説明

車両用液圧マスタシリンダ

【課題】簡単な構造で、作動液の補給性を高めるとともに、カップシールの耐久性を向上させ、車両挙動安定化制御システムを備えた車両にも好適に用いることのできるプランジャタイプの車両用液圧マスタシリンダを提供する。
【解決手段】プランジャ9は、非作動状態でカップシール11よりもシリンダ孔開口側に、シリンダ孔3に摺接する大径プランジャ部9cを、大径プランジャ部9cよりも小径で且つカップシール11の内径よりも大径の中径プランジャ部9dを、カップシール11の内径よりも小径の小径プランジャ部9eを連続して形成し、中径プランジャ部9dに連通ポート9gを形成する。シリンダ孔3は、カップシール11の嵌着溝3cのシリンダ孔開口側に小径シリンダ部3fを、非作動状態で大径プランジャ部9cと対向する位置に大径シリンダ部3gを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や自動二・三輪車等のブレーキを液圧で作動させる車両用液圧マスタシリンダに係り、詳しくは、プランジャタイプの液圧マスタシリンダのプランジャとシリンダ孔との間に形成される液通路と、該液通路と液圧室とを連通させる連通ポートの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
プランジャタイプの液圧マスタシリンダでは、前記プランジャと前記シリンダ孔との間に、シリンダ本体に形成された作動液の液通孔に連通する液通路が形成されるとともに、プランジャには、非作動状態で前記液通路と液圧室とを連通させる連通ポートと、該連通ポートのシリンダ孔開口側に延びる有底溝とが設けられ、車両挙動安定化制御システムの作動時等に高液圧が液圧回路から液圧室に供給された際に、変形するカップシールによって連通ポートが塞がれたままとなることを防止したものがある(例えば、特許文献1参照。)
また、プランジャの連通ポートよりもシリンダ孔開口側に、連通ポートよりも小径の第2連通ポートを多数形成し、液圧室に高液圧が流入した際に、変形するカップシールによって連通ポートが閉塞されても、第2連通ポートにより液圧室と液通路とを連通させるようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2006−168429号公報
【特許文献2】特表2004−521025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述の特許文献1のものでは、プランジャに形成した連通ポートの後方に小さな有底溝を形成しなければならないことから、プランジャの加工に手間が掛かっていた。さらに、高液圧が液圧回路から液圧室に供給された際に、カップシールが変形して有底溝に侵入し、劣化する虞があった。
【0004】
また、特許文献2のものでは、プランジャに極小の穴加工を多数施して第2連通ポートを形成しなければならないことから、加工に手間が掛かり、コストが嵩んでいた。
【0005】
そこで本発明は、簡単な構造で、作動液の補給性を高めるとともに、カップシールの耐久性を向上させ、車両挙動安定化制御システムを備えた車両にも好適に用いることのできるプランジャタイプの車両用液圧マスタシリンダを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため本発明は、シリンダ本体に形成した有底のシリンダ孔に嵌着したカップシールを介して、プランジャを摺動可能に内挿し、該プランジャの先端側に液圧室を画成するとともに、該液圧室に作動液を供給するリザーバを備えた車両用液圧マスタシリンダにおいて、前記プランジャは、非作動状態で前記カップシールよりもシリンダ孔開口側に、前記シリンダ孔に摺接する大径プランジャ部を、該大径プランジャ部よりもシリンダ孔底部側に該大径プランジャ部よりも小径で、且つ、前記カップシールの内径よりも大径の中径プランジャ部を、該中径プランジャ部よりもシリンダ孔底部側で前記カップシールに対向する位置に前記カップシールの内径よりも小径の小径プランジャ部を連続して形成し、前記シリンダ孔は、前記カップシールを嵌着させる嵌着溝のシリンダ孔開口側に小径シリンダ部を、該小径シリンダ部よりもシリンダ孔開口側で、非作動状態で前記大径プランジャ部