説明

車両用洗浄剤

【課題】起泡性が良好でかつ泡の持続性の高い車両用洗浄剤を提供すること。
【解決手段】少なくとも、アルキル硫酸塩(アルキル基の炭素数は8〜18)及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(アルキル基の炭素数は8〜18)の何れか若しくは両方の界面活性剤と、炭素数12〜16の高級アルコール及び/又は炭素数12〜16の高級脂肪酸と、水とからなることを特徴とする車両用洗浄剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車を代表とする車両の表面の各種汚れを洗浄するための車両用洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の塗装面には、大気中の塵、ばい煙、油粒子、埃等の汚れが付着する。表面に付着したこれら汚れを洗い流すため、車両の表面は度々洗浄される。また、付着物によっては、車両表面の塗膜を荒らしてしまう場合があり、さらに塗膜保護のためワックスを掛けるに際して、表面の付着物を除去する必要があり、これら塗膜保護の観点からも、度々洗浄される。
【0003】
車両の洗浄には、こびり付いた油性の付着物を除去するため、及び、砂埃等の微細粒により塗膜表面を傷付けるのを防止するべく泡で当該微細粒を包み込むため、界面活性剤等の洗浄成分を含有する洗浄剤(シャンプー)が用いられる。特に車両用の洗浄剤としては、その目的から十分な洗浄性や発泡性が要求され、かつ、塗膜表面を侵すことの無い材料の選択が要求されるが、近年、これら要求を満たす車両用洗浄剤が多数提案され、かつ、市販されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
車両用の洗浄剤は、使用時に発泡させてから洗車に用いている。発泡させていない洗浄液で洗車すると車両表面に存在する粉塵などの微粒子が、スポンジなどの洗浄具に引きずられ、車両の塗装面に無数の細かな傷が形成されてしまう虞がある。そのため、起泡性(泡立ち)が良好でかつ泡の持続性の高い洗浄剤が求められている。
【0005】
起泡性については、界面活性剤の添加量を多くすることで対応することが可能であるが、すすぎ性が低下する上、塗装面への影響も懸念され、さらにコスト高にもなるため好ましくない。一方、泡の持続性については、従来特に対策が取られておらず、洗車時にユーザーがスポンジなどでその都度泡立てて使用しているのが現状であり、ユーザーに労力を強いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−147794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、起泡性が良好でかつ泡の持続性の高い車両用洗浄剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、以下の本発明により達成される。すなわち本発明は、少なくとも、アルキル硫酸塩(アルキル基の炭素数は8〜18)及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(アルキル基の炭素数は8〜18)の何れか若しくは両方の界面活性剤と、炭素数12〜16の高級アルコール及び/又は炭素数12〜16の高級脂肪酸と、水とからなることを特徴とする車両用洗浄剤である。
【0009】
界面活性剤としてアルキル硫酸塩(アルキル基の炭素数は8〜18)及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(アルキル基の炭素数は8〜18)を用い、これに炭素数12〜16の高級アルコール及び/又は炭素数12〜16の高級脂肪酸を添加することで、得られる洗浄剤は極めて起泡性が良いばかりか、生じる泡にはコシがあって、持続性にも優れている。そのため、一旦泡立てれば、洗車の最中に再び泡立てなければならなくなることがほとんどない。
【0010】
そのため、例えば、バケツに一旦泡立てた洗浄剤の泡を、洗車を通じて掬いとって洗車に供するような方法で洗車することも可能であり、ユーザーの洗車時の負担が軽減される。また、一般の洗浄剤による泡とは異なり、コシがあって持続性のある泡なので、車両の塗装面を泡で包み込み、表面に存在する粉塵などの微粒子をその泡に取り込むように優しく洗浄することが可能であり、車両の塗装面に細かな傷などを生じる懸念を抑制することができる。さらに、泡立ちが良好であることから、界面活性剤の使用量を減らすことも可能であり、すすぎ性を損なうことも無い。
【0011】
本発明の車両用洗浄剤において、前記界面活性剤と前記高級アルコール及び/又は前記高級脂肪酸との配合割合{(界面活性剤):(高級アルコール及び/又は高級脂肪酸)}としては、質量基準で3:1〜100:1の範囲内にすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、起泡性が良好でかつ泡の持続性の高い車両用洗浄剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の車両用洗浄剤は、界面活性剤と、高級アルコール及び/又は高級脂肪酸と、水とが必須構成成分であり、さらに必要に応じてその他の成分が含まれる。以下、本発明を各成分に分けて詳細に説明する。
