説明

車両用灯具の水抜き構造

【課題】部品の追加やコストアップを招くことなく、水抜き機能を確保しつつ高い防塵機能を果たすことができる車両用灯具の水抜き構造を提供すること。
【解決手段】ハウジング2とその開口部を覆うアウタレンズによって画成される灯室内に少なくとも光源を収容して成る車両用灯具の水抜き構造として、前記ハウジング2の下部に、複数の第1の水抜き孔9を形成するとともに、複数の第2の水抜き孔10が形成された開閉可能な開閉部材11を一体に形成し、該開閉部材11を閉じると該開閉部材11に形成された前記第2の水抜き孔10が前記第1の水抜き孔9に部分的に重なって第1及び第2の水抜き孔9,10よりも小さな第3の水抜き孔12が形成される構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングとその開口部を覆うアウタレンズによって画成される灯室内に少なくとも光源を収容して成る車両用灯具の水抜き構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヘッドランプやテールランプ等の車両用灯具は、ハウジングとその開口部を覆うアウタレンズによって画成される灯室内に少なくとも光源を収容して構成されているが、アウタレンズの内面に発生した結露等によって灯室内に残留する水や灯室内に浸入した水を灯室外へ排出するための水抜き構造が設けられている。ここで、斯かる水抜き構造の従来例を図6〜図8に基づいて以下に説明する。
【0003】
図6は従来の水抜き構造を備えた車両用灯具の側断面図、図7は図6のC部拡大詳細図、図8は図6のC部の斜視図であり、図6に示す車両用灯具101は不図示の自動二輪車の後部に配置されるテールランプである。このテールランプは、ハウジング102とその開口部を覆うアウタレンズ103によって画成される灯室104内に光源であるバルブ105やインナレンズ106を収容して構成されている。
【0004】
ところで、ハウジング102の下端部には、図7及び図8に示すように、灯室104内に連通する矩形の水抜き孔109が形成されており、灯室104内に浸入した水等が水抜き孔109から灯室104外へ排出されるようにしている。そして、この水抜き孔109から砂塵等の異物が灯室104内に浸入する可能性がある場合には、図7に示すように水抜き孔109に弾性体から成るフィルタ113を埋め込むことも行われている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−162608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、水抜き孔109からの異物の浸入を防ぐために図7に示すように水抜き孔109にフィルタ113を埋め込む構成を採用する場合、部品点数が増加してコストアップを招く他、フィルタ113が柔軟で変形し易いために該フィルタ113を水抜き孔109に埋め込んで貼り付ける作業が容易ではないという問題があった。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、部品の追加やコストアップを招くことなく、水抜き機能を確保しつつ高い防塵機能を果たすことができる車両用灯具の水抜き構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ハウジングとその開口部を覆うアウタレンズによって画成される灯室内に少なくとも光源を収容して成る車両用灯具の水抜き構造として、前記ハウジングの下部に、複数の第1の水抜き孔を形成するとともに、複数の第2の水抜き孔が形成された開閉可能な開閉部材を一体に形成し、該開閉部材を閉じると該開閉部材に形成された前記第2の水抜き孔が前記第1の水抜き孔に部分的に重なって第1及び第2の水抜き孔よりも小さな第3の水抜き孔が形成されるようにしたことを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記第1及び第2の水抜き孔の大きさを2mm以上、前記第3の水抜き孔の大きさを1mm以下としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、ハウジングに一体に形成された開閉部材を閉じると該開閉部材に形成された第2の水抜き孔がハウジングに形成された第1の水抜き孔に部分的に重なって第1及び第2の水抜き孔よりも小さな第3の水抜き孔が形成されるようにしたため、この第3の水抜き孔から灯室内の水を排出することができるとともに、第3の水抜き孔から灯室内への異物の侵入が防がれる。従って、フィルタ等の防塵部材が不要となり、部品の追加やコストアップを招くことなく、水抜き機能を確保しつつ高い防塵機能を果たすことができる水抜き構造を実現することができる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、第1及び第2の水抜き孔の大きさを2mm以上としたため、成形用金型の強度不足を招くことなくハウジングに第1及び第2の水抜き孔を形成することができる。そして、これらの第1及び第2の水抜き孔を部分的に重ね合わせて形成される第3の水抜き孔の大きさを1mm以下としたため、該第3の水抜き孔から灯室内への異物の侵入が防がれる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る水抜き構造を備えた車両用灯具の側断面図である。
【図2】図1のA部拡大詳細図である。
【図3】図2の矢視B方向に図である。
【図4】図3の斜視図である。
【図5】開閉部材を閉じる前の状態を示す車両用灯具の水抜き部の斜視図である。
【図6】従来の水抜き構造を備えた車両用灯具の側断面図である。
【図7】図6のC部拡大詳細図である。
【図8】図6のC部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は本発明に係る水抜き構造を備えた車両用灯具の側断面図、図2は図1のA部拡大詳細図、図3は図2の矢視B方向に図、図4は図3の斜視図、図5は開閉部材を閉じる前の状態を示す車両用灯具の水抜き部の斜視図である。
