説明

車両用灯具

【課題】発光ダイオードを光源とする車両用灯具において、放熱性能の向上に寄与する技術を提供する。
【解決手段】発光ダイオードからなる光源21及び光学部材24,25を含む光学系ユニットが、ハウジング12とアウターレンズとによって構成される灯室17内に収容され、車両100のエンジンルームとハウジング12が隣接した状態で車両100に取り付けられる車両用灯具10であり、ハウジング12内壁と光学系ユニットとの間の領域に断熱壁14を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードからなる光源を用いて、車両のエンジンルームとハウジングが隣接した状態で車両に取り付けられる車両用灯具における、断熱技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光源として白色光を放つ発光ダイオード(以下、白色発光ダイオードまたは白色LEDとも称する)を用いた車両用灯具が実用化されつつある。白色LEDを用いた車両用灯具は、小型、省電力、長寿命などの特徴を有しており、急速に利用が拡大することが見込まれる。
【0003】
ところで、白色LEDを用いた車両用灯具は、車両用灯具用光源として要求される高い光量を実現するために、白色LEDに高い電流値を与えられることが多々ある。一般に、白色LEDは、与えられた電流値に比例して発熱する。また、一般に白色LEDは、ジャンクション温度の上昇によって発光効率が低下するという特性を有しており、適正な温度条件下で使用することが望ましい。
【0004】
一方で車両用灯具は、高い気密性を要求されるため、灯室内に外気を導入して白色LEDの冷却を促すような構成は望ましくない。
【0005】
このような白色LEDを用いた車両用灯具において、白色LEDの発熱に関する問題を解決する技術として、白色LED放熱用のヒートシンクをハウジング外部に露出させたもの(例えば、特許文献1参照。)、あるいは、LED光源の実装基板が載置されたマウントプレート、ヒートシンクなどをハウジング3に固定するブラケット等の全ての連結部材を金属材料で形成した技術(例えば、特許文献2参照。)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−59202号公報
【特許文献2】特開2008−84700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような技術によっては、白色LEDを用いた車両用灯具における放熱性能を向上できているとは以下の理由から言い難かった。
【0008】
すなわち、上述のような技術において、白色LEDからの熱を放熱しようとしているハウジングの外側は、一般に車両のエンジンルームであることが多い。この場合において、エンジンルームは高温(100[°C]前後)となるため、そのような箇所から放熱を促すような構造を取ったとしても、白色LEDの温度低減効果は低いと考えられた。むしろ、白色LEDの温度状況によってはエンジンルームからの高熱を受熱してしまい、却って冷却を阻害することも考えられた。
【0009】
以上の点に鑑み、本発明は、発光ダイオードを光源とする車両用灯具において、放熱性能の向上に寄与する技術を提供することを解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段とした。
すなわち、本発明は、発光ダイオードからなる光源及び光学部材を含む光学系ユニットが、ハウジングとアウターレンズとによって構成される灯室内に収容され、車両のエンジンルームと前記ハウジングが隣接した状態で車両に取り付けられる車両用灯具であり、前記ハウジング内壁と前記光学系ユニットとの間の領域に断熱壁を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記断熱壁が、前記ハウジング内壁に対して所定の間隔をもって取り付けられ、前記断熱壁とハウジング内壁との間の領域が、前記筐体内の他の領域と隔離された領域となっていることとしてもよい。
【0012】
さらに、本発明は、前記隔離した領域には、空気または断熱材を充填することとしてもよい。
【0013】
以上のような本発明では、エンジンルームにおいてエンジンからの熱に晒されている車両用灯具のハウジングの内側(灯室内部)に、エンジンからの熱を遮断する断熱壁を備える。
【0014】
そして、この断熱壁を備えることによって、本発明によれば、灯室内部にある発光ダイオードからなる光源への、ハウジング壁面を通過した外部熱源(エンジン)からの熱伝導を抑制することができる。こうすることによって、本発明によれば、灯室内の外部熱源による温度上昇を抑制することになるため、発光ダイオードを光源とする車両用灯具において、放熱性能の向上に寄与する。
【0015】
また、本発明は、ハウジング内壁に対して所定の間隔をもって断熱壁が取り付けられているため、その間隔部分が空気層として機能する。これにより、本発明は、発光ダイオードへの外部熱源からの熱伝導を抑制することができる。
【0016】
さらに、本発明は、上記間隔部分に断熱材を挿入することによって、さらに断熱効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、発光ダイオードを光源とする車両用灯具において、放熱性能の向上に寄与する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一の実施例にかかる車両用灯具の横断面図である。
