説明

車両用灯具の車体取付け構成

【課題】従来のバンパーに取付ける車両用灯具においては、小型であったので、バンパー自体の強度を利用し、内部に取付けるなどの手段で充分であったが、近年では前照灯を初めとし複数の灯具が複合されるものとなり強度的にも不充分となっている。
【解決手段】上記のように大型化された灯具においては、現在、バンパーに灯具ホルダーの一端を取付け、この灯具ホルダーの上面に2本のネジで灯具を取付ける方法が採用されているが、バンパーの重量などにより灯具ホルダーに変形を生じ、灯具とバンパー間の隙間にバラツキを生じ品質感を損なう原因となるので、灯具ホルダに延長部と支柱部とを設け、灯具ホルダーと灯具とをネジで取付けたときには、延長部と支柱部も当接し実質的な支持点を3点に増やして取付強度を増し課題を解決している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両において、車体に車両用灯具を取付けるときの構成に関するものであり、詳細には、走行用、すれ違い用の前照灯、車幅灯、方向指示灯などが一体化され、モジュール化された車両用灯具を車体に取付けるときの構成に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来のバンパー80に車両用灯具90を取付けるときの構成の例を示すものが、図6であり、バンパー80の一部には車両用灯具90を取付けるための開口部81が設けられている。また、この開口部81には一方の側壁面82が設けられ、この一方の側壁面82には、前記車両用灯具90のハウジング91に設けられた突起91aを挿入するための係止孔82aが設けられている。
【0003】
また、前記ハウジング91の前記突起91aが設けられたのと反対側である他方の側壁面83にも突起91bが設けられており、この突起91bには車体70などに設けられた取付面71に螺着するための係止孔71aが設けられている。
【0004】
また、前記一方の側壁面82にはハウジング91側に向かい凸状に湾曲する延設面61が設けられている。そして、車両用灯具90を取付ける際には、バンパー80の開口部81へ車両用灯具90を一方の側壁面82側から挿入し、係止孔82aに突起91aを差し込み、しかる後に、ハウジング91の突起91bが設けられた側を回転させるようにして開口部内81内にに押し込み、突起91bと取付け面81とを螺着して取付が行われるものとなる。
【0005】
ここで、前記一方の側壁面82の先端に延設面61が設けられているのは、前記突起91aを延設面61に設けられた曲面に沿い誘導し、係止孔82aに確実に挿入させるためであり、一方の側壁面82の先端近傍に係止孔82aを設けただけの構成では、突起91aが確実に係止孔82aに挿入が行われず組立が不確実になるからである。
【特許文献1】特開平10−287172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記した従来の車両用灯具90のバンパー80への取付け構成においては、取付けられる車両用灯具90が車幅灯、方向指示灯などバンパー80の上下幅内への取付が可能である程度の大きさの車両用灯具90が主流であったので、例えば、取付強度などの面では何らの問題点も生じないものであった。
【0007】
しかしながら、近年にいたり、車両用灯具90も車両のデザインの一部として重要視されるものとなり、その、1つの方法として、前照灯、方向指示灯、車幅灯などを一体化して灯具の大型化を図ると共に、それらの灯具類を透明で且つボデーラインと一致するアウターレンズで覆い、透明感の向上によりデザイン向上を図ったものが多く採用されるものとなっている。
【0008】
上記のように、アウターレンズのほぼ全面が透明化され、且つ、車両用灯具90自体が大型化して重量も重くなったので、第一には、自重により車体、バンバーなどとの取付部への応力が増し、例えば、アウターレンズとハウジングとにかかる応力が大きくなり、シール性が低下するなど耐久面での問題点を生じていた。
【0009】
