れた係止爪36の周縁部との間に僅かにクリアランスが残る大きさと形状を有している。
【0031】
また、本体カバー部42の装着部には、本体カバー部42の内側に突出した前記の嵌入突出部45が形成されている。この嵌入突出部45は、本体カバー部開口46およびその周辺部を覆うように形成されており、周辺部との間にポケットが形成されている。嵌入突出部45は、操作レバー30にカバー40が組み付けられた状態で、係止爪36が係止する部分である。また、嵌入突出部45は、本体カバー部開口46が穿設されている本体カバー部42を補強する補強部材としての機能も有している。
【0032】
前記の操作レバー30にカバー40を組み付けた状態では、本体カバー部42の嵌入突出部45がレバー本体開口35に嵌入している。この状態の嵌入突出部45は、その下部がレバー本体開口35の内周縁に引っ掛かって支持されている。また、レバー本体31の係止爪36は、先端部側が嵌入突出部45を乗り越えて、本体カバー部42との間に形成されたポケットに入り、嵌入突出部45に係止している。この先端部は、本体カバー部開口46に入り込んで本体カバー部開口46に受けられている。係止爪36の周縁部は、本体カバー部開口46の内周縁との間のクリアランスを介して少なくとも一部が本体カバー部開口46の内側縁部に重なり得る位置にある。
【0033】
次に、パーキングブレーキ装置10の内部機構について説明する。
ベース部材20の側面部には、金属板を弧状に形成したラチェットプレート12がピンによって固定されている。ラチェットプレート12は、非制動状態時に操作レバー30が倒されて収納されているイニシャル位置にあるときの操作レバー30のグリップ部32の先端側を「前方」とすると、前記枢軸11よりも前方に位置するように配設されている。
【0034】
ラチェットプレート12は、弧状の曲率中心(図示せず)が、該ラチェットプレート12より枢軸11側に位置している。ラチェットプレート12の内側の弧に沿って、複数の歯部12aが形成されている。この歯部12aは、操作レバー30側に揺動可能に枢支されたポール13の揺動端にある爪13aが噛み合うためのものである。ポール13は、操作レバー30の操作力の伝達機構を構成する第1出力リンク14に設けた枢軸13bによって枢支され、ラチェットプレート12と枢軸11との間に配置されている。
【0035】
第1出力リンク14は、ラチェットプレート12の外側に配設されており、枢軸11が貫通するように設けたカラー(図示せず)に固定することによってベース部材20に枢支されている。また、ラチェットプレート12の内側には、第1出力リンク14に連動して同じく伝達機構を構成する第2出力リンク(図示せず)が配設されている。操作レバー30は、レバー本体31の左右の側面部間の隙間内にベース部材20、第1出力リンク14および第2出力リンクが収納されるように配設され、枢軸11は、操作レバー30、第1出力リンク14および第2出力リンクそれぞれの共通の回転軸となっている。
【0036】
第1出力リンク14の揺動端縁側には、枢軸11を中心とする円弧形のガイド溝14bが穿設されており、該ガイド溝14b内に、操作レバー30に固設された係合ピン14cが相対的に移動可能に嵌合している。操作レバー30が引き起こされると、係合ピン14cがガイド溝14bの一端側に係合して荷重が出力されて、第1出力リンク14が図1中で時計方向に回動するように設定されている。この回動によって前記ポール13は、ラチェットプレート12と枢軸11との間で円軌道上を変位する。
【0037】
第1出力リンク14の前端縁側には、後述する収納機構を構成する収納リンク16が係止する係止部14dが設けられている。さらに、第1出力リンク14の回動中心となる枢軸11よりも下端縁側には、操作レバー30を引き起こした状態を検出する操作検出手段であるスイッチ70の押ボタン73に係脱するための突出部14eが設けられている。
【0038】
また、パーキングブレーキ装置10には、ケーブルの張力を調整する張力調整手段が設けられている。張力調整手段は、操作レバー30の起倒に伴い操作力が伝達されて連動し、ケーブルが張力を調整可能に連結される連動部材50を備える。連動部材50は、枢支ピン14aとそのカラーを介して、第1出力リンク14および第2出力リンクにそれぞれ揺動可能に連結されている。
【0039】
操作レバー30の引き起こしによって、第1出力リンク14等が回動すると、枢支ピン14aを介して連動部材50が後方(図1中で右側方向)に移動し、ケーブルが後方に引っ張られる。これにより、制動力が発生した制動状態がもたらされる。制動状態では、ケーブルに張力が生じており、非制動状態となる方向にケーブルが引っ張られるが、前記ポール13が変位してラチェットプレート12の歯部12aに噛み合うので、張力に抗して第1出力リンク14が不動に保持される。これにより、制動状態を維持することができる。
【0040】
ポール13と歯部12aとの噛合いは、図示省略したリリースリンクがポール13を歯部12aに噛み合う方向に押すことによってなされている。リリースリンクは、リリースロッド15の操作力を受けて、リリースロッド15の操作に連動するように設定されている。リリースロッド15の一端は、操作レバー30の先端側のグリップ部32の先端から突出しており、この突出した部分には操作ボタン15aが取り付けられている。操作ボタン15aを押し込むと、リリースロッド15がリリースリンクに操作力を伝達し、リリースリンクはポール13をラチェットプレート12の歯部12aとの噛合状態が解消する方向に回動させるように設定されている。
