説明

車両用灯具

【課題】光源からの光を車両の側方に確実に照射できること。
【解決手段】この発明は、第1リフレクタ6と第2リフレクタ7とを備える。第1リフレクタ7は、光源5からの光を車両Cの前方から側方にかけて反射させて第1配光パターン;1を形成する。第1リフレクタ6には開口部16が設けられている。第2リフレクタ7は、第1リフレクタ6の開口部16を通過した光源6からの光を車両Cの側方に反射させて第2配光パターンP2を形成する。この結果、この発明は、光源5からの光を車両Cの側方に確実に照射することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の前方および側方にあるいは後方および側方に光を照射する車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の前方および側方にあるいは後方および側方に光を照射する車両用灯具は、従来からある(たとえば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。以下、従来の車両用灯具について説明する。従来の車両用灯具は、灯室を区画するランプハウジングおよびランプレンズと、その灯室内に配置されている光源および補助リフレクタや導光体と、を備えるものである。
【0003】
以下、従来の車両用灯具の作用について説明する。光源を点灯すると、光源からの光は、ランプレンズを透過して車両の前方から側方にかけてあるいは後方から側方にかけて照射される。一方、光源からの光は、補助リフレクタや導光体によりランプレンズを透過して車両の側方に照射される。
【0004】
前記の従来の車両用灯具においては、車両のデザイン上、ランプレンズの車両の前方から側方にかけてあるいは後方から側方にかけての回り込み部の傾斜角度が大となったり、あるいは、灯室内のリフレクタやインナーパネルなどの部品がランプレンズの側方まで突出したりしたとしても、光源からの光を車両の側方に確実に照射できることが重要である。すなわち、車両のデザイン上、ランプレンズの車両の前方から側方にかけてあるいは後方から側方にかけての回り込み部の傾斜角度が大となったりすると、光源から車両の側方に向かう光のランプレンズの側方における入射角が臨界角を超えて灯室内に全反射して、光源からの光を車両の側方に確実に照射することが難しくなる。また、車両のデザイン上、灯室内のリフレクタやインナーパネルなどの部品がランプレンズの側方まで突出したりすると、光源から車両の側方に向かう光がランプレンズの側方まで突出したリフレクタやインナーパネルなどの部品により遮られて、光源からの光を車両の側方に確実に照射することが難しくなる。
【0005】
【特許文献1】実開平4−106801号公報
【特許文献2】特開2005−56623号公報
【特許文献3】特開2006−331744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、車両用灯具においては、車両のデザイン上、ランプレンズの前方から側方にかけてあるいは後方から側方にかけての回り込み部の傾斜角度が大となったり、あるいは、灯室内のリフレクタやインナーパネルなどの部品がランプレンズの側方まで突出したりしたとしても、光源からの光を車両の側方に確実に照射できることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明(請求項1にかかる発明)は、灯室を区画するランプハウジングおよびランプレンズと、その灯室内にそれぞれ配置されている光源および第1リフレクタおよび第2リフレクタと、を備え、ランプレンズが車両の前方から側方にかけてあるいは後方から側方にかけて回り込み部を有し、第1リフレクタが光源からの光を車両の前方から側方にかけてあるいは後方から側方にかけて反射させて第1配光パターンを形成し、第1リフレクタには開口部が設けられていて、第2リフレクタが第1リフレクタに対して光源と反対側に開口部に対応して配置されていて開口部を通過した光源からの光を車両の側方に反射させて第2配光パターンを形成する、ことを特徴とする。
【0008】
また、この発明(請求項2にかかる発明)は、開口部および第2リフレクタが光源に対して上方に配置されている、ことを特徴とする。
【0009】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)は、室内には開口部および第2リフレクタを覆うインナーレンズが配置されていて、インナーレンズには、第2リフレクタからの反射光を車両の側方に透過させる透過部と、インナーレンズと第2リフレクタとの間に入射した光源からの光を拡散させる拡散系プリズム部とが設けられている、ことを特徴とする。