【0014】
<水>
本発明においては、後述する各主成分を安定的に溶解乃至分散させた状態で維持するための溶剤として、水を用いる。この時用いる水については、特に制限はなく、一般的な水道水、工業用水、地下水、純水、脱イオン水、河川水、湧き水等が問題なく使用できる。車両用洗浄剤としての保存性を高めるためには、できるだけ不純物を含まない方が好ましいため、純水、脱イオン水が好ましいが、水道水、工業用水あるいは地下水であっても、一般的に保存性に大きな影響を与える程ではないため、使用には差し支えない。
【0015】
<界面活性剤>
本発明の車両用洗浄剤には、界面活性剤としてアルキル硫酸塩及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩の何れか若しくは両方を用いる。また、必要に応じてその他の界面活性剤を用いても構わない。
【0016】
(アルキル硫酸塩)
本発明で用いるアルキル硫酸塩におけるアルキル基の炭素数としては、8〜18のものが用いられ、12〜16が好ましい。炭素数があまりに大き過ぎると水に対する溶解度が減少し、小さ過ぎると洗浄力が弱くなり、それぞれ好ましくない。
【0017】
本発明で用いるアルキル硫酸塩におけるアルキル基は、直鎖でも分岐していても構わないが、直鎖のものが一般的である。
【0018】
本発明で用いるアルキル硫酸塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、モノエタノールアミン塩等が挙げられ、特に限定されない。
【0019】
具体的に本発明に好ましいアルキル硫酸塩としては、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、その他炭素数8〜18のアルキル硫酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0020】
(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩)
本発明で用いるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩は、アルキル硫酸塩のポリエチレンオキサイド付加物であり、アルキル硫酸塩部分については、上記(アルキル硫酸塩)の項で説明した物と同様であり、好ましい態様も同様であるため、重複した説明は割愛する。
【0021】
ポリエチレンオキサイド部分におけるエチレンオキサイド単位の数としては、1分子当たり1個以上10個以下が好ましく、1個以上4個以下がより好ましい。エチレンオキサイド単位の数が多くなると、水には溶けやすくなるが、油汚れが落としづらくなるため、あまり多過ぎると好ましくない。
【0022】
具体的に本発明に好ましいポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン等を挙げることができる。
【0023】
アルキル硫酸塩及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩は、何れか一方を使用してもよいし、両方を使用してもよい。
【0024】
(その他の界面活性剤)
本発明においては、上記界面活性剤が必須構成成分であるが、適宜、その他の陰イオン界面活性剤や、各種両性界面活性剤、非イオン界面活性剤を組み合わせて用いてもよく、洗浄可能な汚染成分の多様性を考慮したり、相乗効果による洗浄性の向上を見極めて、適宜最適の組み合わせを選択すればよい。
【0025】
具体的に使用可能な好ましい陰イオン界面活性剤としては、例えば、直鎖アルキルベンゼン脂肪酸塩、高級アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩(石鹸)、N−サルコシン酸塩、アシル化ポリペプチド、リグニンスルホン酸塩、N−アシルアルキルタウリン塩、エーテルカルボン酸塩、n−パラフィンスルホン酸塩(SAS)、スルホコハク酸塩、イセチオン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩(AOS)、アルキルリン酸エステル、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、上記陰イオン界面活性剤中にフッ化炭化水素基を含有する陰イオン系界面活性剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
また、具体的に使用可能な好ましい両性界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルヒドロキシエチルアミンオキサイド、アルキルジメチルベタイン、アルキルヒドロキシエチルベタイン、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アミノ酸型両性界面活性剤、脂肪酸アミドアミンオキサイド、上記両性界面活性剤中にフッ化炭化水素基を含有する両性イオン系界面活性剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
