説明

車両用灯具の制御装置および車両用灯具システム

【課題】車両のピッチ角度方向の角速度または角加速度を検出するセンサを用いたオートレベリング制御において、イグニッションスイッチがオフにされた後の精度の低下を抑制する技術を提供する。
【解決手段】車両用灯具の制御装置は、ピッチ角度方向の角速度または角加速度を検出するセンサの出力値を受信する受信部118と、角度演算部1201と、調節指示部1202と、イグニッションスイッチ326を介して車載バッテリー328に接続された第1回路330と車載バッテリー328に直接接続された第2回路332とを切り替える切替部126と、イグニッションスイッチ326のオンオフを検知するイグニッション監視部114とを備える。切替部126は、イグニッション監視部114がイグニッションスイッチ326のオフを検知すると、第1回路330から第2回路332に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具の制御装置および車両用灯具システムに関し、特に自動車などに用いられる車両用灯具の制御装置および車両用灯具システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のピッチ方向の傾斜角度(ピッチ角度)に応じて車両用前照灯の光軸位置を自動的に調節して照射方向を変化させるオートレベリング制御が知られている。一般にオートレベリング制御では、車両の傾斜角度を検出するための傾斜センサとして車高センサが用いられ、車高センサにより検出される車両のピッチ角度に基づいて前照灯の光軸位置が調節される。これに対し、特許文献1、2には、傾斜センサとして角速度センサ(ジャイロセンサ)を用いてオートレベリング制御を実施する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−250901号公報
【特許文献2】特開2004−314856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の傾斜センサとして角速度センサを用いた場合、車高センサを用いた場合に比べてオートレベリングシステムをより安価にすることができ、また軽量化を図ることもできる。しかしながら、角速度センサを用いたオートレベリングシステムでは、車両のピッチ角度が変化する際のピッチ角度方向の角速度からピッチ角度の変化量を演算している。そのため、車両のピッチ角度が変化するときにオートレベリングシステムが稼働していなければ、車両のピッチ角度を把握することができない。
【0005】
ここで、従来のオートレベリングシステムは、車両のイグニッションスイッチを介して車載バッテリーから電力が供給されるシステムであった。すなわち、イグニッションスイッチがオンの場合に稼働し、イグニッションスイッチがオフの場合に休止するシステムであった。そのため、従来のオートレベリングシステムにおいて角度速度センサを採用した場合は、イグニッションスイッチがオフとなりオートレベリング制御が停止している間にピッチ角度が変化した場合、その後イグニッションスイッチがオンとなりオートレベリング制御が再開されても、停止中のピッチ角度の変化分を考慮した光軸調節を行うことができなかった。そのため、イグニッションスイッチがオフになると、その後のオートレベリング制御の精度が低下するおそれがあった。なお、車両のピッチ角度方向の角加速度を検出する角加速度センサを用いたオートレベリング制御においても同様の課題があった。
【0006】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両のピッチ角度方向の角速度または角加速度を検出するセンサを用いて車両用灯具の光軸位置を調節するオートレベリング制御において、イグニッションスイッチがオフにされた後の精度の低下を抑制することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は車両用灯具の制御装置である。当該制御装置は、車両のピッチ角度方向の角速度または角加速度を検出するセンサの出力値を受信する受信部と、前記出力値を用いて車両のピッチ角度の変化量を演算する角度演算部と、前記変化量を用いて車両用灯具の光軸調節を指示する制御信号を生成する調節指示部と、イグニッションスイッチを介して車載バッテリーに接続された第1回路と車載バッテリーに直接接続された第2回路とを切り替える切替部と、イグニッションスイッチのオンオフを検知するイグニッション監視部と、を備え、切替部は、イグニッション監視部がイグニッションスイッチのオフを検知すると、第1回路から第2回路に切り替えることを特徴とする。