【0041】
また、パーキングブレーキ装置10には収納機構が設けられている。収納機構は、制動状態を維持したままで操作レバー30をイニシャル位置に収納するための機構である。収納機構は、前記第1出力リンク14の係止部14dに係脱可能な収納リンク16を有して成る。収納リンク16は、レバー本体31側に枢軸16aを介して回動可能に枢支されており、その上端側は、操作レバー30に開設されたガイド溝32aより外部に突出して操作部16bとして形成されている。
【0042】
操作部16bを、前後方向に延びるガイド溝32aに沿って後方(図1中で右側方向)に移動させると、それに伴い収納リンク16が回動する。回動の方向は、第1出力リンク14の係止部14dに係止している下端部16cが係止部14dから離れる方向(図1中で時計方向)である。
【0043】
また、収納リンク16は、コイルばね17aを備えた付勢部材17によって、第1出力リンク14の係止部14dに下端部16cが係止する方向に付勢されている。さらに、付勢部材17は、リリースロッド15の途中に掛かって、該リリースロッド15をリリースリンクから離れる方向に付勢している。
【0044】
すなわち、操作レバー30は、制動状態において収納リンク16が係止部14dに係止している時は、引き起こされた位置に保持され、制動状態で収納リンク16が係止部14dから離れる方向に回動された時は、制動状態を維持している第1出力リンク14から離れて、イニシャル位置に収納されるように設定されている。
【0045】
次に本実施の形態に係るパーキングブレーキ装置10の作用を説明する。
操作レバー30は、グリップ部32を被覆しているレバー本体31を手で握持して引き起こしたり、倒したりすることができる。パーキングブレーキ装置10が非制動状態にあるときは、操作レバー30は倒れた位置にある。この状態から操作レバー30を引き起こすと、ケーブルが引かれて制動部に制動力が発生した制動状態になる。操作レバー30を引き起こしている力を抜くと、操作レバー30は、倒れる方向に戻るように引かれるが、ポールがラチェットプレート12の歯部12aに噛み合うことによって制動状態は維持される。制動状態を非制動状態に戻すときは、操作ボタン15aを押し込んでリリースロッド15を操作し、ポールと歯部12aとの噛合いを解除すればよい。
【0046】
この操作レバー30にはレバー本体31が装着されてグリップ部32を被覆しているので、グリップ部32を握持したときのグリップ感が良く、また、見た目の美観を呈している。
【0047】
このカバー40を、グリップ部32からレバー本体31まで覆うように組み付けるためには、グリップ部32にカバー40のグリップカバー部41を外嵌させ、レバー本体31の所定箇所が本体カバー部42の装着部に覆われるようにする。すなわち、本体カバー部42の嵌入突出部45がレバー本体31に設けられた係止爪36に外側から当たっており、かつ、レバー本体開口35と向き合った状態にする。このとき、係止爪36は、本体カバー部開口46と向き合った状態になっている。
【0048】
このような状態にカバー40を操作レバー30に被せてから、本体カバー部42の装着部を外側からレバー本体31に向けて押す。レバー本体31の係止爪36は、その先端部側がレバー本体開口35を部分的に覆う向きに屈曲しているので、装着部が押されると嵌入突出部45が弾性変形して係止爪36の先端部側が嵌入突出部45の上縁部を乗り越えて嵌入突出部45と本体カバー部42との間のポケットに入り、嵌入突出部45に係止する。
【0049】
嵌入突出部45に係止している係止爪36は、本体カバー部開口46に入り込み本体カバー部開口46に受け入れられる。一方、本体カバー部42の嵌入突出部45は、レバー本体開口35に嵌入し、嵌入突出部45は、レバー本体開口35の内周縁に引っ掛かって支持される。
【0050】
このようにして、レバー本体31に組み付けられたカバー40にその装着状態をずらすような方向の力が加わった場合には、係止爪36が本体カバー部開口46の内周縁に当たって動きが規制されるので、カバー40がずれてしまうことがない。さらに、レバー本体開口35に嵌入突出部45が嵌入しているので、前記の方向の力が加わったときに嵌入突出部45はレバー本体開口35の内周縁に当たって動きが規制されるので、より確実にカバー40のずれを防止することができる。
【0051】
このように、カバー40は、操作レバー30に容易に装着することができる。また、カバー40が操作レバー30に装着された状態では、レバー本体31の側面とこれと相対する本体カバー部42の側面との間に介在するものがないので、それらの間にほとんど隙間が生じないようにすることができる。したがって、操作レバー30の幅が広くなってしまうおそれがない。また、嵌入突出部45は、本体カバー部開口46を設けた装着部の強度を補強する効果がある。このため、レバー本体31の係止爪36が本体カバー部42の嵌入突出部45に引っ掛かるとともに、嵌入突出部45がレバー本体開口35に嵌入して操作レバー30にカバー40が組み付けられた状態でも本体カバー部42には歪みが生じることがない。