と対向する位置に大径シリンダ部をそれぞれ設け、該大径シリンダ部に前記リザーバに連通する液通孔を形成し、非作動状態で、前記大径プランジャ部と前記大径シリンダ部との間隙と、前記中径プランジャ部と前記小径シリンダ部との間隙と、前記小径プランジャ部と前記カップシールとの間隙とが連通して液通路が形成され、該液通路を介して前記液圧室と前記液通孔とを連通させ、前記プランジャの前記カップシールよりもシリンダ孔開口側に前記液圧室と前記液通路とを連通させる連通ポートを形成したことを特徴とし、前記連通ポートを前記中径プランジャ部に形成しても良く、また、前記大径プランジャ部の先端部を、作動時にプランジャがシリンダ孔底部側に前進し、前記カップシールの内周側が前記プランジャに当接して前記液圧室に液圧が発生し、該液圧により前記カップシールが前記小径シリンダ部側へ変形する前に、前記小径シリンダ部を通過した位置に形成すると好適である。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、上述のように形成することにより、簡単な構造で、非作動時において、リザーバに連通する液通孔と、大径プランジャ部と大径シリンダ部との間隙と、中径プランジャ部と小径シリンダ部との間隙と、小径プランジャ部とカップシールとの間隙とが連通して液通路が形成され、さらに、該液通路と連通ポートとが連通していることから、リザーバから液圧室への作動液の補給性を高めることができる。
【0008】
また、中径プランジャ部に連通ポートを形成したことにより、プランジャがシリンダ孔内を摺動する際に連通ポートとシリンダ孔とが摺接することがなく、プランジャやシリンダ孔を傷める虞がない。
【0009】
さらに、非作動時に車両挙動安定化制御システムが作動し、高液圧が液圧回路から液圧室内に導入された際に、この高液圧を連通ポートを介してリザーバに抜くことができるので、カップシールの変形を極力抑えることができる。
【0010】
また、作動時にプランジャがシリンダ孔底部側に前進し、液圧室に所定の液圧が発生した時に、大径プランジャ部の先端部が小径シリンダ部を通過した状態となっているので、液圧室に発生した液圧によりカップシールが変形することがあっても、カップシールがプランジャとシリンダ孔との間に噛み込まれることがなく、カップシールの耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明をタンデム型の液圧マスタシリンダに適用した一形態例を図面に基づいて詳しく説明する。図1は液圧マスタシリンダの断面正面図、図2は非作動状態から液圧発生初期状態までの液圧マスタシリンダを示す要部拡大断面図、図3は所定の液圧を発生させカップシールが変形する直前の液圧マスタシリンダを示す要部拡大断面図、図4はピストンが図3の状態よりも更に前進した液圧発生状態の液圧マスタシリンダを示す要部拡大断面図で、液圧マスタシリンダ1は、シリンダ本体2に有底のシリンダ孔3が形成され、シリンダ本体2には、シリンダ孔3の底部側に開口する第1出力ポート4と、シリンダ孔3のシリンダ軸方向中間部に開口する第2出力ポート5とが形成されている。
【0012】
また、シリンダ本体2は、上部に一対のボス部2a,2bが突設され、両ボス部2a,2bには、シリンダ孔3に連通する第1液通孔6aと第2液通孔6bとがそれぞれ連設され、該ボス部2a,2bには、グロメットシール7a,7bを介してリザーバ8が取り付けられる。
【0013】
シリンダ孔3には、第1プランジャ9がカップシール10,11を介して摺動可能に内挿されるとともに、第2プランジャ12がカップシール13,14を介して摺動可能に内挿される。前記カップシール10,11は、シリンダ孔3の第1液通孔6aのシリンダ孔底部側とシリンダ孔開口側とに形成された嵌着溝3b,3cに嵌着され、前記カップシール13,14は、シリンダ孔3の第2液通孔6bのシリンダ孔底部側とシリンダ孔開口側とに形成された嵌着溝3d,3eに嵌着される。
【0014】