【0008】
この態様によれば、車両のピッチ角度方向の角速度または角加速度を検出するセンサを用いて車両用灯具の光軸位置を調節するオートレベリング制御において、イグニッションスイッチがオフにされた後の精度の低下を抑制することができる。
【0009】
上記態様において、切替部は、受信部、角度演算部および調節指示部のそれぞれへの給電を個別に切り替え可能であり、イグニッション監視部がイグニッションスイッチのオフを検知すると、受信部および角度演算部への給電を継続し、調節指示部への給電を停止してもよい。この態様によれば、イグニッションスイッチがオフ状態にあるときの消費電力の低減を図ることができる。
【0010】
また、上記態様において、
してもよい。また、上記態様において、受信部は、車両のピッチ角度が変化することが推定される変化推定信号を受信可能であり、切替部は、受信部、角度演算部および調節指示部のそれぞれへの給電を個別に切り替え可能であり、イグニッション監視部がイグニッションスイッチのオフを検知すると、角度演算部および調節指示部への給電を停止し、受信部が変化推定信号を受信すると角度演算部への給電を再開してもよい。また、上記態様において、切替部は、角度演算部への給電の再開後、受信部が変化推定信号を所定時間受信しないか、イグニッション監視部がイグニッションスイッチのオンを所定時間検知しない場合に角度演算部への給電を再度停止してもよい。これらの態様によれば、イグニッション電源がオフ状態にあるときの消費電力のさらなる低減を図ることができる。また、上記態様において、切替部は、イグニッション監視部がイグニッションスイッチのオフを検知した場合であっても、受信部が変化推定信号を受信している場合には角度演算部への給電を継続してもよい。
【0011】
また、本発明の他の態様は車両用灯具システムである。当該車両用灯具システムは、車両のピッチ角度方向の角速度または角加速度を検出するセンサと、光軸を調節可能な車両用灯具と、車両用灯具の光軸調節を制御するための制御装置と、を備え、制御装置は、センサの出力値を受信する受信部と、前記出力値を用いて車両のピッチ角度の変化量を演算する角度演算部と、前記変化量を用いて車両用灯具の光軸調節を指示する制御信号を生成する調節指示部と、イグニッションスイッチを介して車載バッテリーに接続された第1回路と車載バッテリーに直接接続された第2回路とを切り替える切替部と、イグニッションスイッチのオンオフを検知するイグニッション監視部と、を備え、切替部は、イグニッション監視部がイグニッションスイッチのオフを検知すると、第1回路から第2回路に切り替えることを特徴とする。
【0012】
この態様によっても、車両のピッチ角度方向の角速度または角加速度を検出するセンサを用いて車両用灯具の光軸位置を調節するオートレベリング制御において、イグニッションスイッチがオフにされた後の精度の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車両のピッチ角度方向の角速度または角加速度を検出するセンサを用いて車両用灯具の光軸位置を調節するオートレベリング制御において、イグニッションスイッチがオフにされた後の精度の低下を抑制することができる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態1に係る車両用灯具の制御装置の制御対象である車両用灯具を含む前照灯ユニットの概略鉛直断面図である。
【図2】前照灯ユニット、車両制御ECUおよびレベリングECUの動作連携を説明する機能ブロック図である。
【図3】実施形態1に係る車両用灯具の制御装置により実行される制御のフローチャートである。
【図4】実施形態2に係る車両用灯具の制御装置により実行される制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る車両用灯具の制御装置の制御対象である車両用灯具を含む前照灯ユニットの概略鉛直断面図である。この前照灯ユニット210は、左右対称に形成された一対の前照灯ユニットが車両の車幅方向の左右に1つずつ配置された構造を有する。左右に配置された前照灯ユニットは左右対称の構造を有する点以外は実質的に同一の構成であるため、以下では、右側の前照灯ユニット210Rの構造を説明し、左側の前照灯ユニットの説明は適宜省略する。
【0017】
