説明

車両用灯具

【課題】車両用灯具においては、省電力(省エネルギー)や放熱構造の小型化上、レンズにおける光透過率を向上させて光源の光の利用効率を向上させることが重要である。
【解決手段】この発明は、半導体型光源3と、投影レンズ4と、投影レンズ4の出射面11および入射面12にコーティングされているARコート14と、ARコート14の表面にコーティングされている帯電防止コート15と、を備えるものである。この結果、この発明は、投影レンズ4における光透過率を向上させて半導体型光源3の光の利用効率を向上させることができる。これにより、この発明は、省電力(省エネルギー)化や放熱構造の小型化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光源からの光をレンズを通して外部に照射する車両用灯具に関するものである。特に、この発明は、レンズにおける光透過率を向上させて光源の光の利用効率を向上させる車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具は、一般に、光源からの光をレンズを通して外部に照射するものである。この車両用灯具においては、省電力(省エネルギー)や放熱構造の小型化上、レンズにおける光透過率を向上させて光源の光の利用効率を向上させることが重要である。このために、レンズにARコートをコーティングして、レンズの表面における光源からの光の反射率を低下させることにより、レンズにおける光透過率を向上させて光源の光の利用効率を向上させる車両用灯具が考えられる。また、帯電防止材料からなるレンズを使用して、レンズの表面におけるほこりの付着を防止することにより、レンズにおける光透過率を向上させて光源の光の利用効率を向上させる車両用灯具が考えられる。
【0003】
前記のレンズにARコートをコーティングする車両用灯具としては、特許文献1、特許文献2がある。また、前記の帯電防止材料からなるレンズを使用する車両用灯具としては、特許文献3がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−221513号公報
【特許文献2】特開2008−97928号公報
【特許文献3】特開2002−124108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、車両用灯具においては、省電力(省エネルギー)や放熱構造の小型化上、レンズにおける光透過率を向上させて光源の光の利用効率を向上させることが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明(請求項1にかかる発明)は、光源と、レンズと、レンズの少なくとも一部の表面にコーティングされているARコートと、レンズのARコートがコーティングされていない部分の表面もしくはARコートの表面少なくともいずれか一方にコーティングされている帯電防止コートと、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、この発明(請求項2にかかる発明)は、帯電防止コートが無色透明の帯電防止コートからなる、ことを特徴とする。
【0008】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)は、光源と、帯電防止材料からなるレンズと、レンズの少なくとも一部の表面にコーティングされているARコートと、を備えることを特徴とする。
【0009】
さらにまた、この発明(請求項4にかかる発明)は、レンズが無色透明の帯電防止材料からなる、ことを特徴とする。
【0010】
さらにまた、この発明(請求項5にかかる発明)は、レンズのうち他の部材と溶着する部分以外の部分のうち少なくとも一部の表面には、ARコートがコーティングされている、ことを特徴とする。
【0011】
さらにまた、この発明(請求項6にかかる発明)は、ARコートが、フッ素系の液体のコーティング材料でディップコートにより薄膜1層をレンズの表面に成膜してなる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、レンズの表面にコーティングされているARコートにより、レンズの表面における光源からの光の反射率を低下させることができる。この結果、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、レンズにおける光透過率を向上させて光源の光の利用効率を向上させることができる。