車両用灯具
【課題】水平線よりも上に幻惑光が現れない(又はほとんど現れない)、シリンドリカルレンズ部を含む投影レンズ及び導光板を用いた車両用灯具を提供する。
【解決手段】導光板、光源及び投影レンズを備えた車両用灯具において、前記投影レンズは、前記導光板の第1出射面及び第2出射面上に形成された輝度分布を反転、拡大投影し、所定配光パターンを形成するためのレンズであって、少なくともシリンドリカルレンズ部を含んでおり、さらに、前記導光板と前記投影レンズとの間に配置され、前記導光板から照射された前記光源からの光線のうち、前記シリンドリカルレンズ部の光軸よりも下側半分へ向かう光線を前記導光板に向けて反射するための複数の反射面を備えることを特徴とする。
【解決手段】導光板、光源及び投影レンズを備えた車両用灯具において、前記投影レンズは、前記導光板の第1出射面及び第2出射面上に形成された輝度分布を反転、拡大投影し、所定配光パターンを形成するためのレンズであって、少なくともシリンドリカルレンズ部を含んでおり、さらに、前記導光板と前記投影レンズとの間に配置され、前記導光板から照射された前記光源からの光線のうち、前記シリンドリカルレンズ部の光軸よりも下側半分へ向かう光線を前記導光板に向けて反射するための複数の反射面を備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光板を用いた車両用灯具に係り、特に水平線よりも上に幻惑光が現れない(又はほとんど現れない)、シリンドリカルレンズ部を含む投影レンズ及び導光板を用いた車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的なプロジェクタ型ヘッドランプに用いられているリフレクタに代え、導光板を用いた車両用灯具が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図19は、特許文献1に記載の車両用灯具200を説明するための図である。
【0004】
図19(a)に示すように、特許文献1に記載の車両用灯具200は、導光板210、光源220及び投影レンズ230を備えている。導光板210の投影レンズ230とは反対側の裏面211には、輝度制御要素(図示せず)が形成されており、導光板210の投影レンズ230側には、出射面212が形成されている。
【0005】
特許文献1に記載の車両用灯具においては、導光板210内部に入射して導光され、輝度制御要素に到達した光源220からの光線は当該輝度制御要素によって出射面212に向けて反射され、出射面212を透過し、これにより、出射面212のほぼ全域にわたって、図19(b)示すような輝度分布が形成される。この輝度分布は、投影レンズ230によって反転、拡大投影され、これにより、所定配光パターンが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−140729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の車両用灯具200においては、投影レンズ230としてシリンドリカルレンズ部を含む投影レンズを採用した場合、当該車両用灯具200よって形成される配光パターンには、例えば、図11に示すような水平線Hよりも上に幻惑光P1(グレアー光とも称される)が現れるという問題がある。
【0008】
また、特許文献1に記載の車両用灯具200においては、図19(a)に示すように、導光板210は平板形状の導光板であり、光源220はその導光板210の端面に対向した状態で配置されている関係上、出射面212上の水平線に対応するラインL近傍に光源220からの光線を集めることができないため、特許文献1で光源220として想定されているLED光源の現状の明るさでは、ヘッドランプに要求される最大光度を含む配光パターンに対応する高輝度部分を含む輝度分布を形成することができないという問題がある。
【0009】
さらに、特許文献1には、導光板210を傾斜させた状態で配置した例が開示されているが、導光板210は平板形状の導光板であるため、車両用灯具200の奥行き寸法をそれ以上短くすることができないという問題もある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、水平線よりも上に幻惑光が現れない(又はほとんど現れない)、シリンドリカルレンズ部を含む投影レンズ及び導光板を用いた車両用灯具を提供することを第1の課題とする。
【0011】
また、ヘッドランプに要求される最大光度を含む配光パターンを形成することが可能な、導光板を用いた車両用灯具を提供することを第2の課題とする。また、車両用灯具の奥行き寸法を従来以上に短くすることが可能な、導光板を用いた車両用灯具を提供することを第3の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、可視光領域で透明な材料からなる導光板、光源及び投影レンズを備えた車両用灯具において、前記導光板は、基端部、前記基端部に対し、前記投影レンズの焦点近傍において前記投影レンズ側に折り曲げられた導光板本体、及び、反射面を含んでおり、前記基端部は、入射面、第1出射面及びその反対側の第1裏面を含んでおり、前記導光板本体は、第2出射面、その反対側の第2裏面、及び、プリズム面を含んでおり、前記入射面は、前記光源から照射される光線を前記導光板内部に入射させるための入光面であり、前記第1出射面及び第2出射面は、前記投影レンズ側に形成されており、前記第1裏面及び第2裏面は、前記投影レンズとは反対側に形成されており、前記反射面は、前記第1裏面と第2裏面の間、又は、前記第1裏面に形成されており、前記プリズム面は、前記入射面から前記導光板内部に入射して導光され、当該プリズム面に到達した前記光源からの光線を、前記第1出射面及び第2出射面に対する入射角が臨界角内となるように当該第1出射面及び第2出射面に向けて反射し、当該第1出射面及び第2出射面上に輝度分布を形成するためのレンズカット面であり、前記反射面は、前記入射面から前記導光板内部に入射して導光され、当該反射面に到達した前記光源からの光線を、前記第1出射面及び第2出射面に対する入射角が臨界角内となるように前記投影レンズの焦点近傍に向けて反射し、前記第1出射面及び第2出射面上に周囲の輝度よりも高い高輝度部分を形成するための反射面であり、前記投影レンズは、前記第1出射面及び第2出射面上に形成された輝度分布を反転、拡大投影し、所定配光パターンを形成するためのレンズであって、少なくともシリンドリカルレンズ部を含んでおり、さらに、前記導光板と前記投影レンズとの間に配置され、前記導光板から照射された前記光源からの光線のうち、前記シリンドリカルレンズ部の光軸よりも下側半分へ向かう光線を前記導光板に向けて反射するための複数の反射面を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、複数の反射面を導光板ユニットと投影レンズとの間に配置したことにより、第1出射面及び第2出射面から照射され、左右方向に広がる光線は、シリンドリカルレンズ部の光軸よりも下側半分へ入射することなく、複数の反射面に到達し、当該複数の反射面によって導光板に向けて反射される。このため、当該左右方向に広がる光線がシリンドリカルレンズ部の光軸よりも下側半分に入射するのを防止することが可能となる。このため、当該左右方向に広がる光線がシリンドリカルレンズ部の光軸よりも下側半分へ入射することに起因する幻惑光を防止することが可能となる。すなわち、請求項1に記載の発明によれば、水平線よりも上に幻惑光が現れず、ヘッドランプに適した配光パターンを得ることが可能な車両用灯具を提供することが可能となる。
【0014】
また、請求項1に記載の発明によれば、複数の反射面を導光板ユニットと投影レンズとの間に配置したことにより、複数の反射面によって導光板に向けて反射された光線は、導光板本体内部に入射し、第2裏面等によって投影レンズに向けて反射され、投影レンズによって反転、拡大投影される配光パターンの一部を形成する。すなわち、請求項1に記載の発明によれば、左右方向に広がる光線等の再利用が可能となる。
【0015】
また、請求項1に記載の発明によれば、導光板本体は、基端部に対し、投影レンズの焦点近傍において投影レンズ側に折り曲げられており、第1裏面と第2裏面の間(又は、第1裏面)には、反射面が形成されている。このため、入射面から導光板内部に入射して導光され、当該反射面に到達した光源からの光線は、当該反射面によって第1出射面及び第2出射面に対する入射角が臨界角内となるように投影レンズの焦点近傍に向けて反射され、第1出射面及び第2出射面から出射する。これにより、第1出射面及び第2出射面上に周囲の輝度よりも高い高輝度部分を含む輝度分布(ヘッドランプに要求される最大光度を含む配光パターンに対応する高輝度部分を含む輝度分布)が形成される。この高輝度部分を含む輝度分布は投影レンズによって反転、拡大投影される。これにより、ヘッドランプに要求される最大光度を含む配光パターンを形成することが可能となる。
【0016】
また、請求項1に記載の発明によれば、導光板本体は、基端部に対し、投影レンズの焦点近傍において投影レンズ側に折り曲げられている。このため、導光板本体の光軸方向の寸法を短くすることが可能となる。このため、車両用灯具の奥行き寸法を従来以上に短くすることが可能となる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記複数の反射面はそれぞれ、当該反射面に到達した前記シリンドリカルレンズ部の光軸よりも下側半分へ向かう光線を、当該反射面直上の導光板に向けて反射するように、傾斜した姿勢で配置されていることを特徴とする。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、複数の反射面はそれぞれ、当該反射面に到達した前記シリンドリカルレンズ部の光軸よりも下側半分へ向かう光線を、当該反射面直上の導光板に向けて反射するように、傾斜した姿勢で配置されている。このため、シリンドリカルレンズ部の光軸よりも下側半分へ向かう光線を、複数の反射面によってそれぞれの直上の導光板へ効率よく(無駄なく)入射させることが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、水平線よりも上に幻惑光が現れない(又はほとんど現れない)、シリンドリカルレンズ部を含む投影レンズ及び導光板を用いた車両用灯具を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は、本発明の実施形態である車両用灯具の上面図、(b)は、本発明の実施形態である車両用灯具の正面図、(c)は、本発明の実施形態である車両用灯具の側面図である。
【図2】(a)は、本発明の実施形態である車両用灯具に用いられる導光板ユニットの上面図、(b)は、本発明の実施形態である車両用灯具に用いられる導光板ユニットの正面図、(c)は、本発明の実施形態である車両用灯具に用いられる導光板ユニットの側面図である。
【図3】本発明の実施形態である車両用灯具の側面図である。
【図4】導光板本体11b(プリズム面11b3)を説明するための断面図である。
【図5】導光板本体11bの第2出射面11b1から照射される光束のプリズム角αごとの指向特性(上下方向)を表すグラフである。
【図6】導光板本体11bを、基端部11aに対し、投影レンズ20の焦点F3近傍において投影レンズ20側に約45°傾斜した姿勢で配置した例である。
【図7】反射面11c(楕円系反射面)を説明するための断面図である。
【図8】光源12の虚像F0を説明するための図である。
【図9】導光板本体11bに導光された各光源12からの光線の水平方向の動きについて説明するための図である。