前照灯ユニット210Rは、車両前方側に開口部を有するランプボディ212と、この開口部を覆う透光カバー214とを有する。ランプボディ212は、その車両後方側に取り外し可能な着脱カバー212aを有する。ランプボディ212と透光カバー214とによって灯室216が形成されている。灯室216には、光を車両前方に照射する灯具ユニット10(車両用灯具)が収納されている。
【0018】
灯具ユニット10には、灯具ユニット10の上下左右方向の揺動中心となるピボット機構218aを有するランプブラケット218が形成されている。ランプブラケット218は、ランプボディ212に支持されたエイミング調整ネジ220と螺合している。灯具ユニット10の下面には、スイブルアクチュエータ222の回転軸222aが固定されている。スイブルアクチュエータ222は、ユニットブラケット224に固定されている。ユニットブラケット224には、ランプボディ212の外部に配置されたレベリングアクチュエータ226が接続されている。レベリングアクチュエータ226は、例えばロッド226aを矢印M,N方向に伸縮させるモータなどで構成されている。
【0019】
灯具ユニット10は、ロッド226aが矢印M方向に伸長した場合、ピボット機構218aを中心として後傾姿勢となり、ロッド226aが矢印N方向に短縮した場合、ピボット機構218aを中心として前傾姿勢となる。灯具ユニット10の前傾、後傾により、光軸Oのピッチ角度を下方、上方に向けるレベリング調整ができる。また、レベリングアクチュエータ226のロッド226aとユニットブラケット224の接続部分にはエイミングピボット機構(図示せず)が配置されている。エイミング調整ネジ220を回転させることで、灯具ユニット10をエイミングピボット機構を中心に上下左右に旋回させ、光軸Oを上下左右にエイミング調整することができる。
【0020】
灯具ユニット10は、回転シェード12を含むシェード機構18、光源としてのバルブ14、リフレクタ16を内壁に支持する灯具ハウジング17、および投影レンズ20を備える。バルブ14は、例えば、白熱球やハロゲンランプ、放電球、LEDなどが使用可能である。リフレクタ16は、その少なくとも一部が楕円球面状であり、バルブ14から放射された光を反射する。バルブ14からの光およびリフレクタ16で反射した光は、その一部が回転シェード12を経て投影レンズ20へと導かれる。回転シェード12は、回転軸12aを中心に回転可能な円筒部材であり、切欠部と複数のシェードプレート(図示せず)とを備える。切欠部またはシェードプレートのいずれかが光軸O上に移動されて、所定の配光パターンが形成される。投影レンズ20は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズからなり、後方焦点面上に形成される光源像を反転像として灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。なお、灯具ユニット10の構成は特にこれに限定されず、投影レンズ20を持たない反射型の灯具ユニットなどであってもよい。
【0021】
図2は、前照灯ユニット、車両制御ECUおよびレベリングECUの動作連携を説明する機能ブロック図である。なお、上述のように右側の前照灯ユニット210Rおよび左側の前照灯ユニット210Lの構成は基本的に同一であるため、図2では前照灯ユニット210Rおよび前照灯ユニット210Lをまとめて前照灯ユニット210としている。また、レベリングECU100は、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現されるが、図2ではそれらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0022】
レベリングECU100(車両用灯具の制御装置)は、車両姿勢に基づき灯具ユニット10のレベリング調整をリアルタイムで行うオートレベリングシステムを制御するための装置であり、入力インターフェース102、CPU104、出力インターフェース106、不揮発性メモリ108、スイッチ回路110、電圧変換部112、イグニッション監視部114およびジャイロセンサ116を備える。
【0023】