また、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、レンズの表面もしくはARコートの表面にコーティングされている帯電防止コートにより、レンズの表面におけるほこりの付着を防止することができる。この結果、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、レンズにおける光透過率を向上させて光源の光の利用効率を向上させることができる。このように、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、ARコートの光反射防止効果と帯電防止コートのほこり付着防止効果との相乗効果により、レンズにおける光透過率をさらに向上させて光源の光の利用効率をさらに向上させることができる。この結果、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、省電力(省エネルギー)化や放熱構造の小型化を図ることができる。
【0013】
しかも、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、帯電防止コートにより、レンズの表面におけるほこりの付着を防止することができるので、レンズ製造工程における不具合や不良品の発生を防止することができ、また、製造後の製品としてのレンズの見栄えや製品価値が向上される。特に、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、帯電防止コートのほこり付着防止効果とARコートのほこり付着防止(汚れ防止)機能との相乗効果により、レンズ製造工程における不具合や不良品の発生をさらに確実に防止することができ、また、製造後の製品としてのレンズの見栄えや製品価値がさらに向上される。
【0014】
また、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用灯具は、帯電防止コートが無色透明の帯電防止コートからなるので、レンズ性能が損なわれない。
【0015】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用灯具は、前記の発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具と同様に、レンズの表面にコーティングされているARコートにより、レンズの表面における光源からの光の反射率を低下させることができる。この結果、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用灯具は、レンズにおける光透過率を向上させて光源の光の利用効率を向上させることができる。また、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用灯具は、帯電防止材料からなるレンズにより、レンズの表面におけるほこりの付着を防止することができる。この結果、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用灯具は、レンズにおける光透過率を向上させて光源の光の利用効率を向上させることができる。このように、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用灯具は、ARコートの光反射防止効果と帯電防止材料からなるレンズのほこり付着防止効果との相乗効果により、レンズにおける光透過率をさらに向上させて光源の光の利用効率をさらに向上させることができる。この結果、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用灯具は、省電力(省エネルギー)化や放熱構造の小型化を図ることができる。
【0016】
しかも、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用灯具は、帯電防止材料からなるレンズにより、レンズの表面におけるほこりの付着を防止することができるので、レンズ製造工程における不具合や不良品の発生を防止することができ、また、製造後の製品としてのレンズの見栄えや製品価値が向上される。特に、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用灯具は、帯電防止材料からなるレンズのほこり付着防止効果とARコートのほこり付着防止(汚れ防止)機能との相乗効果により、レンズ製造工程における不具合や不良品の発生をさらに確実に防止することができ、また、製造後の製品としてのレンズの見栄えや製品価値がさらに向上される。
