説明

車両用放熱器

【課題】 外形サイズを大きくすることができるとともに、冷媒を収容するための内容積を削減できる車両用放熱器を提供する。
【解決手段】 チューブ4、冷却フィン5及びヘッダパイプ6、7の各一部からなり冷媒の放熱を行う熱交換部2と、熱交換部2をバイパスする冷却風を抑制する抵抗体3とを有し、この抵抗体3が、チューブ4、冷却フィン5及びヘッダパイプ6、7のそれぞれ他の部分と、チューブ4及び冷却フィン5の最外側部に設けられ、通風穴9を有する板体10とから構成されている。これにより、熱交換部2に抵抗体3を加えたので当該車両用放熱器1の外形サイズが大きくなるとともに、熱交換部2をバイパスする冷却風を抵抗体3で抑制することにより、熱交換部2に十分な風量の冷却風を供給して冷媒の放熱を効果的に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両駆動装置の冷却用熱交換器より冷却風の風上側に配置されて乗員室用空調装置用の冷媒の放熱を行う車両用放熱器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術に関連するものとして、例えば、特許文献1に記載されているように、冷却風の風上側に位置するコンデンサ(車両用放熱器)と風下側に位置するラジエータ(車両駆動装置の冷却用熱交換器)との間に、エンジン側からの熱風の回り込みを遮断する遮断プレートを備えた「車両用内燃機関の冷却装置」が提案されている。
【0003】
また、特許文献2に記載されているように、コンデンサの外方にコンデンサバイパス回路を備えた「冷却装置」が提案されている。この従来技術では、エンジン側からコンデンサの前面側に熱風が再循環する際に、この熱風がコンデンサバイパス回路を通ってコンデンサを迂回してラジエータに流入するので、熱風でコンデンサの温度が上昇することを防止できる。
【0004】
また、特許文献3に記載されているように、第1ラジエータ及び第2ラジエータを備え、コンデンサ(室内熱交換器)が第1ラジエータの風上側のみ設けられる「空冷式熱交換装置」が提案されている。この従来技術では、コンデンサで冷媒から放熱を受けていない空冷風が第2ラジエータへ流入するので、この第2ラジエータで冷却水を65度C以下に冷却できる。
【特許文献1】特開平5−50862号公報
【特許文献2】特開2001−90538号公報
【特許文献3】特開2004−204793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記した特許文献1〜3にあっては、風上側のコンデンサが風下側のラジエータより小さく外形サイズの違いがあるため、エンジン側(風下側)から熱風がコンデンサへ回り込むという問題があり、この従来の問題に対処する1つの方法として、コンデンサの外形サイズを大きくすることが考えられる。また、冷媒のコスト削減や省エネのため、冷媒を収容するためのコンデンサの内容積を削減することが要望されている。
【0006】
本発明は、前記した従来技術における実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、外形サイズを大きくすることができるとともに、冷媒を収容するための内容積を低減することのできる車両用放熱器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため請求項1記載の発明は、交互に複数積層されるチューブ及び冷却フィンと、これらのチューブ及び冷却フィンの積層方向に延びて前記チューブ及び冷却フィンの両端にそれぞれ取り付けられ、前記チューブと連通する一対のヘッダパイプとを備え、車両駆動装置の冷却用熱交換器より冷却風の風上側に配置された車両用放熱器であって、乗員室用空調装置で用いられる冷媒が流通し、この冷媒の放熱を行う熱交換部と、この熱交換部をバイパスする前記冷却風を抑制する抵抗体とを有することを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記熱交換部は、前記チューブ、冷却フィン及びヘッダパイプの各一部から構成され、前記抵抗体は、前記チューブ、冷却フィン及びヘッダパイプのそれぞれ他の部分から構成されるとともに、前記熱交換部から隔離されたことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記抵抗体は、交互に複数積層される前記