入力インターフェース102には、車両制御ECU302が接続されている。車両制御ECU302には、ライトスイッチ304、車室ドア開閉センサ306、トランクドア開閉センサ308およびドアロックセンサ310が接続されている。ライトスイッチ304は、運転者の操作内容に応じて、前照灯ユニット210の点消灯を指示する信号や形成すべき配光パターンを指示する信号等を出力する。車室ドア開閉センサ306は、人員等が乗り降りするための車室ドアの開閉状態を示す信号を出力する。トランクドア開閉センサ308は、トランクドアの開閉状態を示す信号を出力する。ドアロックセンサ310は、車室ドア開閉センサ306のロック(施錠)およびアンロック(解錠)の状態を示す信号を出力する。ライトスイッチ304、車室ドア開閉センサ306、トランクドア開閉センサ308およびドアロックセンサ310から出力された信号は、車両制御ECU302を介してレベリングECU100に入力される。車両制御ECU302から出力された各信号は、入力インターフェース102を介してCPU104に送信される。
【0024】
なお、車両制御ECU302は、車速、舵角、シフトポジション、イグニッション情報等を含む車両情報をレベリングECU100に送信することができる。
【0025】
CPU104は、受信部118、制御部120、送信部122、RAM124および切替部126を備える。受信部118は、入力インターフェース102を介してレベリングECU100に入力される各種信号を受信する。また、受信部118は、イグニッション監視部114およびジャイロセンサ116から出力される信号を受信する。受信部118は、受信した信号を制御部120に送信する。
【0026】
制御部120は、角度演算部1201と、調節指示部1202とを備える。角度演算部1201は、車両300のピッチ角度方向の角速度を検出するセンサの一例としてのジャイロセンサ116の出力値を用いて、車両300のピッチ角度の変化量を演算する。角度演算部1201は、例えばジャイロセンサ116から出力された角速度を時間積分してピッチ角度の変化量を算出する。RAM124は、CPU104が実行する制御に用いられる情報を一時的に記憶する揮発性メモリである。不揮発性メモリ108は、各種情報を記憶するメモリである。角度演算部1201は、ジャイロセンサ116の出力値とともに、必要に応じてRAM124およびまたは不揮発性メモリ108に記憶されている情報を用いて車両300のピッチ角度情報を生成する。
【0027】
調節指示部1202は、角度演算部1201で演算された変化量を用いて灯具ユニット10の光軸調節を指示する制御信号を生成する。調節指示部1202によって生成された制御信号は、送信部122から出力インターフェース106を介して前照灯ユニット210に送信される。前照灯ユニット210に送信された調節指示部1202の制御信号は、レベリングアクチュエータ226が受信する。レベリングアクチュエータ226は、受信した制御信号によって駆動し、灯具ユニット10の光軸Oのピッチ角度を調節する。
【0028】
なお、本実施形態では、車両300のピッチ角度方向の角速度を検出するジャイロセンサ116がレベリングECU100に設けられているが、ピッチ角度方向の角加速度を検出するセンサが設けられていてもよい。また、ジャイロセンサ116あるいは角加速度センサは、レベリングECU100の外部に設けられてもよい。
【0029】
車両300には、イグニッションスイッチ326と、車載バッテリー328とが搭載されている。車載バッテリー328はレベリングECU100を含む車載電装品全体のメインバッテリーである。車載バッテリー328とレベリングECU100とは、第1回路330および第2回路332によって接続されている。第1回路330は、レベリングECU100からイグニッションスイッチ326を介して車載バッテリー328に接続された回路であり、第2回路332は、レベリングECU100から車載バッテリー328に直接接続された回路である。
【0030】
スイッチ回路110は、車載バッテリー328と電圧変換部112とを接続している。具体的には、スイッチ回路110は、第1回路330、第2回路332および電圧変換部112に接続されている。第1回路330については、イグニッション監視部114を介して接続されている。スイッチ回路110は、車載バッテリー328と電圧変換部112とが第1回路330を介して接続される状態と、車載バッテリー328と電圧変換部112とが第2回路332を介して接続される状態とを切り換えることができる。電圧変換部112は、車載バッテリー328の出力電圧を、CPU104が要求する出力電圧と一致するように変換する。
【0031】
イグニッション監視部114は、イグニッションスイッチ326のオンオフを検知する回路である。イグニッション監視部114は、例えば車載バッテリー328からの供給電力が所定の低下状態となったときに、イグニッションスイッチ326がオフになることを示す信号をCPU104に送信する。本実施形態において、前記「所定の低下状態」は、例えばイグニッションスイッチ326からの供給電力が所定のしきい値を下回った状態である。前記「所定の低下状態」および「所定のしきい値」は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