また、具体的に使用可能な好ましい非イオン界面活性剤としては、例えば、エチレンオキサイド付加アルキルフェノール(APE)、エチレンオキサイド付加高級アルコール(AE)、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン付加ポリオキシプロピレングリコール、アルカノールアミン−脂肪酸縮合物、アルキルアルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、アルキルグリセリルエーテル、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ヤシ油脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、上記非イオン界面活性剤中にフッ化炭化水素基を含有する非イオン界面活性剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
<高級アルコール及び/又は高級脂肪酸>
本発明の車両用洗浄剤には、高級アルコール及び高級脂肪酸の何れか一方若しくは両方を用いる。
【0029】
(高級アルコール)
本発明で用いる高級アルコールは、炭素数が12〜16のものであり、中でも炭素数14のミリスチルアルコールが最も好ましい。炭素間結合は、不飽和結合を含んでも構わないし、全てが飽和結合であっても構わない。
【0030】
具体的に本発明に好ましい高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノリルアルコール等が挙げられる。
【0031】
(高級脂肪酸)
本発明で用いる高級脂肪酸は、炭素数が12〜16のものであり、中でも炭素数が14〜16のものが好ましい。炭素間結合は、不飽和結合を含んでも構わないし、全てが飽和結合であっても構わない。
【0032】
具体的に本発明に好ましい高級脂肪酸としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が挙げられる。
【0033】
これら高級アルコール及び高級脂肪酸は、何れか一方を使用してもよいし、両方を使用してもよい。両者の内、起泡性及び泡の持続性の双方に優れるのは高級アルコールであり、高級アルコールを主体的に使用することが好ましく、高級アルコールのみを使用することがより好ましい。
【0034】
これら高級アルコール及び/又は高級脂肪酸の配合量は、既述の本発明に必須の界面活性剤であるアルキル硫酸塩及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩との配合比で論じられる。これら必須の界面活性剤と高級アルコール及び/又は高級脂肪酸との配合割合{(界面活性剤):(高級アルコール及び/又は高級脂肪酸)}としては、質量基準で3:1〜100:1の範囲内であることが好ましく、5:1〜30:1の範囲内であることがより好ましく、6:1〜20:1の範囲内であることがさらに好ましい。
【0035】
界面活性剤に対して高級アルコール及び/又は高級脂肪酸の配合割合が多過ぎると、これらは元々水に溶解するものではないため却って泡立ちが低下してしまう場合があり、少な過ぎると、泡の硬さが出ず泡の持続性が十分でなくなる場合があるため、それぞれ好ましくない。
【0036】
<その他の成分>
本発明の車両用洗浄剤には、上記成分以外にも必要に応じ、処方内の安定性を損なわない範囲で、その他の成分を含んでいても構わない。例えば、車両用洗浄剤に慣用的に使用されているものであれば、問題なく使用することができ、具体的には、金属封鎖剤、研磨剤、撥水成分、防腐剤、水溶性溶剤、紫外線遮蔽剤、アルカリ剤、ビルダー類、増粘剤、着色剤、香料及び殺菌剤等の任意成分を、起泡性や泡の持続性を損なうことなく、塗装表面に悪影響を及ぼさない範囲内で適宜添加することが可能である。
【0037】
添加可能な金属封鎖剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミノ五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラアミノ六酢酸(TTHA)、L−グルタミン酸二酢酸(GLDA)、L−アスパラギン酸−N,N−二酢酸(ASDA)、2−ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIMDA)、グルコン酸塩、3−ヒドロキシ−2,2−イミノジコハク酸(HIDS)、ヒドロキシエタンジホスホン酸や、上記組成物若しくは酸の一部乃至全てが、アルカリ金属、アンモニウム等で中和された物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