チューブ及び冷却フィンの最外側部に設けられ、前記冷却風の一部が通過する通風穴を有する板体を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記ヘッダパイプ内に隔壁を設けて、前記ヘッダパイプ内に冷媒が流通しない非流通部を形成したことを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記非流通部よりガスを前記ヘッダパイプの外部へ放出するガス抜き穴を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記ガス抜き穴、製造時に開口し、車載時に閉止することを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記ガス抜き穴は、車体側固定部材で閉止されることを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の発明は、請求項5または6記載の発明において、前記ガス抜き穴は、前記ヘッダパイプの下端に設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、冷媒の放熱を行う熱交換部に抵抗体を加えることにより当該車両用放熱器の外形サイズを大きくすることができる。また、熱交換部をバイパスする冷却風を上記の抵抗体で抑制するので、熱交換部に対して十分な風量の冷却風を供給して冷媒の放熱を効果的に行うことができ、これにより、熱交換部の内容積、すなわち冷媒を収容するための内容積を低減できる。したがって、当該車両用放熱器を車両駆動装置の冷却用熱交換器と同様の外形サイズまで大きくすることにより、これら車両用放熱器及び冷却用熱交換器間の外形サイズの違いに伴う熱風の回り込みを抑制できる。また、乗員室用空調装置で用いられる冷媒の量を少なくすることにより、コスト削減及び省エネを図ることもできる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、チューブ、冷却フィン及びヘッダパイプの各一部及び他の部分から、それぞれ熱交換部及び抵抗体を構成するようにしたので、請求項1記載の発明の効果に加えて、通常の車両用放熱器を用いて当該車両用放熱器を形成することができるので、特殊な形状の車両用放熱器を用いる場合に比べて生産性を向上できる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、チューブ及び冷却フィンの最外側部に設けた板体の通風穴を介して冷却風の一部が通過するので、チューブ及び冷却フィンの最外側部の部分でも他の部分と同様の状態で冷却風を抑制できる。これにより、請求項1記載の発明の効果に加えて、より十分な風量の冷却風を無駄なく熱交換部に供給できるので、熱交換性能を良好な状態に保つことができる。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、ヘッダパイプ内に隔壁を設けて冷媒が流通しない非流通部を形成したので、請求項2記載の発明に加えて、ヘッダパイプ内の非流通部、及びこの非流通部と連通するチューブ、及びこのチューブに隣接する冷却フィンにより、熱交換部をバイパスする冷却風を抑制する抵抗体を得ることができる。
【0019】
請求項5記載の発明によれば、製造時に加熱加工で当該車両用放熱器のロウ付けを行う際にヘッダパイプの非流通部よりガス抜き穴を介してガスを外部へ放出するので、請求項4記載の発明の効果に加えて、ヘッダパイプ及びチューブをより良好な精度で形成して熱交換性能を向上させることができる。
【0020】
請求項6記載の発明によれば、製造時にガス抜き穴が開口してヘッダパイプの非流通部よりガスを外部へ放出した後、車載時に上記のガス抜き穴が閉止されるので、請求項5記載の発明の効果に加えて、車載時にヘッダパイプ内に腐食性生成物及び水分が侵入して内部腐食を引き起こすことを防止できる。
【0021】
請求項7記載の発明によれば、車載時に車体の支持フレームなどに固定する際に、車体側固定部材でガス抜きが閉止されるので、請求項6記載の発明の効果に加えて、組立時のロウ付け後にガス抜き穴を溶接あるいはボルトなどで塞ぐ必要がなくなり、部品点数や組付工程の増加を要せずコスト削減を図ることができる。
【0022】