【0032】
イグニッション監視部114から出力された信号は、受信部118を介して切替部126に送信される。切替部126は、イグニッションスイッチ326がオンの状態では、車載バッテリー328と電圧変換部112とが第1回路330を介して接続されるようにスイッチ回路110を切り替える。切替部126は、イグニッション監視部114からイグニッションスイッチ326がオフになることを示す信号を受信すると、送信部122を介してスイッチ回路110に切り替えを指示する制御信号を送信し、車載バッテリー328と電圧変換部112とが第2回路332を介して接続されるようにスイッチ回路110を切り替える。
【0033】
このように、切替部126は、イグニッションスイッチ326がオフの場合に第1回路330から、イグニッションスイッチ326を介さない第2回路332に電力供給経路を切り替えている。これにより、イグニッションスイッチ326がオフになっても車載バッテリー328からレベリングECU100への給電が継続される。そのため、イグニッションスイッチ326がオフの間にピッチ角度が変化しても、その後、イグニッションスイッチ326がオンとなりオートレベリング制御が再開されたときに、このピッチ角度の変化分を考慮した光軸調節を行うことが可能となる。そのため、車両のピッチ角度方向の角速度または角加速度を検出するセンサを用いて車両用灯具の光軸位置を調節するオートレベリング制御において、イグニッションスイッチがオフにされた後の精度の低下を抑制することができる。
【0034】
また、本実施形態では、スイッチ回路110は、受信部118、角度演算部1201および調節指示部1202を含む各部への給電を個別にオンオフ可能に構成されている。切替部126は、イグニッション監視部114がイグニッションスイッチ326のオフを検知すると、受信部118および角度演算部1201への給電を継続し、調節指示部1202への給電を停止するようにスイッチ回路110を制御する。また、ジャイロセンサ116への給電も継続するように制御する。調節指示部1202への給電が停止されることで、調節指示部1202に関連する回路系統が休止状態となるとともに、調節指示部1202の制御も休止状態となる。したがって、イグニッションスイッチ326のオフ中は、受信部118によるジャイロセンサ116の出力値の受信と、角度演算部1201によるピッチ角度の変化量の演算が継続されるが、灯具ユニット10の光軸調節は実施されない。すなわち、レベリングECU100は、ジャイロセンサ116からのセンサ値取得とピッチ角度演算のみを継続し、それ以外の制御を休止する。
【0035】
角度演算部1201によって算出されたピッチ角度の変化量は、RAM124または不揮発性メモリ108に記憶される。調節指示部1202は、イグニッションスイッチ326がオンにされてレベリングECU100の全体が起動(完全起動)すると、RAM124または不揮発性メモリ108に記憶されているピット角度の変化量を用いて光軸調節を指示する制御信号を生成する。これにより、イグニッションスイッチ326がオフ状態にあるときの消費電力の低減を図ることができる。
【0036】
図示は省略するが、ライトスイッチ304から前照灯ユニット210の点灯を指示する信号が出力されると、イグニッションスイッチ326から前照灯ユニット210の電源回路を介してバルブ14に電力が供給される。
【0037】
なお、スイッチ回路110がイグニッション監視部114からイグニッションスイッチ326がオフになることを示す信号を受信して、第1回路330を第2回路332に切り替えるようにしてもよい。また、イグニッション監視部114から信号を受信した場合に受信部118および角度演算部1201への給電を継続し、調節指示部1202への給電を停止するようにスイッチ回路110を予め構成しておき、イグニッション監視部114から信号を受信したときにスイッチ回路110が上記動作を実行するようにしてもよい。すなわち、スイッチ回路110が切替部126の機能を備えていてもよい。
【0038】
図3は、実施形態1に係る車両用灯具の制御装置により実行される制御のフローチャートである。図3のフローチャートではステップを意味するS(Stepの頭文字)と数字との組み合わせによって各部の処理手順を表示する。このフローは、レベリングECU100により所定のタイミングで繰り返し実行される。