【図10】第1及び第2出射面11a2、11b1の鉛直断面の光束発散度カーブ(シミュレーション値)、及び、従来の一般的なプロジェクタ型ヘッドランプの実測光度分布(実測値)をプロットしたグラフである。
【図11】実施形態の車両用灯具100(主シェードおよび複数の反射面無し)によって形成される配光パターンの例である。
【図12】シリンドリカルレンズ部21aの下側半分に入る光線の角度分布を説明するためのグラフである。
【図13】実施形態の複数の反射面30a〜30eを用いた車両用灯具100の側面図である。
【図14】実施形態の複数の反射面30a〜30eを用いた車両用灯具100の斜視図である。
【図15】(a)は、実施形態の複数の反射面30a〜30eを用いた車両用灯具100の上面図、(b)は、実施形態の複数の反射面30a〜30eを用いた車両用灯具100の正面図、(c)は、実施形態の複数の反射面30a〜30eを用いた車両用灯具100の側面図、(d)は、実施形態の複数の反射面30a〜30eを用いた車両用灯具100の底面図である。
【図16】焦点ラインFLについて説明するための図である。
【図17】実施形態の複数の反射面30a〜30eを用いた車両用灯具100により形成される配光パターンの例である。
【図18】実施形態の複数の反射面30a〜30eを用いた車両用灯具100の変形例である。
【図19】従来の導光板を用いた車両用灯具を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態である車両用灯具について図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1(a)は、本発明の実施形態である車両用灯具の上面図、図1(b)は、本発明の実施形態である車両用灯具の正面図、図1(c)は、本発明の実施形態である車両用灯具の側面図である。図2(a)は、本発明の実施形態である車両用灯具に用いられる導光板ユニットの上面図、図1(b)は、本発明の実施形態である車両用灯具に用いられる導光板ユニットの正面図、図1(c)は、本発明の実施形態である車両用灯具に用いられる導光板ユニットの側面図である。図3は、本発明の実施形態である車両用灯具の側面図である。
【0023】
本実施形態の車両用灯具100は、ヘッドランプやフォグランプに適用されるものであり、図1〜図3に示すように、導光板ユニット10、投影レンズ20などを備えている。本実施形態の車両用灯具100においては、導光板ユニット10(導光板11)の投影レンズ20側の面(第1及び第2出射面11a2、11b1)に形成される輝度分布(光束発散度分布)が、投影レンズ20によって反転、拡大投影されることで、所定配光パターンが形成されるようになっている。以下、本実施形態の車両用灯具100をいわゆるプロジェクタ型のヘッドランプに適用した例について具体的に説明する。
【0024】
まず、導光板ユニット10について説明する。
【0025】
導光板ユニット10は、図2、図3に示すように、導光板11、複数の光源12、反射シート13、14などを備えている。
【0026】
導光板11は、図3に示すように、基端部11a、基端部11aに対し、投影レンズ20の焦点F3近傍において投影レンズ20側に折り曲げられた導光板本体11b、反射面11cを含んでおり、可視光領域で透明な材料(アクリルやポリカーボネイトなどの透明又は半透明樹脂など)を射出成型することにより一体的に形成されている。このように、導光板本体11bは、基端部11aに対し、投影レンズ20の焦点F3近傍において投影レンズ20側に折り曲げられているため、導光板本体の光軸方向の寸法を短くすることが可能となる。このため、車両用灯具100の奥行き寸法を従来以上に短くすることが可能となる。
【0027】
基端部11aは、入射面11a1、第1出射面11a2、その反対側の第1裏面11a3などを含んでいる。
【0028】
入射面11a1は、光源12からの照射光(光線又は光束ともいう)を導光板11内部に入射させるための入光面であり、例えば、図3に示す断面形状11a1が長手方向(図3中紙面に直交する方向。図2(a)中左右方向)に延びる水平面として、基端部11aの下端に形成されている。
【0029】
第1出射面11a2は、例えば、図3に示す断面形状11a2が長手方向(図3中紙面に直交する方向。図2(a)中左右方向)に延びる鉛直面として、基端部11aの投影レンズ20側に形成されている。第1裏面11a3は、例えば、図3に示す断面形状11a3が長手方向(図3中紙面に直交する方向。図2(a)中左右方向)に延びる鉛直面として、基端部11aの投影レンズ20とは反対側に形成されている。図2、図3に示すように、第1出射面11a2の一部は、表側反射シート13で覆われており、第1裏面11a3は、裏側反射シート14で覆われている。
【0030】
入射面11a1には、図2、図3、図9に示すように、複数の光源12(図9中、12a〜12dで示す)が光軸を上に向け、発光面12aを導光板11の入射面11a1に面接触させた状態で長手方向に沿って配置されており、例えば、透明樹脂などで当該入射面11a1に固定されている。
【0031】
光源12は、例えば、白色(又はRGB三色)の一つ(又は複数)のLEDチップをパッケージ化したLEDパッケージなどのLED光源(又は、冷陰極蛍光ランプ(CCFL))である。
【0032】
本実施形態では、max光度を得るため、図9に示すように、投影レンズ20の一方の回転軸AX(光軸)を含む鉛直断面上及び他方の回転軸AX(光軸)を含む鉛直断面上に、それぞれ光源12a、12bが配置されている。また、拡散された配光パターンを形成するため、一方の回転軸AX及び他方の回転軸AXから内側にシフトした位置に光源12c、12dが配置されている。
【0033】
導光板本体11bは、図3に示すように、第2出射面11b1、その反対側の第2裏面11b2、複数のプリズム面11b3(鋸歯形状のプリズムアレイ)などを含む平板形状の導光板であり、基端部11aに対し、投影レンズ20の焦点F3近傍において投影レンズ20側に傾斜した姿勢で配置されている。なお、導光板本体11bに入射した光線を全て出射させるため、図3に示すように、導光板本体11bの断面形状は、先端に近づくにつれて先細りの形状となっている。
【0034】
第2出射面11b1は、図3に示す断面形状11b1が長手方向(図3中紙面に直交する方向。図2(a)中左右方向)に延びる傾斜面として、導光板本体11bの投影レンズ20側に形成されている。第2裏面11b2は、図3に示す断面形状11b2が長手方向(図3中紙面に直交する方向。図2(a)中左右方向)に延びる傾斜面として、導光板本体11bの投影レンズ20とは反対側に形成されている。
【0035】
複数のプリズム面11b3は、図4に示すように、入射面11a1から導光板11内部に入射して導光され、当該複数のプリズム面11b3に到達した光源12からの光線を、第1及び第2出射面11a2、11b1に対する入射角が臨界角内となるように当該第1及び第2出射面11a2、11b1に向けて反射し、当該第1及び第2出射面11a2、11b1上に輝度分布を形成するためのレンズカット面である。複数のプリズム面11b3は、例えば、図4に示す断面形状11b3が長手方向(図4中紙面に直交する方向。図2(a)中左右方向)に延びる平面形状のレンズカット面として、第2裏面11b2に上下方向に並列に形成されている。
【0036】
次に、プリズム面11b3の作用について説明する。
【0037】
導光板本体11bに導光された各光源12からの光線は、図4に示すように、各プリズム面11b3と第2出射面11b1で全反射を繰り返す。この光線の第2出射面11b1に対する入射角は、各プリズム面11b3で全反射されるごとに小さくなる。このため、導光板本体11bに導光された各光源12からの光線は、やがて入射角が臨界角内に達し、その時点で第1及び第2出射面11a2、11b1から出射される。これにより、第1及び第2出射面11a2、11b1のほぼ全域にわたって、輝度分布(光束発散度分布)が形成される。
【0038】
第1及び第2出射面11a2、11b1から出射される光線量は、プリズム面11b3のプリズム角α(頂角。図4参照)が大きくなるにつれて増加する。図5は、このことを表している。このため、プリズム面11b3のプリズム角αを調整することで、第1及び第2出射面11a2、11b1のほぼ全域にわたってヘッドランプに適した輝度分布(光束発散度分布)を形成することが可能となる。例えば、反射面11cから離れるにつれ、プリズム角αを徐々に変化させることで、高輝度から低輝度に自然に変化する輝度分布を形成することが可能となる。また、プリズム面11b3のプリズム角αを調整することで、第1及び第2出射面11a2、11b1のほぼ全域にわたってヘッドランプ以外の例えばフォグランプに適した輝度分布(光束発散度分布)を形成することも可能となる。
【0039】
次に、導光板本体11bを基端部11aに対して傾斜させた技術的意義について説明する。
【0040】
図5は、導光板本体11bの第2出射面11b1から照射される光束のプリズム角αごとの指向特性(上下方向)を表すグラフであり、プリズム角α(=微小、小、中、やや大、大、非常に大)ごとに指向特性が異なることを表している。
【0041】
本実施形態においては、投影レンズ20に入射する光線量を最大にするため、最大光度が他のプリズム角と比べて高いプリズム角α=「やや大」のプリズム11dを採用するとともに、図3、図6に示すように、導光板本体11bは、基端部11aに対し、投影レンズ20の焦点F3近傍において投影レンズ20側に約45°傾斜した姿勢で配置されている。
【0042】
次に、反射面11cの技術的意義について説明する。
【0043】
反射面11cは、図3などに示すように、第2裏面11b2と第1裏面11a3の間に形成されている。
【0044】
反射面11cは、図7に示すように、入射面11a1から導光板11内部に入射して導光され、当該反射面11cに到達した光源12からの光線を、第1及び第2出射面11a2、11b1に対する入射角が臨界角内となるように投影レンズ20の焦点F3近傍に向けて反射し、第1及び第2出射面11a2、11b1上に周囲の輝度よりも高い高輝度部分を形成するための反射面である。反射面11cは、max光度を得るため、例えば、光源12の光軸を含む所定範囲に形成されている。反射面11cは、例えば、第1焦点F1が光源12近傍(例えば、図8に示す光源12の虚像F0の中心近傍)に設定され、第2焦点F2が投影レンズ20の焦点F3近傍に設定された楕円系反射面として形成されている(図3、図7参照)。
【0045】
図8に示すように、光源12(発光面12a)から照射された光線は、入射面11a1で内側に屈折する。この屈折した光線は、図8に示す虚像F0から照射されたとみなせる。第1焦点F1は、この光源12の虚像F0の中心近傍に設定されている。このように、第1焦点F1を虚像F0の中心近傍に設定することで、第2焦点F2への集光性が上がり、F2付近の出射面がより高輝度になるため、高い最大光度が得られ、ヘッドランプに適した配光パターンを形成することが可能となる。なお、虚像F0の位置、大きさ及びピントの合い具合は入射面11a1の形状及び第2出射面11b1の大きさなどから決まる。発光面12aが平面の場合、比較的ぼやけた像となる。
【0046】
図7に示すように、導光板11内部に入射して導光され、反射面11cに到達した光源12からの光線は、当該反射面11cで第1及び第2出射面11a2、11b1に向けて反射され、当該第1及び第2出射面11a2、11b1を透過し、投影レンズ20の焦点F3近傍(第2焦点F2)に集光する。これにより、第1及び第2出射面11a2、11b1に周囲の輝度よりも高い高輝度部分が形成される。
【0047】
