説明

車両用消火器取付構造

【課題】不測の衝撃を受けても消火器が脱落せず、かつ乗員が操作すれば消火器を容易に取り外すことのできる簡潔な構成の車両用消火器取付構造を提供することを目的とする。
【解決手段】車室内に消火器を取り付ける車両用消火器取付構造100であって、フロアパネル102と、フロアパネル102の車内側に車幅方向にわたって取り付けられるクロスメンバ106と、全体が略C字形状であって、略C字形状の開口116を上方へ向けた姿勢でフロアパネル上のクロスメンバ106の車両後方近傍に車両上方からみてクロスメンバ106と略平行になるよう設置され、消火器104の胴体108を下方および車幅方向から把持する把持部110と、フロアパネル上における把持部110の車両後方に車両上方からみて把持部110と略平行になるよう設置され、消火器104の首部112を下方から支持する支持部114とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内に消火器を取り付ける車両用消火器取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、燃料に天然ガスを使用する天然ガス車両が普及しつつある。天然ガス車両はCNG(Compressed Natural Gas)車両とも呼ばれていて、燃料にガソリンを使用するディーゼル車と比べて排気ガス中の有害物質(NOx・SOx等)が少なく有益であるとされている。また、天然ガスは気体であって液体であるガソリンよりも軽いため、CNG車両はディーゼル車と比べて軽量化できる点でも有益であるとされている。
【0003】
各国において、CNG車両のように可燃性かつ高圧なガスを積んだ車両には消火器の搭載が義務付けられている場合が多い。車両用の消火器は、車室内の座席の近くに取り付けられる構成のものが一般的である。このような車両用の消火器は、走行中に不測の衝撃を受けたとしても簡単には脱落しないように取り付ける必要がある。例えば特許文献1には、消火器を座席の下に車幅方向に横たえて取り付ける車両用消火器搭載装置が開示されている。特許文献1の車両用消火器搭載装置には、消火器の胴体に巻きついてこれを固定するベルト状の保持部が備えられている。この保持部によれば、消火器の脱落は効率よく防止可能であると思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−143638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、車両用の消火器の取付構造等には、緊急時により迅速に消火器を取り外すことのできる構成がさらに望まれている。しかし、上記特許文献1の車両用消火器搭載装置では、緊急時に乗員はベルト状の保持部を外す操作を行う必要があると思われる。この操作は、消火器の取外しの迅速性の観点から省略できると望ましい。またさらに、現在では車両のコンパクト化が進んでいて、消火器の取付構造等もさらに簡潔な構成が望まれている。消火器の確実な固定と迅速な取外しというこれら相反する要件を満たしながらの簡潔化は容易ではない。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、不測の衝撃を受けても消火器が脱落せず、かつ乗員が操作すれば消火器を容易に取り外すことのできる簡潔な構成の車両用消火器取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用消火器取付構造の代表的な構成は、車室内に消火器を取り付ける車両用消火器取付構造であって、フロアパネルと、フロアパネルの車内側に車幅方向にわたって取り付けられるクロスメンバと、全体が略C字形状であって、略C字形状の開口を上方へ向けた姿勢でフロアパネル上のクロスメンバの車両後方近傍に車両上方からみてクロスメンバと略平行になるよう設置され、消火器の胴体を下方および車幅方向から把持する把持部と、フロアパネル上における把持部の車両後方に車両上方からみて把持部と略平行になるよう設置され、消火器の首部を下方から支持する支持部とを備えることを特徴とする。
【0008】