【0017】
さらにまた、この発明(請求項4にかかる発明)の車両用灯具は、レンズが無色透明の帯電防止材料からなるので、レンズ性能が損なわれない。
【0018】
さらにまた、この発明(請求項5にかかる発明)の車両用灯具は、レンズのうち他の部材と溶着する部分の表面にはARコートがコーティングされていないので、ARコートをコーティングすることによるレンズと他の部材との溶着強度や溶着効率の低下を防ぎ、レンズと他の部材との溶着強度や溶着効率の向上を図ることができる。
【0019】
さらにまた、この発明(請求項6にかかる発明)の車両用灯具は、ARコートがフッ素系の液体のコーティング材料でディップコートにより薄膜1層をレンズの表面に成膜してなるので、製造コストを安価にすることができる。すなわち、フッ素系の液体のコーティング材料を使用するので、コーティング材料の液を再利用することができ、しかも、蒸着設備よりもディップ設備のほうが安価であり、特に、少量ロット時などに利点がある。しかも、この発明(請求項6にかかる発明)の車両用灯具は、薄膜1層を成膜してなるので、蒸着により光の干渉を利用した多層膜のARコートのように、見る角度によって干渉色が見えることが無く、その分、見栄えの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明にかかる車両用灯具の実施例を示す縦断面図(垂直断面図)である。
【図2】同じく、光源の光がレンズを透過する状態を示す説明図である。
【図3】同じく、レンズをマスク冶具にセットする前の状態を示す説明図である。
【図4】同じく、マスク冶具にセットしたレンズにARコートをコーティングしている状態を示す説明図である。
【図5】同じく、レンズにARコートをコーティングした後にレンズをマスク冶具から取り出した状態を示す説明図である。
【図6】同じく、成膜容器にセットしたレンズにARコートをコーティングしている状態を示す説明図である。
【図7】同じく、レンズにARコートをコーティングした後にレンズを成膜容器から取り出した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、この発明にかかる車両用灯具の実施例のうちの2例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。図面において、符号「Z−Z」は、灯具光軸(ランプユニットの光軸、収束型反射面の光軸、投影レンズの光軸)を示す。また、図面において、ARコート14および帯電防止コート15の膜厚を実際のものよりも厚く図示されている。
【実施例1】
【0022】
以下、この実施例1における車両用灯具の構成について説明する。この例は、たとえば、自動車用前照灯について説明する。図1において、符号1は、この実施例1における車両用灯具である。前記車両用灯具1は、図1に示すように、いわゆるプロジェクタタイプであって、ユニット構造をなす。前記車両用灯具1は、リフレクタ2と、半導体型光源3と、投影レンズ(凸レンズ、集光レンズ)4と、シェード兼付加リフレクタ5と、ヒートシンク部材6と、図示しない自動車用前照灯のランプハウジングおよびランプレンズ(たとえば、素通しのアウターレンズなど)と、から構成されている。
【0023】
前記リフレクタ2および前記半導体型光源3および前記投影レンズ4および前記シェード兼付加リフレクタ5および前記ヒートシンク部材6は、ランプユニットを構成する。1個もしくは複数個の前記ランプユニットは、自動車用前照灯のランプハウジングおよびランプレンズにより区画されている灯室内に、たとえば光軸調整機構を介して配置されている。
【0024】
前記リフレクタ2は、光不透過性の樹脂部材などから構成されており、ケーシングやハウジングやホルダなどの保持部材と兼用である。前記リフレクタ2と前記シェード兼付加リフレクタ5と前記ヒートシンク部材6とは、相互に固定されている。
【0025】
前記リフレクタ2の前側の部分は、円筒形状のホルダ部7を構成している。前記ホルダ部7には、前記投影レンズ4が固定されている。一方、前記リフレクタ2の中央側から後側までの部分は、ほぼ光軸Z−Zに沿って水平に上側の部分の閉塞部と下側の部分の開口部とからなる。前記リフレクタ2のドーム形状の閉塞部の凹内面には、アルミ蒸着もしくは銀塗装などが施されていて収束型反射面8が設けられている。
【0026】