例えば、図3、図7に示すように、第2焦点F2を投影レンズ20の焦点F3に対してやや上側(例えば上側1mmの位置)に設定した場合には、第1及び第2出射面11a2、11b1の水平線に対応するラインLよりも上側約1°の部分に、周囲の輝度よりも高い高輝度部分が形成される(図10参照)。この高輝度部分を含む輝度分布(光束発散度分布)は、投影レンズ20によって反転、拡大投影される。これにより、水平線よりも下側部分(例えば下側約1°に対応する範囲)の光度が周囲の光度よりも高いすれ違いビームに適した配光パターンが形成される。
【0048】
また、例えば、第2焦点F2を投影レンズ20の焦点F3に設定した場合には、第1及び第2出射面11a2、11b1の水平線と鉛直線の交点に対応する部分に、周囲の輝度よりも高い高輝度部分が形成される。この高輝度部分を含む輝度分布(光束発散度分布)は、投影レンズ20によって反転、拡大投影される。これにより、水平線と鉛直線の交点近傍の光度が周囲の光度よりも高い走行ビームに適した配光パターンが形成される。なお、走行ビームに適した配光パターンを形成する場合、表側反射シート13を省略するのが好ましい。
【0049】
表側反射シート13は、第1出射面11a2から外部に透過した光源12からの光線を反射し、再び導光板11に入射させるための反射シートであり、図2、図3に示すように、第1出射面11a2の水平線に対応するラインLよりも下側を覆っている。裏側反射シート14は、第1裏面11a3及び第2裏面11b2から外部に透過した光源12からの光線を反射し、再び導光板本体11bに入射させるための反射シートであり、第1裏面11a3及び第2裏面11b2を覆っている。このため、第1裏面11a3及び第2裏面11b2などから外部に透過した光源12からの光線は、各反射シート13、14によって再び導光板11内部に戻されるため、光利用効率を向上させることが可能となる。各反射シート13、14は、例えば、銀、アルミなどの金属蒸着シート、発砲樹脂シートなどの高反射率シートである。なお、各反射シート13、14は、各面11a3などに対して平行に配置するのが好ましい。
【0050】
表側反射シート13は、図2、図3に示すように、第1及び第2出射面11b1、11a2から投影レンズ20に向けて照射される光線の一部を遮蔽し、カットオフラインを形成するシェードの役割を兼ねている。表側反射シート13にシェードの役割を持たせるため、当該表側反射シート13の上端縁13aは、図2(b)に示すように、水平線に対応するラインLに沿って水平方向に伸びており、投影レンズ20の焦点F3近傍にZ型の段差部が形成されている。このように、第1出射面11a2は、水平線に対応するラインLに沿って伸びる上端縁13aを有する表側反射シート13で覆われているため、すれ違いビームに適した明瞭なカットオフラインを有する配光パターンを形成することが可能となる。
【0051】
なお、図1などに示すように、回転軸(光軸)が二つの投影レンズ20においては、左側通行の場合、車両前方からみて左側の回転軸AX(光軸)に対応する箇所のみをZ型の段差部に形成すればよい(図2(b)参照)。このようにすれば、図2(b)に示す導光板11上の水平線に対応するラインL近傍から照射される光線は投影レンズ20に入射しないため、当該光線が反対車線の水平線から上方に照射されることを防止することが可能となる。
【0052】
次に、投影レンズ20について説明する。
【0053】
投影レンズ20は、第1及び第2出射面11a2、11b1上に形成された輝度分布を反転、拡大投影し、所定配光パターンを形成するためのレンズであり、例えば、図1に示すように、出射面21及びその反対側の入射面22を含む長手方向(図1(a)中左右方向)に延びる中実のレンズ体である。投影レンズ20は、可視光領域で透明な樹脂(例えば、アクリルやポリカーボネイトなどの透明又は半透明材料)を射出成型することにより又はガラスにより一体的に形成されている。
【0054】
出射面21は、シリンドリカルレンズ面21a、右レンズ面21b及び左レンズ面21cを含むレンズ面であり、入射面22は、平面として形成されている。以下シリンドリカルレンズ面21aとその反対側の入射面22との間のレンズ部を、シリンドリカルレンズ部21aと称することがある。また、右レンズ面21b(左レンズ面21c)とその反対側の入射面22との間のレンズ部を、右レンズ部21b(左レンズ部21c)と称することがある。
【0055】
シリンドリカルレンズ面21aは、長手方向(図1(a)中左右方向)に延びるシリンドリカルレンズ面であり、左右両端にそれぞれ右レンズ面21b、左レンズ面21cが形成されている
右レンズ面21b及び左レンズ面21cは、光軸を含む平面で切断された半球形状の非球面のレンズ面であり、シリンドリカルレンズ面21aの左右両端にそれぞれの切断面が段差なく面一に連続するレンズ面として形成されている。
【0056】
上記構成の車両用灯具100よれば、基端部11aから入射した各光源12からの光線は、図4、図7に示すように、基端部11aの助走区間(第1出射面11a2と第1裏面11a3の間の基端部11a)を通過することで輝度ムラが低減された後、導光板本体11bに導光される(又は、反射面11cに到達する)。
【0057】
図4に示すように、導光板本体11bに導光された各光源12からの光線は、各プリズム11dと第2出射面11b1で全反射を繰り返す。この光線の第2出射面11b1に対する入射角は、各プリズム面11b3で全反射されるごとに小さくなる。このため、導光板本体11bに導入された各光源12からの光線は、やがて入射角が臨界角内に達し、その時点で第1及び第2出射面11a2、11b1から出射される。これにより、第1及び第2出射面11a2、11b1のほぼ全域にわたって、輝度分布(光束発散度分布)が形成される。
【0058】
一方、図7に示すように、反射面11cに到達した各光源12からの光線は、当該反射面11cで第1及び第2出射面11a2、11b1に向けて反射され、当該第1及び第2出射面11a2、11b1を透過し、投影レンズ20の焦点F3近傍(第2焦点F2)に集光する。これにより、第1及び第2出射面11a2、11b1に周囲の輝度よりも高い輝度部分が形成される。
【0059】
以上のようにして、第1及び第2出射面11a2、11b1には、高輝度部分を含む輝度分布(光束発散度分布)が形成される。
【0060】
なお、図4に示すように、基端部11aの第1出射面11a2、並びに、第1裏面11a3及び導光板本体11bの第2裏面11b2から外部に透過した光線は、裏側反射シート14(表側反射シート13)によって再び導光板11内部に戻され、第1及び第2出射面11a2、11b1から出射されるため、光利用効率を向上させることが可能となる。
【0061】
次に、導光板本体11bに導光された各光源12からの光線の水平方向の動きについて説明する。図9は、導光板本体11bに導光された各光源12からの光線の水平方向の動きについて説明するための図である。
【0062】
図9に示すように、導光板11内部に入射して導光される各光源12からの光線は、表側反射シート13により一部遮光された後、投影レンズ20を透過し、左右レンズ面21b、21cを透過した光線については回転軸AX側に集光する集光光として照射され、シリンドリカルレンズ部21aを透過した光線については左右方向に拡散する拡散光として照射される。
【0063】
このため、第1及び第2出射面11a2、11b1の輝度分布が投影レンズ20によって反転、拡大投影されることによって形成される配光パターンは、明瞭なカットオフラインを有する左右方向にワイドで、かつ、水平線近傍の光度が周囲の光度よりも高いヘッドランプに適した配光パターンとなる。なお、拡散角はシリンドリカルレンズ部への入射角とほぼ同じであるため、シリンドリカルレンズ部を長手方向に長くすることで、左右方向により拡散する配光を得ることが可能となる。
【0064】
本出願の発明者らは、所定プログラムを用いてシミュレーションを行った。その結果、鉛直方向については、図10に示すように、上記構成の車両用灯具100により形成される配光パターンが、ヘッドランプに適した配光パターンとなっていることを確認した。図10は、第1及び第2出射面11a2、11b1の鉛直断面の光束発散度カーブ(シミュレーション値)、及び、従来の一般的なプロジェクタ型ヘッドランプの実測光度分布(実測値)をプロットしたグラフである。
【0065】
図10を参照すると、第1及び第2出射面11a2、11b1の鉛直断面の光束発散度カーブ(シミュレーション値)が、従来の一般的なプロジェクタ型ヘッドランプの実測光度分布(実測値)とほぼ同じであること、すなわち、本実施形態の車両用灯具100により形成される配光パターンが、鉛直方向については、ヘッドランプに適した配光パターンであること、を確認できる。
【0066】
一方、本出願の発明者らは、所定プログラムを用いてシミュレーションを行い、上記構成の車両用灯具100により形成される配光パターン(図11参照)を観察した。その結果、水平方向については、当該配光パターンには、水平線Hよりも上に幻惑光P1(グレアー光とも称される)が現れることが判明した。図11(a)は本実施形態の車両用灯具100によって形成される配光パターンの例であり、図11(b)は本実施形態の車両用灯具100のシリンドリカルレンズ部21aの光軸AXよりも下側半分から出射した光だけを取り出した配光パターンであって、左右両側35度付近において水平線Hよりも上に幻惑光P1が現れていることを表している。これらの図より、幻惑光P1の出所がシリンドリカルレンズ部21aの光軸AXよりも下側半分に入射した光が幻惑光P1を発生させることが明確なことが明らかになった。
【0067】
本出願の発明者らは、この幻惑光P1が現れる原因について鋭意検討した。その結果、第1に、プリズム面11b3は左右方向に延びたリニア形状であるため(図4等参照)、各光源12a〜12b(点光源ともいえる)からの光線は、導光板本体11b内部においても、導光板本体11b(第1及び第2出射面11a2、11b1)から照射された後においても、各光源12a〜12dを中心に放射状に広がること(図9参照)、第2に、この放射状に広がる光線のうち、左右方向に広がる光線(以下単に左右方向に広がる光線と称する)がシリンドリカルレンズ部21aの光軸AXよりも下側半分(図1中の斜線で示す領域)に入射すること、第3に、この左右方向に広がる光線がシリンドリカルレンズ部21aの光軸AXよりも下側半分へ入射することに起因して、シリンドリカルレンズ部21aから当該光線が斜め上向きに照射され、水平線Hよりも上に幻惑光P1が現れること、を見出した。
【0068】
そして、本出願の発明者らは、上記知見に基づきさらに検討を進めた結果、シリンドリカルレンズ部21aの光軸AXよりも下側半分へ向かう光線(左右方向に広がる光線を含む)を導光板本体11b(第2出射面11b1)に向けて反射するように、導光板ユニット10と投影レンズ20との間に反射面を配置すれば、第1に、当該左右方向に広がる光線が当該反射面で遮光され、シリンドリカルレンズ部21aの光軸AXよりも下側半分へ入射するのを防止できるため、当該左右方向に広がる光線がシリンドリカルレンズ部21aの光軸AXよりも下側半分へ入射することに起因する幻惑光P1を防止することが可能となり、第2に、シリンドリカルレンズ部21aの光軸AXよりも下側半分へ向かう光線(左右方向に広がる光線を含む)が当該反射面で反射されて導光板本体11bに入射することとなるため、当該左右方向に広がる光線の再利用が可能となる、との着想を得た。
【0069】