【0010】
さらにまた、この発明(請求項4にかかる発明)は、光源からの光が入射するインナーレンズと第2リフレクタとの間の間口部の一部には、間口が広い間口部が設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、前記の課題を解決するための手段により、光源を点灯すると、光源からの光の一部が、第1リフレクタで車両の前方から側方にかけてあるいは後方から側方にかけて反射されて、かつ、ランプレンズを透過して、第1配光パターンとして車両の前方から側方にかけてあるいは後方から側方にかけて照射される。また、光源からの光の残りの一部が、第1リフレクタの開口部を通過して第2リフレクタで車両の側方に反射されて、かつ、ランプレンズを透過して、第2配光パターンとして車両の側方に照射される。すなわち、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、第1リフレクタには開口部が設けられていて、かつ、その第1リフレクタには開口部と対応して第2リフレクタが配置されている。この結果、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、車両のデザイン上、ランプレンズの車両の前方から側方にかけてあるいは後方から側方にかけての回り込み部の傾斜角度が大となったり、あるいは、灯室内の第1リフレクタなどの部品がランプレンズの側方まで突出したりしたとしても、光源からの光が第1リフレクタの開口部を通過して第2リフレクタで車両の側方に反射される。これにより、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、第2リフレクタからの反射光のランプレンズの側方における入射角が臨界角を超えるようなことがなく、また、第2リフレクタからの反射光がランプレンズの側方まで突出した第1リフレクタなどにより遮られるようなことがないので、光源からの光を車両の側方に確実に照射することができる。
【0012】
また、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用灯具は、開口部および第2リフレクタが光源に対して上方に配置されている。このために、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用灯具は、光源からの光が下方から上方に開口部を通過して第2リフレクタで反射し、その第2リフレクタからの反射光が上方から下方の路面などに確実にかつ簡単な配光設計や簡単な光源および開口部および第2リフレクタのレイアウト設計で照射することができる。
【0013】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用灯具は、インナーレンズで開口部および第2リフレクタを覆うので、開口部および第2リフレクタがインナーレンズで隠されて見えなくなり、その分、見栄えが向上する。しかも、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用灯具は、インナーレンズの透過部により、開口部および第2リフレクタをインナーレンズで覆っても、第2リフレクタからの反射光がインナーレンズの透過部を透過するので、第2リフレクタからの反射光が車両の側方に照射する際に、インナーレンズが妨げとなるようなことがない。その上、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用灯具は、インナーレンズの拡散部により、インナーレンズと第2リフレクタとの間に入射した光源からの光を拡散させることができるので、インナーレンズにおける発光面積を広げることができ、その分、見栄えが向上し、また、被視認性が向上して交通安全に貢献することができる。かつ、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用灯具は、インナーレンズの拡散部により、車両の側方配光と見栄え向上という効果を同時に満たすことができる。
【0014】