本発明の車両用洗浄剤に添加可能な防腐剤としては、芳香族ヒドロキシ化合物、有機酸の金属塩、安息香酸、サリチル酸、パラヒドロキシ安息香酸エステル、ベンゾイソチアゾニオン、メチルイソチアゾニオン等が挙げられる。
【0039】
また、添加可能な紫外線遮蔽剤としては、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線遮蔽剤を挙げることができる。
【0040】
本発明の車両用洗浄剤には、その他、低温時における凍結に対する液安定性の目的で、エチレングリコール等のグリコール類を添加することもできる。
【0041】
本発明の車両用洗浄剤には、すすぎ性の向上を企図して、グリセリンや、糖類、糖類の脱水誘導体以外の誘導体を添加することも好適である。一般的に「糖類」とは、下記一般式Aで表されるものであり、
n2mm[n及びmは、それぞれ独立に正の整数。]・・・一般式A
本発明において「糖類」とは、上記一般式Aで表されるものは勿論のこと、その類似体として、アルデヒドやケトンのポリヒドロキシ同族体及びその脱水縮合物を含む概念である。また、その誘導体とは、具体的には還元誘導体や酸化誘導体等が挙げられる。なお、糖類の誘導体の中には、脱水誘導体は含まれない。その理由は、脱水反応により水酸基の数が少なくなってしまい、保水性が低下して、期待するすすぎ性の効果を十分に発現できない場合があるからである。
【0042】
本発明に使用可能な糖類としては、上記一般式Aで表されるものや、前記ポリヒドロキシ同族体として単糖類が、その脱水縮合物としてオリゴ糖類、多糖類等が挙げられる。また、本発明に使用可能な糖類の誘導体としては、還元誘導体として糖アルコール、デオキシ糖、グリカール等が、酸化誘導体としてアルドン酸、ウロン酸、糖酸等が、それぞれ挙げられ、その他イノシトール、アミノ糖、チオ糖等が挙げられる。
【0043】
具体的に使用可能な糖アルコールとしては、エリスリトール(トレイトール、トレイット)、アラビニトール(アラビット、アラビトール)、キシリトール(キシリット)、アドニトール(リビトール、リビット)、ソルビトール(ソルビット、グルシット、グルシトール)、マンニトール(マンニット)、イジトール(イジット)、タリトール(タリット)、アリトール(アリット)、ズルシトール(ズルシット、ガラクチトール)等、その他イノシトール(イノシット)等の単糖アルコールや、マルチトール、イソマルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、イソマルトトリイトール、パニトール等のオリゴ糖(複数糖)アルコールが挙げられる。
【0044】
これらのなかでも、オリゴ糖(複数糖)アルコールが好ましく、特に二糖類あるいは三糖類の糖アルコールが好ましい。単糖類でも、十分なすすぎ性を有するが、二糖類あるいは三糖類の方がよりすすぎ性が良好であり、また四糖類以上ではだんだん粘度が高くなり、洗浄作業がし難くなる場合がある。
【0045】
糖類等の添加量としては、使用(洗車)時における車両用洗浄剤全量に対して、1.0質量%以上とすることが好ましく、3.0〜50.0質量%の範囲とすることがより好ましい。糖類等の添加量が少なくなると、すすぎ性向上効果を見込むことができず、逆に添加量が多くなると高コストなものとなってしまう。
【0046】
本発明の車両用洗浄剤には、水アカ取り洗浄剤として使用可能なものとするために、研磨剤を含ませることができる。
研磨剤は、水アカ取り洗浄剤に研磨剤として使用され得る従来公知の材料を問題なく使用することができる。
【0047】
具体的に使用可能な研磨剤としては、酸化珪素;珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、珪酸ストロンチウム、珪酸アルミニウム、珪酸バリウム、珪酸ジルコニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等の珪酸金属塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸コバルト等の炭酸金属塩;タングステン酸カルシウム等のタングステン酸金属塩;酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化コバルト、α−酸化鉄等の金属酸化物;水和酸化鉄等の金属水酸化物;その他合成ゼオライト、天然ゼオライト、珪藻土等の多孔粉体;チッ化珪素;炭化珪素;等の無機粉体が挙げられる。
【0048】
また、研磨剤としての機能とともに、光触媒としての機能を併せ持つものも好適に使用することができる。具体的には、TiO2、SrTiO3、KTiO3、SnO2、Nb25、WO3、Fe23、Bi23、FeTiO3、ZnO、CdO、MoS2、Si、SiO2、CeO2、ZrO2等の光触媒効果を持つ粉体を挙げることができる。
【0049】
