説明

車両用灯具の密閉構造、車両用灯具の灯室密閉方法および車両用灯具

【課題】特別な部品を必要とせずリーク試験用の貫通穴を塞ぎ灯体を密閉可能にする構造
【解決手段】樹脂を溶解するのに十分な温度、例えば150°C程度に熱せられた治具50の凹部50aを、カシメボス22の長軸方向Xに沿ってカシメボス22の先端部22aに押し当てることで熱カシメを実施すると、倒れ込み部22b同士が貫通穴21に向かって倒れ込み、互いの一部あるいは全部が重なり合って貫通穴21を覆う。かつ、治具50の熱により、貫通穴21を覆った倒れ込み部22b同士の重なり部分が融解して互いに結合し、貫通穴21は完全に塞がれ、外気から遮断された完全密閉の灯室41が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用灯具における密閉構造に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDランプにおいて、灯体自体が完全に密閉される必要があるため、従来より密閉状態を検査する穴がハウジングに設けられている。図6は、従来の密閉性を確認する際のリーク試験用の貫通穴の形状の一例を示す。図7に示すように、試験終了後、リーク試験用の貫通穴にゴム栓をつけることで、灯体は完全に密閉される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2003−521803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、従来の技術では、リーク試験終了後に、リーク試験用の貫通穴にゴム栓をつける作業が必要であり、その作業の工数を要する。また、ゴム栓は手作業でつけられるため、組み付け忘れが発生することがある。また、ゴム栓という部品が必要であり、部品点数が増大する。
【0005】
本発明は、車両用灯具の密閉構造、車両用灯具の灯室密閉方法および車両用灯具において、特別な部品を必要とせずリーク試験用の貫通穴を塞ぎ灯体を密閉可能にする構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、光源とレンズとを取り付け可能な樹脂製のハウジングに設けられる車両用灯具の密閉構造であって、ハウジングには、ハウジングとハウジングに嵌合したレンズとが形成する灯室空間と外気空間とを連通させる穴と、穴の周囲から外気空間側に突出したボスが形成されており、ボスの先端部には、穴に向けて互いに倒れ込んで重なりあうことが可能な倒れ込み部が複数形成されていることを特徴とする車両用灯具の密閉構造を提供する。
【0007】
好ましくは、倒れ込み部は三角形状である。
【0008】
本発明は、上記の車両用灯具の密閉構造のボスの倒れ込み部に向かって、所定の温度に加熱されかつ表面が円弧形状の治具を押し当てることで、倒れ込み部を穴に向けて互いに倒れ込ませ、倒れ込み部同士の重なり部分を熱カシメにより結合させることで、灯室空間を密閉することを特徴とする車両用灯具の灯室密閉方法を提供する。
【0009】
この車両用灯具の灯室密閉方法により灯室空間が密閉された車両用灯具も本発明に含まれる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、ハウジングに形成されたボスの先端部の倒れ込み部に治具を当てて熱カシメを実施するだけで、穴を容易に塞ぐことでができる。すなわち、ゴム栓などの特別な部品を必要とせず、また特別な部品を手作業で取り付けることなくリーク試験用の貫通穴を塞ぎ灯体を密閉することができる。これにより、灯具の部品点数削減、組み付け工数削減、組み付け忘れ防止、あるいはコスト削減が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】車両用灯具の概略を示す断面図
【図2】貫通穴の詳細を示す図
【図3】カシメボスの先端部の斜視図
【図4】カシメボスの先端部の正面図
【図5】治具でカシメボスの先端部を塞ぐ方法を示す図
【図6】従来のリーク試験用の貫通穴の形状の一例を示す図
【図7】従来のリーク試験用の貫通穴につけられたゴム栓の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明の好ましい実施形態に係る車両用灯具の概略構成図である。車両用灯具は主として、光源(不図示)を搭載する基板1と、基板1を取り付ける樹脂製のハウジング20と、ハウジング20の正面開口に嵌合するレンズ30で構成されている。光源はLEDなどで構成されうる。
【0013】
ハウジング20の側壁端部24とレンズ30のフランジ部34とは、図示しないシール材を介して嵌合されており、ハウジング20とレンズ30によって形成された灯室41内に基板1が支持された状態で配置されている。ハウジング20の樹脂はABSなどである。