さらにまた、この発明(請求項4にかかる発明)の車両用灯具は、光源からの光が入射するインナーレンズと第2リフレクタとの間の間口部の一部に間口が広い間口部を設けたものである。この結果、この発明(請求項4にかかる発明)の車両用灯具は、インナーレンズと第2リフレクタとの間に入射する光源からの光の量(光束)を増やすことができ、その分、インナーレンズにおける発光が明るく(強く)なり、見栄えがさらに向上し、また、被視認性がさらに向上して交通安全に貢献することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明にかかる車両用灯具の実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。図面において、符号「F」は、車両の前側(車両の前進方向側)を示す。符号「B」は、車両の後側を示す。符号「U」は、ドライバー側から前側を見た上側を示す。符号「D」は、ドライバー側から前側を見た下側を示す。符号「L」は、ドライバー側から前側を見た場合の左側を示す。符号「R」は、ドライバー側から前側を見た場合の右側を示す。前記の前、後、上、下、左、右は、この発明にかかる車両用灯具を車両に装備した際の前、後、上、下、左、右である。また、符号「VU−VD」は、スクリーンの上下の垂直線を示す。符号「HL−HR」は、スクリーンの左右の水平線を示す。
【実施例】
【0016】
以下、この実施例にかかる車両用灯具の構成について説明する。図1において、符号1L、1Rは、この実施例にかかる車両用灯具である。前記車両用灯具1L、1Rは、たとえば、車両(自動車)Cの前部の左右にそれぞれ装備されるヘッドランプ(もしくは、フロントコンビネーションランプ)である。前記車両用灯具1L、1Rは、図1に示すように、正面(車両の前側の面)から側面(車両Cの外側の面であって、左側の車両用灯具1Lの場合には左側面、右側の車両用灯具1Rの場合には右側面)にかけて回り込み部を有する。以下、車両の前部の左側に装備されるこの実施例における車両用灯具1Lの構成について説明する。なお、車両の前部の右側に装備される車両用灯具1Rは、車両の前部の左側に装備される車両用灯具1Lとほぼ同等の構成からなりかつ左右逆のレイアウトからなるので、説明を省略する。なお、図1において、符号「1B」は、車両Cの前部に設けられているバンパーである。
【0017】
前記車両用灯具1Lは、図2および図3に示すように、灯室2内にフロントターンシグナルランプユニット1Fとヘッドランプユニット1Hとを配置してなるものである。前記フロントターンシグナルランプ1Fは、前記ヘッドランプ1Hに対して、車両Cの外側(左側の車両用灯具1Lの場合には左側、右側の車両用灯具1Rの場合には右側)に配置されている。
【0018】
以下、前記車両用灯具1Lのうちフロントターンシグナルランプユニット1F(以下、単に、「車両用灯具1L」と称する)について説明する。前記車両用灯具1Lは、図4に示すように、前記灯室2を区画するランプハウジング3およびランプレンズ(たとえば、素通しのアウターレンズなど)4と、前記灯室2内にそれぞれ配置されている光源5および第1リフレクタ6および第2リフレクタ7および第1インナーレンズ8および第2インナーレンズ9およびインナーパネル(もしくは、インナーハウジングやエクステンション)10と、を備える。前記ランプレンズ4、前記光源5、前記第1リフレクタ6、前記第2リフレクタ7、前記第1インナーレンズ8、第2インナーレンズ9、前記インナーパネル10は、前記ランプハウジング3に、スクリューやクリップや嵌合や接着剤やシール材を介して直接的あるいは他の部品を介して間接的にそれぞれ固定されている。なお、前記インナーパネル10は、前記フロントターンシグナルランプ1Fの専用の場合もあり、または、前記フロントターンシグナルランプ1Fと前記ヘッドランプユニット1Hとの兼用の場合もある。
【0019】
前記ランプハウジング3は、この例では、光不透過性の合成樹脂からなる。前記ランプハウジング3の正面および車両Cの外側の側面および平面(上側の面)には、開口部が設けられている。前記ランプレンズ4は、この例では、光透過性の合成樹脂からなる。前記ランプレンズ4の背面(後側の面)および側面(車両Cの内側の面であって、左側の車両用灯具1Lの場合には右側面、右側の車両用灯具1Rの場合には左側面)および底面(下側の面)には、開口部が設けられている。前記ランプハウジング3の前記開口部の縁部11には、前記ランプレンズ4の前記開口部の縁部12がシール材13を介して固定されている。この結果、前記ランプハウジング3および前記ランプレンズ4により、前記灯室2が区画されている。
【0020】