【0052】
なお、カバー40を操作レバー30に装着した状態で本体カバー部開口46内に受け入れられるレバー本体31側の屈曲した係止爪36は、その先端部側の周縁が本体カバー部開口46の内周縁にクリアランスを介して重なるように、かつ、本体カバー部開口46から外側に突き出ないように屈曲しておくことにより、より確実に操作レバー30の幅が広くならないようにすることができる。
【0053】
また、レバー本体31の係止爪36は、レバー本体開口35を上から下に向かって部分的に覆うように図示して説明したが、係止爪36は、レバー本体開口35を下から上に向かって部分的に覆うようにしてもよい。この場合、本体カバー部42の嵌入突出部45には、係止爪36を下方から引っ掛けることができる縁部を下部に形成しておけばよい。
【0054】
また、嵌入突出部45は、係止爪36が引っ掛かる上部または下部の縁部側を開口とし、係止爪36が引っ掛からない下部または上部側を塞いで、本体カバー部開口46の周辺部との間にポケットを形成するように設けてもよいし、係止爪36が引っ掛からない下部または上部側を塞がずに嵌入突出部45の全体がブリッジ状になるようにしてもよい。
【0055】
以上、パーキングブレーキ装置を例に挙げて説明したが、これに限らず本発明はカバーを装着した操作レバーを備える車両用操作レバー装置に広く実施できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施の形態に係るパーキングブレーキ装置を示す側面図である。
【図2】図1における操作レバーおよびカバーを示す斜視図である。
【図3】図2における操作レバーのレバー本体に設けたレバー本体開口およびその周辺部を拡大して示す部分拡大図である。
【図4】図2におけるカバーの本体カバー部およびその周辺部を拡大して示す部分拡大図である。
【図5】操作レバーへのカバーの組み付けを説明する説明図である。
【図6】図5におけるB−B断面図である。
【図7】従来のパーキングブレーキ装置を示す平面図である。
【図8】図7における取付け部を拡大して示す部分拡大図である。
【図9】図8におけるC−C断面図である。
【符号の説明】
【0057】
10…パーキングブレーキ装置(車両用操作レバー装置)
11…枢軸
12…ラチェットプレート
12a…歯部
13…ポール
13a…爪
13b…枢軸
14…第1出力リンク
14a…枢支ピン
14b…ガイド溝
14c…係合ピン
14d…係止部
14e…突出部
15…リリースロッド
15a…操作ボタン
16…収納リンク
16a…枢軸
16b…操作部
16c…下端部
17…付勢部材
17a…コイルばね
20…ベース部材
21…取付脚部
30…操作レバー
31…レバー本体
32…グリップ部
32a…ガイド溝
33…ストッパ部
35…レバー本体開口
36…係止爪
40…カバー
41…グリップカバー部
42…本体カバー部
45…嵌入突出部
46…本体カバー部開口
50…連動部材
70…スイッチ
73…押ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材に操作レバーを起倒可能に枢支し、該操作レバーを引き起こすことにより、制動部に力を伝達して制動力を発生させ、前記操作レバーを倒した際に、該操作レバーをイニシャル位置に規制することができる車両用操作レバー装置において、
前記操作レバーのグリップ部を被覆するカバーを有し、該カバーに、前記操作レバーのグリップ部の基端側が連なるレバー本体側まで覆う本体カバー部を設け、
前記本体カバー部に覆われるレバー本体の所定箇所に、前記カバーを取り付けるためのレバー本体開口と、該レバー本体開口の外側に突起して先端部側が前記レバー本体開口を部分的に覆う向きに屈曲した係止爪とを設け、
前記レバー本体の所定箇所を覆う前記本体カバー部に、前記係止爪を受ける本体カバー部開口と、該本体カバー部開口を覆うように前記本体カバー部内側に突出し、前記レバー本体開口に嵌入可能な嵌入突出部とを設け、
前記本体カバー部の嵌入突出部を前記レバー本体開口に嵌入させ、前記レバー本体の係止爪を前記本体カバー部開口が受ける位置で前記嵌入突出部に係止させることにより、前記カバーを前記レバー本体に装着可能としたことを特徴とする車両用操作レバー装置。
【請求項2】
前記本体カバー部は、前記カバーの一部として一体成形することを特徴とする請求項1に記載の車両用操作レバー装置。
【請求項3】
前記本体カバー部の嵌入突出部に係止した前記レバー本体の係止爪の前記先端部側は、前記本体カバー部の外側まで至らずに屈曲していることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用操作レバー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−276520(P2007−276520A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101790(P2006−101790)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【出願人】(390023098)大塚工機株式会社 (42)
【Fターム(参考)】