上記の把持部および支持部であれば、乗員は消火器を車両後方へ向かって斜めに引き抜くだけでこの消火器を取り外すことができる。また、車両が走行中に外部と接触した場合等、消火器には車両前方へ向かう慣性が生じることが多い。そこで上記構成では、仮に消火器が車両前方へ移動したとしても、消火器はクロスメンバに干渉して停止する構成としている。これによって、消火器の脱落を防いでいる。また、クロスメンバは通常の車両に一般的に用いられている補強部材であり、上記構成では新規に設ける部材は把持部および支持部の二つのみである。そのため、設置コストを低廉に抑えることができる。これらによって、車両が不測の衝撃を受けたとしても消火器が脱落することはなく、また、乗員の操作を受ければ消火器は容易に取り外すことができる簡潔な構成の車両用消火器固定構造を提供することが可能となっている。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用消火器取付構造の他の代表的な構成は、車室内に消火器を取り付ける車両用消火器取付構造であって、フロアパネルと、フロアパネルの車内側に車幅方向にわたって取り付けられるクロスメンバと、フロアパネル上のクロスメンバの車両後方近傍に車両上方からみてクロスメンバと略平行になるよう設置され、消火器の首部を下方から支持する弧状の下部分、および下部分の端から上方に延びさらに鉤型に湾曲して首部の上方にまで延びる上部分を有するフック部と、全体が略C字形状であって、C字形状の開口を上方へ向けた姿勢でフロアパネル上のフック部の車両後方に車両上方からみてフック部と略平行になるよう設置され、消火器の胴体を下方および車幅方向から把持する把持部とを備えることを特徴とする。
【0010】
上記の把持部およびフック部であれば、乗員は消火器をフック部から横方向に動かして把持部から引き抜くだけでこの消火器を取り外すことができる。また、フック部の上部分が消火器の首部の上部へ掛かっていて、消火器が車両前方へ移動しようとしてもこのフック部によって防止できる。さらに、仮に消火器がフック部から不測に外れて車両前方へ移動したとしても、消火器はクロスメンバに干渉して停止する構成となっている。これらによっても、簡潔な構成で、消火器の脱落防止および容易な取外しが達成できる。
【0011】
上記のフック部は、根本付近に車両前方へ向かって切り欠かれてフック部を車両前方に向かって可撓にさせる切欠部を有するとよい。この構成によれば、フック部は消火器から車両前方へ向かって荷重を受けた際にたわみ、その荷重を吸収することができる。したがって、消火器の慣性による脱落を効率よく防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
上記構成によれば、不測の衝撃を受けても消火器が脱落せず、かつ乗員が操作すれば消火器を容易に取り外すことのできる簡潔な構成の車両用消火器取付構造を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態にかかる車両用消火器取付構造を示す斜視図である。
【図2】図1の車両用消火器取付構造を各方向から示す図である。
【図3】図2の消火器の衝撃発生時の挙動を示す図である。
【図4】第2実施形態にかかる車両用消火器取付構造を各方向から示す図である。
【図5】図4(a)のフック部の拡大図である。
【図6】図4の消火器の衝撃発生時の挙動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態にかかる車両用消火器取付構造を示す斜視図である。図1は、車両の前部座席付近を、フロアマット等の内装部材を省いた状態で示している。なお、図1を含む以下の図面では、車幅方向をX軸、車両前後方向をY軸、上下方向をZ軸で表わしている。
【0016】
図1に示すように、当該車両用消火器取付構造(以下、「取付構造100」と記載する)は、車室内のフロアパネル102上に消火器104を取り付けるために利用される。本実施形態では、消火器104は前部座席付近のフロアパネル102上に、頭を車両後方へ向けて車両前後方向に横たえた姿勢で取り付けられる。
【0017】
取付構造100にはクロスメンバ106が含まれている。クロスメンバ106はフロアパネル102を補強するために用いられる一般的な補強部材である。クロスメンバ106は、フロアパネル102の車内側にその車幅方向にわたって取り付けられている。当該取付構造100では、消火器104はクロスメンバ106の後方近傍に取り付けられ、クロスメンバ106を消火器104の移動を防ぐための壁として利用している。
【0018】
図2は、図1の車両用消火器取付構造を各方向から示す図である。図2(a)は取付構造100の拡大斜視図であって、消火器104を一部透過させて示している。図2(a)に示すように、取付構造100には消火器104の胴体108を把持する把持部110、および消火器104の首部112を支える支持部114が含まれている。
【0019】