前記ランプレンズ4は、図1に示すように、車両Cの前方から側方にかけて回り込み部14を有する。前記ランプレンズ4は、図1に示すように、車両Cのデザイン上、キャンバー角度θ1が比較的に大きい。前記キャンバー角度θ1は、前記ランプレンズ4の前記回り込み部14の左右傾斜角度であって、車両Cの前面の水平線と前記ランプレンズ4の側面に接する接線とのなす角度である。また、前記ランプレンズ4は、図2に示すように、車両Cのデザイン上、スラント角度θ2が比較的大きい。前記スラント角度θ2は、前記ランプレンズ4の上下傾斜角度であって、車両Cの前面の垂直線と前記ランプレンズ4の平面に接する接線とのなす角度である。
【0021】
前記光源5は、この例では、ウエッジバルブの光源からなる。前記光源5は、ソケット15に着脱可能に取り付けられていて、かつ、前記ソケット15を介して前記ランプハウジング3に着脱可能に取り付けられている。
【0022】
前記第1リフレクタ6は、この例では、光不透過性の合成樹脂からなる。前記第1リフレクタ6は、正面と背面とが開口した筒形状をなす。前記第1リフレクタ6は、前記ランプハウジング3に固定されている。前記第1リフレクタ6の背面開口部から前記光源5が前記第1リフレクタ6内に挿入している。前記第1リフレクタ6の内面には、アルミ蒸着や銀塗装などにより、反射面が設けられている。前記第1リフレクタ6の反射面は、前記光源5からの光(図中の実線矢印)を車両Cの前方から側方(左側の車両用灯具1Lの場合には左側方、右側の車両用灯具1Rの場合には右側方)にかけて反射させて図12に示す第1配光パターンP1を形成するものである。
【0023】
前記第1インナーレンズ8は、この例では、光透過性の合成樹脂からなる。前記第1インナーレンズ8は、背面側が開口した中空状のドーム形状をなす。すなわち、前記第1インナーレンズ8は、車両Cのデザイン上、プロジェクタタイプの車両用灯具の凸レンズ(集光レンズ、投影レンズ)の形状に似せて構成されている。前記第1インナーレンズ8の背面開口部が前記第1リフレクタ6の正面開口部に固定されている。
【0024】
前記インナーパネル10は、この例では、光不透過性の合成樹脂からなる。前記インナーパネル10は、前記ランプハウジング3の開口部と前記第1インナーレンズ8との間に配置されているものである。前記インナーパネル10は、前記ランプハウジング3の開口部と前記第1インナーレンズ8との間から前記灯室2内を覆い隠すものである。この結果、前記ランプレンズ4から前記灯室2内を見ても、前記インナーパネル10により前記灯室2内が覆い隠されているので、前記灯室内2のたとえば光軸調整機構やその他の装置など見えずに見栄えを向上させることができる。また、前記インナーパネル10は、車両Cのデザイン上、プロジェクタタイプの車両用灯具の凸レンズの周囲に配置されているフレームもしくはホルダの形状に似せて構成されている。この結果、前記灯室2内の前記インナーパネル10は、前記車両用灯具1L、1Rの後側から前側に前記ランプレンズ4の側方まで突出している。前記インナーパネル10は、前記ランプハウジング3に直接的にもしくは他の部品を介して間接的に固定されている。
【0025】
前記第1リフレクタ6および前記インナーパネル10のうち前記光源5のよりも上方の箇所には、開口部16および17がそれぞれ設けられている。
【0026】
前記第2リフレクタ7は、この例では、光不透過性の合成樹脂からなる。前記第2リフレクタ7は、図9〜図11に示すように、固定部18と反射部19とから構成されている。
【0027】
前記固定部18は、底面から見てH字形状をなしていて、前記第2インナーレンズ9と相互に仮固定されるものである。前記固定部18には、ボス部20が一体に設けられている。図6に示すように、前記ボス部20が前記インナーパネル10の固定凹部の底にスクリュー21で固定されることにより、前記第2リフレクタ7と前記第2インナーレンズ9とは、共締めにより、前記インナーパネル10に固定される。前記第2リフレクタ7と前記第2インナーレンズ9とは、前記第1リフレクタ6および前記インナーパネル10に対して前記光源5と反対側すなわち前記第1リフレクタ6および前記インナーパネル10の外側に、前記第1リフレクタ6の前記開口部16および前記インナーパネル10の前記開口部17に対応して配置されている。
【0028】
前記反射部19は、底面側と車両Cの外側の側面側とが開口していて、平面側が背面側から正面側にかけて傾斜している中空の四角筒形状をなす。前記反射面部19の内面には、アルミ蒸着や銀塗装などにより、反射面が設けられている。前記第2リフレクタ7の反射面は、前記第1リフレクタ6の前記開口部16および前記インナーパネル10の前記開口部17を通過した前記光源5からの光を車両Cの側方に反射させて図13に示す第2配光パターンP2を形成するものである。なお、前記第2リフレクタ7の反射面のうち図9〜図11中の斜線が施されている箇所の反射面が有効反射面21である。前記有効反射面21は、前記光源5からの光を車両Cの側方に有効に反射させる反射面である。