また、第二には、複数の灯具を一体化したことで、前記したようにアウターレンズの形状が大型化し、例えば、外部応力が加えられることで、一部に応力が集中する場所を生じるなどの事態を生じやすくなり、例えば、バンパーと車両用灯具との隙間が設計値よりも徐々に拡がってきて、見栄えを損なうなどに問題も生じ、これらの点の解決が課題とされていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明により、全体が略板状に形成されて、一つの辺部にはバンパーの板厚に挟持させる挟持部が形成されると共に、前記挟持部からは適宜の距離が設けられて少なくとも2つの取付穴が設けられた灯具ホルダーを用い、前記挟持部で前記灯具ホルダーを車体に取付けると共に、前記取付穴に車両用灯具のハウジングを螺着し、車両の車体に対して車両用灯具の位置決めと取付とを行って成る車両用灯具の車体取付け構成であって、前記灯具ホルダーは、少なくとも一部が前記2つの取付穴が設けられた位置を超えて車体後方に延長された延長部が設けられており、前記ハウジングには、前記挟持部をバンバーに挟持させ、前記2つの取付穴でハウジングを螺着した状態において、前記延長部に適宜な圧力で当接する支柱部が設けられていることを特徴とする車両用灯具の車体取付け構成とすることで課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、従来からの取付け構成に加えて、灯具ホルダーに延長部を設けると共に、
ハウジング側に支柱部を設けたことで、従来の、この種の車両用灯具の取付け工程と同一の工程で、車両用灯具に対する指示点を増やし、取付強度を向上させて、シール性の向上、見栄えの低下の防止などを可能として、品質の向上と、性能の維持とに極めて優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
つぎに、本発明を図に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。図1に符号1で示すものは灯具ホルダー1であり、図1においては、この灯具ホルダー1は車体の前後方向に略沿う断面図として示してあり、この灯具ホルダー1の目的は、車両用灯具20をバンパー30に取付けるために用いられるものであり、例えば、適宜な板厚の鋼材のプレス加工などにより、前記車両用灯具20とバンパー30とを取付けるときに必要充分な強度での取付が行えるように形成されている。
【0013】
そして、前記灯具ホルダー1の、取付時には車体前方となる側の辺には前記バンパー30に挟着するための挟持部1aが設けられており、前記バンパー30の板厚を挟持させることで所定位置への取付が行えるようにされている。尚、前記灯具ホルダー1には、車体、あるいは、前記車両用灯具20と干渉する部分に、例えば凹部状として形成した逃げ部1bを設けても良いものである。尚、適宜な位置にリブ1cなどを設ければ、一層に強度を増すことも可能となる。
【0014】
図2は、前記灯具ホルダー1の平面図であり、現在採用されている灯具ホルダー1においては、平面図上において、全体形状が略四辺形状として形成されており、前記挟持部1aが設けられた辺と対峙する辺の近傍には2つの取付孔1dが設けられている。尚、図2では、灯具ホルダー1は平面図的に略四辺形として示してあるが、実際には、車両のコーナー部分に取付けられる部品であるので、前記挟持部1aが車体形状に沿う曲面として形成されていても良い。
【0015】
ここで、再び図1を参照して、バンパー30に車両用用具20を取付けたときの工程の進行状態を示せば、先ず、灯具ホルダー1が、その挟持部1aによりバンパー30に取付けられる。このようにすると、前記灯具ホルダー1がバンパー30により略水平な棚状に支持されているものとなり、この状態で灯具ホルダー1上の所定位置に車両用灯具20をセットし、前記車両用灯具20の、例えば、ハウジング21に設けられたネジボス22と、前記灯具ホルダー1に設けられた取付孔1dとを取付ネジ23で締結すれば、車両用灯具20は車体の所定位置に確実に取付けが行われるものとなる。
【0016】
尚、図1中に符号24で示すものは、車両用灯具20のアウターレンズ24であり、前記ハウジング21とは熱可塑性樹脂を使用した、ホットメルトなどと称されている接着剤25で接着が行われて、車両用灯具20内部の雨点時、洗車時などに内部の耐水性が保たれている。
【0017】
以上が、現状における車両用灯具20の車体取付機構であるが、発明者は幾多種類の車両における車両用灯具20の取付後の状態を観察した結果、バンバー30は軽微な衝撃などでは変形を生じないように、充分な強度が得られるように頑丈に設計されており、それ故に重量が重く、例えば車両組立中の前記灯具ホルダー1の強度のバラツキによって、車両前側、即ち、挟持部1a側が下がる状態の変形を生じたり、あるいは、前記した変形の量にバラツキを生じる場合が、往々にあることが判明した。
【0018】