しかし、本出願の発明者らが、シリンドリカルレンズ部21aの光軸AXよりも下側半分へ入射する光線の角度分布を測定した結果、第1に、当該光線の角度分布は、図12に示すように、光軸AX(図13に矢印Aで示した、基点がZ0、先端がZ35のZ軸)上の各範囲(Z0〜5、Z5〜10、Z10〜Z15、Z15〜20、Z20〜25)ごとに異なっていること、第2に、これに起因して、単一の反射面を用いるだけでは、当該シリンドリカルレンズ部21aの光軸AXよりも下側半分へ入射する光線を導光板本体11b(第2出射面11b1)に効率よく(無駄なく)入射させることができないこと、を見出した。なお、図12中横軸の角度は、図13に示した0°と90°との間の角度に対応している。
【0070】
本実施形態では、上記知見等に基づき、Z軸上の各範囲(Z0〜5、Z5〜10、Z10〜Z15、Z15〜20、Z20〜25)それぞれに到達する光線を導光板本体11b(第2出射面11b1)に効率よく(無駄なく)入射させるため、図13、図14、図15(a)〜(d)に示すように、導光板ユニット10と投影レンズ20との間に、Z軸上の各範囲それぞれに対応する位置に複数の反射面30a〜30eを配置した。
【0071】
各反射面30a〜30eは、図15(a)等に示すように、シリンドリカルレンズ部21aの軸方向長さ寸法とほぼ同じ長さ寸法の、シリンドリカルレンズ部21aの軸方向(図15(a)中左右方向)に延びる平板形状の反射面である。各反射面30a〜30eは、当該各反射面30a〜30eに到達した導光板本体11b(第2出射面11b1)から照射された光線(特にピーク光度を含む光線)を、当該各反射面30a〜30e直上の導光板10(第2出射面11b1)に向けて反射するように、傾斜した姿勢で配置されている。
【0072】
明瞭なカットオフラインを形成する場合には、図14、図15(a)〜(d)等に示すように、各反射面30a〜30eの両側に、それぞれ左右レンズ部21b、21cの焦点ラインFLに沿って延びる上端縁41を有する主シェード40を配置するのが望ましい。焦点ラインFLとは、例えば図16に示すように、左右レンズ部21b、21cの光軸AX(回転軸)を含む水平面(又は当該水平面に対して平行な水平面)に含まれ、かつ、光軸AX(回転軸)に対する傾斜角度が異なる複数の平行光線(図16は複数の平行光線L1〜L4を例示)を、左右レンズ部21b、21cの出射面側から当該左右レンズ部21b、21cに入射させ、入射面22側から出射させた場合に形成される焦点群のことである。この焦点ラインFLに、上端縁41を沿わせた状態で主シェード40を配置することで、明瞭なカットオフラインを有する配光パターンを形成することが可能となる。但し、複数の反射面30a〜30eを設置せずに、主シェード40のみを配置したとしても、図11(a)及び図11(b)にある幻惑光P1は消失せず、複数の反射面30a〜30eを設置してはじめて幻惑光P1は解消することが可能となる。
【0073】
本実施形態の車両用灯具100によれば、上記構成の複数の反射面30a〜30eを導光板ユニット10と投影レンズ20との間に配置したことにより(図13〜図15参照)、導光板10(第1出射面11a1及び第2出射面11b1)から照射され、左右方向に広がる光線(図9参照)は、シリンドリカルレンズ部21aの光軸AXよりも下側半分へ入射することなく、複数の反射面30a〜30eに到達し、当該複数の反射面30a〜30eによってそれぞれの直上の導光板10(の第2出射面11b1)に向けて反射される。このため、当該左右方向に広がる光線がシリンドリカルレンズ部21aの光軸AXよりも下側半分に入射するのを防止することが可能となる。 このため、当該左右方向に広がる光線がシリンドリカルレンズ部21aの光軸AXよりも下側半分へ入射することに起因する幻惑光P1を防止することが可能となる(図17参照)。すなわち、本実施形態の複数の反射面30a〜30eを用いた車両用灯具100によれば、水平線Hよりも上に幻惑光が現れず、ヘッドランプに適した配光パターンを得ることが可能な車両用灯具を提供することが可能となる。
【0074】
図17は、本実施形態の複数の反射面30a〜30eを用いた車両用灯具100によって形成される配光パターンの例である。図17を参照すると、当該複数の反射面30a〜30eを用いた車両用灯具100によって形成される配光パターンには水平線Hよりも幻惑光が現れず、ヘッドランプに適した配光パターンが得られることが分かる。
【0075】
また、本実施形態の車両用灯具100によれば、上記構成の複数の反射面30a〜30eを導光板ユニット10と投影レンズ20との間に配置したことにより(図13〜図15参照)、複数の反射面30a〜30eによってそれぞれの直上の導光板10(の第2出射面11b1)に向けて反射された光線は、導光板本体11b内部に入射し、第2裏面11b2(又はその外側の裏側反射シート14)によって投影レンズ20に向けて反射され、投影レンズ20によって反転、拡大投影される配光パターン(図17参照)の一部(水平線H以下に左右方向、上下方向にワイドな配光パターンとして現れる)を形成する。すなわち、本実施形態の車両用灯具100によれば、左右方向に広がる光線等の再利用が可能となる。
【0076】
また、本実施形態の車両用灯具100によれば、図3などに示すように、導光板本体11bは、基端部11aに対し、投影レンズ20の焦点F3近傍において投影レンズ20側に折り曲げられており、第1裏面11a3と第2裏面11b2の間には楕円系反射面としての反射面11cが形成されている。このため、図7に示すように、入射面11a1から導光板11内部に入射して導光され、当該反射面11cに到達した光源12からの光線は、当該反射面11cによって第1出射面11a2及び第2出射面11b1(主に第1出射面11a2)に対する入射角が臨界角内となるように投影レンズ20の焦点F3(第2焦点F2)近傍に向けて反射され、第1出射面11a2及び第2出射面11b1から出射する。これにより、第1出射面11a2及び第2出射面11b1上に周囲の輝度よりも高い高輝度部分を含む輝度分布(ヘッドランプに要求される最大光度を含む配光パターンに対応する高輝度部分を含む輝度分布)が形成される。この高輝度部分を含む輝度分布は投影レンズ20によって反転、拡大投影される。これにより、ヘッドランプに要求される最大光度を含む配光パターンを形成することが可能となる。
【0077】
また、本実施形態の車両用灯具100によれば、図3などに示すように、導光板本体11bは、基端部11aに対し、投影レンズ20の焦点近傍において投影レンズ20側に折り曲げられている。このため、導光板本体11bの光軸AX方向の寸法を短くすることが可能となる。このため、車両用灯具100の奥行き寸法を従来以上に短くすることが可能となる。
【0078】
また、本実施形態の車両用灯具100によれば、複数の反射面30a〜30eはそれぞれ、当該反射面30a〜30eに到達した前記シリンドリカルレンズ部21aの光軸AXよりも下側半分へ向かう光線を、当該反射面30a〜30e直上の導光板10(の第2出射面11b1)に向けて反射するように、傾斜した姿勢で配置されている(図13等参照)。このため、シリンドリカルレンズ部21aの光軸AXよりも下側半分へ向かう光線を、複数の反射面30a〜30eによってそれぞれの直上の導光板10(の第2出射面11b1)へ効率よく(無駄なく)入射させることが可能となる。
【0079】
次に、変形例について説明する。
【0080】
上記実施形態では、複数の反射面30a〜30e同士の間にスペースが形成されている例について説明したが(図13、図14等参照)、本発明はこれに限定されない。例えば、図18に示すように、複数の反射面30a〜30e同士の間を閉塞してもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、複数の反射面30a〜30eが5つである例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、5つ未満、又は、6つ以上の複数の反射面を採用してもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、複数の反射面30a〜30eが平板形状の反射面である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、複数の反射面として曲面形状の反射面を採用してもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、複数の反射面30a〜30eはそれぞれ直上の導光板10(第2出射面11b1)に向けて反射するように説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、複数の反射面30a〜30eは配光パターン中の光度が要求される部分に向けて反射するように構成(例えば複数の反射面30a〜30eの傾斜角度を調整する、当該反射面30a〜30eの形状を調整する)してもよい。
【0084】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0085】
100…車両用灯具、10…導光板ユニット、11…導光板、11a…基端部、11a1…入射面(入光面)、11a2…出射面、11a3…裏面、11b…導光板本体、11b1…出射面、11b2…裏面、11b 導光板本体、11b3…プリズム面、11b4…プリズム面、11c…反射面、11d…プリズム、12…光源、12a…発光面、13…表側反射シート、13a…上端縁、14…裏側反射シート、20…投影レンズ、21…出射面、21a…シリンドリカルレンズ面、21b…右レンズ面、21c…左レンズ面、22…入射面、30…補助シェード(遮光シェード)、31…反射面、40…主シェード、41…上端縁、50…補助反射面、60…プリズム
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光板を用いた車両用灯具に係り、特に水平線よりも上に幻惑光が現れない(又はほとんど現れない)、シリンドリカルレンズ部を含む投影レンズ及び導光板を用いた車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的なプロジェクタ型ヘッドランプに用いられているリフレクタに代え、導光板を用いた車両用灯具が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図19は、特許文献1に記載の車両用灯具200を説明するための図である。
【0004】
図19(a)に示すように、特許文献1に記載の車両用灯具200は、導光板210、光源220及び投影レンズ230を備えている。導光板210の投影レンズ230とは反対側の裏面211には、輝度制御要素(図示せず)が形成されており、導光板210の投影レンズ230側には、出射面212が形成されている。
【0005】
特許文献1に記載の車両用灯具においては、導光板210内部に入射して導光され、輝度制御要素に到達した光源220からの光線は当該輝度制御要素によって出射面212に向けて反射され、出射面212を透過し、これにより、出射面212のほぼ全域にわたって、図19(b)示すような輝度分布が形成される。この輝度分布は、投影レンズ230によって反転、拡大投影され、これにより、所定配光パターンが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−140729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の車両用灯具200においては、投影レンズ230としてシリンドリカルレンズ部を含む投影レンズを採用した場合、当該車両用灯具200よって形成される配光パターンには、例えば、図11に示すような水平線Hよりも上に幻惑光P1(グレアー光とも称される)が現れるという問題がある。
【0008】