前記収束型反射面8は、楕円を基調とした反射面、たとえば、回転楕円面や楕円を基本とした自由曲面(NURBS曲面)などの反射面(図1の垂直断面が楕円面をなし、かつ、図示しない水平断面が放物面ないし変形放物面をなす反射面)からなる。このために、前記収束型反射面8は、第1焦点F1と第2焦点(水平断面上の焦線、すなわち、上(平面)から見て両端が前記投影レンズ4側に位置し中央が前記半導体型光源3側に位置するような湾曲した焦線)F2と、光軸Z−Zと、を有する。
【0027】
前記半導体型光源3は、たとえば、LED、EL(有機EL)などの自発光半導体型光源(この実施例1ではLED)を使用する。前記半導体型光源3は、熱伝導性絶縁基板(たとえば、セラミック)の基板9と、前記基板9の一面(上面)に設けられている微小な矩形形状(正方形形状)のLEDチップの発光体(図示せず)と、前記発光体を覆うほぼ半球形状(ドーム形状)の光透過部材(レンズ)10と、からなるものである。前記半導体型光源3の前記基板9は、前記ヒートシンク部材6の一面(上面)に固定されている。前記半導体型光源3の前記発光体(発光部)は、前記収束型反射面8の前記第1焦点F1もしくはその近傍に位置する。
【0028】
前記投影レンズ4は、非球面レンズの凸レンズである。前記投影レンズ4は、出射面11を有する前方側(外部側)の部分と、入射面12を有する後方側(前記半導体型光源3側)の部分と、前記前方側の部分と前記後方側の部分との間に一体に設けられているリブの部分13と、からなる。前記投影レンズ4の前記出射面11は、曲率が大きい(曲率半径が小さい)凸非球面をなし、一方、前記投影レンズ4の前記入射面12は、曲率が小さい(曲率半径が大きい)凸非球面をなす。このような投影レンズ4を使用することにより、前記投影レンズ4の焦点距離が小さくなるので、その分、この実施例1における車両用灯具1の前記投影レンズ4の光軸Z−Z方向の寸法がコンパクトとなる。なお、前記投影レンズ4の後方側は、平非球面(平面)をなすものであってもよい。
【0029】
前記投影レンズ4は、前側焦点(前記半導体型光源3側の焦点)および後側焦点(外部側の焦点)と、前記前側焦点と前記後側焦点とを結ぶ光軸Z−Zとを有する。前記収束型反射面8の光軸Z−Zと前記投影レンズ4の光軸Z−Zとは、灯具光軸としてほぼ一致する。前記投影レンズ4の前側焦点は、レンズ焦点(物空間側の焦点面であるメリジオナル像面)FLである。前記投影レンズ4の前記レンズ焦点FLは、前記収束型反射面8の第2焦点F2もしくはその近傍に位置する。なお、前記半導体型光源3から放射される光L1は、高い熱を持たないので、前記投影レンズ4として樹脂製のレンズを使用することができる。前記投影レンズ4は、この例ではアクリルを使用する。前記投影レンズ4は、カットオフラインを有する配光パターン(図示せず)、たとえば、すれ違い用配光パターン(ロービーム用配光パターン)を車両の前方に照射(投影)するものである。
【0030】
図2(A)に示すように、前記投影レンズ4の前記出射面11および前記入射面12には、ARコート(Anti-Reflection Coat 減反射コート、反射防止コート)14がそれぞれコーティングされている。また、前記ARコート14の表面には、帯電防止コート15がそれぞれコーティングされている。なお、前記投影レンズ4の前記リブの部分13の表面には、前記ARコート14および前記帯電防止コート15がコーティングされていない。前記投影レンズ4の前記リブの部分13は、前記リフレクタ2の前記ホルダ部7に溶着により固定されている。
【0031】
前記ARコート14は、たとえば、蒸着、ディップコート、スプレー塗装などにより、成膜されている。以下、図3〜図5を参照して蒸着による成膜と、図6および図7を参照してディップコートによる成膜と、について説明する。
【0032】
図3〜図5において、符号16は、マスク冶具である。前記マスク冶具16は、円筒形状をなし、一方の開口部に鍔部を一体に設けたものである。前記マスク冶具16は、前記投影レンズ4の前記出射面11および前記入射面12に前記ARコート14をコーティングし、かつ、前記投影レンズ4の前記リブの部分13の表面に前記ARコート14をコーティングしないようにする冶具である。
【0033】