前記プランジャ9,12には、シリンダ孔底部側に第1凹部9a,12aが、シリンダ孔開口側に第2凹部9b,12bがそれぞれ形成されている。第1プランジャ9の第2凹部9bにはプッシュロッド15が挿入され、第1プランジャ9の第1凹部9aと第2プランジャ12の第2凹部12bとの間には、シリンダ軸方向中間部に設けた第1出力ポート4と前記第1液通孔6aとに通じる第1液圧室16が、第2プランジャ12の第1凹部12aとシリンダ孔の底壁3aとの間には、シリンダ孔底部側に設けた第2出力ポート5と前記第2液通孔6bとに通じる第2液圧室17がそれぞれ画成される。
【0015】
第1プランジャ9は、非作動状態で、シリンダ孔底部側のカップシール11よりもシリンダ孔開口側に、シリンダ孔3に摺接する大径プランジャ部9cを、該大径プランジャ部9cよりもシリンダ孔底部側に、大径プランジャ部9cよりも小径で、且つ、カップシール11の内径よりも大径の中径プランジャ部9dを、中径プランジャ部9dよりもシリンダ孔底部側でカップシール11に対向する位置に、カップシール11の内径よりも小径の小径プランジャ部9eをそれぞれ連続して形成し、小径プランジャ部9eよりもシリンダ孔底部側には、前記大径プランジャ部9cと同径の大径部9fが形成されている。また、中径プランジャ部9dには、該中径プランジャ部9dの内外を貫通する小径の連通ポート9gが1個以上穿設されている。
【0016】
シリンダ孔3は、カップシール11の嵌着溝3cのシリンダ孔開口側に小径シリンダ部3fを形成し、該小径シリンダ部3fよりもシリンダ孔開口側で、非作動状態で大径プランジャ部9cと対向する位置に、第1液通孔6aと連通する大径シリンダ部3gを形成している。また、前記嵌着溝3cのシリンダ孔底部側には、前記第1プランジャ9の大径部9fが摺接する小径部3hが形成され、該小径部3hには複数の軸方向溝3iが形成されている。
【0017】
第1プランジャ9の非作動状態においては、第1液通孔6aと、大径プランジャ部9cと大径シリンダ部3gとの間隙と、中径プランジャ部9dと小径シリンダ部3fとの間隙と、小径プランジャ部9eとカップシール11の内周との間隙と、前記軸方向溝3iとが連通して、第1液通路18が形成されるとともに、該第1液通路18と連通ポート9gとを介して、リザーバ8と第1液圧室16との間に作動液が流通可能となる。
【0018】
また、大径プランジャ部9cは、第1液圧室16に所定の液圧が発生し、カップシール11のベース部11aが小径シリンダ部3f側へ変形し始める直前に、その先端部の位置が小径シリンダ部3fを通過しているように形成されている。
【0019】
第2プランジャ12も、前記第1プランジャ9と同様に、非作動状態でカップシール14よりもシリンダ孔開口側に、シリンダ孔3に摺接する大径プランジャ部12cを、該大径プランジャ部12cよりもシリンダ孔底部側に、大径プランジャ部12cよりも小径で、且つ、カップシール14の内周よりも大径の中径プランジャ部12dを、中径プランジャ部12dよりもシリンダ孔底部側でカップシール14に対向する位置に、カップシール14の内径よりも小径の小径プランジャ部12eをそれぞれ連続して形成し、小径プランジャ部12eよりもシリンダ孔底部側には大径部12fが形成されている。また、中径プランジャ部12dには、該中径プランジャ部12dの内外を貫通する小径の連通ポート12gが1個以上穿設されている。
【0020】
また、シリンダ孔3も同様に、カップシール14の嵌着溝3eのシリンダ孔開口側に小径シリンダ部3jを設け、該小径シリンダ部3jよりもシリンダ孔開口側で、非作動状態で大径プランジャ部12cと対向する位置に、第2液通孔6bと連通する大径シリンダ部3kを形成している。また、前記嵌着溝3eのシリンダ孔底部側には、前記第2プランジャ12の大径部12fが摺接する小径部3mが形成され、該小径部3mには複数の軸方向溝3nが形成されている。
【0021】
第2プランジャ12の非作動状態において、第2液通孔6bと、大径プランジャ部12cと大径シリンダ部3kとの間隙と、中径プランジャ部12dと小径シリンダ部3jとの間隙と、小径プランジャ部12eとカップシール14の内周との間隙と、前記軸方向溝3nとが連通して、第2液通路19が形成されるとともに、該液通路19と連通ポート12gとを介して、リザーバ8と第2液圧室17との間に作動液が流通可能となる。
【0022】
また、前記大径プランジャ部12cは、第2液圧室17に所定の液圧を発生させカップシール14のベース部分14aが小径シリンダ部3j側へ変形し始める直前に、その先端部の位置が小径シリンダ部3jを通過しているように形成されている。