また、特許文献1に記載の車両用灯具200においては、図19(a)に示すように、導光板210は平板形状の導光板であり、光源220はその導光板210の端面に対向した状態で配置されている関係上、出射面212上の水平線に対応するラインL近傍に光源220からの光線を集めることができないため、特許文献1で光源220として想定されているLED光源の現状の明るさでは、ヘッドランプに要求される最大光度を含む配光パターンに対応する高輝度部分を含む輝度分布を形成することができないという問題がある。
【0009】
さらに、特許文献1には、導光板210を傾斜させた状態で配置した例が開示されているが、導光板210は平板形状の導光板であるため、車両用灯具200の奥行き寸法をそれ以上短くすることができないという問題もある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、水平線よりも上に幻惑光が現れない(又はほとんど現れない)、シリンドリカルレンズ部を含む投影レンズ及び導光板を用いた車両用灯具を提供することを第1の課題とする。
【0011】
また、ヘッドランプに要求される最大光度を含む配光パターンを形成することが可能な、導光板を用いた車両用灯具を提供することを第2の課題とする。また、車両用灯具の奥行き寸法を従来以上に短くすることが可能な、導光板を用いた車両用灯具を提供することを第3の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、可視光領域で透明な材料からなる導光板、光源及び投影レンズを備えた車両用灯具において、前記導光板は、基端部、前記基端部に対し、前記投影レンズの焦点近傍において前記投影レンズ側に折り曲げられた導光板本体、及び、反射面を含んでおり、前記基端部は、入射面、第1出射面及びその反対側の第1裏面を含んでおり、前記導光板本体は、第2出射面、その反対側の第2裏面、及び、プリズム面を含んでおり、前記入射面は、前記光源から照射される光線を前記導光板内部に入射させるための入光面であり、前記第1出射面及び第2出射面は、前記投影レンズ側に形成されており、前記第1裏面及び第2裏面は、前記投影レンズとは反対側に形成されており、前記反射面は、前記第1裏面と第2裏面の間、又は、前記第1裏面に形成されており、前記プリズム面は、前記入射面から前記導光板内部に入射して導光され、当該プリズム面に到達した前記光源からの光線を、前記第1出射面及び第2出射面に対する入射角が臨界角内となるように当該第1出射面及び第2出射面に向けて反射し、当該第1出射面及び第2出射面上に輝度分布を形成するためのレンズカット面であり、前記反射面は、前記入射面から前記導光板内部に入射して導光され、当該反射面に到達した前記光源からの光線を、前記第1出射面及び第2出射面に対する入射角が臨界角内となるように前記投影レンズの焦点近傍に向けて反射し、前記第1出射面及び第2出射面上に周囲の輝度よりも高い高輝度部分を形成するための反射面であり、前記投影レンズは、前記第1出射面及び第2出射面上に形成された輝度分布を反転、拡大投影し、所定配光パターンを形成するためのレンズであって、少なくともシリンドリカルレンズ部を含んでおり、さらに、前記導光板と前記投影レンズとの間に配置され、前記導光板から照射された前記光源からの光線のうち、前記シリンドリカルレンズ部の光軸よりも下側半分へ向かう光線を前記導光板に向けて反射するための複数の反射面を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、複数の反射面を導光板ユニットと投影レンズとの間に配置したことにより、第1出射面及び第2出射面から照射され、左右方向に広がる光線は、シリンドリカルレンズ部の光軸よりも下側半分へ入射することなく、複数の反射面に到達し、当該複数の反射面によって導光板に向けて反射される。このため、当該左右方向に広がる光線がシリンドリカルレンズ部の光軸よりも下側半分に入射するのを防止することが可能となる。このため、当該左右方向に広がる光線がシリンドリカルレンズ部の光軸よりも下側半分へ入射することに起因する幻惑光を防止することが可能となる。すなわち、請求項1に記載の発明によれば、水平線よりも上に幻惑光が現れず、ヘッドランプに適した配光パターンを得ることが可能な車両用灯具を提供することが可能となる。
【0014】
また、請求項1に記載の発明によれば、複数の反射面を導光板ユニットと投影レンズとの間に配置したことにより、複数の反射面によって導光板に向けて反射された光線は、導光板本体内部に入射し、第2裏面等によって投影レンズに向けて反射され、投影レンズによって反転、拡大投影される配光パターンの一部を形成する。すなわち、請求項1に記載の発明によれば、左右方向に広がる光線等の再利用が可能となる。
【0015】
また、請求項1に記載の発明によれば、導光板本体は、基端部に対し、投影レンズの焦点近傍において投影レンズ側に折り曲げられており、第1裏面と第2裏面の間(又は、第1裏面)には、反射面が形成されている。このため、入射面から導光板内部に入射して導光され、当該反射面に到達した光源からの光線は、当該反射面によって第1出射面及び第2出射面に対する入射角が臨界角内となるように投影レンズの焦点近傍に向けて反射され、第1出射面及び第2出射面から出射する。これにより、第1出射面及び第2出射面上に周囲の輝度よりも高い高輝度部分を含む輝度分布(ヘッドランプに要求される最大光度を含む配光パターンに対応する高輝度部分を含む輝度分布)が形成される。この高輝度部分を含む輝度分布は投影レンズによって反転、拡大投影される。これにより、ヘッドランプに要求される最大光度を含む配光パターンを形成することが可能となる。
【0016】
また、請求項1に記載の発明によれば、導光板本体は、基端部に対し、投影レンズの焦点近傍において投影レンズ側に折り曲げられている。このため、導光板本体の光軸方向の寸法を短くすることが可能となる。このため、車両用灯具の奥行き寸法を従来以上に短くすることが可能となる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記複数の反射面はそれぞれ、当該反射面に到達した前記シリンドリカルレンズ部の光軸よりも下側半分へ向かう光線を、当該反射面直上の導光板に向けて反射するように、傾斜した姿勢で配置されていることを特徴とする。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、複数の反射面はそれぞれ、当該反射面に到達した前記シリンドリカルレンズ部の光軸よりも下側半分へ向かう光線を、当該反射面直上の導光板に向けて反射するように、傾斜した姿勢で配置されている。このため、シリンドリカルレンズ部の光軸よりも下側半分へ向かう光線を、複数の反射面によってそれぞれの直上の導光板へ効率よく(無駄なく)入射させることが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、水平線よりも上に幻惑光が現れない(又はほとんど現れない)、シリンドリカルレンズ部を含む投影レンズ及び導光板を用いた車両用灯具を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は、本発明の実施形態である車両用灯具の上面図、(b)は、本発明の実施形態である車両用灯具の正面図、(c)は、本発明の実施形態である車両用灯具の側面図である。
【図2】(a)は、本発明の実施形態である車両用灯具に用いられる導光板ユニットの上面図、(b)は、本発明の実施形態である車両用灯具に用いられる導光板ユニットの正面図、(c)は、本発明の実施形態である車両用灯具に用いられる導光板ユニットの側面図である。
【図3】本発明の実施形態である車両用灯具の側面図である。
【図4】導光板本体11b(プリズム面11b3)を説明するための断面図である。
【図5】導光板本体11bの第2出射面11b1から照射される光束のプリズム角αごとの指向特性(上下方向)を表すグラフである。
【図6】導光板本体11bを、基端部11aに対し、投影レンズ20の焦点F3近傍において投影レンズ20側に約45°傾斜した姿勢で配置した例である。
【図7】反射面11c(楕円系反射面)を説明するための断面図である。
【図8】光源12の虚像F0を説明するための図である。
【図9】導光板本体11bに導光された各光源12からの光線の水平方向の動きについて説明するための図である。
【図10】第1及び第2出射面11a2、11b1の鉛直断面の光束発散度カーブ(シミュレーション値)、及び、従来の一般的なプロジェクタ型ヘッドランプの実測光度分布(実測値)をプロットしたグラフである。
【図11】実施形態の車両用灯具100(主シェードおよび複数の反射面無し)によって形成される配光パターンの例である。
【図12】シリンドリカルレンズ部21aの下側半分に入る光線の角度分布を説明するためのグラフである。
【図13】実施形態の複数の反射面30a〜30eを用いた車両用灯具100の側面図である。
【図14】実施形態の複数の反射面30a〜30eを用いた車両用灯具100の斜視図である。
【図15】(a)は、実施形態の複数の反射面30a〜30eを用いた車両用灯具100の上面図、(b)は、実施形態の複数の反射面30a〜30eを用いた車両用灯具100の正面図、(c)は、実施形態の複数の反射面30a〜30eを用いた車両用灯具100の側面図、(d)は、実施形態の複数の反射面30a〜30eを用いた車両用灯具100の底面図である。
【図16】焦点ラインFLについて説明するための図である。
【図17】実施形態の複数の反射面30a〜30eを用いた車両用灯具100により形成される配光パターンの例である。
【図18】実施形態の複数の反射面30a〜30eを用いた車両用灯具100の変形例である。
【図19】従来の導光板を用いた車両用灯具を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態である車両用灯具について図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1(a)は、本発明の実施形態である車両用灯具の上面図、図1(b)は、本発明の実施形態である車両用灯具の正面図、図1(c)は、本発明の実施形態である車両用灯具の側面図である。図2(a)は、本発明の実施形態である車両用灯具に用いられる導光板ユニットの上面図、図1(b)は、本発明の実施形態である車両用灯具に用いられる導光板ユニットの正面図、図1(c)は、本発明の実施形態である車両用灯具に用いられる導光板ユニットの側面図である。図3は、本発明の実施形態である車両用灯具の側面図である。
【0023】
本実施形態の車両用灯具100は、ヘッドランプやフォグランプに適用されるものであり、図1〜図3に示すように、導光板ユニット10、投影レンズ20などを備えている。本実施形態の車両用灯具100においては、導光板ユニット10(導光板11)の投影レンズ20側の面(第1及び第2出射面11a2、11b1)に形成される輝度分布(光束発散度分布)が、投影レンズ20によって反転、拡大投影されることで、所定配光パターンが形成されるようになっている。以下、本実施形態の車両用灯具100をいわゆるプロジェクタ型のヘッドランプに適用した例について具体的に説明する。
【0024】
まず、導光板ユニット10について説明する。
【0025】
導光板ユニット10は、図2、図3に示すように、導光板11、複数の光源12、反射シート13、14などを備えている。
【0026】