これら研磨剤は、その機能から当然に非水溶性であるため、得られる車両用洗浄剤の液安定性のために、研磨剤を分散させるための分散剤を併用することが好ましい。使用可能な分散剤としては、具体的には例えば、ポリアクリル酸塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩等)、ポリリン酸及びその塩、縮合ナフタレンスルホン酸塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩等)等の水溶性の分散剤や、ビニル系ポリマー、変性ポリエステル、脂肪族アルコールサルフェート及びその塩等の非水溶性の分散剤が挙げられる。
【0050】
本発明において、研磨剤の添加量としては、使用(洗車)時における車両用洗浄剤全量に対して、0.1〜25.0質量%の範囲とすることが好ましく、1.0〜10.0質量%の範囲とすることがより好ましい。研磨剤の添加量が少なくなると、研磨剤を添加することで得られる水アカ取り効果が発現しなくなり、逆に添加量が多くなると、塗装表面に影響を与えるため、それぞれ好ましくない。
研磨剤の分散剤を添加する場合には、その添加量としては、添加する研磨剤全量に対して、5.0〜100質量%の範囲とすることが好ましく、15.0〜50.0質量%の範囲とすることがより好ましい。
【0051】
<車両用洗浄剤の濃度>
一般に車両用洗浄剤は、以上説明した必須配合成分及び任意配合成分が配合されたものであるが、市場で流通・取引され、ユーザーに商品が届くまでは、濃縮状態で取引、搬送、保管される。実際の使用に際しては、これをユーザーが推奨希釈倍率になるまで薄めて、車両の洗浄に供する。
【0052】
本発明の車両用洗浄剤についても、液安定性や製造適性、並びに組成割合を考慮した上で濃縮液の状態にして、適当な容器に収容して取引、搬送、保管に供することができる。特に、本発明においては、後述する使用方法に鑑みて、使用に供する時まで適度に濃縮状態であることが望ましい。
【0053】
本発明の車両用洗浄剤の使用時におけるアルキル硫酸塩及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩の濃度としては、0.05質量%〜0.5質量%程度の範囲から選択される。起泡性及び泡の持続性の観点では、0.15質量%前後の濃度が最適であり、かかる最適濃度になるように濃縮液の推奨希釈倍率を定めればよい。
【0054】
本発明の車両用洗浄剤の濃縮時におけるアルキル硫酸塩及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩の濃度としては、既述の通り液安定性や製造適性、並びに組成割合を考慮した上で決定すればよいが、おおよそ2質量%〜30質量%になる範囲から選択すればよい。
【0055】
<車両用洗浄剤の使用方法>
以上説明した本発明の車両用洗浄剤は、使用(洗車)に際して泡立てる。
既に使用に供し得る濃度になっている場合には、何らかの容器に封入して振盪したり、強く撹拌したりして泡立ててもよいし、直接スポンジに含ませて泡立てて使用してもよい。本発明の車両用洗浄剤は、起泡性や泡の持続性が高いため、通常の使用においても高い起泡性と長い泡の持続性とを実現することができる。
【0056】
本発明の車両用洗浄剤の特に好ましい使用方法としては、その高い起泡性を存分に活かすべく、予め大量に泡を立てた上で、その泡をスポンジや布等の多孔質体やブラシなどの洗車用具で掬い取って車両の洗浄に供することが好ましい。そのためには、本発明の車両用洗浄剤としては濃縮液の状態であることが望ましい。
【0057】
濃縮液の状態の本発明の車両用洗浄剤をバケツ等の容器に取り、ここに高い水圧で水を供給することで大量に泡立てることができる。水圧は、ホースの先にジェットノズルを付けて高圧にしてもよいし、ホースの先を指で挟んで高圧にしてもよいし、単に水道の蛇口を大きく開口(好ましくは全開)するだけでもよい。このように高圧で水を供給するだけで、本発明の車両用洗浄剤は、その高い起泡性から、大量の泡が生じる。
【0058】
しかも、本発明の車両用洗浄剤は、泡の持続性が極めて高いため、一度立てた泡が洗車の間ずっと維持されて、泡を掬いながら洗車することができる。勿論、洗車時間や泡の立て方、さらには配合や濃度等の各種条件によっては、洗車の最後まで泡が持たない可能性もあるが、一般の車両用洗浄剤に比べれば圧倒的に泡の維持性が高い。それゆえ、ユーザーが洗車に要する労力を軽減することができる。
【0059】
本発明の車両用洗浄剤は、以上のように泡立てた上で車両の塗装表面に擦り付けて洗浄し、水で洗い流す。そして、必要に応じて水滴を除去し、洗浄作業が終了する。さらに必要に応じて、ワックス掛けを行うことで、耐久性のある光沢表面が得られるが、使用した車両用洗浄剤に既述の撥水成分が含まれる場合には、ワックス掛けを行うことなく、耐久性のある光沢表面が得られる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
<実施例1〜15>
下記表1に示す各処方で組成成分を分散乃至混合して、実施例1〜15の各車両用洗浄剤を調製した。
【0061】
【表1】

【0062】
※1:エチレンオキサイド単位の数は、1分子当たり2個
※2:エチレンオキサイド単位の数は、1分子当たり3個