【0039】
まず、レベリングECU100は、イグニッションスイッチ326(IGスイッチ)のオフを検知したか判断する(S101)。イグニッションスイッチ326のオフを検知しない場合(S101のN)、レベリングECU100は、ジャイロセンサ116の出力値を受信する(S102)。そして、ジャイロセンサ116の出力値を用いて車両300のピッチ角度の変化量を演算する(S103)。続いて、演算された変化量を用いて光軸調節を指示する制御信号を生成する(S104)。その後、生成した制御信号を送信して(S105)本ルーチンを終了する。
【0040】
イグニッションスイッチ326のオフを検知した場合(S101のY)、レベリングECU100は、第1回路330から第2回路332に電力供給経路を切り替える(S106)。そして、調節指示部1202を含む、センサ値取得および角度演算に関連しない回路系統への給電を停止して休止させる(S107)。続いて、ジャイロセンサ116の出力値を受信し(S108)、受信した出力値を用いて車両300ピッチ角度の変化量を演算する(S109)。その後、演算された変化量を記憶して(S110)本ルーチンを終了する。
【0041】
以上説明したように、本実施形態に係るレベリングECU100は、イグニッションスイッチ326がオンの場合にイグニッションスイッチ326を介して車載バッテリー328とレベリングECU100とを接続する第1回路330により車載バッテリー328からレベリングECU100に電力を供給し、イグニッションスイッチ326がオフの場合にイグニッションスイッチ326を介さずに車載バッテリー328とレベリングECU100とを接続する第2回路332により車載バッテリー328からレベリングECU100に電力を供給している。すなわち、イグニッションスイッチ326のオンオフの状態にかかわらず車載バッテリー328から電力が供給されるように構成されている。そのため、イグニッションスイッチ326がオフの間も車両300のピッチ角度変化を継続して把握することができる。そのため、車両のピッチ角度方向の角速度または角加速度を検出するセンサを用いて車両用灯具の光軸位置を調節するオートレベリング制御において、イグニッションスイッチがオフにされた後の精度の低下を抑制することができる。
【0042】
なお、ジャイロセンサ116と、灯具ユニット10と、レベリングECU100とで本実施形態に係る車両用灯具システムが形成される。
【0043】
(実施形態2)
実施形態2に係る車両用灯具の制御装置は、イグニッションスイッチ326がオフ中、車両300のピッチ角度の変化が推定されたときにピッチ角度の変化量の演算を再開する。以下、本実施形態について説明する。なお、実施形態1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明および図示は適宜省略する。
【0044】
本実施形態に係るレベリングECU100では、受信部118が、車両300のピッチ角度が変化することが推定される変化推定信号を受信可能である。この変化推定信号としては、例えば車室ドア開閉センサ306から出力される車室ドアの開状態を示す信号、トランクドア開閉センサ308から出力されるトランクドアの開状態を示す信号、およびドアロックセンサ310から出力されるドアのアンロック状態を示す信号のいずれかが含まれる。これらの信号を受信した場合は、人員の乗り降りや荷物の積み下ろしが発生し、車両300のピッチ角度が変化すると推定することができる。
【0045】
イグニッション監視部114からイグニッションスイッチ326がオフになることを示す信号が出力され、受信部118がこの信号を受信すると、切替部126は、第1回路330から第2回路332に切り替える。また、切替部126は、角度演算部1201および調節指示部1202への給電を停止する。これにより、角度演算部1201および調節指示部1202の制御系統と、これに関連する回路系統が休止状態となる。切替部126は、例えば、角度演算部1201および調節指示部1202を含む、受信部118以外の回路系統および制御系統への給電を停止する。
【0046】