まず、前記マスク冶具16中に前記投影レンズ4を図3中の矢印方向に挿入セットする(図3参照)。つぎに、前記投影レンズ4の前記リブの部分13を前記マスク冶具16の鍔部に当てって、前記投影レンズ4の前記出射面11を前記マスク冶具16の開口部から外側に突出させる。この状態で、前記投影レンズ4の前記出射面11にARコート14の材料を図4中の矢印に示すように蒸着する(図4参照)。前記投影レンズ4の前記出射面11にARコート14を、光の干渉を利用した多層膜(2〜4層)で蒸着コーティングしたところで、前記マスク冶具16中から前記投影レンズ4を図5中の矢印方向に取り出す(図5参照)。これにより、前記投影レンズ4の前記出射面11には、前記ARコート14がコーティングされる。同様にして、前記投影レンズ4の前記入射面12にも、前記ARコート14がコーティングされる。
【0034】
図6および図7において、符号17は、成膜容器である。前記成膜容器17は、ARコーティング液(フッ素系の液体のコーティング材料)を入れる上部の入口18と、ARコーティング液を出す下部の出口19と、前記投影レンズ4をセットする中間部の開口部20と、前記開口部20の全周に設けられているパッキン21と、前記出口19に設けられている開閉蓋22と、から構成されているものである。前記成膜容器17は、前記投影レンズ4の前記出射面11および前記入射面12に前記ARコート14をコーティングし、かつ、前記投影レンズ4の前記リブの部分13の表面に前記ARコート14をコーティングしないようにする容器である。
【0035】
まず、前記成膜容器17の前記パッキン21に前記投影レンズ4の前記出射面11の前記リブの部分13寄りの全周縁を当接させて、かつ、前記投影レンズ4の前記出射面11を前記成膜容器17の前記開口部20から前記成膜容器17内に挿入セットする。また、前記成膜容器17の前記出口19を前記開閉蓋22で閉じる。この状態で、前記成膜容器17の前記入口18からARコーティング液を流し込んで、前記投影レンズ4の前記出射面11をARコーティング液に浸す(図6参照)。つぎに、前記開閉蓋22を開いて、前記成膜容器17の前記出口19から前記成膜容器17中のARコーティング液を所定の一定のスピードで抜く。すると、前記投影レンズ4の前記出射面11には、ARコート14が膜厚約100nm程度の膜として1層成膜される。前記投影レンズ4を前記成膜容器17から取り出す。(図7参照)。これにより、前記投影レンズ4の前記出射面11には、前記ARコート14がコーティングされる。同様にして、前記投影レンズ4の前記入射面12にも、前記ARコート14がコーティングされる。
【0036】
前記帯電防止コート15は、前記投影レンズ4の前記出射面11および前記入射面12の導電性を増大させて帯電を防止させる一般の帯電防止のコーティング剤であって、特に、この例では、無色透明なコーティング剤を使用するものである。前記帯電防止コート15は、前記帯電防止のコーティング剤を、前記投影レンズ4の前記出射面11および前記入射面12にコーティングされている前記ARコート14に、蒸着(図3〜図5の蒸着と同様の蒸着でも良い)、スプレー、ディッピング(図6および図7のディップコートと同様のディップコートでも良い)などにより、帯電を防止する膜をコーティングしてなるものである。
【0037】
前記シェード兼付加リフレクタ5は、前記リフレクタ2と同様に、光不透過性の樹脂部材などから構成されている。前記シェード兼付加リフレクタ5は、前記投影レンズ4と前記半導体型光源3との間に配置されている。前記シェード兼付加リフレクタ5は、中空形状をなし、水平板の上面板部23と、垂直板の左右面板部24と、円弧板の前面板部25と、からなる。前記シェード兼付加リフレクタ5の前記上面板部23と前記前面板部25との角部(縁部、エッジ部)26は、前記すれ違い用配光パターンの前記カットオフラインを形成するものであって、前記収束型反射面8の第2焦点F2もしくはその近傍、あるいは、前記投影レンズ4のレンズ焦点FLもしくはその近傍に位置する。
【0038】
前記シェード兼付加リフレクタ5には、前記半導体型光源3から放射されて前記収束型反射面8で反射された反射光L2の一部L3をカットオフして前記すれ違い用配光パターンのカットオフラインを形成するシェード、すなわち、前記上面板部23が設けられている。
【0039】
前記シェード兼付加リフレクタ5の前記上面板部23の上面には、アルミ蒸着もしくは銀塗装などが施されていて、前記上面板部23(シェード)でカットオフされた前記収束型反射面8からの反射光L2の一部L3を前記投影レンズ4側に反射させる付加反射面27が設けられている。
【0040】
前記ヒートシンク部材6は、たとえば、樹脂や金属性ダイカストなどの熱伝導率が高い材料からなる。前記ヒートシンク部材6は、上部が平板形状をなし、中間部から下部にかけてフィン形状をなす。
【0041】