把持部110は、全体が略C字形状となっていて、消火器104の胴体108を下方および車幅方向から把持する。把持部110は略C字形状の開口116を上方へ向けた姿勢で設置される。把持部110は、消火器104が取り付けられると開口116が多少広がり、消火器104を圧迫して固定する。支持部114は上縁118が弧状になっていて、消火器104の首部112を下方から支持する。その際、上縁118には、例えば樹脂製のシートを貼るなどの滑り止め処理を施すと好適である。これら把持部110および支持部114に消火器104を取り付ける際には、消火器104の胴体108を把持部110に通した後、その首部112を支持部114に載せる。また消火器104を取り外す際には、消火器104を車両後方へ向かって斜めに引き抜く。これらのように、取付装置は乗員の操作によれば消火器104を容易に脱着することができる。
【0020】
図2(b)は、図2(a)の取付構造100を上方から見た模式図である。図2(b)に示すように、把持部110は、クロスメンバ106の車両後方近傍に、車両上方からみてクロスメンバ106と略平行に設置される。また支持部114は、フロアパネル102上における把持部110の車両後方に、車両上方からみて把持部110と略平行になるよう設置される。これらによって、消火器104は車両前後方向に横たえた姿勢で取り付けられる。
【0021】
図3は、図2の消火器104の衝撃発生時の挙動を示す図である。図3(a)は、図2(b)のA−A断面図である。図3(a)に示すように、当該取付構造100では消火器104の底部120のすぐ前方にクロスメンバ106が位置するよう消火器104を取り付けている。
【0022】
車両が走行中に前方の障害物と接触等した場合、消火器104には車両前方へ向かう慣性が生じる。すると、消火器104が把持部110から外れ、さらに消火器104が車両前方へ移動して取付構造100から脱落しかねない。そこで図3(b)に示すように、当該取付構造100では、仮に消火器104が慣性によって車両前方へ移動したとしても、その消火器104は車両前方のクロスメンバ106に干渉して停止する構成としている。これによって、消火器104の脱落が防止可能となっている。
【0023】
以上説明したように、当該取付構造100によれば、車両が不測の衝撃を受けたとしても消火器104の脱落が防止でき、緊急時には乗員は消火器104を迅速に取り外すことができる。また、取付構造100では、通常の車両に一般的に用いられているクロスメンバ106を利用することで、新規に設ける部材は把持部110および支持部114の二つのみの簡潔な構成となっている。この構成であれば、設置コストを低廉に抑えることが可能である。
【0024】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態にかかる車両用消火器取付構造を各方向から示す図である。図4(a)は、第2実施形態にかかる車両取付構造(以下、「取付構造200」と記載する)の拡大斜視図であって、消火器104を一部透過させて示している。図4(b)は、図4(a)の取付構造200を上方から見た模式図である。図4(a)に示す取付構造200には、図2に示した支持部114に代わって、消火器104の首部112が取り付けられるフック部202が含まれている。そして図4(b)に示すように、取付構造200は、消火器104がその頭を車両前方へ向けた姿勢で取り付けられる点で第1実施形態の取付構造100と異なっている。
【0025】
図5は、図4(a)のフック部202の拡大図である。図5は、図4(a)のフック部202を車両前方から示している。図5に示すフック部202は、大きく分けて下部分204と上部分206とで構成されている。下部分204は、上縁208が弧状に形成されていて、消火器104の首部112を下方から支持する。上部分206は首部112の特に上方へ向かう動き(矢印R1)を抑える部位であり、下部分204の端から上方へ延び、さらに鉤型に湾曲した形状となっている。このフック部202への消火器104の脱着は、車幅方向の斜め上方(矢印R2)へ行う。
【0026】
図4(b)に示すように、フック部202は、フロアパネル102上のクロスメンバ106の車両後方近傍に、車両上方からみてクロスメンバ106と略平行になるよう設置される。そして、把持部110はフック部202の車両後方に、車両上方からみてフック部202と略平行になるよう設置される。これらフック部202および把持部110によって、消火器104は頭を車両前方へ向けた姿勢で取り付けられる。把持部110およびフック部202からの消火器104の取外しは、乗員はまず消火器104をフック部202から横方向に動かし、次に把持部110から引き抜くことで容易に取り外すことができる。