そして、切替部126は、受信部118が変化推定信号を受信すると角度演算部1201への給電を再開する。受信部118以外の回路系統および制御系統への給電を停止している場合は、ジャイロセンサ116への給電も再開する。調節指示部1202は、休止状態のままである。したがって、イグニッションスイッチ326のオフ中は、車両300のピッチ角度の変化が起こることが推定されると、受信部118によるジャイロセンサ116の出力値の受信と、角度演算部1201によるピッチ角度の変化量を演算が実行される。また、切替部126は、角度演算部1201への給電の再開後、受信部118が変化推定信号を所定時間受信しない場合、あるいはイグニッション監視部114がイグニッションスイッチ326のオンを所定時間検知しない場合に、角度演算部1201への給電を再度停止する。あるいは、受信部118以外への給電を停止する。これらにより、イグニッションスイッチ326がオフ状態にあるときの消費電力のさらなる低減を図ることができる。前記「所定時間」は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
【0047】
なお、切替部126は、イグニッション監視部114がイグニッションスイッチ326のオフを検知した場合であっても、受信部118が変化推定信号を受信している場合には、角度演算部1201への給電を継続する。また、切替部126は、角度演算部1201への給電の再開とともに、調節指示部1202への給電も再開してもよい。ただし、消費電力低減効果を向上させるという点では、調節指示部1202への給電は停止したままであることが好ましい。
【0048】
図4は、実施形態2に係る車両用灯具の制御装置により実行される制御のフローチャートである。まず、レベリングECU100は、イグニッションスイッチ326のオフを検知したか判断する(S201)。イグニッションスイッチ326のオフを検知しない場合(S201のN)、レベリングECU100は、イグニッションスイッチ326がオンにされた直後であるか判断する(S202)。イグニッションスイッチ326がオンにされた直後であるか否かの判断は、例えば、受信部118がイグニッション監視部114からイグニッションスイッチ326のオンを示す信号を受信してから、所定時間経過しているか否かにより判断することができる。
【0049】
イグニッションスイッチ326がオンにされた直後である場合(S202のY)、レベリングECU100は、全機能への給電を再開して全機能を起動する(S203)。そして、ジャイロセンサ116の出力値を受信する(S204)。イグニッションスイッチ326がオンにされた直後でない場合(S202のN)、レベリングECU100は、全機能の起動動作をすることなく、ステップ204に進む。そして、ジャイロセンサ116の出力値を用いて車両300ピッチ角度の変化量を演算する(S205)。続いて、演算された変化量を用いて光軸調節を指示する制御信号を生成する(S206)。その後、生成した制御信号を送信して(S207)本ルーチンを終了する。
【0050】
イグニッションスイッチ326のオフを検知した場合(S201のY)、レベリングECU100は、第1回路330を第2回路332に切り替える(S208)。そして、レベリングECU100は、変化推定信号を受信したか判断する(S209)。変化推定信号を受信した場合(S209のY)、レベリングECU100は、角度演算部1201への給電を停止しているか判断する(S210)。角度演算部1201への給電を停止している場合(S210のY)、レベリングECU100は、角度演算部1201への給電を再開し(S211)、ジャイロセンサ116の出力値を受信し(S212)、受信した出力値を用いて車両300ピッチ角度の変化量を演算する(S213)。角度演算部1201への給電を停止していない場合(S210のN)、レベリングECU100は、角度演算部1201への給電を再開動作をすることなく、ステップS212に進む。その後、レベリングECU100は、演算された変化量を記憶して(S214)本ルーチンを終了する。
【0051】
変化推定信号を受信していない場合(S209のN)、レベリングECU100は、変化推定信号またはイグニッションスイッチ326のオンを示す信号を所定時間受信していないか判断する(S215)。これらの信号を所定時間内に受信している場合(S215のN)、レベリングECU100はステップ212に進む。これらの信号を所定時間受信していない場合(S215のY)、レベリングECU100は、受信部118以外への給電を停止して(S216)本ルーチンを終了する。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係るレベリングECU100は、イグニッション監視部114がイグニッションスイッチ326のオフを検知すると、角度演算部1201および調節指示部1202への給電を停止し、変化推定信号を受信すると角度演算部1201の給電を再開している。すなわち、イグニッションスイッチ326がオフになると、まずピッチ角度の演算と光軸調節とを休止し、車両姿勢変化が発生する可能性が高い情報が得られたときにピッチ角度の演算を再開している。そのため、イグニッションスイッチ326がオフ状態にあるときの消費電力のさらなる低減を図ることができる。