この実施例1における車両用灯具1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0042】
まず、車両用灯具1の半導体型光源3の発光体を点灯発光させる。すると、半導体型光源3の発光体から光L1が放射される。この光L1は、収束型反射面8で反射され、この反射光L2が収束型反射面8の第2焦点F2に収束(集中)する。第2焦点F2に収束(集中)する反射光L2の一部L3は、シェード兼付加リフレクタ5の上面板部23のシェードによりカットオフされ、かつ、シェード兼付加リフレクタ5の上面板部23と前面板部25との角部26によりすれ違い用配光パターンのカットオフラインおよびエルボー点が形成される。このシェード兼付加リフレクタ5によりカットオフされた反射光L3の大部分は、シェード兼付加リフレクタ5の上面板部23の上面の付加反射面27により投影レンズ4側に反射される。一方、シェード兼付加リフレクタ5の上面板部23のシェードによりカットオフされなかった反射光L2は、そのまま投影レンズ4側に進む。
【0043】
そして、投影レンズ4側に進んだ光L2および投影レンズ4側に反射された光L3は、投影レンズ4を透過して、投影レンズ4のレンズ焦点FLにおける光の像を上下左右に反転させた光の像、すなわち、カットオフラインおよびエルボー点を有するすれ違い用配光パターンとして自動車(車両)前方に投影されて路面などを照明する。
【0044】
光L2、L3が帯電防止コート15およびARコート14を透過して投影レンズ4の入射面12から投影レンズ4中に入射する際には、ARコート14の作用により、図2(A)中の点線矢印に示す投影レンズ4の入射面12における反射光L4を減少させることができる。また、投影レンズ4中に入射した光L2、L3が投影レンズ4の出射面11からARコート14および帯電防止コート15を透過して外部に出射する際には、ARコート14の作用により、図2(A)中の点線矢印に示す投影レンズ4の出射面11における反射光L5を減少させることができる。
【0045】
この実施例1における車両用灯具1は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0046】
この実施例1における車両用灯具1は、投影レンズ4の出射面11および入射面12にコーティングされているARコート14により、投影レンズ4の出射面11および入射面12における半導体型光源3からの光L2、L3の反射率を低下させることができる。この結果、この実施例1における車両用灯具1は、投影レンズ4における光透過率を向上させて半導体型光源3の光L2、L3の利用効率を向上させることができる。また、この実施例1における車両用灯具1は、ARコート14の表面にコーティングされている帯電防止コート15により、投影レンズ4の出射面11および入射面12におけるほこりの付着を防止することができる。この結果、この実施例1における車両用灯具1は、投影レンズ4における光透過率を約4〜8%向上させて半導体型光源3の光L2、L3の利用効率を向上させることができる。このように、この実施例1における車両用灯具1は、ARコート14の光反射防止効果と帯電防止コート15のほこり付着防止効果との相乗効果により、投影レンズ4における光透過率をさらに向上させて半導体型光源3の光L2、L3の利用効率をさらに向上させることができる。この結果、この実施例1における車両用灯具1は、省電力(省エネルギー)化や放熱構造の小型化を図ることができる。
【0047】
しかも、この実施例1における車両用灯具1は、帯電防止コート15により、投影レンズ4の出射面11および入射面12におけるほこりの付着を防止することができるので、投影レンズ4の製造工程における不具合や不良品の発生を防止することができ、また、製造後の製品としての投影レンズ4の見栄えや製品価値が向上される。特に、この実施例1における車両用灯具1は、帯電防止コート15のほこり付着防止効果とフッ素系のARコート14のほこり付着防止(汚れ防止)機能との相乗効果により、投影レンズ4の製造工程における不具合や不良品の発生をさらに確実に防止することができ、また、製造後の製品としての投影レンズ4の見栄えや製品価値がさらに向上される。
【0048】
また、この実施例1における車両用灯具1は、帯電防止コート15が無色透明の帯電防止コートからなるので、投影レンズ4の性能が損なわれない。
【0049】