【0029】
前記第2インナーレンズ9は、この例では、光透過性の合成樹脂からなる。前記第2インナーレンズ9は、図9および図10に示すように、底面側が開口していて、平面側が背面側から正面側にかけて傾斜している中空の四角筒形状をなす。前記第2インナーレンズ9の背面側の壁には、切欠(スリット)22が底面側の開口部の縁から上方の途中まで設けられていて、また、小凸条23が前記切欠22の上方に左右に一体に設けられていて、さらに、2本の嵌合ピン24と2本の当接ピン25とが相互に対角線上に一体に設けられている。一方、前記第2インナーレンズ9の底面側の開口部の縁の正面側の左右には、小半球形状の2個の小凸部26が一体に設けられている。
【0030】
前記第2リフレクタ7のH字形状の前記固定部18の中壁を前記第2インナーレンズ9の前記切欠22中に挿入し、前記第2リフレクタ7のH字形状の前記固定部18の前後の両壁の間に前記第2インナーレンズ9の背面側の壁を挟み込む。このとき、前記第2インナーレンズ9の前記小凸条23が前記第2リフレクタ7のH字形状の前記固定部18の後側の壁に当接している。この結果、図10に示すように、前記第2リフレクタ7と前記第2インナーレンズ9とは、相互に仮固定される。前記第2リフレクタ7と前記第2インナーレンズ9とを相互に仮固定することにより、前記第2リフレクタ7と前記第2インナーレンズ9との相対位置精度が向上し、前記第2配光パターンP2の精度が向上し、また、前記第2リフレクタ7と前記第2インナーレンズ9とを前記インナーパネル10に本固定する際の作業性が向上する。
【0031】
図4〜図6に示すように、相互に仮固定されている前記第2リフレクタ7の前記ボス部20を前記インナーパネル10の前記インナーパネル10の固定凹部の底にスクリュー21で固定する。一方、相互に仮固定されている前記第2インナーレンズ9の2本の嵌合ピン24を前記インナーパネル10の嵌合孔27中に嵌合し、また、相互に仮固定されている前記第2インナーレンズ9の2本の当接ピン25を前記インナーパネル10の当接壁28に当接させ、さらに、相互に仮固定されている前記第2インナーレンズ9の2個の小凸部26を前記インナーパネル10の小凹部29に嵌合させる。これにより、相互に仮固定されている前記第2リフレクタ7と前記第2インナーレンズ9とは、前記インナーパネル10に本固定される。
【0032】
前記第2インナーレンズ9は、前記第1リフレクタ6の前記開口部16および前記インナーパネル10の前記開口部17および前記第2リフレクタ7を覆う。前記第2リフレクタ7の車両Cの外側の開口部と対応する前記第2インナーレンズ9の車両Cの外側の側面壁には、前記第2リフレクタ7からの反射光を車両Cの外側の側方に透過させる素通し部の透過部30が設けられている。また、前記第2インナーレンズ9の平面壁の内面(もしくは外面、あるいは、内外両面)には、前記第2インナーレンズ9の車両Cの内側の側面壁と前記第2リフレクタ7の車両Cの内側の側面壁との間に入射した前記光源5からの光を拡散させる拡散系プリズム部31が設けられている。なお、前記第2リフレクタ7の前記反射面部19の外面には、内面の反射面と同様に、アルミ蒸着や銀塗装などが施されている。この結果、前記第2リフレクタ7の前記反射面部19の外面と前記第2インナーレンズ9の平面壁の内面の前記拡散系プリズム部31との間において、前記光源5からの光が反射、拡散を繰り返し、そして、前記光源5からの光が前記第2インナーレンズ9の前記拡散系プリズム部31から外部に拡散出射する。なお、前記拡散系プリズム部31は、前記第2インナーレンズ9の車両Cの内側の側面壁の内面もしくは外面のうち少なくともいずれか一方にも設けても良い。
【0033】
前記光源5からの光が入射する前記第2インナーレンズ9の車両Cの内側の側面壁と前記第2リフレクタ7の車両Cの内側の側面壁との間の間口部の一部、すなわち、前記有効反射面21に対応する後側の部分には、間口が広い間口部32が設けられている。
【0034】
この実施例にかかる車両用灯具1L、1Rは、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0035】