【0053】
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などの変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
O 光軸、 100 レベリングECU、 114 イグニッション監視部、 116 ジャイロセンサ、 118 受信部、 126 切替部、 210,226 レベリングアクチュエータ、 300 車両、 306 車室ドア開閉センサ、 308 トランクドア開閉センサ、 310 ドアロックセンサ、 326 イグニッションスイッチ、 328 車載バッテリー、 1201 角度演算部、 1202 調節指示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のピッチ角度方向の角速度または角加速度を検出するセンサの出力値を受信する受信部と、
前記出力値を用いて車両のピッチ角度の変化量を演算する角度演算部と、
前記変化量を用いて車両用灯具の光軸調節を指示する制御信号を生成する調節指示部と、
イグニッションスイッチを介して車載バッテリーに接続された第1回路と車載バッテリーに直接接続された第2回路とを切り替える切替部と、
イグニッションスイッチのオンオフを検知するイグニッション監視部と、
を備え、前記切替部は、前記イグニッション監視部がイグニッションスイッチのオフを検知すると、第1回路から第2回路に切り替えることを特徴とする車両用灯具の制御装置。
【請求項2】
前記切替部は、前記受信部、前記角度演算部および前記調節指示部のそれぞれへの給電を個別に切り替え可能であり、前記イグニッション監視部がイグニッションスイッチのオフを検知すると、前記受信部および前記角度演算部への給電を継続し、前記調節指示部への給電を停止する請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記受信部は、車両のピッチ角度が変化することが推定される変化推定信号を受信可能であり、
前記切替部は、前記受信部、前記角度演算部および前記調節指示部のそれぞれへの給電を個別に切り替え可能であり、前記イグニッション監視部がイグニッションスイッチのオフを検知すると、前記角度演算部および前記調節指示部への給電を停止し、前記受信部が前記変化推定信号を受信すると前記角度演算部への給電を再開する請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記切替部は、前記角度演算部への給電の再開後、前記受信部が前記変化推定信号を所定時間受信しないか、前記イグニッション監視部がイグニッションスイッチのオンを所定時間検知しない場合に前記角度演算部への給電を再度停止する請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記切替部は、前記イグニッション監視部がイグニッションスイッチのオフを検知した場合であっても、前記受信部が前記変化推定信号を受信している場合には前記角度演算部への給電を継続する請求項3または4に記載の制御装置。
【請求項6】
車両のピッチ角度方向の角速度または角加速度を検出するセンサと、
光軸を調節可能な車両用灯具と、
前記車両用灯具の光軸調節を制御するための制御装置と、
を備え、前記制御装置は、
前記センサの出力値を受信する受信部と、
前記出力値を用いて車両のピッチ角度の変化量を演算する角度演算部と、
前記変化量を用いて前記車両用灯具の光軸調節を指示する制御信号を生成する調節指示部と、
イグニッションスイッチを介して車載バッテリーに接続された第1回路と車載バッテリーに直接接続された第2回路とを切り替える切替部と、
イグニッションスイッチのオンオフを検知するイグニッション監視部と、
を備え、前記切替部は、前記イグニッション監視部がイグニッションスイッチのオフを検知すると、第1回路から第2回路に切り替えることを特徴とする車両用灯具システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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