請求項8記載の発明によれば、ヘッダパイプの下端に設けたガス抜き穴が下向きとなるので、請求項5または6記載の発明の効果に加えて、ヘッダパイプ内への腐食性生成物及び水分の侵入をより確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態に係る車両用放熱器を図に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態に係る車両用放熱器を示す正面図、図2は図1の車両用放熱器に設けられるヘッダパイプの下端部を下方から見た図、図3は図1の車両用放熱器に設けられるヘッダパイプの下端部の縦断面図である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態の車両用放熱器1は、乗員室用空調装置(図示せず)で用いられる冷媒が流通し、この冷媒の放熱を行う熱交換部2と、この熱交換部2をバイパスする冷却風を抑制する抵抗体3とを有し、車両駆動装置(図示せず)の冷却用熱交換器より冷却風の風上側に配置されている。
【0025】
また、本実施形態の車両用放熱器1は、交互に複数積層されるチューブ4及び冷却フィン5と、これらのチューブ4及び冷却フィン5の積層方向に延びてチューブ4及び冷却フィン5の両端にそれぞれ取り付けられ、チューブ4と連通する一対のヘッダパイプ6,7とを備えるとともに、チューブ4及び冷却フィン5の最外側部のサイドプレート8に、冷却風の一部が通過する通風穴9を有する板体10が装着されている。一方のヘッダパイプ6の所定高さ位置には隔壁6a,6bが設けられ、同様に、他方のヘッダパイプ7の所定高さ位置にも隔壁7a,7bが設けられている。これらのうちの上部の隔壁6a,7aで冷媒の往路側の領域Aと復路側の領域Bとが仕切られている。下部の隔壁6b,7bの下方には、冷媒の復路側の領域Bから隔離され、上記の冷媒が流通しない非流通領域Cが形成されている。
【0026】
熱交換部2は、冷却フィン5、及びヘッダパイプ6,7のうち、冷媒の往路側の領域Aと復路側の領域Bに位置する流通部から構成されている。抵抗体3は、冷却フィン5、及びヘッダパイプ6,7のうち非流通領域Cに位置する非流通部と、チューブ4及び冷却フィン5の最外側部のサイドプレート8に装着された板体10とから構成されている。
【0027】
図2及び図3に示すように、一方のヘッダパイプ6の下端には、下方へ突出するピン11と、非流通領域Cに位置する非流通部からガスをヘッダパイプ6の外部へ放出するガス抜き穴12とが設けられ、このガス抜き穴12は、製造時に開口し、車載時に車体側固定部材、例えばゴム製マウント部材13で閉止される。なお、他方のヘッダパイプ7の下端にも同様のピン及びガス抜き穴が設けられている。
【0028】
この実施形態にあっては、当該車両用放熱器1の組立を完了した後、ピン11にゴム製マウント部材13を装着し、このゴム製マウント部材13を介して車体の支持フレームなどに固定する。これにより、一方のヘッダパイプ6の下端に設けられるガス抜き穴12がゴム製マウント部材13で閉止され、同様に、他方のヘッダパイプ7の下端に設けられるガス抜き穴も閉止される。
【0029】
次いで、一方のヘッダパイプ6に設けられる流入口14及び流出口15を、接続管(図示せず)を介して乗員室用空調装置に接続した状態で冷媒が流入口14より流入すると、一方のヘッダパイプ6、冷却フィン5、及び他方のヘッダパイプ7のうち冷媒の往路側の領域Aに位置する部分で流通するとともに、冷媒の往路側の領域Bに位置する部分で流通した後、ヘッダパイプ6の流出口15より流出する。その際に、熱交換部2で上記の冷媒の放熱を行うとともに、熱交換部2をバイパスする冷却風を抵抗体3により抑制する。
【0030】
このように構成した実施形態では、冷媒の放熱を行う熱交換部2に抵抗体3を加えることにより当該車両用放熱器1の外形サイズを大きくすることができる。
【0031】
また、本実施形態では、冷却フィン5、及びヘッダパイプ6,7のうち、非流通領域Cに位置する非流通部で冷却風を抑制するとともに、チューブ4及び冷却フィン5の最外側部のサイドプレート8に装着した板体10でも冷却風を抑制することにより、熱交換部2に対して十分な風量の冷却風を供給して冷媒の放熱を効果的に行うことができるため、熱交換部2の内容積、すなわち冷媒を収容するための内容積を低減できる。
【0032】