※3:日油株式会社製ニューレックスR(商品は50%水溶液。配合時は固形分換算で添加)、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムにおけるアルキル基の炭素数は10〜16
※4:日油株式会社製パーソフトSK(商品は30%水溶液。配合時は固形分換算で添加)、アルキル硫酸ナトリウムにおけるアルキル基の炭素数は8〜18
※5:ヤシ油脂肪酸とジエタノールアミンの1対1縮合物。
※6:糖アルコール(商品名:アマミール、東和合成工業製)の具体的な組成(質量基準)は以下の通り。
マルチトール(単糖):46〜49%
D−ソルビトール(2糖):32〜41%
マルトトリイトール(3糖):5〜13%
オリゴ糖アルコール(4糖):4〜10%
※7:イオン交換水の配合量「BL」はバランスの略で、総量が100質量部となる量(残部)。
【0063】
<比較例1〜6>
下記表2に示す糖類等を含まない各処方で組成成分を分散乃至混合して、比較例1〜6の各車両用洗浄剤を調製した。
【0064】
【表2】

【0065】
表2中の※1〜※7は、実施例における表1の註と同一。
【0066】
<評価試験>
得られた実施例1〜15及び比較例1〜6の各車両用洗浄剤を用いて、以下に示す評価項目の各評価試験を行った。結果は、下記表3にまとめて示す。
【0067】
(1)泡立ち(起泡性)
各車両用洗浄剤40mlを10リットルのバケツに入れて、地面から水栓まで40cmの高さから水道の蛇口を全開にして水道水を投入し、その時の泡立ちの様子を目視にて観察し、以下に示す評価指標で評価した。
◎:非常に良い泡立ちである。
○:満足できる泡立ちである。
△:泡立つが満足できる泡の量ではない。
×:泡立たない。
【0068】
(2)泡の持続性
各車両用洗浄剤40mlを10リットルのバケツに入れて水道水で2800mlまで希釈し、ウイルソンダークメタリックシャンプーのスポンジを用い液体を含めた体積で10リットルになるまで泡立て、その後静置し、泡の消泡状態を観察して、以下に示す評価指標で評価した。
○:1時間で2000ml未満の消泡。
△:1時間で2000ml〜4000ml以下の消泡。
×:1時間で4000mlを超える消泡。
【0069】
(3)泡の硬さ
各車両用洗浄剤40mlを10リットルのバケツに入れて水道水で2800mlまで希釈し、ポリエーテルスポンジを用い液体を含めた体積で10リットルになるまで泡立て、その泡の上にそれぞれの車両用洗浄剤を染み込ませたウイルソンダークメタリックシャンプーのスポンジ(染み込ませた車両用洗浄剤の質量を含めて、泡の面との接触面の荷重が0.3g/cm2)をそっと置き、当該スポンジが泡中に沈み込んで液体面まで達するまでの時間を計測して、以下に示す評価指標で評価した。
◎:1時間以上経過しても液体面まで沈み込まない。
○:30分以上1時間未満で液体面まで沈み込む。
△:15分以上30分未満で液体面まで沈み込む。
×:15分未満で液体面まで沈み込む。
【0070】
【表3】

【0071】
表3に示す結果からわかるように、本発明の車両用洗浄剤である実施例1〜15では、泡立ちが良好であるのは勿論、泡の持続性が高く、しっかりとした硬い泡が形成された。そのため、実際の洗車に際して、一旦立てた泡により用意に洗車ができ、ユーザーの負担が軽減される。また、泡が硬くしっかりとしているため、洗車に際してブラシやスポンジ等の洗車用具に取って車両に擦り付ける時にも、塗装面を汚れやゴミと共に包み込んで洗車することができ、塗装面を保護しつつ洗車することができる。
【0072】
これに対して、本発明の車両用洗浄剤に当たらない比較例1〜6では、泡立ちが良好であるものの泡の持続性が不十分であり、泡が軟らかいため、一般的な洗車方法には適用できるものの、実施例の各車両用洗浄剤のような洗車時の取り扱いはできない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、アルキル硫酸塩(アルキル基の炭素数は8〜18)及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(アルキル基の炭素数は8〜18)の何れか若しくは両方の界面活性剤と、炭素数12〜16の高級アルコール及び/又は炭素数12〜16の高級脂肪酸と、水とからなることを特徴とする車両用洗浄剤。
【請求項2】
前記界面活性剤と前記高級アルコール及び/又は前記高級脂肪酸との配合割合{(界面活性剤):(高級アルコール及び/又は高級脂肪酸)}が、質量基準で3:1〜100:1の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の車両用洗浄剤。

【公開番号】特開2012−57048(P2012−57048A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201609(P2010−201609)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(594161987)株式会社ウイルソン (4)
【Fターム(参考)】