まず、左側の車両用灯具1Lの光源5を点灯する。すると、光源5から放射された光の一部は、第1リフレクタ6の反射面で、車両Cの前方から側方にかけて反射されて、かつ、ランプレンズ4を透過して、図12に示す第1配光パターンP1として、車両Cの前方から側方にかけて照射される。
【0036】
また、光源5からの放射された光の残りの一部は、第1リフレクタ6の開口部16およびインナーパネル10の開口部17を通過して、第2リフレクタ7の反射部19の反射面および有効反射面21で、車両Cの側方に反射されて、かつ、第2インナーレンズ9の透過部30およびランプレンズ4を透過して、図13に示す第2配光パターンP2として、車両Cの側方に照射される。
【0037】
図12に示す第1配光パターンP1と図13に示す第2配光パターンP2とが重畳されて、図14に示す第3配光パターンP3、すなわち、車両Cの前方から側方にかけての広い範囲に亘る第3配光パターンP3が得られる。
【0038】
ここで、左側の車両用灯具1Lで得られる第1配光パターンP1は、図12に示すように、左側60°から右側50°の範囲である。ところが、左側の車両用灯具1Lにおける視認角範囲は、図12中の太い実線で示すように、左側80°から右側45°の範囲である。このために、視認角範囲の右側の範囲は、満足するが、視認角範囲の左側の範囲は、左側80°から左側60°の範囲において光が抜けていることとなる。
【0039】
そこで、図13に示す第2配光パターンP2を補充するものである。左側の車両用灯具1Lで得られる第2配光パターンP2は、図13に示すように、左側90°から左側50°の範囲である。この結果、図12に示す第1配光パターンP1と図13に示す第2配光パターンP2とが重畳されて得られる第3配光パターンP3は、図14に示すように、左側90°から右側50°の範囲である。これにより、左側の車両用灯具1Lで得られる第3配光パターンP3は、左側の車両用灯具1Lにおける視認角範囲すなわち左側80°から右側45°の範囲を十分に満足することができる。
【0040】
一方、第1リフレクタ6の開口部16およびインナーパネル10の開口部17を通過した光源5からの光の一部は、図7および図8に示すように、第2インナーレンズ9の車両Cの内側の側面壁と第2リフレクタ7の車両Cの内側の側面壁との間の間口部(一部間口が広い間口部32も含む)から第2リフレクタ7と第2インナーレンズ9との間に入射する。この第2リフレクタ7と第2インナーレンズ9との間に入射した光は、第2リフレクタ7と第2インナーレンズ9の拡散系プリズム部31との間において反射、拡散を繰り返して、第2インナーレンズ9の拡散系プリズム部31から拡散してランプレンズ4を透過して外部に出射する。この結果、第2インナーレンズ9のうち主に拡散系プリズム部31が発光する。また、第2リフレクタ7の反射部19からの反射光が第2インナーレンズ9の透過部30およびランプレンズ4を透過して外部に出射する。この結果、第2インナーレンズ9のうち主に透過部30が発光する。この第2インナーレンズ9の拡散系プリズム部31の発光と、第2インナーレンズ9の透過部30の発光とにより、発光面積が広くなる。このために、見栄えがさらに向上し、また、被視認性がさらに向上して交通安全に貢献することができる。
【0041】
この実施例にかかる車両用灯具1L、1Rは、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0042】
この実施例にかかる車両用灯具1L、1Rは、車両Cのデザイン上、ランプレンズ4の車両の前方から側方にかけての回り込み部14の傾斜角度θ1、θ2が大となったり、あるいは、灯室2内の第1リフレクタ6やインナーパネル10などの部品が車両Cの後側から前側にランプレンズ4の側方まで突出したりしたとしても、光源5からの光が第1リフレクタ6の開口部16およびインナーパネル10の開口部17を通過して第2リフレクタ7で車両Cの側方に反射される。これにより、この実施例にかかる車両用灯具1L、1Rは、第2リフレクタ7からの反射光のランプレンズ4の側方における入射角が臨界角を超えるようなことがなく、また、第2リフレクタ7からの反射光が車両Cの後側から前側にランプレンズ4の側方まで突出した第1リフレクタ6およびインナーパネル10などの部品により遮られるようなことがないので、光源5からの光を車両Cの側方に確実に照射することができる。
【0043】