また、本実施形態では、ヘッダパイプ6の下端に下向きのガス抜き穴12を設けたので、ヘッダパイプ6内に腐食性生成物及び水分が侵入して内部腐食を引き起こすことを確実に防止できる。さらに、車載時にゴム製マウント部材13を介して車体の支持フレームなどに固定することにより、ゴム製マウント部材13で上記のガス抜き穴12が閉止されるので、組立時のロウ付け後にガス抜き穴12を溶接あるいはボルトなどで塞ぐ必要がなくなり、部品点数や組付工程の増加を要せずコスト削減を図ることができる。
【0033】
なお、上記実施形態では、非流通領域Cに位置する非流通部からガスをヘッダパイプ6の外部へ放出するガス抜き穴12を、車載時にゴム製マウント部材13で閉止する場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、車載時に他の車体側固定部材で閉止してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用放熱器を示す正面図である。
【図2】図1の車両用放熱器に設けられるヘッダパイプの下端部を下方から見た図である。
【図3】図1の車両用放熱器に設けられるヘッダパイプの下端部の縦断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 車両用放熱器
2 熱交換部
3 抵抗体
4 チューブ
5 冷却フィン
6、7 ヘッダパイプ
6a、6b,7a,7b 隔壁
8 サイドプレート
9 通風穴
10 板体
12 ガス抜き穴
13 ゴム製マウント部材(車体側固定部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交互に複数積層されるチューブ(4)及び冷却フィン(5)と、これらのチューブ(4)及び冷却フィン(5)の積層方向に延びて前記チューブ(4)及び冷却フィン(5)の両端にそれぞれ取り付けられ、前記チューブ(4)と連通する一対のヘッダパイプ(6、7)とを備え、車両駆動装置の冷却用熱交換器より冷却風の風上側に配置された車両用放熱器であって、
乗員室用空調装置で用いられる冷媒が流通し、この冷媒の放熱を行う熱交換部(2)と、この熱交換部(2)をバイパスする前記冷却風を抑制する抵抗体(3)とを有することを特徴とする車両用放熱器。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用放熱器であって、
前記熱交換部(2)は、前記チューブ(4)、冷却フィン(5)及びヘッダパイプ(6、7)の各一部から構成され、
前記抵抗体(3)は、前記チューブ(4)、冷却フィン(5)及びヘッダパイプ(6、7)のそれぞれ他の部分から構成されるとともに、前記熱交換部(2)から隔離されたことを特徴とする車両用放熱器。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用放熱器であって、
前記抵抗体(3)は、交互に複数積層される前記チューブ(4)及び冷却フィン(5)の最外側部に設けられ、前記冷却風の一部が通過する通風穴(9)を有する板体(10)を備えたことを特徴とする車両用放熱器。
【請求項4】
請求項2に記載の車両用放熱器であって、
前記ヘッダパイプ(6,7)内に隔壁(6a、6b,7a,7b)を設けて、前記ヘッダパイプ(6,7)内に冷媒が流通しない非流通部を形成したことを特徴とする車両用放熱器。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用放熱器であって、
前記非流通部よりガスを前記ヘッダパイプ(6,7)の外部へ放出するガス抜き穴(12)を設けたことを特徴とする車両用放熱器。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用放熱器であって、
前記ガス抜き穴(12)は、製造時に開口し、車載時に閉止することを特徴とする車両用放熱器。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用放熱器であって、
前記ガス抜き穴(12)は、車体側固定部材(13)で閉止されることを特徴とする車両用放熱器。
【請求項8】
請求項5または6に記載の車両用放熱器であって、
前記ガス抜き穴(12)は、前記ヘッダパイプ(6,7)の下端に設けられたことを特徴とする車両用放熱器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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