【0023】
前記第1液圧室16には、略円筒状の第1リテーナ20と、該第1リテーナ20内に挿通され、頭部21aを第1リテーナ20の先端部に係止し、基部を第1係着板22に係着させる第1ガイドピン21と、第1プランジャ9をシリンダ孔開口側に付勢する第1リターンスプリング23とを備えた第1スプリング機構24が配設される。また、第2液圧室17にも、第1液圧室16に配設した第1スプリング機構24と同様に、略円筒状の第2リテーナ25と、該第2リテーナ25内に挿通され、頭部26aを第2リテーナ25の先端部に係止し、基部を第2係着板27に係着させる第2ガイドピン26と、第2プランジャ12をシリンダ孔開口側に付勢する第2リターンスプリング28とを備えた第2スプリング機構29が配設される。
【0024】
上述のように形成された液圧マスタシリンダ1は、非作動時には、第1プランジャ9と第2プランジャ12とは第1,第2リターンスプリング23,28の弾発力によって、図1に示される位置に配設され、上述のように、リザーバ8と第1液圧室16との間が、第1液通孔6aから第1液通路18及び連通ポート9gを介して作動液が流通可能な状態となるとともに、リザーバ8と第2液圧室17間が、第2液通孔6bから第2液通路19及び連通ポート12gを介して作動液が流通可能な状態となり、簡単な構造で作動液の補給性を高めることができる。
【0025】
作動時に、プッシュロッド15が第1プランジャ9をシリンダ孔底部側に押動すると、第1プランジャ9が第1液圧室16内の第1リターンスプリング23を圧縮しながらシリンダ孔3を底部方向へ前進し、これと同時に第2プランジャ12がシリンダ孔底部方向への前進を開始する。
【0026】
図2に示す第1液圧室16側では、第1プランジャ9が実線で示す非作動状態から前進し、図2の想像線で示すように、中径プランジャ部9dと小径プランジャ部9eとを繋ぐ傾斜部9hがカップシール11の内周部11bに当接して、第1液圧室16と第1液通路18との連通が遮断された後、さらに前進すると第1液圧室16に液圧を発生させる。昇圧された作動液は、出力ポート4を介して、一方のブレーキ系統に供給される。このとき、連通ポート9gは中径プランジャ部9dに形成されていることから、作動時にシリンダ孔3と摺接することがなく、プランジャ9やシリンダ孔3を傷める虞がない。
【0027】
さらに、第1プランジャ9が図2の実線に示される非作動状態の位置に配設されている際に、車両挙動安定化制御システムが作動し、高液圧が液圧回路から出力ポート4を経て液圧室16に供給された時に、カップシール11が変形して、小径プランジャ部9eとカップシール11の内周部11bとの間隙を閉塞することがあっても、連通ポート9gをリザーバ8に連通させて、車両挙動安定化制御システムにより発生する液圧の上昇を抑えることができるので、カップシール11の変形を極力抑えることができる。
【0028】
また、液圧室16の液圧が上昇すると、この液圧上昇によりカップシール11のベース部11aが小径シリンダ部3f側に向かって変形し始めるが、図3に示すように、カップシール11が変形し始める直前に、大径プランジャ部9cの先端部が小径シリンダ部3fを通過した位置となっていることから、カップシール11のベース部11aが変形してもシリンダ孔3とプランジャ9との隙間に噛み込まれることがなく、カップシール11の耐久性を向上させることができる。さらに、第1プランジャ9が前進し、図4に示されるようにカップシール11の内周部11bが連通ポート9gを通過すると、連通ポート9gによる液圧の上昇の制限を行うことなく、カップシール11のベース部11aがさらに変形しても、ベース部11aがシリンダ孔3とプランジャ9との隙間に噛み込まれることがない。
【0029】
詳細な説明は省略するが、第2液圧室17側でも、第1液圧室16側と同様に第2プランジャ12の前進に伴って液圧が発生するが、第1液圧室側と同様の構造を備えることから、同様の作用効果が得られる。
【0030】