導光板11は、図3に示すように、基端部11a、基端部11aに対し、投影レンズ20の焦点F3近傍において投影レンズ20側に折り曲げられた導光板本体11b、反射面11cを含んでおり、可視光領域で透明な材料(アクリルやポリカーボネイトなどの透明又は半透明樹脂など)を射出成型することにより一体的に形成されている。このように、導光板本体11bは、基端部11aに対し、投影レンズ20の焦点F3近傍において投影レンズ20側に折り曲げられているため、導光板本体の光軸方向の寸法を短くすることが可能となる。このため、車両用灯具100の奥行き寸法を従来以上に短くすることが可能となる。
【0027】
基端部11aは、入射面11a1、第1出射面11a2、その反対側の第1裏面11a3などを含んでいる。
【0028】
入射面11a1は、光源12からの照射光(光線又は光束ともいう)を導光板11内部に入射させるための入光面であり、例えば、図3に示す断面形状11a1が長手方向(図3中紙面に直交する方向。図2(a)中左右方向)に延びる水平面として、基端部11aの下端に形成されている。
【0029】
第1出射面11a2は、例えば、図3に示す断面形状11a2が長手方向(図3中紙面に直交する方向。図2(a)中左右方向)に延びる鉛直面として、基端部11aの投影レンズ20側に形成されている。第1裏面11a3は、例えば、図3に示す断面形状11a3が長手方向(図3中紙面に直交する方向。図2(a)中左右方向)に延びる鉛直面として、基端部11aの投影レンズ20とは反対側に形成されている。図2、図3に示すように、第1出射面11a2の一部は、表側反射シート13で覆われており、第1裏面11a3は、裏側反射シート14で覆われている。
【0030】
入射面11a1には、図2、図3、図9に示すように、複数の光源12(図9中、12a〜12dで示す)が光軸を上に向け、発光面12aを導光板11の入射面11a1に面接触させた状態で長手方向に沿って配置されており、例えば、透明樹脂などで当該入射面11a1に固定されている。
【0031】
光源12は、例えば、白色(又はRGB三色)の一つ(又は複数)のLEDチップをパッケージ化したLEDパッケージなどのLED光源(又は、冷陰極蛍光ランプ(CCFL))である。
【0032】
本実施形態では、max光度を得るため、図9に示すように、投影レンズ20の一方の回転軸AX(光軸)を含む鉛直断面上及び他方の回転軸AX(光軸)を含む鉛直断面上に、それぞれ光源12a、12bが配置されている。また、拡散された配光パターンを形成するため、一方の回転軸AX及び他方の回転軸AXから内側にシフトした位置に光源12c、12dが配置されている。
【0033】
導光板本体11bは、図3に示すように、第2出射面11b1、その反対側の第2裏面11b2、複数のプリズム面11b3(鋸歯形状のプリズムアレイ)などを含む平板形状の導光板であり、基端部11aに対し、投影レンズ20の焦点F3近傍において投影レンズ20側に傾斜した姿勢で配置されている。なお、導光板本体11bに入射した光線を全て出射させるため、図3に示すように、導光板本体11bの断面形状は、先端に近づくにつれて先細りの形状となっている。
【0034】
第2出射面11b1は、図3に示す断面形状11b1が長手方向(図3中紙面に直交する方向。図2(a)中左右方向)に延びる傾斜面として、導光板本体11bの投影レンズ20側に形成されている。第2裏面11b2は、図3に示す断面形状11b2が長手方向(図3中紙面に直交する方向。図2(a)中左右方向)に延びる傾斜面として、導光板本体11bの投影レンズ20とは反対側に形成されている。
【0035】
複数のプリズム面11b3は、図4に示すように、入射面11a1から導光板11内部に入射して導光され、当該複数のプリズム面11b3に到達した光源12からの光線を、第1及び第2出射面11a2、11b1に対する入射角が臨界角内となるように当該第1及び第2出射面11a2、11b1に向けて反射し、当該第1及び第2出射面11a2、11b1上に輝度分布を形成するためのレンズカット面である。複数のプリズム面11b3は、例えば、図4に示す断面形状11b3が長手方向(図4中紙面に直交する方向。図2(a)中左右方向)に延びる平面形状のレンズカット面として、第2裏面11b2に上下方向に並列に形成されている。
【0036】
次に、プリズム面11b3の作用について説明する。
【0037】
導光板本体11bに導光された各光源12からの光線は、図4に示すように、各プリズム面11b3と第2出射面11b1で全反射を繰り返す。この光線の第2出射面11b1に対する入射角は、各プリズム面11b3で全反射されるごとに小さくなる。このため、導光板本体11bに導光された各光源12からの光線は、やがて入射角が臨界角内に達し、その時点で第1及び第2出射面11a2、11b1から出射される。これにより、第1及び第2出射面11a2、11b1のほぼ全域にわたって、輝度分布(光束発散度分布)が形成される。
【0038】
第1及び第2出射面11a2、11b1から出射される光線量は、プリズム面11b3のプリズム角α(頂角。図4参照)が大きくなるにつれて増加する。図5は、このことを表している。このため、プリズム面11b3のプリズム角αを調整することで、第1及び第2出射面11a2、11b1のほぼ全域にわたってヘッドランプに適した輝度分布(光束発散度分布)を形成することが可能となる。例えば、反射面11cから離れるにつれ、プリズム角αを徐々に変化させることで、高輝度から低輝度に自然に変化する輝度分布を形成することが可能となる。また、プリズム面11b3のプリズム角αを調整することで、第1及び第2出射面11a2、11b1のほぼ全域にわたってヘッドランプ以外の例えばフォグランプに適した輝度分布(光束発散度分布)を形成することも可能となる。
【0039】
次に、導光板本体11bを基端部11aに対して傾斜させた技術的意義について説明する。
【0040】
図5は、導光板本体11bの第2出射面11b1から照射される光束のプリズム角αごとの指向特性(上下方向)を表すグラフであり、プリズム角α(=微小、小、中、やや大、大、非常に大)ごとに指向特性が異なることを表している。
【0041】
本実施形態においては、投影レンズ20に入射する光線量を最大にするため、最大光度が他のプリズム角と比べて高いプリズム角α=「やや大」のプリズム11dを採用するとともに、図3、図6に示すように、導光板本体11bは、基端部11aに対し、投影レンズ20の焦点F3近傍において投影レンズ20側に約45°傾斜した姿勢で配置されている。
【0042】
次に、反射面11cの技術的意義について説明する。
【0043】
反射面11cは、図3などに示すように、第2裏面11b2と第1裏面11a3の間に形成されている。
【0044】
反射面11cは、図7に示すように、入射面11a1から導光板11内部に入射して導光され、当該反射面11cに到達した光源12からの光線を、第1及び第2出射面11a2、11b1に対する入射角が臨界角内となるように投影レンズ20の焦点F3近傍に向けて反射し、第1及び第2出射面11a2、11b1上に周囲の輝度よりも高い高輝度部分を形成するための反射面である。反射面11cは、max光度を得るため、例えば、光源12の光軸を含む所定範囲に形成されている。反射面11cは、例えば、第1焦点F1が光源12近傍(例えば、図8に示す光源12の虚像F0の中心近傍)に設定され、第2焦点F2が投影レンズ20の焦点F3近傍に設定された楕円系反射面として形成されている(図3、図7参照)。
【0045】
図8に示すように、光源12(発光面12a)から照射された光線は、入射面11a1で内側に屈折する。この屈折した光線は、図8に示す虚像F0から照射されたとみなせる。第1焦点F1は、この光源12の虚像F0の中心近傍に設定されている。このように、第1焦点F1を虚像F0の中心近傍に設定することで、第2焦点F2への集光性が上がり、F2付近の出射面がより高輝度になるため、高い最大光度が得られ、ヘッドランプに適した配光パターンを形成することが可能となる。なお、虚像F0の位置、大きさ及びピントの合い具合は入射面11a1の形状及び第2出射面11b1の大きさなどから決まる。発光面12aが平面の場合、比較的ぼやけた像となる。
【0046】
図7に示すように、導光板11内部に入射して導光され、反射面11cに到達した光源12からの光線は、当該反射面11cで第1及び第2出射面11a2、11b1に向けて反射され、当該第1及び第2出射面11a2、11b1を透過し、投影レンズ20の焦点F3近傍(第2焦点F2)に集光する。これにより、第1及び第2出射面11a2、11b1に周囲の輝度よりも高い高輝度部分が形成される。
【0047】
例えば、図3、図7に示すように、第2焦点F2を投影レンズ20の焦点F3に対してやや上側(例えば上側1mmの位置)に設定した場合には、第1及び第2出射面11a2、11b1の水平線に対応するラインLよりも上側約1°の部分に、周囲の輝度よりも高い高輝度部分が形成される(図10参照)。この高輝度部分を含む輝度分布(光束発散度分布)は、投影レンズ20によって反転、拡大投影される。これにより、水平線よりも下側部分(例えば下側約1°に対応する範囲)の光度が周囲の光度よりも高いすれ違いビームに適した配光パターンが形成される。
【0048】
また、例えば、第2焦点F2を投影レンズ20の焦点F3に設定した場合には、第1及び第2出射面11a2、11b1の水平線と鉛直線の交点に対応する部分に、周囲の輝度よりも高い高輝度部分が形成される。この高輝度部分を含む輝度分布(光束発散度分布)は、投影レンズ20によって反転、拡大投影される。これにより、水平線と鉛直線の交点近傍の光度が周囲の光度よりも高い走行ビームに適した配光パターンが形成される。なお、走行ビームに適した配光パターンを形成する場合、表側反射シート13を省略するのが好ましい。
【0049】
表側反射シート13は、第1出射面11a2から外部に透過した光源12からの光線を反射し、再び導光板11に入射させるための反射シートであり、図2、図3に示すように、第1出射面11a2の水平線に対応するラインLよりも下側を覆っている。裏側反射シート14は、第1裏面11a3及び第2裏面11b2から外部に透過した光源12からの光線を反射し、再び導光板本体11bに入射させるための反射シートであり、第1裏面11a3及び第2裏面11b2を覆っている。このため、第1裏面11a3及び第2裏面11b2などから外部に透過した光源12からの光線は、各反射シート13、14によって再び導光板11内部に戻されるため、光利用効率を向上させることが可能となる。各反射シート13、14は、例えば、銀、アルミなどの金属蒸着シート、発砲樹脂シートなどの高反射率シートである。なお、各反射シート13、14は、各面11a3などに対して平行に配置するのが好ましい。
【0050】
表側反射シート13は、図2、図3に示すように、第1及び第2出射面11b1、11a2から投影レンズ20に向けて照射される光線の一部を遮蔽し、カットオフラインを形成するシェードの役割を兼ねている。表側反射シート13にシェードの役割を持たせるため、当該表側反射シート13の上端縁13aは、図2(b)に示すように、水平線に対応するラインLに沿って水平方向に伸びており、投影レンズ20の焦点F3近傍にZ型の段差部が形成されている。このように、第1出射面11a2は、水平線に対応するラインLに沿って伸びる上端縁13aを有する表側反射シート13で覆われているため、すれ違いビームに適した明瞭なカットオフラインを有する配光パターンを形成することが可能となる。
【0051】
なお、図1などに示すように、回転軸(光軸)が二つの投影レンズ20においては、左側通行の場合、車両前方からみて左側の回転軸AX(光軸)に対応する箇所のみをZ型の段差部に形成すればよい(図2(b)参照)。このようにすれば、図2(b)に示す導光板11上の水平線に対応するラインL近傍から照射される光線は投影レンズ20に入射しないため、当該光線が反対車線の水平線から上方に照射されることを防止することが可能となる。
【0052】
次に、投影レンズ20について説明する。