【0014】
図1に示す車両用灯具1は、不図示の自動二輪車の後部に配置されるテールランプであって、ハウジング2とその開口部を覆うアウタレンズ3によって画成される灯室4内に光源であるバルブ5やインナレンズ6を収容して構成されている。
【0015】
上記ハウジング2は、光不透過性樹脂によって一体成形されており、その内面は反射面を構成している。このハウジング2の開口部周縁には嵌合凹部2aが形成されており、この嵌合凹部2aにアウタレンズ3の周縁に形成された凸部3aが嵌め込まれ、両者がホットメルト7によって接着されることによってアウラレンズ3がハウジング2の開口部周縁に接合されて両者が一体化されている。又、ハウジング2の中央部には前記バルブ5がソケット8を介して取付保持されている。
【0016】
ところで、ハウジング2の下端部には、図2〜図5に示すように、灯室4内に連通する4つの矩形の第1の水抜き孔9が形成されており、ハウジング2の第1の水抜き孔9が形成された位置には、4つの矩形の第2の水抜き孔10が形成された開閉可能な開閉部材11が一体に形成されている。この開閉部材11は、その上端縁がヒンジ11aによって回動可能に支持されており、その下端には直角に屈曲するフック状の係合部11bが形成されている。
【0017】
ここで、ハウジング2に形成された4つの第1の水抜き孔9と開閉部材11に形成された4つの第2の水抜き孔10の大きさは共に2mm以上(1辺が2mm以上の矩形)に設定されているが、両水抜き孔9,10は同じ位置には形成されておらず、両者は互いに若干ずれた位置に形成されている。従って、開閉部材11を図5に示すように開いた状態からヒンジ11aを中心として回動させて閉じれば、その下端の係合部11bが図2及び図4に示すようにハウジング2の下端縁に係合して開閉部材11が図2〜図4に示すように閉じ状態に保持される。
【0018】
而して、前述のようにハウジング2に形成された4つの第1の水抜き孔9と開閉部材11に形成された4つの第2の水抜き孔10とは互いに若干ずれた位置に形成されているため、開閉部材11が閉じられた状態では、図3に示すように第1の水抜き孔9と第2の水抜き孔10が部分的に連通する4つの第3の水抜き孔(図3において斜線を付して示す)12が形成される。この第3の水抜き孔12の大きさは第1及び第2の水抜き孔9,10よりも小さく、この小さな4つの第3の水抜き孔12を介して灯室4が外部と連通している。尚、本実施の形態では、第3の水抜き孔12の大きさは1mm(1辺1mmの矩形)に設定されている。
【0019】
以上のように、本実施の形態では、ハウジング2に一体に形成された開閉部材11を閉じると該開閉部材11に形成された第2の水抜き孔10がハウジング2に形成された第1の水抜き孔9に部分的に重なって第1及び第2の水抜き孔9,10よりも小さな第3の水抜き孔12が形成されるようにしたため、この第3の水抜き孔12から灯室4内の水を排出することができるとともに、第3の水抜き孔12から灯室4内への異物の侵入が防がれる。従って、フィルタ等の防塵部材が不要となり、部品の追加やコストアップを招くことなく、水抜き機能を確保しつつ高い防塵機能を果たすことができる水抜き構造を実現することができる。
【0020】
又、本実施の形態では、第1及び第2の水抜き孔9,10の大きさを2mm以上としたため、成形用金型の強度不足を招くことなくハウジング2に第1及び第2の水抜き孔9,10を形成することができる。そして、これらの第1及び第2の水抜き孔9,10を部分的に重ね合わせて形成される第3の水抜き孔12の大きさを1mm以下としたため、該第3の水抜き孔12から灯室4内への異物の侵入が防がれる。
【0021】
尚、以上の実施の形態においては、ハウジング2に形成された第1の水抜き孔9と開閉部材11に形成された第2の水抜き孔10の数を4つ、形状を矩形としたが、これらの第1及び第2の水抜き孔9,10の数と形状は任意である。又、以上は本発明を自動二輪車用のテールランプの水抜き構造に対して適用した形態について説明したが、本発明は、他の任意の車両用灯具の水抜き構造に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0022】
1 車両用灯具
2 ハウジング
2a ハウジングの嵌合凹部
3 アウタレンズ
3a アウタレンズの凸部
4 灯室
5 バルブ(光源)
6 インナレンズ
7 ホットメルト
8 ソケット
9 第1の水抜き孔
10 第2の水抜き孔
11 開閉部材
11a 開閉部材のヒンジ
11b 開閉部材の係合部
12 第3の水抜き孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングとその開口部を覆うアウタレンズによって画成される灯室内に少なくとも光源を収容して成る車両用灯具の水抜き構造であって、
前記ハウジングの下部に、複数の第1の水抜き孔を形成するとともに、複数の第2の水抜き孔が形成された開閉可能な開閉部材を一体に形成し、該開閉部材を閉じると該開閉部材に形成された前記第2の水抜き孔が前記第1の水抜き孔に部分的に重なって第1及び第2の水抜き孔よりも小さな第3の水抜き孔が形成されるようにしたことを特徴とする車両用灯具の水抜き構造。
【請求項2】
前記第1及び第2の水抜き孔の大きさを2mm以上、前記第3の水抜き孔の大きさを1mm以下としたことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具の水抜き構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−174380(P2012−174380A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32771(P2011−32771)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】