さらに、この実施例1における車両用灯具1は、投影レンズ4のうちリフレクタ2のホルダ部7と溶着する部分、すなわち、リブの部分13の表面にはARコート14(および帯電防止コート15)がコーティングされていないので、ARコート14(および帯電防止コート15)をコーティングすることによる投影レンズ4とリフレクタ2のホルダ部7との溶着強度や溶着効率の低下を防ぎ、投影レンズ4とリフレクタ2のホルダ部7との溶着強度や溶着効率の向上を図ることができる。
【0050】
さらにまた、この実施例1における車両用灯具1は、ARコート14がフッ素系の液体のコーティング材料でディップコートにより薄膜1層を投影レンズ4の出射面11および入射面12に成膜してなるので、製造コストを安価にすることができる。すなわち、フッ素系の液体のコーティング材料を使用するので、コーティング材料の液を再利用することができ、しかも、蒸着設備よりもディップ設備のほうが安価であり、特に、少量ロット時などに利点がある。しかも、この実施例1における車両用灯具1は、薄膜1層を成膜してなるので、蒸着により光の干渉を利用した多層膜のARコートのように、見る角度によって干渉色が見えることが無く、その分、見栄えの向上を図ることができる。
【0051】
なお、前記の実施例1においては、ARコート14と帯電防止コート15とを投影レンズ4の出射面11および入射面12の両面にそれぞれコーティングするものである。ところが、この発明においては、ARコート14と帯電防止コート15とを投影レンズ4の出射面11または入射面12の片面(一面)にコーティングするものでも良い。この場合の投影レンズ40の光透過率は、約2〜4%向上される。また、ARコート14を投影レンズ4の出射面11および入射面12の両面にそれぞれコーティングして、帯電防止コート15を投影レンズ4の出射面11または入射面12の片面(一面)にコーティングしても良い。さらに、ARコート14を投影レンズ4の出射面11に、帯電防止コート15を投影レンズ4の入射面12に、それぞれ別個にコーティングしても良いし、逆に、ARコート14を投影レンズ4の入射面12に、帯電防止コート15を投影レンズ4の出射面11に、それぞれ別個にコーティングしても良い。
【実施例2】
【0052】
図2(B)は、この発明にかかる車両用灯具の実施例2を示す説明図である。この実施例2における車両用灯具は、投影レンズ40として、無色透明の帯電防止材料からなるものを使用するものである。前記投影レンズ40の前記出射面11および前記入射面12にARコート14を、前記の実施例1と同様に、それぞれコーティングする。
【0053】
この実施例2における車両用灯具は、前記の実施例1における車両用灯具とほぼ同様の作用効果を達成することができる。特に、この実施例2における車両用灯具は、投影レンズ40の出射面11および入射面12にコーティングされているARコート14により、投影レンズ40の出射面11および入射面12における半導体型光源3からの光L2、L3の反射率を低下させることができる。すなわち、投影レンズ40の出射面11および入射面12における半導体型光源3からの光L2、L3の反射光L4、L5を減少させることができる。この結果、この実施例2における車両用灯具は、投影レンズ40における光透過率を約4〜8%向上させて半導体型光源3の光L2、L3の利用効率を向上させることができる。また、この実施例2における車両用灯具は、帯電防止材料からなる投影レンズ40により、投影レンズ40の出射面11および入射面12におけるほこりの付着を防止することができる。この結果、この実施例2における車両用灯具は、投影レンズ40における光透過率を向上させて半導体型光源3の光L2、L3の利用効率を向上させることができる。このように、この実施例2における車両用灯具は、ARコート14の光反射防止効果と帯電防止材料からなる投影レンズ40のほこり付着防止効果との相乗効果により、投影レンズ40における光透過率をさらに向上させて半導体型光源3の光L2、L3の利用効率をさらに向上させることができる。この結果、この実施例2における車両用灯具1は、省電力(省エネルギー)化や放熱構造の小型化を図ることができる。
【0054】
しかも、この実施例2における車両用灯具は、帯電防止材料からなる投影レンズ40により、投影レンズ40の出射面11および入射面12におけるほこりの付着を防止することができるので、投影レンズ40の製造工程における不具合や不良品の発生を防止することができ、また、製造後の製品としての投影レンズ40の見栄えや製品価値が向上される。特に、この実施例2における車両用灯具は、帯電防止材料からなる投影レンズ40のほこり付着防止効果とARコート14のほこり付着防止(汚れ防止)機能との相乗効果により、投影レンズ40の製造工程における不具合や不良品の発生をさらに確実に防止することができ、また、製造後の製品としての投影レンズ40の見栄えや製品価値がさらに向上される。