【0053】
投影レンズ20は、第1及び第2出射面11a2、11b1上に形成された輝度分布を反転、拡大投影し、所定配光パターンを形成するためのレンズであり、例えば、図1に示すように、出射面21及びその反対側の入射面22を含む長手方向(図1(a)中左右方向)に延びる中実のレンズ体である。投影レンズ20は、可視光領域で透明な樹脂(例えば、アクリルやポリカーボネイトなどの透明又は半透明材料)を射出成型することにより又はガラスにより一体的に形成されている。
【0054】
出射面21は、シリンドリカルレンズ面21a、右レンズ面21b及び左レンズ面21cを含むレンズ面であり、入射面22は、平面として形成されている。以下シリンドリカルレンズ面21aとその反対側の入射面22との間のレンズ部を、シリンドリカルレンズ部21aと称することがある。また、右レンズ面21b(左レンズ面21c)とその反対側の入射面22との間のレンズ部を、右レンズ部21b(左レンズ部21c)と称することがある。
【0055】
シリンドリカルレンズ面21aは、長手方向(図1(a)中左右方向)に延びるシリンドリカルレンズ面であり、左右両端にそれぞれ右レンズ面21b、左レンズ面21cが形成されている
右レンズ面21b及び左レンズ面21cは、光軸を含む平面で切断された半球形状の非球面のレンズ面であり、シリンドリカルレンズ面21aの左右両端にそれぞれの切断面が段差なく面一に連続するレンズ面として形成されている。
【0056】
上記構成の車両用灯具100よれば、基端部11aから入射した各光源12からの光線は、図4、図7に示すように、基端部11aの助走区間(第1出射面11a2と第1裏面11a3の間の基端部11a)を通過することで輝度ムラが低減された後、導光板本体11bに導光される(又は、反射面11cに到達する)。
【0057】
図4に示すように、導光板本体11bに導光された各光源12からの光線は、各プリズム11dと第2出射面11b1で全反射を繰り返す。この光線の第2出射面11b1に対する入射角は、各プリズム面11b3で全反射されるごとに小さくなる。このため、導光板本体11bに導入された各光源12からの光線は、やがて入射角が臨界角内に達し、その時点で第1及び第2出射面11a2、11b1から出射される。これにより、第1及び第2出射面11a2、11b1のほぼ全域にわたって、輝度分布(光束発散度分布)が形成される。
【0058】
一方、図7に示すように、反射面11cに到達した各光源12からの光線は、当該反射面11cで第1及び第2出射面11a2、11b1に向けて反射され、当該第1及び第2出射面11a2、11b1を透過し、投影レンズ20の焦点F3近傍(第2焦点F2)に集光する。これにより、第1及び第2出射面11a2、11b1に周囲の輝度よりも高い輝度部分が形成される。
【0059】
以上のようにして、第1及び第2出射面11a2、11b1には、高輝度部分を含む輝度分布(光束発散度分布)が形成される。
【0060】
なお、図4に示すように、基端部11aの第1出射面11a2、並びに、第1裏面11a3及び導光板本体11bの第2裏面11b2から外部に透過した光線は、裏側反射シート14(表側反射シート13)によって再び導光板11内部に戻され、第1及び第2出射面11a2、11b1から出射されるため、光利用効率を向上させることが可能となる。
【0061】
次に、導光板本体11bに導光された各光源12からの光線の水平方向の動きについて説明する。図9は、導光板本体11bに導光された各光源12からの光線の水平方向の動きについて説明するための図である。
【0062】
図9に示すように、導光板11内部に入射して導光される各光源12からの光線は、表側反射シート13により一部遮光された後、投影レンズ20を透過し、左右レンズ面21b、21cを透過した光線については回転軸AX側に集光する集光光として照射され、シリンドリカルレンズ部21aを透過した光線については左右方向に拡散する拡散光として照射される。
【0063】
このため、第1及び第2出射面11a2、11b1の輝度分布が投影レンズ20によって反転、拡大投影されることによって形成される配光パターンは、明瞭なカットオフラインを有する左右方向にワイドで、かつ、水平線近傍の光度が周囲の光度よりも高いヘッドランプに適した配光パターンとなる。なお、拡散角はシリンドリカルレンズ部への入射角とほぼ同じであるため、シリンドリカルレンズ部を長手方向に長くすることで、左右方向により拡散する配光を得ることが可能となる。
【0064】
本出願の発明者らは、所定プログラムを用いてシミュレーションを行った。その結果、鉛直方向については、図10に示すように、上記構成の車両用灯具100により形成される配光パターンが、ヘッドランプに適した配光パターンとなっていることを確認した。図10は、第1及び第2出射面11a2、11b1の鉛直断面の光束発散度カーブ(シミュレーション値)、及び、従来の一般的なプロジェクタ型ヘッドランプの実測光度分布(実測値)をプロットしたグラフである。
【0065】
図10を参照すると、第1及び第2出射面11a2、11b1の鉛直断面の光束発散度カーブ(シミュレーション値)が、従来の一般的なプロジェクタ型ヘッドランプの実測光度分布(実測値)とほぼ同じであること、すなわち、本実施形態の車両用灯具100により形成される配光パターンが、鉛直方向については、ヘッドランプに適した配光パターンであること、を確認できる。
【0066】
一方、本出願の発明者らは、所定プログラムを用いてシミュレーションを行い、上記構成の車両用灯具100により形成される配光パターン(図11参照)を観察した。その結果、水平方向については、当該配光パターンには、水平線Hよりも上に幻惑光P1(グレアー光とも称される)が現れることが判明した。図11(a)は本実施形態の車両用灯具100によって形成される配光パターンの例であり、図11(b)は本実施形態の車両用灯具100のシリンドリカルレンズ部21aの光軸AXよりも下側半分から出射した光だけを取り出した配光パターンであって、左右両側35度付近において水平線Hよりも上に幻惑光P1が現れていることを表している。これらの図より、幻惑光P1の出所がシリンドリカルレンズ部21aの光軸AXよりも下側半分に入射した光が幻惑光P1を発生させることが明確なことが明らかになった。
【0067】
本出願の発明者らは、この幻惑光P1が現れる原因について鋭意検討した。その結果、第1に、プリズム面11b3は左右方向に延びたリニア形状であるため(図4等参照)、各光源12a〜12b(点光源ともいえる)からの光線は、導光板本体11b内部においても、導光板本体11b(第1及び第2出射面11a2、11b1)から照射された後においても、各光源12a〜12dを中心に放射状に広がること(図9参照)、第2に、この放射状に広がる光線のうち、左右方向に広がる光線(以下単に左右方向に広がる光線と称する)がシリンドリカルレンズ部21aの光軸AXよりも下側半分(図1中の斜線で示す領域)に入射すること、第3に、この左右方向に広がる光線がシリンドリカルレンズ部21aの光軸AXよりも下側半分へ入射することに起因して、シリンドリカルレンズ部21aから当該光線が斜め上向きに照射され、水平線Hよりも上に幻惑光P1が現れること、を見出した。
【0068】
そして、本出願の発明者らは、上記知見に基づきさらに検討を進めた結果、シリンドリカルレンズ部21aの光軸AXよりも下側半分へ向かう光線(左右方向に広がる光線を含む)を導光板本体11b(第2出射面11b1)に向けて反射するように、導光板ユニット10と投影レンズ20との間に反射面を配置すれば、第1に、当該左右方向に広がる光線が当該反射面で遮光され、シリンドリカルレンズ部21aの光軸AXよりも下側半分へ入射するのを防止できるため、当該左右方向に広がる光線がシリンドリカルレンズ部21aの光軸AXよりも下側半分へ入射することに起因する幻惑光P1を防止することが可能となり、第2に、シリンドリカルレンズ部21aの光軸AXよりも下側半分へ向かう光線(左右方向に広がる光線を含む)が当該反射面で反射されて導光板本体11bに入射することとなるため、当該左右方向に広がる光線の再利用が可能となる、との着想を得た。
【0069】
しかし、本出願の発明者らが、シリンドリカルレンズ部21aの光軸AXよりも下側半分へ入射する光線の角度分布を測定した結果、第1に、当該光線の角度分布は、図12に示すように、光軸AX(図13に矢印Aで示した、基点がZ0、先端がZ35のZ軸)上の各範囲(Z0〜5、Z5〜10、Z10〜Z15、Z15〜20、Z20〜25)ごとに異なっていること、第2に、これに起因して、単一の反射面を用いるだけでは、当該シリンドリカルレンズ部21aの光軸AXよりも下側半分へ入射する光線を導光板本体11b(第2出射面11b1)に効率よく(無駄なく)入射させることができないこと、を見出した。なお、図12中横軸の角度は、図13に示した0°と90°との間の角度に対応している。
【0070】
本実施形態では、上記知見等に基づき、Z軸上の各範囲(Z0〜5、Z5〜10、Z10〜Z15、Z15〜20、Z20〜25)それぞれに到達する光線を導光板本体11b(第2出射面11b1)に効率よく(無駄なく)入射させるため、図13、図14、図15(a)〜(d)に示すように、導光板ユニット10と投影レンズ20との間に、Z軸上の各範囲それぞれに対応する位置に複数の反射面30a〜30eを配置した。
【0071】
各反射面30a〜30eは、図15(a)等に示すように、シリンドリカルレンズ部21aの軸方向長さ寸法とほぼ同じ長さ寸法の、シリンドリカルレンズ部21aの軸方向(図15(a)中左右方向)に延びる平板形状の反射面である。各反射面30a〜30eは、当該各反射面30a〜30eに到達した導光板本体11b(第2出射面11b1)から照射された光線(特にピーク光度を含む光線)を、当該各反射面30a〜30e直上の導光板10(第2出射面11b1)に向けて反射するように、傾斜した姿勢で配置されている。
【0072】
明瞭なカットオフラインを形成する場合には、図14、図15(a)〜(d)等に示すように、各反射面30a〜30eの両側に、それぞれ左右レンズ部21b、21cの焦点ラインFLに沿って延びる上端縁41を有する主シェード40を配置するのが望ましい。焦点ラインFLとは、例えば図16に示すように、左右レンズ部21b、21cの光軸AX(回転軸)を含む水平面(又は当該水平面に対して平行な水平面)に含まれ、かつ、光軸AX(回転軸)に対する傾斜角度が異なる複数の平行光線(図16は複数の平行光線L1〜L4を例示)を、左右レンズ部21b、21cの出射面側から当該左右レンズ部21b、21cに入射させ、入射面22側から出射させた場合に形成される焦点群のことである。この焦点ラインFLに、上端縁41を沿わせた状態で主シェード40を配置することで、明瞭なカットオフラインを有する配光パターンを形成することが可能となる。但し、複数の反射面30a〜30eを設置せずに、主シェード40のみを配置したとしても、図11(a)及び図11(b)にある幻惑光P1は消失せず、複数の反射面30a〜30eを設置してはじめて幻惑光P1は解消することが可能となる。
【0073】
本実施形態の車両用灯具100によれば、上記構成の複数の反射面30a〜30eを導光板ユニット10と投影レンズ20との間に配置したことにより(図13〜図15参照)、導光板10(第1出射面11a1及び第2出射面11b1)から照射され、左右方向に広がる光線(図9参照)は、シリンドリカルレンズ部21aの光軸AXよりも下側半分へ入射することなく、複数の反射面30a〜30eに到達し、当該複数の反射面30a〜30eによってそれぞれの直上の導光板10(の第2出射面11b1)に向けて反射される。このため、当該左右方向に広がる光線がシリンドリカルレンズ部21aの光軸AXよりも下側半分に入射するのを防止することが可能となる。 このため、当該左右方向に広がる光線がシリンドリカルレンズ部21aの光軸AXよりも下側半分へ入射することに起因する幻惑光P1を防止することが可能となる(図17参照)。すなわち、本実施形態の複数の反射面30a〜30eを用いた車両用灯具100によれば、水平線Hよりも上に幻惑光が現れず、ヘッドランプに適した配光パターンを得ることが可能な車両用灯具を提供することが可能となる。