この場合、前記灯具ホルダー1に全く変形を生じないときには、バンパー30と車両用灯具20の間に隙間を生ぜず、車両設計者が意図したデザインのものとなるが、変形を生じた場合には、バンパー30と車両用灯具20の間に隙間を生じて設計者のデザインが実現できないものとなり、更に、変形量にバラツキを生じた場合には、隙間tもバラツキ、車両の品質感も損なわれるものとなる。また、灯具ホルダー1に変形を生じると、ハウジング21とアウターレンズ24とを接着した接着剤にも応力がおよび、剥がれなどの要因となり、車両用灯具20のシール性にも影響を与えるものとなる。
【0019】
上記の問題は、例えば灯具ホルダー1の前端、即ち、挟持部1aと、取付孔1dとの距離を近づけると、隙間のバラツキなどは少なくなる傾向となるが、このように挟持部1aと、取付孔1dとを近づけると、バンパー30に対して比較的に軽微な衝突を生じたときにおいても、灯具ホルダー1および車両用灯具20に加わる衝撃が増大し、これらに破損が及ぶ確率が高くなり、メンテナンス費用なども増加する。
【0020】
そこで、発明者は図3、図4に示すように、現状における車両用灯具20の取付工程に何らの変更もすることなく、より確実にバラツキなく取付が行える灯具ホルダー10を開発した。尚、理解を容易とするために、現状で使用されている部品には同一符号を付して説明する。尚、図3は図1と同様な方向の断面で示してある。
【0021】
前記灯具ホルダー10は図3に示すように前側の先端に挟持部1aが設けられ、この挟持部1aで、バンパー30の板厚を挟持し固定される。そして、例えば車両用灯具20と干渉する部分には逃げ部1bが設けられ、必要に応じては、両側面にリブ1cが形成されて補強が行われるなどは図1のものと同様である。
【0022】
また、図3、図4に示すように、前記灯具ホルダー10には2つの取付孔1dが設けられ、車両用灯具20のハウジング21に設けられたネジボス22に取付ネジ23で取付けが行われるものである点も同様であるが、現状で使用されている灯具ホルダー1の、挟持部1aから取付孔1dまでの間隔D1に比較して、本発明の灯具ホルダー10は、挟持部1aから取付孔1dまでの間隔D2が同じ、または、短く、即ち、間隔D1≦間隔D2としてある。
【0023】
また、図4に示すように、前記挟持部1aの反対側の辺には、例えば梯形とした延長部10eが設けられており、この延長部10eを加えた灯具ホルダー10の全長は少なくとも現状の同等、または、それ以上とされていることが好ましい。
【0024】
ここで、図3を参照して本発明による車両用灯具20の車体への取付手順を説明すると、先ず、バンパー30の板厚にに対して、前記灯具ホルダー10の挟持部1aを挟持させて固定を行う。このようにすることで、前記バンパー30には略棚状に前記灯具ホルダー10が取付けるものとなる。
【0025】
その後に、前記ハウジング21に設けられたネジボス22に対して、2本の取付ネジ23により、前記灯具ホルダー10に対して取付を行うものである点は、同様であるが、前記延長部10eには、上記の取付ネジ23による取付を行った際には、前記ハウジング21に向けて曲げた略柱状の支柱部10fが設けられており、先端がハウジング21の外面に適宜な強度で圧接されるものとなる。
【0026】
従って、前記灯具ホルダー10と車両用灯具20との取付を行うと、上記した2本の取付ネジ23と、前記支柱部10fとで前記ハウジング21、即ち、車両用灯具20は、灯具ホルダー10に対して実質的に3点で支持されるものとなる。
【0027】
また、このときの支持は、上記した2本の取付ネジ23のみで行われている場合には、前記バンパー30から加わる重力に対し、略平行方向に前記取付ネジ23が並ぶものとなり、灯具ホルダー10と車両用灯具20との間に取付ネジ23を軸としてシーソー運動を生じやすいものとなるが、前記支柱部10fを設けることで、上記シーソー運動の発生は抑止される。
【0028】
尚、上記の例では、前記支柱部10fは灯具ホルダー10の側に取付けたが、本発明は、これを限定するものではなく、図5にも示すように、前記ハウジング21の側に設けても良く、この場合には、ハウジング21の側に設けた支柱部10fは、2本の取付ネジ23で灯具ホルダー10とハウジング21、即ち、車両用灯具20とを取付けたときには前記延長部10eに当接するものとされている。
【0029】