【0055】
また、この実施例2における車両用灯具は、投影レンズ40が無色透明の帯電防止材料からなるので、投影レンズの性能が損なわれない。
【0056】
なお、前記の実施例2においては、ARコート14を投影レンズ40の出射面11および入射面12の両面にそれぞれコーティングするものである。ところが、この発明においては、ARコート14を投影レンズ40の出射面11または入射面12の片面(一面)にコーティングするものでも良い。この場合の投影レンズ40の光透過率は、約2〜4%向上される。
【0057】
以下、前記の実施例1、2以外の例について説明する。前記の実施例1、2においては、プロジェクタタイプのランプユニットについて説明するものである。ところが、この発明においては、プロジェクタタイプのランプユニット以外のランプユニット、たとえば、反射タイプのランプユニットや直射タイプのランプユニットなどであっても良い。
【0058】
また、前記の実施例1、2においては、光源として半導体型光源3について説明するものである。ところが、この発明においては、光源として半導体型光源3以外の光源、たとえば、ハロゲンバルブ光源や白熱バルブ光源などであっても良い。
【符号の説明】
【0059】
1 車両用灯具
2 リフレクタ
3 半導体型光源
4 投影レンズ
5 シェード兼付加リフレクタ
6 ヒートシンク部材
7 ホルダ部
8 収束型反射面
9 基板
10 光透過部材
11 出射面
12 入射面
13 リブの部分
14 ARコート
15 帯電防止コート
16 マスク冶具
17 成膜容器
18 入口
19 出口
20 開口部
21 パッキン
22 開閉蓋
23 上面板部
24 左右面板部
25 前面板部
26 角部
27 付加反射面
F1 収束型反射面の第1焦点
F2 収束型反射面の第2焦点
FL 投影レンズのレンズ焦点
Z−Z 光軸(灯具光軸、ランプユニットの光軸、収束型反射面の光軸、投影レンズの光軸)
L1 半導体型光源から放射される光
L2 収束型反射面で反射される光
L3 付加反射面で反射される光
L4 入射面で反射される反射光
L5 出射面で反射される反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光をレンズを通して外部に照射する車両用灯具において、
光源と、
前記光源からの光を外部に照射するレンズと、
前記レンズの少なくとも一部の表面にコーティングされているARコートと、
前記レンズの前記ARコートがコーティングされていない部分の表面もしくは前記ARコートの表面少なくともいずれか一方にコーティングされている帯電防止コートと、
を備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記帯電防止コートは、無色透明の帯電防止コートからなる、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
レンズを有する車両用灯具において、
光源と、
帯電防止材料からなり、かつ、前記光源からの光を外部に照射するレンズと、
前記レンズの少なくとも一部の表面にコーティングされているARコートと、
を備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項4】
前記レンズは、無色透明の帯電防止材料からなる、
ことを特徴とする請求項3に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記レンズのうち他の部材と溶着する部分以外の部分のうち少なくとも一部の表面には、前記ARコートがコーティングされている、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記ARコートは、フッ素系の液体のコーティング材料でディップコートにより薄膜1層をレンズの表面に成膜してなる、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−212109(P2010−212109A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57419(P2009−57419)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】