また、この実施例にかかる車両用灯具1L、1Rは、第1リフレクタ6の開口部16およびインナーパネル10の開口部17および第2リフレクタ7が光源5に対して上方に配置されている。このために、この実施例にかかる車両用灯具1L、1Rは、光源5からの光が下方から上方に第1リフレクタ6の開口部16およびインナーパネル10の開口部17を通過して第2リフレクタ7で反射し、その第2リフレクタ7からの反射光が上方から下方の路面などに確実にかつ簡単な配光設計や簡単な光源5および第1リフレクタ6の開口部16およびインナーパネル10の開口部17および第2リフレクタ7のレイアウト設計で照射することができる。
【0044】
さらに、この実施例にかかる車両用灯具1L、1Rは、第2インナーレンズ9で第1リフレクタ6の開口部16およびインナーパネル10の開口部17および第2リフレクタ7を覆うので、第1リフレクタ6の開口部16およびインナーパネル10の開口部17および第2リフレクタ7が第2インナーレンズ9で隠されて見えなくなり、その分、見栄えが向上する。しかも、この実施例にかかる車両用灯具1L、1Rは、第2インナーレンズ9の透過部30により、第1リフレクタ6の開口部16およびインナーパネル10の開口部17および第2リフレクタ7を第2インナーレンズ9で覆っても、第2リフレクタ7の反射部19からの反射光が第2インナーレンズ9の透過部30を透過するので、第2リフレクタ7の反射部19からの反射光が車両Cの側方に照射する際に、第2インナーレンズ9が妨げとなるようなことがない。その上、この実施例にかかる車両用灯具1L、1Rは、第2インナーレンズ9の拡散系プリズム部31により、第2インナーレンズ9と第2リフレクタ7との間に入射した光源5からの光を拡散させることができるので、第2インナーレンズ9における発光面積を広げることができ、その分、見栄えが向上し、また、被視認性が向上して交通安全に貢献することができる。かつ、この実施例にかかる車両用灯具1L、1Rは、第2インナーレンズ9の拡散系プリズム部31により、車両Cの側方配光と見栄え向上という効果を同時に満たすことができる。
【0045】
さらにまた、この実施例にかかる車両用灯具1L、1Rは、光源5からの光が入射する第2インナーレンズ9と第2リフレクタ7との間の間口部の一部に間口が広い間口部32を設けたものである。この結果、この実施例にかかる車両用灯具1L、1Rは、第2インナーレンズ9と第2リフレクタ7との間に入射する光源5からの光の量(光束)を増やすことができ、その分、第2インナーレンズ9における発光が明るく(強く)なり、見栄えがさらに向上し、また、被視認性がさらに向上して交通安全に貢献することができる。
【0046】
特に、この実施例にかかる車両用灯具1L、1Rは、第1インナーレンズ8を、車両Cのデザイン上、プロジェクタタイプの車両用灯具の凸レンズ(集光レンズ、投影レンズ)の形状に似せて構成し、また、インナーパネル10を、車両Cのデザイン上、プロジェクタタイプの車両用灯具の凸レンズの周囲に配置されているフレームもしくはホルダの形状に似せて構成している。この結果、この実施例にかかる車両用灯具1L、1Rは、フロントターンシグナルランプ1Fは、恰も、プロジェクタタイプの車両用灯具のように見せかけることができ、その分、車両Cのデザインの範囲が広がり、購買意欲を向上させることができる。
【0047】
以下、上記の実施例以外の例について説明する。前記の実施例においては、ヘッドランプやフロントコンビネーションランプなどのフロントターンシグナルランプ1Fについて説明するものである。ところが、この発明においては、ヘッドランプやフロントコンビネーションランプなどのフロントターンシグナルランプ1F以外のランプ、たとえば、ヘッドランプやフロントコンビネーションランプなどのフロントクリアランスランプ、リヤコンビネーションランプのリアターンシグナルランプ、リアクリアランスランプなどであっても良い。リヤコンビネーションランプのリアターンシグナルランプ、リアクリアランスランプなどの場合においては、光源5からの光を第1リフレクタで車両Cの後方から側方にかけて反射させて第1配光パターンを形成するものである。
【0048】
また、前記の実施例においては、灯室2内には、第1インナーレンズ8および第2インナーレンズ9およびインナーパネル10が配置されているものである。ところが、この発明においては、第1インナーレンズ8および第2インナーレンズ9およびインナーパネル10を設けなくても良い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】この発明にかかる車両用灯具の実施例を示す車両の前部の平面図である。
【図2】同じく、図1におけるII矢視図であって、車両の前部を示す側面図である。
【図3】同じく、図1におけるIII矢視図であって、車両の前部を示す正面図である。