以上、説明のように、本発明により、前記灯具ホルダー10には延長部10e、および支柱部10fを設け、前記ハウジング21と灯具ホルダー10とを2本の取付ネジで取付を行った際には、支柱部10fが適宜な圧力でハウジング21に当接するものとなり、工程を増やすこと成しに、簡略的な三点支持が行われるものとすることができる。
【0030】
従って、バンパー30の重量などにより、前記灯具ホルダー10が前下がり方向に傾きを生じさせるような応力が加わるときには、前記支柱部10fが、前記した応力に拮抗するものとなり、これにより、バンパー30と車両用灯具20との間に隙間を生じるのが防止できるものとなる。
【0031】
更に、灯具ホルダー10においては、延長部10eおよび支柱部10fが設けられたことで、前記取付ホルダー10とハウジング21(車両用灯具20)との取付強度が向上し、挟持部1aと取付孔1dとの間の距離を現状のものに比べて短くすることができ、前記灯具ホルダー10自体の強度の向上が図れるものとなり、従来生じていた、例えば、灯具ホルダー10の変形によるシール性などを向上させることも可能となる。
【0032】
また、図3、図4に示すように、前記支柱部10fの先端に小突起などを設けておき、前記した2本のネジで灯具ホルダー10にハウジング21を取付けたときには、前記小突起10gが前記ハウジング21中に適宜に食い込むようにして固定手段10gとしておけば、例えば軽微なバンパー30に衝突を生じたときにも前記灯具ホルダー10と前記ハウジング21との取付強度、位置決めの確実性も向上させることができる。
尚、
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】現在使用されている車両用灯具の車体取付け構成を示す断面図である。
【図2】現在使用されている灯具ホルダーを示す平面図である。
【図3】本発明に係る車両用灯具の車体取付け構成を示す断面図である。
【図4】本発明に係る灯具ホルダーを示す平面図である。
【図5】本発明に係る灯具ホルダーの別の実施形態を要部で示す説明図である。
【図6】従来例の車両用灯具の車体取付け構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1、10…灯具ホルダー
1a…挟持部
1b…逃げ部
1c…リブ
1d…取付孔
10e…延長部
10f…支柱部
10g…固定手段
20…車両用灯具
21…ハウジング
22…ネジボス
23…取付ネジ
24…アウターレンズ
25…接着剤
30…バンパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体が略板状に形成されて、一つの辺部にはバンパーの板厚に挟持させる挟持部が形成されると共に、前記挟持部からは適宜の距離が設けられて少なくとも2つの取付穴が設けられた灯具ホルダーを用い、前記挟持部で前記灯具ホルダーを車体に取付けると共に、前記取付穴に車両用灯具のハウジングを螺着し、車両の車体に対して車両用灯具の位置決めと取付とを行って成る車両用灯具の車体取付け構成であって、
前記灯具ホルダーは、少なくとも一部が2つの前記取付穴が設けられた位置を超えて車体後方に延長された延長部が設けられており、前記ハウジングには、前記挟持部をバンバーに挟持させ、2つの前記取付穴でハウジングを螺着した状態において、前記延長部に適宜な圧力で当接する支柱部が設けられていることを特徴とする車両用灯具の車体取付け構成。
【請求項2】
前記支柱部が、前記ハウジングに替えて前記延長部側に設けられていることを特徴とする請求項1記載の車両用灯具の車体取付け構成。
【請求項3】
前記挟持部と2つの前記取付穴とで車両用灯具の取付が行われた際には、前記支柱部の先端には当接する相手方に対する固定手段が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の車両用灯具の車体取付け構成。
【請求項4】
前記挟持部と前記取付穴との間の距離が、前記取付穴と前記延長部との間の距離以上であることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の車両用灯具の車体取付け構成。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−83681(P2009−83681A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−256877(P2007−256877)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】