【0074】
図17は、本実施形態の複数の反射面30a〜30eを用いた車両用灯具100によって形成される配光パターンの例である。図17を参照すると、当該複数の反射面30a〜30eを用いた車両用灯具100によって形成される配光パターンには水平線Hよりも幻惑光が現れず、ヘッドランプに適した配光パターンが得られることが分かる。
【0075】
また、本実施形態の車両用灯具100によれば、上記構成の複数の反射面30a〜30eを導光板ユニット10と投影レンズ20との間に配置したことにより(図13〜図15参照)、複数の反射面30a〜30eによってそれぞれの直上の導光板10(の第2出射面11b1)に向けて反射された光線は、導光板本体11b内部に入射し、第2裏面11b2(又はその外側の裏側反射シート14)によって投影レンズ20に向けて反射され、投影レンズ20によって反転、拡大投影される配光パターン(図17参照)の一部(水平線H以下に左右方向、上下方向にワイドな配光パターンとして現れる)を形成する。すなわち、本実施形態の車両用灯具100によれば、左右方向に広がる光線等の再利用が可能となる。
【0076】
また、本実施形態の車両用灯具100によれば、図3などに示すように、導光板本体11bは、基端部11aに対し、投影レンズ20の焦点F3近傍において投影レンズ20側に折り曲げられており、第1裏面11a3と第2裏面11b2の間には楕円系反射面としての反射面11cが形成されている。このため、図7に示すように、入射面11a1から導光板11内部に入射して導光され、当該反射面11cに到達した光源12からの光線は、当該反射面11cによって第1出射面11a2及び第2出射面11b1(主に第1出射面11a2)に対する入射角が臨界角内となるように投影レンズ20の焦点F3(第2焦点F2)近傍に向けて反射され、第1出射面11a2及び第2出射面11b1から出射する。これにより、第1出射面11a2及び第2出射面11b1上に周囲の輝度よりも高い高輝度部分を含む輝度分布(ヘッドランプに要求される最大光度を含む配光パターンに対応する高輝度部分を含む輝度分布)が形成される。この高輝度部分を含む輝度分布は投影レンズ20によって反転、拡大投影される。これにより、ヘッドランプに要求される最大光度を含む配光パターンを形成することが可能となる。
【0077】
また、本実施形態の車両用灯具100によれば、図3などに示すように、導光板本体11bは、基端部11aに対し、投影レンズ20の焦点近傍において投影レンズ20側に折り曲げられている。このため、導光板本体11bの光軸AX方向の寸法を短くすることが可能となる。このため、車両用灯具100の奥行き寸法を従来以上に短くすることが可能となる。
【0078】
また、本実施形態の車両用灯具100によれば、複数の反射面30a〜30eはそれぞれ、当該反射面30a〜30eに到達した前記シリンドリカルレンズ部21aの光軸AXよりも下側半分へ向かう光線を、当該反射面30a〜30e直上の導光板10(の第2出射面11b1)に向けて反射するように、傾斜した姿勢で配置されている(図13等参照)。このため、シリンドリカルレンズ部21aの光軸AXよりも下側半分へ向かう光線を、複数の反射面30a〜30eによってそれぞれの直上の導光板10(の第2出射面11b1)へ効率よく(無駄なく)入射させることが可能となる。
【0079】
次に、変形例について説明する。
【0080】
上記実施形態では、複数の反射面30a〜30e同士の間にスペースが形成されている例について説明したが(図13、図14等参照)、本発明はこれに限定されない。例えば、図18に示すように、複数の反射面30a〜30e同士の間を閉塞してもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、複数の反射面30a〜30eが5つである例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、5つ未満、又は、6つ以上の複数の反射面を採用してもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、複数の反射面30a〜30eが平板形状の反射面である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、複数の反射面として曲面形状の反射面を採用してもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、複数の反射面30a〜30eはそれぞれ直上の導光板10(第2出射面11b1)に向けて反射するように説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、複数の反射面30a〜30eは配光パターン中の光度が要求される部分に向けて反射するように構成(例えば複数の反射面30a〜30eの傾斜角度を調整する、当該反射面30a〜30eの形状を調整する)してもよい。
【0084】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0085】
100…車両用灯具、10…導光板ユニット、11…導光板、11a…基端部、11a1…入射面(入光面)、11a2…出射面、11a3…裏面、11b…導光板本体、11b1…出射面、11b2…裏面、11b 導光板本体、11b3…プリズム面、11b4…プリズム面、11c…反射面、11d…プリズム、12…光源、12a…発光面、13…表側反射シート、13a…上端縁、14…裏側反射シート、20…投影レンズ、21…出射面、21a…シリンドリカルレンズ面、21b…右レンズ面、21c…左レンズ面、22…入射面、30…補助シェード(遮光シェード)、31…反射面、40…主シェード、41…上端縁、50…補助反射面、60…プリズム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光領域で透明な材料からなる導光板、光源及び投影レンズを備えた車両用灯具において、
前記導光板は、基端部、前記基端部に対し、前記投影レンズの焦点近傍において前記投影レンズ側に折り曲げられた導光板本体、及び、反射面を含んでおり、
前記基端部は、入射面、第1出射面及びその反対側の第1裏面を含んでおり、
前記導光板本体は、第2出射面、その反対側の第2裏面、及び、プリズム面を含んでおり、
前記入射面は、前記光源から照射される光線を前記導光板内部に入射させるための入光面であり、
前記第1出射面及び第2出射面は、前記投影レンズ側に形成されており、
前記第1裏面及び第2裏面は、前記投影レンズとは反対側に形成されており、
前記反射面は、前記第1裏面と第2裏面の間、又は、前記第1裏面に形成されており、 前記プリズム面は、前記入射面から前記導光板内部に入射して導光され、当該プリズム面に到達した前記光源からの光線を、前記第1出射面及び第2出射面に対する入射角が臨界角内となるように当該第1出射面及び第2出射面に向けて反射し、当該第1出射面及び第2出射面上に輝度分布を形成するためのレンズカット面であり、
前記反射面は、前記入射面から前記導光板内部に入射して導光され、当該反射面に到達した前記光源からの光線を、前記第1出射面及び第2出射面に対する入射角が臨界角内となるように前記投影レンズの焦点近傍に向けて反射し、前記第1出射面及び第2出射面上に周囲の輝度よりも高い高輝度部分を形成するための反射面であり、
前記投影レンズは、前記第1出射面及び第2出射面上に形成された輝度分布を反転、拡大投影し、所定配光パターンを形成するためのレンズであって、少なくともシリンドリカルレンズ部を含んでおり、
さらに、
前記導光板と前記投影レンズとの間に配置され、前記導光板から照射された前記光源からの光線のうち、前記シリンドリカルレンズ部の光軸よりも下側半分へ向かう光線を前記導光板に向けて反射するための複数の反射面を備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記複数の反射面は、当該反射面に到達した前記シリンドリカルレンズ部の光軸よりも下側半分へ向かう光線を、当該反射面直上の導光板に向けて反射するように、傾斜した姿勢で配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項1】
可視光領域で透明な材料からなる導光板、光源及び投影レンズを備えた車両用灯具において、
前記導光板は、基端部、前記基端部に対し、前記投影レンズの焦点近傍において前記投影レンズ側に折り曲げられた導光板本体、及び、反射面を含んでおり、
前記基端部は、入射面、第1出射面及びその反対側の第1裏面を含んでおり、
前記導光板本体は、第2出射面、その反対側の第2裏面、及び、プリズム面を含んでおり、
前記入射面は、前記光源から照射される光線を前記導光板内部に入射させるための入光面であり、
前記第1出射面及び第2出射面は、前記投影レンズ側に形成されており、
前記第1裏面及び第2裏面は、前記投影レンズとは反対側に形成されており、
前記反射面は、前記第1裏面と第2裏面の間、又は、前記第1裏面に形成されており、 前記プリズム面は、前記入射面から前記導光板内部に入射して導光され、当該プリズム面に到達した前記光源からの光線を、前記第1出射面及び第2出射面に対する入射角が臨界角内となるように当該第1出射面及び第2出射面に向けて反射し、当該第1出射面及び第2出射面上に輝度分布を形成するためのレンズカット面であり、
前記反射面は、前記入射面から前記導光板内部に入射して導光され、当該反射面に到達した前記光源からの光線を、前記第1出射面及び第2出射面に対する入射角が臨界角内となるように前記投影レンズの焦点近傍に向けて反射し、前記第1出射面及び第2出射面上に周囲の輝度よりも高い高輝度部分を形成するための反射面であり、
前記投影レンズは、前記第1出射面及び第2出射面上に形成された輝度分布を反転、拡大投影し、所定配光パターンを形成するためのレンズであって、少なくともシリンドリカルレンズ部を含んでおり、
さらに、
前記導光板と前記投影レンズとの間に配置され、前記導光板から照射された前記光源からの光線のうち、前記シリンドリカルレンズ部の光軸よりも下側半分へ向かう光線を前記導光板に向けて反射するための複数の反射面を備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記複数の反射面は、当該反射面に到達した前記シリンドリカルレンズ部の光軸よりも下側半分へ向かう光線を、当該反射面直上の導光板に向けて反射するように、傾斜した姿勢で配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図18】
【図19】
【図11】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図18】
【図19】
【図11】
【図17】
【公開番号】特開2010−205418(P2010−205418A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46225(P2009−46225)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
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