【0014】
基板1が挿入実装されるハウジング20の後面には、灯室41と外気空間とをつなぐリーク試験用の貫通穴21が設けられる。また、貫通穴21の周囲から灯室41外部に向けて立ち上がるカシメボス22が、ハウジング20に一体成型されている。後述のように、カシメボス22を熱カシメして貫通穴21を塞ぐことで、完全密閉された灯室41が形成されうる。
【0015】
図2は貫通穴21の詳細を示す図である。熱カシメで貫通穴21を完全に塞ぐため、カシメボス22の高さaは、貫通穴21の径bよりも大きい。好ましくは、カシメボス22の長軸方向Xの高さaは、貫通穴21の径bの1.5倍〜2倍である。
【0016】
図3および4は、それぞれカシメボス22の先端部22aの斜視図および正面図を示す。
【0017】
図3に示すように、中空の正四角柱状のカシメボス22の先端部22aの四辺には、各々倒れ込み部22bが設けられている。図4に示すように、倒れ込み部22bは、貫通穴21に向かって倒れやすいよう三角形状に形成されている。各倒れ込み部22bの底辺には折れ線(薄肉にするなどして折れやすくした部分)が設けられている。倒れ込み部22bの形状は三角形でなく、その他の多角形、例えば四角形、五角形などでもよいが、後述する治具50の凹部50aと接触することで貫通穴21に向かって倒れやすい形状は、治具50と1点で接触する三角形である。カシメボス22の形状も、正四角柱でなく、その他の多角形柱、例えば五角形柱や、円柱などでもよい。要するに、倒れ込み部22bは、カシメボス22の形状に合わせて貫通穴21を塞ぐ形状であれば何でもよい。
【0018】
図5は、治具50でカシメボス22の先端部22aを塞ぐ方法を示す。治具50の先端は、表面が円弧型(凹曲面)の凹部50aを有する。樹脂を溶解するのに十分な温度、例えば150°C程度に熱せられた治具50の凹部50aを、カシメボス22の長軸方向Xに沿ってカシメボス22の先端部22aに押し当てることで熱カシメを実施すると、倒れ込み部22b同士が貫通穴21に向かって倒れ込み、互いの一部あるいは全部が重なり合って貫通穴21を覆う。かつ、治具50の熱により、貫通穴21を覆った倒れ込み部22b同士の重なり部分が融解して互いに結合し、貫通穴21は完全に塞がれ、外気から遮断された完全密閉の灯室41が形成される。
【0019】
このように、本実施形態では、ハウジング20に一体成形されたカシメボス22の先端部22aに治具50を当てて熱カシメを実施するだけで、貫通穴21を容易に塞ぐことでができる。すなわち、ゴム栓などの特別な部品を必要とせず、また特別な部品を手作業で取り付けることなくリーク試験用の貫通穴を塞ぎ灯体を完全に密閉することができる。これにより、灯具の部品点数削減、組み付け工数削減、組み付け忘れ防止、あるいはコスト削減が実現できる。
【符号の説明】
【0020】
1:基板、20:ハウジング、30:レンズ、21:貫通穴、22:カシメボス、22b:倒れ込み部、50:治具、50a:凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源とレンズとを取り付け可能な樹脂製のハウジングに設けられる車両用灯具の密閉構造であって、
前記ハウジングには、前記ハウジングと前記ハウジングに嵌合した前記レンズとが形成する灯室空間と外気空間とを連通させる穴と、前記穴の周囲から前記外気空間側に突出したボスが形成されており、
前記ボスの先端部には、前記穴に向けて互いに倒れ込んで重なりあうことが可能な倒れ込み部が複数形成されていることを特徴とする車両用灯具の密閉構造。
【請求項2】
前記倒れ込み部は三角形状であることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具の密閉構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用灯具の密閉構造のボスの倒れ込み部に向かって、所定の温度に加熱されかつ表面が円弧形状の治具を押し当てることで、前記倒れ込み部を前記穴に向けて互いに倒れ込ませ、前記倒れ込み部同士の重なり部分を熱カシメにより結合させることで、前記灯室空間を密閉することを特徴とする車両用灯具の灯室密閉方法。
【請求項4】
請求項3の車両用灯具の灯室密閉方法により前記灯室空間が密閉された車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−181253(P2011−181253A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42638(P2010−42638)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】