なお、上述の形態例では、プランジャ先端側の大径部が摺接するシリンダ孔の小径部に軸方向溝が形成されているが、本発明はこれに限らず、プランジャ側に軸方向溝を設けても良く、また、プランジャの先端側を小径にすれば、軸方向溝を設ける必要はない。さらに、本発明は上述のように、タンデム型の液圧マスタシリンダに適用されるものに限らず、プランジャを1つ備えたシングル型の液圧マスタシリンダにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一形態例を示す液圧マスタシリンダの断面正面図である。
【図2】同じく非作動状態から液圧発生初期状態までの液圧マスタシリンダを示す要部拡大断面図である。
【図3】同じく所定の液圧を発生させカップシールが変形する直前の液圧マスタシリンダを示す要部拡大断面図である。
【図4】ピストンが図3の状態よりも更に前進した液圧発生状態の液圧マスタシリンダを示す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1…液圧マスタシリンダ、2…シリンダ本体、3…シリンダ孔、3a…底壁、3b,3c,3d,3e…嵌着溝、4,5…出力ポート、6a…第1液通孔、6b…第2液通孔、7a,7b…グロメットシール、8…リザーバ、9…第1プランジャ、12…第2プランジャ、9a,12a…第1凹部、9b,12b…第2凹部、9c,12c…大径プランジャ部、9d,12d…中径プランジャ部、9e,12e…小径プランジャ部、9f,12f…大径部、9g,12g…連通ポート、10,11,13,14…カップシール、11a…ベース部、11b…内周部、15…プッシュロッド、16…第1液圧室、17…第2液圧室、18…第1液通路、19…第2液通路、20…第1リテーナ、21…第1ガイドピン、21a…頭部、22…第1係着板、23…第1リターンスプリング、24…第1スプリング機構、25…第2リテーナ、26…第2ガイドピン、26a…頭部、27…第2係着板、28…第2リターンスプリング、29…第2スプリング機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ本体に形成した有底のシリンダ孔に嵌着したカップシールを介して、プランジャを摺動可能に内挿し、該プランジャの先端側に液圧室を画成するとともに、該液圧室に作動液を供給するリザーバを備えた車両用液圧マスタシリンダにおいて、前記プランジャは、非作動状態で前記カップシールよりもシリンダ孔開口側に、前記シリンダ孔に摺接する大径プランジャ部を、該大径プランジャ部よりもシリンダ孔底部側に該大径プランジャ部よりも小径で、且つ、前記カップシールの内径よりも大径の中径プランジャ部を、該中径プランジャ部よりもシリンダ孔底部側で前記カップシールに対向する位置に前記カップシールの内径よりも小径の小径プランジャ部を連続して形成し、前記シリンダ孔は、前記カップシールを嵌着させる嵌着溝のシリンダ孔開口側に小径シリンダ部を、該小径シリンダ部よりもシリンダ孔開口側で、非作動状態で前記大径プランジャ部と対向する位置に大径シリンダ部をそれぞれ設け、該大径シリンダ部に前記リザーバに連通する液通孔を形成し、非作動状態で、前記大径プランジャ部と前記大径シリンダ部との間隙と、前記中径プランジャ部と前記小径シリンダ部との間隙と、前記小径プランジャ部と前記カップシールとの間隙とが連通して液通路が形成され、該液通路を介して前記液圧室と前記液通孔とを連通させ、前記プランジャの前記カップシールよりもシリンダ孔開口側に前記液圧室と前記液通路とを連通させる連通ポートを形成したことを特徴とする車両用液圧マスタシリンダ。
【請求項2】
前記連通ポートを前記中径プランジャ部に形成したことを特徴とする請求項1記載の車両用液圧マスタシリンダ。
【請求項3】
前記大径プランジャ部の先端部を、作動時にプランジャがシリンダ孔底部側に前進し、前記カップシールの内周側が前記プランジャに当接して前記液圧室に液圧が発生し、該液圧により前記カップシールが前記小径シリンダ部側へ変形する前に、前記小径シリンダ部を通過した位置に形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用液圧マスタシリンダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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