【図2】本発明の第二の実施例にかかる車両用灯具の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の車両用灯具の一実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の第一の実施例にかかる車両用灯具10の横断面図である。車両用灯具10は、アウターレンズ11とハウジング12がシール材15などの所定の接合方法によって構成する気密な筐体(灯室17)内部に、光学系ユニット20と装飾部材であるエクステンション13と断熱壁14とを備えて構成される。アウターレンズ11は、光学系ユニット20からの照射光を透過するために、例えばポリカーボネートなどの透明樹脂で構成される。また、ハウジング12は、ポリプロピレンなどの樹脂で構成される。
【0021】
光学系ユニット20は、光源としての白色LED21を搭載する基板22,基板22と熱的に接続したヒートシンク23,リフレクタ24,投影レンズ25で構成される。リフレクタ24と投影レンズ25は本発明の光学部材に相当する。
【0022】
リフレクタ24は、白色LED21から照射された光を投影レンズ25に向けて反射する。リフレクタ24を介して投影レンズ25を透過した光は、車両100前方に照射される。
【0023】
断熱壁14は、車両用灯具10の灯室17において、ハウジング12内壁に近い位置に固定される。断熱壁14の取り付け方法は、図1のようにハウジング12内壁にあらかじめ設けられたネジ穴用ボス12aにネジ14aを締め込む、あるいはハウジング12内壁に接着するなど、様々な固定方法で取り付けることができる。
【0024】
ここで、ネジ穴用ボス12aがハウジング12内壁から所定の高さをもって形成されているので、断熱壁14は、ハウジング12内壁から所定距離離間した位置に取り付けられる。そして、断熱壁14が以上のような位置に取り付けられるため、車両用灯具10は、ハウジング12内壁と断熱壁14との間に灯室17とは別の空間として間隙16を生じる。
【0025】
以上のように構成された車両用灯具10は、車両100の進行方向前部において、ハウジング12側がエンジンルーム110に面しアウターレンズ11側が外部に露出した状態で取り付けられる。つまり、車両用灯具10の筐体内部のハウジング12は、外部が高温のエンジン(不図示)からの熱に晒される。
【0026】
かかる状況下において、車両用灯具10は、断熱壁14を設けることによって、ハウジング12から灯室17内部に伝導するエンジンからの熱を緩和することが可能となる。また、車両用灯具10は、断熱壁14とハウジング12内壁との間の間隙16が空気層として機能するため、この間隙16によってもエンジンからの熱伝導をさらに緩和することが可能となる。
【0027】
従って、車両用灯具10によれば、エンジンからの熱によって筐体内部の空間(灯室17)の温度を高めてしまうことがなく、光学系ユニット20の白色LED21のジャンクション温度を高めてしまうことがないため、白色LEDを用いた車両用灯具の耐久性向上を図ることができる。
【実施例2】
【0028】
本発明の車両用灯具の第二の実施例について、添付図面を参照して説明する。
なお、第二の実施例は、上述の第一の実施例と共通の構成については説明を省略する。
【0029】
図2は、第二の実施例にかかる車両用灯具10の側断面図である。第一の実施例の車両用灯具10と第二の実施例の車両用灯具10との相違点は、ハウジング12内壁と断熱壁14との間の間隙に断熱部材18を充填した点である。
【0030】
断熱部材18は、グラスウールなどの繊維系断熱材、ウレタンフォームなどの発泡系断熱材などを利用することが可能である。
【0031】
以上の車両用灯具10によれば、第一の実施例の車両用灯具10より高い断熱効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0032】
10 車両用灯具
11 アウターレンズ
12 ハウジング
12a ネジ穴用ボス
13 エクステンション
14 断熱壁
14a ネジ
15 シール材
16 間隙
17 灯室
18 断熱部材
20 光学系ユニット
21 白色LED
22 基板
23 ヒートシンク
24 リフレクタ
25 投影レンズ
100 車両
110 エンジンルーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオードからなる光源及び光学部材を含む光学系ユニットが、ハウジングとアウターレンズとによって構成される灯室内に収容され、車両のエンジンルームと前記ハウジングが隣接した状態で車両に取り付けられる車両用灯具であり、
前記ハウジング内壁と前記光学系ユニットとの間の領域に断熱壁を備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記断熱壁が、前記ハウジング内壁に対して所定の間隔をもって取り付けられ、
前記断熱壁とハウジング内壁との間の領域が、前記筐体内の他の領域と隔離された領域となっていることを特徴とする、請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記隔離した領域には、空気または断熱材を充填することを特徴とする、請求項2に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−251062(P2010−251062A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98222(P2009−98222)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】