【0027】
図6は、図4の消火器104の衝撃発生時の挙動を示す図である。図6(a)は、図4(b)のB−B断面図である。車両が障害物との接触等を起こすと、消火器104には車両前方へ向かう慣性が生じて取付構造200から脱落してしまうおそれがある。そこで当該取付構造200では、フック部202の上部分206が消火器104の首部112の上部へ係る構成としていて、これにより消火器104の車両前方への移動を防いでいる。
【0028】
しかし、さらに強い衝撃が車両に加えられた場合など、もし消火器104の胴体108が把持部110から外れてしまった場合(図6(b)参照)、消火器104の荷重がフック部202に集中してしまい、消火器104の脱落のおそれが高まってしまう。そこで本実施形態では、図4(a)に示すように、フック部202の根本付近に車両前方へ向かって切り欠いた切欠部210を設けている。この切欠部210は、フック部202に車両前方に向かって可撓性を持たせる目的で設けられている。
【0029】
図6(b)に示すように、フック部202は消火器104から強い荷重を受けると、切欠部付近を中心にして車両前方に向かってたわむ構成となっている。このたわみによって、フック部202に加えられた消火器104からの荷重が吸収される。これにより、消火器104の脱落を効率よく防ぐことができる。
【0030】
さらに、図3(a)の取付構造100と同じく、図6(a)の取付構造200でも、消火器104の前方にはクロスメンバ106が壁として設けられている。すなわち、仮に消火器104がフック部202から不測に外れて車両前方へ移動したとしても、消火器104はクロスメンバ106に干渉して停止する構成となっている。このように、取付構造200でも、通常の車両に一般的に用いられているクロスメンバ106を利用することで、簡潔な構成となっている。
【0031】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、車室内に消火器を取り付ける車両用消火器取付構造として利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
R1、R2 …矢印、100、200 …取付構造、102 …フロアパネル、104 …消火器、106 …クロスメンバ、110 …把持部、112 …首部、114 …支持部、116 …開口、118 …支持部の上縁、120 …底部、202 …フック部、204 …下部分、206 …上部分、208 …下部分の上縁、210 …切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に消火器を取り付ける車両用消火器取付構造であって、
フロアパネルと、
前記フロアパネルの車内側に車幅方向にわたって取り付けられるクロスメンバと、
全体が略C字形状であって、該略C字形状の開口を上方へ向けた姿勢で前記フロアパネル上の前記クロスメンバの車両後方近傍に車両上方からみて該クロスメンバと略平行になるよう設置され、前記消火器の胴体を下方および車幅方向から把持する把持部と、
前記フロアパネル上における前記把持部の車両後方に車両上方からみて該把持部と略平行になるよう設置され、前記消火器の首部を下方から支持する支持部とを備えることを特徴とする車両用消火器取付構造。
【請求項2】
車室内に消火器を取り付ける車両用消火器取付構造であって、
フロアパネルと、
前記フロアパネルの車内側に車幅方向にわたって取り付けられるクロスメンバと、
前記フロアパネル上の前記クロスメンバの車両後方近傍に車両上方からみて該クロスメンバと略平行になるよう設置され、前記消火器の首部を下方から支持する弧状の下部分、および該下部分の端から上方に延びさらに鉤型に湾曲して該首部の上方にまで延びる上部分を有するフック部と、
全体が略C字形状であって、該C字形状の開口を上方へ向けた姿勢で前記フロアパネル上の前記フック部の車両後方に車両上方からみて該フック部と略平行になるよう設置され、前記消火器の胴体を下方および車幅方向から把持する把持部とを備えることを特徴とする車両用消火器取付構造。
【請求項3】
前記フック部は、根本付近に車両前方へ向かって切り欠かれて該フック部を車両前方に向かって可撓にさせる切欠部を有することを特徴とする請求項2に記載の車両用消火器取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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