【図4】同じく、図3におけるIV−IV線断面図である。
【図5】同じく、要部の拡大断面図である。
【図6】同じく、要部の拡大断面図である。
【図7】同じく、図6、図10、図11におけるVII−VII線断面図である。
【図8】同じく、図5、図10、図11におけるVIII−VIII線断面図である。
【図9】同じく、第2リフレクタと第2インナーレンズとを示す分解斜視図である。
【図10】同じく、第2リフレクタと第2インナーレンズと組み付けた状態を示す斜視図である。
【図11】同じく、第2リフレクタを示す側面図である。
【図12】同じく、第1リフレクタの反射面で得られる第1配光パターンを示す説明図である。
【図13】同じく、第2リフレクタの反射面で得られる第2配光パターンを示す説明図である。
【図14】同じく、第1リフレクタの反射面で得られる第1配光パターンと第2リフレクタの反射面で得られる第2配光パターンとを重畳して得られる第3配光パターンを示す説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1L、1R 車両用灯具(ヘッドランプ、フロントコンビネーションランプ)
1F フロントターンシグナルランプ
1H ヘッドランプ
1B バンパー
2 灯室
3 ランプハウジング
4 ランプレンズ
5 光源
6 第1リフレクタ
7 第2リフレクタ
8 第1インナーレンズ
9 第2インナーレンズ
10 インナーパネル
11 ランプハウジングの開口部の縁部
12 ランプレンズの開口部の縁部
13 シール部材
14 回り込み部
15 ソケット
16 第1リフレクタの開口部
17 インナーパネルの開口部
18 固定部
19 反射部
20 ボス部
21 有効反射面
22 切欠(スリット)
23 小凸条
24 嵌合ピン
25 当接ピン
26 小凸部
27 嵌合孔
28 当接壁
29 小凹部
30 透過部
31 拡散系プリズム部(拡散部)
32 間口が広い間口部
33 スクリュー
C 車両
F 前
B 後
U 上
D 下
L 左
R 右
HL−HR スクリーンの左右の水平線
VU−VD スクリーンの上下の垂直線
θ1 キャンバー角度
θ2 スラント角度
P1 第1配光パターン
P2 第2配光パターン
P3 第3配光パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方および側方にあるいは後方および側方に光を照射する車両用灯具において、
灯室を区画するランプハウジングおよびランプレンズと、
前記灯室内にそれぞれ配置されている光源および第1リフレクタおよび第2リフレクタと、
を備え、
前記ランプレンズは、車両の前方から側方にかけてあるいは後方から側方にかけて回り込み部を有し、
前記第1リフレクタは、前記光源からの光を車両の前方から側方にかけてあるいは後方から側方にかけて反射させて第1配光パターンを形成し、
前記第1リフレクタには、開口部が設けられていて、
前記第2リフレクタは、前記第1リフレクタに対して前記光源と反対側に前記開口部に対応して配置されていて、前記開口部を通過した前記光源からの光を車両の側方に反射させて第2配光パターンを形成する、
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記開口部および前記第2リフレクタは、前記光源に対して上方に配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記灯室内には、前記開口部および前記第2リフレクタを覆うインナーレンズが配置されていて、
前記インナーレンズには、前記第2リフレクタからの反射光を車両の側方に透過させる透過部と、前記インナーレンズと前記第2リフレクタとの間に入射した前記光源からの光を拡散させる拡散系プリズム部とが設けられている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記光源からの光が入射する前記インナーレンズと前記第2リフレクタとの間の間口部の一部には、間口が広い間口部が設けられている、
ことを特徴とする請求項3に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−283323(P2009−283323A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134806(P2008−134806)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】